説明

多重RNAポリメラーゼIIIプロモーター発現構築物

少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、各々のプロモーターがRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物が本明細書に開示される。さらに、単一および/または多重フィンガーを含みうるショートヘアピンRNA分子をコードする配列に作動可能に連結された多重ポリメラーゼIIIプロモーターを含む発現構築物が提供される。提供される構築物は、HBVおよびHCVを含むウイルス遺伝子を含む遺伝子サイレンシングに有効なRNA分子のin vivo送達に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年8月23日出願の米国仮出願第60/603,622号、および2004年11月22日出願の米国仮出願第60/629,942号の利益を主張するが、その各々はその全体が参照により本明細書で援用される。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、概して、疾患または異常な細胞機能に関係する遺伝子の阻害に有用である小さな人工的に作り出されたRNA分子の豊富な産生を、効果的に(細胞、組織、または生物内で)方向づける能力を有する新規組換えDNA分子の使用方法および組成物である。具体的には、本発明は、ヒト治療用に適切なデザインを用いる単一組換えDNA分子から多量(2、3、4、5もしくはそれ以上)の相異なる小さなRNA分子の同時の産生のための手段を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
最近、RNAiまたは二本鎖RNA(dsRNA)介在遺伝子サイレンシングの現象が認められているが、それによって細胞または生物における標的遺伝子の領域と相補的なdsRNAは、標的遺伝子の発現を阻害する(例えば、1999年7月1日公開の国際公開第99/32619号パンフレット、ファイアー(Fire)ら、米国特許第6,506,559号明細書:「二本鎖RNAによる遺伝子阻害(Genetic Inhibition by Double− Stranded RNA)」、国際公開第00/63364号パンフレット: 「ポリヌクレオチド配列を阻害するための方法および組成物(Methods and Compositions for Inhibiting the Function of Polynucleotide Sequences)」、パチュック(Pachuk)とサチシュチャンドラン(Satishchandran)、および米国仮特許出願第60/419,532号明細書、2002年10月18日出願、(国際公開第2004/035765号パンフレット、2004年4月29日公開:「二本鎖RNA構造物および構築物、およびその生成および使用の方法(Double−Stranded RNA Structures and Constructs,and Methods for Generating and Using the Same)」を参照)。二本鎖RNA(dsRNA)遺伝子サイレンシングは、核酸に基づく技術の特に面白い潜在的な応用を提供する。二本鎖RNAは多くの異なる生物において遺伝子サイレンシングを誘発することが証明されている。遺伝子サイレンシングはさまざまな機序により発生しうるが、その1つは転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)である。転写後遺伝子サイレンシングにおいて、標的遺伝子座の転写は影響されないが、RNA半減期は減少する。外因性dsRNAは、線虫、トリパノソーマ、昆虫、および哺乳類を含む植物および動物におけるPTGSの有力な誘導因子であることが証明されている。転写遺伝子サイレンシング(TGS)は、遺伝子発現が調節されうる別の機序である。TGSにおいて、遺伝子の転写は阻害される。PTGSにおいて、細胞の細胞質コンパートメントはサイレンシング複合体の機構の位置である。TGSにおいて、dsRNAのエフェクターは細胞の核コンパートメントにおける表面上の活性である。調査、治療、および予防的適応に対するdsRNA介在遺伝子サイレンシングを利用する潜在的可能性はきわめて大きい。PTGSと関連した標的mRNA分解の優れた配列および体系的な特性は、この現象を機能的ゲノムおよび薬剤開発のために理想的なものにする。
【0004】
沈黙遺伝子に対する脊椎動物におけるdsRNAを使用するための一部の現在の方法は、結果として、インターフェロン反応を含むdsRNA介在ストレス反応による望ましくない非特異的細胞毒性または細胞死をもたらす。初期の報告では、脊椎動物におけるdsRNA介在毒性は、長さが30bps超のdsRNAとのみ関連し、siRNA(21−23bpの短い合成二本鎖dsRNA分子)または30bps未満の他の二本鎖dsRNAとは関連しないことが断定的に述べられている。この独断的な初期の支持にもかかわらず、より最近の報告は、非特異的サイレンシング効果、およびインターフェロン反応など細胞ストレス反応経路の誘導を含む他の毒性も、外因性に誘導されるsiRNA分子とともに発生することを規定している。しかし、出願人は、脊椎動物細胞における毒性を誘発することが報告された長いdsRNAを含む、核酸発現構築物からのdsRNA分子の細胞内発現が、dsRNA介在毒性を誘発することがない条件下に達成されうることを明らかにした。例えば、米国特許出願公開第2004/0152117号明細書、サチシュチャンドラン(Satishchandran)、パチュク(Pachuk)、およびジョルダーノ(Giordano)を参照。したがって、dsRNAヘアピン分子を含む長短のdsRNA分子が、dsRNA分子が細胞へ外因性に導入されるのではなく宿主細胞内で発現する場合は、インターフェロンまたは他のdsRNA介在ストレス反応を誘発することなく哺乳類および他の脊椎動物において使用されうる。しかし、かかるdsRNA法の実際の実行にはdsRNA発現構築物からのdsRNA分子の効果的な細胞内産生および送達を必要とするという課題が依然としてある。
【0005】
RNAi用途および生物活性の他の機序のための核酸の使用には、核酸発現構築物から細胞内に生物的に活性な核酸を発現させることが望ましい場合が多い。かかる方法の有効性は、治療関連性に、例えば、in vivoもしくはin vitroでの所望の標的細胞または各細胞へ、所望の細胞内位置または各位置において有効な量および時間で生物活性、非毒性の形で標的宿主細胞において選択核酸を効果的に発現させる能力に依存する。これは、例えば、一次細胞、特定の細胞系、例えば、ヒト白血病細胞系であるK5625、およびin vivo用途にトランスフェクトが困難である細胞における特定の課題を示す。したがって、改善された発現系、発現構築物、および方法が真核細胞における核酸発現構築物からの核酸の細胞内発現には必要である。好ましくは、これらの方法を使用し、所望のポリペプチドおよび/または所望のRNAエフェクター分子、例えば、リボザイム、アンチセンス、三重鎖形成、および/またはin vitroでの試料、細胞培養、および無傷動物(例えば、ヒトを含む哺乳類など脊椎動物)におけるdsRNAの産生を含むそのさまざまな生物学的機能を達成することができる核酸を提供することができる。
【0006】
バイオテクノロジーの出現から数十年間に、円形プラスミド、線状化プラスミド、コスミド、ウイルスゲノム、組換えウイルスゲノム、人工的染色体等を含む多様なベクター、発現構築物、および発現系が、原核生物および/または真核生物において使用するために開発されている。細菌細胞培養におけるこれら発現系の使用により、インターフェロン(アルファ)、インターフェロン(ベータ)、エリスロポエチン、第VIII因子、ヒトインスリン、t−PA、およびヒト成長ホルモンなどの組換えタンパク質が医薬品の標準部品となった。
【0007】
バイオテクノロジーおよび分子生物学の分野において開発されているきわめて多様な発現ベクターおよび発現系の中には同じベクター上に多重プロモーターを含有する発現系がある。かかる種類の多重プロモーター発現系の1つでは、原核生物において、または真核細胞の同じ細胞内コンパートメントにおいて活性である多重プロモーター(すなわち、2以上のプロモーター)を含有するベクターが使用される。例えば、当業界のかかる多重プロモーター系は、同じ細胞の同じコンパートメントにおける2つ以上の配列(例えば、dsRNAを形成するようにデザインされた2つの明確な配列もしくはセンスおよびアンチセンス配列)の発現を可能にし、またはそれらは異なる細胞もしくは生物(例えば、原核生物および真核生物)内で同じ配列を発現し、または単一の作動可能に連結された配列のより効果的な転写を得るために使用されうる。しばしば確認されるのは、例えば、CMVおよびSV40など、例えば、2つのポリメラーゼIIプロモーターなど同じプラスミド上の多重RNAポリメラーゼIIプロモーターまたはバクテリオファージプロモーター、またはバクテリオファージT7プロモーターおよびバクテリオファージSP6プロモーターである。
【0008】
さらに、かかる多重プロモーターは、任意の数の配向および構成のベクター内に配置されうる。例えば、2つのプロモーターは、ベクターの同じ鎖から、または逆鎖からの転写を方向づけることができる。同じ鎖で方向づけされる場合は、それらはベクター内の同じ方向での転写を促進する。あるいは、多重プロモーターが逆鎖でコードされ、同じベクターにおいて互いに対して収束的または分岐的に配置されうるが、その場合、転写はそのベクター内で逆方向に進行する。さらに、さまざまな用語が、単一ベクター内の多重プロモーターの相対位置を記述するために当業界で開発されている。「タンデム」という語は、すべてが、転写される配列の5’末端の存在し、かつすべてがこれに作動可能に連結されている多重プロモーターを記述するために使用されている。タンデムプロモーターは同一または異なるプロモーターでありうる。「フランキング」プロモーターという語により、転写される配列が、各々プロモーターが、転写的に活性である場合、転写される配列の1つの鎖を転写することができるようにしてプロモーターによって5’末端および3’末端でフランキングされる多重プロモーターの配向が記述される。フランキングプロモーターは、同一または異なるプロモーターでありうる。例えば、配列の5’末端および3’末端をフランキングする一連のバクテリオファージT7RNAポリメラーゼプロモーターが、別個のセンス鎖およびアンチセンス鎖を発現し、二本鎖dsRNAを形成するための方法である(国際公開第99/32619号パンフレット、ファイアー(Fire)ら、1999年7月1日公開)。
【0009】
多重タンデムプロモーターは、例えば、米国特許第5,547,862号明細書に記載されているが、これは、異なるRNAポリメラーゼによって認められ、かつ各々がRNA転写配列の発現を促進することができる2以上のタンデムプロモーターから下流に位置したRNA転写配列を含むDNAベクターを開示している。
【0010】
酵母における哺乳類コラーゲンまたはプロコラーゲンを製造するための方法が、逆配向で単一もしくは二重、分岐異種プロモーターに作動可能に連結された2つの哺乳類コラーゲン遺伝子を含む構築物を使用する米国特許第6,472,171号明細書に開示されている。2つのコラーゲン遺伝子を促進するプロモーターは同じプロモーター、または異なるプロモーターでありうるとともに、2つのコラーゲン遺伝子の、好ましくは同時の発現を調整するために使用されうる。
【0011】
タンデムで配置され、かつ所望のポリペプチドをコードする異種核酸に作動可能に連結された二重細菌プロモーターを含有する発現ベクターが、米国特許第6,117,651号明細書に開示されている。二重プロモーターは、tac関連プロモーター由来の第1の成分(それ自体、lacとtrpプロモーターの組合せである)およびガラクトース代謝に関係する酵素をコードする細菌遺伝子またはオペロン由来の第2のプロモーター成分を含む。二重細菌プロモーター系は相乗的に作用し、大腸菌(E.coli)など原核細胞における連結配列の高レベルの転写を提供する。
【0012】
米国特許第5,874,242号明細書は、真核および原核宿主細胞において挿入されたコード配列の翻訳を提供するベクターを開示している。具体的には、かかるベクターとしては、原核細胞および真核生物における効果的な発現のために二官能性プロモーター(真核生物および原核生物において官能性)または二重プロモーター(真核生物および原核生物において個別に官能性のプロモーター)が挙げられる。
【0013】
同じベクターで使用される多重プロモーターのテーマでの変動を開示する当技術分野での無数の他の例がある。しかし、ヒトの治療的介入に有用な状況で、さまざまな長さの多重dsRNAヘアピン、例えば、shRNA、バイフィンガーおよびマルチフィンガー状のdsRNAヘアピン、長いdsRNAヘアピン等)を含む多重の小さなRNAエフェクター分子の発現に適切な新しいクラスの発現ベクターが依然として必要である。短いヘアピンdsRNAを含むベクター指向発現の短いRNAエフェクター分子が、細胞が自然に通常発生する小さなRNA分子の発現のために使用する哺乳類プロモーター型の1つの制御下に最も効果的であることは確実である。これらのプロモーターは通常、RNAポリメラーゼIIIプロモーターのファミリーを含む。さらに文献ではRNAポリメラーゼIIIプロモーターの3つの主なサブクラス、1型、2型、および3型が規定されている。各々のクラスにおけるプロモーターの典型例が、5sRNA(1型)、さまざまなトランスファーRNA(2型)、およびU6小核RNA(3型)をコードする遺伝子に見出される。別のプロモーターファミリー(RNAポリメラーゼIによって転写)も細胞において小さな構造的RNAの転写の専用にされ、しかし、このファミリーはRNAポリメラーゼIIIプロモーターよりも配列が多様ではないように思われる。最後に、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、上記の小さな構造的および調節RNAと区別されるように、タンパク質コーティングメッセンジャーRNA分子の転写において使用される。当業界で周知のプロモーター系の大多数ではRNAポリメラーゼIIプロモーターが使用されるが、これらは小さなRNAの産生に最適ではない。
【0014】
1つのプロモーターを含有するRNAポリメラーゼIIIプロモーターに基づくベクターが当業界で記載されており(例えば、米国特許第5,624,803号明細書、ヌーンベルグ(Noonberg)ら、「in vivoリゴヌクレオチドジェネレータ、およびそれら由来の三重形成オリゴヌクレオチドの結合親和性を試験する方法(In vivo oligonucleotide generator, and methods of testing the binding affinity of triplex forming oligonucleotides derived therefrom)」)、およびU6に基づくベクター系の説明が、リー(Lee)ら、Nat.Biotechnol.20:500−05頁(2002年)を参照。ユー(Yu)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:6047−52頁(2002年)は、T7およぶU6プロモーターを含む短い二本鎖siRNAのための発現系を記載している。ミヤギシ(Miyagishi)とタイラ(Taira)、Nat.Biotechnol.20:497−500頁(2002年)は、タンデムU6プロモーターを含有し、各々がsiRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを転写し、これらは次いでアニーリングされ二本鎖siRNAを形成する発現カセットを含む短い二本鎖siRNAのための発現プラスミドを記載している。かかるU6に基づく2つのsiRNAは発現カセットを含む発現プラスミドも記載されている。これらの著者らは、不安定な回文配列を含むカセットを産生するステムループまたはヘアピン型dsRNAと比べその安定性により二本鎖siRNA発現カセットを使用したことを述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
短いRNA発現ベクター系の治療有用性を可能にするために、いくつかの基準が構造および機能に関して満たされなければならない。ヒト使用のために、ベクターはベクター配列とゲノム配列との間、およびベクター自体内で発生する組換えイベントの可能性を最小限にするようにデザインされなければならない。これらのイベントは、ベクターと細胞ゲノム配列間またはベクター自体内の要素間の配列同一性(または相同性)の領域によって増強される。本発明のベクターは、多重RNA発現カセット、例えば、多重プロモーターからのshRNAおよびバイフィンガーおよび/またはマルチフィンガーdsRNA発現カセットを含むヘアピンdsRNAの使用を提供するために開発されている。これらの多重RNA pol IIIプロモーターベクターのエンジニアリングは、分子間または分子内の組換えイベントの可能性を最小限にするために組換え発現ベクター内の発現カセットの間隔および配向とともに異なるプロモーター要素の選択によって実行されている。かかる組換えプラスミドの安定性をモニタリングするアッセイが以前に記載されている(例えば、Focus 16:78、1994年、ジブコ(Gibco)BRLテクニカル・ブレティン(Technical Bulletin)(現インビトロジェン社(Invitrogen Corp.))。意外にも、細菌発酵および真核発現中のプラスミドの安定性は、例えば、多重(例えば、2、3、4、5)ヘアピンdsRNA、およびポリメラーゼIIIプロモーター配列の多重コピー、例えば、同じまたは逆配向での7SKおよびその変形に見られる回文またはヘアピン配列の多重コピーの存在にもかかわらず達成されている。
【0016】
各々のプロモーターが独立したRNA発現カセット、例えば、shRNA発現カセットの発現を制御する本発明の多重プロモーター態様は、例えば、ヒト集団内および一時的に突然変異イベントによる宿主内のウイルス変動の性質により、抗ウイルス治療のデザインにおける重要な特徴である。例えば、本発明の本態様は、いくつかの異なるdsRNAウイルス阻害剤分子を含む多剤レジメンを宿主脊椎生物の細胞または組織に送達し、ウイルス阻害のレベルが増強され、ウイルスにおいて生じ、かつウイルス複製のdsRNA阻害を無効にさせる多重の独立した突然変異イベントの可能性がきわめて小さくなるようにするための手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
一般に、本発明は、生物活性核酸、具体的には短いRNAエフェクター分子を製造するための新規核酸発現構築物およびそれらの使用する方法に関する。
【0018】
一態様において、本発明は、ミクロRNA(miRNA)を含むショートヘアピンRNA(shRNA)の発現のための方法および組成物に関するが、ここで多重およびさまざまな形態のこれら分子は、同じベクター内の2、3、4、5、もしくはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーター要素から同時に生成される。shRNA(ショートヘアピンRNA)によって、およそ400〜500個未満のヌクレオチド(nt)、好ましくは、100〜200個未満のntのRNA分子が意味されるが、ここで少なくとも15〜100個のヌクレオチド(好ましくは17〜50個のnt、より好ましくは、19〜29個のnt)の少なくとも1つの伸長が、同じRNA分子に位置した相補配列と塩基対が作られ、かつ前記配列および相補配列は、塩基相補性の2つの領域によって作られる幹構造上に一本鎖ループを形成する少なくとも約4〜7個のヌクレオチド(好ましくは、約9〜約15個のヌクレオチド)の不対領域によって分離される。shRNA分子は、約17〜約100bp、約17〜約50bp、約40〜約100bp、約18〜約40bp、もしくは約19〜約29bpの二本鎖幹領域、阻害される標的配列との相同および相補、および、塩基相補性の2つの領域によって作られる幹構造上に一本鎖ループを形成する、少なくとも約4〜7個のヌクレオチド、好ましくは、約9〜約15個のヌクレオチドの不対ループ領域を含む少なくとも1つのステムループ構造を含む。含まれるshRNAは、RNA分子が一本鎖スペーサー領域によって分離される2以上のかかるステムループ構造物を含む、二重もしくはバイフィンガーおよびマルチフィンガーヘアピンdsRNAである。一態様において、本発明は、複数のRNAポリメラーゼIIIプロモーター、好ましくは、ヒトまたは哺乳類RNAポリメラーゼIIIプロモーターを含むベクター組成物を提供するが、これらはヒト疾患を引き起こすウイルスからのRNA配列と相同性を有する多重shRNA分子の発現を制御する。複数のRNAポリメラーゼIIIプロモーターは同じまたは異なってもよい。本発明は、治療的および持続的量の2、3、4、5、もしくはそれ以上の異なる抗ウイルスdsRNAヘアピン分子を、dsRNAストレス反応を引き起こすことなく、2、3、4、5、もしくはそれ以上の独立したウイルス配列要素を使用してウイルス複製を阻害する遺伝学的に安定したやり方で宿主細胞に送達する手段を提供する。一態様において、各々のRNAポリメラーゼIIIプロモーター配列は、異なるdsRNAヘアピン分子をコードする配列に作動可能に連結されている。一態様において、1つもしくはそれ以上の前記ポリメラーゼIIIプロモーターは、単一鎖領域によって分離される2以上のshRNA(各々がステムループ構造を含む)を含むバイフィンガーまたは二重dsRNAヘアピン分子を形成するRNA転写産物を発現する。
