説明

大環状テトラホスホニウム塩及びその製造方法、並びに大環状ホスフィンテトラオキシドの製造方法

【課題】簡便に、かつ、高収率で環状ホスフィンオキシド及びその中間体の環状ホスホニウム塩の製造方法の提供。
【解決手段】(I)ビスホスフィノアルカン類と、α,ω−ジハロゲノアルカン類とを反応させ、一般式(4):


で表される環状ホスホニウム塩を製造する工程、並びに(II)工程(I)で得られた環状ホスホニウム塩をアルカリ加水分解する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大環状テトラホスホニウム塩及びその製造方法、並びに大環状ホスフィンテトラオキシドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスフィンオキシドは、種々の金属に配位し金属錯体を形成することができるため、産業上有用な種々のファインケミカルズ合成用の金属錯体触媒の配位子、LED蛍光体用金属錯体の配位子、金属抽出剤、機能性材料等に利用されている。また、ホスフィンオキシドは、公知の技術、例えばクロロシラン及びトリアルキルアミンの混合物による還元等により容易にホスフィンに変換できるため、ホスフィンを合成するための中間体としても有用である。
【0003】
特に、大環状複座ホスフィンオキシド及び大環状複座ホスフィンは、環サイズが大きすぎず、しかも、複数の配位点を有するため、安定な金属錯体を形成できる。そのため、前記大環状複座ホスフィンオキシド及び大環状複座ホスフィンを利用した、放射性診断薬、LED蛍光体、反応触媒、金属抽出剤等の開発が進んでいる。
【0004】
例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、放射性元素テクネチウム99mのカチオン錯体を画像診断薬として利用できることが開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、希土類元素ユーロピウム錯体をLED蛍光体として利用できることが開示されている。具体的に、特許文献1には、高光度且つ長寿命の照明装置を実現することを目的としたLED蛍光体としてユーロピウムに大環状ホスフィンテトラオキシドが配位してなる錯体が例示されている。
【0006】
しかしながら、大環状複座ホスフィンオキシド及び大環状複座ホスフィンは、そのリン原子上の置換基、リン原子間の炭素数等を適宜選択することにより、電子的要因及び立体的要因を変化させ、より高い発光強度、より長寿命のLED蛍光体の分子設計が期待されるものの、それらの有効な製造法がないのが現状である。
【0007】
例えば、大環状ホスフィンテトラオキシドの製造方法としては、下記の方法が知られている(非特許文献1)。
【0008】
非特許文献1には、下記のルートで大環状ホスフィンテトラオキシド(9a, 9b)を得る方法が開示されている。
【0009】
【化1】

【0010】
まず、ビスフェニルホスフィノアルカン(5a, 5b)とアリルアルコールとを反応(ヒドロホスフィネーション)させることにより(6a, 6b)を得た後、臭素を用いて水酸基を臭素原子に変換すると同時にリン原子を酸化することにより(7a, 7b)を得る。次いで、(7a, 7b)を、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンと伴にトルエン中で高希釈条件下(各基質の仕込み重量モル濃度が各々0.009mol/kg)、環化反応させることにより大環状ジホスホニウム塩(8a, 8b)を得た後、エタノール水中、水酸化ナトリウムを用いて加水分解することにより大環状ホスフィンテトラオキシド(9a, 9b)を得る。
【0011】
前記(5a, 5b)は空気中での取り扱いが困難な極めて酸化されやすい化合物である。前記(5a, 5b)は、ビスジフェニルホスフィノアルカンから超音波照射下、金属Li(10当量)を用いて製造することができる(非特許文献3)。また、別法として、フェニルジイソプロピルオキシホスフィンを用いて2工程で製造する方法もある(非特許文献4)。
【0012】
従って、大環状ホスフィンテトラオキシド(9a, 9b)を得るためには、少なくとも全5工程を経る必要がある。また、通算収率は多く見積もっても20〜25%程度に過ぎない。さらに、空気に不安定な化合物、金属Li及び超音波の使用、長時間反応、臭素化反応、複数回のカラム精製が必要であるなどの点で問題がある。よって、従来の方法は、産業上利用する上で、経済性及び安全性の観点から好ましい方法とはいえない。
【0013】
LED蛍光体の発光強度の増大及び寿命の向上、種々の触媒反応における触媒活性及び選択性の向上、並びに高効率の金属回収という様々な機能発現のために、適切な環サイズの大環状ホスフィンテトラオキシドのリン原子上の置換基、リン原子間の炭素数を適宜選択することにより分子設計を可能とする、実用的な大環状ホスフィンテトラオキシドの製造方法の開発が切望されている。
【特許文献1】特開2007−1880号公報
【非特許文献1】M. Vincens, et al., Tetrahedron, 1991, 47, 403.
【非特許文献2】E. Deutsch, et al., Science, 1981, 214, 85.
【非特許文献3】S. R. Dickson, et al., Organometallics, 1999, 18, 2912.
【非特許文献4】M. Baacke, et al., Chem. Ber., 1980, 113, 1356.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、簡便に、かつ、高収率で大環状ホスフィンテトラオキシド(以下、本明細書では、「環状ホスフィンオキシド」と呼ぶ)及びその中間体の大環状テトラホスホニウム塩(以下、本明細書では「環状ホスホニウム塩」と呼ぶ)を製造する方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の工程を含む製造方法が、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、下記の環状ホスホニウム塩及びその製造方法、並びに環状ホスフィンオキシドの製造方法に係る。
1. 一般式(1):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスフィンオキシドの製造方法であって、
(I)一般式(2):
【0019】
【化3】

