多重化コンピュータ断層撮影のための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品
多重化コンピュータ断層撮影のための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品が開示される。一の態様によれば、本書に記述される主題は、個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを複数の視角から対象へ照射し;複数のパルス状x線ビームのx線強度を、時間の関数として検出し、及び投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、x線ビームの異なる波形に基づき、検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出することを含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書に記述される主題は、x線画像に関する。特に、前記主題は多重化コンピュータ断層撮影のための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品を記述する。
【背景技術】
【0002】
(助成金の記述)
この研究は少なくとも部分的に、国立衛生研究所及び国立生物医学画像及び生物工学研究所 (NIH-NIBIB) (助成番号 1-R21-EB004204-01)、及び国立癌研究所(NCI)(助成番号 U54CA119343)からの補助金によって支援された。アメリカ合衆国政府は本書の開示について所定の権利を有する。
(関連する出願)
この出願は、米国仮特許出願No. 60/720,176, 2005年9月23日出願の利益を主張する。又、この出願は、米国仮特許出願No. 60/674,537, 2005年4月25日出願の優先権を主張する米国特許出願No. 11/410,997, 2006年4月25日出願の一部継続出願である。上記出願のそれぞれの開示は参照することにより全体が本書に援用される。
【0003】
(背景技術)
医療診断、手荷物検査、及び工業検査のような用途において物質の内部構造を調べるため、x線放射が広く利用されている。単純な画像検査法では、x線光子が対象を通過される。通過されたx線光子は記録装置により所定期間に渡って集められ、重複した構造的特徴を有する静的な投影像を形成する。コンピュータ断層撮影(CT)のような更に進んだ画像検査法では、コントラスト増大目的のための画像再構成又は多重フレーム画像のため、異なる視角からの多重投影像を用いる。
【0004】
典型的なCTスキャナーは、対象の周りにx線チューブを高速で回転させることにより多数の視角を達成する。このことは、大きくて複雑な枠台(gantry)を必要とし、現在の医療CTスキャナーに1走査毎約1秒の制限を課している。同一対象の多数の画像が必要となる場合、x線画像のこの逐次記録は非効率である。例えば、単一ピクセルx線チューブを有するCTスキャナーは、前記x線チューブが1つの360度回転をするのに0.5秒を要する。この1回転の過程で、約1,000-2,000の投影像が撮影される。各照射は約250-500μsである。医療画像のような用途にとって、現在のCTシステムの長い照射時間は、それらを好ましくないもの又は効果のないものにする。
【0005】
単一ピクセルx線チューブシステムのデータ収集速度を増大させる技術は、x線チューブの回転速度の増大又はx線光束の増大を含む。しかし、x線チューブの最高回転速度及びアノード表面の過熱に関する物理的制約によって、これらの技術は限定される。
【0006】
従って、x線画像に関する上記した困難及び要求に照らして、多重化コンピュータ断層撮影のための改良された方法、システム、及びコンピュータプログラム製品が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本書に記述される主題は、多重化コンピュータ断層撮影を実行するための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品を含む。一の態様は、異なる波形を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを複数の異なる視角から対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置を含むことができる。本書に記述される主題の一の態様によれば、前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出可能なx線検出器と、投影像データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出可能な画像処理モジュールとが備えられることができる。
【0008】
本書に記述される主題は、コンピュータ読取り可能な媒体に表現されコンピュータで実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品を用いて実行されることができる。本書に記述される主題を実行するのに適した典型的なコンピュータ読取り可能な媒体は、チップメモリ装置(chip memory devices)、ディスクメモリ装置(disc memory devices)、特定用途向け集積回路、プログラム可能論理回路(programmable logic devices)、及びダウンロード可能な電気信号(downloadable electrical signals)を含むことができる。さらに、本書に記述される主題を実行するコンピュータプログラム製品は、単一の素子(device)若しくは計算プラットホームに存在することができ、又は複数の素子若しくは計算プラットホームに分散されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本書に開示される主題は、多重化CTのためのシステム、方法及びコンピュータプログラム製品を記述する。本書に記述される主題は、CT、トモシンセシス(tomosynthesis)、透視診断法、及び血管造影法を含むx線画像に用いられる特定の応用を有することができる。本書に記述される主題に従う多重化CTシステムは、異なる波形を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを複数の異なる視角から対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置を含むことができる。さらに、本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影システムは、前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出するx線検出器を含むことができる。さらに、本書に記述される主題に従う多重化CTシステムは、投影像データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出する画像処理モジュールを含むことができる。
【0010】
一の態様において、本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影システムは、プログラム可能な波形を有するピクセル化されたx線ビームを同時に生成し、そのx線ビームを画像化される対象に向けることができる。前記x線ビームは、多重-ビーム電界放出型x線(MBFEX)源によって生成されることができる。前記x線ビームはデジタルx線検出器によって検出されることができる。画像処理モジュールは、投影像データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線の波形に基づき、前記検出されたx線から個々の前記投影データを抽出可能である。CT画像のための合計データ収集時間とx線源から要求されるx線強度とを低減できるため、例えば並列画像処理は有利であろう。一例において、個々のx線ビームは、カーボンナノチューブ(CNT)をベースとする電界放出カソードを用いた単一ピクセルx線源によって生成されることができ、この単一ピクセルx線源は、強度、パルス幅及び繰り返し数が容易に変更され得るプログラム可能な波形を有するx線を生成することができる。
【0011】
典型的なCNT−ベースの電界放出カソードx線生成装置が米国特許番号 6,876,724 (表題"大面積の個々にアドレス可能な多重-ビームx線システム及びそれを形成する方法")に記述されており、その開示は参照することにより全体が本書に援用される。この特許は、カーボンナノチューブのような電界放出材料から構成される基板を有し、複数の固定され個々に電気的に呼び出し可能な(addressable)電界放出電子源を備えたx線生成構造を開示する。この特許に開示されたx線生成装置は、本書に記述される主題に従って使用可能なx線生成装置の一例である。
【0012】
図1は、本書に記述される主題の一態様に従い、一般に100で示される典型的な多重化コンピュータ断層撮影システムの一例のブロック図である。システム100は対象Oの3次元断層画像データIDを収集することができる。多重化関数(multiplexing function)(MPF)は、画像データIDを収集するため、多重-ビーム電界放出型x線(MBFEX)生成装置XGDを制御して特定の多重x線ビームXB1,XB2,及びXBkを生成し、生成されたx線ビームを異なる投影角から対象Oに向けることができる。一例において前記MPFは、x線生成装置XGDのピクセル(x,y)により、異なる(distinct)時間周波数ωkで前記XGDを制御し、ビームXB1,XB2,及びXBkを生成する。対象Oを通過した後、全てのx線ビームXB1,XB2,及びXBkは、すべてのピクセルに対し時間データI(x, y, t)を出力する高フレームレートx線検出器XDによって検出されることができる。x線ビームXB1,XB2,及びXBkは、異なる波形を持つことができる。以下に記述するように、前記異なる波形によって、異なる投影角から得られたデータを下流処理コンポーネントが区別できるようになる。
【0013】
個々の投影画像PI1,PI2,及びPIkを抽出するため、前記時間データセットが分離関数(demultiplexing function)(DMPF)によって処理されることができる。前記対象の3次元断層画像データIDを生成するため、これらの投影画像が結合されることができる。例えば、前記DMPFは、前記時間データに基づく周波数領域スペクトルl(x,y,ω)を得るために操作可能な時間フーリエ変換関数(TFT)を含むことができる。前記時間データのノイズは、n個の異なる主成分d(x,y,ωk)を得るための数値(numerical)n-バンドフィルタによってフィルタされてもよい。典型的なノイズフィルタは、ルーらの表題"複数画像の同時収集によるノイズ低減及び画像収集速度の増大のための、時間デジタル信号処理を用いたx線画像システム及び方法"、米国特許出願番号No.11/410,997に記述され、その開示は参照することにより全体が本書に援用される。
【0014】
関数TFTによって生成される前記主成分は、x線生成装置XGDによって生成される特定のx線ビームに対応することができる。特に、前記主成分は、x線ビームXB1,XB2,及びXBkに対応することができる。関数TFTによって生成されるk番目の主成分は、周波数ωkで動作するx線生成装置XGDから生成されるx線ビームXBkに対応する。さらに、前記主成分は、x線ビームXB1,XB2,及びXBkから投影画像データPI1,PI2,及びPIkを形成するために用いられることができる。特異的な波形周波数によって、関数TFTは前記異なる投影角から得られたデータを区別できるようになる。結果として、ただ1つの検出器を用い、1つの投影画像の照射時間の間にn個の投影画像が同時に得られることができる。このようにして、本書に記述される主題に従うシステムは、投影画像データ収集速度を従来のCTシステムのn倍に有利に増大させることができる。
【0015】
