説明

大腸菌群の検出プロセス及びこのプロセスで使用するためのキット

(a)少なくとも(1)種の大腸菌株を含む疑いのある、少なくとも1つの試料、(2)水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの培養デバイス、及び(3)培養デバイス内で培養培地に接触させ、培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤、を準備する工程、(b)粒子状濃縮剤を試料と接触させて配置することで、大腸菌株の少なくとも一部を粒子状濃縮剤に結合し、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を形成する工程、(c)大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を、培養培地と接触させて配置する工程、(d)培養培地と接触させた、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を含む培養デバイスをインキュベートし、培養培地を水和させる工程、及び(e)粒子状濃縮剤から大腸菌株を分離することなく、大腸菌株の存在を光学的に検出する工程、を含む、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願特許第61/267,860号(2009年12月9日出願);同第61/141,900号(2008年12月31日出願);同第61/141,813号(2008年12月31日出願);及び同第61/141,685号(2008年12月31日出願)に対する優先権を請求し、これらの特許の内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、試験試料中の微生物の存在を検出するためのプロセスに関する。他の態様では、本発明はまた、このようなプロセスを実施するのに使用するための診断キットに関する。
【背景技術】
【0003】
飲料水試験及び食品安全性試験において、大腸菌群の存在又は非存在は品質の重要な根拠であると見なされ、飲用水及びある種の食品(例えば乳製品)中に許容される大腸菌群の量は、世界中の多くの国々で制限されている。大腸菌群には、Escherichia coliなどの糞便性大腸菌も含む。食品試料又は水試料中の糞便性大腸菌の存在は、食品又は水の糞便性の汚染の、並びに他の病原微生物が存在する可能性の、主要な指標として使用される。
【0004】
水試料中の微生物を検出し、同定し、及び/又は計数するための方法は、例えば、米国公衆保健協会(American Public Health Association)、米国水道協会(American Water Works Association)、及び水環境連盟(Water Environment Federation)の共同出版である、抄録「Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater」(SMEWW)、第21版に見ることができる。SMEWWは、比較的大容量の水中に、比較的低濃度で存在する微生物の、直接的な計測を得るための水試験に一般に使用される、膜濾過技法を記載する。この技法の実施時には、一定量の水を膜フィルタに通過させ、膜を培養培地又は装置中である一定の期間インキュベートし、次いで得られる微生物コロニーを計測する。膜濾過技法は、飲料水を生成することを意図したプロセスからの試料、加えて様々な天然の未処理水源からの試料の微生物学的品質をモニタリングするのに有用である。
【0005】
食品試料中の微生物を検出し、同定し、及び/又は計数するための方法は、多くの場合、食品の性質によって及び試料中に検出され得る微生物の種類によって変化する。食品試料を試験するための方法の一覧としては、「Standard Methods for the Examination of Dairy Products」(27版、米国公衆保健協会(American Public Health Association)(Washington,D.C.)出版)及び「Bacteriological Analytical Manual(「BAM」)」(米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)(Washington,D.C)出版)が挙げられる。通常、固形食品を水性媒質に懸濁し、混合及び/又は粉砕すると、定量的な微生物解析法に使用することのできる食品材料の液体ホモジネートが得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の参照方法は一般的に比較的高価であり、多工程を含み、並びに/あるいは比較的高機能の設備及び/又は比較的高度な訓練を受けた作業者を必要とする。例えばほとんどの膜濾過技法は、滅菌済み装置、真空マニホールド、及び結果のマニュアルでの解釈を必要とする。他の欠点は、小さい粒子(例えばシルト、埃、錆、又は他の懸濁された粒子)により、膜フィルタが詰まる恐れがあるというものである。
【0007】
遠心沈降などの手技は、大容量(例えば50ミリリットルを超える容量)をサンプリングするのに特殊化させた電力設備(power equipment)を必要とし、かつこのような容量から比較的少数の微生物を回収するための比較的長い時間を必要とする。試料の微生物解析に使用される培養デバイスは、多くの場合、比較的少量(例えば約1ミリリットル)の試料接種容量のみ収容可能である。このような制限は、例えば大容量(100ミリリットル)の水試料の試験を要求する、米国環境保護局(U.S. Environmental Protection Agency)の水質試験規則などの、水質試験領域において、特に問題になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明者らは、病原微生物を迅速に検出し、同定し、及び/又は計数するプロセスに対し、差し迫った必要性が存在することを認識する。このようなプロセスは、好ましくは迅速なだけでなく、低コストで、単純であり(複雑な機器又は手順の必要がない)、及び/又は様々な条件下(例えば、様々な種類の試料マトリックス及び/又は病原微生物、様々な微生物充填量、及び様々な試料容量)で有効である。具体的には、本発明者らは、試験試料中(例えば、飲料水試験及び食品安全性試験で使用する試験試料中)の大腸菌群を検出し、同定し、及び/又は定量するための、単純で、有効で、及び/又は費用効率が高いプロセスに対して必要性が存在することを認識する。
【0009】
簡潔に述べると、本発明は、一態様では試料中の大腸菌群の存在又は非存在を検出するためのプロセスを提供する。このプロセスは、
(a)少なくとも1種の大腸菌株を含む疑いのある、少なくとも1つの試料(好ましくは流体の形態、より好ましくは水試料)を準備する工程、
(b)水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの培養デバイスを準備する工程、
(c)培養デバイス内で培養培地に接触させ、培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤を準備する工程、
(d)粒子状濃縮剤を試料と接触させて(好ましくは混合することにより)配置することで、大腸菌株の少なくとも一部を粒子状濃縮剤に結合し、あるいは粒子状濃縮剤により捕捉させ、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を形成する工程、
(e)大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を、培養デバイスの培養培地と接触させて配置する工程、
(f)培養培地と接触させた、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を含む培養デバイスをインキュベートし、培養培地を水和させる工程、及び
(g)粒子状濃縮剤から大腸菌株を分離することなく、大腸菌株の存在(例えば大腸菌株の少なくとも1つのコロニーの存在)を光学的に検出する工程、を含む。
【0010】
好ましくは大腸菌群は、ガス産生大腸菌群(より好ましくはEscherichia coli)であり、培養デバイスは、少なくとも1つの発酵性栄養素を含む培養培地を含み(より好ましくは、培養デバイスは、少なくとも1つの発酵性栄養素を含む培養培地を含む、平板状フィルム型培養デバイスである)、粒子状濃縮剤は微小粒子(より好ましくは無機微小粒子)を含み、及び/又は光学的検出は少なくとも1つの色変化(より好ましくは少なくとも1つの色変化、及び大腸菌株の少なくとも1つのコロニーに近接した少なくとも1つの気泡の存在)を検出することを含む。
【0011】
好ましくはプロセスは、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を(好ましくは重力沈降により)凝離すること、得られる凝離された、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を、試料から分離すること、大腸菌株を同定すること、及び/又は大腸菌群濃度を定量すること若しくは計数することを更に含む。光学的検出工程は、手動又は自動のいずれであってもよい。
【0012】
驚くべきことに検出又は解析の際に細菌を生存可能なままにするだけでなく、粒子状濃縮剤の存在下で(粒子状濃縮剤を分離又は取り出しせずとも)、細菌を光学的に検出又は解析することさえ可能(自動化された光学的検出系でさえも検出又は解析可能)にするような、ある種の比較的安価な粒子状濃縮剤が、大腸菌群(例えば比較的大容量の試料(例えば100ミリリットル水試料)中の比較的低濃度の大腸菌群など)を濃縮するのに有効であり得ることが判明している。このような粒子状濃縮剤は、1種以上の大腸菌株をより容易にかつ迅速に解析し得るよう、試料(例えば食品試料又は水試料)中に存在する大腸菌株を濃縮するのに使用することができる。
【0013】
驚くべきことに、本発明のプロセスで使用される粒子状濃縮剤は、一般的に、大腸菌群の代謝(酵素及び/又はガス生産を含む)及びコロニー増殖、すなわち大腸菌群の検出、同定、及び/又は定量に関して一般に信頼される大腸菌群コロニー指標特性(coliform colony indicator characteristics)(例えば色変化及び/又は気泡)に、有意に干渉しない。したがって驚くべきことに、インキュベーション及び検出時の粒子状濃縮剤の存在は、概して、E.coli特異的な同定(上記に説明したような食品及び/又は飲料水品質試験により、公衆衛生を維持するのに必要とされ得る)に必要とされるより厳密な試験を含む、大腸菌群試験の精度を有意に低下させることはない。
【0014】
本発明のプロセスは、水質(概して比較的少数の大腸菌群を含有する水試料)試験において、サンプリング効率の上昇をもたらすことができ(例えば従来の未濃縮の播種容量0.1mLと比較して、試料容量の約2桁の増加及び/又は検出可能な微生物濃度の約2桁の低下を可能にする)、かつ粒子状濃縮剤の使用により、濃縮に膜フィルタを用いることに付随するフィルタ目詰まり問題を回避することができる。有効な試料濃縮を可能にすることにより、本発明のプロセスは、比較的少量(例えば約1ミリリットル)の試料接種容量のみを収容可能な培養デバイスと適合性であってよい。
【0015】
本発明のプロセスは、比較的単純でありかつ低コストであり(複雑な装置、株特異的な高価な材料、又は高度に訓練された作業者を必要としない)、並びに多くの場合先行技術の、より複雑な大腸菌群検出法(例えば膜濾過)を要求する特別な設備が整った検査室環境を必要とせずに、野外で比較的迅速に実施することができる(好ましい実施形態は、約22〜24時間以内での大腸菌群の検出を可能にする)。加えて、このプロセスは様々な大腸菌群及び様々な試料に(異なる試料マトリックス、並びに、更には、少なくとも一部の従来技術とは違って、大腸菌群含有量が少ない試料及び/又は大容量の試料にも)有効であり得る。よって、本発明のプロセスの少なくともいくつかの実施形態は、様々な状況下で病原微生物(特に大腸菌群)を迅速に検出するための、低コストで単純なプロセスに対する、上述のような緊迫した必要性に対応することができる。
【0016】
他の態様では、本発明は本発明のプロセスを実施するのに使用する診断用(又は試料試験)キットも提供し、このキットは、