【0020】
(式中Ar、R1、R2及びmは前記に同じ。)
で表されるリン化合物と、一般式(3):
【0021】
【化4】

【0022】
(式中Xは脱離基を示し、R3、R4及びnは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させることにより、一般式(4):
【0023】
【化5】

【0024】
(式中Ar、R1、R2、R3、R4、X、m及びnは前記に同じ。)
で表される環状ホスホニウム塩を製造する工程、並びに
(II)工程(I)で得られた環状ホスホニウム塩をアルカリ加水分解する工程
を含む環状ホスフィンオキシドの製造方法。
2. 工程(I)において、反応液中における上記リン化合物及び上記一般式(3)で表される化合物の仕込み重量モル濃度が、各々0.1mol/kg以上である上記項1に記載の製造方法。
3. 前記一般式(1)、(2)及び(4)のR1が、水素原子であり、且つ、前記一般式(1)、(3)及び(4)のR3が、水素原子である、上記項1又は2に記載の製造方法。
4. 前記一般式(1)、(2)及び(4)のmが、1≦m≦4であり、前記一般式(1)、(3)及び(4)のnが、1≦n≦4であり、前記m及びnが、2≦m+n≦6の条件を満たす、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 一般式(1):
【0025】
【化6】

【0026】
(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスフィンオキシドの製造方法であって
一般式(4):
【0027】
【化7】

【0028】
(式中Ar、R1、R2、R3、R4、X、m及びnは前記に同じ。)
で表される環状ホスホニウム塩をアルカリ加水分解する環状ホスフィンオキシドの製造方法。
6. 一般式(4):
【0029】
【化8】

【0030】
(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、Xは脱離基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスホニウム塩の製造方法であって、
一般式(2):
【0031】
【化9】

【0032】
(式中Ar、R1、R2及びmは前記に同じ。)
で表されるリン化合物と
一般式(3):
【0033】
【化10】

【0034】
(式中Xは脱離基を示し、R3、R4及びnは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させる、環状ホスホニウム塩の製造方法。
7. 反応液中における上記リン化合物及び上記一般式(3)で表される化合物の仕込み重量モル濃度が、各々0.1〜2mol/kgである上記項6に記載の製造方法。
8. 前記一般式(2)及び(4)のR1が、水素原子であり、且つ、前記一般式(3)及び(4)のR3が、水素原子である、上記項6又は7に記載の製造方法。
9. 前記一般式(2)及び(4)のmが、1≦m≦4であり、前記一般式(3)及び(4)のnが、1≦n≦4であり、前記m及びnが、2≦m+n≦6の条件を満たす、上記項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
10. 一般式(4):
【0035】
【化11】

