説明

大豆ホエーの乳酸菌培養培地、培養法および乳酸菌発酵物の飲食品

【課題】有効利用されていない大豆ホエーを利用した優れた培養能力を有する乳酸菌培養培地、該乳酸菌培養培地を用いた乳酸菌の培養方法、大豆ホエー特有の不快臭、豆臭、苦渋味、n−ヘキサナール由来の臭気、配糖体(イソフラボン、サポニン)の収斂味を低減することができ、まろやかな芳香、酸味とコクを有する大豆ホエー乳酸菌発酵物、及び該大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有する飲食品の提供。
【解決手段】大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地であって、前記培地の25℃における導電率が、550mS/m〜1,450mS/mである乳酸菌培養培地である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳を凝固剤で凝集沈殿後に凝固させた際に生じる上澄液の大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地、該乳酸菌培養培地を用いた乳酸菌の培養方法、該乳酸菌の培養方法により得られる大豆ホエー乳酸菌発酵物、該大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆ホエーは、大豆から豆腐や油揚などを製造する際の凝固工程、圧密工程などで生じ、排湯とも称される。
この大豆ホエーは、大豆から抽出した豆乳に凝固剤(塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)を加えた後に圧密して上澄み液と凝固物に分離されて生じる。この大豆ホエーは、炭水化物主体であり、豆乳全量に対して76質量%が排出され、大豆当り17.7質量%が排水処理されていることとなる。
この大豆ホエーは、生物化学的酸素要求量(BOD)が9,000ppm〜10,000ppm、化学的酸素要求量(COD)が4,000ppm〜5,000ppmの高負荷廃水である。前記大豆ホエーは、有効な活用法がなく、環境保全のためにそのまま廃棄することができないことから、水質汚濁防止法に基づき、活性汚泥法により排水処理されており、有効利用されていないのが現状である。
【0003】
一般的に、乳酸菌培養培地は、牛乳、脱脂粉乳、麦芽汁、ブドウ糖、乳糖、オリゴ糖を用いる。基本的には、ペプトン、肉エキス、肝臓エキス、酵母エキス、ブドウ糖、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム、硫酸マグネシウム、Lシステイン塩酸塩等で調合され、最適培養ができるように調整、管理された培地を用いて培養されることが知られている。
一方、大豆ホエーは、炭水化物を主体とした大豆配糖体としてイソフラボン、サポニンと、微量のアミノ酸と、少糖類としてラフィノース、スタキオース、ショ糖、ビタミンB1、ビタミンB2と、無機成分のカルシウム、マグネシウムとが多く含まれていることが知られている。また、水素イオン濃度(pH)は、5.8〜6.0であり、栄養源としては低い傾向にある。特に、大豆ホエーは、変質、変敗しやすい性質であり、酸敗し、pHが低くなることから有効に活用されていない。また、大豆ホエーの成分は、固形分1.4質量%〜1.6質量%、蛋白質0.255質量%〜0.28質量%、脂質0.045質量%〜0.053質量%、炭水化物0.8質量%〜0.85質量%、灰分0.29質量%〜0.32質量%、カルシウム63mg/100mL〜70mg/100mL、マグネシウム20mg/100mL〜50mg/100mLを含有している。
しかしながら、前記大豆ホエーを含む乳酸菌の培養に好適な培地、及び該培地を用いた乳酸菌の培養方法は、未だ提供されていないのが現状である。
【0004】
また、これまでに豆乳を含有する培地に乳酸菌を接種し、得られるホエーを基材とした飲料(例えば、特許文献1参照)や、大豆の煮汁を乳酸菌で発酵した発酵飲食品(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
しかしながら、大豆ホエーを同様に乳酸菌で発酵し、大豆ホエー乳酸菌発酵物とした場合、大豆ホエー特有の不快臭、豆臭、苦渋味、n−ヘキサナール由来の臭気、配糖体(イソフラボン、サポニン)の収斂味があり、また、これまでの大豆ホエー乳酸菌発酵物には、まろやかな芳香、酸味とコクがなく、食品には適応しにくい問題が提起された。
【0005】
したがって、有効利用されていない大豆ホエーを利用し、優れた培養能力を有する乳酸菌培養培地の開発、該乳酸菌培養培地を用いた乳酸菌の培養方法、大豆ホエー特有の不快臭、豆臭、苦渋味、n−ヘキサナール由来の臭気、配糖体(イソフラボン、サポニン)の収斂味を低減することができ、まろやかな芳香、酸味とコクを有する大豆ホエー乳酸菌発酵物、及び該大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有する飲食品の有効な開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−65136号公報