(a)水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの培養デバイス、及び
(b)培養デバイス内で培養培地に接触させ、培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。同様に、このような数値範囲は、範囲内に含まれる全ての数を含むことを意味する(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
【0019】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一又は異なる条件下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0020】
用語「含む」及びこの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲中に現れる場合、制限する意味を有しない。
【0021】
本明細書で使用されるように、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。そのため、例えば、「1つの(a)」標的大腸菌群を含有する疑いがある液体試料は、液体試料が「1つ以上の」標的大腸菌群を含み得ることを意味すると解釈することができる。
【0022】
上記「課題を解決するための手段」の節は、全ての実施形態又は本発明の全ての実施を説明しようとするものではない。以下の「発明を実施するための形態」が実施形態をより具体的に例示する。「発明を実施するための形態」にわたり、複数の実施例の一覧を通してガイダンスが提供されており、それら実施例は様々な組合せで用いられ得る。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0023】
定義
本特許出願で使用するとき:
「大腸菌株」は、ある検出方法によって区別可能な特定のタイプの大腸菌群を意味する(例えば、異なる属の、属内の異なる種の、又は種内の異なる分離株の大腸菌群)。
【0024】
「濃縮剤」は、大腸菌群を含む微生物を結合する材料又は組成物(好ましくは少なくとも約60パーセント、より好ましくは少なくとも約70パーセント、更により好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセントの微生物捕捉又は結合効率を有する)を意味する。
【0025】
「培養デバイス」は、細胞分裂を少なくとも1回生じさせ得る条件下において、大腸菌群を含む微生物を増殖させるために使用することができる、装置を意味する(好ましくは培養デバイスは、偶発的汚染の可能性を低減するか最小化するハウジング及び/又は微生物の増殖を支持する栄養素供給源を含む)。
【0026】
「検出」は、それにより微生物の存在について判断する、微生物(例えば標的大腸菌群)の少なくとも構成要素を同定することを意味する。
【0027】
「遺伝的検出」は、標的大腸菌群に由来するDNA又はRNAなどの遺伝物質の構成要素の同定を意味する。
【0028】
「免疫学的検出」は、標的大腸菌群に由来するタンパク質又はプロテオグリカンなどの抗原性物質の同定を意味する。
【0029】
「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する何らかの細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
【0030】
「光学的検出」は、少なくとも1種の微生物又は微生物コロニーを含む培養デバイスあるいは培地により、透過、吸収、放出、反射、屈折、分散、又は転化(transformed)され(好ましくは少なくとも部分的に透過される)、少なくとも1種の大腸菌株の存在についての指標又はプローブとして提供される、光の少なくとも1つの波長を同定することを意味する(このような光学的検出方法としては、例えばヒトによる目視検査、顕微鏡イメージング、ルミネセンス検出、蛍光検出、アナログ又はデジタル式光学的イメージング方法(例えばカメラ、ビデオ装置、スキャナなどのイメージングデバイスによる、例えば反射、吸収、透過、及び/又は輝度に(好ましくは少なくとも部分的に透過に)基づく測定)、及び同様物など、並びにこれらの組み合わせが挙げられ;好ましい方法としてはヒトによる目視検査、デジタル式光学的イメージング(より好ましくはスキャナを用いるデジタル式光学的イメージング)、及びこれらの組み合わせが挙げられる)。
【0031】
「試料」は、(例えば分析のために)採取される材質又は物質を意味する。
【0032】
「試料マトリックス」は、試料の微生物以外の構成成分を意味する。
【0033】
「実質的に光学的に透明」(粒子状濃縮剤に関して)は、粒子状濃縮剤が、対応する、粒子状濃縮剤の非存在下での光学的検出と比較して、約200nm〜約1マイクロメートル(好ましくは約400nm〜約700nmの少なくとも1つの可視波長)の範囲の光の少なくとも1つの波長(「検出波長」)の光学的検出を50パーセント以上減衰又は低減させることのないことを意味し、ひいては少なくとも1種の大腸菌株の存在についての指標又はプローブとしての波長の使用を妨げないことを意味する(例えば粒子状濃縮剤は、大腸菌増殖のしるし(例えばコロニー形態、色又は色変化、及び/又は気泡など)の観察又はイメージングを有意に歪曲せず又は損なわず、好ましくは粒子状濃縮剤は波長の光学的検出を、対応する、粒子状濃縮剤の非存在下での光学的検出と比較して約35パーセント以下(より好ましくは約25パーセント以下、更により好ましくは約20パーセント又は約15パーセント以下、更により好ましくは約10パーセント以下、最も好ましくは約5パーセント以下)で減衰又は低減する)。
【0034】
「標的大腸菌群」は、検出することが所望される、何らかの大腸菌株を意味する。
【0035】
試料
本発明のプロセスは、大腸菌群を含有する疑いのある、本質的に任意の試料に適用することができる。大腸菌群は、細菌のEnterobacteriaceaeファミリーのメンバーであり、桿状でグラム陰性の非胞子形成微生物を含む。一部の大腸菌群はガス産生微生物であり、インキュベートした場合(例えば、約35〜37℃の温度で)、乳糖を発酵させ(て酸と二酸化炭素ガスを産生す)ることができる。大腸菌群はヒト及び動物の腸に見出すことができる(糞便性大腸菌)が、水域環境中、土壌中及び植物にも見出され得る。
【0036】
本発明のプロセスは、試料中の大腸菌群(より好ましくは、ガス産生大腸菌群、最も好ましくはガス産生大腸菌群の約95%であるEscherichia coli)の存在を検出するのに有用である。大腸菌群属としては、Escherichia、Enterobacter、Citrobacter、Klebsiella、Serratia、Shigella、及びHafniaが挙げられる。Escherichia coli(E.coli)は、ある種の培養培地に対する増殖性及び色反応(例えば、Escherichia coliの約97%が産生することのできる酵素のβ−グルクロニダーゼの産生により生じる色変化)により他のほとんどの大腸菌群から区別され得る。E.coliはほぼ例外なく糞便性大腸菌であることから、その存在は、糞便による試料汚染の間接的証拠として使用することができる。
【0037】
本発明のプロセスの実施に使用するのに好適な試料としては、限定するものではないが医学、環境、食品、臨床、及び研究試料、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。医学又は獣医学試料としては、例えば、生物源(例えばヒト又は動物)から得た細胞、組織、又は流体が挙げられる。環境試料は、例えば、医療機関又は獣医機関、産業用設備、土壌、水源、食品調理領域(食品接触及び非接触領域)、検査室、又はバイオテロリズムの対象になり得る領域から得たものであり得る。多くの場合、大腸菌群及び他の病原菌による汚染に対する関心が特に集中することから、食品及び/又は水の加工領域、取り扱い領域、及び製造領域の試料が好ましい。
【0038】
液体の形態で得られる試料、又は液体中の固体の分散液又は懸濁液の形態で得られる試料は、直接使用することができ、あるいは濃縮して(例えば遠心分離により)又は希釈して(例えば緩衝(pH調整済み)溶液の追加により)使用することができる。固体又は半固体の形態の試料は、直接使用するか、あるいは例えば、所望する場合、流体媒質(例えば滅菌水又は緩衝液)で洗浄若しくはすすぎ、又は流体媒質中に懸濁若しくは分散させることにより抽出することができる。好ましくは、固体又は半固体の試料は、流体媒質に大腸菌群を含んでいる、試料微生物の懸濁を補助するために、物理的に(例えば均質化)及び/又は化学的に(例えば界面活性剤と混合することにより)処理することができる。
【0039】
試料は表面から(例えばスワブ拭き取り又はすすぎにより)採取することができる。好ましくは、試料は流体の形態で使用される(例えば、液体、気体、又は液体中若しくは気体中の固体若しくは液体の分散物若しくは懸濁物)。
【0040】
本発明のプロセスを実施するのに使用することができる試料の例としては、食品(例えば作りたての食品又はインスタント・ランチ(ready-to-eat lunch)又はデリ・ミート);飲料(例えばジュース又は炭酸飲料);水(飲料水を含む);生体液、細胞又は組織;及び同様物などが挙げられる。好ましい試料としては、食品、飲料、水、及びこれらの組み合わせ(飲料、水、及びこれらの組み合わせがより好ましく、水が更により好ましく、飲料水が最も好ましい)が挙げられる。本発明のプロセスの実施に用いるのに好適であり得る流体試料の非限定的な例としては、地表水、飲用又は飼料用の水、生物製剤用の水、水性溶媒中に懸濁される食料又は乳製品、飲料、果汁、プロセス水、すすぎ水、灌漑用水、冷却水、循環水、ボイラー水、ボイラー給水、地下水、レクリエーション水、処理済み水、及び廃水が挙げられる。
【0041】
試料の量は、個々の用途に応じて異なり得る。プロセスが食品病原体試験検査又は飲料水安全性試験のために使用される場合、試料の量は通常、ミリリットル〜リットルの範囲であり得る(例えば100ミリリットル〜3リットル)。例えばバイオプロセス又は製剤処方などの産業用途においては、この量は何万リットルであることがある。
【0042】
本発明のプロセスで粒子状濃縮剤を使用すると、濃縮した状態の試料から、大腸菌群を含む微生物を単離することができ、同様に、用いられる検出手順を阻害する恐れのある試料マトリックス構成要素から、大腸菌群を含む微生物を分離することもできる。所望により、粒子状濃縮剤の使用は、微生物を濃縮する他の方法により補完され得る。例えば、追加の濃縮が所望される場合、本発明のプロセスの実施にあたり、粒子状濃縮剤を使用する前又は後に、遠心沈降又はサイズ排除系濾過(膜濾過を含む)を利用又は実施することができる。
【0043】
培養デバイス
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な培養デバイスとしては、大腸菌群を含む微生物の増殖又は代謝を可能にするか、又は促進するのに有用である、少なくとも1つの培養培地を含むデバイスが挙げられる。培養デバイスの培養培地には、少なくとも1種の大腸菌株の増殖又は代謝を支持するために、少なくとも1つの栄養素(好ましくは少なくとも1つの発酵性栄養素)と、株の検出を容易にするために、所望により少なくとも1種の指標とを含ませることができる。好ましくは培養デバイスは、平板状フィルム型培養デバイス(例えば、少なくとも1つの自己支持基膜又は基材、及び少なくとも1つのカバーフィルム又はシートを含む)である。
【0044】
各種微生物の増殖を支持することができる栄養素の、非限定的な例としては、ペプトン、酵母抽出物、グルコース、及び同様物など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。ある種の微生物又は微生物群を増殖及び/又は同定するのに必要な、又は所望される、具体的な栄養素又は栄養素の組み合わせは、当該技術分野において既知である(例えば、Violet Red Bile Agar(VRBA)を大腸菌群の増殖のために使用できる)。
【0045】