【0019】
一態様において、本発明は、少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む発現構築物に関するが、ここで各々のプロモーターはRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている。RNAエフェクター分子は、限定されることなく、shRNA、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、三重形成RNA、人工的に選択される高親和性RNAリガンド(アプタマー)、短いヘアピン二本鎖RNA、ミクロRNA等を含む目的とするRNAでありうる。多重RNAエフェクター分子は同じまたは異なってもよいが、「少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーター」によって、出願人は、少なくとも2つのプロモーターが「異なる」プロモーターを意味し、異なるプロモーターによって、出願人は、構築物の異なる部分に位置した同じプロモーターの2つのコピーを意味することはない。
【0020】
一態様において、本発明はさらに、本明細書の図4(e)に記載されている新規ポリメラーゼIIIプロモーター配列に関する。
【0021】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヌクレオチド235−240の代わりに挿入されたSal I制限部位を有するヒト7SKプロモーターのヌクレオチド1−240を表す。
【0022】
配列番号2は、ヌクレオチド376−381の代わりに挿入されたSal I制限部位を有するヒトH1プロモーターのヌクレオチド250−381を表す。
【0023】
配列番号3は、ヌクレオチド330−335の代わりに挿入されたSal I制限部位を有するヒトU6プロモーターのヌクレオチド65−335を表す。
【0024】
配列番号4は、ヌクレオチド245−250の代わりに挿入されたSal I制限部位を有するヒト7SKプロモーターのヌクレオチド1−250を表す。
【0025】
配列番号5は、ヌクレオチド235−240の代わりに挿入されたSal I制限部位、およびSal I制限部位の4つのアデニン残基付加3’を有する新規ヒト7SKプロモーターのヌクレオチド1−244を表す。
【0026】
配列番号6は、HepBに基づくshRNA2791を表す。
【0027】
配列番号7は、HepBに基づくshRNA1907を表す。
【0028】
配列番号8は、HepBに基づくshRNA1737を表す。
【0029】
配列番号9は、HepBに基づくshRNA799を表す。
【0030】
配列番号10は、HepBに基づくshRNA1991を表す。
【0031】
配列番号11は、HepBに基づくshRNA1943を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
詳細な説明
出願人は、具体的には、すべての引例の全内容を本開示において組込む。さらに、量、濃度、もしくは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または上限の好ましい値、および下限の好ましい値のリストとして示されると、これは範囲が個別に開示されているか否かに関係なく、上範囲限界もしくは好ましい値と下範囲限界もしくは好ましい値のいずれかの対によって形成されるすべての範囲を具体的に開示していると理解すべきである。数値の範囲が本明細書で挙げられる場合、別段に記載されていない限り、その範囲はそのエンドポイント、およびその範囲内のすべての整数および分数を含むことが意図されている。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に開示された特定の値に限定されることは意図されていない。
【0033】
定義:
本開示において、以下の次の語が、本明細書でより具体的に定義されているように、当業者の通例の理解に従って使用される。
【0034】
「発現構築物」によって、目的とするRNA、例えば、目的とする下流遺伝子、コード領域、またはポリヌクレオチド配列(例えば、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードするcDNAまたはゲノムDNA断片、またはRNAエフェクター分子、例えば、アンチセンスRNA、三重形成RNA、リボザイム、人工的に選択される高親和性RNAリガンド(アプタマー)、二本鎖RNA、例えば、ステムループもしくはヘアピンdsRNA、またはバイフィンガーもしくはマルチフィンガーdsRNAまたはミクロRNA、または目的とするRNAを含むRNA分子)に作動可能に連結され、または結合されうる少なくとも1つのプロモーターを含有する構築物を転写するようにデザインされた二本鎖DNAまたは二本鎖RNAが意味される。「発現構築物」としては、1つもしくはそれ以上のプロモーターを含む二本鎖DNAまたはRNAが挙げられるが、ここで1つもしくはそれ以上のプロモーターは実際には転写されるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されていないが、その代わりにプロモーターによって転写される作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の効果的な挿入のためにデザインされている。発現構築物のレシピエント細胞へのトランスフェクションまたは変換は、発現構築物によってコードされたRNAエフェクター分子、ポリペプチド、またはタンパク質を細胞が発現することを可能にする。発現構築物は、遺伝子工学で人工的に作り出されたプラスミド、ウイルス、組換えウイルス、または、例えば、バクテリオファージ、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、もしくはヘルペスウイルス、または以下の「発現ベクター」で記載された別の実施形態由来の人工的染色体でありうる。発現構築物は生細胞において複製され、または合成的に製造されうる。本出願のために、「発現構築物」、「発現ベクター」、「ベクター」、および「プラスミド」という語は、本発明の出願を一般的、説明的な意味で明らかにするために同じ意味で使用され、かつ本発明を特定の種類の発現構築物に限定することは意図されていない。
【0035】
「発現ベクター」によって、下流遺伝子、コード領域、または転写されるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結され、または結合されうる少なくとも1つのプロモーターを含有するDNA構築物が意味される(例えば、タンパク質をコードし、場合により、コード領域、アンチセンスRNAコード領域の外側にある配列、またはコード領域の外側にあるRNA配列に作動可能に連結されるcDNAまたはゲノムDNA断片)。「発現構築物」は、1つもしくはそれ以上のプロモーターを含むDNA構築物でもありうるが、ここで1つもしくはそれ以上のプロモーターは実際には転写されるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されていないが、その代わりにプロモーターによって転写される作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の効果的な挿入のためにデザインされている。発現構築物のレシピエント細胞へのトランスフェクションまたは変換は、発現ベクターによってコードされたRNAを細胞が発現することを可能にする。発現ベクターは、遺伝子工学で人工的に作り出されたプラスミド、ウイルス、または、例えば、バクテリオファージ、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、もしくはヘルペスウイルス由来の人工的染色体でありうる。かかる発現ベクターとしては、細菌、ウイルスまたはファージからの配列が挙げられる。かかる発現ベクターとしては、染色体、エピソーム、およびウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素、およびウイルス由来ベクター、および、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝子要素、コスミドおよびファージミド由来のものなどその組合せ由来のベクターが挙げられる。したがって、1つの例となるベクターが二本鎖DNAファージベクターである。別の例となるベクターが二本鎖DNAウイルスベクターである。一態様において、本発明は、本明細書に記載された発現ベクター、プラスミド、および構築物に関するが、これらはさまざまな用途、例えば、医療および/または予防的医薬目的のためのヒトおよび/または動物使用のための科学的調査の試薬として有用であるために単離され、精製される。
【0036】
一部の態様において、2以上の発現構築物が、単一組成物として、例えば、医薬組成物、または調査試薬として使用される。一部の態様において、2以上の発現構築物は、真核細胞に送達される各々の構築物の産物間に何らかの機能的または生理的相互作用がある限り、例えば、同時に、または互いに数分間、数時間、もしくは数日間内に、例えば、互いに1日、2日、3日、もしくはさらに1週間内に投与され、一致して使用される。発現構築物は、少なくとも2つ、3つ、4つ、もしくはそれ以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーター、一部の態様においては、少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを集合的に含むが、ここで各々のプロモーターはRNAエフェクター分子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され、または連結されうる。一態様において、発現系は、単一細胞に少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む1つもしくはそれ以上の発現構築物を提供するのに役立つが、ここで各々のプロモーターはRNAエフェクター分子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される。一態様において、発現系は、単一の発現構築物または2以上の発現構築物、例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、もしくはそれ以上を含み、一部の態様においては、少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む1つもしくは複数のプラスミドであり、ここで各々のプロモーターはRNAエフェクター分子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され、または連結されうる。
【0037】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドとして周知のサブユニットの直鎖状配列で製造されるポリマー化合物を意味し、各々ヌクレオチドは3つの成分を有する。すなわち、糖(例えば、ペントースまたはヘキソース)に結合され、次いでプリン(例えば、アデニンまたはグアニン)由来、またはピリジン(例えば、チミン、シトシン、またはウラシル)由来の窒素含有塩基に連結される1つもしくはそれ以上のリン酸基である。ヌクレオチドは、隣接した糖ユニット間のリン酸塩結合によりポリヌクレオチドへ結合される。ポリヌクレオチド分子は、最も天然由来のRNA(リボ核酸)分子など一本鎖、または最も天然由来のDNA(デオキシリボ核酸)分子など二本鎖でありうる。二本鎖核酸分子において、1つの鎖の塩基は相補的に他の鎖で塩基と対が作られる。プリン塩基アデニン(A)はつねにDNAにおけるピリミジン塩基チミン(T)[またはRNAにおけるウラシル(U)]と対をなし、プリン塩基シトシン(C)はつねにピリジン塩基グアニン(G)と対をなす。各々の塩基対としては1つのプリンおよび1つのプリミジンが挙げられる。他方では1つの鎖上のアデニンがつねにチミン(またはウラシル)と対をなし、シトシンがつねにグアニンと対をなしているため、2つの鎖は互いにに対して相補であると言われ、一方の鎖の配列はその相補体鎖の配列から推定されうる。特定の天然由来の核酸分子としては、ゲノムデオキシリボ核酸(DNA)およびゲノムリボ核酸(RNA)、および後者のいくつかの異なる形態、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、およびリボソームRNA(rRNA)のほか、リボザイムなど触媒RNA構造物、およびミクロRNA(miRNA)など調節RNAが挙げられる。また、異なるRNA分子と相補(cDNA)である異なるDNA分子も含まれる。合成DNA、もしくは天然由来のDNAとのそのハイブリッドのほか、DNA/RNAハイブリッド、およびPNA分子(ガンバリ(Gambari)、Curr.Pharm.Des.7:1839−62頁(2001年)も「核酸分子」の定義の範囲内に含まれる。
【0038】
所望の核酸分子がRNAである場合、本明細書で提供される配列におけるT(チミン)がU(ウラシル)で置換されることが考えられる。例えば、shRNA2791、shRNA1907、およびshRNA1737が本明細書でDNA配列として開示されている。前記配列のいずれかからの配列を含むRNAエフェクター分子がTに置換されるUを有することが当業者には明らかであろう。
【0039】
核酸は通常、2以上の共有結合された天然由来もしくは修飾デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを有する。修飾核酸としては、例えば、非天然塩基を有するペプチド核酸およびヌクレオチドが挙げられる。
【0040】
「作動可能に連結された」という語は、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、エンハンサー、または転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的結合を指し、ここで発現制御配列は、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が発現制御配列に結合されると第2の配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。2以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む本発明の発現構築物は、1つ、2つ、もしくは前記プロモーターの各々に作動可能に連結されたshRNA、dsRNAヘアピン、またはミクロRNAをコードする核酸配列を含みうるし、または一態様において、本発明は、例えば、選択制限部位を含む、例えば、適切に選択されたクローニング部位を使用して転写される選択配列の各々の発現カセットへの簡便な挿入のためにデザインされた2、3、4、5つ、もしくは多重RNAポリメラーゼIIIプロモーターカセットを含む発現構築物に関する。
【0041】
本発明の発現構築物またはベクターにおいて、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、例えば、本発明の発現構築物において、7SKプロモーターが7SK遺伝子に作動可能に連結されておらず、U6プロモーターがU6遺伝子に作動可能に連結されておらず、かつH1プロモーターがH1遺伝子等に作動可能に連結されていない、それらがその正常な細胞環境下に作動可能に連結されている遺伝子またはRNA配列に作動可能に連結されていないという意味で「単離」される。
【0042】
「プロモーター」とは、作動可能に連結された核酸分子の転写を方向づけるのに十分な核酸配列を意味する。この定義には、プロモーター依存遺伝子発現を細胞型特異的、または一時的に特異的な方法で制御可能にするのに十分であり、または外部シグナルもしくは薬剤によって誘導性である転写制御要素(例えば、エンハンサー)も含まれ、かかる要素は、当業者には公知であるが、遺伝子の5’もしくは3’領域またはイントロン内に存在しうる。例えば、その各々が参照により本明細書で援用される、ポリメラーゼIIエンハンサー要素を使用する修飾ポリメラーゼIIIプロモーターを対象にした米国特許出願公開第2005/0130184A1号明細書、2005年6月16日、スー(Xu)ら、および調節可能なポリメラーゼIIIおよびポリメラーゼIIプロモーターを対象にした米国特許出願公開第2005/0130919A1号明細書、2005年6月16日、スー(Xu)らを参照。好ましくは、プロモーターが、核酸配列の発現を可能にする方法で、核酸配列、例えば、cDNAまたは遺伝子配列、またはエフェクターRNAコード配列に作動可能に連結されており、またはプロモーターが、転写される選択核酸配列を簡便に挿入しる発現カセットにおいて提供される。
【0043】
「RNAポリメラーゼIIIプロモーター」または「RNA pol IIIプロモーター」または「ポリメラーゼIIIプロモーター」または「pol IIIプロモーター」は、細胞のその天然の状況において、RNAポリメラーゼIIIと結合または相互作用し、その作動可能に連結された遺伝子を転写する無脊椎動物、脊椎動物、または哺乳類プロモーター、例えば、ヒト、マウス、ブタ、ウシ、霊長類、サル等、または、選択された宿主細胞においてRNAポリメラーゼIIIと相互作用し、作動可能に連結された核酸配列を転写する天然または人工的に作り出されたその変異体を意味する。U6プロモーター(例えば、ヒトU6、マウスU6)、H1プロモーター、または7SKプロモーターは、RNAポリメラーゼIIIと相互作用し、その同種RNA産物、すなわち、それぞれ、U6 RNA、H1 RNA、または7SK RNAを転写する自然に存在する無脊椎動物、脊椎動物、もしくは哺乳類プロモーターまた多型変異体もしくは突然変異体が意味される。一部の用途において好ましいのは、5’フランキング領域に存在し、TATAボックスを含み、かつ内部プロモーター配列を欠くU6、H1、および7SKを含むIII型RNA pol IIIプロモーターである。内部プロモーターは、pol III 5S rRNA、tRNA、またはVA RNA遺伝子で生じる。7SLRNA pol III遺伝子は弱い内部プロモーターおよび転写に必要な遺伝子の5’フランキング領域における配列を含有する。RNA pol IIIプロモーターとしては、脊椎動物または哺乳類、プロモーターを含む高級真核生物が挙げられるが、これらは、RNAポリメラーゼIIIの結合の前記プロモーターとの結合を維持し、または強化するが、無効にすることはなく、かつ、前記プロモーター配列に作動可能に連結されている、天然または人工的に作り出される、天然または実験室で製造される配列の変形または変化を含有する。例えば、魚、鳥、または無脊椎動物ウイルスに対するヘアピンdsRNAなどRNAエフェクター分子を発現する特定の用途のための発現構築物において使用するためのpol IIIプロモーターが、例えば、西ナイルウイルスまたはトリインフルエンザ(H5N1)などトリウイルスに対する複数のヘアピンdsRNAを転写するようにデザインされた発現構築物におけるトリpol IIIプロモーターを含み、かつその代わりにヒト宿主細胞におけるトリ宿主細胞における西ナイルウイルスまたはトリインフルエンザ(H5N1)などトリウイルスに対する複数のヘアピンdsRNAを転写するようにデザインされた発現構築物においてヒトまたは他の哺乳類pol IIIプロモーターを使用する、宿主細胞RNAポリメラーゼIIIによる最適な結合および転写のために有利に選択されうる。
【0044】
