説明

大腸菌における豚丹毒菌表層防御抗原変異体の製造方法

豚丹毒菌の感染を阻止するための豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮形のSpaA(ΔSpaA)蛋白の変異体及びその製造方法を提供する。SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列の特定の位置にアミノ酸置換を導入することにより、免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現されるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体を得ることができる。本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体は大腸菌において不溶性の封入体として発現されるため、容易に回収・精製することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌(Escherichia coli)を宿主とする豚丹毒菌の表層防御抗原(surface protective antigen;以下、「SpaA」と称することもある)蛋白の変異体の製造方法に関する。更に詳細には、SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮形のSpaA(以下、短縮形のSpaAを「ΔSpaA」と称することもある)にアミノ酸置換を導入した変異体であって、大腸菌体内で発現させたときに不溶性の封入体として発現されるものの製造方法、及び当該製造方法により得られる組換えSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
豚丹毒は、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)の感染によって起こる豚の病気で、感染豚は、急性では敗血症、亜急性では蕁麻疹、慢性では心内膜炎及び関節炎などの症状を呈する。年間3,000頭前後の発生報告があり、畜産農家に大きな被害を与えている。豚丹毒菌は、豚以外にイノシシ、鯨類、鶏、七面鳥などの食用動物に対しても病原性を持ち、家畜伝染病予防法において監視伝染病の一つに指定されている。また、豚丹毒は、ヒトに類丹毒を引き起こす人獣共通伝染病でもあり、食肉衛生上からも重要視される疾病である。豚丹毒菌には多くの血清型が存在するが、豚の豚丹毒の発生のほとんどは1型菌又は2型菌によるものが主体である。
【0003】
これまで、豚丹毒感染症を予防する方法として、弱毒生ワクチン(強毒株をアクリフラビン添加培地中で長期継代培養して作製した豚丹毒菌弱毒株Koganei株を用いて製造した凍結乾燥生ワクチン)、不活化ワクチン(豚丹毒菌強毒株の培養菌液をホルマリンで殺菌処理し、その全菌体及び菌体外生産物を水酸化アルミニウムゲルに吸着させて製造したバクテリアワクチン)及び成分ワクチン(全菌体からアルカリ水溶液で抽出した菌体表層非精製蛋白質画分から成る成分ワクチン)が広く使用されている。弱毒生ワクチンは、少量を1回接種するだけでその効果が現れ、経済的と考えられるが、これを使用した場合、問題点として、マウスに関節炎発症の病原性をもつこと、抗体の低い豚やSPF豚において重篤な副作用を示すこと、また慢性豚丹毒症例豚の病変からワクチン株が分離されることが指摘されている。
【0004】
新しいタイプのワクチンとして、遺伝子組換え技術による組換えワクチンの研究・開発も進められている。GalanとTimonyは、豚丹毒菌ゲノムの一部の遺伝子を発現する組換えファージを感染させた大腸菌の溶解物を用いてマウスを免疫した後、豚丹毒菌で攻撃試験を行ったところ、その14〜17%が感染死から免れることを観察した。更に、同溶解物に対する免疫血清との反応性から当該遺伝子にコードされる蛋白が、分子量66、64、43 kDaの蛋白質であることを明らかにし、これらが豚丹毒菌の感染に対する感染防御抗原となり得ることを示した(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
Makinoらは、2型菌豚丹毒菌多摩96株の分子量64 kDaの表面蛋白質(SpaAと命名)をコードする遺伝子を大腸菌で発現させ、得られた組換え大腸菌の生菌をマウスに免疫した後豚丹毒菌による攻撃試験を行い、SpaA蛋白が感染防御能を有することを示した。また、彼等は、当該SpaA蛋白は、606個のアミノ酸配列からなる蛋白で、そのN末側に29個のアミノ酸からなるシグナルペプチド、C末側に20個のアミノ酸からなる8個の相似な繰り返し配列(8番目の繰り返し配列は、19個のアミノ酸からなる)を有することを明らかにした(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
Imadaらは、前記SpaA蛋白に相当する1型菌藤沢株のSpaA蛋白及びこれをコードする遺伝子を調べ、これが分子量69 kDa、626個のアミノ酸からなること、そのアミノ酸配列は、2型菌のSpaA蛋白に比べ、C末側の操り返し配列が1個多い9個の相似な繰り返し配列(9番目の繰り返し配列は、19個のアミノ酸からなる)を有することを明らかにし、全長SpaA、C末側の繰り返し領域を除いたSpaA、又はN末側の一部及びC末側の繰り返し部分を除いたSpaAとヒスチジンヘキサマーとの融合蛋白質が感染防御効果を有することを示した(例えば、非特許文献3、4参照)。
【0007】
渡辺らも、同様に、豚丹毒菌のSpaA蛋白からC末側の繰り返し配列及びN末側の分泌シグナルを除去した46.5 kDaのポリペプチドが感染防御抗原(46.5kDa protective antigen;46.5 KPAと命名)となり得ることを報告している(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
一方で、ワクチン候補蛋白の生産性を上げる試みも行われている。例えば、ブレビバチルス・チョウシネンシス(Brevibacillus choshinensis)を宿主菌として46.5 KPAを菌体外に分泌発現させることに成功したとの報告がある(例えば、特許文献2参照)。この発現システムでは、発現量の約50%が培養液中で凝集して不溶性となる。本報告では、この不溶化した46.5 KPAの精製は、培養液を限外濾過膜でろ過し、膜上に回収された不溶物をアルカリ溶液に懸濁し、可溶化してくる46.5 KPAを回収する方法により行われている。すなわち、本法によれば、1)中性から弱アルカリ(pH7〜9.5)条件下での限外濾過による濃縮工程、2)強アルカリ(pH10.0〜12.0)条件下での限外濾過による濾過画分への回収工程、3)限外濾過画分の陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製工程、の少なくとも3工程が必須である。
【0009】
SpaA遺伝子を大腸菌で発現させた場合、そのほとんどが可溶性の蛋白として発現されるので上記のような不溶物に対する精製方法を適用することができない。培養物には、目的のSpaA蛋白以外に大腸菌菌体、培地由来の成分や培養時に生産される代謝産物を始めとする多種多様の夾雑物質が混在する。このような混在物から目的とする可溶性のSpaA蛋白を効率的に回収精製することは容易ではない。一般に、動物用ワクチンは、ヒト用ワクチンとは異なり、高純度、高品質に加えて、低価格でなければ畜産農家にとって受け入れ難い。したがって、動物用ワクチン製造メーカには、常に、大量処理でき且つ製造コストを抑えた生産方法、回収精製方法の改善・改良が求められる。
【0010】
【特許文献1】特開2000-279179号公報
【特許文献2】特開2002−34568号公報
【非特許文献1】Garan,J.E.et al.(1990)Infect. Immun., 58,p.3116-3121
【非特許文献2】Makino,S.et al.(1998)Microb. Pathog. 25,p.101-109
【非特許文献3】Imada,Y.et al.(1999) Proc. Jpn. Pig. Vet. Soc. 34, p.12-
【非特許文献4】Imada,Y.et al.(1999) Infect. Immun. 67 (9), p.4376-4382
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、大腸菌やブレビバチルス・チョウシネンシスを宿主として豚丹毒菌のSpaA遺伝子を発現させた場合、可溶性のSpaA蛋白あるいは可溶性蛋白と不溶性蛋白の混在する形で生産されるので製造方法が煩雑となり、高収率が期待できない。これは製造コストに反映する。
【0012】
本発明は、このような技術上ないし工業上の必要性に鑑みてなされたものであって、SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮形のSpaA(ΔSpaA)蛋白のアミノ酸配列の一部を置換することにより、可溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を大腸菌体内に封入体として発現させ、これを回収精製することからなるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、上記方法により得られる高純度の組換えSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成する為に鋭意研究を重ねた結果、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を発現させた大腸菌の中に不溶性の封入体を形成するクローンが混在すること、これら封入体を形成したSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列の特定位置に置換が起こっていること、人為的にこのアミノ酸置換を行うことにより可溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白は菌体内に封入体として蓄積されることを見出した。更に、これらのSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白は、封入体形成後も免疫原性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。例えば、SE-9株由来のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の第69番目のアミノ酸をグリシンに置換、第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換、第278番目のアミノ酸をグリシンに置換、第531番目のアミノ酸をグリシンに置換、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換、第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換、第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換することにより、封入体が形成される。