【特許文献2】特開2005−304322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、有効利用されていない大豆ホエーを利用した優れた培養能力を有する乳酸菌培養培地、該乳酸菌培養培地を用いた乳酸菌の培養方法、大豆ホエー特有の不快臭、豆臭、苦渋味、n−ヘキサナール由来の臭気、配糖体(イソフラボン、サポニン)の収斂味を低減することができ、まろやかな芳香、酸味とコクを有する大豆ホエー乳酸菌発酵物、及び該大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有する飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地の25℃における導電率が、550mS/m〜1,450mS/mとすることにより、乳酸菌を効率よく培養することができることを知見した。
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地であって、
前記培地の25℃における導電率が、550mS/m〜1,450mS/mであることを特徴とする乳酸菌培養培地である。
<2> 大豆ホエーが、25℃における導電率が300mS/m〜750mS/mの大豆ホエーを濃縮した濃縮大豆ホエーである前記<1>に記載の乳酸菌培養培地である。
<3> 大豆ホエーが、カルシウム、及びマグネシウムの少なくともいずれかを含み、
前記大豆ホエーにおける、前記カルシウムの含有量が30mg/100mL以上、及び前記マグネシウムの含有量が30mg/100mL以上の少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の乳酸菌培養培地である。
<4> 大豆ホエーが、豆乳にグルコノデルタラクトンを加えて得られる前記<1>から<3>のいずれかに記載の乳酸菌培養培地である。
<5> 乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の乳酸菌培養培地である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の乳酸菌培養培地を用いて乳酸菌を培養することを特徴とする乳酸菌の培養方法である。
<7> 少なくとも馴養工程を含む前記<6>に記載の乳酸菌の培養方法である。
<8> 乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の少なくともいずれかである前記<6>から<7>のいずれかに記載の乳酸菌の培養方法である。
<9> 乳酸菌培養培地のpHが5.0〜8.0である前記<6>から<8>のいずれかに記載の乳酸菌の培養方法である。
<10> 前記<6>から<9>のいずれかに記載の乳酸菌の培養方法により得られることを特徴とする大豆ホエー乳酸菌発酵物である。
<11> 乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の少なくともいずれかである前記<10>に記載の大豆ホエー乳酸菌発酵物である。
<12> 前記<10>から<11>のいずれかに記載の大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、有効利用されていない大豆ホエーを利用した優れた培養能力を有する乳酸菌培養培地、該乳酸菌培養培地を用いた乳酸菌の培養方法、大豆ホエー特有の不快臭、豆臭、苦渋味、n−ヘキサナール由来の臭気、配糖体(イソフラボン、サポニン)の収斂味を低減することができ、まろやかな芳香、酸味とコクを有する大豆ホエー乳酸菌発酵物、及び該大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有する飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(乳酸菌培養培地)
前記乳酸菌培養培地は、少なくとも大豆ホエーを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記乳酸菌培養培地は、大豆ホエーのみからなるものであってもよいし、大豆ホエーにその他の成分を添加したものであってもよい。
【0012】
<導電率>
前記乳酸菌培養用培地の25℃における導電率としては、550mS/m〜1,450mS/mであれば、特に制限はなく、豆乳を凝固させるために使用する凝固剤の種類に応じて適宜選択することができる。
前記凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸カルシウム、などが挙げられる。
前記凝固剤として、塩化カルシウムを用いた場合に得られる大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地の25℃における導電率としては、850mS/m〜1,050mS/mが好ましい。
前記凝固剤として、塩化マグネシウムを用いた場合に得られる大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地の25℃における導電率としては、800mS/m〜1,450mS/mが好ましい。
前記凝固剤として、グルコノデルタラクトンを用いた場合に得られる大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地の25℃における導電率としては、550mS/m〜700mS/mが好ましい。
前記凝固剤として、硫酸カルシウムを用いた場合に得られる大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地の25℃における導電率としては、700mS/m〜950mS/mが好ましい。