「多重ポリメラーゼIIIプロモーターベクター」または「多重pol IIIプロモーター発現構築物」もしくは同様の発現とは、少なくとも2つのポリメラーゼIIIプロモーターを含有するベクター、プラスミド、または発現構築物を意味する。一態様において、多重ポリメラーゼIIIプロモーターベクターは、少なくとも2つの異なるポリメラーゼIIIプロモーターを含有する。「異なる」ポリメラーゼIIIプロモーターとは、その多型および突然変異体など変異体を含む2つのRNAポリメラーゼIIIプロモーターを意味するが、これは特定の種において、例えば、3つの「異なる」ポリメラーゼIIIプロモーターとみなされる、ヒト7SKプロモーター、ヒトU6プロモーター、およびヒトH1プロモーターなど異なる同種転写産物の転写を促進する。また出願人が意図する「異なる」ポリメラーゼIIIプロモーターは、例えば、ヒトU6対マウスU6プロモーターが異なるプロモーターであり、ヒトH1対マウスプロモーターが異なり、またはヒト7SKプロモーターおよびマウス7SKプロモーターが異なるプロモーターとみされるなど、異なる種からのポリメラーゼIIIプロモーターに対応する。したがって、図4(a)、4(d)、および4(e)に記載されているさまざまな7SKプロモーターは、「同じ」プロモーター、7SKプロモーターの変異体とみなされる。一部の態様において、「同じ」ポリメラーゼIIIプロモーターの多重コピーが、「異なる」RNAポリメラーゼIIIプロモーターも含まれる限り本発明の発現構築物に含まれうるが、例えば、3つの7SKプロモーター(例えば、7SK 256プロモーター、2つの7SK 4Aプロモーター)および1つのH1プロモーター、または4つの7SKプロモーター(7SK 256プロモーター、3つの7SK 4Aプロモーター)および1つのU6プロモーターである。一部の態様において、本発明の発現構築物は、「異なる」ポリメラーゼIIIプロモーターなしに同じポリメラーゼIIIプロモーターの多重コピーを含有しうるが、例えば、3、4、5、6つもしくはそれ以上の7SKプロモーターであり、各々がshRNAをコードする配列に作動可能に連結されている。場合により、一部の実施形態において、他のプロモーターが2以上のポリメラーゼIIIプロモーターに加えて含まれうるが、例えば、1つもしくはそれ以上のポリメラーゼIプロモーターおよび/または1つもしくはそれ以上のポリメラーゼIIプロモーター、1つもしくはそれ以上のミトコンドリアプロモーター等である。一態様において、多重ポリメラーゼIIIプロモーター(2、3、4、5つ、もしくはそれ以上)を含む発現構築物が人工的に作り出され、多重dsRNAヘアピンまたはshRNAを発現するが、この場合、2、3、4、5つ、もしくはそれ以上の同じpol IIIプロモーターのコピーが、「異なる」RNAポリメラーゼIIIプロモーターも含まれるかどうかに関係なく使用されうる。
【0045】
真核細胞におけるRNA発現のための組換えDNAおよび合成ベクターの一般的な実施および使用において、大多数の工学的努力はタンパク質コードRNA分子の発現に対して向けられている。アンチセンスRNAの出現、およびより最近では、RNA干渉(「dsRNA」で略される二本鎖RNAによる)遺伝子サイレンシングの現象とともに、基本的に実際に触媒であるRNA分子をコードする短い非タンパク質を生成するために適切な発現系を開発する必要が生じている。これには天然の小さなRNA分子(リボソームRNA、スプライセオソームRNA、RNAse P構造的RNA成分その他など)を生成するように進化して天然プロモーターのいくつかのクラスの適合が必要であり、これらのプロモーターは一般にRNAポリメラーゼIおよびRNAポリメラーゼIII(「Pol III」)プロモーターとして分類されている。RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、長さが最大約400〜500個のヌクレオチドまで、かかる短いRNA転写産物の発現に見事に適用される。RNA pol IIIファミリー内には、さらに、構造的に明確であるが、それらが利用される細胞内コンパートメントのために特殊化も反映する3つのサブタイプ(1、2、および3)への天然プロモーターの細分がある。例えば、U6遺伝子は、RNAスプライシング中の核において機能する小さな核RNAをコードするが、さまざまなtRNA遺伝子はタンパク質合成中に細胞質において機能するtRNA分子をコードする。したがって、本発明の一態様は、1つもしくはそれ以上の3型プロモーター(例えば、U6、H1、7SK、および、本明細書に示されており、短いRNAエフェクター分子、例えば、短いdsRNAヘアピン分子の優れた発現を提供する7SK 4A配列変異体などその配列変異体)の代表、および1型または2型のサブクラスのメンバー(例えば、さまざまなtRNA遺伝子プロモーター)を含む多重pol IIIプロモーターを含有するベクターの使用および構成である。かかるプロモーターの組合せは、細胞内のshRNAおよび/またはミクロRNA産物の相対分布(核対細胞質)を調節するための手段を提供する。この局在の実験例はいくつかの刊行物、例えば、ライブズ(Lives)ら、Gene 171:203−08頁(1996年)、カワサキ(Kawasaki)とタイラ(Taira)、Nucleic Acids Res.31:700−07頁(2003年)、およびボーデン(Boden)ら、Nucleic Acids Res.31:5033−38頁(2003年)に記載されている。
【0046】
本発明の別の態様は、ベクターが多重(少なくとも2つであるが、好ましくは、3、4、5つ、もしくはそれ以上)「RNAエフェクター分子」を発現するようにデザインされている場合の多重pol IIIプロモーターの要件に関する。RNAポリメラーゼIIIプロモーターによる発現に適切なRNAエフェクター分子は、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、ヘアピンdsRNA、ミクロRNA、および二本鎖dsRNA分子を含むがこれらに限定されない、長さが約400〜500個までのヌクレオチドの短いRNA転写産物である。好ましいRNAエフェクター分子は短いヘアピンdsRNA(shRNA)分子、三重形成RNA、リボザイム、人工的に選択される高親和性RNAリガンド(アプタマー)、二本鎖RNA、例えば、ステムループもしくはヘアピンdsRNA、またはバイフィンガーもしくはマルチフィンガーdsRNAまたはミクロRNA、または目的とする短いRNA分子を含むRNAである。
【0047】
「shRNA」もしくは「ショートヘアピンRNA」または「dsRNAヘアピン」が、長さがおよそ400〜500個未満のヌクレオチド(nt)、好ましくは、長さが100〜200個未満のntを意味するが、ここで少なくとも約15〜100個のヌクレオチド(好ましくは、17〜50個のnt、より好ましくは、19〜29個のnt)の少なくとも1つの伸長が、同じRNA分子に位置した相補配列と塩基対が作られ、かつ前記配列および相補配列が、塩基相補性の2つの領域によって生成される幹構造上に一本鎖ループを形成する、少なくとも約4〜7個のヌクレオチド(好ましくは、約9〜約15個のヌクレオチド)の不対領域によって分離されている。shRNA分子は、約17〜約100bp、約17〜約50bp、約40〜約100bp、約18〜約40bp、もしくは約19〜約29bpの二本鎖幹、阻害される標的配列との相同および相補、および、塩基相補性の2つの領域によって作られる幹構造上に一本鎖ループを形成する、少なくとも約4〜7個のヌクレオチド、好ましくは、約9〜約15個のヌクレオチドの不対ループ領域を含む少なくとも1つのステムループ構造を含む。含まれるshRNAは、RNA分子が一本鎖スペーサー領域によって分離される2以上のかかるステムループ構造物を含む、二重もしくはバイフィンガーおよびマルチフィンガーヘアピンdsRNAである。出願人は、本発明の発現構築物が、同じ、および/または多重の異なるショートヘアピンRNA分子を含む1つもしくはそれ以上の、多重のコピーを発現しうることを意図している。互いと「同じ」であるとみなされるショートヘアピンRNA分子は、同じ二本鎖配列のみを含むものであり、かつ互いと「異なる」とみなされるショートヘアピンRNA分子は、各々の異なる二本鎖配列によって標的化される配列が、例えば、同じ遺伝子のプロモーター領域および転写される領域(mRNA)の配列、または2つの異なる遺伝子の配列など、同じまたは異なる遺伝子の範囲内であるかどうかに関係なく異なる二本鎖配列を含む。
【0048】
本発明の一実施形態においては、組換えベクターが人工的に作り出され、各々がポリメラーゼIIIプロモーターを含む異なる発現カセットから発現され、そのすべてを含む、1つもしくはそれ以上が、その他と異なる、多重の、例えば、3、4、5つ、もしくはそれ以上の短いヘアピンdsRNAをコードする。本発明の一態様においては、3、4、5つ、もしくはそれ以上異なるshRNA分子を転写する組換え発現ベクター(各々が保存HBV配列と相同および相補の二本鎖「幹」領域を含む)が使用されてB型肝炎ウイルス(HBV)の複製を阻害し、かつ各々のshRNA分子はpol IIIプロモーター、例えば、7SK、H1、およびU6の制御下に発現されるが、これらは異なるうちの同一のものでありうる。一態様においては、本発明の組換え発現ベクターが、1つもしくはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーター促進転写ユニットから1つもしくはそれ以上のバイフィンガーまたはマルチフィンガーdsRNAヘアピン分子、および1つもしくはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーター促進転写ユニットから1つもしくはそれ以上の単一ヘアピンdsRNA分子を発現しうる。ポリメラーゼIIIプロモーターからヘアピンdsRNAを転写する本発明のいずれかの発現構築物において、ヘアピンdsRNAは、国際公開第2004/035765号パンフレット、200年4月29日公開に記載されている単一ヘアピンdsRNA、もしくはバイフィンガー、またはマルチフィンガーdsRNAヘアピンであり、または国際公開第2004/011624号パンフレット、2004年2月5日公開に記載されている部分的または強制ヘアピン構造でありうることが理解されうるが、その各々は参照により本明細書で援用される。
【0049】
「阻害される標的配列」または「標的配列」は、アンチセンス阻害、リボザイム開裂、アプタマー阻害を含む機序により、かつ/またはRNAiもしくは二本鎖RNA(dsRNA)介在遺伝子サイレンシングにより、適切なRNAエフェクター分子の前記宿主細胞における発現によって、配列特異的な方法で阻害され、ダウンレギュレートされ、調節され、抑制され、またはサイレンシングされる宿主細胞におけるヌクレオチド配列を意味する。達成される阻害、調節、またはサイレンシングの程度は、宿主細胞に供給される発現構築物の性質および量、生成されるRNAエフェクター分子の発現の同一性、性質、およびレベル、投与後の時間等によって変動するが、例えば、標的遺伝子発現(mRNAまたはタンパク質のレベル)および/または関連標的または細胞機能における検出可能な減少、または例えば、ウイルス複製等のレベルの減少として明らかとなり、好ましくは、本発明に従って処置されていない細胞と比べ10%、33%、50%、75%、90%、95%、もしくは99%以上の阻害の程度が達成される。阻害される標的配列は、例えば、特定の癌、ハンチントン病もしくは年齢関連黄斑変性、または宿主細胞に存在する病原体関連ヌクレオチド配列などの疾患または障害と関連したヌクレオチド配列など、阻害され、またはサイレンシングされる内因性配列でありうる。一態様において、標的配列は、RNAiまたは二本鎖RNA(dsRNA)介在遺伝子サイレンシングにより阻害されるが、ここで細胞または生物における標的遺伝子の領域と相補のdsRNAが、標的遺伝子座の転写は影響されないが、RNA半減期は減少する転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、および/または遺伝子の転写が阻害される転写遺伝子サイレンシング(TGS)を含む、標的遺伝子の発現を阻害する。(例えば、国際公開第99/32619号パンフレット、1999年7月1日公開、ファイアー(Fire)ら、米国特許第6,506,559号明細書:「二本鎖RNAによる遺伝子阻害(Gnetic Inhibition by Double−Stranded RNA)」、および国際公開第00/63364号パンフレット:「ポリヌクレオチド配列の機能を阻害するための方法および組成物(Methods and Compositions for Inhibiting the Function of Polynucleotide Sequences)、パチュック(Pachuk)とサチシュチャンドラン(Satishchandran)、その中で特定されたさまざまなRNAi標的を含む、を参照)。TGS誘導のためには、選択されるdsRNA標的配列は、好ましくは、プロモーター配列、プロモーター配列のサブセット、プロモーター配列/転写開始部位配列、または別の調節領域配列、場合により、DNAまたはRNA標的におけるかかるプロモーター/調節領域に作動可能に連結された配列との組合せを含有する。PTGSの誘導のためには、選択されたdsRNA標的配列はコードおよび/または3’および/または5’UTR配列のみを含有し、または好ましくは、コードおよび/またはUTR配列および/またはプロモーター配列の組合せを含有しうる。一態様において、標的配列は、病原体、例えば、宿主細胞、例えば、無脊椎動物または脊椎動物宿主細胞、好ましくは、ヒト細胞を含む哺乳類細胞に影響を及ぼすウイルス病原体の配列となる。一態様において、標的配列は、肝炎ウイルス、例えば、HBV、HCV、およびHIV、SIV等などのウイルスなど選択宿主生物における慢性疾患と関連したウイルス病原体の核酸配列となる。
【0050】
RNA干渉は配列特異的な方法で作用するため、薬剤として使用されるRNAi分子はその標的に対して特異的でなければならない。ウイルスゲノムが環境に変化に対する抵抗に適合するように変わりやすいことが当業界で周知である。したがって、RNAiを使用するウイルスゲノム複製を分解するために、ウイルスゲノムにおける保存および固有領域を特定する必要がある。本発明に従ってサイレンシングに標的化される保存ウイルス配列が実質的に天然由来の、通常機能する宿主ポリヌクレオチド配列に非相同であることを確実にし、dsRNA分子が、本発明の方法において使用される場合、実質的な天然由来の宿主ポリヌクレオチド配列の機能に有害に影響を及ぼすことがないようにすることが同じく重要である。かかる天然由来の機能的ポリヌクレオチド配列としては、所望のタンパク質をコードする配列、および非コードであるが、健康な宿主生物において重要な調節配列である配列が挙げられる。
【0051】
shRNAデザインのためのHBVおよび/またはHCV配列の選択に関する方法および組成物は、国際公開第2005/014806号パンフレット、2005年2月17日公開、および米国仮特許出願第60/638,294号明細書、2004年12月22日出願(遺伝子サイレンシングに有用な保存HBVおよびHCV配列)のほか、米国仮特許出願第60/613,065号明細書、2004年9月24日出願(RNAiによる一本鎖の逆鎖複製中間物の標的)の参照により本明細書で援用される。多重shRNA法の主な治療上の利点は、重要な病原体、特に、HBV、HCV、およびHIVウイルスなどのウイルスが、それらの宿主または患者において、かつ集団の全体を通じて感染の経過中に突然変異を受けることである。多重の短いヘアピンdsRNAに基づく治療において多重配列標的を含むことによって、ウイルスが検出および多重shRNAによる不活性化から「逃げる」ように突然変異の可能性は事実上ゼロになる。
【0052】
同じ発現ベクターまたは発現系内への多重プロモーターの包含に関して、工学的代替物をベクターデザインへ組込み、多重プロモーターを使用する際に生じるうる2種類の問題を回避しなければならない。「転写干渉」によって例示される1つの問題は、DNAプラスミドテンプレート上の多重部位を同時に転写する酵素学およびトポロジーに関する。第2の種類の問題は、同じプラスミド内に相同配列要素の多重コピーを有することによって増強されうる組換えイベントに関連する。本発明の組成物におけるプロモーター要素の選択および配置は、これら有害な可能性の各々を最小限にし、または除去するために実施されている。さらに、これらの現象に関する詳細は以下に示されている。
【0053】
DNA分子からの転写は、成長鎖の前方およびちょうど転写された鎖の後方のテンプレートDNAの超らせん形成に影響を及ぼす(ダナウェイ(Dunaway)とオストラダー(Ostrander)、Nature 361:746−48頁(1993年)、クレブス(Krebs)とダナウェイ(Dunaway)、Mol.Cel.Biol.16:5821−5829頁(1996年))。超らせん形成におけるこれらの変化は、プラスミド全体に影響を及ぼす。超らせん形成における変化は多くのプロモーターの活性に有害な影響を及ぼし、実際に活性を無効にしうる。これは、発現構築物における1つのプロモーターからの活性が別のプロモーターの活性に対してマイナスに影響し、逆もまた同様でありうることを意味する。単一発現構築物における多重プロモーターは、両方が同じコンパートメントで活性であり、かつ同じ方向で実行中である場合、結果としてプロモーターオクルージョンまたはプロモーター干渉が生じうる。プロモーター干渉は、プロモーターが互いに近く(数百個のヌクレオチド内)に位置している場合に起こる。プロモーター上の転写因子および他の因子の核生成は、第2のプロモーター上の因子の核生成を立体的に妨げる。プロモーターオクルージョンは特にターミネーターがシストロンの末端および次のプロモーターの前に位置してない系に対して問題である。RNA pol IIは効果的な終結系を有さないため、これは同じ発現構築物での多重RNA pol IIプロモーターの使用に対する潜在的な問題である。プロモーターオクルージョンは、シストロンからの転写がシストロンの末端で終結することがない場合に結果として生じ、第2のプロモーターを通過し、そのプロモーターからの転写開始を阻止する。
【0054】
転写干渉は、同じ細胞内コンパートメントで両方とも活性である2つの活性プロモーターが収束方向で互いに直面する場合に起こる。また、下流プロモーターが上流プロモーターの存在によって抑制される転写干渉も起こりうる(その両方は同じ分子で同時に活性である)。上流プロモーターから開始される伸長転写産物は、伸長転写産物が下流プロモーターを横断すると下流プロモーターからの開始を抑制する。(プラウドフット(Proudfoot)、Nature 322:562−65(1986年))。1つのプロモーターからの転写は、その他のプロモーターからの転写に干渉し、転写産物の早期終結を引き起こしうる。
【0055】
組換えは、同じプロモーターまたは実質的な相同性を有するプロモーターの多重コピーがプラスミドへ組込まれた場合にはそうであるように、プラスミドベクター内の配列の中で相同性の実質的な伸長の配列特異的認識によって起こりうる。かかる組換えイベントは、プラスミドに基づく治療の有効性に有害な影響を及ぼし(例えば、プラスミドの制御要素を非機能的にすることによって)、かつヒト治療における前記ベクターの安全性に対する否定的な結果も有し得る。プラスミドベクターの細菌発酵中の組換えは別の問題を示す。組換えは、組換えイベントを起こしやすくする逆方向反復または回文配列の存在のためdsRNAヘアピンをコードするプラスミドにおける特定の問題として認識されている。ミヤギシ(Miyagishi)とタイラ(Taira)、Nat.Biotechnol.19:498−500(2000年)。この潜在的な問題は、2、3、4、5つ、もしくはそれ以上のヘアピン、同じプロモーターの2、3、4つ、もしくはそれ以上のコピーをコードするプラスミドまたは他のベクター、または互いに実質的な相同性を有するプロモーターにおいて増大することだけ予想されうる。したがって、一態様において、本発明は、配列において非同一である多重プロモーター要素の使用を提供する。別の態様において、本発明は多重プロモーター要素を含む発現構築物を提供するが、ここで2つ、3つ、もしくはそれ以上が同じプロモーター要素の配列または変異体配列において同一でありうるが、例えば、2つ、3つ、もしくはそれ以上の7SK、および/または修飾7SKプロモーター配列が、必要に応じて他の異なるRNA pol IIIプロモーターに加えて、単一の発現構築物で利用され、ここで各々のプロモーター配列が、同じまたは異なりうる、選択dsRNAヘアピン配列を転写する。意外にも、配列および配向において同じまたは異なりうる、2、3、4つ、もしくはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーターを含み、2、3、4、5つ、もしくはそれ以上のdsRNAヘアピン分子を転写するプラスミド発現ベクターは、本明細書で開示されているように製造され、使用されうる。
【0056】
本発明のベクターは、当業者に周知の標準の組換えDNA技術を使用して構成されうる。これらの構築物を生成するために必要な3つの主な種類の成分がある。すなわち、1)プラスミド「骨格」、2)プロモーター要素、および3)目的とするRNAをコードするヌクレオチド配列、例えば、ショートヘアピンRNA配列要素。ベクター骨格は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC、Manassas、バージニア州(VA)、米国(USA))などのリソースで、プラスミドDNAを細菌培養から単離することによって、寄託のさまざまな細菌株から新に得られる。あるいは、多目的の組換えDNA工学のために具体的にデザインされたプラスミド骨格は、ストラタジーン(Stratagene)(San Diego、カリフォルニア州(CA))、ニューイングランドバイオラブ社(New England Biolabs)(Beverly、マサチューセッツ州(MA)、またはインビトロジェン(Invitrogen)(San Diego、カリフォルニア州(CA))などさまざまな供給元から商業的に購入されうる。プラスミドは、1)複製の細菌由来、2)細菌抗生物質耐性マーカー、および3)他のDNA要素の挿入のためのクローニング部位の必須の要素を含有する。