投影画像データPI1,PI2,及びPIkは、前記投影画像データを対象Oの3次元断層画像データIDに結合可能な画像処理モジュールIPMに通信されることができる。画像データIDは、画像データIDに基づく対象Oの3次元断層画像を表示可能なディスプレイDに通信されることができる。
【0016】
図2は、本書に記述される主題の一態様に従い、一般に200で示される典型的な多重化CTシステムの透視図を示す。図2に関し、多重化CTシステム200は、複数の焦点から複数のx線ビームXB1及びXB2をx線アノード面に生成可能な複数ビーム電界放出型x線源を含むx線生成装置XGDを有することができる。
【0017】
x線生成装置XGDは、360度視角を形成するよう配置される焦点FSと環状構造を形成するアノードを有することができる。特に、生成されたx線ビームは、対象ステージOS上に配置された対象Oを標的とするため、環形の中心に向けられる。対象Oを貫通又は通過したx線ビームを受けるため、x線検出器XDが配置されることができる。各焦点FSは、対象Oに対して等間隔とすることができる。
【0018】
一の態様において、画像処理モジュールによってCT再構成のための十分な投影像を供給するため、必要とされる焦点の数は約100から約3,000の範囲とすることができ、視角の約180度から約360度をカバーすることができる。
【0019】
断層撮影及びトモシンセシスのような限定角断層画像モダリティ(modality)における用途のための他の態様において、投影像の総数及び視角の範囲はより小さくすることができる。胸部トモシンセシス用途に対し、約30-50度の視角をx線がカバーするのが充分であると想像される。
【0020】
図3は、本書に記述される主題の一態様に従う、固定された平面多重化CTシステム300の概略図を示す。図3に関し、x線生成装置XGDは、焦点FSのようにアノード面に配置される複数の焦点(1-N)を含む。x線源からのx線によって衝突された時、焦点FSは一般にXBで示されるx線ビームを放出するよう構成されることができる。x線ビームXBは、それぞれ異なる波形を有することができる。x線ビームXBは、複数の異なる視角から対象Oに向けられることができる。x線検出器XDは、対象Oを貫通又は通過したx線ビームを検出するよう構成されることができる。特にx線検出器XDは、対象Oを貫通又は通過したx線ビームのx線強度を時間の関数として検出することができる。画像処理モジュールは、投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出することができる。3次元断層画像データは、対象Oの3次元画像を表示する適切なディスプレイによって保存され及び/又は利用されることができる。
【0021】
図4は、本書に記述される主題の一態様に従う多重化コンピュータ断層撮影を実行する典型的な処理のフローチャートである。図4に関しブロック400において、複数の視角から複数のx線ビームによって、対象が照射される。各x線ビームは、多重化関数MPFによって制御される別個の波形を持つことができる。例えば、図1に示されるx線生成装置XGDは、異なる時間波形を持つx線ビームXB1,XB2,及びXBkを生成し、そのx線ビームを対象Oに向けるよう制御されることができる。ブロック402において、複数のx線ビームのx線強度が時間の関数として検出されることができる。例えば、再び図1に関し、対象Oを照射するx線ビームは、x線検出器XDによって検出されることができる。一例において、前記x線検出器は、前記検出器のフレームレートが前記x線ビームのパルスレートより速い、アレイ(array)又は領域(area)デジタルx線検出器であることができる。
【0022】
ブロック404において、特定のMPFに対応する分離関数DMPFにより、検出されたx線強度から個々の投影像データが抽出されることができる。抽出された個々の画像データは結合され、対象の3次元断層画像データを生成することができる。
【0023】
更にブロック404において、前記対象の生成された3次元画像データに基づく前記対象の3次元画像が表示されることができる。例えば、再び図1に関し、ディスプレイDは、対象Oの生成された3次元画像データIDに基づき、対象Oの3次元画像を表示することができる。
【0024】
本書に記述される主題に従うシステム及び方法を用いることにより、全ての視角から全ての投影像を収集するのに必要な合計時間が顕著に低減されることができる。例えば、再構成のために1,000の投影像が必要であり、各画像が500μsを要すると仮定する。連続した手法を用いる従来のCTスキャナーは、500μsで連続的に1,000の照射を必要とする。その処理は0.5秒を要する。しかし、異なる波形のx線ビームを同時に生成可能な、本書に記述される主題の例に従う複数の同時x線ビームの多重化は、全走査の合計照射時間を1ミリ秒へ低減し、これは画像品質を犠牲にすること無く従来の連続法(0.5秒)より500倍も速い。
【0025】
更に、本書に記述される主題に従うシステム及び方法を用いることにより、必要なx線強度が顕著に低減されることができ、画像データ収集時間が低減され又は従来の連続CTスキャナーに要求される合計画像データ収集時間と少なくとも等しくすることができる。比較のため上記で議論したのと同一の例が使用される。再構成のために1000の投影像が必要であり、各画像が500μs×1アンペアx線量(x-ray dose)を要すると仮定すると、連続した手法を有する従来のCTスキャナーは、各500μs×1アンペアx線量で連続的に1000の照射を捕らえることができる。この処理は約0.5秒を要する。比較のため、180度以上の視角範囲をカバーする1000のx線放出ピクセルを有し、本書に記述される主題に従うシステムが用いられる。この例において、x線生成装置の全てのx線ビームは同時に出される。各x線ビームは、異なる周波数でパルスを出される。更に特定の態様において、各x線ビームは、矩形波形及び50%デューティーサイクルを持つ。1000のx線ビームの周波数範囲はfと3fの間にあり、fは集団の最低周波数である。従来のシステムに見られるような1アンペア(A)管電流の使用に代え、値は各ピクセルについての0.1 A管電流に低減(reduced)される。1照射当り同一のx線量を保つため、各ビームの合計照射時間は10倍に増やされる。このようにして多重化CTシステムのため、各x線ビームは10ミリ秒(500μs×10/50%)動作する。
【0026】
各パルスのx線管電流は0.1 Aである。ビームの全てが同時に出るため、全走査の合計照射時間は10ミリ秒であり、これは連続法(0.5秒)を用いた従来のシステムより50倍も速い。さらに、必要とされるx線管電流は、画像品質を犠牲にすること無く従来のCTスキャナーに用いられるものの10%に過ぎない。本書に記述される主題により可能となるx線管電流の低減は、例えば低管電流が従来のシステムに比べ低コスト、長いシステム寿命、及び小さなサイズをもたらすため重要となり得る。
【0027】
一の態様において、本書に記述される主題はエネルギー差分画像技術に従って用いられることができる。エネルギー差分技術において、異なるエネルギー準位を持つx線ビームを用い、同一対象の2又はそれ以上の画像が撮影されることができる。一例において、異なるエネルギー準位を持つx線ビームが対象に順に当てられ、エネルギー準位E1を持つx線ビームを用いて前記対象の第1画像が撮影され、続いてエネルギー準位E2を持つ第2のx線ビームを用いて前記対象の第2画像が撮影される。この例において、エネルギー準位E1が前記対象の吸収端よりわずかに上で、かつエネルギー準位E2が前記対象の吸収端よりわずかに下であるような異なるエネルギー準位を有するx線ビームが生成されるよう、x線生成装置が制御されることができる。前記対象が移動しないと仮定すると、関心ある元素のコントラストを高めるため、1つの画像のx線強度が第2の画像のx線強度から差引かれることが可能である。しかしながら、対象が動いていると、前記2つの画像を記録することが困難となり得る。
【0028】
エネルギー差分画像技術を用いた一の態様において、2つの単一ピクセルx線源と、1つのデジタルx線検出器が使用されることができる。源1はE1のアノードエネルギーで動作させることができ、源2はE2のアノードエネルギーで動作させることができる。2つのx線ビームはf1及びf2の周波数でパルスを出されることができる。2つのパルス状x線ビームのデューティーサイクルは50%より高い。この例において、前記対象の2つの画像は、前記画像を連続的に撮影するのに必要な時間より短い時間で、かつ同じ画像品質で収集されることができる。結果として、動きによって引き起こされる問題は最小化され得る。
【0029】
図5A-5F及び図6A-6Fは、本書に記述される主題の態様に従う、それぞれ2−及び8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。図5A及び5Bのグラフは、本書に記述される主題に従うシステムによってそれぞれ生成された第1及び第2のx線ビームについて、x線強度対時間データを示す。x線強度は1秒毎受けた光子で測定され、それは1秒毎のカウントとしても見なされる。図5Cは第1及び第2のx線ビームの波形の和を示す。図5D-5Fは、それぞれ図5A-5Cに示される波形のそれぞれについて、周波数領域での対応するx線データを示す。第1及び第2のx線ビームからのx線ビームは、図5D-5Fにおけるそれらの周波数に基づいて識別可能である。このデータは、投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、検出されたx線強度から個々の投影像データを画像処理モジュールが抽出するのに利用されることができる。
【0030】
図6において、グラフ6A-6Cはx線検出器の1ピクセルで記録された合計x線強度であり、光子毎秒で測定され、対データ収集時間であり、本書に記述される主題に従う8−ビームシステムによって生成された時間領域における秒で測定される。図6D-6Fは、周波数領域での対応するx線データを示す。しかし図6Dにおいて、収集時間が少な過ぎるため、x線ビーム波形は明確に識別可能ではない。図6E-6Fに示すように、収集時間が20秒を越える周波数領域において、x線ビームは明確に区別される。従って、対象の3次元断層画像データを生成するため、充分に高い収集時間についての投影像データが利用されることができる。
【0031】
一の態様において、本書に記述される主題に従うx線生成装置は、異なる波形を持つx線ビームを同時に生成可能な多重-ピクセル電界放出型x線源を含むことができる。前記多重-ピクセル電界放出型x線源は、本書に記述される主題に従ってx線ビームを対象に向けることができる。図7は、本書に記述される主題の態様に従い、一般に700で示される多重-ピクセル電界放出型x線源の略断面側面図である。図7に関し、x線源700は、電子を放出するための複数の電界放出型エミッタFEを含むことができる。電界放出型エミッタFEは、1又はそれ以上のカーボンナノチューブ及び/又は他の適切な電界放出型放出材料を含むことができる。更に、電界放出型エミッタFEは、個々のカソードC、導電線若しくは接触線、又は他の適切な導電性材料に接続されることができる。電界放出型エミッタはカーボンナノチューブであることができる。
【0032】
他の態様において、本書に記述される主題に従うx線生成装置は、異なるx線エネルギー特性を持つ複数のx線ビームを同時に生成するよう構成される、多重-ピクセル電界放出型x線源を含むことができる。前記複数エネルギーx線ビームは、医用画像用途の場合はCT数(number)として知られるx線減衰係数に加え、物質特性又は属性を持つ3-D断層画像を得るために使用されることができる。例えば、これらの属性は、化学組成、原子数、又は対象の密度を含むことができる。典型的な用途は、爆弾検出及び国家防衛のため対象の化学組成を検出することも含むことができる。他の例において、その弾性特性又はカルシウムのような特定の元素を含むことにより、癌組織を正常組織から区別することができ、それは、医学用途に用いるため本書に記述される主題に従う複数エネルギーx線画像システムを用いて測定されるであろう。
【0033】