前記乳酸菌培養用培地の25℃における導電率が、前記好ましい範囲未満であると、豆乳の凝固剤による凝集が不完全なため、未凝固成分が乳酸菌培養培地に含まれ、乳酸菌培養培地が白濁することがあり、前記好ましい範囲を超えると、凝固剤が過剰であり、塩溶解による白濁を生じるため、適正な豆乳の凝集ではない。一方、前記乳酸菌培養用培地の25℃における導電率が前記好ましい範囲内であると、豆乳の凝固が適性範囲である点で、有利である。
ここで、前記導電率は、導電計により測定することができる。
前記導電率の調整方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸、塩類、などにより調整する方法が挙げられる。
なお、前記乳酸菌培養用培地が、前記大豆ホエーのみからなるものである場合は、後述する大豆ホエーの濃縮工程で、導電率を調整することができる。
【0013】
<大豆ホエー>
本発明の前記大豆ホエーとは、豆腐や油揚などの製造段階で生じる大豆ホエーをいう。即ち、豆乳に凝固剤を加え、豆乳を凝固させる凝固工程、前記凝固工程で生じた凝固物を圧密する圧密工程で生じる上澄み液のことをいう。
前記大豆ホエーに含まれる成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機成分、少糖類、凝固剤由来の成分、などが挙げられる。
なお、大豆を圧扁し、溶剤(例えば、n−ヘキサン)で脂肪を分離した脱脂大豆を溶解して脱脂大豆の豆乳と残渣不溶物に分け、前記脱脂大豆の豆乳に酸(例えば、塩酸)を加えて大豆蛋白の等電点をpH3.5〜4.0にすると酸沈殿蛋白質が生じ、この際の分離液も大豆ホエーと称されるが、本発明のように凝固剤由来の成分を含まないものであり、本発明の大豆ホエーとは異なる。
【0014】
前記大豆ホエーは、25℃における導電率が、300mS/m〜750mS/mの大豆ホエーを濃縮した濃縮大豆ホエーであることが好ましい。
【0015】
−無機成分−
前記無機成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リンなどが挙げられる。
前記大豆ホエーは、カルシウム、及びマグネシウムの少なくともいずれかを含み、前記大豆ホエーにおける、前記カルシウムの含有量が30mg/100mL以上、及び前記マグネシウムの含有量が30mg/100mL以上の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0016】
前記大豆ホエーにおけるカルシウムの含有量としては、特に制限はなく、使用する凝固剤に応じて適宜選択することができるが、30mg/100mL〜60mg/100mLが好ましく、35mg/100mL〜55mg/100mLがより好ましく、40mg/100mLが特に好ましい。
前記大豆ホエーにおけるカルシウムの含有量が、30mg/100mL未満であると、カルシウム不足で未凝集成分が多く白濁することがあり、60mg/100mLを超えると、カルシウム過剰により塩溶解成分が多くなり、後述する逆浸透膜による濃縮における膜の透過度に影響し好ましくない。一方、前記大豆ホエーにおけるカルシウムの含有量が前記特に好ましい範囲内であると、豆乳の凝固が適性範囲である大豆ホエーの点で、有利である。
ここで、前記カルシウムの含有量は、550℃で灰化し、塩酸処理したシュウ酸カルシウムを、過マンガン酸カリウム滴定法、又は原子吸光度法により測定することができる。
【0017】
前記大豆ホエーにおけるマグネシウムの含有量としては、特に制限はなく、使用する凝固剤に応じて適宜選択することができるが、30mg/100mL〜65mg/100mLが好ましく、35mg/100mL〜40mg/100mLがより好ましく、40mg/100mLが特に好ましい。
前記大豆ホエーにおけるマグネシウムの含有量が、30mg/100mL未満であると、マグネシウム不足のため凝集が不完全で未凝集成分が多く白濁し好ましくなく、65mg/100mLを超えると、マグネシウム過剰により塩溶解成分が多くなり、後述する逆浸透膜による濃縮における膜の透過度に影響し好ましくない。一方、前記大豆ホエーにおけるマグネシウムの含有量が前記特に好ましい範囲内であると、豆乳の凝固が適性範囲である大豆ホエーの点で、有利である。
ここで、前記マグネシウムの含有量は、550℃で灰化したものを塩酸で溶かし原子吸光度法により測定することができる。
【0018】
前記大豆ホエー中における前記カルシウム、及びマグネシウム以外の無機成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
−少糖類−
前記少糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スタキオース、ラフィノース、スクロースなどが挙げられる。
前記少糖類は、乳酸菌の発酵に利用される(後述する試験例3参照)。
大豆ホエー中の前記少糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
−凝固剤由来の成分−
前記凝固剤由来の成分は、凝固物を生成するために豆乳に加えられる凝固剤に由来する成分である。