【0057】
本発明で使用されるRNAポリメラーゼプロモーターは当業界で周知であり、ジェンバンク(GenBank)(登録商標)などの公共の配列データベースを検索することによって得られる。見出されるPol III、3型プロモーターの例としては、H1、7SK、U6、およびMRPとして周知のものが挙げられる。変異体形態、すなわち、それらが一部分であるこれらのプロモーターおよび遺伝子のコピーは、このデータベースに存在し、同等に、もしくはより有効に本発明において機能しうる。例えば、本発明の組成物および方法において有用な7SKプロモーターの代替の合成変異体形態が本出願において開示されており[図4(a)、(d)、および(e)を参照]、これらはジェンバンク(GenBank)(登録商標)データベースに示されているように、標準の7SKプロモーターに関して切断または延長された長さおよび/またはヌクレオチド置換を含む。ヒトまたは他の哺乳類のRNA Pol IIIポリメラーゼ、3型プロモーター、例えば、ヒトまたはマウス7SK、H1、およびU6が、哺乳類宿主細胞における内因性RNA IIIポリメラーゼによる発現を含む用途には好ましい。非哺乳類宿主細胞、例えば、鳥、魚、または無脊椎動物宿主細胞における内因性RNAIIIポリメラーゼによる発現を含む用途には、同種のRNA pol IIIプロモーター、例えば、鳥、魚等のプロモーターを選択することが有利でありうる。
【0058】
RNA Pol IIIプロモーターが小さな人工的に作り出されたRNA転写産物の発現に特に望ましい1つの理由は、RNA Pol III終結が、他のタンパク質因子なしに、効果的かつ正確にDNAコード鎖におけるチミン残基の短い走行で起ることであるが、TおよびTが酵母および哺乳動物における最短のPol III終結シグナルであり、Tよりも長いオリゴ(dT)ターミネーターが哺乳動物においてきわめて稀である。したがって、本発明の多重ポリメラーゼIIIプロモーター発現構築物は、適切なオリゴ(dT)終結シグナル、すなわち、4、5、6つ、もしくはそれ以上のTの配列、DNAコード鎖における各々のRNA Pol IIIプロモーターに作動可能に連結された3’を含む。例えば、人工的に作り出されたRNAをコードするDNA配列、およびRNAエフェクター分子、例えば、転写されるdsRNAヘアピン、またはRNAステムループ構造が、次いで、Pol IIIプロモーターと終結シグナルとの間に挿入されうる。
【0059】
これらのプロモーター要素に対応するDNAを単離するためには、ATCC、または商業的供給源などDNA貯蔵所からプラスミドの形で前記配列のクローン化コピーを得るのが通例である。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用し、配列の小さな部分のみを使用してプロモーターの多重コピーを生成し、「PCRプライマー」をデザインし、酵素的に増幅し、各々のプロモーターの実質的に純粋な溶体を単離することも通例であり、好都合である。特異的制限酵素および前記プライマーの適切なデザインを用いることにより、これらのプロモーター要素を挿入し(組換え)、プラスミドベクターの一部となることが通例である。当業者は、プロモーターのDNA骨格プラスミドへの挿入のための方法を実行中に、目的とする要素をさらに正確に挿入するために通常、準備が行われる。本発明の場合には、その要素は、PCRにより、もしくは合成DNA重合法、またはその2つの組合せによって調製されるDNAの短い伸長を構成し(好ましくは、長さが50、60、70、80、もしくは100未満の塩基対)、目的とするRNAエフェクター分子をコードし、例えば、一部の態様においては、阻害される標的核酸と実質的に同一および相補の約19〜約29bpのdsRNA配列(「幹」)を形成するためにハイブリダイズが可能である約19〜29個のヌクレオチド(約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、もしくは29個のヌクレオチド)の相補伸長を含むshRNA配列、例えば、細胞、ウイルス、または病原体によって生成されるDNAまたはRNA分子である。プロモーター要素のクローニングは、標準のプロモーター配列と発現されるRNA分子をコードする配列との間に挿入される制限部位または他の短い配列の導入をも含みうる。かかる要素は、プロモーターおよび/または発現RNAの機能を修飾することができ、機能が維持され、または強化される場合は新規プロモーター配列を構成しうる。例えば、図4(e)における7SKプロモーター配列は、図4(a)プロモーターに対する制限部位の4つのヌクレオチド伸長3’の挿入により図4(a)7SK要素(7SK 256)に対して機能の強化を明らかに示す。この特定の7SK変異体プロモーター配列では4つの挿入A残基が使用されれるが、4つのG残基が代替として使用されうる。
【0060】
組換えDNAプラスミドのアセンブリと同時に、細菌が「工場」として使用され、大量の最終ベクターを生成する。バクテリア大腸菌(E.coli)はプラスミド発酵のためにしばしば使用され、このために、例えば、その開示が参照により本明細書で援用される、ブラットナー(Blattener)ら、米国特許出願公開第2005/0032225号明細書に記載されているように、削減ゲノムを有する大腸菌(E.coli)株を使用することが有利でありうる。このようにして製造され、当業界で周知の方法に従って単離および精製されるベクターは、集合的に「トランスフェクション」として周知のさまざまな方法で生細胞へ導入されうる。いったん細胞内部で、プロモーター要素が遺伝子転写に利用可能な細胞機能によって認識され、RNAエフェクター分子、例えば、shRNAが生成される。
【0061】
本発明のプラスミド発現ベクターを増殖させるために有利でありうる他の細菌株としては、in vivoジーン(InvivoGen)、San Diego、カリフォルニア州(CA)から市販されている大腸菌(E.coli)GT116コンピテント細胞があげられる。GT116は、具体的には、ヘアピンRNAである1つもしくはそれ以上のRNAエフェクター分子を発現するように人工的に作り出された本発明のプラスミドなどヘアピン構造物を持っているプラスミドDNAの成長を支持するように人工的に作り出されたsbcCD欠失株である。ヘアピン構造物は、ヘアピンを認識し開裂するSbcCDと呼ばれるタンパク質複合体によるその除去により大腸菌(E.coli)において不安定であることが周知である(コネリー(Connelly)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:7969−74頁(1988年))。sbcCDおよびsbcD遺伝子は、ヘアピンまたは他の回文含有構造物を有するプラスミドのクローニングのためにその有用性を改善する大腸菌(E.coli)GT116において欠失されている。
【0062】
化学的および物理的にさまざまな手段を使用し、プラスミド発現ベクターを細胞もしくは組織または生きた生物へ導入することができ、かかるものとして、医薬として許容されるビヒクルまたは製剤中にプラスミド発現ベクターを含む組成物が医薬組成物を構成する。医薬組成物としてのプラスミドDNAの調製のために、かかる方法は、ブピカインなどの陽イオン性両親媒性局所麻酔薬、ポリアミン(例えば、スペルミン)などのプラスに帯電した核酸結合剤、または細胞膜によりDNAアップデートを促進する多くのリポソームもしくは脂質含有剤による製剤を含む。これらの発現ベクターを含む医薬組成物の他の成分は、医薬投与に適切な均質溶液中でDNAベクターの化学的安定性および溶解性を確実にする緩衝剤および安定剤などの薬剤を含む。
【0063】
RNA pol IIIプロモーターベクターは、核において作られ、主に核に保持されるRNA分子(1つもしくはそれ以上のイントロンを有し、またはイントロンを有さず、かつポリAテールを有し、またはポリAテールを有さない場合がある)をコードする。これらの核dsRNAエフェクター分子を使用し、転写遺伝子サイレンシング(TGS)を導入することができる。しかし、転写されるdsRNAの割合は細胞質に達し、したがって、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を誘導しうる。TGS誘導のために、dsRNAは、好ましくは、プロモーター配列、プロモーター配列のサブセット、プロモーター配列/転写開始部位配列、または別の調節領域配列(場合により、下記のようにDNAまたはRNA標的におけるかかるプロモーター/調節領域に作動可能に連結された配列と組合せて)を含有し、かつ核に保持される。あるいは、dsRNAはコードおよび/または3’および/または5’UTR配列のみを含有し、または好ましくは、コードおよび/またはUTR配列および/またはプロモーター配列の組合せを含有しうる。かかる「融合標的」dsRNAは、例えば、同時のTGSおよびPTGSに標的されるプロモーター配列および結合遺伝子配列をコードする。多重の短いヘアピンdsRNAを送達するようにデザインされた本発明のRNA pol III発現構築物は、理想的には、1つもしくはそれ以上のdsRNA標的プロモーターおよび/または他の調節配列のほか、1つもしくはそれ以上のdsRNA標的コード領域および/または3’UTRおよび/または5’UTRの送達に適している。また、本発明の多重コンパートメント発現系を作成するPCT/US2004/026999(国際公開第2005/040388号パンフレット)において開示された1つもしくはそれ以上のプロモーターを含むことにより、かかる「融合標的」配列が関連コンパートメント、例えば、細胞質、核、および核小体のすべてにおいて、転写を開始する必要なコンパートメント特異的プロモーターの使用によって発現されることを確実にしうる。PTGSのために、dsRNAはRNA由来の配列を含有し(例えば、mRNAからのコードまたはUTR配列)、かつプロモーター配列を含有する必要はない。また、より効果的なPTGSが、細胞質転写を可能にするプロモーター(例えば、ミトコンドリアプロモーター)を含むことによって、または結果としてより効果的に細胞質輸送RNAをもたらすベクターによって、例えば、メイスン・ファイザー(Mason−Pfizer)サルウイルスまたは別のサルレトロウイルス輸送要素のCTEなどCTE(構成性輸送要素)の包含によって誘導されるが、例えば、米国特許第5,585,263号明細書および米国特許第5,880,276号明細書を参照。必要に応じて、PTGSおよびTGSは、本明細書に記載された方法および当業者に周知の方法を使用してこれらベクターを組合せて同時に導入されうる。
【0064】
他の発現制御配列としては、適切な転写開始、終結(例えば、ポリメラーゼIIIターミネーターとして4または5つのTの配列)、プロモーター、およびエンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなど効果的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を強化する配列(例えば、コザックコンセンサス配列)、タンパク質安定性を強化する配列、および必要に応じて、コード産物の分泌を強化する配列が挙げられる。
【0065】
本明細書に記載されたベクターのいずれかまたは他の標準ベクターを使用し、本発明の所望の生物活性核酸構造物のいずれか、例えば、ミクロRNA、mRNA(必要に応じてポリペプチドへ翻訳)、アンチセンスRNA、およびリボザイムRNAを生成し、本方法で使用することができる。
【0066】
転写後遺伝子サイレンシングを強化するための方法
RNA pol IIによって核で転写されたdsRNAによってPTGSを強化するには、1つもしくはそれ以上のイントロンおよび/またはポリアデニル化シグナルをdsRNAに添加し、転写RNAのプロセッシングを可能にすることができる。このプロセッシングは、スプライシングおよびポリアデニル化が核から細胞質への輸送を促進するため好ましい。また、ポリアデニル化はRNA pol II転写産物を安定化する。これらの同じ方法は、タンパク質へ翻訳される機能的mRNAの発現に有用となる。一部の実施形態において、原核抗生物質耐性遺伝子、例えば、ゼオマイシン発現カセットがイントロンに配置されている。他の例の原核の選択可能なマーカーとしては、米国特許第5,851,804号明細書のキメラカナマイシン抵抗性遺伝子を含むカナマイシン、アミノグリコシド、テトラサイクリン、およびアンピシリンなど他の抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。ゼオマイシン遺伝子は原核プロモーターの調節制御下にあり、宿主細菌におけるゼオマイシンの翻訳は、開始ATGの上流の約10塩基対内に位置したシャイン・ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列の存在によって確実にされる。あるいは、ゼオマイシン発現カセットは、ヘアピンの逆方向反復配列間(すなわち、サイレンシングされる標的核酸との実質的な同一性を有するセンスとアンチセンス配列間)の位置に配置されうる。
【0067】
逆方向反復配列は通常、ベクターが細菌内で増殖されるとDNA組換えによってDNAから欠失されるが、少数の細菌が組換え経路において突然変異を有し、これにより細菌が逆方向反復を有するDNAを安定に維持することを可能にする。これら稀な細菌をスクリーニングするために、ゼオマイシン選択が培養に添加される。逆方向反復を除去することができる望ましくない細菌は、ゼオマイシン発現カセットも組換え中に欠失するため死滅される。無傷ゼオマイシン発現カセットを有する所望の細菌のみが選択を生き延びる。
【0068】
DNAが選択細菌から単離され、真核生物(例えば、哺乳類細胞培養)または動物(例えば、哺乳類)へRNAの発現のために挿入された後、イントロンがRNA転写産物からスプライシングされる。ゼオマイシン発現カセットがイントロンに位置している場合は、このカセットはRNAスプライシングによって除去される。非効率なスプライシングのイベントでは、ゼオマイシン発現カセットは、この遺伝子の転写および翻訳に対する真核シグナルがないため発現されない。抗生物質耐性カセットの除去は、カセットの除去によりdsRNA分子のサイズが減少するため短いdsRNA分子を必要とする用途には望ましい。ゼオマイシンカセットはさらにイントロン内の代わりにイントロンの片側にも配置されうる。この場合、ゼオマイシン発現カセットはイントロンがスプライシングされた後にも残存し、ヘアピンのループ構造に関与するために使用されうる。これらのRNA pol II転写産物は核で作られ、それらがPTGSをもたらしうる場合に細胞質に輸送される。しかし、一部のRNA分子は核に保持されうる。これらの核RNA分子はTGSをもたらしうる。TGS用途のために、コードされたdsRNAは、好ましくは、プロモーター配列またはプロモーター配列のサブセットを含有し、好ましくは、プロモーター/転写開始部位配列を含む。より効果的にRNAを核内に保持するために、イントロンおよび/またはポリアデニル化シグナルは除去されうる。
【0069】
細胞質および核の局在のための別の方法は、「上流」または内部RNA pol IIIプロモーターの使用である(例えば、Gene regulation:A Eukaryotic Perspective、第3版、デービッド・ラッチマン(David Latchman)(編)、スタンリー・トーマス(Stanley Thomes):Cheltenham、英国(UK)、1998年を参照)。これらのプロモーターは結果として核転写RNA転写産物をもたらし、その一部は輸送され、かつその一部は核に保持され、したがってPTGSおよび/またはTGSのために使用されうる。これらのプロモーターを使用し、国際公開第2004/011624号パンフレット、2004年2月5日公開に記載されている部分および強制ヘアピン構造物を含むヘアピン、または収束プロモーターの使用により、または2つのベクターもしくは2つのシストロン系の使用により二本鎖RNAを生成することができる。通常、遺伝子配列の2つの異なるコピーから、一方のプロモーターによりセンス鎖の合成が方向づけられ、他方のプロモーターによりアンチセンスRNAの合成が方向づけられる。これらのプロモーターによって転写されるRNAの長さは、一般に数百個のヌクレオチド(例えば、250−500個)に制限される。また、転写終結シグナルがこれらのベクターで使用され、効果的な転写終結を可能にしうる。
【0070】
本出願に必要な用語の多くおよび一般的な実験手順は、サンブルック(Sambrook)J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)、第1−3巻、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(N.Y.)、2000年において見られる。このマニュアルは以下、「サンブルック(Sambrook)ら」と呼ばれる。
【0071】
クローニング、DNA単離、増幅、および精製のための、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含む酵素反応のための標準方法、およびさまざまな分離方法は、例えば、参照により本明細書で援用される、以下の文献の本文におけるように分子生物学の当業者に周知であり、一般的に使用されているものである。すなわち、多くの標準方法が、オーズベル(Ausubel)ら(1994年)Current Protocols in Molecular Biology、グリーン・パブリッシング社(Green Publishing,Inc.)、およびワイリー アンド サンズ(Wiley and Sons)、New Tork、ニューヨーク州、サンブルック(Sambrook)ら(上記)、マニアティス(Maniatis)ら、(1982年)Molecular Cloning、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、Plainview、ニューヨーク、ウー(Wu)(編)(1979年)Meth.Enzymol.218、第1部、ウー(Wu)(編)(1979年)、Meth.Enzymol.68、ウー(Wu)ら(編)(1983年)Meth.Enzymol.100および101、グロスマン(Grossman)とモルダブ(Moldave)(編)Meth. Enzymol.65、ミラー(Miller)(編)(1972年)Experiments in Molecular Genetics、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、オールド(Old)とプリムローズ(Primrose)(1981年)Principles of Gene Manipulation、カリフォルニア大学プレス(University of California Press)、Berkeley、シュライフ(Schleif)とウェンシンク(1982年)Practical Methods in Mlecular Biology、グローバー(Glover)(編)(1985年)DNA Cloning第IおよびII巻、IRLプレス(IRL Press)、Oxford、英国(UK)、ハーメス(Hames)とヒギンズ(Higgins)(編)(1985年)Nucleic Acid Hybridization、IRLプレス(IRL Press)、Oxford、英国(UK)、およびセットロー(Setlow)とホレンダー(Hollaender)(1979年)Genetic Engineering:Principles and Methods、第1−4巻、プレナム・プレス(Prenum Press)、ニューヨーク、に記載されている。本明細書で使用される特に有用な方法は、「連鎖反応クローニング」と呼ばれ、米国特許第6,143,527号明細書、「架橋オリゴヌクレオチドおよびDNAリガーゼを使用する連鎖反応クローニング(Chain reaction cloning using a bridging oligonucleotide and DNA ligase)」、パチュック(Pachuk)らに記載されている。使用される場合の略語および用語は、当分野で標準とみなされ、本明細書で引用されているものなど専門誌で一般的に使用されている。
【0072】
医薬組成物
本発明の多重RNAポリメラーゼIIIプロモーター発現系は、本明細書の他の箇所に記載されているようにさまざまな医薬用途に有利に使用されうる。さまざまな実施形態において、医薬組成物は、約1ng〜約20mgの核酸、例えば、RNA、DNA、プラスミド、ウイルス、ベクター、組換えウイルス、またはその混合物を含むが、これらは所望の量の核酸分子(標的核酸と相同および相補のdsRNA、mRNA、ミクロRNA、アンチセンスRNA、三重形成RNA等)を提供する。一部の実施形態において、この組成物は、約10ng〜約10mgの核酸、約0.1mg〜約500mg、約1mg〜約350mg、約25mg〜約250mg、または約100mgの核酸を含有する。臨床薬理学の当業者は、ルーチンの実験を使用するかかる投与スケジュールに容易に達することができる。