【0015】
本発明は一般に、免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮型のΔSpaA蛋白の変異体を製造する方法であって、当該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に当該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列にアミノ酸置換を導入するような変異を起こさせ、当該変異を有する遺伝子を大腸菌中で発現させ、ついで発現された変異体のうちから封入体を形成したものを選択することを特徴とする方法を提供する。すなわち、本発明の方法は、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を大腸菌で発現させるに際して、不溶性の封入体として発現されるようなSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体をアミノ酸置換により作出することによって、本来可溶性であるために回収・精製が困難であったSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を不溶性の封入体として大腸菌で発現させ、それによって蛋白の回収・精製を容易にすることを特徴とするものである。
【0016】
一つの態様において、本発明の方法は、下記(A)ないし(D):
(A)可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子にアミノ酸置換が起こるように変異を導入する、
(B)前記の変異遺伝子を有する発現ベクターで大腸菌を形質転換する、
(C)前記形質転換した大腸菌から不溶性の封入体を形成する大腸菌を選択する、ついで
(D)前記大腸菌を培養し、菌体内の封入体を回収する、
の工程からなる。
【0017】
本発明の方法により得られた組換えSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体は、豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)を保持していることを確認するため、さらに下記工程(E)〜(F):
(E)前記封入体又は可溶化剤で処理した封入体を豚丹毒菌感受性動物に投与した後、豚丹毒菌の強毒株で攻撃する、ついで
(F)前記豚丹毒菌感受性動物の生死により豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)の有無を判定する
に供することができる。
【0018】
本発明の方法は、本来可溶性であったSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を不溶性の封入体として発現されるような変異体に変換することによってその回収・精製を容易にすることを特徴とするものである。また、本発明の方法によれば、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を不溶性の封入体として発現させるため、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に変異を導入することによりSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換を起こさせる。このようなアミノ酸置換を生じたSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体の中には封入体を形成して発現されるものがあるので、最終的にそのような封入体を形成するものを選択するのである。したがって、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に生じさせる変異、あるいはSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中に生じさせるアミノ酸置換は、その結果得られるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体が封入体を形成して発現されるようなものであればいかなる変異、アミノ酸置換であってもよい。
【0019】
そのようなアミノ酸置換の具体例としては、下記(1)ないし(7):
(1)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(2)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(3)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(4)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(5)シグナルペプチドを含むN末端より第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(6)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;及び
(7)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せが挙げられる。
【0020】
さらに、アミノ酸置換の他の具体例としては、シグナルペプチドを含むN末端より第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換;シグナルペプチドを含むN末端より第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換;及びシグナルペプチドを含むN末端より第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換が挙げられる。
【0021】
SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列は配列番号2で示される配列又はそのC末側を除去した配列であってよく、斯かるアミノ酸配列中に所望のアミノ酸置換、具体的には上記アミノ酸置換を導入することができる。
【0022】
他の態様において、本発明は、免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体を提供する。本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体は、本発明による上記製造方法により製造するのが好ましい。ここで、本発明でいう「豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体」とは、可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白が、特定のアミノ酸を置換することにより不溶性の蛋白に変異したものを意味する。また、「免疫原性を有する」とは、防御抗体を誘導する能力及び豚丹毒菌の感染を阻止する能力を有することを意味する。
【0023】
さらに他の態様において、本発明は、本発明の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体を主成分とする組成物を提供する。当該組成物に含まれる本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体は、上記製造方法により製造するのが好ましい。
【0024】
さらに他の態様において、本発明は、免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体をコードする遺伝子を提供する。本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体をコードする遺伝子は、上記製造方法により製造するのが好ましい。本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体をコードする遺伝子は、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子と比較して少なくとも1の塩基置換を含むが、当該塩基置換はサイレント変異であってはならず、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白に少なくとも1のアミノ酸置換(ポイントミューテーション)を引き起こすものでなければならない。
【0025】
本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体をコードする遺伝子の具体例としては、例えば、配列番号1において、下記(1)ないし(7):
(1)配列番号1記載の塩基配列において第206番目の塩基がG;
(2)配列番号1記載の塩基配列において第461番目の塩基がG;
(3)配列番号1記載の塩基配列において第608番目の塩基がC;
(4)配列番号1記載の塩基配列において第642番目の塩基がG;
(5)配列番号1記載の塩基配列において第758番目の塩基がC;
(6)配列番号1記載の塩基配列において第833番目の塩基がG;及び
(7)配列番号1記載の塩基配列において第1591番目の塩基がG
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せの塩基置換を含む塩基配列又はその3’側を除去した塩基配列を有するものが挙げられる。
【0026】
本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体をコードする遺伝子の他の具体例としては、例えば、配列番号1において、下記(a)ないし(h):
(a)配列番号1記載の塩基配列において第206番目の塩基がG;
(b)配列番号1記載の塩基配列において第608番目の塩基がC;
(c)配列番号1記載の塩基配列において第642番目の塩基がG;
(d)配列番号1記載の塩基配列において第833番目の塩基がG;
(e)配列番号1記載の塩基配列において第1591番目の塩基がG;
(f)配列番号1記載の塩基配列において第461番目及び第608番目の塩基が各々G及びC;
(g)配列番号1記載の塩基配列において第642番目及び第758番目の塩基が各々G及びC;
(h)配列番号1記載の塩基配列において第206番目、第461番目及び第608番目の塩基が各々G、G及びC
のいずれか一つの塩基置換を含む塩基配列又はその3’側を除去した塩基配列を有するものが挙げられる。
【0027】
さらに他の態様において、本発明は、本発明の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体を豚丹毒ワクチンとして使用する方法を提供する。当該方法において使用する本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体は、上記製造方法により製造するのが好ましい。
【0028】
