説明

大断面梁用工区分け型枠の設置工法

【課題】大断面梁の施工時にコンクリートの打設範囲毎に工区分けして、この工区の打継部に設置する大断面梁用工区分け型枠の設置工法を提供する。
【解決手段】大断面梁の施工時にコンクリートの打設範囲毎に工区分けして、該工区の打継部に設ける工区分け型枠11の設置工法であって、デッキプレート12の凹凸部13を横方向に沿わせて、該凹凸部13と交差する縦方向に複数本のアングル材14を当該デッキプレート12に溶接して前記工区分け型枠11を形成し、該工区分け型枠11を前記工区の打継部に設置すると共に控えアングル材16を斜めに取付けて補強し、所定の配筋と側面型枠19、19の設置とを行ってからコンクリートを打設し、該コンクリートと前記工区分け型枠11とを一体化すると共に該工区分け型枠11を次の工区の捨て型枠とする大断面梁用工区分け型枠11の設置工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中梁等の大断面梁の施工時にコンクリートの打設範囲毎に工区分けして、この工区の打継部に設置する大断面梁用工区分け型枠の設置工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中梁等の大断面梁の施工に際して使用される工区分け用の型枠としては、在来のベニヤ型枠を使用しており、コンクリートの養生後にはこのベニヤ型枠を撤去している。あるいは、ベニヤ型枠に替えて、鍛冶工が地中梁の中に潜って工区の打継部にラスを貼っている。
【0003】
なお、特開平5−106228号公報、及び特開平9−242084号公報には、地中梁に使用される型枠が開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−106228号公報
【特許文献2】特開平9−242084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例のベニヤ型枠を使用する場合においては、コンクリートの養生後にベニヤ型枠を撤去する必要があり、更には、次の工区の型枠取付け作業は、前の工区の既設のベニヤ型枠を撤去した後でないと行えないので、いずれの場合も作業性が悪いという欠点を有している。
【0006】
また、コンクリートの打継面にコッターを成型するために、ベニヤ型枠にコッター成型用のアンコ材を配設する必要があり、更には、コンクリートの養生後にアンコ材を除去するためのハツリ作業を行うので、いずれの場合も作業性が悪いという欠点がある。
【0007】
そして、工区の打継部にラスを貼る場合は、鍛冶工が地中梁の中に潜ってラス貼り作業を行うので作業能率が悪い。また、コンクリートを打設した際には、ラスからノロ等がしみ出すこととなり、打継性能が低下するおそれがあるという欠点も有している。
【0008】
従って、従来例における場合においては、ベニヤ型枠の撤去作業やコッターの成型作業等での作業性の問題点を解決すること、及び打継部の打継性能を良好にすることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、大断面梁の施工時にコンクリートの打設範囲毎に工区分けして、該工区の打継部に設ける工区分け型枠の設置工法であって、デッキプレートの凹凸部を横方向に沿わせて、該凹凸部と交差する縦方向に複数本のアングル材を当該デッキプレートに溶接して前記工区分け型枠を形成し、該工区分け型枠を前記工区の打継部に設置すると共に控えアングル材を斜めに取付けて補強し、所定の配筋と側面型枠の設置とを行ってからコンクリートを打設し、該コンクリートと前記工区分け型枠とを一体化すると共に該工区分け型枠を次の工区の捨て型枠とすることである。
【0010】
また、前記工区分け型枠の端部には、小口塞ぎ材を設けたこと、を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る大断面梁用工区分け型枠の設置工法によれば、工区分け型枠の作製に市販のデッキプレートを利用するので経済性に優れる。
また、デッキプレートの凹凸部がコッターの役割を果たすので、打継部の剪断伝達力が良好である。
そして、従来例のベニヤ型枠の場合と異なり、コッター成型のためのアンコ材を配設する作業が必要なく、同様にアンコ材を除去するハツリ作業も必要ないので、作業性が良好である。
更に、工区分け型枠をコンクリートの中に埋め殺しにするので、従来例のベニヤ型枠を使用する場合と違って、コンクリートの養生後に型枠を撤去する必要がなく作業性が良好であるという種々の優れた効果を奏する。
【0012】
工区分け型枠の端部には、小口塞ぎ材を設けたことによって、打設したコンクリートが工区分け型枠の端部から流出しないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る地中梁用工区分け型枠11を打継部に設置した状態の側面図である。