【0073】
適切な担体としては、食塩水、緩衝食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。組成物は投与様式に適合され、例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤、噴霧剤、粉剤、または液体の形でありうる。一部の実施形態において、医薬組成物は、選択経路および投与等式に適切な1つもしくはそれ以上の医薬として許容される添加剤を含有する。これらの組成物は、限定されることなく、静脈内(IV)、静脈内(IV)、動脈内、筋内(IM)、皮下(SC)、皮内、腹腔内、髄空内を含む非経口経路のほか、局所、経口、および鼻腔内、吸入、直腸、膣、口腔、および舌下など送達の粘膜経路によって投与されうる。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、脊椎動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタを含む哺乳類)対象への投与のために、注射用の滅菌、非発熱性液体を含む液体、乳剤、粉剤、エアロゾル、錠剤、カプセル剤、腸溶性錠剤、または坐剤の形で調製される。
【0074】
本明細書に記載されているように、例えば、2、3、4つ、もしくはそれ以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下に、例えば、標的病原体、例えば、HBV、HCV、HIV、HPV、小さなポックスウイルスなどウイルスの1つもしくはそれ以上の遺伝子からの配列、もしくは別の病原体と関連した配列、またはヒト、動物、もしくは農業的利益の他の核酸配列、例えば、炭疽毒素のヒト細胞受容体配列、または哺乳類、脊椎動物、もしくは無脊椎動物の疾患または障害、例えば、黄斑変性と関連したハンチントン病、もしくはVEGF、またはヒト、ウマ、もしくはトリ宿主細胞のために人工的に作り出されたトリインフルエンザまたは西ナイルウイルス配列と実質的に相同の2、3、4つ、もしくはそれ以上の短いヘアピンdsRNA分子を発現するDNAプラスミド構築物を含む医薬組成物が調製されうる。発現構築物は、追加のプロモーター配列、例えば、バクテリオファージT7プロモーターを含みうるが、その場合、同種ポリメラーゼを共送達または共発現する必要がありうる。例えば、T7RNAポリメラーゼは、適切なプロモーター、例えば、hCMV、サル、CMV、またはSV40などRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下に同じまたは別のプラスミドから共送達および発現されうる。一部の実施形態において、同じまたは別の構築物は標的遺伝子(例えば、標的小ポックス遺伝子)を標的小ポックス遺伝子と相同のdsRNAと同時に発現する。医薬組成物は、投与の特定の経路に適切な医薬ビヒクル中に調製される。IM、SC、IV、腹腔内、皮内、髄空内、または投与の他の非経口経路のために、注射用の滅菌水など滅菌、非毒性、発熱物質を含まない水溶液、および、場合により、さまざまな濃度の塩、例えば、NaCl、および/またはブドウ糖(例えば、塩化ナトリウム液、リンガー液、ブドウ糖液、ブドウ糖および塩化ナトリウム液、および/または乳酸加リンガー液)が一般的に使用される。場合により、薬剤学の当業者に周知の他の医薬として適切な添加剤、保存剤、または緩衝剤も使用される。注射用に一回量バイアルで提供される場合は、用量は薬理学の当業者によって決定されるように変動するが、通常、5mcg〜500mcgの活性構築物を含有しうる。必要とみなされる場合は、大幅に大量を毒性なしに、例えば、5−10mgまで投与されうる。
【0075】
本発明の、および本発明に従って使用するための医薬組成物は、医薬として許容される賦形剤または担体を含みうる。本明細書で使用される「医薬として許容される担体」という語は、非毒性、不活性固体、半固体、または液体の充填剤、任意の種類のカプセル化材料または製剤補助剤を意味する。医薬として許容される担体として使用される材料の一部の例は、ラクトース、グルコース、およびショ糖などの糖、コーンスターチおよびジャガイモでんぷんなどのでんぷん、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、トラガント末、モルト、ゲラチン、タルク、カカオバターおよび坐剤用ろうなどの賦形剤、ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油、プロピレングリコールなどグリコール、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、寒天、トゥイーン(Tween)80などの界面活性剤、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張性食塩水、リンガー液、エチルアルコール、およびリン酸緩衝液のほか、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど他の非毒性適合性潤滑剤、ならびに着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存剤、および抗酸化剤も、調製者の判断に従って、組成物中に存在しうる。
【0076】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルタによるろ過によって、または滅菌水もしくは他の滅菌注射溶剤に溶解または分散されうる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を組込むことによって、使用前に滅菌されうる。
【0077】
直腸または膣投与用の組成物は、好ましくは、周囲温度下に固体であるが体温下で液体であり、したがって直腸および膣腔で融解し、微小粒子を放出するカカオバター、ポリエチレングリコール、または座剤用ろうなど適切な非刺激性賦形剤または担体と発現構築物を混合することによって調製されうる。
【0078】
経口投与用の固形の剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。かかる固形の剤形では、発現構築物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または、a)でんぷん、ラクトース、ショ糖、グルコース、マニトール、およびケイ酸など充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゲラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、およびアカシアなど結合剤、c)グリセロールなど保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカでんぷん、アルギニン酸、一部のケイ酸、および炭酸ナトリムなど崩壊剤、e)パラフィンなど溶液緩染剤、f)四級アンモニウム化合物など吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物など潤滑剤などの少なくとも1つの不活性の医薬として許容される賦形剤または担体と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、投与剤形が緩衝剤をも含んでなりうる。
【0079】
本発明による医薬組成物の局所および経皮投与用の剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、溶剤、噴霧剤、吸入剤、またはパッチが挙げられる。発現構築物は、滅菌条件下に、必要に応じて医薬として許容される担体および必要な保存剤または緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点耳剤、および点眼剤も本発明の範囲内であると考えられる。
【0080】
経皮パッチは、体内への化合物の制御された送達を提供する追加の利点を有する。かかる剤形は、発現構築物を適切な溶剤中に溶解または分散することによって製造されうる。吸収増強剤も使用し皮膚上の化合物の流動を増大させることができる。速度は、速度制御膜を提供し、またはポリマーマトリックスもしくはゲルに発現構築物を分散することによって制御されうる。
【0081】
発現構築物の投与の望ましい方法
本発明のDNAおよび/またはRNA構築物は、トランスフェクション促進剤なしに医薬ビヒクル中に調製された「裸の」DNA、RNA、またはDNA/RNAとして宿主細胞/組織/生物に投与されうる。より効果的な送達は、例えば、RNAおよび/またはDNA送達の当業者に周知のかかるポリヌクレオチドトランスフェクション促進剤を使用してDNAおよびRNA送達の当業者に周知のように達成されうる。以下は例として薬剤である。すなわち、ブピバカイン、陽イオン性脂質、リポソーム、または脂質粒子など局所麻酔剤を含む陽イオン性両親媒性化合物、ポリリシンなどポリカチオン、デンドリマーなど分岐三次元ポリカチオン、糖質、洗剤、または塩化ベンジルコニウムなどベンジルアンモニウム界面活性剤を含む界面活性剤。本発明において有用なかかる促進剤または架橋助剤の非限定的例は、米国特許第5,593,972号明細書、同第5,703,055号明細書、同第5,739,118号明細書、同第5,837,533号明細書、同第5,962,482号明細書、同第6,127,170号明細書、および同第6,379,965号明細書のほか、国際特許出願第03/093449号明細書、2003年11月13日公開(多機能的分子複合体および油/水陽イオン性両親媒性乳剤(multifunctional molecular complexes and oil/water cationic amphiphile emulsions))、および同第99/21591号明細書1999年5月6日公開(「遺伝物質の送達のための組成物および方法(Compositions and Methods for Delivery of Genetic Material)」に記載されており、その開示は参照により本明細書で援用される。米国特許第5,824,538号明細書、同第5,643,771号明細書、および同第5,877,159号明細書(参照により本明細書で援用)は、ポリヌクレオチド組成物以外の組成物、例えば、本発明の発現構築物を含有するトランスフェクトされたドナー細胞または細菌の送達を開示している。
【0082】
一部の実施形態において、本発明の発現構築物は、米国特許第4,897,355号明細書(エプシュタイン(Eppstein)ら、1987年10月29日出願)、米国特許第5,264,618号明細書(ファイグナー(Feigner)ら、1991年4月16日出願)、または米国特許第5,459,127号明細書(ファイグナー(Feigner)ら、1993年9月16日出願)に開示された組成物など、1つもしくはそれ以上の陽イオン性脂質または陽イオン性両親媒体と複合されている。他の実施形態において、発現構築物は、陽イオン性脂質を含み、かつ場合により、中性脂質など別の成分を含むリポソーム/リポソーム組成物と複合されている(例えば、米国特許第5,279,833号明細書(ローズ(Rose))、米国特許第5,283,185号明細書(エパンド(Epand))、および米国特許第5,932,241号明細書(ゴルマン(Gorman)を参照)。他の実施形態において、発現構築物は、米国特許第5,837,533号明細書、同第6,127,170号明細書、および同第6,379,965号明細書(ブーチン(Boutin))の多機能的分子複合体、または、好ましくは、米国仮特許出願第60/378,191号明細書、2002年5月6日出願(国際公開第03/093449号パンフレット、2003年11月12日公開、サチシュチャンドラン(Satishchandran))の多機能的分子複合体または油/水陽イオン性両親媒性乳剤と複合されているが、その開示は参照により本明細書で援用される。後者の出願は、核酸を含む組成物、コレステロールまたは脂肪酸を含むエンドソーム溶解スペルミン、および細胞表面分子のためのリガンドを含む標的スペルミンを開示している。組成物の正負電荷比は、包括的に0.1〜2.0、好ましくは、0.5〜1.5であり、エンドソーム溶解スペルミンは、組成物における少なくとも20%のスペルミン含有分子を構成し、標的スペルミンは組成物における少なくとも10%のスペルミン含有分子を構成する。好ましくは、正負電荷比は、包括的に0.8〜0.9など、包括的に0.8〜1.2である。標的スペルミンは、組成物を目的とする特定の細胞または組織に局在するようにデザインされている。エンドソーム溶解スペルミンは、エンドソーム小胞を崩壊させ、エンドサイオーシス中に組成物をカプセル化し、エンドソーム小胞からおよび細胞の細胞質または核への核酸の放出を促進させる。標的スペルミン/エンドソーム溶解スペルミンのかかる混合物の使用により、トランスフェクションが達成されるだけではなく、発現も増強される。
【0083】
本発明のDNA発現ベクターは、国際公開第03/093449号パンフレット、2003年11月13日公開に開示されているように、35%マンノシルスペルミン〜65%コレステリルスペルミンの混合物と複合され、免疫細胞、例えば、マクロファージの標的トランスフェクションを、マウスにIV投与される場合にはマンノース受容体によって達成されうる。HBVおよび/またはHCVに対するdsRNAの送達のためのin vivoでの肝細胞の標的トランスフェクションは、ラクトシルスペルミン(モノまたはトリラクトシル化)とコレステリルスペルミン(0.8の電荷比でDNAに対するスペルミンを含有)の混合物(例えば、35%/65%比)と複合された、本明細書に記載されているDNAまたはRNA発現ベクターを含む組成物のIV注射により達成されうる。かかる組成物は特に医薬用途に有用であり、かつ適切な滅菌、非発熱性ビヒクル、例えば、注射用、非経口投与、例えばIV(IV注入を含む)、IM、SC用、および腹腔内投与用のほか、吸入による肺送達用のエアロゾル化製剤用の緩衝食塩水中に容易に形成されうる。一部の製剤において、本発明のDNA発現構築物が、標的スペルミンなしにコレステリルスペルミンのみなどエンドソーム溶解スペルミンと複合され、腹腔内注射または注入など投与の一部の経路により、本発明のDNA構築物の有効な肺送達およびトランスフェクション、およびRNAエフェクト分子、例えば、HBVおよび/またはHCVに対して有効な多重dsRNAヘアピンの発現が達成される。
【0084】
本発明のDNA発現ベクターは、その開示が参照により本明細書で援用される、国際公開第03/093449号パンフレット、2003年11月13日公開に開示されているように、in vivoで経口または非経口、例えば、静脈内送達用のマイクロエマルジョンとしても形成されうる。製剤は、好ましくは、局所麻酔剤ブピバカイン、コレステリル、塩化ベンザルコニウム、またはオクチルスペルミンなど両親媒性化合物を含有する。マウスでのin vivo実験は、経口投与が結果として肝への重要な送達をもたらすことを示す。マイクロエマルジョンの静脈内投与は結果として、大きな毛細血管床を有する臓器、例えば、肺、肝、脾、および腎のトランスフェクションをもたらす。
【0085】
さらに他の実施形態において、発現構築物は、薬剤学および分子生物学の分野の当業者によって送達される他の組成物と複合される。一部の実施形態において、構築物またはベクターは陽イオン性脂質と複合されない。
【0086】
細胞の変換/トランスフェクションは、リポフェクション、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、マイクロインジェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシム沈殿、ウイルスまたはレトロウイルス送達、エレクトロポレーション、または微粒子銃変換を含むが、これらに限定されないさまざまな手段によって起りうる。発現構築物(DNA)は、裸のDNAまたは局所麻酔複合DNAでありうる(パチュック(Pachuk)ら、Biochim.Biophvs.Acta 1468:20−30頁(2000年))。好ましくは、真核細胞、例えば、脊椎動物(例えば、哺乳類)はin vivoであり、または少数の継代(例えば、ATCCから直接得られている細胞系の30未満の継代)、または一次細胞のみについて培養されている細胞である。
【0087】
所望の細胞
本発明の態様のさらに別の実施形態において、細胞は真核植物細胞または動物細胞である。好ましくは、動物細胞は無脊椎動物または脊椎動物細胞(例えば、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞)である。細胞はエクスビボまたはin vivoでありうる。細胞は分化または未分化であり、配偶子、胚幹細胞を含む胚細胞、体細胞、例えば、癌細胞、成人または体幹細胞、免疫系の細胞、ニューロン細胞、平滑筋または心筋細胞を含む筋細胞、ホルモン産生細胞、血液細胞、肝細胞、脂肪細胞等でありうる。一部の実施形態において、ダイサー(Dicer)またはアルゴノート(Argonaut)など遺伝子サイレンシングに関与する1つもしくはそれ以上のタンパク質が、細胞または動物において過剰発現または活性化され、遺伝子発現の阻害の量を増大する。
【0088】
哺乳類の複製起点の包含
通常、ヒト医薬用途に望ましいとみなされていないが、ヒトまたは哺乳類の複製起点が、他の用途、例えば、非臨床調査用に本発明の発現構築物に含まれうる。複製起点は、DNAプラスミドの核局在で複製されることを可能にし、したがって、発現を、発現のレベルおよび持続時間の両方を増強する。その利点は、より多くのプラスミドが核転写のために利用可能であり、したがって、より多くのエフェクター分子が作られることである(例えば、より多くのアンチセンス、mRNA、dsRNAヘアピン、ミクロRNA、および/またはより多くのdsRNA二本鎖)。多くの起点は種特異的であり、一部の哺乳類種で作用するが、全種で作用するわけではない。例えば、SV40T複製起点(例えば、クロンテック(Clontech)からのプラスミドpDsRed1−Mito由来;米国特許第5,624,820号明細書)はマウスでは機能的であるが、ヒトでは機能的ではない。したがって、この起点は、マウスで使用され、または試験されるベクター用に使用されうる。ヒト用途に使用されうる他の起点は、例えば、エプスタイン・バー核抗原(EBNA)起点などのものである(例えば、キアゲン(Qiagen)からのプラスミドpSES.TkおよびpSES.B)。これらの要素を含有するDNAベクターは市販されており、起点をコードするDNA部分は、起点を含有する制限断片を分離し、または起点をPCR増幅することによって、標準方法を使用して得られる。これらのベクターの制限マップおよび配列は公的に入手可能であり、当業者がこれらの配列を増幅し、または適切な制限断片を単離することを可能にする。これらのベクターは、SV40 TAgおよびEBNAなど適切な補助因子を発現する細胞の核で複製する。これらの因子の発現は、対応する複製起点を含有する市販ベクターの一部(例えば、キアゲン(Qiagen)からのプラスミドpSES.TkおよびpSES.B)もSV40 TagまたはEBNAを発現するため容易に達成される。複製起点を含有するこれらのDNA分子は、目的とするベクター(例えば、ヘアピンまたは二本鎖などdsRNAを発現するベクター)へ当業者によって容易にクローン化されうる。次いで、これらのベクターは、EBNAまたはTagを発現するベクターと共トランスフェクトされ、注入され、または投与され、それぞれ、EBNAまたはTag複製起点を持っているプラスミドの複製を可能にする。あるいは、EBNAまたはTagをコードする遺伝子は、標準方法を使用して目的とする細胞、動物、または生物において作用するようにデザインされた別の発現ベクターへクローン化される。EBNAおよびTagをコードする遺伝子は複製起点を持っている同じベクターへもクローン化されうる。適切な複製起点は、TagおよびEBNAに限定されておらず、例えば、レプリコール社(REPLICor Inc.)(Montreal、ケベック州(Quebec)は、付着されるDNA配列が複製するのを可能にする36個の塩基対の哺乳類起点コンセンサス配列を特定した(BioWorld Today、1999年、8月16日、第10巻、第157号で検討)。この配列は、複製を可能にする補助配列の共発現を必要としない。
【0089】
本発明の発現構築物を含有する組成物を含むキットも本発明の範囲内に含まれ、かかるキットは多重Pol IIIプロモーターを含み、転写されるRNAエフェクター分子をコードする配列の易挿入にデザインされ、または、例えば、適切に選択された制限部位の発現ベクター内の配置により、多重Pol IIIベクター促進発現カセットの易挿入にデザインされた発現ベクターを含み、かつ場合により、発現構築物の安定性、送達、使用の容易さ、または有効性を補助する溶剤、溶液、および他の組成物を含みうる。
【0090】