本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の変異体を製造するに際して使用する豚丹毒菌としては、例えば、1型菌として藤沢株、小金井株、2型菌として多摩96株、SE-9株及び静岡63株などが例示できるが、何れの菌株由来のSpaA遺伝子も本発明に使用できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の方法によれば、大腸菌に可溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を不溶性の封入体として発現させる方法が提供される。大腸菌体内に封入体として発現させることにより、遠心分離・洗浄操作を行うだけでSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を容易に高純度に精製できる。こうして得られるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白封入体は、可溶化後、希釈するだけでワクチンとして使用可能な純度及び免疫原性を有する。すなわち、簡便且つ効果的なSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白ワクチンの製造方法が提供される。当該方法により得られるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を用いれば、これまで行われてきた豚丹毒菌を出発材料とする不活化ワクチンや成分ワクチンの製造方法に比べて、豚丹毒菌のヒトへの感染機会を低減することができる。また、豚丹毒弱毒菌にみられる病原性の復帰、抗体の低い豚やSPF豚に対する重篤な副作用などの問題が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白発現ベクターを示す。a:豚丹毒菌SE-9株由来のSpaA蛋白をコードする遺伝子が挿入されたプラスミド(pET11d/SpaA)、b:ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子が挿入されたプラスミド(pET11d/ΔSpaA)。
【0031】
【図2A】豚丹毒菌SE-9株由来のSpaA蛋白及びΔSpaA蛋白のSDS-PAGEの結果を示す。M:マーカー、レーン1:外来蛋白非発現大腸菌培養菌液、レーン2:SpaA蛋白発現大腸菌培養菌液、レーン3:ΔSpaA蛋白発現大腸菌培養菌液。
【0032】
【図2B】豚丹毒菌由来のΔSpaA蛋白のSDS-PAGEの結果を示す。M:マーカー、レーン1:外来蛋白非発現大腸菌培養菌液、レーン2:藤沢株由来ΔSpaA蛋白発現大腸菌培養菌液、レーン3:多摩96株由来ΔSpaA蛋白発現大腸菌培養菌液、レーン4:小金井株由来ΔSpaA蛋白発現大腸菌培養菌液、レーン5:SE-9株由来ΔSpaA蛋白発現大腸菌培養菌液。
【0033】
【図3】豚丹毒菌SE-9株由来の可溶性及び不溶性(封入体)ΔSpaA蛋白のSDS-PAGEの結果を示す。M:マーカー、レーン1:可溶性ΔSpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心上清、レーン2:可溶性ΔSpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心沈渣、レーン3:不溶性ΔSpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心上清、レーン4:不溶性ΔSpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心沈渣。
【0034】
【図4A】配列番号7の塩基配列との比較により、不溶性(封入体)ΔSpaA蛋白を発現する大腸菌形質転換体(3クローン:No1、No2及びNo3)より抽出したプラスミドのSpaA遺伝子に認められた変異部位及び制限酵素切断部位を示す。
【0035】
【図4B】配列番号7の塩基配列との比較により、不溶性(封入体)SpaA蛋白を発現する大腸菌形質転換体(1クローン:No4)より抽出したプラスミドのSpaA遺伝子に認められた変異部位及び制限酵素切断部位を示す。
【0036】
【図5】豚丹毒菌SE-9株由来の可溶性及び不溶性(封入体)SpaA蛋白のSDS-PAGEの結果を示す。M:マーカー、レーン1:可溶性SpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心上清、レーン2:可溶性SpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心沈渣、レーン3:不溶性SpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心上清、レーン4:不溶性SpaA蛋白発現大腸菌超音波処理液遠心沈渣。
【0037】
【図6】精製後の豚丹毒菌SE-9株由来の不溶性(封入体)SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白のSDS-PAGEの結果を示す。M:マーカー、レーン1:SpaA蛋白、レーン2:ΔSpaA蛋白。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の方法は、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列の特定位置のアミノ酸を特定のアミノ酸に置換することにより当該蛋白を大腸菌体内に封入体として発現させる方法、及び当該方法を組み入れたSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の製造方法によって特徴付けられる。
【0039】
(1)SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子のクローニング
豚丹毒菌には、豚に病原性の強いものとして主に2種類の血清型が存在し、1型菌と2型菌に分類される。1型菌として藤沢株、小金井株、2型菌として多摩96株、SE-9株、静岡63株などが挙げられるが、何れの菌株由来のSpaA遺伝子も本発明に使用できる。これらの菌体の増殖は、市販の培地を用いて、添付の方法に従って行われる。例えば、一定量の菌体を0.1%Tween80添加ブレインハートインフュージョン培地に懸濁し、37℃で、16〜48時間培養する方法が取られる。
【0040】
SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子は、Imada,Y.et al.(1999) Infect. Immun. 67 (9), p.4376-4382に記載の配列(配列番号1)をもとに設計したPCRプライマーを用い、上記の菌体から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行うことにより取得できる。配列番号1は、藤沢株由来SpaA遺伝子の全塩基配列、配列番号2は、藤沢株由来のシグナルペプチドを含む全長SpaA蛋白のアミノ酸配列を示す。また、配列番号7は、SE-9株由来SpaA遺伝子の全塩基配列の一部を示す。この配列は、配列番号1の配列の107番目〜1854番目に相当する。鋳型DNAの調製は、市販のDNA抽出キット、例えば、Isoplant(株式会社ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って行われる。PCRプライマーは、DNA合成受託機関(例えばQIAGEN社)などに依頼すれば容易に入手可能である。このとき、5’側に適当な制限酵素切断部位の配列を付加することが望ましい。より具体的には、配列番号3にNcoIサイト、配列番号4及び5にBamHIサイトを付加した合成DNAが使用される。SpaA蛋白をコードするDNA断片の増幅には、配列番号3及び5記載のプライマー、ΔSpaA蛋白をコードするDNA断片の増幅には、配列番号3及び4記載のプライマーが使用される。得られるSpaA及びΔSpaA蛋白をコードするDNA断片は、制限酵素NcoIに由来するMetとシグナル配列のC末側3個のアミノ酸(Ala-Phe-Ala)をコードする12個の塩基が付加されたものとなる。ΔSpaA蛋白をコードするNDA断片は、SpaA遺伝子の1260番目までの塩基を有する断片で、C末側のアミノ酸207個が除去された短縮形のSpaA蛋白をコードする。SpaA蛋白の一部を除去したΔSpaA蛋白の部位及びサイズは、プライマー配列の位置を変えることにより、目的に応じ任意に設定できる。PCR反応は、市販のLA-Taqキット(宝酒造)、Advantage HF-2 PCR Kit(BC Bioscience)等を用い、添付のプロトコールに従って行えばよい。PCRにより得られるDNA断片の塩基配列は、TAクローニングキット(インビトロジェン社)等を用いてクローニングした後、DNAシークエンサー、例えば、ABI PRISM310 Genetic Analyzer(PEバイオシステムズ社)により決定される。
【0041】
こうして得られるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子のクローニングが行われる。より具体的には、前記のPCR産物を、NcoI及びBamHI制限酵素で消化した後、予め同じ制限酵素で消化した適当なプラスミド、例えば、pET11d(Novagen社)に挿入し、大腸菌に導入する。大腸菌コロニーの中から目的の蛋白をコードするDNAを有するクローンを選択する。宿主大腸菌として、HB101、JM109、LE392、TB1及びBL21などが使用可能であるが、好ましくは、JM109である。遺伝子の導入方法としては、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、PEG法などが挙げられるが何れの方法を用いてもよい。目的遺伝子の確認は、プラスミドを精製し、塩基配列を決定することにより行われる。このような一連の組換え操作は、Sambrookらが述べている一般的な遺伝子組換え技術(Molecular Cloning, A Laboratory Manual Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1989)に従って行うことができる。実際には、市販のキットを用い、添付の方法に従って行えばよい。
【0042】
(2)不溶性SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の発現及び精製
クローニングされたSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の特定部位に、ポイントミューテーションを入れ、これを大腸菌に導入することにより、本来、可溶性であったSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を不溶性の封入体として発現させることができる。
【0043】