試料に存在し得る非標的微生物を上回る標的大腸菌群の増殖及び/又は検出を、補助する環境を提供するために、必要に応じて、培養デバイスの培養培地には更に少なくとも1つの選択的な剤(例えば塩、界面活性剤、又は抗生物質)を含ませることができる。同様に、培養培地にはゲル化剤も含ませ得る。好適なゲル化剤としては、冷水溶性の天然及び合成ゲル化剤が挙げられる。そのようなゲル化剤の非限定的な例としては、グアーガム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、イナゴマメゴム、アルギン、及び同様物、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
偶発的な汚染の可能性を低減又は最小化させるために、培養培地は、本質的に任意の好適な容器又はハウジング内に配置することができる(例えばペトリ皿、ビーカー、又はフラスコ)。好ましくは、培養培地及び容器又はハウジングは、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を培養培地に接触させて配置する前に、滅菌することができる。
【0047】
本発明のプロセスを実施するのに用いるために好適な培養デバイスとしては、予め成形されたヒドロゲルマトリックス(例えば寒天、アガロース、又はペクチン酸カルシウム)の形態の培養培地;乾燥している、再水和可能な平板状フィルム型培養デバイス(例えば米国特許第4,476,226号(Hansenら);同第5,089,413号(Nelsonら);同第5,232,838号(Nelsonら);同第6,331,429号(Ushiyama);及び同第6,638,755号(Mizuochiら)に記載のようなもの(これらの特許は参考により本明細書に組み込まれる));水性混合物と流体連通にある多孔質支持体を有する培養デバイス;及び同様物など;並びにこれらの組み合わせ、を含むデバイスが挙げられる。
【0048】
有用な多孔質支持体は、任意の各種物理形態を有し得る(例えば織布、不織布、ゲル、フォーム、メッシュ、スクリム、フリット、微小複製フィルム(microreplicated films)、及び同様物など)。有用な多孔質支持体は親水性材料(例えば濾紙又はガラス繊維フィルタ)から構築することができる。あるいは、多孔質支持体は、材料を親水性にするように処理された疎水性材料から構築されてよく、又は疎水性材料は、元々例えば毛管現象によって、水性溶媒又は溶液を運搬することが可能であってもよい。好ましくは多孔質支持体は、水性溶媒を通して運搬されて、標的大腸菌群の検出を妨げ得るような物質は含有しない。
【0049】
本発明のプロセスの実施に用いるのに好ましい培養デバイスとしては、乾燥している、再水和可能な平板状フィルム型培養デバイス及びこれらの組み合わせが挙げられる。3M(商標)Petrifilm(商標)大腸菌群計測プレート及び3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)が好ましい、乾燥している、再水和可能な平板状フィルム型培養デバイスである(後者のプレートがより好ましい)。これらのプレートは試料用意型(sample-ready)培養デバイスであり、大腸菌群の増殖、検出及び/又は算出に使用できる。加えて、後者のプレートは、単純な、一工程検出、同定及び算出プロセスでE.coliの同定を容易にする(少なくとも1つの色変化の検出、及び少なくとも1つの大腸菌群コロニーに近接した少なくとも1つの気泡の存在の検出による)指標を含有する。本発明のプロセスは、粒子状濃縮剤の使用により、希釈状態の微生物を、比較的大容量(例えば水100ミリリットル)の試料から、最終的に、標準的なピペット手技を用いて直接プレートに移動させることのできる1ミリリットル用量へと濃縮するのに、特に有用なものであり得る。
【0050】
濃縮剤
全般
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な濃縮剤としては、大腸菌群を含む微生物を結合することができ、かつ実質的に光学的に透明(上記に定義されるように)な粒子状材料又は組成物が挙げられる。必要に応じて、粒子状濃縮剤及び水和培養培地を含む試料を探査するために使用される、選択された波長の光の光学的検出の程度を、水和培養培地を含むが粒子状濃縮剤は不含の対応する対照試料を探査するのに使用する際の同様の波長の光学的検出の程度と比較して、判定することによって、特定の光学的検出方法における光透過性の程度について、粒子状濃縮剤を予め選別しておくことができる。
【0051】
例えば使用される粒子状濃縮剤の量及び/又はその平均粒径に応じて、選択された波長の光を有意に吸収しない、及び/又は水和培養培地の屈折率に比較的近く合致する屈折率を有する濃縮剤材料を選択することは、好ましいことであり得る。例えばこの2つの屈折率の差は約0.2未満(好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.05未満、更により好ましくは約0.02未満、最も好ましくは約0.01未満)になり得る。好ましくは(特に比較的大容量の試料及び/又は比較的低濃度の大腸菌群を含む水質試験に使用するためには)粒子状濃縮剤は、対応する濃縮剤不含の対照試料と比較して、試料中に存在する、大腸菌群を含む微生物の少なくとも約60パーセント(より好ましくは少なくとも約70パーセント、更により好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を捕捉又は結合することができる。
【0052】
好適な粒子状濃縮剤としては、粒子状無機材料(例えば金属酸化物、金属ケイ酸塩、シリカ、金属炭酸塩、金属リン酸塩、珪藻土、表面改質珪藻土、及び同様物など、並びにこれらの組み合わせ);官能基を含む粒子(例えばアミン官能性ガラスビーズ);生体分子、生体分子断片、及び/又は生体分子誘導体を含む粒子(例えば抗体、タンパク質、又はビタミンを表面に結合したビーズ);無機材料のコーティングを保有する粒子;及び同様物など;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。必要に応じて、粒子には、このような粒子が光学的な実質的透明性(上記のようなもの)を維持するのに十分な程度に少量で存在し得るという条件で、表面コーティング又は表面結合基(例えば無機表面コーティング又は表面に結合した生体分子)を有する、磁気コアを含ませることができる。
【0053】
粒子状無機材料、官能基を含む粒子(好ましくは官能性ガラスビーズ、より好ましくはアミン官能性ガラスビーズ)、及びこれらの組み合わせが好ましく、粒子状無機材料はより好ましい。好ましい粒子状無機材料としては、金属ケイ酸塩(例えばケイ酸マグネシウム);シリカ;金属炭酸塩(例えば炭酸カルシウム);金属リン酸塩(例えばヒドロキシアパタイト);金属酸化物改質珪藻土、金改質珪藻土、又は白金改質珪藻土;及びこれらの組み合わせから選択される材料が挙げられる。金属炭酸塩(好ましくは炭酸カルシウム);二酸化チタン改質珪藻土、金改質珪藻土、又は白金改質珪藻土(好ましくは二酸化チタン改質珪藻土);シリカ;金属リン酸塩(好ましくはヒドロキシアパタイト);非晶質金属ケイ酸塩(好ましくは非晶質の長球化ケイ酸マグネシウム);及びこれらの組み合わせがより好ましい。非晶質の長球化ケイ酸マグネシウムが最も好ましい。
【0054】
好ましくは粒子状濃縮剤は微小粒子を含む。好ましくは粒子は約1マイクロメートル(より好ましくは約2マイクロメートル、更により好ましくは約3マイクロメートル、最も好ましくは約4マイクロメートル)〜約100マイクロメートル(より好ましくは約50マイクロメートル、更により好ましくは約25マイクロメートル、最も好ましくは約20マイクロメートル)の範囲の粒径を有し、ここで任意の下限を範囲の任意の上限と組み合わせることができる。
【0055】
上記の濃縮剤を使用した濃縮又は捕捉は一般的に特定の株、種、又は微生物のタイプに対して特異的ではなく、よって、試料内の微生物の全体的な個体群の濃縮を提供する。次に、株特異的精査を伴う任意の既知の光学的検出方法を用いて、捕捉された微生物群の中から、微生物の具体的な株を検出することができる。
【0056】
無機材質は、水性系中に分散又は懸濁された状態で、材料及び水性系のpHに特有の表面電荷を呈する。材料−水界面上の電位は「ゼータ電位」と呼ばれ、これは電気泳動の可動性から(すなわち、水性系に置かれた帯電電極の間を材質粒子が移動する速度から)算出される。好ましくは濃縮剤は、約7のpHにおいて負のゼータ電位を有する。
【0057】
金属ケイ酸塩
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な金属ケイ酸塩濃縮剤としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタン、及び同様物など(好ましくはマグネシウム、亜鉛、鉄、及びチタン;より好ましくはマグネシウム)、及びこれらの組み合わせなどの金属の非晶質ケイ酸塩が挙げられる。好ましいのは、少なくとも部分的に融合した粒子状の非晶質金属ケイ酸塩である(より好ましくは非晶質の長球化金属ケイ酸塩であり、最も好ましくは非晶質の長球化ケイ酸マグネシウムである)。金属ケイ酸塩は既知であり、既知の方法によって化学的に合成するか、又は天然に生じる未加工鉱石の採鉱及び処理によって入手することができる。
【0058】
非晶質の、少なくとも部分的に融合した粒子形態の金属ケイ酸塩は、管理された条件下で、比較的小さな供給粒子(例えば、最大約25マイクロメートルの平均粒度)を溶融又は軟化させ、全体に長円形又は長球形の粒子(すなわち、真円又は実質的な円及び楕円形状、及びその他の丸みを帯びた又は曲線形状などのように、全体に丸く、鋭い角やエッジがない、拡大二次元画像を有する粒子)を形成する既知の任意の方法によって調整することができる。この方法には、アトマイゼーション、火炎研磨(fire polishing)、直接溶融、及び同様のプロセスが挙げられる。好ましい方法は炎融であり、この方法においては、固体の共有粒子を直接溶融又は火炎研磨することにより、少なくとも部分的に溶融した実質的にビー玉状の粒子が形成される(例えば、米国特許第6,045,913号(Castle)に記述されているプロセスがあり、この記述は参考として本明細書に組み込まれる)。より好ましくは、このような方法を利用して、不規則な形状の供給粒子のかなりの部分(例えば、約15〜約99体積パーセント、好ましくは約50〜約99体積パーセント、より好ましくは約75〜約99体積パーセント、最も好ましくは約90〜約99体積パーセント)を、全体に長円形又は長球形の粒子に転化させることにより、非晶質の長球化金属ケイ酸塩を生成することができる。
【0059】
一部の非晶質金属ケイ酸塩は、市販されている。例えば、非晶質の長球化されたケイ酸マグネシウムは、化粧品処方での使用のために市販されている(例えば、3M(商標)Cosmetic Microspheres CM−111、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)。
【0060】
非晶質金属ケイ酸塩濃縮剤は更に、金属(例えば鉄又はチタン)酸化物、結晶質金属ケイ酸塩、他の結晶質材料、及び同様物などを含む、他の材料を含み得る。しかしながら濃縮剤は、好ましくは本質的に結晶質シリカは含まない。
【0061】
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な特に好ましい濃縮剤としては、非晶質金属ケイ酸塩を含み、X線光電子分光法(XPS)で測定したケイ素原子に対する金属原子の比が約0.5以下(好ましくは約0.4以下、より好ましくは約0.3以下、最も好ましくは約0.2以下)である表面組成を有する、濃縮剤が挙げられる。このような濃縮剤としては、米国特許仮出願番号第60/977,180号(3M Innovative Properties Company)に記載の濃縮剤が挙げられ、濃縮剤及びその調製方法についての記載は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0062】
好ましくは、この特に好ましい濃度剤の表面組成はまた、X線光電子分光法(XPS)で測定されるものとして少なくとも平均約10原子パーセントの炭素を含む(より好ましくは少なくとも平均約12原子パーセントの炭素を含み、最も好ましくは少なくとも平均約14原子パーセントの炭素を含む)。XPSは、試料表面の、最も外側約3〜10ナノメートル(nm)の元素組成を測定できる技法であり、周期表のうち水素及びヘリウムを除くすべての元素に対して感受性がある。XPSは、多くの元素について、0.1〜1原子パーセントの濃度範囲の検出限界を伴った定量的測定技法である。XPSの好ましい表面組成評価条件には、受光立体角±10度で試料表面に対して測定される取り出し角90度が含まれ得る。