多重dsRNAヘアピンをコードする多重RNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む発現ベクターを使用するB型肝炎疾患の治療
ウイルス性肝炎は、それに対する十分な治療が未だ利用可能ではない主な世界の健康上の問題となっている。ワクチンがヒトB型肝炎に対する予防として利用可能であるが、ヒトC型肝炎、およびB型またはC型肝炎ウイルス、例えば、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)またはヒトC型肝炎ウイルス(HCV)のいずれかの感染に対しては利用可能ではなく、これらは多くの場合、結果として慢性ウイルス性肝疾患をもたらす。
【0091】
リバビリンおよびインターフェロンを含むC型肝炎に対する薬物療法は、部分的にのみ有効である。感染者の75−85%は慢性感染を発症することが推定され、慢性感染者の70%が肝細胞癌を含む慢性肝疾患を発症すると推定される。慢性HCV関連肝疾患は肝移植の主要な適応である。
【0092】
ヒトB型肝炎ワクチンが1982年以来利用可能であるが、世界中で3億5千万人がHBVの慢性感染者であることが推定される。米国における毎年の新しい感染の数は、1980年代の平均260,000から2001年の約78,000に減少したが、6か月超の間、B型肝炎表面抗原(HBsAg)に対して陽性者と規定されるB型肝炎保菌者が推定125万人いる。HBVのかかる保菌者は、肝硬変、肝不全、および肝細胞癌を発症するリスクが増大している。大部分の保菌者は慢性B型肝炎から肝臓疾患を発症することはないが、15%〜40%は生涯中に重篤な続発症を発症し、慢性肝疾患による死亡が慢性感染者の15−25%に発生する。したがって、HBVおよび/またはHCV感染、特に、世界中の肝疾患の全症例中75%を占めると推定される慢性感染を患う患者において有効な改善された治療薬の差し迫った必要がある。HVCに対して有効な予防的方法および薬剤もきわめて必要である。
【0093】
HBVおよびHCVはdsRNAに基づく治療(RNAi)に対するきわめて望ましいウイルス標的であるが、ウイルスの変動性と変異性およびウイルスの高い転写速度により、HBVおよびHCVは治療および/または予防的方法に対するきわめて困難な標的となっている。RNAiを使用するウイルスゲノム複製を崩壊させるために、ウイルスゲノムにおける保存および独自の領域を特定する必要がある。同時に、毒性を回避するために、遺伝子サイレンシングのために選択される配列がヒトゲノムに不在であることが重要である。本発明の多重ポリメラーゼIIIプロモーター構築物によるdsRNAヘアピン発現としての使用に適切な保存HBVおよびHCV配列が、国際公開第2005/014806号パンフレット、2005年2月17日公開、および米国仮特許出願第60/638,294号明細書、2004年12月22日出願、「遺伝子サイレンシングに有用な保存HBVおよびHCV配列(Conserved HBV and HCV Sequences Useful for Gene Silencing)」に開示されているが、その開示は参照により本明細書で援用される。
【0094】
これらのウイルスの複製酵素を阻害するなど、さまざまな小さな分子薬剤が存在するが、疾患は一般に、1)薬剤が継続的にウイルスタンパク質を複製および/または産生しうるウイルス核酸ゲノムを破壊することがなく、かつ2)薬剤は、ウイルスゲノムが突然変異し、阻害剤に対して耐性である変異体複製酵素を産生するため、時間とともに無効にされる、という点で、これらの薬剤によって、治癒されず、通常、一時的にのみ抑制されうる。
【0095】
HBVはヘパドナウイルスのファミリーに属する。HBVゲノムは、およそ3,200の塩基対の弛緩した円形の部分的に二本鎖のDNAである。エンベロープ(プレ−S/S)、コア(プレコア/コア)、ポリメラーゼ、およびXタンパク質をコードする4つの部分的に重複するオープンリーディングフレームがある。プレ−S/Sオープンリーディングフレームは、大(L)、中(M)、小(S)の表面糖タンパク質をコードする。プレコア/コアオープンリーディングフレームはプレコアポリペプチドへ翻訳されるが、これは可溶性タンパク質、B型肝炎e抗原(HBeAg)およびヌクレオカプシドタンパク質、B型肝炎コア抗原へ修飾される。コアプロモーターおよびプレコア領域における突然変異は、HBeAg産生を減少または無効にすることが証明されている。ポリメラーゼタンパク質は、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼとして機能する。Xタンパク質は有力な転写活性化因子であり、肝細胞癌発生における役割を果たしうる。
【0096】
HBVの複製周期は、ビリオンの肝細胞への付着で開始する。肝細胞の核内では、プラス鎖HBV DNAの合成が完了し、ウイルスゲノムが共有結合クローン化環状DNA(cccDNA)へ変換される。これまで試験されている大部分の抗ウイルス剤は、cccDNAに対する効果をほとんど示さず、またはまったく示さず、これは抗ウイルス療法の中断後の血清HBV DNAの急速な再出現の原因である。慢性B型肝炎の治療の目標は、HVB複製および/またはHBV抗原の発現の持続的な抑制および肝疾患の緩和を達成することである。
【0097】
本発明の多重ポリメラーゼIII発現ベクターは、ウイルス感染細胞に送達されると、ウイルス核酸産物を直接破壊する独自の能力を有する。さらに、これらの多重プロモーターベクター(ウイルスゲノムの異なる部分を標的とする複数の異なる抑制性の短いヘアピンdsRNAを発現する)のデザインおよび意図に固有かつ不可欠であるのは、多重の異なるウイルス拮抗薬を同時に生成する性質である。拮抗薬(shRNA)は、ウイルスゲノムにおける異なるゲノム配列を標的とする。これら拮抗薬の1つは、おそらくウイルスを無効にするのに十分であるが、ウイルス配列が突然変異し、1つの拮抗薬を不活性にする場合は、2、3、4つ、もしくはそれ以上の追加の拮抗薬が利用可能であるように、過剰性は「バックアップ」機序として役立つ。さらに、ウイルスゲノムにおける多重部位を標的とすることによって、疾患病理において異なる役割を果たすウイルスの異なるDNAまたはRNA産物が同時に攻撃されうる。
【0098】
例えばB型肝炎の場合、一実施形態において、本発明では、米国仮特許出願第60/638,294号明細書、2004年12月22日出願に開示された高度に保存されたHBV配列を含む、4つ、5つ、もしくはそれ以上のRNA分子(例えば、図5に記載された「799」、「1907」、「2791」、「1737」、「1991」、「1943」で呼ばれる)が使用される。例えば、「799」、「1907」、「2791」、「1737」、「1991」、「1943」の全部または一部を含む、19〜29個のヌクレオチドの配列を含む、本明細書で開示された保存HBV配列のその他は、本発明の多重ポリメラーゼIII発現ベクターによって発現されるdsRNAヘアピンに包含するために選択されうる。HBV遺伝子発現および重複転写産物の性質により、多重RNA転写産物の標的、およびウイルスタンパク質の1つ以上の複製および発現に干渉するウイルスの複製テンプレートを可能にする。shRNA分子の1つ、「1737」は独自にXタンパク質(HbX)として周知の産物をコードするRNAを無効にしうる。Xタンパク質が肝癌の確立および/または維持において役割を果たす強い証拠が生物医学文献に存在する。ウイルス複製をある程度阻害しうる既存の薬剤は、統合された細胞、またはウイルスの他の残存コピーまたは部分を除去できないため、これらの薬剤は、感染性HBVの「治癒された」患者においても、HbXの産生を遮断できず、したがって、休眠HbXによって介在される癌の発生を直接削減することができない。本発明の多重抗HBV dsRNAヘアピン発現構築物は、ウイルスの複製およびすべてのウイルスタンパク質の発現を攻撃することができるが、その一部は、結果として肝炎をもたらす炎症性発作を引き起こし、HbXなどその他は、明確であるが完全には理解されていない機序によって肝細胞癌を促進すると考えられている。本明細書で開示された原理を使用し、具体的には、HbXおよび他の残留性HBV抗原に対するdsRNAを発現する、かかる「感染後」患者を治療するために適合された本発明の構築物をデザインしうることが認められている。
【実施例】
【0099】
実施例
本発明はさらに以下の実施例で規定される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示の目的で示されていることを理解すべきである。上記の議論およびこれらの実施例から、当業者は本発明の好ましい特徴を確認することができ、かつその精神および範囲を逸脱せずに、本発明のさまざまな変更および修正を行い、それをさまざまな使用および条件に適合させることができる。
【0100】
多重Pol IIIプロモーター発現ベクターの構成および説明
標準の組換えDNA技術を使用することにより、細菌抗生物質選択マーカーおよび複製起点を含有するプラスミドを、以下の特異的プロモーター/shRNAの組合せの開始点として選択した。広く利用可能なpUC18ベクター(ヤニッシュ−ペロン(Yanish−Perron)ら、Gene 33:103−19頁(1985年)、erratum in Gene 114:81−83頁(1992年))のおよそ1kbの断片(アンピシリン耐性遺伝子と多重クローニング部位との間に細菌の複製起点を含有)を最初に米国特許第5,851,804号明細書で開示されたキメラカナマイシン耐性遺伝子と混合することによってプラスミドを製造した。インビトロジェン(Invitrogen)、クロンテック(Clontech)、ストラタジーン(Stratagene)、およびその他など供給元から得られるさまざまな市販のプラスミドベクターをベクター要素の代替源として使用し、または出発原料として使用するための出願人のベクターの代わりにし、以下のベクターの機能的に同等の変異体を製造することができる。ソース配列からベクターをアセンブルするために使用される方法としては、制限酵素消化、ゲル電気泳動、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、DNA配列決定、酵素ライゲーション、および米国特許第6,143,527号明細書に記載された「連鎖反応クローニング」、「架橋オリゴヌクレオチドを使用する連鎖反応クローニング」、パチュック(Pachuk)ら、および当業者に一般的かつ公知の他の方法が挙げられる。
【0101】
出願人は、多重プロモーター構築物を生成する前に単一Pol IIIプロモーターを調製することが目的にかなっていることを見出した。上記の複製起点制限断片(ori)のキメラカナマイシン耐性遺伝子への、次いで連続工程で所望のPol IIIプロモーター/shRNA発現カセットへの酵素結合によって単一のショートヘアピンRNA(shRNA)を発現するための基本の単一プロモーターRNA pol IIIベクターを生成した。目的とするshRNA配列を含む短い断片(およそ50〜60bp)とプロモーターを結合することによってプロモーター/shRNA発現カセットを製造し、商業的ベンダーから特注によって合成の二本鎖オリゴヌクレオチドとして製造した。多重プロモーターベクターの前駆体として単一プロモーターベクターを構成する目的は、いくつかの有利な態様を具体化することである。第一に、対象のプロモーター/shRNAペアまたは要素の検出の手段を混乱させうる他のPol III発現要素またはshRNAの非存在下に各々のプロモーター/shRNAペアの機能的確認が可能である。第二に、その他の場合には多重プロモーターベクターにおける多重アニーリング部位を有し、その状況下に配列決定を不可能にする配列決定プライマーを使用する各々カセットの全部または一部のDNA配列決定が可能である。第三に、検証された単一プロモーターカセットは、各々プロモーター要素に特異的であるクローニング制限部位ペアの意図的なデザインによって任意の数の初期多重プロモーターベクターへクローニングのために効果的に移動されうる。
【0102】
単一プロモーターベクターの十分な発現レベルおよび遺伝子サイレンシング効果の測定後、多重プロモーターベクターを単一プロモーターベクターのプロモーター/shRNAから段階的なやり方で構成し、各々が異なるshRNAの発現を促進させる2、3、4、もしくは5つのPol IIIプロモーターを含めた。したがって、shRNAを発現する有効な単一プロモーター構築物を修飾して第2のプロモーターshRNAカセットを加えた。第1のカセットに対する第2のカセットの位置(図8を参照)は、2つのプロモータープラスミドのいくつかの代わりの2プロモーター形態を生成することによって実験的に選択された(他のベクター要素に対して第1および第2のカセットの相対位置によって変動され、かつ転写の方向に対して各々のカセットの配向によって変動される)。当業者によって十分に理解されるように、単一ベクターにおける最適な発現のために2つのカセットを組合わせようとすると、環状ベクターの周りの位置およびカセットの「後方の」または「前方の」転写方向は変動し、すべてが同じ要素を含有する、8つもの異なる種類が生じうる。さらに、このベクターにおける2つの異なるプロモーターから2つの異なるshRNA要素の発現を試みると、2つのプロモーターの各々とのshRNA配列の異なる組合せにより、再びすべてが同じ要素を含有するが、異なる配置で、前記ベクターの16の異なる変異体が生じる。出願人は、これらの異なる構成が結果として各々のshRNAの明らかなレベルの発現で大きな変動が生じうることを確認した。しかし、本発明の多重ポリメラーゼIIIプロモーター構築物は、有効な遺伝子サイレンシング効果のための多重エフェクターRNA(特にshRNA)を発現する目的でこれらの要素の比較的最適な構成の効果的な選択が過剰な実験なしに達成されうることを明らかに示す。
【0103】
本発明に照らして、少なくとも3、4、5つ、もしくはそれ以上の異なるRNAエフェクター分子(例えば、shRNA分子)を1つの発現構築物から効果的に生成すること望ましい。したがって、2プロモーターベクターの前記説明は、前記構築物を加工する場合の組合せ可能性の単純な説明を提供することが意図されている。すべての置換が十分に同等に機能することがなく、かつ3つ以上のshRNAカセットでベクター生成するには、すべての可能な置換が体系的に評価されなければならない場合には多数のベクター置換の試験が必要であると考えると、出願人は、すべての要素が独立して、かつ協調的に哺乳類細胞における遺伝子サイレンシングをもたらすのに十分に強固な形で、すべてのshRNA要素が発現される多重pol IIIプロモーター発現構築物を得るために実践的に使用されうる方法(プロトコール、方式、方法、一連の工程)の確立に努めた。多重プロモーターベクターのすべての可能な置換の一部分のみを生成する工程を含み、以下の実施例で詳細に説明される、反復してプロモーターカセットを加える段階的な方法は、出願人によって、これらの多重プロモーターベクターからshRNAの同時の強固な発現を達成する信頼できる再現可能で効果的な方法であることが明らかにされている。これは、この程度での多重プロモーター要素の組合せが転写干渉(プロモーター間)の問題により受入れ難いという一般的な考えと対照的であるが、この問題はプロモーター間の反復要素およびその中のshRNA配列における逆方向反復要素により細菌中にこれらのプラスミドを維持する問題によって悪化される。
【0104】
Pol IIIプロモーターの選択:
実施例1:B型肝炎RNAの産生および複製を削減するshRNAの産生のためのトリシストロンRNAポリメラーゼIIIに基づく発現構築物。
3つの個別のRNAポリメラーゼIIIプロモーターの独立した制御下にshRNAを標的とする3つの異なるB型肝炎を発現するように一連のプラスミドを構成した。U6および7SKプロモーター/shRNAカセットをベクターの多重クローニング部位において互いに隣接して配置したが、遠位クローニング部位(カナマイシン耐性遺伝子に隣接)を第3のプロモーター配列(U6プロモーターまたはH1プロモーターの第2のコピーのいずれか)のために使用した。各々のshRNA要素の5’末端を、便利な制限部位、例えば、プロモーターの3’末端とshRNA配列の開始との間に6ntを導入することによって人工的に作り出されたSal IまたはHindIIIを使用して各々のプロモーターの3’末端と結合した。プロモーター要素の各々の配列は図4に示されている。トリシストロンベクターに配置され、2791、1907、および1737で識別された、HBV保存領域由来の3つのshRNA配列が図5に示されている。各々のshRNAgは、HBV配列の21bpで開始したのち、9個の塩基ループ要素(AGAGAACTT)、次いで第1の21bpの逆相補体である21のbp配列が続く。各々のプロモーターカセットは、転写ターミネーターとなる3’末端で5つのチミン残基の伸長を含有する。したがって、dsRNAヘアピンを含む予測転写産物は、実際に、追加の5’および3’配列を含有する。すなわち、6個の塩基から成る5’リーダー(例えば、Sal IもしくはHind IIIまたは他の選択認識配列)の後、dsRNAヘアピン配列が続いた後、短い3’末端U経路が続き、通常、2つ(1、2、3、もしくは4つ)のU残基が転写終結中に組込まれる。Sal IもしくはHind III部位の選択は便宜上のことであり、任意の数の他の制限部位、好ましくは、6または8つのカッター(例えば、Aat II、Acc65 I、Aci I、Afl II、Age I、Apa I、ApaL I、Asc I、Ase I、AsiS I、Avr II、BamH I、Bcl I、BfrB I、Bgl II、BmgB I、BseY I、BsiW I、BspD I、BspE I、BspH I、BsrB I BsrG I、BssH II、BssS I、BstB I、BstZ17 I、Cla I、Dra I、Eag I、EcoR I、EcoR V、Fse I、Fsp I、Hind III、Hpa I、Kas I、Kpn I、Mfe I、Mlu I、Msc I、Nae I、Nar I、Nco I、Nde I、NgoM IV、Nhe I、Not I、Nru I、Nsi I、Pac I、PaeR7 I、Pme I、Pml I、Pst I、PvuI、Pvu II、Sac I、Sac II、Sal I、Sbf I、Sca I、Sfo I、Sma I、SnaB I、Spe I、Sph I、Ssp I、Stu I、Swa I、Tli I、Xba I、Xho I、Xma I、好ましくはAvr I(CCTAGG)、BamH I(GGATCC)、EcoR I(GAATTC)、Hind III(AAGCTT)、Kpn I(GGTACC)、Nde I(CATATG)、Not I(GCGGCCGC)、Pst I(CTGCAG)、Sal I(GTCGAC)、またはXba I(TCTAGA))が代わりに使用されうるが、その場合、dsRNAヘアピン転写産物は異なる5’リーダー配列を含むことが認められるであろう。dsRNAヘアピンをフランキングする5’および3’転写産物配列の長さおよび組成物のこれらの差は、dsRNAヘアピンのdsRNA介在サイレンシングをもたらす能力に有害な影響を及ぼすようには思われなかったが、これは、合成dsRNA二本鎖と異なり、外因性に発現されたdsRNAヘアピン構築物が、多くの点、例えば、約19−29bs間のdsRNA「幹」の長さ、一本鎖ループの長さおよび組成物、追加の短い5’および/または3’配列の存在または非存在の点で変動にもかかわらず有効であることを示す。標的配列はHBVの多数の異なる単離株(菌株)間で同一であるものを明示的に表すように選択されたが、参照のために、shRNA配列は元のHBV単離株AYWにマッピングされ、位置779で開始し、799を通じて伸長する配列を含むshRNA 799を除く、shRNA 2791が単離株AYW(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)登録番号V01460)の位置2791で開始し、shRNA 1907がジェンバンク(GenBank)(登録商標)基準配列等の位置1907で開始するようになりうる。保存HBVおよびHCV配列の選択については、例えば、国際公開第2005/014806号パンフレット、2005年2月17日公開、および米国仮特許出願第60/638,294号明細書、2004年12月22日出願、「遺伝子サイレンシングのために有用な保存HBVおよびHCV配列(Conserved HBV and HCV Sequences Useful for Gene Silencing)」を参照。好ましくは、19〜29個のヌクレオチド、例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29個の連続保存ヌクレオチドのHBV標的配列が、本明細書で開示されているように発現されるdsRNAヘアピンにおいて使用するために選択されうる。本実施例の実験1において、プラスミドベクターは、7SKプロモーター1つのコピーおよび6プロモーターの2つのコピーを含有する。実験2におけるベクターでは、3つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーター(7SKおよびU6に加えてH1プロモーター)が使用される。両方の実験において、7SKプロモーターの配向が逆である各々のプラスミドの別の変異体が使用される。本明細書の実施例では基本のSKプロモーターが使用されたが(図4A)、しかし、7SK−eおよび7SK−4A(それぞれ、図4dおよび4e)と呼ばれる、7SKプロモーターの2つの変異体の配列は、7SKプロモーターが示されているところで置換されうる。したがって、本実施例で使用される一連のベクターは4つの異なるプラスミドを含み、4つのベクターすべては、HBV RNAがトランスフェクトされた組織培養細胞で生成される2つの実験系においてHBV RNA発現の削減における有効性について試験されている。第1の系では、ルシフェラーゼタンパク質をコードするmRNAと結合される合成RNA分子を生成するために使用される無関係の一連のプラスミド構築物(融合構築物)が使用される。評価段階にあるプラスミドベクターのHBV RNA融合構築物の発現を削減する能力は、トランスフェクトされた細胞において生成されるルシフェラーゼ酵素活性の量を測定することによって評価される。第2の実験系では、評価段階にあるプラスミドベクターであるHBVレプリコンモデルが、クローン化HBVで共トランスフェクトされる。HBV複製および機能を阻害するプラスミドベクターの能力は、HBV表面抗原(HBV sAg)の測定によって評価される。