ポイントミューテーションは、サイトダイレクティドミュータジェネシス法により行われる。実際には、Takara社のSite-Directed Mutagenesis System (Mutan-Super Express Km、Mutan-Express Km、Mutan-Kなど)、Stratagene社のQuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit、QuickChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit、Invitrogen社のGeneTailor Site-Directed Mutagenesis Systemなどの市販のキットを用い、添付のプロトコールに従えばよい。既にポイントミューテーションが入った適当サイズの核酸断片を置換することにより、ポイントミューテーションを入れることもできる。
【0044】
また、通常のPCRを行った場合、増幅遺伝子には、不特定の位置に不特定の数の塩基置換が一定の割合で生じるので、この方法を利用することにより塩基置換を行うことができる。置換された塩基がアミノ酸コドンに影響する場合、アミノ酸変異を起こすことになり、その結果、封入体を形成するクローンが出現しうる。これらのクローンを選択することにより封入体を得ることができる。
【0045】
可溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白は、例えば、当該蛋白のシグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換、第154番目のアミノ酸をグリシンに置換、第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換、第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換、第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換、第278番目のアミノ酸をグリシンに置換、及び/又は第531番目のアミノ酸をグリシンに置換することにより、大腸菌体内で不溶性の封入体として発現される。したがって、SpaA遺伝子のポイントミューテーションは、これらのアミノ酸が置換されるように行われる。上記の少なくとも一箇所にアミノ酸変異を入れることにより封入体は形成されるが、免疫原性を消失しない限り、これら全てに変異を入れてもよい。好ましくは、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の第69番目のアミノ酸がグリシンに置換、第214番目のアミノ酸がグルタミンに置換、第278番目のアミノ酸がグリシンに置換、第531番目のアミノ酸がグリシンに置換、第154番目及び第203番目のアミノ酸が各々グリシン及びトレオニンに置換、第214番目及び第253番目のアミノ酸が各々グルタミン及びトレオニンに置換、第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸が各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換されるようにSpaA遺伝子のポイントミューテーションが行われる。
【0046】
SpaA蛋白の一部を除去して得られるΔSpaA蛋白の領域及びサイズは、免疫原性を保持し、且つアミノ酸置換をしたときに封入体を形成する範囲であれば特に制限されない。少なくともC末側の約1/3を除去したΔSpaAは、本発明に使用することができる。好ましくは、C末側207個のアミノ酸を除去した、シグナルペプチドを含むN末側より420個のアミノ酸からなるΔSpaA蛋白である。
【0047】
また、上記とは逆のアミノ酸置換を行うことにより、不溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を可溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白に変換することも可能であるから、本発明の方法により、目的に応じて可溶性又は不溶性のいずれのSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をも自由に得ることができる。
【0048】
ポイントミューテーションが施されたSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の発現は前記のクローニングに用いた方法に準じて行われる。発現ベクターは市販のものを使用し、これに合わせて適当な大腸菌が宿主として選択される。例えば、T7プロモーターを有するベクターの場合にはBL21(DE3)、DH5α(DE3)、トリプトファンプロモーターを有するベクターの場合にはHB101,DH5α、JM109などが使用される。好ましくは、クローニングと目的蛋白の発現を同時に行うことができるpET11d(Novagen社)ベクターと大腸菌BL21株の組み合わせである。
【0049】
SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を発現している組換え大腸菌のスクリーニングは、以下のように行われる。発現誘導剤(本発明に使用した発現システムではIPTGを使用)の存在下に、培養・増殖した菌体を低速遠心分離により回収し、これに一定の蒸留水を加え懸濁した後、超音波処理、又はフレンチプレス、マントンゴリン等のホモジナイザーにより菌体を破砕し、高速遠心(15000 rpm、15分間)により沈渣に封入体を回収する。蒸留水に、適宜界面活性剤(例えば、Triton X100)、キレート剤(例えば、EDTA)、リゾチーム等を添加してもよい。再度、適当量の蒸留水に懸濁した後、一定量をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、クマシーブリリアントブルーで染色した後、分子サイズ及び染色像からSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の発現を確認する。また、封入体の形成量は、上記の遠心分離後の上清と沈渣のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白量を比較することにより行われる。本発明においては、約90%以上が沈渣に検出される。SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の確認(または検出)には、上記の分子サイズに基づく方法以外に、ELISA法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法などの抗原抗体反応に基づく方法が取られることもある。いずれも大腸菌で発現させた外来蛋白を検出する際の一般的な方法であり、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0050】
斯かるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白産生大腸菌からSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を精製する際には、特開2002−34568号公報に記載の方法、あるいは、一般的に、蛋白質化学において使用される精製方法、例えば、遠心分離、塩析法、限外ろ過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換クロマト法、ゲルろ過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などの方法を組み合わせた方法が使用される。本発明の方法に従えば、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白産生大腸菌の培養菌液を酵素処理(例えば、リゾチーム)、超音波処理(例えば、音波照射型細胞破砕機)又は両処理を行った後、遠心分離(例えば、15000 rpm、15分間)と洗浄バッファー(例えば、20mM Tris-HCl pH7.5、10mM EDTA、1%TritonX-100)への懸濁を繰り返すことにより、90%以上の精製が可能である。
【0051】
(3)SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の免疫原性
こうして得られるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の免疫原性は、これらの蛋白をマウス又はその他の感染動物に免疫し、豚丹毒菌の強毒株で攻撃試験を行うことにより調べることができる。免疫方法(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内等の投与部位、免疫期間等)は、通常ワクチン等の免疫原性を調べるときに使用される一般的な手法に従い行えばよい。より具体的には、抗原蛋白を25%(vol/vol)水酸化アルミニウムゲル加生理食塩水で5倍階段希釈した希釈列を調製し、1希釈列あたり5〜10匹のマウス(ddy、5週齢、雌)皮下投与して免疫する。免疫の3週間後に豚丹毒菌の強毒株である藤沢株の生菌をマウス皮内に注射し、10日間、マウスの生死を観察する。抗原蛋白の免疫効果は、その蛋白の半数防御量(PD50)を以って判定する。
【0052】
本発明のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白は、不溶性の状態で精製した後、尿素、塩酸グアニジン、アルギニン塩酸塩等の可溶化剤で可溶化し、メンブランフィルター等で無菌ろ過し、豚丹毒菌及びその他の感受性動物、例えば、イノシシ、鯨類、鶏、七面鳥及びヒトへの感染を防御するためのワクチン原料として使用される。これに、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミネラルオイル及びノンミネラルオイル等の免疫賦活剤、ポリソルベート80、アミノ酸及びラクトースやスクロース等の糖等の安定剤及びホルマリン、チメロサール、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウム等の保存剤を適宜選択して添加することにより製剤化が行われる。また、賦形剤としての効果を有するラクトース、スクロース等の糖を添加した場合、凍結乾燥製剤として製剤化することも可能である。
【0053】
以下に、実施例を挙げて本願発明をさらに具体的に説明するが、この例示に限定されるものではない。なお、以下に示す実施例では、特に断りのない限り、和光純薬、宝酒造、Difco社製の試薬を使用した。
【実施例1】
【0054】
(1)SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白をコードする遺伝子のクローニング
豚丹毒菌血清型1型の藤沢株及び小金井株、血清型2型の多摩96株及びSE-9株を0.1%Tween80添加ブレインハートインフュージョン培地(Difco)で37℃、16〜48時間培養した。培養菌液(約1.5〜3.0mL)を遠心して得られた沈殿(約0.03g以上)より、DNA抽出キット(Isoplant、株式会社ニッポンジーン)を用いて全ゲノムDNAを抽出した。
【0055】