【0063】
このような好ましい金属ケイ酸塩濃縮剤は、例えば、普通のタルクなどの一般的な金属ケイ酸塩よりも負のゼータ電位を有する。更にこの濃縮剤は、タルクと比べ、細菌などの微生物の濃縮において驚くべきほど効果的であり、この濃縮剤の表面は一般に負に帯電する傾向にある。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でスモルコウスキー(Smoluchowski)ゼータ電位が約−9ミリボルト〜約−25ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でスモルコウスキーゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でスモルコウスキーゼータ電位が約−11ミリボルト〜約−15ミリボルトの範囲である)。
【0064】
表面改質珪藻土
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な表面改質珪藻土濃縮剤としては、金属酸化物(好ましくは(単独又は組み合わせで)二酸化チタン;他の金属酸化物が用いられるが、ただしこのような金属酸化物は、光学的な実質的透明性(上記のようなもの)を維持するのに十分な程度少量であることを条件に存在し得る)、微細ナノスケール金又は白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理を、表面に少なくとも部分的に保有する珪藻土が挙げられる。このような濃縮剤としては、米国特許仮出願番号第60/977,200号(3M Innovative Properties Company)に記載の濃縮剤が挙げられ、濃縮剤及びその調製方法についての記載は、参考として本明細書に組み込まれる。表面処理は好ましくは、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及び同等物、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物(より好ましくは酸化第二鉄)を更に含む。金などの貴金属は、抗菌特性を呈することが知られているにもかかわらず、本発明のプロセスにおいて使用される金含有濃縮剤は、微生物の濃縮に有効なだけでなく、検出又は分析の目的向けに微生物を生存可能な状態にしておくことができる。
【0065】
有用な表面改質剤としては、微細ナノスケール金;微細ナノスケール白金;少なくとも1つの金属酸化物(好ましくは二酸化チタン、酸化第二鉄、又はこれらの組み合わせ)と組み合わせた微細ナノスケール金;二酸化チタン;少なくとも1つの他の金属酸化物(すなわち二酸化チタン以外)と組み合わせた二酸化チタン;及び同様物;及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金;微細ナノスケール白金;少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金;二酸化チタン;少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
より好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金;微細ナノスケール白金;酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金;二酸化チタン;酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン;及びこれらの組み合わせが挙げられる(更に好ましくは、微細ナノスケール金;酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金;酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン;二酸化チタン;及びこれらの組み合わせが挙げられる)。微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせがより一層好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。
【0067】
表面改質珪藻土濃縮剤のうち少なくともいくつかは、未処理の珪藻土に比べて少なくともある程度、正であるゼータ電位を有し、この濃縮剤は、細菌などの微生物の濃縮について、未処理の珪藻土よりも驚くべきほど顕著に有効であり得、このような濃縮剤の表面は一般に負に帯電している傾向にある。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−5ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−8ミリボルト〜約−19ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−18ミリボルトの範囲である)。
【0068】
微細ナノスケール金又は白金を含む、表面改質珪藻土濃縮剤は、物理蒸着(所望により、酸化雰囲気中での物理蒸着)によって珪藻土に金又は白金を堆積することにより調製することができる。本明細書で使用するとき、用語「微細ナノスケール金又は白金」は、全ての次元のサイズが5ナノメートル(nm)以下である金物体(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。好ましくは、堆積した金又は白金の少なくとも一部は、全ての次元の平均サイズ(例えば、粒子のサイズ又は原子クラスタのサイズ)が最大約10nm(10nm以下)の範囲である(より好ましくは、最大約5nmであり、更に好ましくは最大約3nmである)。
【0069】
最も好ましい実施形態において、金の少なくとも一部分は、超ナノスケールである(すなわち、少なくとも2つの次元においてサイズが0.5nm未満であり、全ての次元においてサイズが1.5nm未満である)。個々の金又は白金のナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0070】
珪藻土(別名kieselguhr)は、海生微生物綱である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ材質である。よって、これは天然資源から取得することができ、市販もされている(例えばAlfa Aesar,A Johnson Matthey Company(Ward Hill,MA))。珪藻土粒子は一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形、及び同様の形態の、小さな開放網状構造を含む。これらの粒子の孔構造は一般に、非常に均一であり得る。
【0071】
珪藻土は、原材料として、粉砕した材料として、又は精製及び所望により粉砕した粒子として使用することができる。好ましくは珪藻土は、直径約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル(より好ましくは約3マイクロメートル〜約10マイクロメートル)の範囲にある寸法の粉砕粒子形状である。
【0072】
珪藻土は所望により、使用前に加熱処理を行い、有機残留物の痕跡を除去することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率に生じ得るため、加熱処理は500℃以下で行うことが望ましい。
【0073】
珪藻土上に供給される金又は白金の量は、幅広い範囲で変えることができる。金及び白金は高価であるため、望ましい濃縮活性を達成するのに妥当な必要とされる量を超えては使用しないことが望ましい。更に、ナノスケール金又は白金は、PVDを使用して堆積する際、非常に可動性であることがあるため、金又は白金を使用しすぎると、金又は白金の少なくとも一部が融合してより大きな塊になることにより、活性が低下することがある。
【0074】
これらの理由から、珪藻土上の金又は白金の荷重は、珪藻土と金との合計重量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10重量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5重量パーセント、及び更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約2.5重量パーセントである。
【0075】
金及び白金はPVD技法(例えばスパッタリング)により堆積させて、支持体表面に、濃縮活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金属は、主に元素形態で堆積すると考えられる(ただし、他の酸化状態が存在する場合もある)。
【0076】
金及び/又は白金に加えて、同じ珪藻土支持体上に1つ以上の他の金属も供給することができ、及び/又は、金及び/又は白金を含む支持体と別の支持体とを混合して供給することもできる。このような他の金属の例としては、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの他の金属を使用した場合は、使用する金又は白金の供給源標的と同一又は異なる標的供給源から、支持体上に共沈させることができる。あるいは、このような金属は、金及び/又は白金を堆積させる前又は後のいずれかにおいて、支持体上に供給され得る。有利な活性化のための熱処理を必要とする他の金属は、金及び/又は白金を堆積させる前に支持体に適用し、熱処理することもできる。
【0077】
物理蒸着とは、金属含有供給源又は金属含有標的から支持媒体への金属の物理的な移動を意味する。物理的気相堆積は、様々なプロセスで実施することができる。代表的なプロセスとしては、スパッタ堆積法(好ましい)、蒸着法、及び陰極アーク堆積法が挙げられる。本発明のプロセスの実施に使用する濃縮剤の調製に、これら又は他のPVDアプローチのいずれかを用いることができるが、ただし、PVD技法の性質は得られる活性に影響を与え得る。PVDは、この目的で現在使用されている又は今後開発される装置の種類のいずれかを使用することにより行うことができる。
【0078】
物理的気相堆積法は、担体表面の適切な処理が確実に行われるよう、好ましくは処理する担体媒質が十分に混合された状態(例えば、混転、流動化、粉砕、又は同等の処理)で実施される。PVDによる堆積の粒子混転方法は、米国特許第4,618,525号(Chamberlainら)に記述されており、この記述は参照により本明細書に組み込まれる。微細粒子又は微細粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、担体媒質は好ましくは、PVD処理の少なくとも一部の実施中に、混合及び微粉砕の両方が行われる(例えば、ある程度まですり潰され、又は粉砕される)。
【0079】
物理的気相堆積法は、本質的には、非常に幅広い範囲にわたって、任意の所望される温度で実施することができる。しかしながら、金属を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下)で堆積する場合、堆積した金属はより高い活性を有することができる(おそらくは、移動性と融合性がより損なわれる及び/又はより低いため)。周囲条件において実施すると、堆積中に加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0080】