対応する電子ビームEBを形成するための電子を放出するため、電界放出型エミッタFEは適切な汎用コンピュータのような適切なコントローラによって制御されることができる。一の態様において、コントローラは、電界放出型エミッタFEとゲート電極GEの間に電圧を印加する電源VS1を制御し、電界放出型エミッタFEから電子を引き出すための対応する電場を生成することができる。異なる周波数のパルス状電子ビームEBを生成するため、印加される電圧は異なる周波数でパルスを出すことができる。特に、電子を放出する放出エミッタFEを個々に制御するため、前記コントローラは複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFETs)Tを個々に操作することができる。トランジスタを個々にオン及びオフするため、前記コントローラは放出エミッタFEに印加される電圧を個々に制御することができる。トランジスタTのドレインは、複数のカソードCの対応する1つに接続されることができる。トランジスタTのゲートにそれぞれ高信号(high signal)(例えば5V)及び低信号(low signal)(例えば0V)を個々に印加することにより、トランジスタTがオン及びオフされることができる。トランジスタのゲートに高信号が印加されると、前記トランジスタのドレイン-ソースチャネル(channel)がオンになり、個々のカソードCとゲート電極GEの間に電圧差が加わる。電圧差が閾値を超えると、個々の電界放出型エミッタFEから電子が引き出されるよう、カソードCとゲート電極GEの間に電場を生成することができる。反対にトランジスタのゲートに低電圧(例えば0V)が印加されると、電界放出型エミッタFEでの電圧が電気的にフローティング(floating)し、個々のカソードCとゲート電極GEの間の電圧差が個々の電界放出型エミッタから電子を引き出す充分な強さの電場を生成できないよう、対応するドレイン-ソースチャネルがオフになる。前記コントローラは、トランジスタTのゲートに異なる周波数の電圧パルスを個々に印加可能である。このようにして前記コントローラは、放出エミッタFEからの電子ビームパルスの周波数を個々に制御することができる。
【0034】
更にx線源700は、対応する電子ビームによって衝突される複数の焦点を有するアノードAを含むことができる。個々の電界放出型エミッタFEによって放出される電子を個々のターゲット構造(target structure )TRに向かって加速するために個々の場(field)が生成されるよう、アノードAとゲート電極GEの間に電圧差が加えられることができる。ターゲット構造TRは、例えばモリブデンから製造することができる。ターゲット構造TRは、電子ビームEBによる衝突によって所望のパルス周波数を持つx線ビームを形成することができる。x線源800は、電界放出型エミッタFEから引き出される電子をターゲット構造TR上に集中させ、それにより電子ビームEBの大きさを小さくするための集束電極FELを含むことができる。集束電極FELは、電源VS2によって集束電極FELへ電圧を印加することにより制御されることができる。必要とされる流束(flux)によってゲート電圧は変化されることができる。
【0035】
電界放出型エミッタFE及びゲート電極GEは、シールされた内部を有する真空チャンバ内に収容されることができる。所望の内部圧力に到達するため、真空チャンバの内部は真空引きされることができる。電子透過性の部分又は窓を通り、電子ビームEBが真空チャンバの内部からその外部へ移動することができる。一例において、前記電子透過性の部分又は窓は、4" 直径ベリリウム(Be)x線窓であることができる。異なる波形の電子ビームによるアノードAの電子衝突によって、異なる波形のx線ビームが生成されることができる。更に、生成されたx線ビームが複数の異なる視角から対象へ向かって伝わるよう、アノードAは適切に成形され及び/又は角度を付けられることができる。
【0036】
図8は、本書に記述される主題の一態様に従い、単一、パルス状のx線ビームXBを生成するための、図7に示すx線源700の一般に800で示されるx線ユニットの略断面側面図である。x線ユニット800は、x線源700の単一ピクセルを表す。図8に関し、x線ユニット800は、カソードC上に蒸着された電界放出型エミッタFEを含むことができる。一例において、電界放出型エミッタFEは1.5mm直径のカーボンナノチューブ層であることができる。前記カーボンナノチューブ層は、金属基材の表面に蒸着されることができる。さらに、前記カーボンナノチューブ層は、電気泳動プロセスにより前記表面に蒸着されることができる。
【0037】
x線ユニット800は、電源VS1による電圧の印加によって電極(electrode)を引き出すためのゲート電極GEを含むことができる。一例において、ゲート電極GEはタングステングリッドであることができる。ゲート電極GEは誘電体スペーサDSによってカソードCから距離をあけて配置されることができる。
【0038】
一の態様において、一定のDC電圧をアノードAに印加し、可変DC電圧をゲート電極GEに印加することにより、x線ビームXBが生成されることができる。n-チャネルMOSFET Tは、電界放出型エミッタFEからの電子の放出をオン及びオフ切り替えするのに適合させられることができる。電界放出型エミッタFEがゲート電極GEと完全な電気回路を形成するよう、5V信号を印加してMOSFET Tのチャネルを開くことにより、ピクセルが作動する。電界放出型エミッタFEはMOSFET Tのドレインと電気的に結合されることができる。MOSFET Tのソースは接地されることができる。MOSFET Tのゲートは、5V DC電圧信号を供給するのに適合するデジタルI/O基板の出力に接続されることができる。
【0039】
電源VS1によって印加される電圧が放出の臨界場(critical field)を超えたとき、電界放出型エミッタFEから電子が放出されることができる。電源VS2によってアノードAとゲート電極GEとを横切って印加される電圧により、放出された電子が加速されることができる。電子は電子ビームEBを形成し、電子ビームはアノードAの領域に衝突してx線ビームXBを生成する。電子ビームEBをアノードAのターゲット焦点に集中させるため、集束電極FELに電圧が印加されることができる。
【0040】
図7を再び参照すると、x線源700内の個々のMOSFETを横切り、所定のパルス幅を有するパルス状の制御信号をスイープすることにより、アノードAのターゲット上の異なる源から走査x線ビームが生成されることができる。前記信号がスイープされた個々のMOSFETでは、前記アノードターゲット上の対応する焦点からx線ビームを生成するために前記MOSFETのチャネルが開かれることができる。
【0041】
同一のパルス周波数を有する電子をそのピクセルの小集団が放出するよう、前記ピクセルの小集団が作動されることができ、その電子は異なる焦点から同一の周波数でx線ビームを生成する。その代わりに、異なるパルス周波数を有する電子をそのピクセルの小集団が放出するよう、前記小集団ピクセルが作動されることができ、その電子は異なる焦点から異なる周波数でx線ビームを生成する。一の態様において、そのピクセルの小集団のための別個のゲート電子(gate electron)を用いることにより、前記ピクセルの小集団が作動されることができる。所望のパルス周波数と振幅とを有する電界放出電子を生成するため、対応するピクセルに所定のパルス周波数で引き出し電圧が印加されることができる。
【0042】
他の態様において、電界放出ピクセルの全てに対し共通ゲートを用いることにより、ピクセルの小集団が作動されることができる。MOSFET回路に印加される動作電圧をパルス状にすることにより、電子ビームがパルス状にされることができる。例えば、所定の周波数を有するパルス状x線ビームを生成するため、所定の周波数を有するパルス状電圧が対応するMOSFETを開くために印加されることができる。
【0043】
図9A-図9Cは、本書に記述される主題の一態様に従う2-ビーム多重化CTシステムの実験結果の合計を示すグラフである。図9A及び図9Bは、電圧対フレーム数の関数として表示された典型的な波形を示す。図9Cは、これら2つの波形の和に由来する1秒毎の光子で測定される、実験的に測定されたx線強度を示す。このデータは、投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するための画像処理モジュールによって利用されるであろう。
【0044】
図10は、画像処理モジュールIPMの要素であり得る時間フーリエ変換が前記データに実行された後の、矩形波形を持つ2つのx線ビームを示す。
【0045】
図11は、画像化される対象の周りを回転枠台を用いて回転可能なx線源及びx線検出器を示す。さらに、画像が複数の角度から得られるよう、対象ステージが回転するように構成されることもできる。
【0046】
以下の米国特許及び出願は本書に記述される主題に関連し、それらは参照することにより全体が本書に援用される。米国特許番号 6,553,096 及び 6,850,595(いずれも"電界放出カソードを用いたx線生成機構"と表題されている)に記述され、その記述を参照することにより全体が本書に援用されるx線生成装置は、少なくとも一部がナノ構造を有する材料から形成された電界放出カソードを含むx線生成装置を開示する。これらの特許に開示された前記x線生成装置は、本書に記述される主題に従って使用するためのx線生成装置の例である。
【0047】
他の典型的なx線生成装置が米国特許7,082,182( "人体及び小動物の画像化のためのコンピュータ断層撮影システム"と表題されている)に記述され、その記述は参照することにより全体が本書に援用される。この特許は、x線源及びx線検出ユニットを含むコンピュータ断層撮影装置を開示する。この特許出願に開示されたx線源及びx線検出ユニットは、本書に記述される主題に従って使用するためのx線生成装置及びx線検出器の例である。
【0048】
振動する対象のCT画像化のための典型的な方法及びシステムは、チョウ(Zhou)らの係属中の米国特許出願番号11/051,332("電界放出x線源を用いたコンピュータ断層撮影走査システム及び方法"と表題されている)に記述され、その開示は参照することにより全体が本書に援用される。この出願は、微小-焦点電界放出x線源、x線検出器、前記x線源と前記検出器の間に配置された対象ステージ、x線放射及び検出器データ収集を制御する電子制御システム及びコンピュータ、並びに異なる投影角から収集された一連の投影像を用いて前記対象の3次元画像を再構成するコンピュータソフトウェアを含む、典型的な微小-コンピュータ断層撮影スキャナーを開示する。画像化される対象の動きに関連して、x線ビームがパルス状にされる。この特許出願に開示された前記x線源及びx線検出ユニットは、本書に記述される主題に従って使用するためのx線生成装置及びx線検出器の例である。
【0049】
本書に記述される主題の範囲を逸脱しない限り、本書に記述される主題の各種の詳細を変更してよいことは理解されるであろう。さらに、前述の記述は説明を目的としたものに過ぎず、以下に説明される請求の範囲によって本書に記述される主題が定義されるように、限定を目的としたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影システムの一例のブロック図である。
【図2】本書に記述される主題に従う多重化CTシステムの透視側面図を示す。
【図3】本書に記述される主題に従う、固定された平面多重化CTシステムの正面図を示す。
【図4】本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影を実行する処理のフローチャートである。