これを鋳型として、配列番号1記載の塩基配列に基づき作製した合成プライマー(配列番号3と4のペアー、配列番号3と5のペアー)とLAPCRキット(宝酒)を用いてPCRを行った。反応液を94℃に3分間保持した後、94℃-60秒、56℃-30秒、72℃-60秒のサイクルを30回繰り返した。配列番号3のプライマーは、SpaA遺伝子の第79番目の塩基より下流領域を増幅させるために設計したもので、その5’末側にNcoIサイトが付加されている。配列番号4及び5のプライマーは、それぞれSpaA遺伝子の第1260番目及び第1881番目の塩基(SpaA遺伝子の終止コドン)までを増幅させるために設計したもので、これらの5’末側にはBamHIサイトが付加されている。PCRにより、第79〜1881番目の塩基配列を有するSpaA遺伝子及び第79〜1260番目の塩基配列を有するΔSpaA遺伝子が得られる。
【0056】
PCRにより増幅したDNA断片をNcoI及びBamHIで二重消化し、得られる消化物と予めNcoI及びBamHIで二重消化したプラスミドpET11d(Novagen社)とをT4DNAリガーゼを用いて連結した。この反応液と大腸菌JM109を混合し、氷中に数十秒間放置した後、アンピシリン50μg/ml含有LB寒天培地(1.0%Tryptone、0.5%Yeast Extract、1.0%NaCl、1.5%寒天、pH7.0)に塗布し、37℃で一晩放置した。シングルコロニーをアンピシリン50μg/ml含有LB培地1〜5mLに接種し、30〜37℃で振騰し、定法に従い菌体からSpaA蛋白及びΔSpaA蛋白をコードする遺伝子を有するプラスミドを抽出した(図1−a、図1−b)。
【0057】
(2)SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白の発現
実施例1−(1)と同様の方法に従って、各菌株由来のプラスミドを大腸BL21(DE3)に導入し、形質転換したシングルコロニーを得た。シングルコロニーをアンピシリン50μg/ml含有LB培地1〜5mLに接種し、30〜37℃で振騰しながら、培養菌液のOD600nm値が0.6〜1.0に達するまで培養した。この菌液に1/100容のIPTG(100mM)溶液を加え、更に37℃で2〜3時間振騰培養した。当該培養液と等量の2×SDSサンプルバッファーを混合し、100℃で2分間加熱処理した後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけ、クマシーブリリアントブルー(ナカライテスク社製)で染色した。全ての菌株において70及び45kD付近のバンドが検出され、これらの染色像からSpaA蛋白及びΔSpaA蛋白の発現を確認した。図2AはSE-9株由来SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白のSDS-PAGEの結果を、図2Bは藤沢株、多摩96株、小金井株及びSE-9株由来SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白のSDS-PAGEの結果をそれぞれ示す。
【0058】
(3)SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白の形状
SpaA蛋白及びΔSpaA蛋白の封入体形成の有無を以下の方法で調べた。実施例1−(2)の培養菌液を10000rpm、5分間遠心し、得られた沈渣に、もとの培養菌液量の1/5〜1/10容の洗浄バッファー(20mM Tris-HCl pH7.5,10mM EDTA,1%TritonX-100)あるいは蒸留水を加え、均一になるまで縣濁した。この縣濁液にリゾチーム溶液(10mg/ml)を1/100容量添加し、30℃、15分間感作した後、氷冷下、ハンディーソニケーター(メーカー;トミー精工、モデル;UR-20P、アウトプット;5、時間;15秒、2〜4回)で超音波処理し、15000 rpmで15分間遠心分離した。遠心上清を回収した後、その沈渣に遠心前の超音波処理液と等量の洗浄バッファーを加えて再び均一になるまで縣濁した。回収した遠心上清及び沈渣縣濁液のそれぞれに等量の2×SDSサンプルバッファーを加え加熱後、SDS-PAGEにかけ、クマシーブリリアントブルーで染色した。ΔSpaA蛋白が沈渣縣濁液に認められた場合、当該ΔSpaA蛋白は封入体を形成していると判定した(図3)。その結果、SE-9株の数クローンに封入体の形成が認められた(表1)。表1は、調べたクローン数に対する封入体形成クローン数を示す。なお、NDは、未実施を意味する。
【0059】
【表1】

【0060】
(4)封入体形成菌の塩基配列
次に、表1の封入体を形成したSE-9株4クローン(No1、No2、No3及びNo4)よりプラスミドを抽出し、ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の塩基配列を解析した(タカラバイオカスタムサービスセンターに依頼)。配列番号7の配列と比較した結果、表2に示した塩基の変異によるアミノ酸置換が認められた。
【0061】
【表2】

【実施例2】
【0062】
(1)ΔSpaA蛋白のアミノ酸置換による発現蛋白の封入体化
実施例1−(4)の封入体形成菌由来のプラスミドを適当な制限酵素で切断して得られる表2の塩基置換を含むDNA断片を、可溶性のΔSpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)より抽出したプラスミドのΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の相当する領域に置換挿入したプラスミドを構築した。
【0063】
より具体的には、
a)クローンNo1のプラスミドを制限酵素EcoRI及びClaIで二重消化し、アガロース電気泳動にかけ、ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第587番目から1152番目を含むEcoRI−ClaI断片(図4A−a)を分離・精製した。これを、予めEcoRI及びClaI処理した可溶性のΔSpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)由来のプラスミドに挿入し、ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第642番目及び第758番目の塩基が置換されたプラスミドを構築した。
【0064】
同様の手法により、
b)クローンNo3由来のΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第587番目から1152番目を含むEcoRI−ClaI断片(図4A−b)を挿入したプラスミド(第833番目の塩基置換)、
c)クローンNo2由来のΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第266番目から1152番目を含むKpnI−ClaI断片(図4A−c)を挿入したプラスミド(第461番目と第608番目の塩基置換)、及び
d)クローンNo2由来のΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第587番目から1152番目を含むEcoRI−ClaI断片(図4A−d)を挿入したプラスミド(第608番目の塩基置換)を構築した。
【0065】
e)ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第206番目の塩基が置換されたプラスミドは、可溶性のΔSpaA蛋白をコードする遺伝子(SE-9株由来)の第266番目から1152番目を含むKpnI−ClaI断片(図4A−e)をKpnI及びClaI処理したクローンNo2由来のプラスミドに挿入することにより構築した。
【0066】
また、f)ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第642番目の塩基が置換されたプラスミドは、サイトダイレクティドミュータジェネシス法(Takara、Mutan-Super Express Km)により構築した。より具体的には、可溶性のΔSpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)由来のプラスミド(図1−b)を、EcoRI及びHindIIIで二重消化し、ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第587番目から1260番目及びプラスミド(pET11d)の一部を含むEcoRI−HindIII断片(967bp)をベクタープラスミドpKF18k(Takara社)にクローニングした。これを鋳型として、配列番号6の変異導入用合成オリゴヌクレオチド(ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第642番目の塩基TをGに置換した第632番目から第657番目の配列を有する)、Takara社のMutan-Super Express Kmキットに添付のセレクションプライマー5pmol、10×LAPCRバッファー(+Mg2+)5μl、dNTP混合液8μl、LA-Taqポリメラーゼ溶液0.5μl及び滅菌蒸留水を加え50μlとし、実施例1−(1)と同様にPCRを行った。このPCR反応液をエタノール沈殿/洗浄した後に大腸菌MV1184株(Takara社)にクローニングした。得られた変異導入プラスミドをEcoRI及びBamHIで二重消化し、ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第587番目から1260番目を含むEcoRI−BamHI断片を分離・精製した。この断片を出発材料である可溶性のΔSpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)由来のプラスミドの相同部分に置換挿入し、目的のプラスミドを得た。藤沢株、多摩96株由来のΔSpaA蛋白をコードする遺伝子についても、前記と同様の方法に従い、第642番目の塩基TがGに置換されたプラスミドを構築した。
【0067】
このようにして得られたプラスミドで大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、実施例1-(3)に従ってΔSpaA蛋白の形状を調べた結果、何れのプラスミドで形質転換した場合もΔSpaA蛋白は封入体を形成していた。
【0068】
(2)全長SpaA蛋白のアミノ酸置換による発現蛋白の封入体化
実施例1−(4)の封入体形成菌由来のプラスミドを適当な制限酵素で切断して得られる表2の塩基置換を含むDNA断片を、可溶性のSpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)より抽出したプラスミドのSpaA蛋白をコードする遺伝子の相当する領域に置換挿入したプラスミドを構築した。
【0069】
より具体的には、
a)クローンNo4由来のプラスミドを制限酵素ClaI及びBamHIで二重消化し、アガロース電気泳動にかけ、SpaA蛋白をコードする遺伝子の第1152番目から第1881番目の塩基(SpaA遺伝子の終止コドン)までの配列を含むClaI−BamHI断片(図4B−a)を分離・精製した。これを、予めClaI及びBamHI処理した可溶性の全長SpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)由来のプラスミドに挿入し、SpaA蛋白をコードする遺伝子の1591番目の塩基が置換されたプラスミドを構築した。