前記凝固剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン、などが挙げられる。これらの中でも、乳酸菌培養培地としたときに乳酸菌の生育、及び酸度に優れる点で、グルコノデルタラクトンが好ましい
前記塩化カルシウムに由来する成分としては、カルシウム、塩素が挙げられる。
前記硫酸カルシウムに由来する成分としては、カルシウム、硫酸が挙げられる。
前記塩化マグネシウム由来の成分としては、マグネシウム、塩素が挙げられる。
前記グルコノデルタラクトン由来の成分としては、グルコン酸が挙げられる。
大豆ホエー中の前記凝固剤由来の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する凝固剤の添加量に基づくものとすることができる。
前記大豆ホエー中の凝固剤由来の成分の含有量は、例えば、550℃前後で灰化して塩酸で溶解し定溶ろ過液を原子吸光分析し標準液の検量線から測定する方法、キレート滴定法によりカルシウム、マグネシウムをEDTA標準液で滴定する方法が挙げられる。
【0021】
−大豆ホエーに含まれるその他の成分−
前記大豆ホエーに含まれるその他の成分としては、例えば、アミノ酸、有機酸などが挙げられる。
前記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アラニン、バリン、シスチン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、プロリン、ホスホセリン、シスタチオニン、γ−アミノ酪酸、エタノールアミン、1−メチルヒスチジン、アンモニア、オルニチン、ハイドロキシプロリン、遊離アミノ酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、ピルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸、乳酸、ピログルタミン酸、酢酸、コハク酸、プロピオン酸、レブリン酸などが挙げられる。
大豆ホエー中の前記大豆ホエーに含まれるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
<大豆ホエーの調製>
前記大豆ホエーの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大豆ホエーを生成する生成工程と、前記大豆ホエーを濃縮する濃縮工程とを含む方法が挙げられる。
【0023】
−生成工程−
前記生成工程は、大豆ホエーを生成する工程である。
前記生成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凝固処理、圧密処理などが挙げられる。
前記凝固処理は、豆乳に凝固剤を加え、凝集した凝固物と上澄み液を生成する処理である。前記上澄み液が大豆ホエーとなる。
前記圧密処理は、前記凝固物を圧密する処理である。前記圧密処理において生じる上澄み液が大豆ホエーとなる。
【0024】
前記豆乳は、大豆を水漬した後、磨砕又は粉砕し、その後、加熱、ろ過して得られた豆乳を使用してもよいし、市販の豆乳を使用してもよい。なお、前記加熱、ろ過は、加熱を先に行ってもよいし、ろ過を先に行ってもよい。
【0025】
前記凝固剤の添加量としては、特に制限はなく、凝固剤の種類に応じて適宜選択することができる。
前記凝固剤としては、上述の凝固剤が挙げられる。
前記凝固剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記凝固剤として塩化カルシウムを用いる場合の添加量としては、豆乳に対して、0.15質量%〜0.20質量%が好ましい。
前記凝固剤として塩化マグネシウムを用いる場合の添加量としては、豆乳に対して、0.15質量%〜0.25質量%が好ましい。
前記凝固剤としてグルコノデルタラクトンを用いる場合の添加量としては、豆乳に対して、0.25質量%〜0.35質量%が好ましい。
前記凝固剤として硫酸カルシウムを用いる場合の添加量としては、豆乳に対して、0.35質量%〜0.4質量%が好ましい。
前記凝固剤の添加量が、前記好ましい範囲外であると、豆乳の凝固率が低くなり、豆乳成分が凝固物(豆腐など)に移行する割合が低くなり、大豆ホエーに豆乳が残存することがある。一方、前記凝固剤の添加量が前記好ましい範囲内であると、豆乳の利用効率及び凝固率が高く、得られる大豆ホエーの導電率を上げることができる点で、有利である。
なお、前記凝固剤の添加量が、前記好ましい範囲未満であると、大豆ホエー中の未凝固の蛋白質が多くなり、また、大豆ホエーが白濁し、透明度が低くなり、前記好ましい範囲を超えると、大豆ホエー中の塩溶性蛋白質が多くなり、また、大豆ホエーが白濁し、透明度が低くなる。
前記凝固率とは、豆乳中の固形分がマグネシウム、カルシウム等の塩類により凝固して凝固物(例えば、豆腐)へ移行した固形分の比をいう。前記凝固率の適正範囲は、77.8%〜79.0%である。前記凝固率は、大豆の性状、加熱条件、凝固条件にも影響されるが、基本的に大豆量が一定ならば、凝固剤量の影響によって凝固率は変化する。
また、豆乳凝固時の上澄み液の透過率は、90%が適正範囲である。
前記透過率の測定は、光電光度計波長フィルターを0とし、ガラスセルに蒸留水を入れて透過率100%に調整する。次に、ガラスセルに豆乳凝固時の上澄み液を入れて透過率を測定することにより行うことができる。
前記透過率が90%とは、水を透過する量を100%としたときに、豆乳凝固時の上澄み液を90%透過することをいう。