【0105】
ルシフェラーゼ融合アッセイにおけるベクターの評価。各々ベクターのHBV RNA配列の発現を抑制する能力を評価するために、ルシフェラーゼ酵素に対する完全コード配列の3’末端に付加されたHBV RNA部分をコードする一連のベクター(「Luc融合」ベクター)とヒト横紋筋肉腫(RD)細胞を共トランスフェクトした。融合アッセイにおけるこれらのベクターの調製および使用の方法は、国際公開第2004/076629号パンフレット、2004年9月10日公開、「RNAi標的およびエフェクター分子の評価のための方法および構築物(Methods and Constructs for Evaluation of RNAi Targets and Effector Molecules)」に開示されている。これらの実験において以下の通り5つの異なるluc融合ベクターが使用された。Luc−AYMはHBVのAYW菌株の完全ゲノム配列を含有し、LucはHBV配列を欠く陰性対照ベクターであり、Luc−2791、Luc−1907およびLuc−1737は各々、それぞれ、shRNA配列2791、1907、および1737の標的を含有する短い(およそ200bp)HBV部分と融合したルシフェラーゼ遺伝子である。
【0106】
共トランスフェクションのために、細胞を6ウェルプレートへ接種し、それらのトランスフェクション時の細胞密集度が80−90%になるようにした。すべてのトランスフェクションをリポフェクタミン(商標)ポリ陽イオン性脂質/中性脂質リポソーム製剤(インビトロジェン(Invitrogen)を使用してメーカの指示に従い行った。この実験では、各々Luc融合プラスミド200ngおよび実験プラスミド800ngと細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に細胞を回収して溶解し、ブライト・グロ(Bright−Glo)(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社(Promega Imc.、Madison、ウィンスコンシン州(WI))使用してルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性は、mg総タンパク質で割った相対発光量(RLU)で表されている。
【0107】
これらの実験の結果は図3に示されている。shRNAトリシストロンベクターの4つの形態すべては、HBV配列を含有しないプラスミド対HBV−luc融合プラスミド(Luc−awy)によって得られたルシフェラーゼ活性値を比較すると明らかなようにHBV RNA発現における大幅な減少を示したが、すべてのshRNA−プロモーターカセットがベクターのすべてのプロモーター構成において機能的であったわけではない。eiRNAベクターにおいてのみベクター番号41がすべてルシフェラーゼ融合構築物におけるその同種試験配列をサイレンシングすることができる3つのshRNAであった。ここで留意すべきは、ベクター40の50との比較、および41の51との比較において、少なくとも1つのプロモーターshRNAカセットがカセットの配向を逆にすることによって修復されうることであるが、しかし、ベクター50で確認されるように、1737shRNA機能の修復は、次いで、2791shRNAの機能の喪失に付随して行われる。ベクター要素のすべての可能な置換および組合せは、ベクター41によって例証される有効な産物を達成するために試験される必要はなかった。すなわち、目標は、3つの異なるプロモーターを使用し、1つもしくはそれ以上のカセットの配向を反復的方法で所望の結果が達成されるまで変化させることによって達成された。結果においてやはり留意すべきは、これらの実験がベクター構築物の各々の相対力を評価する条件下では行われなかったことであり、すなわち、各々のshRNA産物の固有力およびその産生速度は考慮されなかった。実際に、ルシフェラーゼ活性値は、それらが3つのすべてのshRNAを発現したか、または2つのみを発現したかに関係なく、すべてのベクターによって同様の程度に減少する。しかし、抗ウイルス治療が多重核酸標的配列の(回避突然変異体への)組込みによって優れて提供されている本発明は、示されている他のベクターにおけるよりもベクター41においてはるかに大規模に実施されている。
【0108】
HBVレプリコンモデルにおけるベクターの評価。この一連の実験では、Huh7細胞(ヒト肝細胞細胞系由来)を、評価される個別のエフェクターRNA構築物といっしょに、HBVの感染性分子クローンであるpHBV2と共トランスフェクトする。トランスフェクションに使用された総DNAは2.5μgであり、全トランスフェクションにおいて2.5μgを維持するために可変量で、pHBV2 50ng、可変量の試験構築物(図6)、および不活性の「充填」DNAプラスミド(pGL3、プロメガ社(Promega Corp)、Madison、ウィスコンシン州(WI))で構成された。トランスフェクション後5〜6日の時点で、細胞培養培地を回収し、培地へ分泌されたHBV表面抗原(sAg)の量をオースザイム・モノクローナル(Ausyme Monoclonal)キット(アボット・ラボラトリーズ社(Aboott Laboratories,Inc)製)を使用して測定した。sAgの定量は、ウイルス複製およびHBV感染細胞におけるウイルス転写の間接的測定として十分に受入れられる。2つの一連の実験を行ったが、各々は異なる量のshRNA発現ベクター40番および50番の多重トランスフェクションを含む。HBVレプリコンのみを含有する対照トランスフェクションは、試験プラスミドを含まず、40番および50番のベクターの非存在下のsAg分泌の基準を提供する。簡単な「阻害率」計算が、試験プラスミドの存在下のsAg発現の比および対照(HBVレプリコンのみ)トランスフェクションにおけるsAg発現のレベルを取ることによって行われる。さらにデータの数学的変換およびグラフ表示によって、用量反応阻害曲線を構成し、IC50値(50%の表面抗原分泌が阻害されるベクターの濃度)を計算することが可能であったが、次いで、これにより多重試験におけるさまざまな試験ベクターの有効性の比較の手段の標準化が可能である。曲線、データ変換、およびIC50値は、EnzFitterソフトウェア(バイオソフト(Biosoft)、Ferguson、ミズリー州(MO)、米国(USA))を使用して生成された。
【0109】
これらの実験の結果は図6および図7に示されている。明らかに、sAg発現の100%に近い阻害が試験ベクターの中程度の用量(25ng)で達成される。さらに、sAg発現を大幅に減少させる(約30〜40%)にはきわめて少量の、1ngで十分である。これらのプラスミドに対する用量反応のより詳細な分析が図7に示されているが、ここでは阻害効果の飽和が試験ベクターの中程度の用量で達成され、かつIC50値(阻害の50%が達成されるベクターの濃度)がおよそ5ngであることが明らかである。
【0110】
実施例2:B型肝炎RNA産生および複製を削減するshRNAの生成のための4つのプロモーターRNAポリメラーゼIIIに基づく発現構築物。
図9は、4つのポリメラーゼIIIプロモーターshRNAカセットを含有するベクターpHB4の図である。図のラベリングは、プロモーター名、関連shRNA(HBVゲノムの標的)、および各々のカセットの転写の方向を示す。ベクターは、shRNAカセットを段階的に追加する反復法を使用して上記のように構成された。図10におけるデータ(実施例1で使用されたものと基本的に同様のルシフェラーゼアッセイ)は、ベクターおよび測定可能な物質(ここではshRNA−799構築物を含む、実施例1におけるようにルシフェラーゼ融合構築物)を供給された4つのプロモーター/shRNAカセットすべてが細胞におけるその標的配列のサイレンシングにおいて活性であったことを示す。図10における表は、pHB4および陽性対照としての三通りの独立した実験を示し、単一ヘアピンベクターからの結果も示されている。図12におけるデータは、同じ構築物が、試験ベクターおよびHBVレプリコンでトランスフェクトされた細胞、および実施例1で説明されたIC50測定においてHBV遺伝子発現をサイレンシングし得たことを示す。図12は、一連のベクター(図8に示されている1〜4個のshRNA)の効力および活性が、細胞培養を複製するプラスミドのさまざまなインプット濃度で評価された実験結果を要約している。第一に、HBV抗原の産生(表面抗原「sAg」または「e」抗原「eAg」)は、HBVレプリコンのみを受ける細胞におけるELISAイムノアッセイによって測定された。ベクターのいくつかの試験インプット量(濃度)の各々で、産生したELISA抗原の量を試験ベクターなしで産生したレベルと比較する。産生した抗原がベクターの供給を受けなかった細胞に対して50%減少するベクターの濃度はIC50と定義される(50%阻害を達成する阻害濃度)。IC50値が低いほど薬剤または薬物はより強力である。図は、1つのプロモーター/shRNAカセットベクターを4つのプロモーター/shRNAカセットを含有するpHB4の例に増加させると、IC50値が実質的に減少したことを示す。ここで留意すべきは、IC50値が各々shRNA分子の相対効力および転写レベルによっても影響されうるとともに、ベクターの濃度のみに対する単純な関係を反映することはなかったことであり、これは実際に4つの薬剤が細胞に入り、4つのコードされたdsRNA分子を発現した後に機能した。言い換えれば、効力の増加は、ベクターによって生成された総shRNA転写産物が相当に多数であることだけではなく、各々のshRNAが標的ウイルスRNA分子の分解によってsAgまたはeAgの削減をもたらす必要がある個別の効力も表している。図12のIC50データを図10のルシフェラーゼレポーターデータとともに総括すると、shRNAカセットの漸進的な追加は明らかに量的な形でベクターの効力を増大させ、さらにHBV標的の4つの異なった部位を阻害することによってHBV標的に対して薬理活性を増大させたことが明らかである。しかし、本発明の多重ポリメラーゼIII発現構築物の多重の個別の抗ウイルスdsRNAヘアピン分子を発現する能力がそれ自体、顕著な値であるが、それが「効力」の関連増加によるものではないことを認めることが重要である。抗ウイルス効果のレベルが高い場合、各々の追加のdsRNA分子で確認されるウイルス阻害における付加的な量的増大は、本質的に、本発明の構築物の、実質的に多剤レジメンを送達する能力よりも重要ではないとみられるが、これはウイルス耐性の発生に高い耐性があるという固有の利点を示す。
【0111】
実施例3:単一プロモーターが短いRNAを含有する2ヘアピン(バイフィンガー)を発現する多重RNAポリメラーゼIIIプロモーター。
多重Pol IIIプロモーターベクターを含む本発明の別の実施形態において、単一プロモーターから2つ以上のshRNAエフェクター分子を発現することが可能であり、したがって、RNA配列の数を増大させることにより、プロモーター要素を大節約して標的とすることが可能である。例えば、本発明を使用し、2つのみのPol IIIプロモーターを使用して3つのshRNA分子を発現し、3つのみのPol IIIプロモーターを使用して4、5、もしくは6つのshRNA分子を発現し、4つのPol IIIプロモーター等を使用して5、6、7、もしくは8つのshRNA分子を発現することができる。「二重ヘアピン」またはバイフィンガーdsRNAの発現は、ここでは、HBV標的shRNAコード配列の2つ(図5)が短いスペーサー要素によって接続され、2つの活性shRNA要素を含有する1つの長いRNA分子(長いスペーサーを使用しておよそ140個のヌクレオチド、短いスペーサーを使用しておよそ60個の塩基の全長)を生成するU6プロモーターベクターを作成することによって明らかにされ、この場合に1737および2791配列を含む。実施例1に記載されたルシフェラーゼ融合標的をこの実験では使用し、結果は図13の底面に示されている。二重ヘアピン構築物の両方の形態は、ルシフェラーゼ融合アッセイにおける両方の標的配列の大幅な分解の仲介において有効であった。これらの構築物におけるスペーサー配列の役割は表面上、ヘアピン形成配列を2つの異なったドメインへ分離し、一本鎖エンドヌクレアーゼによる開裂を促進することである。当業者は、スペーサーの多くの変異体の長さおよび配列により、適切な二重ヘアピン構造が二重標的配列分解を形成し、これをもたらすことが可能であることを認めるであろう。しかし、それ自体、二次構造を形成し、またはフランキングshRNAの配列と対をなすことが可能である長さおよび組成物のスペーサー配列が、二重ヘアピンの機能に干渉する可能性が高いことも理解されるであろう。
【0112】
実施例4:医薬製剤と結合したDNAベクターはマウス肝における取込みおよび遺伝子発現を仲介する。
サイレンシングHBV遺伝子発現について本明細書で開示された多重プロモーター発明が医薬品として適切である重要な適応が、HBV表面抗原RNAおよびタンパク質を生成したDNAベクターといっしょにマウスの血流へそれらを直接注射することによって明らかにされた。これらの実験では、pHB4ベクター(図9を参照)を、具体的には肝におけるHBV表面抗原を発現したsAgプラスミドといっしょに流体力学的尾静脈注射によってマウスへ送達した(このプラスミドは、アルブミンプロモーターの制御下にsAgを発現し、チサリ(Chisari)ら、J.Virol.60:880−87頁(1986年)によって記載されたプラスミドpAlb−hGH由来であった)。流体力学的尾静脈注射は当業者によって、生きた動物における外因性薬剤で肝組織を迅速に灌流するために一般的に使用されている。sAgはこのモデルにおける肝細胞によって分泌されるため、マウスの血清中でDNAの注射後4日間測定された。CMVプロモーター下にルシフェラーゼを発現する第3のベクターを同時注入し、sAg値の肝ルシフェラーゼへの正常化を可能にし、それによって、肝における全DNA取込みおよびDNAの発現を制御した。この実験の結果は図14に示されている。2組のマウスを同時注射のために使用し、それぞれ、0.07および0.08OD単位の血清sAgの値を得た。shRNA pHB4ベクターを含まないsAg発現ベクターのみの導入により0.47OD単位の平均値が得られたため、sAgのサイレンシングがpHB4によりin vivoで劇的に達成されたことが明らかである。
【0113】
実施例5:7SKプロモーター/shRNA連結配列の変更がshRNA発現ベクターの効力を実質的に増大させる。
ヒト7SKプロモーターはその機能のために「上流」配列(転写の開始部位のその5’)に主に依存していることが報告されているが、転写開始部位の下流に位置したヌクレオチド配列もプロモーターの機能を調節しうる(サンドロック(Sandrock)とベネッケ(Benecke)、Gene Expr.8:105−14頁(1999年)およびコパー−エムデ(Koper−Emde)ら、Biol.Chem.385:791−94頁(2004年)を参照。出願人は以前、遺伝子サイレンシングのための配列を標的とするdsRNAヘアピン分子が、標的配列に対応しないいくつかの追加のヌクレオチドがRNAポリメラーゼIII転写開始部位と標的配列の開始との間に置かれる場合でもしばしば依然として機能的であることを確認した。これにより、制限部位またはスペーサー要素が追加されているPol IIIプロモーター/shRNAカセットの改善された機能の維持が可能である。出願人は、天然プロモーターの第1の234個の塩基を使用し、次いでSal I制限部位認識配列(または、好ましくは、制限部位認識配列を含む別の6個のヌクレオチド)を含む10個の合成塩基、および4A残基を使用する新規7SKプロモーター要素(図4e)を作成した。この新規プロモーター配列要素は7SK4aと呼ばれ、基本的に転写される配列GTCGACAAAAを挿入し、したがって、図5に示されているshRNA分子の5’末端に付着されている。図11に示されているように、3つのshRNA配列(1737、1943、および789)を3つの異なるプロモーター状況、すなわち、U6プロモーター(図4c)、7SKプロモーター(図4a)、および7SK4aプロモーター(図4e)におけるHBV抗原発現に対するサイレンシング効果について試験した。9つの構築物の効力は、先の実施例で記載されたsAgおよびeAgのIC50の測定によって評価された。試験された3つのshRNA配列のすべてにより、7SK4a配置はその他の2つのプロモーターより大幅に低いIC50値を示した。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】3種類の異なるHBV由来のショートヘアピンRNA分子の発現を制御する2つの異なる真核RNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む3つのRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含有するトリシストロンプラスミドベクターを示す概略図である。7SKプロモーターは、shRNA1737の発現を促進し、U6プロモーターの1つのコピーがsh2791を促進し、かつU6プロモーターの第2のコピーはshRNA1907の発現を促進する。No.40のベクターにおいて、7SK_1737転写ユニットは、U6_2791およびU6_1907転写ユニットと同じ機能的配向で配置されている。50番のベクターにおいて、7SK_1737転写ユニットの配向は、その転写の方向がU6_2791転写ユニットの方へ配向されるように「フリップ」されている。
【図2】3種類の異なるHBV由来のショートヘアピンRNA分子の発現を制御する3つの異なる真核RNAポリメラーゼIIIプロモーターを含むトリシストロンプラスミドベクターを示す概略図である。7SKプロモーターは、shRNA1737の発現を促進し、U6プロモーターがshRNA2791を促進し、かつH1プロモーターはshRNA1907の発現を促進する。No.41のベクターにおいて、7SK_1737転写ユニットは、U6_2791およびH1_1907転写ユニットと同じ機能的配向で配置されている。No.51のベクターにおいて、7SK_1737転写ユニットの配向は、その転写の方向がU6_2791転写ユニットの方へ配向されるように「フリップ」されている。
【図3】3種類の異なる短いdsRNAヘアピン分子を発現するトリシストロン構築物のトランスフェクションによるB型肝炎標的RNAレベルの特異的削減を示す結果を示す図である。アッセイではHepB配列を機能的ルシフェラーゼmRNAと融合させる合成RNA標的が使用される(詳細については融合アッセイおよび合成構築物に関する本文を参照)。
【図4a−4e】それぞれ、本発明のトリシストロン構築物において使用される、ヒト7SK(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)登録番号X04992、塩基1−234[a、e]、塩基1−244[d])、ヒトH1(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)登録番号X16612、塩基250−375)、およびヒトU6(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)登録番号M14486、塩基65−329)プロモーターの配列を示す図である。shRNA配列の挿入のために使用される制限部位(Sal Iの例が示されている)が大文字の活字で示されている。他の制限部位配列は要望通りに置換されうる。aおよびdにおける7SKプロモーターは、それぞれ、塩基1−234および塩基1−244からの天然プロモーターの配列を表すが、eにおけるプロモーターは新規の合成改善例であり、4A残基は強化機能のための制限部位の付加3’である。