【0070】
b)実施例2−(1)−a)のプラスミドをPstI及びClaIで二重消化し、アガロース電気泳動にかけ、ΔSpaA蛋白をコードする遺伝子の第611番目から1152番目の配列を含むPstI−ClaI断片(図4A−f)を分離・精製した。これを、予めPstI及びClaI処理した可溶性の全長SpaA蛋白を発現する菌体(SE-9株)由来のプラスミドに挿入し、SpaA蛋白をコードする遺伝子の第642番目及び第758番目の塩基が置換されたプラスミドを構築した。
【0071】
このようにして得られたプラスミドで大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、実施例1−(3)に従って発現蛋白の形状を調べた結果、SpaA蛋白は封入体として発現された(図5)。
【実施例3】
【0072】
(1)封入体を形成するSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の精製
実施例2−(1)で得たΔSpaA蛋白を封入体として発現する大腸菌及び実施例2−(2)で得た全長SpaA蛋白を封入体として発現する大腸菌をそれぞれ培養し、各培養菌液100 mlを、10000 rpm、5分間遠心し、得られた沈渣に、もとの培養菌液量の1/5〜1/10容の洗浄バッファー(20mM Tris-HCl pH7.5,10mM EDTA,1% TritonX-100)を加え、均一になるまで縣濁した。この縣濁液にリゾチーム溶液(10mg/ml)を1/100容量添加し、30℃、15分間静置した後、氷冷下、音波照射型細胞破砕機(メーカー;Branson Sonic Power Co.、モデル;350、アウトプット;4、Duty Cycle;30%、時間5〜15分)で超音波処理し、15000 rpmで15分間遠心分離した。遠心上清を除去した後、その沈渣に遠心前の超音波処理液と等量の洗浄バッファー(又は滅菌蒸留水)を加えて再び均一になるまで縣濁した。この縣濁液を15000 rpmで15分間遠心分離し、遠心上清を除去して洗浄バッファー(又は滅菌蒸留水)を加えた。この遠心・洗浄操作を3〜5回繰り返した。なお、洗浄の最終段階では遠心沈渣を滅菌蒸留水に縣濁した。この縣濁液を再び15000 rpmで15分間遠心分離し、遠心上清を除去した後、沈渣を8M尿素溶液10 mlに縣濁した。室温で2時間、さらに5℃で18時間穏やかに振騰を加えながら、封入体蛋白を可溶化したものを精製SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白とした。SDS-PAGE後のゲルをクマシーブルー染色し、デンシトメーターで測定した結果、この操作により得られるSpaA蛋白及びΔSpaA蛋白は、90%以上の純度を示した(図6)。
【0073】
(2)SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の免疫原性
SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の免疫原性を次のとおり確認した。実施例3−(1)で精製したSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白溶液4 mlに、生理食塩水11 mlと水酸化アルミニウムゲルアジュバント(ALHYDROGEL“85”、Superfos Biosector社)5 mlを加え、室温で2時間穏やかに振騰し、ワクチン液とした。このワクチン液を25%(vol/vol)水酸化アルミニウムゲル加生理食塩水で5倍階段希釈した希釈列を調製し、1希釈列あたり10匹のマウス(ddy、5週齢、雌)皮下に0.5 ml注射して免疫した。免疫の3週間後に豚丹毒菌藤沢株の生菌約1000個をマウス皮内に注射して攻撃した。10日間マウスの生死を観察し、精製したSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の半数防御量(PD50)を求めた。表3に示したとおり、精製したSpaA又はΔSpaA蛋白の半数防御量(PD50)は、0.0621〜0.1885μgと、きわめて高い免疫原性を有していた。マウス半数防御量(50%有効量)は、Behrens-Karber法(Karber G: Beitrag zur kollektiven Behandlung pharmakologischer Reihenversuche. Arch. Exp. Path. Pharm., 162:480, 1931.、細菌学実習提要 改訂5版 医科学研究所学友会編(丸善)、p.564-565)により、次式のとおり計算した。
マウス半数防御量(μg)=10m、m=X4−〔(h0+h1)(X1−X0)×1/2+(h1+h2)(X2−X1)×1/2+(h2+h3)(X3−X2)×1/2+(h4+h3)(X4−X3)×1/2〕
ここで、X0,X1,....X4は各接種量の対数であり、h0,h1,....h4はそれに対する実測効果率(生存数/攻撃数)である。なお、各接種量の対数(X)は、X=Log10〔試料の蛋白濃度(μg/ml)×マウス注射量(ml)÷希釈倍数〕の式で与えられる。
【0074】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の方法は、大腸菌で可溶性のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白を不溶性の封入体として生産する方法を提供するもので、本発明の方法を可溶性蛋白の製造工程に取り入れることにより、実用的なレベルでのSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の製造方法の確立を可能にし、当該製造方法が確立されることによってSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白の市場への安定供給が確保される。本発明の方法により得られる組換えSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白は、本来の可溶性蛋白と同等の免疫原性を保持しており、単独で又は種々の安定剤、保護剤、防腐剤等の添加物と共に用いることにより、豚丹毒ワクチンの材料として利用できる。また、モノクローナル/ポリクローナル抗体を作製する際の抗原として、あるいは、抗SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白抗体と豚丹毒菌との結合に関する研究材料として利用できる。このように、本発明の方法により得られるSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白は、医療及び研究分野において多大なる貢献をするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮型のΔSpaA蛋白の変異体を製造する方法であって、該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列にアミノ酸置換を導入するような変異を起こさせ、該変異を有する遺伝子を大腸菌中で発現させ、ついで発現された変異体のうちから封入体を形成したものを選択することを含む方法。
【請求項2】
下記(A)ないし(D):
(A)可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子にアミノ酸置換が起こるように変異を導入する、
(B)前記の変異遺伝子を有する発現ベクターで大腸菌を形質転換する、
(C)前記形質転換した大腸菌から不溶性の封入体を形成する大腸菌を選択する、ついで
(D)前記大腸菌を培養し、菌体内の封入体を回収する
の工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(D)の後にさらに下記(E)〜(F):
(E)前記封入体又は可溶化剤で処理した封入体を豚丹毒菌感受性動物に投与した後、豚丹毒菌の強毒株で攻撃する、ついで
(F)前記豚丹毒菌感受性動物の生死により豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)の有無を判定する
の工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該アミノ酸置換が、下記(1)ないし(7):
(1)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(2)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(3)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(4)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(5)シグナルペプチドを含むN末端より第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(6)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;及び
(7)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せである、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該アミノ酸置換が、下記(a)ないし(h):
(a)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(b)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(c)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(d)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(e)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(f)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換;
(g)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換;又は
(h)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換
のいずれか一つである、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
豚丹毒菌が、藤沢株、小金井株、多摩96株、SE-9株及び静岡63株よりなる群から選ばれる、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該アミノ酸置換を導入する前のSpaA蛋白又はΔSpaA蛋白が、それぞれ配列番号2に示す配列又はそのC末側を除去した配列を有する、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮型のΔSpaA蛋白の変異体。