【図2】図1のコンクリート打設方向、矢印Aから見た正面図である。
【図3】本発明に係る地中梁用工区分け型枠11を打継部に設置した状態の平面図である。
【図4】デップレート12の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明は、地中梁等の大断面梁の施工時にコンクリートの打設範囲毎に工区分けして、この工区の打継部に設ける工区分け型枠の設置工法であって、図1から図3において、符号11は工区の打継部に設けた地中梁用工区分け型枠を示す。
【0015】
まず、この工区分け型枠11の作製方法について説明する。図4に示すように、デッキプレート12を所定の作業現場で横倒しにして、表面に形成される凹凸部13を横方向に沿わせた状態で使用し、この凹凸部13と交差する縦方向に所定の間隔を開けて複数本、例えば4本の補強用のアングル材14を溶接手段で取り付ける。更に、デッキプレート12の端部に小口塞ぎ材15を溶接手段で取り付ける。
【0016】
このようにして作製した工区分け型枠11は、クレーン等で吊り上げて、図1から図3に示すように、工区の打継部に設置する。更に、必要に応じて、控えアングル材16を斜めに取付けて補強する。なお、図1中の符号17は工区分け型枠11の下端部に設けられるアングルピースを示し、符号18は控えアングル材16の下端部に設けられるアングルピースを示し、符号22は鉄筋を示し、符号23は耐圧コンクリートを示し、矢印Aはコンクリート打設方向を示す。
【0017】
工区分け型枠11を打継部に設置した後に、所定の配筋を行ってから、図3に示すように、工区分け型枠11の両側に所定の被り厚さをもたせるようにして側面型枠19、19を設置する。なお、図3中の符号20は差筋を示し、矢印Bはコンクリート打設方向を示す。
【0018】
側面型枠19の打ち継ぎ位置には、図3に示すように、目地棒21が設けられており、この目地棒21と工区分け型枠11との間には、図示しないラスを貼って閉塞する。なお、工区分け型枠11の端部には、小口塞ぎ材15が設けられているので、打設したコンクリートが工区分け型枠11の端部から流出しない。
【0019】
このようにして工区分け型枠11を打継部に設置してから図示しないコンクリートを打設して、当該コンクリートと工区分け型枠11とを一体化する。
【0020】
次の工区も上述の作業と同様な手順で工区分け型枠11を設置してコンクリートを打設することで、前の工区の工区分け型枠11及び控えアングル材16を埋め殺しにする。従って、コンクリートの養生後に型枠を撤去する必要がなく作業性が良好である。
【0021】
以上のような地中梁用工区分け型枠11の設置工法は、工区分け型枠11の作製に市販のデッキプレート12を利用するので経済性に優れるだけでなく、デッキプレート12の凹凸部13がコッターの役割を果たすので、打継部の剪断伝達力が良好である。更に、木質形型枠やラス網に比べて丈夫で側圧に強く、補強が容易であり、コンクリートのノロ等の流出がない。
【符号の説明】
【0022】
11 地中梁用工区分け型枠
12 デップレート
13 凹凸部
14 アングル材
15 小口塞ぎ材
16 控えアングル材
17、18 アングルピース
19 側面型枠
20 差筋
21 目地棒
22 鉄筋
23 耐圧コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大断面梁の施工時にコンクリートの打設範囲毎に工区分けして、該工区の打継部に設ける工区分け型枠の設置工法であって、
デッキプレートの凹凸部を横方向に沿わせて、該凹凸部と交差する縦方向に複数本のアングル材を当該デッキプレートに溶接して前記工区分け型枠を形成し、
該工区分け型枠を前記工区の打継部に設置すると共に控えアングル材を斜めに取付けて補強し、
所定の配筋と側面型枠の設置とを行ってからコンクリートを打設し、
該コンクリートと前記工区分け型枠とを一体化すると共に該工区分け型枠を次の工区の捨て型枠とすること
を特徴とする大断面梁用工区分け型枠の設置工法。
【請求項2】
工区分け型枠の端部には、小口塞ぎ材を設けたこと
を特徴とする請求項1に記載の大断面梁用工区分け型枠の設置工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270468(P2010−270468A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121745(P2009−121745)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】