【図5A】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5B】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5C】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5D】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5E】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5F】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6A】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6B】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6C】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6D】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6E】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6F】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図7】本書に記述される主題に従う、多重-ピクセル、電界放出型x線源の略断面側面図である。
【図8】本書に記述される主題に従う、単一、パルス状のx線ビームを生成するための図8に示すx線源のx線ユニットの略断面側面図である。
【図9A】x線強度検出器によって実験的に測定された2つのx線波形の合計を示すグラフである。
【図9B】x線強度検出器によって実験的に測定された2つのx線波形の合計を示すグラフである。
【図9C】x線強度検出器によって実験的に測定された2つのx線波形の合計を示すグラフである。
【図10】データにフーリエ変換を実行した後の矩形波形を有する2つのx線ビームのグラフである。
【図11】本書に記述される主題に従う、回転枠台及び可動対象ステージを有する多重化CTシステムの透視側面図を示す。
【技術分野】
【0001】
本書に記述される主題は、x線画像に関する。特に、前記主題は多重化コンピュータ断層撮影のための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品を記述する。
【背景技術】
【0002】
(助成金の記述)
この研究は少なくとも部分的に、国立衛生研究所及び国立生物医学画像及び生物工学研究所 (NIH-NIBIB) (助成番号 1-R21-EB004204-01)、及び国立癌研究所(NCI)(助成番号 U54CA119343)からの補助金によって支援された。アメリカ合衆国政府は本書の開示について所定の権利を有する。
(関連する出願)
この出願は、米国仮特許出願No. 60/720,176, 2005年9月23日出願の利益を主張する。又、この出願は、米国仮特許出願No. 60/674,537, 2005年4月25日出願の優先権を主張する米国特許出願No. 11/410,997, 2006年4月25日出願の一部継続出願である。上記出願のそれぞれの開示は参照することにより全体が本書に援用される。
【0003】
(背景技術)
医療診断、手荷物検査、及び工業検査のような用途において物質の内部構造を調べるため、x線放射が広く利用されている。単純な画像検査法では、x線光子が対象を通過される。通過されたx線光子は記録装置により所定期間に渡って集められ、重複した構造的特徴を有する静的な投影像を形成する。コンピュータ断層撮影(CT)のような更に進んだ画像検査法では、コントラスト増大目的のための画像再構成又は多重フレーム画像のため、異なる視角からの多重投影像を用いる。
【0004】
典型的なCTスキャナーは、対象の周りにx線チューブを高速で回転させることにより多数の視角を達成する。このことは、大きくて複雑な枠台(gantry)を必要とし、現在の医療CTスキャナーに1走査毎約1秒の制限を課している。同一対象の多数の画像が必要となる場合、x線画像のこの逐次記録は非効率である。例えば、単一ピクセルx線チューブを有するCTスキャナーは、前記x線チューブが1つの360度回転をするのに0.5秒を要する。この1回転の過程で、約1,000-2,000の投影像が撮影される。各照射は約250-500μsである。医療画像のような用途にとって、現在のCTシステムの長い照射時間は、それらを好ましくないもの又は効果のないものにする。
【0005】
単一ピクセルx線チューブシステムのデータ収集速度を増大させる技術は、x線チューブの回転速度の増大又はx線光束の増大を含む。しかし、x線チューブの最高回転速度及びアノード表面の過熱に関する物理的制約によって、これらの技術は限定される。
【0006】
従って、x線画像に関する上記した困難及び要求に照らして、多重化コンピュータ断層撮影のための改良された方法、システム、及びコンピュータプログラム製品が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本書に記述される主題は、多重化コンピュータ断層撮影を実行するための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品を含む。一の態様は、異なる波形を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを複数の異なる視角から対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置を含むことができる。本書に記述される主題の一の態様によれば、前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出可能なx線検出器と、投影像データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出可能な画像処理モジュールとが備えられることができる。
【0008】
本書に記述される主題は、コンピュータ読取り可能な媒体に表現されコンピュータで実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品を用いて実行されることができる。本書に記述される主題を実行するのに適した典型的なコンピュータ読取り可能な媒体は、チップメモリ装置(chip memory devices)、ディスクメモリ装置(disc memory devices)、特定用途向け集積回路、プログラム可能論理回路(programmable logic devices)、及びダウンロード可能な電気信号(downloadable electrical signals)を含むことができる。さらに、本書に記述される主題を実行するコンピュータプログラム製品は、単一の素子(device)若しくは計算プラットホームに存在することができ、又は複数の素子若しくは計算プラットホームに分散されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本書に開示される主題は、多重化CTのためのシステム、方法及びコンピュータプログラム製品を記述する。本書に記述される主題は、CT、トモシンセシス(tomosynthesis)、透視診断法、及び血管造影法を含むx線画像に用いられる特定の応用を有することができる。本書に記述される主題に従う多重化CTシステムは、異なる波形を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを複数の異なる視角から対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置を含むことができる。さらに、本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影システムは、前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出するx線検出器を含むことができる。さらに、本書に記述される主題に従う多重化CTシステムは、投影像データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出する画像処理モジュールを含むことができる。
【0010】
一の態様において、本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影システムは、プログラム可能な波形を有するピクセル化されたx線ビームを同時に生成し、そのx線ビームを画像化される対象に向けることができる。前記x線ビームは、多重-ビーム電界放出型x線(MBFEX)源によって生成されることができる。前記x線ビームはデジタルx線検出器によって検出されることができる。画像処理モジュールは、投影像データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線の波形に基づき、前記検出されたx線から個々の前記投影データを抽出可能である。CT画像のための合計データ収集時間とx線源から要求されるx線強度とを低減できるため、例えば並列画像処理は有利であろう。一例において、個々のx線ビームは、カーボンナノチューブ(CNT)をベースとする電界放出カソードを用いた単一ピクセルx線源によって生成されることができ、この単一ピクセルx線源は、強度、パルス幅及び繰り返し数が容易に変更され得るプログラム可能な波形を有するx線を生成することができる。
【0011】
典型的なCNT−ベースの電界放出カソードx線生成装置が米国特許番号 6,876,724 (表題"大面積の個々にアドレス可能な多重-ビームx線システム及びそれを形成する方法")に記述されており、その開示は参照することにより全体が本書に援用される。この特許は、カーボンナノチューブのような電界放出材料から構成される基板を有し、複数の固定され個々に電気的に呼び出し可能な(addressable)電界放出電子源を備えたx線生成構造を開示する。この特許に開示されたx線生成装置は、本書に記述される主題に従って使用可能なx線生成装置の一例である。
【0012】
図1は、本書に記述される主題の一態様に従い、一般に100で示される典型的な多重化コンピュータ断層撮影システムの一例のブロック図である。システム100は対象Oの3次元断層画像データIDを収集することができる。多重化関数(multiplexing function)(MPF)は、画像データIDを収集するため、多重-ビーム電界放出型x線(MBFEX)生成装置XGDを制御して特定の多重x線ビームXB1,XB2,及びXBkを生成し、生成されたx線ビームを異なる投影角から対象Oに向けることができる。一例において前記MPFは、x線生成装置XGDのピクセル(x,y)により、異なる(distinct)時間周波数ωkで前記XGDを制御し、ビームXB1,XB2,及びXBkを生成する。対象Oを通過した後、全てのx線ビームXB1,XB2,及びXBkは、すべてのピクセルに対し時間データI(x, y, t)を出力する高フレームレートx線検出器XDによって検出されることができる。x線ビームXB1,XB2,及びXBkは、異なる波形を持つことができる。以下に記述するように、前記異なる波形によって、異なる投影角から得られたデータを下流処理コンポーネントが区別できるようになる。
【0013】
個々の投影画像PI1,PI2,及びPIkを抽出するため、前記時間データセットが分離関数(demultiplexing function)(DMPF)によって処理されることができる。前記対象の3次元断層画像データIDを生成するため、これらの投影画像が結合されることができる。例えば、前記DMPFは、前記時間データに基づく周波数領域スペクトルl(x,y,ω)を得るために操作可能な時間フーリエ変換関数(TFT)を含むことができる。前記時間データのノイズは、n個の異なる主成分d(x,y,ωk)を得るための数値(numerical)n-バンドフィルタによってフィルタされてもよい。典型的なノイズフィルタは、ルーらの表題"複数画像の同時収集によるノイズ低減及び画像収集速度の増大のための、時間デジタル信号処理を用いたx線画像システム及び方法"、米国特許出願番号No.11/410,997に記述され、その開示は参照することにより全体が本書に援用される。
【0014】