【請求項9】
SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の変異体。
【請求項10】
該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換を導入するような変異を起こさせ、該変異を有する遺伝子を大腸菌中で発現させ、ついで発現された変異体のうちから封入体を形成したものを選択することによって得られる、請求項8又は9に記載の変異体。
【請求項11】
下記(A)ないし(D):
(A)可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子にアミノ酸置換が起こるように変異を導入する、
(B)前記の変異遺伝子を有する発現ベクターで大腸菌を形質転換する、
(C)前記形質転換した大腸菌から不溶性の封入体を形成する大腸菌を選択する、ついで
(D)前記大腸菌を培養し、菌体内の封入体を回収する
の工程を行うことによって得られる、請求項8ないし10のいずれかに記載の変異体。
【請求項12】
工程(D)の後にさらに下記(E)〜(F):
(E)前記封入体又は可溶化剤で処理した封入体を豚丹毒菌感受性動物に投与した後、豚丹毒菌の強毒株で攻撃する、ついで
(F)前記豚丹毒菌感受性動物の生死により豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)の有無を判定する
の工程を行うことによって得られる、請求項11に記載の変異体。
【請求項13】
該アミノ酸置換が、下記(1)ないし(7):
(1)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(2)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(3)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(4)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(5)シグナルペプチドを含むN末端より第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(6)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;及び
(7)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せである、請求項8ないし12のいずれかに記載の変異体。
【請求項14】
該アミノ酸置換が、下記(a)ないし(h):
(a)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(b)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(c)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(d)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(e)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(f)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換;
(g)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換;又は
(h)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換
のいずれか一つである、請求項8ないし12のいずれかに記載の変異体。
【請求項15】
配列番号2で示される配列又はそのC末側を除去した配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列を有する、請求項8ないし14のいずれかに記載の変異体。
【請求項16】
該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白が、藤沢株、小金井株、多摩96株、SE-9株及び静岡63株よりなる群から選ばれた豚丹毒菌に由来するものである、請求項8ないし15のいずれかに記載の変異体。
【請求項17】
免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮型のΔSpaA蛋白の変異体を主成分として含む組成物。
【請求項18】
該変異体が、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
該変異体が、該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換を導入するような変異を起こさせ、該変異を有する遺伝子を大腸菌中で発現させ、ついで発現された変異体のうちから封入体を形成したものを選択することによって得られたものである、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
該変異体が、下記(A)ないし(D):
(A)可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子にアミノ酸置換が起こるように変異を導入する、
(B)前記の変異遺伝子を有する発現ベクターで大腸菌を形質転換する、
(C)前記形質転換した大腸菌から不溶性の封入体を形成する大腸菌を選択する、ついで
(D)前記大腸菌を培養し、菌体内の封入体を回収する
の工程を行うことによって得られたものである、請求項17ないし19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
該変異体が、工程(D)の後にさらに下記(E)〜(F):
(E)前記封入体又は可溶化剤で処理した封入体を豚丹毒菌感受性動物に投与した後、豚丹毒菌の強毒株で攻撃する、ついで
(F)前記豚丹毒菌感受性動物の生死により豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)の有無を判定する
の工程を行うことによって得られたものである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
該変異体における該アミノ酸置換が、下記(1)ないし(7):
(1)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(2)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(3)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(4)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(5)シグナルペプチドを含むN末端より第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(6)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;及び
(7)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せである、請求項17ないし21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
該変異体における該アミノ酸置換が、下記(a)ないし(h):
(a)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(b)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(c)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(d)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(e)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(f)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換;
(g)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換;又は
(h)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換
のいずれか一つである、請求項17ないし21のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
該変異体が、配列番号2で示される配列又はそのC末側を除去した配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列を有する、請求項17ないし23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
該変異体が、藤沢株、小金井株、多摩96株、SE-9株及び静岡63株よりなる群から選ばれた豚丹毒菌に由来するものである、請求項17ないし24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮型のΔSpaA蛋白の変異体をコードする遺伝子。
【請求項27】
SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列をコードする、請求項26に記載の遺伝子。
【請求項28】
該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換を導入するような変異を起こさせ、該変異を有する遺伝子を大腸菌中で発現させ、ついで発現された変異体のうちから封入体を形成したものを選択することによって得られたものである、請求項26又は27に記載の遺伝子。
【請求項29】
下記(A)ないし(D):
(A)可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子にアミノ酸置換が起こるように変異を導入する、
(B)前記の変異遺伝子を有する発現ベクターで大腸菌を形質転換する、
(C)前記形質転換した大腸菌から不溶性の封入体を形成する大腸菌を選択する、ついで
(D)前記大腸菌を培養し、菌体内の封入体を回収する
の工程を行うことによって得られたものである、請求項26ないし28のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項30】
工程(D)の後にさらに下記(E)〜(F):
(E)前記封入体又は可溶化剤で処理した封入体を豚丹毒菌感受性動物に投与した後、豚丹毒菌の強毒株で攻撃する、ついで