【0036】
(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、Xは脱離基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスホニウム塩。
11. 前記一般式(4)のR1及びR3が、それぞれ水素原子である、上記項10に記載の環状ホスホニウム塩。
12. 前記一般式(4)のm及びnが、それぞれ1≦m≦4、1≦n≦4であり、且つ、2≦m+n≦6の条件を満たす、上記項10又は11に記載の環状ホスホニウム塩。

本発明の一般式(1):
【0037】
【化12】

【0038】
(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスフィンオキシド(以下、「環状ホスフィンオキシド(1)」と呼ぶ場合がある)の製造方法は、
(I)一般式(2):
【0039】
【化13】

【0040】
(式中Ar、R1、R2及びmは前記に同じ。)
で表されるリン化合物(以下、「リン化合物(2)」と呼ぶ場合がある)と、一般式(3):
【0041】
【化14】

【0042】
(式中Xは脱離基を示し、R3、R4及びnは前記に同じ。)
で表される化合物(以下、「化合物(3)」と呼ぶ場合がある)とを反応させることにより、一般式(4):
【0043】
【化15】

【0044】
(式中Ar、R1、R2、R3、R4、X、m及びnは前記に同じ。)
で表される環状ホスホニウム塩(以下、「環状ホスホニウム塩(4)」と呼ぶ場合がある)を製造する工程、並びに
(II)工程(I)で得られた環状ホスホニウム塩(4)を加水分解する工程
を含む。
【0045】
環状ホスフィンオキシド(1)
本発明の製造方法により得られる環状ホスフィンオキシド(1)は、上記一般式(1)で表される環状ホスフィンテトラオキシドである。
【0046】
Arで示される置換されていても良い芳香族基としては、例えばC6〜C14の芳香族炭化水素基、並びに硫黄原子及び酸素原子からなる群から選ばれる原子を1〜3個含む縮環していてもよい5〜14員芳香族複素環基が挙げられる。前記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニル基、アンスリル基等が挙げられる。前記芳香族複素環基としては、例えばフリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0047】
前記芳香族基が置換基を有する場合の置換基の種類、置換位置及び置換基の数は、特に限定されるものではない。
【0048】
前記置換基としては、例えば、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、C6〜C14の芳香族炭化水素基、C7〜C10のアラルキル基、その他種々の官能基等が挙げられる。
【0049】
前記C1〜C10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、及びトリフルオロメチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基等のパーフルオロアルキル基を例示できる。
【0050】
前記C6〜C14の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を例示できる。
【0051】
前記C7〜C10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等を例示できる。
【0052】
前記官能基としては、アミノ基、(ジ)アルキルアミノ基、アミド基、(ジ)アルキルアミド基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、イミノ基、シアノ基、ホルミル基、ケトン基、エステル基、アセタール基、カルボキシル基、トリアルキルシリル基等を例示できる。
【0053】
なお、前記アルキル基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば前記例示の官能基が挙げられる。
【0054】
前記置換基の置換位置は、o-、m-、p-のいずれでもよい。
【0055】
前記置換基の数は、通常、1〜5の範囲内である。
【0056】
R1、R2、R3及びR4で示される置換されていても良い飽和炭化水素基としては、例えばC1〜C10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0057】
R1、R2、R3及びR4で示される置換されていても良い芳香族炭化水素基としては、例えば、C6〜C10の芳香族炭化水素基が挙げられる。具体的には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等を例示できる。
【0058】
R1、R2、R3及びR4で示される置換されていても良いアラルキル基としては、例えば、C7〜C10のアラルキル基が挙げられる。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等を例示できる。
【0059】
前記飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基が置換基を有する場合の置換基の種類、置換位置及び置換基の数は、特に限定されるものではない。
【0060】
特に、本発明の製造方法によれば、R1及びR3が水素原子である環状ホスフィンオキシドを好適に製造できる。
【0061】
m及びnは、それぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。特に、本発明の製造方法によれば、m及びnが、それぞれ1≦m≦4、1≦n≦4の範囲内の整数であり、且つ、2≦m+n≦6の条件を満たす環状ホスフィンオキシドを好適に製造できる。特に、m=n=1がより好ましい。
【0062】
環状ホスホニウム塩(4)
本発明の環状ホスホニウム塩(4)は、上記一般式(4)で表される環状テトラホスホニウム塩である。
【0063】
一般式(4)中、Ar、R1、R2、R3、R4、m及びnは、上記Ar、R1、R2、R3、R4、m及びnと同様である。また、R1及びR3が水素原子であることが好ましい。さらに、m及びnが、それぞれ1≦m≦4、1≦n≦4の範囲内の整数であり、且つ、2≦m+n≦6の条件を満たすことが好ましい。特に、m=n=1がより好ましい。
【0064】
一般式(4)中、Xは脱離基である。前記脱離基としては、例えば、トルエンスルホニルオキシ基(OTs基)、メタンスルホニルオキシ基(OMs基)、ハロゲン原子等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等が挙げられる。この中でも特に環状ホスホニウム塩(4)が高収率で得られ、且つ、化合物(3)が安価に得られる点でBrが最も好ましい。
【0065】
前記環状ホスホニウム塩(4)は、後述する工程(I)の方法により製造できる。
【0066】
環状ホスフィンオキシド(1)の製造
本発明の製造方法は、下記スキーム1に示す通り、上記環状ホスホニウム塩(4)を製造する工程(I)を経た後、その環状ホスホニウム塩(4)をアルカリ加水分解する工程(II)を経ることにより、上記環状ホスフィンオキシド(1)を製造する。すなわち、本発明の製造方法は、中間体として上記ホスホニウム塩(4)を製造する。
[スキーム1]
【0067】
【化16】