関数TFTによって生成される前記主成分は、x線生成装置XGDによって生成される特定のx線ビームに対応することができる。特に、前記主成分は、x線ビームXB1,XB2,及びXBkに対応することができる。関数TFTによって生成されるk番目の主成分は、周波数ωkで動作するx線生成装置XGDから生成されるx線ビームXBkに対応する。さらに、前記主成分は、x線ビームXB1,XB2,及びXBkから投影画像データPI1,PI2,及びPIkを形成するために用いられることができる。特異的な波形周波数によって、関数TFTは前記異なる投影角から得られたデータを区別できるようになる。結果として、ただ1つの検出器を用い、1つの投影画像の照射時間の間にn個の投影画像が同時に得られることができる。このようにして、本書に記述される主題に従うシステムは、投影画像データ収集速度を従来のCTシステムのn倍に有利に増大させることができる。
【0015】
投影画像データPI1,PI2,及びPIkは、前記投影画像データを対象Oの3次元断層画像データIDに結合可能な画像処理モジュールIPMに通信されることができる。画像データIDは、画像データIDに基づく対象Oの3次元断層画像を表示可能なディスプレイDに通信されることができる。
【0016】
図2は、本書に記述される主題の一態様に従い、一般に200で示される典型的な多重化CTシステムの透視図を示す。図2に関し、多重化CTシステム200は、複数の焦点から複数のx線ビームXB1及びXB2をx線アノード面に生成可能な複数ビーム電界放出型x線源を含むx線生成装置XGDを有することができる。
【0017】
x線生成装置XGDは、360度視角を形成するよう配置される焦点FSと環状構造を形成するアノードを有することができる。特に、生成されたx線ビームは、対象ステージOS上に配置された対象Oを標的とするため、環形の中心に向けられる。対象Oを貫通又は通過したx線ビームを受けるため、x線検出器XDが配置されることができる。各焦点FSは、対象Oに対して等間隔とすることができる。
【0018】
一の態様において、画像処理モジュールによってCT再構成のための十分な投影像を供給するため、必要とされる焦点の数は約100から約3,000の範囲とすることができ、視角の約180度から約360度をカバーすることができる。
【0019】
断層撮影及びトモシンセシスのような限定角断層画像モダリティ(modality)における用途のための他の態様において、投影像の総数及び視角の範囲はより小さくすることができる。胸部トモシンセシス用途に対し、約30-50度の視角をx線がカバーするのが充分であると想像される。
【0020】
図3は、本書に記述される主題の一態様に従う、固定された平面多重化CTシステム300の概略図を示す。図3に関し、x線生成装置XGDは、焦点FSのようにアノード面に配置される複数の焦点(1-N)を含む。x線源からのx線によって衝突された時、焦点FSは一般にXBで示されるx線ビームを放出するよう構成されることができる。x線ビームXBは、それぞれ異なる波形を有することができる。x線ビームXBは、複数の異なる視角から対象Oに向けられることができる。x線検出器XDは、対象Oを貫通又は通過したx線ビームを検出するよう構成されることができる。特にx線検出器XDは、対象Oを貫通又は通過したx線ビームのx線強度を時間の関数として検出することができる。画像処理モジュールは、投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出することができる。3次元断層画像データは、対象Oの3次元画像を表示する適切なディスプレイによって保存され及び/又は利用されることができる。
【0021】
図4は、本書に記述される主題の一態様に従う多重化コンピュータ断層撮影を実行する典型的な処理のフローチャートである。図4に関しブロック400において、複数の視角から複数のx線ビームによって、対象が照射される。各x線ビームは、多重化関数MPFによって制御される別個の波形を持つことができる。例えば、図1に示されるx線生成装置XGDは、異なる時間波形を持つx線ビームXB1,XB2,及びXBkを生成し、そのx線ビームを対象Oに向けるよう制御されることができる。ブロック402において、複数のx線ビームのx線強度が時間の関数として検出されることができる。例えば、再び図1に関し、対象Oを照射するx線ビームは、x線検出器XDによって検出されることができる。一例において、前記x線検出器は、前記検出器のフレームレートが前記x線ビームのパルスレートより速い、アレイ(array)又は領域(area)デジタルx線検出器であることができる。
【0022】
ブロック404において、特定のMPFに対応する分離関数DMPFにより、検出されたx線強度から個々の投影像データが抽出されることができる。抽出された個々の画像データは結合され、対象の3次元断層画像データを生成することができる。
【0023】
更にブロック404において、前記対象の生成された3次元画像データに基づく前記対象の3次元画像が表示されることができる。例えば、再び図1に関し、ディスプレイDは、対象Oの生成された3次元画像データIDに基づき、対象Oの3次元画像を表示することができる。
【0024】
本書に記述される主題に従うシステム及び方法を用いることにより、全ての視角から全ての投影像を収集するのに必要な合計時間が顕著に低減されることができる。例えば、再構成のために1,000の投影像が必要であり、各画像が500μsを要すると仮定する。連続した手法を用いる従来のCTスキャナーは、500μsで連続的に1,000の照射を必要とする。その処理は0.5秒を要する。しかし、異なる波形のx線ビームを同時に生成可能な、本書に記述される主題の例に従う複数の同時x線ビームの多重化は、全走査の合計照射時間を1ミリ秒へ低減し、これは画像品質を犠牲にすること無く従来の連続法(0.5秒)より500倍も速い。
【0025】
更に、本書に記述される主題に従うシステム及び方法を用いることにより、必要なx線強度が顕著に低減されることができ、画像データ収集時間が低減され又は従来の連続CTスキャナーに要求される合計画像データ収集時間と少なくとも等しくすることができる。比較のため上記で議論したのと同一の例が使用される。再構成のために1000の投影像が必要であり、各画像が500μs×1アンペアx線量(x-ray dose)を要すると仮定すると、連続した手法を有する従来のCTスキャナーは、各500μs×1アンペアx線量で連続的に1000の照射を捕らえることができる。この処理は約0.5秒を要する。比較のため、180度以上の視角範囲をカバーする1000のx線放出ピクセルを有し、本書に記述される主題に従うシステムが用いられる。この例において、x線生成装置の全てのx線ビームは同時に出される。各x線ビームは、異なる周波数でパルスを出される。更に特定の態様において、各x線ビームは、矩形波形及び50%デューティーサイクルを持つ。1000のx線ビームの周波数範囲はfと3fの間にあり、fは集団の最低周波数である。従来のシステムに見られるような1アンペア(A)管電流の使用に代え、値は各ピクセルについての0.1 A管電流に低減(reduced)される。1照射当り同一のx線量を保つため、各ビームの合計照射時間は10倍に増やされる。このようにして多重化CTシステムのため、各x線ビームは10ミリ秒(500μs×10/50%)動作する。
【0026】
各パルスのx線管電流は0.1 Aである。ビームの全てが同時に出るため、全走査の合計照射時間は10ミリ秒であり、これは連続法(0.5秒)を用いた従来のシステムより50倍も速い。さらに、必要とされるx線管電流は、画像品質を犠牲にすること無く従来のCTスキャナーに用いられるものの10%に過ぎない。本書に記述される主題により可能となるx線管電流の低減は、例えば低管電流が従来のシステムに比べ低コスト、長いシステム寿命、及び小さなサイズをもたらすため重要となり得る。
【0027】
一の態様において、本書に記述される主題はエネルギー差分画像技術に従って用いられることができる。エネルギー差分技術において、異なるエネルギー準位を持つx線ビームを用い、同一対象の2又はそれ以上の画像が撮影されることができる。一例において、異なるエネルギー準位を持つx線ビームが対象に順に当てられ、エネルギー準位E1を持つx線ビームを用いて前記対象の第1画像が撮影され、続いてエネルギー準位E2を持つ第2のx線ビームを用いて前記対象の第2画像が撮影される。この例において、エネルギー準位E1が前記対象の吸収端よりわずかに上で、かつエネルギー準位E2が前記対象の吸収端よりわずかに下であるような異なるエネルギー準位を有するx線ビームが生成されるよう、x線生成装置が制御されることができる。前記対象が移動しないと仮定すると、関心ある元素のコントラストを高めるため、1つの画像のx線強度が第2の画像のx線強度から差引かれることが可能である。しかしながら、対象が動いていると、前記2つの画像を記録することが困難となり得る。
【0028】
エネルギー差分画像技術を用いた一の態様において、2つの単一ピクセルx線源と、1つのデジタルx線検出器が使用されることができる。源1はE1のアノードエネルギーで動作させることができ、源2はE2のアノードエネルギーで動作させることができる。2つのx線ビームはf1及びf2の周波数でパルスを出されることができる。2つのパルス状x線ビームのデューティーサイクルは50%より高い。この例において、前記対象の2つの画像は、前記画像を連続的に撮影するのに必要な時間より短い時間で、かつ同じ画像品質で収集されることができる。結果として、動きによって引き起こされる問題は最小化され得る。
【0029】
図5A-5F及び図6A-6Fは、本書に記述される主題の態様に従う、それぞれ2−及び8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。図5A及び5Bのグラフは、本書に記述される主題に従うシステムによってそれぞれ生成された第1及び第2のx線ビームについて、x線強度対時間データを示す。x線強度は1秒毎受けた光子で測定され、それは1秒毎のカウントとしても見なされる。図5Cは第1及び第2のx線ビームの波形の和を示す。図5D-5Fは、それぞれ図5A-5Cに示される波形のそれぞれについて、周波数領域での対応するx線データを示す。第1及び第2のx線ビームからのx線ビームは、図5D-5Fにおけるそれらの周波数に基づいて識別可能である。このデータは、投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、検出されたx線強度から個々の投影像データを画像処理モジュールが抽出するのに利用されることができる。
【0030】
図6において、グラフ6A-6Cはx線検出器の1ピクセルで記録された合計x線強度であり、光子毎秒で測定され、対データ収集時間であり、本書に記述される主題に従う8−ビームシステムによって生成された時間領域における秒で測定される。図6D-6Fは、周波数領域での対応するx線データを示す。しかし図6Dにおいて、収集時間が少な過ぎるため、x線ビーム波形は明確に識別可能ではない。図6E-6Fに示すように、収集時間が20秒を越える周波数領域において、x線ビームは明確に区別される。従って、対象の3次元断層画像データを生成するため、充分に高い収集時間についての投影像データが利用されることができる。
【0031】
一の態様において、本書に記述される主題に従うx線生成装置は、異なる波形を持つx線ビームを同時に生成可能な多重-ピクセル電界放出型x線源を含むことができる。前記多重-ピクセル電界放出型x線源は、本書に記述される主題に従ってx線ビームを対象に向けることができる。図7は、本書に記述される主題の態様に従い、一般に700で示される多重-ピクセル電界放出型x線源の略断面側面図である。図7に関し、x線源700は、電子を放出するための複数の電界放出型エミッタFEを含むことができる。電界放出型エミッタFEは、1又はそれ以上のカーボンナノチューブ及び/又は他の適切な電界放出型放出材料を含むことができる。更に、電界放出型エミッタFEは、個々のカソードC、導電線若しくは接触線、又は他の適切な導電性材料に接続されることができる。電界放出型エミッタはカーボンナノチューブであることができる。
【0032】