(F)前記豚丹毒菌感受性動物の生死により豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)の有無を判定する
の工程を行うことによって得られたものである、請求項29に記載の遺伝子。
【請求項31】
該変異体における該アミノ酸置換が、下記(1)ないし(7):
(1)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(2)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(3)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(4)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(5)シグナルペプチドを含むN末端より第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(6)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;及び
(7)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せである、請求項26ないし30のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項32】
該変異体における該アミノ酸置換が、下記(a)ないし(h):
(a)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(b)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(c)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(d)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(e)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(f)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換;
(g)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換;又は
(h)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換
のいずれか一つである、請求項26ないし30のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項33】
配列番号2で示される配列又はそのC末側を除去した配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列をコードする、請求項26ないし32のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項34】
藤沢株、小金井株、多摩96株、SE-9株及び静岡63株よりなる群から選ばれた豚丹毒菌に由来するものである、請求項26ないし33のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項35】
配列番号1において、下記(1)ないし(7):
(1)配列番号1記載の塩基配列において第206番目の塩基がG;
(2)配列番号1記載の塩基配列において第461番目の塩基がG;
(3)配列番号1記載の塩基配列において第608番目の塩基がC;
(4)配列番号1記載の塩基配列において第642番目の塩基がG;
(5)配列番号1記載の塩基配列において第758番目の塩基がC;
(6)配列番号1記載の塩基配列において第833番目の塩基がG;及び
(7)配列番号1記載の塩基配列において第1591番目の塩基がG
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せの塩基置換を含む塩基配列又はその3’側を除去した塩基配列を有する、請求項26ないし34のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項36】
配列番号1において、下記(a)ないし(h):
(a)配列番号1記載の塩基配列において第206番目の塩基がG;
(b)配列番号1記載の塩基配列において第608番目の塩基がC;
(c)配列番号1記載の塩基配列において第642番目の塩基がG;
(d)配列番号1記載の塩基配列において第833番目の塩基がG;
(e)配列番号1記載の塩基配列において第1591番目の塩基がG;
(f)配列番号1記載の塩基配列において第461番目及び第608番目の塩基が各々G及びC;
(g)配列番号1記載の塩基配列において第642番目及び第758番目の塩基が各々G及びC;又は
(h)配列番号1記載の塩基配列において第206番目、第461番目及び第608番目の塩基が各々G、G及びC
のいずれか一つの塩基置換を含む塩基配列又はその3’側を除去した塩基配列を有する、請求項26ないし34のいずれかに記載の遺伝子。
【請求項37】
免疫原性を有し且つ大腸菌において封入体として発現される、豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はその一部を除去した短縮型のΔSpaA蛋白の変異体の、豚丹毒ワクチンの製造における使用。
【請求項38】
該変異体が、SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列を有する、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
該変異体が、該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子に該SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白のアミノ酸配列中にアミノ酸置換を導入するような変異を起こさせ、該変異を有する遺伝子を大腸菌中で発現させ、ついで発現された変異体のうちから封入体を形成したものを選択することによって得られる、請求項37又は38に記載の使用。
【請求項40】
該変異体が、下記(A)ないし(D):
(A)可溶性の豚丹毒菌表層防御抗原SpaA蛋白又はΔSpaA蛋白をコードする遺伝子にアミノ酸置換が起こるように変異を導入する、
(B)前記の変異遺伝子を有する発現ベクターで大腸菌を形質転換する、
(C)前記形質転換した大腸菌から不溶性の封入体を形成する大腸菌を選択する、ついで
(D)前記大腸菌を培養し、菌体内の封入体を回収する
の工程を行うことによって得られたものである、請求項37ないし39のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
該変異体が、工程(D)の後にさらに下記(E)〜(F):
(E)前記封入体又は可溶化剤で処理した封入体を豚丹毒菌感受性動物に投与した後、豚丹毒菌の強毒株で攻撃する、ついで
(F)前記豚丹毒菌感受性動物の生死により豚丹毒菌の感染に対する防御能(免疫原性)の有無を判定する
の工程を行うことによって得られたものである、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
該変異体における該アミノ酸置換が、下記(1)ないし(7):
(1)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(2)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(3)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(4)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(5)シグナルペプチドを含むN末端より第253番目のアミノ酸をトレオニンに置換;
(6)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;及び
(7)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換
よりなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の組合せである、請求項37ないし41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
該変異体における該アミノ酸置換が、下記(a)ないし(h):
(a)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(b)シグナルペプチドを含むN末端より第203番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(c)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目のアミノ酸をグルタミンに置換;
(d)シグナルペプチドを含むN末端より第278番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(e)シグナルペプチドを含むN末端より第531番目のアミノ酸をグリシンに置換;
(f)シグナルペプチドを含むN末端より第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン及びトレオニンに置換;
(g)シグナルペプチドを含むN末端より第214番目及び第253番目のアミノ酸を各々グルタミン及びトレオニンに置換;又は
(h)シグナルペプチドを含むN末端より第69番目、第154番目及び第203番目のアミノ酸を各々グリシン、グリシン及びトレオニンに置換
のいずれか一つである、請求項37ないし41のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
該変異体が、配列番号2で示される配列又はそのC末側を除去した配列中にアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列を有する、請求項37ないし43のいずれかに記載の使用。
【請求項45】
該変異体が、藤沢株、小金井株、多摩96株、SE-9株及び静岡63株よりなる群から選ばれた豚丹毒菌に由来するものである、請求項37ないし44のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【国際公開番号】WO2005/083072
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510389(P2006−510389)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001814
【国際出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000173555)財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】