【図5】本出願において開示されているベクターによるHBVに基づくshRNA発現をコードするDNA配列(5’〜3’)を示す図である。示されている配列は、高保存HBV標的配列に対応する21個の塩基(shRNA1907における19個の塩基)の後、ヘアピンのループ部をコードする9個の塩基、次いで最初の21個の塩基の逆相補体であり、したがって最初の21個の塩基と塩基対を作ることによって二本鎖幹領域を形成する21個の塩基から成る。dsRNAヘアピン分子に存在する追加の5’および3’配列は示されていない。すなわち、制限部位配列または転写開始部位のプロモーター配列下流から転写される5’リーダーヌクレオチド、および転写終結中にRNA転写産物へ組込まれる標的と相同ではない多重3’末端T(U)残基。
【図6】HBV複製の細胞培養モデルにおけるトリシストロン構築物によるHBV表面抗原発現のレプリコンのみの制御にして計算された阻害率(IC50値)を示す表である。
【図7】トリシストロンベクター構築物のさまざまな量とHBV表面抗原発現の阻害との間の用量反応関係を示すグラフである。7a)試験ベクター40によるHBV sAg阻害に対する用量反応およびIC50値の測定。7b)試験ベクター50によるHBV sAg阻害に対する用量反応およびIC50値の測定。
【図8】ポリメラーゼIIIプロモーター/shRNAカセットの数を示す1〜4で番号付けされた段階的一連のshRNA発現ベクターを示す図である。各々ベクターは、複製の原核pUC由来由来、および本文に記載されているキメラカナマイシン耐性遺伝子を含有する。ベクター4に存在する2つの修飾7SKプロモーター(7SK−4A)は、4aまたは4A命名法によってshRNA表記の一部として示されている。
【図9】4つのポリメラーゼIIIプロモーターを使用して4つの短いdsRNAヘアピン分子、すなわち、U6、7SK、および変形7SK−4Aプロモーターの2つのコピーを発現させるpHB4ベクターを示す図である。5シストロンベクター、pHB5も、4つの7SKプロモーター(図4aに記載されている3つの変形7SK−4Aプロモーターおよび1つの7SKプロモーター)および1つのU6プロモーターを含む―5つのポリメラーゼIIIプロモーターを使用し、5種類の短いdsRNAヘアピン分子を発現させるために構成されたが、各々は高保存HBV配列と相同および相補の二本鎖幹領域を含む。
【図10】ルシフェラーゼレポーター構築物に存在するHBV配列標的に対するpHB4ベクターおよび単一shRNA発現ベクターの試験結果を示す表である。pHB4ベクターについては、3つの独立した実験が示されており、各々の値は3つのトランスフェクション複製の平均を含み、その中の各々の値は3つのルシフェラーゼ測定複製アッセイを含む。示されている値は、100を乗じた、レポーター構築物のみのトランスフェクションによって生じた発光量値に対するshRNAベクターの存在下に検出された発光量の比である。トランスフェクションは、リポフェクタミン(商標)(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.))で実行され、ルシフェラーゼアッセイ試薬はプロメガ社(Promega Inc)から得られた。
【図11】HBVレプリコンを発現する細胞におけるHBV表面抗原(sAg)およびe抗原(eAg)の発現時に3種類の異なるプロモーター要素、U6、7SK、または7SK−4aを3種類のHBV dsRNAヘアピン配列(1737、1943、および799)と結合する効果を示す表である。sAgアッセイの説明について本文を参照。eAg ELISAアッセイは基本的に、eAg抗体がsAg抗体で置換されることを除きsAgアッセイと同様である。IC50値はmlあたりngで示されている。
【図12】図8に図示されているベクターに対応する、プラスミドベクターにおけるプロモーター/HBV shRNA発現カセットの数の増大(1〜4)とともにsAgおよびeAg阻害に対するIC50値の漸進的減少を示す表である。
【図13】単一Pol IIIプロモーターから転写される単一RNA分子(バイフィンガーおよび二重ヘアピン構築物)2つの異なるshRNAドメインの発現を示す図である。図の上部は、RNAの短いスペーサーおよび長いスペーサーの図を示す。表は、完全なHBVゲノムを含有するルシフェラーゼレポーターおよび1737または2791標的配列のみを含有するレポーターの阻害のレベルを示す。短いスペーサーはヘアピン間に16ntを含有し、長いスペーサーはヘアピン間に42ntを含有する。データは、100を乗じた、ルシフェラーゼのみ(非HBV配列)レポーター構築物に対する各々レポーター構築物の発光量の比として表されている。一態様において、本発明の発現構築物は、この図13に示されているように、その中に含まれる1つもしくはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーター転写ユニットからの2つ、3つ、もしくはそれ以上のdsRNAヘアピンを発現しうる。
【図14】4種類の異なるHBV dsRNAヘアピン分子を発現する同時注入pHB4ベクターの非存在(充実棒)または存在下の肝特異的プロモーターベクターからのHBV sAGのin vivo発現を示す図である。データは、2つの複製群とともに1群3匹のマウスの平均である(実験1および実験2)。値は、ルシフェラーゼ光量に対するsAg ELISA光学密度値、すなわち同時注入ルシフェラーゼ発現プラスミドに標準化した比として示されている(本文を参照)。ルシフェラーゼ値は、肝細胞から測定されるが、sAgアッセイはマウス血清で実行された。
【図15】何百もの利用可能なHBV単離株のうちの配列の保存領域の位置を示し(本文を参照)、かつ本出願に記載されている選択HBV dsRNAヘアピン標的に対応する配列および領域の位置を示す概略図である。この図は、HBVの共線的転写産物の性質を示し、かつ各々の転写産物から製造されるタンパク質産物を示す。したがって、例えば、1737dsRNA ヘアピンのみがHBV Xタンパク質を標的することができるが、例えば、799 dsRNAヘアピンがHBV eAg発現を阻害しうるが、HBV sAg発現に直接干渉することができないことが確認されうる。したがって、HBVに対するdsRNA分子のさまざまな選択を同時に送達することによって、本発明の発現構築物は、高レベルのウイルス阻害に寄与するだけではなく、ウイルス耐性の発生に対して不利に作用するHBVに対する多剤レジメンを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、各々のプロモーターが少なくとも1つのRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物。
【請求項2】
前記少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターがウイルスまたは真核生物由来である、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項3】
前記少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターが、1型RNAポリメラーゼIIIプロモーター、2型RNAポリメラーゼIIIプロモーター、および3型RNAポリメラーゼIIIプロモーター(H1、7SK、U6、およびMRPを含む)からそれぞれ独立に選択される、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのRNAエフェクター分子がショートヘアピンRNAである、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項5】
前記ショートヘアピンRNAが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および配列番号11から選択され、UがTと置換されている核酸配列を含み、請求項4に記載の発現構築物。
【請求項6】
前記発現構築物が、3〜8個のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項7】
前記発現構築物が4個のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む、請求項6に記載の発現構築物。
【請求項8】
7SKおよびU6プロモーターを含む、請求項7に記載の発現構築物。
【請求項9】
前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、H1、7SK、およびU6から選択される、請求項6に記載の発現構築物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのRNAエフェクター分子が、標的遺伝子の発現調節能を有する、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項11】
前記標的遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項10に記載の発現構築物。
【請求項12】
前記ウイルス遺伝子がHBVまたはHCV遺伝子である、請求項11に記載の発現構築物。
【請求項13】
前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターの少なくとも2つが、異なるRNAエフェクター分子をコードする配列に作動可能に連結されている、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項14】
各々のRNAポリメラーゼIIIプロモーターが、同一のRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項15】
同一のRNAポリメラーゼIIIプロモーターが2個コピー以下しか存在しない、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項16】
同一のRNAポリメラーゼIIIプロモーターが1個コピーしか存在しない、請求項15に記載の発現構築物。
【請求項17】
前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターの少なくとも1つが配列番号5を含む、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項18】
前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターの少なくとも1つが、ヌクレオチド241〜244がggggを含むことを除いて配列番号5を含む、請求項1に記載の発現構築物。
【請求項19】
配列番号5を含む単離された核酸配列。
【請求項20】
ヌクレオチド241〜244がggggを含むことを除いて配列番号5を含む、請求項19に記載の単離核酸配列。
【請求項21】
ヌクレオチド235で開始するSalI制限部位が、Aat II、Acc65 I、Aci I、Afl II、Age I、Apa I、ApaL I、Asc I、Ase I、AsiS I、Avr II、BamH I、Bcl I、BfrB I、Bgl II、BmgB I、BseY I、BsiW I、BspD I、BspE I、BspH I、BsrB I、BsrG I、BssH II、BssS I、BstB I、BstZ17 I、Cla I、Dra I、Eag I、EcoR I、EcoR V、Fse I、Fsp I、Hind III、Hpa I、Kas I、Kpn I、Mfe I、Mlu I、Msc I、Nae I、Nar I、Nco I、Nde I、NgoM IV、Nhe I、Not I、Nru I、Nsi I、Pac I、PaeR7 I、Pme I、Pml I、Pst I、Pvu I、Pvu II、Sac I、Sac II、Sbf I、Sca I、Sfo I、Sma I、SnaB I、Spe I、Sph I、Ssp I、Stu I、Swa I、Tli I、Xba I、Xho I、およびXma Iから成る群から選択される制限部位で置換されていることを除いて配列番号5を含む、請求項19に記載の単離核酸配列。
【請求項22】
7SKポリメラーゼIIIプロモーター核酸配列であって、前記配列が3’末端にaaaaまたはggggを含む、配列。
【請求項23】
2以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、少なくとも2つの前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターがショートヘアピンRNA分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物。
【請求項24】
少なくとも2つの前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、同一のショートヘアピンRNA分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている、請求項23に記載の発現構築物。
【請求項25】
少なくとも2つの前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、異なるショートヘアピンRNA分子をコードする配列に作動可能に連結されている、請求項23に記載の発現構築物。
【請求項26】
少なくとも2つの前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、同一のRNAポリメラーゼIIIプロモーターである、請求項23、24、または25に記載の発現構築物。
【請求項27】
前記2以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターが、少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む、請求項23、24、または25に記載の発現構築物。
【請求項28】
前記2以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターが、3型RNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む、請求項23に記載の発現構築物。
【請求項29】
前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターの少なくとも1つが、バイフィンガーまたはマルチフィンガーdsRNAヘアピンであるショートヘアピンRNA分子をコードする配列に作動可能に連結されている、請求項23に記載の発現構築物。
【請求項30】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、H1、7SK、およびU6から選択される、請求項23に記載の発現構築物。
【請求項31】
標的遺伝子の発現調節能を有する請求項23に記載の発現構築物。
【請求項32】
前記標的遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項31に記載の発現構築物。
【請求項33】
前記ウイルス遺伝子がHBVまたはHCV遺伝子である、請求項32に記載の発現構築物。
【請求項34】
標的遺伝子の活性を減少させることを必要とする哺乳類の治療方法であって、
少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、各々のプロモーターが前記標的遺伝子の発現を減少させることができる少なくとも1つのRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物の治療有効量を、それを必要とする哺乳類に投与する工程を含む、方法。
【請求項35】
標的遺伝子の活性を減少させることを必要とする哺乳類の治療方法であって、
2以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、該RNAポリメラーゼIIIプロモーターの少なくとも2つが前記標的遺伝子の発現を減少させることができるショートヘアピンRNA分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物の治療有効量を、それを必要とする哺乳類に投与する工程を含む、方法。
【請求項36】
前記標的遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記ウイルス遺伝子がHBVまたはHCV遺伝子である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳類がヒトである、請求項34または35に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの標的遺伝子の発現を調節する方法であって、
前記少なくとも1つの標的遺伝子を含む宿主細胞を、2以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、該RNAポリメラーゼIIIプロモーターの少なくとも2つが前記少なくとも1つの標的遺伝子の発現を調節することができるショートヘアピンRNA分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物でトランスフェクトする工程を含む。
【請求項40】
少なくとも1つの標的遺伝子の発現を調節する方法であって、
前記少なくとも1つの標的遺伝子を含む宿主細胞を、少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、各々のプロモーターが前記少なくとも1つの標的遺伝子の発現を調節することができる少なくとも1つのRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物でトランスフェクトする工程を含む、方法。
【請求項41】
前記宿主細胞が哺乳類細胞である、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの標的遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項39または40に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルス遺伝子がHBVまたはHCV遺伝子である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの標的遺伝子を調節するための発現構築物を製造する方法であって、
(a)各々の発現構築物が少なくとも1つのRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結された1つのRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む、少なくとも2つの発現構築物を生成する工程と、
(b)少なくとも1つの標的遺伝子の発現の調節における、工程(a)の各々の発現構築物の機能性を測定する工程と、
(c)工程(b)の測定に基づき、少なくとも2つの異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含み、各々のプロモーターが少なくとも1つのRNAエフェクター分子をコードする核酸配列に作動可能に連結されている発現構築物を生成する工程と、を含む方法。
【請求項45】
工程(c)の発現構築物が、RNAポリメラーゼIIIプロモーター/RNAエフェクター分子カセットを前記発現構築物に繰り返し加えることによって生成される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1または23に記載の発現構築物を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A1】
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【図7A2】
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【図7B1】
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【図7B2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−510489(P2008−510489A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530052(P2007−530052)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/029976
【国際公開番号】WO2006/033756
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505458647)ニュークレオニクス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】NUCLEONICS, INC.
【Fターム(参考)】