他の態様において、本書に記述される主題に従うx線生成装置は、異なるx線エネルギー特性を持つ複数のx線ビームを同時に生成するよう構成される、多重-ピクセル電界放出型x線源を含むことができる。前記複数エネルギーx線ビームは、医用画像用途の場合はCT数(number)として知られるx線減衰係数に加え、物質特性又は属性を持つ3-D断層画像を得るために使用されることができる。例えば、これらの属性は、化学組成、原子数、又は対象の密度を含むことができる。典型的な用途は、爆弾検出及び国家防衛のため対象の化学組成を検出することも含むことができる。他の例において、その弾性特性又はカルシウムのような特定の元素を含むことにより、癌組織を正常組織から区別することができ、それは、医学用途に用いるため本書に記述される主題に従う複数エネルギーx線画像システムを用いて測定されるであろう。
【0033】
対応する電子ビームEBを形成するための電子を放出するため、電界放出型エミッタFEは適切な汎用コンピュータのような適切なコントローラによって制御されることができる。一の態様において、コントローラは、電界放出型エミッタFEとゲート電極GEの間に電圧を印加する電源VS1を制御し、電界放出型エミッタFEから電子を引き出すための対応する電場を生成することができる。異なる周波数のパルス状電子ビームEBを生成するため、印加される電圧は異なる周波数でパルスを出すことができる。特に、電子を放出する放出エミッタFEを個々に制御するため、前記コントローラは複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFETs)Tを個々に操作することができる。トランジスタを個々にオン及びオフするため、前記コントローラは放出エミッタFEに印加される電圧を個々に制御することができる。トランジスタTのドレインは、複数のカソードCの対応する1つに接続されることができる。トランジスタTのゲートにそれぞれ高信号(high signal)(例えば5V)及び低信号(low signal)(例えば0V)を個々に印加することにより、トランジスタTがオン及びオフされることができる。トランジスタのゲートに高信号が印加されると、前記トランジスタのドレイン-ソースチャネル(channel)がオンになり、個々のカソードCとゲート電極GEの間に電圧差が加わる。電圧差が閾値を超えると、個々の電界放出型エミッタFEから電子が引き出されるよう、カソードCとゲート電極GEの間に電場を生成することができる。反対にトランジスタのゲートに低電圧(例えば0V)が印加されると、電界放出型エミッタFEでの電圧が電気的にフローティング(floating)し、個々のカソードCとゲート電極GEの間の電圧差が個々の電界放出型エミッタから電子を引き出す充分な強さの電場を生成できないよう、対応するドレイン-ソースチャネルがオフになる。前記コントローラは、トランジスタTのゲートに異なる周波数の電圧パルスを個々に印加可能である。このようにして前記コントローラは、放出エミッタFEからの電子ビームパルスの周波数を個々に制御することができる。
【0034】
更にx線源700は、対応する電子ビームによって衝突される複数の焦点を有するアノードAを含むことができる。個々の電界放出型エミッタFEによって放出される電子を個々のターゲット構造(target structure )TRに向かって加速するために個々の場(field)が生成されるよう、アノードAとゲート電極GEの間に電圧差が加えられることができる。ターゲット構造TRは、例えばモリブデンから製造することができる。ターゲット構造TRは、電子ビームEBによる衝突によって所望のパルス周波数を持つx線ビームを形成することができる。x線源800は、電界放出型エミッタFEから引き出される電子をターゲット構造TR上に集中させ、それにより電子ビームEBの大きさを小さくするための集束電極FELを含むことができる。集束電極FELは、電源VS2によって集束電極FELへ電圧を印加することにより制御されることができる。必要とされる流束(flux)によってゲート電圧は変化されることができる。
【0035】
電界放出型エミッタFE及びゲート電極GEは、シールされた内部を有する真空チャンバ内に収容されることができる。所望の内部圧力に到達するため、真空チャンバの内部は真空引きされることができる。電子透過性の部分又は窓を通り、電子ビームEBが真空チャンバの内部からその外部へ移動することができる。一例において、前記電子透過性の部分又は窓は、4" 直径ベリリウム(Be)x線窓であることができる。異なる波形の電子ビームによるアノードAの電子衝突によって、異なる波形のx線ビームが生成されることができる。更に、生成されたx線ビームが複数の異なる視角から対象へ向かって伝わるよう、アノードAは適切に成形され及び/又は角度を付けられることができる。
【0036】
図8は、本書に記述される主題の一態様に従い、単一、パルス状のx線ビームXBを生成するための、図7に示すx線源700の一般に800で示されるx線ユニットの略断面側面図である。x線ユニット800は、x線源700の単一ピクセルを表す。図8に関し、x線ユニット800は、カソードC上に蒸着された電界放出型エミッタFEを含むことができる。一例において、電界放出型エミッタFEは1.5mm直径のカーボンナノチューブ層であることができる。前記カーボンナノチューブ層は、金属基材の表面に蒸着されることができる。さらに、前記カーボンナノチューブ層は、電気泳動プロセスにより前記表面に蒸着されることができる。
【0037】
x線ユニット800は、電源VS1による電圧の印加によって電極(electrode)を引き出すためのゲート電極GEを含むことができる。一例において、ゲート電極GEはタングステングリッドであることができる。ゲート電極GEは誘電体スペーサDSによってカソードCから距離をあけて配置されることができる。
【0038】
一の態様において、一定のDC電圧をアノードAに印加し、可変DC電圧をゲート電極GEに印加することにより、x線ビームXBが生成されることができる。n-チャネルMOSFET Tは、電界放出型エミッタFEからの電子の放出をオン及びオフ切り替えするのに適合させられることができる。電界放出型エミッタFEがゲート電極GEと完全な電気回路を形成するよう、5V信号を印加してMOSFET Tのチャネルを開くことにより、ピクセルが作動する。電界放出型エミッタFEはMOSFET Tのドレインと電気的に結合されることができる。MOSFET Tのソースは接地されることができる。MOSFET Tのゲートは、5V DC電圧信号を供給するのに適合するデジタルI/O基板の出力に接続されることができる。
【0039】
電源VS1によって印加される電圧が放出の臨界場(critical field)を超えたとき、電界放出型エミッタFEから電子が放出されることができる。電源VS2によってアノードAとゲート電極GEとを横切って印加される電圧により、放出された電子が加速されることができる。電子は電子ビームEBを形成し、電子ビームはアノードAの領域に衝突してx線ビームXBを生成する。電子ビームEBをアノードAのターゲット焦点に集中させるため、集束電極FELに電圧が印加されることができる。
【0040】
図7を再び参照すると、x線源700内の個々のMOSFETを横切り、所定のパルス幅を有するパルス状の制御信号をスイープすることにより、アノードAのターゲット上の異なる源から走査x線ビームが生成されることができる。前記信号がスイープされた個々のMOSFETでは、前記アノードターゲット上の対応する焦点からx線ビームを生成するために前記MOSFETのチャネルが開かれることができる。
【0041】
同一のパルス周波数を有する電子をそのピクセルの小集団が放出するよう、前記ピクセルの小集団が作動されることができ、その電子は異なる焦点から同一の周波数でx線ビームを生成する。その代わりに、異なるパルス周波数を有する電子をそのピクセルの小集団が放出するよう、前記小集団ピクセルが作動されることができ、その電子は異なる焦点から異なる周波数でx線ビームを生成する。一の態様において、そのピクセルの小集団のための別個のゲート電子(gate electron)を用いることにより、前記ピクセルの小集団が作動されることができる。所望のパルス周波数と振幅とを有する電界放出電子を生成するため、対応するピクセルに所定のパルス周波数で引き出し電圧が印加されることができる。
【0042】
他の態様において、電界放出ピクセルの全てに対し共通ゲートを用いることにより、ピクセルの小集団が作動されることができる。MOSFET回路に印加される動作電圧をパルス状にすることにより、電子ビームがパルス状にされることができる。例えば、所定の周波数を有するパルス状x線ビームを生成するため、所定の周波数を有するパルス状電圧が対応するMOSFETを開くために印加されることができる。
【0043】
図9A-図9Cは、本書に記述される主題の一態様に従う2-ビーム多重化CTシステムの実験結果の合計を示すグラフである。図9A及び図9Bは、電圧対フレーム数の関数として表示された典型的な波形を示す。図9Cは、これら2つの波形の和に由来する1秒毎の光子で測定される、実験的に測定されたx線強度を示す。このデータは、投影像データを結合して対象の3次元断層画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するための画像処理モジュールによって利用されるであろう。
【0044】
図10は、画像処理モジュールIPMの要素であり得る時間フーリエ変換が前記データに実行された後の、矩形波形を持つ2つのx線ビームを示す。
【0045】
図11は、画像化される対象の周りを回転枠台を用いて回転可能なx線源及びx線検出器を示す。さらに、画像が複数の角度から得られるよう、対象ステージが回転するように構成されることもできる。
【0046】
以下の米国特許及び出願は本書に記述される主題に関連し、それらは参照することにより全体が本書に援用される。米国特許番号 6,553,096 及び 6,850,595(いずれも"電界放出カソードを用いたx線生成機構"と表題されている)に記述され、その記述を参照することにより全体が本書に援用されるx線生成装置は、少なくとも一部がナノ構造を有する材料から形成された電界放出カソードを含むx線生成装置を開示する。これらの特許に開示された前記x線生成装置は、本書に記述される主題に従って使用するためのx線生成装置の例である。
【0047】
他の典型的なx線生成装置が米国特許7,082,182( "人体及び小動物の画像化のためのコンピュータ断層撮影システム"と表題されている)に記述され、その記述は参照することにより全体が本書に援用される。この特許は、x線源及びx線検出ユニットを含むコンピュータ断層撮影装置を開示する。この特許出願に開示されたx線源及びx線検出ユニットは、本書に記述される主題に従って使用するためのx線生成装置及びx線検出器の例である。
【0048】
振動する対象のCT画像化のための典型的な方法及びシステムは、チョウ(Zhou)らの係属中の米国特許出願番号11/051,332("電界放出x線源を用いたコンピュータ断層撮影走査システム及び方法"と表題されている)に記述され、その開示は参照することにより全体が本書に援用される。この出願は、微小-焦点電界放出x線源、x線検出器、前記x線源と前記検出器の間に配置された対象ステージ、x線放射及び検出器データ収集を制御する電子制御システム及びコンピュータ、並びに異なる投影角から収集された一連の投影像を用いて前記対象の3次元画像を再構成するコンピュータソフトウェアを含む、典型的な微小-コンピュータ断層撮影スキャナーを開示する。画像化される対象の動きに関連して、x線ビームがパルス状にされる。この特許出願に開示された前記x線源及びx線検出ユニットは、本書に記述される主題に従って使用するためのx線生成装置及びx線検出器の例である。
【0049】
本書に記述される主題の範囲を逸脱しない限り、本書に記述される主題の各種の詳細を変更してよいことは理解されるであろう。さらに、前述の記述は説明を目的としたものに過ぎず、以下に説明される請求の範囲によって本書に記述される主題が定義されるように、限定を目的としたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影システムの一例のブロック図である。
【図2】本書に記述される主題に従う多重化CTシステムの透視側面図を示す。
【図3】本書に記述される主題に従う、固定された平面多重化CTシステムの正面図を示す。
【図4】本書に記述される主題に従う多重化コンピュータ断層撮影を実行する処理のフローチャートである。