【0068】
本発明の製造方法によれば、工程(I)を経た後、工程(II)を経るという一連のプロセスを採用することにより、目的の環状ホスフィンオキシド(1)の分子設計を行いつつ、該環状ホスフィンオキシド(1)を高収率で得ることができる。しかも、本発明の製造方法は、僅か2工程で上記環状ホスフィンオキシド(1)を製造できる簡便な方法である。
【0069】
<工程(I)(環状ホスホニウム塩(4)の製造)>
工程(I)では、上記リン化合物(2)と上記化合物(3)とを反応させることにより、上記環状ホスホニウム塩(4)を製造する。
【0070】
一般式(2)中、Ar、R1、R2及びmは、上記Ar、R1、R2及びmと同様である。特に、R1は水素原子であることが好ましい。また、mは、1≦m≦4の範囲内の整数であり、且つ、後記nとの関係で2≦m+n≦6の条件を満たすことが好ましい。特に、m=n=1がより好ましい。
【0071】
上記リン化合物(2)は、市販品又は公知の方法に従って合成することにより容易に入手できる。
【0072】
一般式(3)中、Xは、上記Xと同様である。特に、ハロゲン原子が好ましく、Brがより好ましい。
【0073】
一般式(3)中、R3、R4及びnは、上記R3、R4及びnと同様である。特に、R3は水素原子であることが好ましい。また、nは、1≦n≦4の範囲内の整数であり、且つ、前記nとの関係で2≦m+n≦6の条件を満たすことが好ましい。
【0074】
上記化合物(3)は、市販品又は公知の方法に従って合成することにより容易に入手できる。
【0075】
工程(I)では、上記リン化合物(2)と上記化合物(3)とを溶媒中で反応させることが好ましい。
【0076】
前記溶媒としては、特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジブチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、シクロペンチルメチルエーテル、ジヒドロピラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等を使用できる。上記例示の溶媒については、二種以上を混合して使用することもできる。
【0077】
前記例示した溶媒の中でも、特に、DMF、アセトニトリル、エタノール、イソプロパ
ノール、トルエン、キシレン、DME、エチレングリコールモノアルキルエーテル及びジエ
チレングリコールジアルキルエーテルが好ましい。本発明の製造方法では、前記反応に使
用する溶媒として、前記好ましい溶媒のみを使用する場合も、前記好ましい溶媒とそれ以
外の溶媒とを混合して使用する場合も好適に上記環状ホスホニウム塩(4)を製造できる。
【0078】
上記リン化合物(2)と上記化合物(3)とを溶媒中で反応させる際、反応液中における上記リン化合物(2)及び化合物(3)の仕込み重量モル濃度は、各々0.1mol/kg以上が好ましく、0.2〜2mol/kgがより好ましい。反応液中における上記リン化合物(2)及び化合物(3)の仕込み重量モル濃度が各々0.1mol/kg以上である場合、高収率で上記環状ホスホニウム塩(4)を得ることができる。その結果、高収率での上記環状ホスフィンオキシド(1)の製造が可能になる。
【0079】
なお、本明細書に記載の「仕込み重量モル濃度」とは、対象となる基質を添加したときの溶媒(kg)に対する前記基質の仕込み量(mol)を意味する。
【0080】
従来、大環状化合物の合成においては、高希釈条件(0.001〜0.02mol/kg)で環化反応させることが最も良い方法とされてきた。
【0081】
例えば、抗生物質、特に、下記(10)(11)(12)のような生物活性を有するマクロライド抗生物質が高希釈条件での環化反応によって巧みに合成できることが下記の文献に開示されている。
【0082】
【化17】