物理蒸着は、不活性スパッタリングガス雰囲気中(例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれら2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン))で実施することができ、所望により、物理蒸着は酸化雰囲気中で実施することができる。好ましくは、この酸化雰囲気には少なくとも1つの酸素含有ガスが含まれる(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択され、更に好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気には更に、不活性スパッタリングガスが含まれ、これには例えばアルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物がある(好ましくはアルゴン)。PVD処理中の真空槽内の総気体圧力(全てのガス)は、約1mTorr〜約25mTorr(約0.13Pa〜約3.3Pa)(好ましくは約5mTorr〜約15mTorr(約0.67kPa〜約2.0kPa))である。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総重量を基準にして、約0.05重量パーセント〜約60重量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1重量パーセント〜約50重量パーセント、より好ましくは約0.5重量パーセント〜約25重量パーセント)を含み得る。
【0081】
珪藻土支持媒体は所望により、金属堆積の前に焼成することができるが、ただしこれにより結晶シリカの含有量が増加し得る。金及び白金は、PVDで堆積するとすぐに活性になるため、他の一部の方法による堆積とは違って、一般に金属堆積後に加熱処理の必要がない。ただし、このような加熱処理又は焼成は、活性を高めるために所望される場合には実行できる。
【0082】
一般に、熱処理は、支持体を、任意の好適な大気中、例えば、空気、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)、及び同等物の中で、約125℃〜約1000℃の範囲の温度で、約1秒間〜約40時間、好ましくは約1分間〜約6時間の加熱を伴い得る。使用する具体的な熱条件は、支持体の性質を含む様々な要素に依存し得る。
【0083】
一般に、熱処理は、支持体の構成要素が分解するか、劣化するか、又は過度の熱により損傷する温度よりも下の温度で、実施され得る。支持体の性質、金属の量、及び同等物などの要素に依存して、触媒活性は、高すぎる温度で熱処理されると、ある程度低下する可能性がある。
【0084】
金属酸化物を含む、表面改質珪藻土濃縮剤は、加水分解可能な金属酸化物前駆体化合物の加水分解によって、珪藻土上に金属酸化物を堆積させることにより調製される。適切な金属酸化物前駆体化合物としては、加水分解して金属酸化物を生成できるような金属錯体及び金属塩が挙げられる。有用な金属錯体としては、アルコキシド配位子、配位子としての過酸化水素、カルボン酸機能配位子、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用な金属塩としては、金属の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
過酸化水素又はカルボン酸機能配位子の金属塩又は金属錯体を使用する場合、加水分解は化学的手段又は熱的手段によって引き起こすことができる。化学的に引き起こされた加水分解において、金属塩は溶液の形態で、珪藻土の分散液に導入することができ、得られる混合物のpHは、珪藻土上に金属の水酸化物錯体として金属塩が沈殿するまで、塩基溶液を加えることによって上げることができる。適切な塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩、アンモニウム及びアルキルアンモニウムの水酸化物又は炭酸塩、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属塩溶液及び塩基溶液は通常、濃度が約0.1〜約2Mであり得る。
【0086】
好ましくは、珪藻土への金属塩の追加は、珪藻土分散液を撹拌(好ましくは激しく撹拌)しながら実施される。金属塩溶液及び塩基溶液は、珪藻土分散液に別々に(いずれの順番でも)又は同時に導入することができ、これにより、得られる珪藻土の表面に金属水酸化物錯体を生じる実質的に好ましく均一な反応をもたらす。反応混合物は所望により、反応中に加熱して、反応の速度を加速することができる。一般に、加える塩基の量は、金属のモル数に、金属塩又は金属錯体の非オキソ及び非ヒドロキソ対イオンの数を掛けたものに等しくなり得る。
【0087】
あるいは、チタン又は鉄の塩を使用する場合、金属塩は加熱して加水分解を起こさせ金属水酸化物錯体を形成し、珪藻土の表面と反応させることができる。この場合、金属塩溶液を一般に、珪藻土の分散液(好ましくは撹拌した分散液)に加え、十分に高温(例えば約50℃を上回る温度)に加熱して、金属塩の加水分解を促進することができる。好ましくは、温度は約75℃〜100℃であり、ただし反応がオートクレーブ装置内で実施される場合はより高い温度を使用することができる。
【0088】
金属アルコキシド錯体を使用する場合、この金属錯体に加水分解を起こさせ、アルコール溶液中で金属アルコキシドの部分的加水分解により金属の水酸化物錯体を形成させることができる。珪藻土存在下での金属アルコキシド溶液の加水分解により、珪藻土の表面に、金属水酸化物種を堆積させることができる。
【0089】
あるいは、珪藻土の存在下でガス相の金属アルコキシドを水と反応させることによって、金属アルコキシドを加水分解し、珪藻土の表面に堆積させることができる。この場合、珪藻土は、例えば流動床リアクター又は回転ドラムリアクターなどのいずれかの中で、堆積中に撹拌することができる。
【0090】
上記のような、珪藻土の存在下で金属酸化物前駆体化合物の加水分解を行った後、得られる表面処理済みの珪藻土を、沈殿又は濾過、又はその他の既知のプロセスによって分離することができる。分離した生成物を水で洗浄することによって精製し、これを乾燥させることができる(例えば50℃〜150℃)。
【0091】
表面処理された珪藻土は通常、乾燥後に機能できるが、所望により、空気中で約250℃〜650℃に加熱して焼成することにより、機能の損失なしに揮発性の副生成物を除去することができる。この焼成工程は、金属酸化物前駆体化合物として金属アルコキシドを利用した場合に望ましいことがある。
【0092】
一般に、鉄の金属酸化物前駆体化合物を用い、得られる表面処理には、ナノ粒子の酸化鉄が含まれる。珪藻土に対する酸化鉄の重量比が約0.08である場合、X線回折(XRD)では、酸化鉄材質の存在がはっきりと示されない。むしろ、3.80、3.68、及び2.94Åで更なるX線反射が観察される。この材料のTEM評価は、珪藻土表面が、球形ナノ粒子状酸化鉄材料により、比較的不均一にコーティングされていることを示す。酸化鉄材質のクリスタライトの大きさは約20nm未満であり、多くの結晶は直径が10nm未満である。この、珪藻土表面にある球形結晶の充填は見かけが密であり、珪藻土の表面はこれら結晶の存在により凹凸になっているのが見られる。
【0093】
一般に、チタンの金属酸化物前駆体化合物を用いた場合、得られる表面処理には、ナノ粒子チタニアが含まれる。珪藻土に二酸化チタンを堆積させた場合、約350℃で焼成した後に得られた生成物のXRDでは、アナターゼチタニアの小さな結晶の存在を示すことができる。チタン/珪藻土の比が比較的低い場合、又はチタン及び鉄の酸化物前駆体の混合物が使用された場合、X線分析によっては一般に、アナターゼの証拠は観察されない。
【0094】
チタニアは強力な光酸化触媒として知られており、本発明のチタニア改質珪藻土濃縮剤は、分析用の微生物濃縮に使用することができ、更に所望により、光活性化可能剤として使用することにより、残留する微生物を殺菌し、不要な有機不純物を除去することができる。よって、チタニア改質された珪藻土は、分析のための生体物質を分離することと、次に再使用のため光化学的にクリーニングすることの両方ができる。これらの物質は、微生物の除去と共に抗菌効果が望ましい場合がある濾過用途に使用することもできる。
【0095】
接触
本発明のプロセスの試料接触工程は、2つの材料の間に接触をもたらす、様々な既知の方法又は今後開発される方法のいずれかによって実施することができる。例えば、粒子状濃縮剤を試料に加えることができ、又は試料を粒子状濃縮剤に加えることができる。粒子状濃縮剤を保有するディップスティックを試料溶液に浸すことができ、粒子状濃縮剤を保有するフィルムの上に試料溶液を注ぐことができ、粒子状濃縮剤を保有する試験管又はウェルに試料溶液を注ぐことができ、又は粒子状濃縮剤を保有するフィルタ(例えば織布若しくは不織布のフィルタ又は膜フィルタ)に試料溶液を通すことができる。
【0096】
しかしながら好ましくは、粒子状濃縮剤と試料は、(任意の追加順序を用いて)様々な任意の容器(所望により、しかしながら好ましくは、キャップ付き、閉鎖、又は密閉された容器であり、より好ましくは、キャップ付きの試験管、瓶、又は広口瓶である)内に、合わせて入れられる。本発明のプロセスを実施する際の使用に好適な容器は、個々の試料によって決定され、量及び性質により大きく異なり得る。例えば、容器は10ミリリットル容器(例えば試験管)などの小さいものであり得、又は100ミリリットルから3リットルの容器(例えば三角フラスコ又はポリプロピレン製広口瓶)などの大きいものであり得る。容器、粒子状濃縮剤、及び試料に直接接触するその他の器具又は添加剤は、使用前に滅菌することができ(例えば、制御された熱、エチレンオキシドガス、又は放射線によって)、これにより試料の、検出エラーを起こし得る何らかの汚染を低減又は防ぐことができる。成功性の高い検出のために、特定の試料の、大腸菌群を含む微生物を捕捉又は濃縮するのに十分な粒子状濃縮剤の量は、変化し得るものであり(例えば性質により、光透過性の程度により、並びに粒子状濃縮剤の捕捉効率及び試料容量により決まる)、かつ当業者により容易に判断され得る。例えば、一部の用途については、試料100ミリリットル当たり、100ミリグラムの濃縮剤が有用であり得る。好ましくは粒子状濃縮剤は、実質的な光透過性を維持しつつも少なくとも約60パーセントの捕捉効率をもたらすのに十分な量で存在する。
【0097】
必要に応じて、試料の中に少なくとも1回、粒子状濃縮剤を通過させることにより(例えば、約10分間にわたって重力沈殿に依存することによって)、接触は効果的なものになり得る。接触は、混合によって(例えば撹拌、振盪、又は揺動プラットフォームによって)強化することができ、これにより濃縮剤の粒子が試料の大部分を通って繰り返し通過又は沈殿することができる。マイクロリットルの桁の少量(典型的には0.5マイクロリットル未満)の場合、混合は、例えば米国特許第5,238,812号(Coulterら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているように、渦動又は「転動(nutation)」などの急速なものであり得る。0.5ミリリットル以上の桁の、より大量(典型的には0.5ミリリットル〜3リットル)の場合、混合は、例えば米国特許第5,576,185号(Coulterら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているように、粒子状濃縮剤及び試料を「上下転倒」させるプロセスで穏やかに混転することにより達成できる。このような混転は、例えば、試験管又は他のタイプの反応容器を支えるよう構成された装置を用い、その試験管又は容器を「上下転倒」させるプロセスでゆっくりと回転させて達成することができる。接触は、望むだけの時間、実施することができる(例えば、試料量が約100ミリリットル以下の場合、最高約60分間の接触が有用であり得、好ましくは、約15秒〜約10分又はそれ以上、より好ましくは、約15秒〜約5分の接触が有用であり得る)。
【0098】
したがって、本発明のプロセスの実施において、試料と粒子状濃縮剤との混合物の混合(例えば撹拌(agitation)、揺動、又は撹拌(stirring))及び/又は予備インキュベーション(例えば室温での)(例えば培養デバイス内への、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤の配置に先立つインキュベーション)は、任意選択的なものであるが、微生物と粒子状濃縮剤との接触性を増加させるためには好ましいものである。好ましい接触方法には、微生物含有試料(好ましくは流体)を粒子状濃縮剤と混合すること(例えば、約15秒〜約5分)と、予備インキュベーションすること(例えば約3分〜約60分)との両方が含まれる。必要に応じて、1つ以上の添加剤(例えば溶解試薬、生物発光検定試薬、核酸捕捉試薬(例えば磁性ビーズ)、微生物用培地、緩衝液(例えば吸着バッファの使用が含まれる、固形試料の湿潤(moisten a solid sample))、微生物染色試薬、洗浄用緩衝液(例えば、結合していない物質を洗い流すため)、溶出試薬(例えば血清アルブミン)、界面活性剤(例えばTriton(商標)X−100非イオン系界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics(Houston,TX)から入手可能)、機械的磨耗/溶出試薬(例えばガラスビーズ)、光学的検出アッセイ要素(例えば指示薬又は指示染料)、及び同様物)が、濃縮剤及び試料の組み合わせに含まれ得る。