【図5A】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5B】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5C】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5D】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5E】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図5F】本書に記述される主題に従う2−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6A】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6B】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6C】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6D】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6E】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図6F】本書に記述される主題に従う8−ビーム多重化CTシステムのシミュレーション結果のグラフである。
【図7】本書に記述される主題に従う、多重-ピクセル、電界放出型x線源の略断面側面図である。
【図8】本書に記述される主題に従う、単一、パルス状のx線ビームを生成するための図8に示すx線源のx線ユニットの略断面側面図である。
【図9A】x線強度検出器によって実験的に測定された2つのx線波形の合計を示すグラフである。
【図9B】x線強度検出器によって実験的に測定された2つのx線波形の合計を示すグラフである。
【図9C】x線強度検出器によって実験的に測定された2つのx線波形の合計を示すグラフである。
【図10】データにフーリエ変換を実行した後の矩形波形を有する2つのx線ビームのグラフである。
【図11】本書に記述される主題に従う、回転枠台及び可動対象ステージを有する多重化CTシステムの透視側面図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)異なる波形を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを複数の異なる視角から対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置;
(b)前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出可能なx線検出器;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出可能な画像処理モジュール:
を有する多重化コンピュータ断層撮影システム。
【請求項2】
前記x線生成装置は複数の個々に呼び出し可能なx線放出ピクセルを含み、前記x線放出ピクセルは、前記ピクセルから同時にかつ常に順番に前記x線ビームを放出するよう制御可能であると共に、前記x線ビームの波形の周波数、デューティーサイクル、及び強度を変えるよう制御可能である請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記x線生成装置は、前記対象のx線画像が360度視角から形成されるよう配置される複数の焦点を含む請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記x線生成装置は、複数の電界放出型電子放出ピクセルを有する電子源を含む請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記x線生成装置は、複数の電界放出型電子放出ピクセルを有する電子源を含み、前記ピクセルはカーボンナノチューブ又はカーボンナノワイヤを含む請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記x線検出器は、前記対象を囲むよう構成される複数の検出器要素を含む請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記画像処理モジュールは、特定用途向け集積回路(ASIC)及び組み込み画像再構成アルゴリズムを含む請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記対象の生成された3次元画像データに基づき、前記対象の3次元画像を表示可能なディスプレイを含む請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記x線検出器は、前記検出器のフレームレートが前記x線ビームのパルスレートより速くなるよう構成されるデジタル検出器を含む請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記x線生成装置と前記x線検出器とを前記対象の周りに同時に回転させて再構成用多重画像を収集するための回転枠台をさらに含む請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記対象を回転させて再構成用多重画像を収集するための対象ステージをさらに含む請求項1記載のシステム。
【請求項12】
対象の複数の投影像データを同時に記録するための多重化コンピュータ断層撮影方法であって、前記方法は:
(a)個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを、複数の視角から対象に照射するステップ;
(b)複数のパルス状x線ビームのx線強度を時間の関数として検出するステップ;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するステップ
を有する多重化コンピュータ断層撮影方法。
【請求項13】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、同時にかつ常に順番にx線ビームを放出するよう個々に変えるよう制御可能であると共に、前記x線ビームの波形の周波数、デューティーサイクル、及び強度を制御可能である複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、前記対象のx線画像が360度視角から形成されるよう配置される複数の焦点から放射される複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項12記載の方法。
【請求項15】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、カーボンナノチューブ又はカーボンナノワイヤを含む複数の電子放出ピクセルを有するx線生成装置によって生成される複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは、特定用途向け集積回路(ASIC)及び画像再構成アルゴリズムによって実行される請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは、前記対象の生成された3次元画像データに基づき、前記対象の3次元画像を表示することを含む請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記波形は、個々の前記x線ビームに対して異なる周波数を有する周期関数を含む時間波形である請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは:
(a)前記強度対時間データの時間フーリエ変換を実行するステップ;
(b)周波数空間におけるスペクトルに基づき、個々の前記x線ビームからの強度寄与を決定するステップ;及び
(c)前記周波数空間から抽出されたx線強度に基づき、個々の前記x線ビームから前記投影像データを構成するステップ
を有する請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記x線強度は、最速パルスレートでの前記x線ビームの周波数の少なくとも2倍に等しいフレームレートで検出される請求項12記載の方法。
【請求項21】
(a)個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを、複数の視角から対象に照射するステップ;
(b)前記複数のパルス状x線ビームのx線強度を時間の関数として検出するステップ;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するステップ
を含むステップを実行するための、コンピュータ読取り可能な媒体に表現されコンピュータで実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、同時にかつ常に順番にx線ビームを放出するよう個々に制御可能であると共に、前記x線ビームの波形の周波数、デューティーサイクル、及び強度を変えるよう制御可能である複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、前記対象のx線画像が360度視角から形成されるよう配置される複数の焦点から放射される複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
前記データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは、特定用途向け集積回路(ASIC)によって実行される請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
前記投影像データは個々の前記x線ビームについて強度対時間データを含み、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは:
(a)前記強度対時間データの時間フーリエ変換を実行するステップ;
(b)周波数空間におけるスペクトルに基づき、個々の前記x線ビームからの強度寄与を決定するステップ;及び
(c)前記周波数空間から抽出されたx線強度に基づき、個々の前記x線ビームから前記投影像データを構成するステップ
を有する請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
個々のビームに対して低減されたx線ビーム光束と、単一x線ビームCTシステムに比べて向上された収集速度とを有する多重化コンピュータ断層撮影システムの操作方法であって:
(a)個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを、複数の視角から対象に照射し、かつ単一x線ビームCTシステムに比べて低減されたx線光束で操作するステップ;
(b)前記複数のパルス状x線ビームのx線強度を時間の関数として検出するステップ;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するステップ
を有する方法。
【請求項27】
コンピュータ断層撮影システムの走査速度を向上させる方法であって、前記方法は:
(a)複数の個々にプログラム可能なx線ビームであって、個々のビームがx線アノード上の異なる点から発生するx線ビームを生成するよう構成されるx線源を用いて、対象の複数の投影像を異なる視角から同時に収集及び多重化するステップ;
(b)分離アルゴリズムを用いて前記複数の投影像から個々の画像を抽出するステップ;及び
(c)前記抽出された個々の画像から単一画像を再構成するステップ
を有する方法。
【請求項28】
複数の投影像を同時に収集及び多重化するステップは、周波数分割多重を含む請求項27記載の方法。
【請求項29】
(a)異なる波形及び異なるx線エネルギー特性を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置;
(b)前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出可能なx線検出器;及び