【0083】
S. Masamune, et al., J. Am. Chem. Soc., 1975, 97, 3515.
J. Inanaga, et al., Chem. Lett., 1979, 1021.
J. Inanaga, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 1979, 52, 1989.
D. Seebach, et al., J. Am. Chem. Soc., 1985, 107, 5292.
また、大環状リン化合物に関しては、上記の通り、高希釈条件下で大環状ジホスホニウム塩(8a, 8b)を合成することが非特許文献1に開示されている。さらに、下記スキーム2に従って、高希釈条件下で、大環状テトラホスフィン化合物(13)を合成することが下記の文献に開示されている。
[スキーム2]
【0084】
【化18】

【0085】
E. P. Kyba, et al., J. Am. Chem. Soc., 1981, 103, 3868.
本発明は、上記リン化合物(2)及び上記化合物(3)の仕込み重量モル濃度を各々0.1mol/kg以上とする(高濃度条件下で反応させる)ことにより、予想に反して、2分子の上記リン化合物(2)と2分子の上記化合物(3)とから目的の上記環状ホスホニウム塩(4)を一気に構築し、上記環状ホスホニウム塩(4)を高収率で合成できることを見出したことに基づく発明である。
【0086】
前記反応液中における上記リン化合物(2)と上記化合物(3)とのモル比は、特に限定されないが、1:0.5〜2が好ましく、1:0.7〜1.5がより好ましく、1:1が最も好ましい
上記リン化合物(2)と上記化合物(3)との反応は、バッチ式、連続式のいずれの反応形式で行っても良い。
【0087】
前記反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0088】
反応圧力は、常圧〜100kg/cm2の範囲でよい。
【0089】
反応温度は、特に限定されないが、通常0〜300℃、好ましくは25〜200℃である。例えば、常圧で反応を行う場合の反応温度は、50℃〜反応溶媒の還流温度が好ましい。
【0090】
反応時間は、反応圧力、反応温度等に応じて適宜設定すればよく限定されるものではない。
【0091】
工程(I)では、上記リン化合物(2)と上記化合物(3)との2分子間反応により生成した分子同士が優先的に反応することにより、上記環状ホスホニウム塩(4)が高収率で得られるものと考えられる。すなわち、工程(I)によれば、8〜12員環のジホスホニウム塩や24〜36員環のヘキサホスホニウム塩の生成を抑制しつつ、上記環状ホスホニウム塩(4)を高収率で得ることができる。
【0092】
また、上記環状ホスホニウム塩(4)を高収率で得ることができる他の要因として、前記環状ホスホニウム塩(4)が結晶として析出し、反応系から外れることにより、反応が効率よく進行することが考えられる。
【0093】
反応後は、必要に応じて、得られた粗環状ホスホニウム塩から環状ホスホニウム塩(4)を単離、精製してもよい。単離方法としては、公知の方法を適宜採用すればよい。一般に、結晶として析出している環状ホスホニウム塩(4)を単離する方法としては、例えば、濾過、遠心分離等が挙げられる。溶媒に溶解した環状ホスホニウム塩(4)を単離する方法としては、再結晶、再沈殿等が挙げられる。その他、反応終了後に得られた混合液を乾燥させることにより単離してもよい。得られた環状ホスホニウム塩(4)を精製する方法としては、公知の方法を適宜採用すればよい。例えば再結晶、再沈殿等が挙げられる。
【0094】
なお、本明細書において、「粗環状ホスホニウム塩」とは、反応後、環状ホスホニウム塩(4)を単離、精製する前の前記環状ホスホニウム塩(4)とそれ以外の化合物からなる混合物を意味する。
【0095】
環状ホスホニウム塩(4)以外の化合物としては、例えば、ヘキサホスホニウム塩、ジホスホニウム塩等が挙げられる。これらは、一種又は二種以上で粗環状ホスホニウム塩中に含まれていてよい。
【0096】
また、環状ホスホニウム塩(4)を単離、精製せずに、工程(II)へ移行してもよい。すなわち、粗環状ホスホニウム塩に対して、直接、下記のアルカリ加水分解を行ってもよい。これにより、環状ホスフィンオキシド(1)をより高収率で得やすくなる。
【0097】
<工程(II)(アルカリ加水分解)>
工程(II)では、工程(I)で得られた環状ホスホニウム塩(4)をアルカリ加水分解する。具体的には、水単独又は水と共溶媒との混合溶媒系に前記環状ホスホニウム塩(4)及び塩基を加えて加水分解反応を行う。
【0098】
前記共溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒が好ましい。