【0099】
必要に応じて、粒子状濃縮剤(単独で、又は例えば液体形態(例えば水又は油)、固体形態(例えば布、ポリマー、紙、又は無機固体)、ゲル形態、クリーム形態、フォーム形態、又はペースト形態の担体物質と組み合わせて)は、非多孔質又は多孔質で固形の、微生物に汚染されているか又は微生物により汚染され得る材料又は表面に対して、塗布又はすりつけることができる(例えば試料回収方法として)。これにより試料は一工程で回収すると同時に粒子状濃縮剤と接触させることができる。
【0100】
凝離及び/又は分離
所望により、但し好ましくは本発明のプロセスには更に、試料接触工程から得られる、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤の凝離を含む。好ましくはこのような凝離は、少なくとも部分的に、重力沈殿(重力沈降;例えば、約5分間〜約30分間にわたって)に依存することによって達成することができる。しかしながらいくつかの場合において、凝離を促進すること(例えば遠心分子又は濾過によって)又は任意の凝離方法の組み合わせを使用することが望ましいことがある。
【0101】
所望により、但し好ましくは本発明のプロセスには、得られた、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤及び試料を分離することを更に含む。液体試料の場合は、凝離の結果生じた上澄みの除去又は分離が伴い得る。上清の分離は、当該技術分野で周知の数多くの方法(例えば、本方法の実施時に用いられる容器(container)又は入れ物(vessel)の底に、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を残すために、デカンテーションするか又は吸い上げる)により実施される。
【0102】
本発明のプロセスは、手動により(例えばバッチ単位による方法で)実施することができ、又は(例えば、連続的又は準連続的処理を実現して)自動化することができる。
【0103】
インキュベーション
本発明のプロセスの一次インキュベーション工程は、得られた、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を培養デバイスの培養培地に接触させて配置することにより開始することができ、この培養培地は続くインキュベーション時に水和形態になる。このような接触は、任意選択的に凝離及び/又は分離工程が実施されたか否かによって、試料の存在下又は非存在下(好ましくは試料の非存在下で)のいずれかで達成することができる。次いで、培養デバイス(水和培養培地と接触させた、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を含有している)は細胞分裂が少なくとも1回生じるのに十分な時間及び温度でインキュベートすることができる。
【0104】
例えば約12時間、15時間、又は18時間から、約48時間まで(好ましくは少なくとも約18時間〜約22時間)のインキュベーション時間及び約35℃〜約37℃の範囲のインキュベーション温度が有用なものであり得る。培養培地の水和(例えば水又は水性希釈組成物の添加により、ここで水性希釈組成物は所望により試料を、及び/又は大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を、含み得る)は、培養培地と、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤とを接触させる前又は後(例えば直後又は数分以内に又は数時間後に)のいずれかで(あるいは接触させると同時に)達成することができる。好ましくは培養培地は、インキュベーションの期間中実質的に水和されたままである(及び/又は好ましくは接触が維持される)。所望により、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤と、水和した又は水和可能な培養培地とを混合することができる(例えば大腸菌を結合した粒子状濃縮剤と水和培養培地とのより均一な混合物が形成されるように)。
【0105】
検出
粒子状濃縮剤によって捕捉又は結合した(例えば吸着によって)大腸菌群は、現在知られている、又は今後開発される任意の望ましい光学的検出方法によって本質的に検出することができる。例えばこのような方法としては、ヒトによる目視検査、ルミネセンス検出、蛍光検出、鏡検(例えば透過型偏光顕微鏡又は蛍光染料で標識した微生物を可視化するために使用できる落射蛍光顕微鏡を用いる鏡検)、他のアナログ又はデジタル式光学イメージング(例えばカメラ、ビデオ機器又はスキャナなどのイメージングデバイスによる、例えば反射、吸収、透過及び/又は輝度の測定に基づく)、及び同様の方法、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい方法としては、ヒトによる目視検査、デジタル式光学イメージング(より好ましくはスキャナを用いるデジタル式光学イメージング)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
大腸菌株の存在についてのこのような光学的検出は、大腸菌株を粒子状濃縮剤から分離せずに実施することができる(粒子状濃縮剤が十分な光透過性(上記に定義のように「実質的に光学的に透明」と呼ばれる)を呈する1つ以上の検出波長にて)。したがって分析は、培養デバイスをインキュベートした後に培養デバイス中で(すなわちその場で)実施することができる。
【0107】
必要に応じて、光学的検出は任意の各種既知のあるいは将来開発される技術(例えば免疫検出方法及び遺伝的検出方法)に加えることができ、又は組み込むことができる。大腸菌群捕捉後の検出プロセスには、洗浄して試料マトリックス成分を除去すること、又は染色することなどを含み得る。
【0108】
光学的検出は手動的(例えばヒトによる目視検査を介して)に実施することができ、あるいは自動化できる。培養デバイス中の微生物コロニーを検出及び/又は計測(計数又は定量する)ための、自動化された光学的検出システムは、当該技術分野において既知である。そのような自動システムは、概して、イメージングシステム、コロニー数を決定する画像分析アルゴリズム、並びにコロニー数データ及び画像を表示し、任意に、格納し、操作するためのデータ管理システムを含む。例示の、寒天平板上のコロニーを計測するシステムは、Synbiosis(Cambridge,UK)により商標名Protocol(商標)で販売されており、かつ米国特許第6,002,789号(Olsztynら)に記載されており、このシステムの記載は参考により本明細書に組み込まれる。3M(商標)Petrifilm(商標)計測プレート(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)上のコロニーを計測するためのシステムは、米国特許番号第5,403,722号(Floederら);同第7,298,885号(Greenら);及び同第7,298,886号(Plumbら)に記載されており、このシステムの記載は参考により本明細書に組み込まれる。
【0109】
典型的には、微生物コロニーを計測するための自動化された光学的検出システムは、光を吸収するか、反射するか、放出するか、透過するか、屈折するか、又は散乱するかのいずれかのコロニー又はそれに由来する代謝産物の能力によって、標的微生物の存在を検出する。したがってコロニーは、例えば、比色測定的な、蛍光定量的な、又は発光定量的(lumimetrically)(例えば化学発光又は生物発光)な手段により光学的に検出することができる。
【0110】
大腸菌群についての少なくとも一部の試験では、大腸菌群コロニーを、ラクトースを含む培養培地中に存在するpH指示薬の変色により大腸菌群として検出し、かつ暫定的に同定することができる。変色は、培養培地のpHにおける変化を反映することができ、コロニーがラクトースから酸性産物を生産したことを示し得る。したがって変色が観察された場合、コロニーは大腸菌群コロニーとして推定することができる。
【0111】
推定された大腸菌群コロニーは、1つ以上の気泡がコロニー近傍に観察されたときに、このような試験において大腸菌群であると確認することができる。一部の大腸菌群(E.coliの約95パーセントを占める)は、ラクトースからガス(すなわち二酸化炭素)を産生し得る。このような気泡は、可視的手段によって、又は米国特許第7,298,886号(Plumb et al.)に記載される自動コロニー計測システムなどの自動システムによってのいずれかで、光学的に観察され得る。
【0112】
3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート及びPetrifilm(商標)大腸菌群計測プレート(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)は、水和し密閉された場合に、培養培地の一面は自己支持フィルム又は基材と、及び培養培地の他の面はカバーフィルム又はシートと連続的に接触する半固形のラクトース含有培養培地を含む、培養デバイスである。このような平板状フィルム型培養デバイスは、ラクトース発酵する大腸菌群により産生された気泡を捕捉するのに、特に好適である。
【0113】
一部の培養デバイスは、培養デバイス内に存在する特定の大腸菌株を明確に同定するための、選択的試薬及び/又は分化試薬などの手段を提供する。例えば3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレートは、大腸菌群コロニーをE.coliであるとして同定することができる(例えば青色沈殿物が観察された場合)グルクロニダーゼ活性指示薬を含有する。しかしながら他の培養デバイスは暫定的な同定のみを提供し得る。そのような暫定的同定が行われる際、時折、付加的な試験を行うことによって、大腸菌株の同一性を確認することが望ましいものであり得る。したがって本発明のプロセスは、1つ以上の追加的な、確認試験を必要に応じて含み得る。
【0114】
培養デバイスをインキュベートし、少なくとも1種の大腸菌株の存在を光学的に検出(例えば視覚的に、又は自動化された検出システムによるいずれかで)した後、捕捉した微生物は更なる確認分析、あるいはある種の遺伝的な又は免疫的な試験のために培養デバイスから取り外すことができ、確認分析は培養デバイス内で(すなわちその場で)実施することができる。更なる確認分析としては、化学的分析(例えばクロマトグラフィー、スペクトロスコピー又はスペクトロメトリー)、遺伝的分析(例えばハイブリッド形成、又は核酸増幅)、及び/又は免疫的分析(例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫クロマトグラフィー、凝集、又は放射イムノアッセイ)が挙げられる。
【0115】
確認分析法は、例えば微生物又は微生物の構成要素を粒子状濃縮剤及び培養培地から取り出す、又は抽出することにより、培養デバイス内の全試料を用いて実施することができる。あるいは、培養デバイスのより小さい領域又は個々のコロニーは、確認分析方法を行うために単離及び/又は抽出することもできる。一部の方法では、ニトロセルロース又はナイロン膜を使用して、微生物又はその構成要素を「持ち上げ」、続いて遺伝学的、生化学的、又は免疫学的試験を行ってもよい。具体的な確認分析方法は、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、3rd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)に見ることができ、この方法についての記載は、参考により本明細書に組み込まれる。
【0116】
診断キット