(c)投影像データを結合して前記対象のトモシンセシス3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から固有のx線エネルギー特性を持つ個々の前記投影像データを抽出可能な画像処理モジュール:
を有する多重化多重エネルギー断層画像システム。
【請求項30】
エネルギー差分断層画像データを得るため、異なるx線エネルギー特性を持つ前記投影像が処理される請求項29に記載の装置。
【請求項31】
付加的な物質特性及び/又は属性を持つ3次元断層画像を得るため、異なるx線エネルギー特性を持つ前記投影像が処理される請求項29に記載の装置。
【請求項1】
(a)異なる波形を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを複数の異なる視角から対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置;
(b)前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出可能なx線検出器;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出可能な画像処理モジュール:
を有する多重化コンピュータ断層撮影システム。
【請求項2】
前記x線生成装置は複数の個々に呼び出し可能なx線放出ピクセルを含み、前記x線放出ピクセルは、前記ピクセルから同時にかつ常に順番に前記x線ビームを放出するよう制御可能であると共に、前記x線ビームの波形の周波数、デューティーサイクル、及び強度を変えるよう制御可能である請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記x線生成装置は、前記対象のx線画像が360度視角から形成されるよう配置される複数の焦点を含む請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記x線生成装置は、複数の電界放出型電子放出ピクセルを有する電子源を含む請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記x線生成装置は、複数の電界放出型電子放出ピクセルを有する電子源を含み、前記ピクセルはカーボンナノチューブ又はカーボンナノワイヤを含む請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記x線検出器は、前記対象を囲むよう構成される複数の検出器要素を含む請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記画像処理モジュールは、特定用途向け集積回路(ASIC)及び組み込み画像再構成アルゴリズムを含む請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記対象の生成された3次元画像データに基づき、前記対象の3次元画像を表示可能なディスプレイを含む請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記x線検出器は、前記検出器のフレームレートが前記x線ビームのパルスレートより速くなるよう構成されるデジタル検出器を含む請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記x線生成装置と前記x線検出器とを前記対象の周りに同時に回転させて再構成用多重画像を収集するための回転枠台をさらに含む請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記対象を回転させて再構成用多重画像を収集するための対象ステージをさらに含む請求項1記載のシステム。
【請求項12】
対象の複数の投影像データを同時に記録するための多重化コンピュータ断層撮影方法であって、前記方法は:
(a)個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを、複数の視角から対象に照射するステップ;
(b)複数のパルス状x線ビームのx線強度を時間の関数として検出するステップ;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するステップ
を有する多重化コンピュータ断層撮影方法。
【請求項13】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、同時にかつ常に順番にx線ビームを放出するよう個々に変えるよう制御可能であると共に、前記x線ビームの波形の周波数、デューティーサイクル、及び強度を制御可能である複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、前記対象のx線画像が360度視角から形成されるよう配置される複数の焦点から放射される複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項12記載の方法。
【請求項15】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、カーボンナノチューブ又はカーボンナノワイヤを含む複数の電子放出ピクセルを有するx線生成装置によって生成される複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは、特定用途向け集積回路(ASIC)及び画像再構成アルゴリズムによって実行される請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは、前記対象の生成された3次元画像データに基づき、前記対象の3次元画像を表示することを含む請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記波形は、個々の前記x線ビームに対して異なる周波数を有する周期関数を含む時間波形である請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは:
(a)前記強度対時間データの時間フーリエ変換を実行するステップ;
(b)周波数空間におけるスペクトルに基づき、個々の前記x線ビームからの強度寄与を決定するステップ;及び
(c)前記周波数空間から抽出されたx線強度に基づき、個々の前記x線ビームから前記投影像データを構成するステップ
を有する請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記x線強度は、最速パルスレートでの前記x線ビームの周波数の少なくとも2倍に等しいフレームレートで検出される請求項12記載の方法。
【請求項21】
(a)個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを、複数の視角から対象に照射するステップ;
(b)前記複数のパルス状x線ビームのx線強度を時間の関数として検出するステップ;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するステップ
を含むステップを実行するための、コンピュータ読取り可能な媒体に表現されコンピュータで実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、同時にかつ常に順番にx線ビームを放出するよう個々に制御可能であると共に、前記x線ビームの波形の周波数、デューティーサイクル、及び強度を変えるよう制御可能である複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
複数のx線ビームを前記対象に照射するステップは、前記対象のx線画像が360度視角から形成されるよう配置される複数の焦点から放射される複数のx線ビームを、前記対象に照射することを含む請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
前記データを結合して前記対象の3次元断層画像データを生成するため、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは、特定用途向け集積回路(ASIC)によって実行される請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
前記投影像データは個々の前記x線ビームについて強度対時間データを含み、前記検出されたx線強度から個々の投影像データを抽出するステップは:
(a)前記強度対時間データの時間フーリエ変換を実行するステップ;
(b)周波数空間におけるスペクトルに基づき、個々の前記x線ビームからの強度寄与を決定するステップ;及び
(c)前記周波数空間から抽出されたx線強度に基づき、個々の前記x線ビームから前記投影像データを構成するステップ
を有する請求項21記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
個々のビームに対して低減されたx線ビーム光束と、単一x線ビームCTシステムに比べて向上された収集速度とを有する多重化コンピュータ断層撮影システムの操作方法であって:
(a)個々のx線ビームが異なる波形を持つ複数のx線ビームを、複数の視角から対象に照射し、かつ単一x線ビームCTシステムに比べて低減されたx線光束で操作するステップ;
(b)前記複数のパルス状x線ビームのx線強度を時間の関数として検出するステップ;及び
(c)投影像データを結合して前記対象の3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から個々の前記投影像データを抽出するステップ
を有する方法。
【請求項27】
コンピュータ断層撮影システムの走査速度を向上させる方法であって、前記方法は:
(a)複数の個々にプログラム可能なx線ビームであって、個々のビームがx線アノード上の異なる点から発生するx線ビームを生成するよう構成されるx線源を用いて、対象の複数の投影像を異なる視角から同時に収集及び多重化するステップ;
(b)分離アルゴリズムを用いて前記複数の投影像から個々の画像を抽出するステップ;及び
(c)前記抽出された個々の画像から単一画像を再構成するステップ
を有する方法。
【請求項28】
複数の投影像を同時に収集及び多重化するステップは、周波数分割多重を含む請求項27記載の方法。
【請求項29】
(a)異なる波形及び異なるx線エネルギー特性を持つ複数のx線ビームを同時に生成すると共に、前記x線ビームを対象へ通過させるよう構成されるx線生成装置;
(b)前記複数のx線ビームのx線強度を時間の関数として検出可能なx線検出器;及び
(c)投影像データを結合して前記対象のトモシンセシス3次元画像データを生成するため、前記x線ビームの異なる波形に基づき、前記検出されたx線強度から固有のx線エネルギー特性を持つ個々の前記投影像データを抽出可能な画像処理モジュール:
を有する多重化多重エネルギー断層画像システム。
【請求項30】
エネルギー差分断層画像データを得るため、異なるx線エネルギー特性を持つ前記投影像が処理される請求項29に記載の装置。
【請求項31】
付加的な物質特性及び/又は属性を持つ3次元断層画像を得るため、異なるx線エネルギー特性を持つ前記投影像が処理される請求項29に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−509580(P2009−509580A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532428(P2008−532428)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037046
【国際公開番号】WO2007/038306
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037046
【国際公開番号】WO2007/038306
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【Fターム(参考)】
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