【0099】
前記混合溶媒中の水の含有量は、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。
【0100】
前記塩基としては、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)等を用いることができる。これら塩基については、単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
【0101】
塩基の使用量については、前記環状ホスホニウム塩(4)1分子中にリン原子が4つ存在することから、前記環状ホスホニウム塩(4)1分子に対して、4当量以上となるように設定することが好ましい。特に、反応速度を高めるために、前記環状ホスホニウム塩(4)1分子に対して、塩基を6当量以上添加することが好ましく、6〜20当量添加することがより好ましい。
【0102】
なお、工程(II)では、上記環状ホスフィンオキシド(1)とともに、Ar−H(Arは上記と同じ)が生成するが、これは前記加水分解反応を妨げるものではない。
【0103】
水又は前記混合溶媒中における前記環状ホスホニウム塩(4)の濃度は、0.01mol/kg以上が好ましく、0.05〜2mol/kgがより好ましい。前記環状ホスホニウム塩(4)の濃度が0.01mol/kg以上の場合、効率的に加水分解反応を行うことができ、前記環状ホスフィンオキシド(1)を高収率で得やすくなる。
【0104】
工程(II)における加水分解反応は、反応効率の観点から、均一系反応であることが好ましい。また、前記加水分解反応が不均一系である場合、反応を加速させるために界面活性剤や相関移動触媒をさらに添加しても良い。
【0105】
前記加水分解反応は、バッチ式、連続式のいずれの反応形式で行っても良い。
【0106】
反応圧力は、常圧〜100kg/cm2の範囲でよい。
【0107】
反応温度は、特に限定されないが、通常0〜300℃、好ましくは25〜200℃である。例えば、常圧で反応を行う場合の反応温度は、60℃〜反応溶媒の還流温度が好ましい。
【0108】
反応時間は、反応の進行状況等に応じて適宜設定すればよく限定されるものではない。
【0109】
反応後は、必要に応じて、得られた環状ホスフィンオキシド(1)を単離、精製してもよい。単離、精製方法としては、公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、反応終了後に得られた混合液に有機溶媒を加えることにより環状ホスフィンオキシド(1)を抽出分離する方法、前記混合液を濃縮した後、得られた濃縮液又は濃縮残渣に有機溶媒を加えることにより環状ホスフィンオキシド(1)を抽出分離する方法等が挙げられる。得られた抽出液はそのまま濃縮乾燥して単離しても良いし、必要に応じて、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により精製してもよい。
【発明の効果】
【0110】
本発明の環状ホスフィンオキシド(1)の製造方法によれば、工程(I)を経た後、工程(II)を経るという一連のプロセスを採用することにより、目的の環状ホスフィンオキシド(1)の分子設計を行いつつ、該環状ホスフィンオキシド(1)を高収率で得ることができる。しかも、前記方法は、僅か2工程で環状ホスフィンオキシド(1)を製造できる簡便な方法であり、経済性が高く、大規模生産にも適している。
【0111】
本発明の環状ホスホニウム塩(4)は、本発明の製造方法によって環状ホスフィンオキシド(1)を製造する際の中間体となる化合物であり、高収率での環状ホスフィンオキシド(1)の製造を可能にする。
【0112】
本発明の環状ホスホニウム塩(4)の製造方法によれば、前記環状ホスホニウム塩(4)を高収率で、しかも簡便に製造することができる。
【実施例】
【0113】
以下に、実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
【0114】
実施例1
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパン5.00g(12.1mmol)、DMF25.0ml(24.9g、比重0.994)及び1,3−ジブロモプロパン2.45g(12.1mmol)を仕込み、攪拌しながら加熱し溶解させた(1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパン及び1,3−ジブロモプロパンの仕込み重量モル濃度:各々0.49mol/kg)。さらに、110℃に保ち18時間攪拌し反応させた。
【0115】
次いで、攪拌しながら前記反応液を50℃まで冷却した後、トルエン75mlを加え20℃まで冷却しそのまま1時間攪拌した。