培養デバイス及び粒子状濃縮剤は梱包材と組み合わせて、試料中に存在する大腸菌群を検出するための診断(又は試料試験)キットとして販売することができる。本発明のプロセスを実施するのに用いられるこのようなキットは、
(a)水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの培養デバイス、及び
(b)培養デバイス内で培養培地に接触させ、培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤、を含む。
【0117】
好ましくはこのキットの培養デバイスは、少なくとも1つの発酵性栄養素(より好ましくは培養デバイスは、少なくとも1つの発酵性栄養素を含む培養培地を含む、平板型フィルム培養デバイスである)を含む培養培地を含み、及び/又は粒子状濃縮剤は微小粒子(より好ましくは無機微小粒子)を含む。好ましくは診断キットは、試験容器(より好ましくは滅菌試験容器)、溶解剤、緩衝液、光学的検出分析要素(例えば1つ以上の指示染料)、本発明のプロセスの実施時に粒子状濃縮剤及び/又は培養デバイスを使用するための取扱説明書、自動検出システム(例えば手持ち式の検出装置又は読み取り機)、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の要素を更に含む。
【0118】
粒子状濃縮剤は所望により、防腐剤を含んだ少量の緩衝液で水和させ、これにより保管及び輸送中の安定性を高めることができ、並びに/又は破って開けるタイプの密閉パウチに入れ/分包し、汚染を防ぐことができる。粒子状濃縮剤は液体中の分散液又は懸濁液の形態であり得、又は粉末形態であり得る。好ましくは、診断キットには、粒子状濃縮剤をあらかじめ計量した分包(例えば、試料量に応じて)が含まれる(例えば1つ以上の破って開けるタイプの密閉パウチ)。
【0119】
キットは更に、試料懸濁培地(例えば水、緩衝液、又は増殖培地)、試薬(例えば染料、指示薬、酵素、酵素基質、溶解剤、又は溶出を容易にするための試薬)、サンプリング装置(所望により粒子状濃縮剤及び/又は緩衝液を含み得る)、ピペット、ラベル、ピンセット、試料キャリア、及び/又は手袋などの、サンプリング及び/又は試験アクセサリを含み得る。キットの個々の要素は滅菌することができ、及び/又は必要に応じて個包装された一次包装物であり得る。
【実施例】
【0120】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。以下の実施例内の全ての部分、割合、比率などは、特に記載がない限り、重量によるものとする。微生物培養物は、The American Type Culture Collection(ATCC;Manassas,VA)から購入された。用いた溶媒及びその他の試薬は、特に記載がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0121】
表面改質珪藻土粒子状濃縮剤の調製
Alfa Aesar(A Johnson Matthey Company,Ward Hill,MA)から、白色粉末の珪藻土(Kieselguhr)(325メッシュ;粒径が全て44マイクロメートル未満)を購入した。この材料はX線回折(XRD)によって、α−クリストバライト及び石英と共に非晶質シリカを含むことが示された。
【0122】
2つの異なる表面改質剤(すなわち二酸化チタン及び酸化第二鉄)を含む粒子状濃縮剤を、下記の方法により珪藻土を表面処理することにより調製した。
【0123】
二酸化チタンの堆積
80.0gの脱イオン水に20.0gのTiO(SO2HO(Noah Technologies Corporation,San Antonio,TX)を撹拌しながら溶解させることにより20重量パーセントのオキシ硫酸チタン(IV)脱水和物溶液を調製した。この溶液50.0gを脱イオン水175mLと混合し、二酸化チタン前駆体化合物溶液を生成した。大きなビーカーで急速に撹拌しながら、50.0gの珪藻土を500mLの脱イオン水に分散させることにより、珪藻土の分散液が調製された。この珪藻土分散液を約80℃に加熱した後、急速に撹拌しながら約1時間かけて二酸化チタン前駆体化合物溶液を滴下して加えた。加えた後、ビーカーを時計皿で覆い、内容物を加熱して20分間沸騰させた。水酸化アンモニウム溶液をビーカーに加え、内容物のpHを約9にした。得られた生成物を、洗浄水のpHが中性になるまで沈殿/デカンテーションによって洗浄した。生成物を濾過によって分離し、100℃で一晩乾燥させた。
【0124】
乾燥生成物の一部を磁器るつぼに入れ、加熱速度毎分約3℃で室温から350℃まで加熱することによって焼成し、350℃で1時間保持した。
【0125】
酸化鉄の堆積
硫酸チタニル溶液の代わりに、20.0gのFe(NO9HO(J.T.Baker,Inc.,Phillipsburg,N.J.)を175mLの脱イオン水に溶解させたことを除き、本質的に上記の二酸化チタン堆積法を用いることで、酸化鉄を珪藻土上に堆積させた。更なる試験のため、得られた酸化鉄改変珪藻土の一部を同様に350℃で焼成した。
【0126】
材料
18メガオーム水:Milli−Q(商標)グラジエント脱イオンシステム(Gradient deionization system)(Millipore Corporation(Bedford,MA)から市販)を用いて18メガオームの滅菌脱イオン水を得た。
【0127】
3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート(少なくとも1つの発酵性栄養素を含む平板状フィルム型培養デバイス)は3M Company(St.Paul,MN)から得た。
【0128】
30〜50マイクロメートルの範囲の大きさを有するアミン官能化ガラスビーズをPolySciences,Inc.(Warrington,PA)から得た。
【0129】
CaCO:2.5〜10マイクロメートルの範囲の直径を有する炭酸カルシウム粒子をSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から得た。
【0130】
CM−111:非晶質の長球化ケイ酸マグネシウム(固形球形として成型済みの微小球、粒子密度2.3g/立方センチメートル、表面積3.3m/g、粒径:90パーセントが約11マイクロメートル未満、50パーセントが約5マイクロメートル未満、10パーセントが約2マイクロメートル未満、3M Company(St.Paul,MN)から販売の3M(商標)Cosmetic Microspheres CM−111)として入手した。
【0131】
Fe−DE:本質的に上記のように、珪藻土上に酸化第二鉄を堆積させた。
【0132】
ヒドロキシアパタイト:2〜8マイクロメートルの粒径を有する1型ヒドロキシアパタイト粒子をSigma−Aldrich(St.Louis,MO)からカタログ番号H0252として得た。
【0133】
mHPA:約2マイクロメートルの平均粒径を有するヒドロキシアパタイトコーティング磁気ビーズを、Chemicell(GmbH,Berlin,Germany)から得た。
【0134】
PCTE−1:約0.4マイクロメートルの平均孔径を有するポリカーボネートトラックエッチング膜フィルタをSterlitech(Kent,PA)から得た。
【0135】
PCTE−2:約0.2マイクロメートルの平均孔径を有するポリカーボネートトラックエッチング膜フィルタ(Whatmanにより製造;VWR(West Chester,PA)から入手)。
【0136】
シリカマイクロスフェア:約2.5マイクロメートルの平均直径を有する二酸化ケイ素微小球;PolySciences社(Warrington,PA)から入手。
【0137】
Ti−DE:本質的に上記のように、珪藻土上に二酸化チタンを堆積させた。
【0138】
濃縮剤のプレスクリーニング
100mgの様々な粒子状濃縮剤(CM−111、CaCO、Ti−DE、ヒドロキシアパタイト、Fe−DE、及びアミン官能化ガラスビーズ)を秤量し、5mLのポリプロピレンチューブに加え、1mLの滅菌脱イオン18メガオーム水に懸濁した。50mg及び10mgのFe−DE試料を同様の方法で加工した。この方法で同様に、200マイクロリットル容量のシリカマイクロスフェア及び100マイクロリットル、50マイクロリットル、及び10マイクロリットル容量のヒドロキシアパタイトコーティング磁気ビーズ(mHPA)を加工した。チューブの内容物を、VWR Analog Vortex Mixer(VWR,West Chester,PA)で、最高速度のボルテックス(10:3200毎分回転(rpm)に設定)により10秒間にわたって混合した。懸濁した粒子状濃縮剤を、3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート上に配置し、製造元からの取扱説明書に従って密閉した。水のボトルを用いて47mmのPCTEフィルタを約2分にわたって滅菌脱イオン水で濡らし、3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレートに加え、プレートは次いで水和(約1mLの水をフィルタの縁周辺とフィルタ上に加えることによる)し、製造元からの取扱説明書に従って密閉した。計数プレート(濃縮剤を不含の滅菌水試料を含む対照プレートを含む)を3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(PPR,3M Company(St.Paul);少なくとも1つのスキャナを含む、自動化された光学的検出システム)を用いるデジタル式光学的イメージングにより分析することで画像を得た。画像は更にImage Pro Plus(商標)version 6.3.0.512ソフトウェア(Media Cybernetics,Inc.(Bethesda,MD))を用いて、PPRの青色、緑色、及び赤色チャネルのシグナルについて解析した。
【0139】
525nmの波長を有したPPRの緑色チャネルにおけるシグナルを、計測プレートの頂面から反射される(緑色)光と、計測プレートの背面を通って透過される(緑色)光との合計として計算した。PPRの緑色チャネルに関する光信号透過についてのデータは、下の表1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例1〜7及び比較実施例C1〜C5
Tryptic Soy Agar平板培地(Becton Dickinson,Sparks,MD)から、白金耳量(標準的な4ミリメートルの細菌接種用ループ)のE.coli(ATCC 51813)一晩画線培養物を用いて、0.5 McFarland標準(Vitek DENSICHEK,bioMerieux,Inc.,Durham,NC)の、3mLのButterfield’s緩衝液(pH 7.2,VWR,West Chester,PA)溶液を作製した。この標準はおよそ10コロニー形成単位/mL(CFU/mL)に相当する。フィルタ滅菌した脱イオン18メガオーム水で連続希釈を行った。10CFU/mL希釈物から、100mLのフィルタ滅菌18メガオーム水で更に1:1000希釈を実施し、最終濃度0.1CFU/mL(合計10CFU)を得た。100X濃度の吸着緩衝液(pH 7.2;1X濃度は、水1Lあたり5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl及び1mMのKHPOを含有する)の1mLアリコートを1Xの最終濃度になるように添加した。
【0142】
上記のように粒子状濃縮剤の重さを秤量し(濃縮剤のプレスクリーニング下で)、250mLの滅菌ポリプロピレン製コニカル底チューブ(VWR,West Chester,PA)に加えた。チューブに蓋をし、それらの内容物を室温(25℃)にて約1分にわたって手動で振ることで混合した。
【0143】
混合した後に、Thermolyne Vari Mix(商標)揺動プラットフォーム(Barnstead International,Iowa、14サイクル/分)で、チューブを45分にわたってインキュベートした。インキュベート後に、チューブの内容物を2本の50mLの滅菌コニカルポリプロピレンチューブ(VWR,West Chester,PA)に分け、2500rpmで5分にわたって遠心し、得られる、E.coliを結合した粒子状濃縮剤を凝離した。得られる上清をデカントで取り除き、E.coliを結合した粒子状濃縮剤を1mLのButterfield’s緩衝液に再懸濁し、3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレートに配置した。
【0144】
得られる、E.coliを結合した、ヒドロキシアパタイトコーティング磁性ビーズ(mHPA)を凝離し、磁石(3−in−1 Magnetic Particle Separator(CPG,Inc.(Lincoln Park,NJ)))を用いて5分にわたって分離し、上記のように配置した。各計測プレートを製造元からの取扱説明書に従って密閉し、37℃のインキュベーター(VWR Orbital Shaking Incubator,Model # 1575R,West Chester,PA)でインキュベートした。
【0145】
初期10CFU/mL(粒子状濃縮剤不含)から対照として1:1000希釈物を3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレートに配置した。
【0146】
2枚の47mmフィルタ(PCTE−1及びPCTE−2)を、各フィルタを滅菌ガラス濾過装置に配置することにより試験した。約10CFUのE.coliを含有している2つの100mLの水試料を(本質的に上記のように)調製し、陰圧(真空)を用いてこの試料に各フィルタを通過させた。表面滅菌したピンセット対によりフィルタを取り外し、3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレートに配置し、次いでプレートを本質的に上記のように水和し、製造元からの取扱説明書に従って密閉した。フィルタを含有している計測プレートを、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした。
【0147】
まず3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(自動化された光学的検出)を用いてその場でコロニーの計測を得て(すなわち濃縮剤からE.coliを分離せずに)、次いで自動リーダー計測の確認として、ヒトの目視検査(手動の光学的検出)を行った。下式を用いて(並びに自動及び手動のコロニー計測を平均化することにより)結果を計算した:
【0148】
【数1】

【0149】
結果を以下の表2に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
実施例8及び比較実施例C−6及びC−7
E.coliの一晩増殖物を用いて、本質的に上記のように0.5 McFarland標準を作製した。粒子状濃縮剤CM−111を、本質的に上記のように、50mLの水試料からのおよそ10CFUのE.coliの捕捉について試験した。CM−111と試料との接触時間は30分であり、得られる、E.coliを結合したCM−111を凝離し、本質的に上記のように分離してペレットを得た。ペレットを3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート上に配置し、本質的に上記のようにインキュベートした。同様にして、およそ10CFU及びおよそ100CFUのE.coli(CM−111不含)を含有している対照計測プレートも処理した(それぞれ比較実施例C−6及びC−7として)。24時間にわたるインキュベート後、計測プレートを3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(PPR,3M Company,St.Paul;自動化された光学的検出システム)に配置し、製造元からの取扱説明書に従って自動検出システム又はリーダーにより、E.coliコロニー数を測定した(上記のようにその場で)。結果を、セミコロンにより分離された複数の値を含む、下の表3に示す(各実施例について2度の別個の試行を実施した)。
【0152】
典型的なE.coliコロニーが、近傍に気泡を有する青色のコロニーとして計測プレートに出現した。表3の最後の縦列は、PPRの画像解析ソフトウェアにより数え間違われたコロニー数を、ヒトによる目視検査(手動の光学的検出)による検査に基づいて示す。しばしば、明らかに比較的大きい気泡が、自動化された検出システムにより、気泡の大きさに基づいて単一コロニーを2又は3個のコロニーとして計測された。
【0153】
【表3】

【0154】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またこのような実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した「請求項」によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の大腸菌株を含む疑いのある、少なくとも1つの試料を準備する工程、
(b)水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの培養デバイスを準備する工程、
(c)前記培養デバイス内で前記培養培地に接触させ、前記培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤を準備する工程、
(d)前記粒子状濃縮剤を前記試料と接触させて配置することで、前記大腸菌株の少なくとも一部を前記粒子状濃縮剤に結合し、あるいは前記粒子状濃縮剤により捕捉させ、大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を形成する工程、
(e)前記大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を、前記培養デバイスの前記培養培地と接触させて配置する工程、
(f)前記培養培地と接触させた、前記大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を含む前記培養デバイスをインキュベートし、前記培養培地を水和させる工程、及び
(g)前記粒子状濃縮剤から前記大腸菌株を分離することなく、前記大腸菌株の存在を光学的に検出する工程、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記試料が液体の形態である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記試料が水試料である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記大腸菌株がガス産生大腸菌株である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記大腸菌株がEscherichia coliである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記培養培地が少なくとも1つの発酵性栄養素を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記培養デバイスが、少なくとも1つの発酵性栄養素を含む培養培地を含む平板状フィルム型培養デバイスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記粒子状濃縮剤が、前記粒子状濃縮剤を不含の対応する対照試料と比較して、前記試料中に存在する微生物の少なくとも約60パーセントを捕捉又は結合する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記粒子状濃縮剤が微小粒子を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記微小粒子が無機微小粒子である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記無機微小粒子が、金属ケイ酸塩;シリカ;金属炭酸塩;金属リン酸塩;金属酸化物で、金で、又は白金で改質された珪藻土;及びこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記無機微小粒子が、金属炭酸塩;二酸化チタンで、金で、又は白金で改質された珪藻土;非晶質金属ケイ酸塩;シリカ;金属リン酸塩;及びこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記粒子状濃縮剤が非晶質の長球化ケイ酸マグネシウムである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記試料と接触させての前記配置が、前記粒子状濃縮剤と前記試料とを混合させることにより実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスが、前記大腸菌を結合した粒子状濃縮剤を凝離すること、及び/又は得られる凝離された粒子状濃縮剤を、前記試料から分離すること、を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記プロセスが、前記大腸菌株を同定及び/又は計数することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記光学的に検出する工程が、少なくとも1つの色変化を検出することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記光学的に検出する工程が、自動化された光学的検出システムにより達成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
(a)Escherichia coliを含む疑いのある、少なくとも1つの水試料を準備する工程、
(b)少なくとも1つの発酵性栄養素を含む水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの平板状フィルム型培養デバイスを準備する工程、
(c)前記平板状フィルム型培養デバイス内で前記培養培地に接触させ、前記培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤を準備する工程であって、前記粒子状濃縮剤が、非晶質の長球化ケイ酸マグネシウム;炭酸カルシウム;シリカ;ヒドロキシアパタイト;二酸化チタン改質珪藻土;及びこれらの組み合わせから選択される無機微小粒子を含む、少なくとも1つの粒子状濃縮剤を準備する工程、
(d)前記粒子状濃縮剤を前記水試料と接触させて配置することで、前記Escherichia coliの少なくとも一部を前記粒子状濃縮剤に結合し、あるいは前記粒子状濃縮剤により捕捉させ、Escherichia coliを結合した粒子状濃縮剤を形成する工程、
(e)前記Escherichia coliを結合した粒子状濃縮剤を、前記平板状フィルム型培養デバイスの前記培養培地と接触させて配置する工程、
(f)前記Escherichia coliを結合した粒子状濃縮剤を前記培養培地と接触させて含む前記平板状フィルム型培養デバイスをインキュベートし、前記培養培地を水和させる工程、及び
(g)前記粒子状濃縮剤から前記Escherichia coliを分離することなく、前記Escherichia coliの存在を光学的に検出する工程であって、前記光学的に検出する工程が、少なくとも1つのスキャナを含む自動化された光学的検出システムを用いるデジタル式光学イメージングにより、少なくとも1つの色変化及び少なくとも1つのEscherichia coliコロニーに近接した少なくとも1つの気泡の存在を検出することを含む、検出する工程、を含む、プロセス。
【請求項20】
請求項1のプロセスを実施するのに使用するための診断キットであって、
(a)水和した又は水和可能な少なくとも1つの培養培地を含む、少なくとも1つの培養デバイス、及び
(b)前記培養デバイス内で前記培養培地に接触させ、前記培養培地を水和したときに、実質的に光学的に透明である、少なくとも1つの粒子状濃縮剤、を含む、診断キット。

【公表番号】特表2012−513763(P2012−513763A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544571(P2011−544571)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/069629
【国際公開番号】WO2010/078284
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】