【0116】
析出した白色結晶を吸引濾過し、前記結晶をさらにトルエン25mlで洗浄吸引濾過し、湿結晶を得た。
【0117】
前記湿結晶を減圧乾燥し、粗環状ホスホニウム塩7.37gを得た。粗収率は99%であった。結果を表1に示す。なお、環状ホスホニウム塩(4)の存在を確認するために、前記粗環状ホスホニウム塩から環状ホスホニウム塩(4)を単離した。単離は、粗環状ホスホニウム塩5.00gをエタノールを用いて再結晶した後、減圧乾燥することにより行った。その結果、16員環状テトラホスホニウム塩(4)を2.50g得た。精製収率は50%であった。
【0118】
得られた16員環状テトラホスホニウム塩(4)のスペクトルデータを下記に示す。
H-NMR(CDCl3, TMS, 600MHz, ppm) δ=7.95-7.75(m, 40H), 7.75-7.60(m, 24H)
31P-NMR(CDCl3, H3PO4, 161.8MHz, ppm) δ=29.3
IR(KBr, cm-1) ν(P+−Ph)=1115, 1439
【0119】
実施例2〜5
反応溶媒、仕込み重量モル濃度及び反応温度を変えた以外は、実施例1と同様にして粗環状ホスホニウム塩を得た。反応条件及び粗環状ホスホニウム塩の収率(粗収率)を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
比較例1〜3
反応溶媒、仕込み重量モル濃度、反応温度及び反応時間を変えた以外は、実施例1と同様にして粗環状ホスホニウム塩を得た。反応条件及び粗環状ホスホニウム塩の収率(粗収率)を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
実施例6
工程(I)
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた300ml四つ口フラスコに、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパン5.00g(12.1mmol)、DMF50ml(49.7g、比重0.994)及び1,3−ジブロモプロパン2.45g(12.1mmol)を仕込み、攪拌しながら加熱し溶解させた(1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパン及び1,3−ジブロモプロパンの仕込み重量モル濃度:各々0.24mol/kg)。さらに、110℃に保ち18時間攪拌し反応させた。
【0124】
次いで、攪拌しながら前記反応液を50℃まで冷却した後、トルエン150mlを加え20℃まで冷却しそのまま1時間攪拌した。
【0125】
析出した白色結晶を吸引濾過し、前記結晶をさらにトルエン25mlで洗浄吸引濾過し、湿結晶を得た。
【0126】
前記湿結晶を減圧乾燥し、粗環状ホスホニウム塩7.30gを得た。粗収率は98%であった。
【0127】
工程(II)
攪拌機、温度計及び冷却器を備えた100ml四つ口フラスコに、上記工程(I)で得られた粗環状ホスホニウム塩5.00g(4.07mmol)、エタノール15g及びNaOH3.26g(81.5mmol)を水25gに溶解させた水溶液を仕込み、攪拌しながら加熱した。加熱温度を79℃に保ち、加熱還流下10時間攪拌し反応させた。
【0128】
次いで、得られた反応液を30℃まで冷却し、200mlナスフラスコに移しロータリーエバポレーターで内容積が約半分になるまで減圧濃縮した後、クロロホルム30mlで3回抽出した。前記抽出液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮して濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル及びメタノールの混合溶媒)精製し、16員環状ホスフィンオキシド(1)を3.36g得た。工程(I)及び工程(II)の通算収率は61%であった。得られた環状ホスフィンオキシド(1)のスペクトルデータを表3に示す。
【0129】
実施例7〜14
表3に記載の通り、反応基質、仕込み重量モル濃度、反応溶媒、反応温度及び反応時間を変えて、工程(I)を行い、粗環状ホスホニウム塩の仕込み量、アルカリ種類及び量、共溶媒の種類、水及び共溶媒の量、反応温度並びに反応時間を変えて、工程(II)を行う以外は実施例6と同様の方法により環状ホスフィンオキシド(1)を得た。反応条件、環状ホスフィンオキシド(1)の収率(工程(I)及び工程(II)の通算収率)並びに環状ホスフィンオキシド(1)のスペクトルデータを表3に示す。
【0130】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスフィンオキシドの製造方法であって、
(I)一般式(2):
【化2】

(式中Ar、R1、R2及びmは前記に同じ。)
で表されるリン化合物と、一般式(3):
【化3】

(式中Xは脱離基を示し、R3、R4及びnは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させることにより、一般式(4):
【化4】

(式中Ar、R1、R2、R3、R4、X、m及びnは前記に同じ。)
で表される環状ホスホニウム塩を製造する工程、並びに
(II)工程(I)で得られた環状ホスホニウム塩をアルカリ加水分解する工程
を含む環状ホスフィンオキシドの製造方法。
【請求項2】
工程(I)において、反応液中における上記リン化合物及び上記一般式(3)で表される化合物の仕込み重量モル濃度が、各々0.1mol/kg以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)、(2)及び(4)のR1が、水素原子であり、且つ、前記一般式(1)、(3)及び(4)のR3が、水素原子である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)、(2)及び(4)のmが、1≦m≦4であり、前記一般式(1)、(3)及び(4)のnが、1≦n≦4であり、前記m及びnが、2≦m+n≦6の条件を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(1):
【化5】

(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスフィンオキシドの製造方法であって
一般式(4):
【化6】

(式中Ar、R1、R2、R3、R4、X、m及びnは前記に同じ。)
で表される環状ホスホニウム塩をアルカリ加水分解する環状ホスフィンオキシドの製造方法。
【請求項6】
一般式(4):
【化7】

(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、Xは脱離基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスホニウム塩の製造方法であって、
一般式(2):
【化8】

(式中Ar、R1、R2及びmは前記に同じ。)
で表されるリン化合物と
一般式(3):
【化9】

(式中Xは脱離基を示し、R3、R4、nは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させる、環状ホスホニウム塩の製造方法。
【請求項7】
反応液中における上記リン化合物及び上記一般式(3)で表される化合物の仕込み重量モル濃度が、各々0.1〜2mol/kgである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(2)及び(4)のR1が、水素原子であり、且つ、前記一般式(3)及び(4)のR3が、水素原子である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記一般式(2)及び(4)のmが、1≦m≦4であり、前記一般式(3)及び(4)のnが、1≦n≦4であり、前記m及びnが、2≦m+n≦6の条件を満たす、請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(4):
【化10】

(式中Arは同一又は異なって置換されていても良い芳香族基を示し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、置換されていても良い飽和炭化水素基、置換されていても良い芳香族炭化水素基又は置換されていても良いアラルキル基を示し、Xは脱離基を示し、m及びnはそれぞれ同一又は異なって0以上の整数を示す。)
で表される環状ホスホニウム塩。
【請求項11】
前記一般式(4)のR1及びR3が、それぞれ水素原子である、請求項10に記載の環状ホスホニウム塩。
【請求項12】
前記一般式(4)のm及びnが、それぞれ1≦m≦4、1≦n≦4であり、且つ、2≦m+n≦6の条件を満たす、請求項10又は11に記載の環状ホスホニウム塩。

【公開番号】特開2009−51787(P2009−51787A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221611(P2007−221611)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000227342)日東化成株式会社 (28)
【Fターム(参考)】