【0026】
前記生成工程で得られる大豆ホエー(以下、「未濃縮大豆ホエー」と称することがある。)の25℃における導電率としては、特に制限はなく、凝固剤に応じて適宜選択することができるが、300mS/m〜750mS/mが好ましい。
例えば、前記凝固剤として、塩化マグネシウムを用いた場合の未濃縮大豆ホエーの導電率としては、400mS/m〜750mS/mが好ましく、塩化カルシウムを用いた場合の未濃縮大豆ホエーの導電率としては、400mS/m〜550mS/mが好ましく、硫酸カルシウムを用いた場合の未濃縮大豆ホエーの導電率としては、340mS/m〜450mS/mが好ましく、グルコノデルタラクトンを用いた場合の未濃縮大豆ホエーの導電率としては、300mS/m〜400mS/mが好ましい。
【0027】
−濃縮工程−
前記濃縮工程は、前記未濃縮大豆ホエーを濃縮する工程である。
前記濃縮の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、逆浸透濃縮法、加熱濃縮法、減圧濃縮法、界面前進凍結濃縮法などが挙げられる。
【0028】
−−逆浸透濃縮法−−
前記逆浸透濃縮法は、前記未濃縮大豆ホエーを逆浸透膜ポリアミド系複合膜、ポリスルホン膜に透過することにより行うことができる。また、例えば、特公昭56−41223号公報に記載の方法により行うことができる。
前記逆浸透濃縮法は、効率よく大豆ホエーを濃縮することができる点で、好ましい。
【0029】
−−加熱濃縮法−−
前記加熱濃縮法は、例えば、二重釜の内部に大豆ホエーを入れ、外側は蒸気で加熱する方法、加熱蒸気ヒーターを内部にいれて蒸発する方法、釜の蓋をして真空で蒸発し濃縮する方法、などにより行うことができる。
【0030】
前記界面前進凍結濃縮法は、例えば、円筒型に前記大豆ホエーを入れて−20℃で氷結させる。前記氷結の際に、前記円筒内の攪拌子により大豆ホエーを攪拌しながら氷結させると、水は下方に氷結し、濃縮された大豆ホエーを上層に分別することにより、大豆ホエーが濃縮される。
【0031】
前記濃縮の度合いとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記乳酸菌培養培地が、濃縮後の大豆ホエーのみからなるものである場合、導電率が、550mS/m〜1,450mS/mとなるように濃縮することが好ましい。
また、前記導電率となるように濃縮する場合の倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2倍〜5倍が好ましく、2倍〜3倍がより好ましい。前記倍率が前記より好ましい範囲内であると、効率の点で、有利である。
【0032】
<含有量>
前記乳酸菌培養培地中の前記大豆ホエーの固形分含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0質量%〜4.5質量%が好ましく、3.5質量%〜4.5質量%がより好ましく、3.5質量%〜4.0質量%が特に好ましい。
前記乳酸菌培養培地中の大豆ホエーの固形分含有量が、3.0質量%未満であると、乳酸菌の増殖がやや低くなることがあり、4.5質量%を超えると、高濃度濃縮中に大豆ホエーの変敗が進行してしまうリスクがある。一方、前記乳酸菌培養培地中の大豆ホエーの固形分含有量が3.5質量%〜4.0質量%であると、乳酸菌の培養が安定し乳酸菌数10〜10cfu/gを示す点で、有利である。
【0033】
前記乳酸菌培養培地が、前記大豆ホエーとその他の成分とからなる場合、前記乳酸菌培養培地中の前記大豆ホエーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、糖類、アミノ酸、無機質、複合の栄養源が挙げられる。
前記乳酸菌培養培地は、前記その他の成分として、糖類、アミノ酸、無機質、及び複合の栄養源の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0035】
前記糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコースなどが挙げられる。
乳酸菌培養培地中の前記糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量%が好ましい。
【0036】
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルタミン酸、アルギニン、アラニン、などが挙げられる。
乳酸菌培養培地中の前記アミノ酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、グルタミン酸の場合、0.1質量%〜0.5質量%が好ましい。
【0037】
前記無機質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム、などが挙げられる。
乳酸菌培養培地中の前記無機質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、大豆ホエーに存在している量で充分である。
【0038】
前記複合の栄養源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵母、麦芽、コーン胚芽、肉エキス、肝臓エキス、ペプトンが挙げられる。これらの中でも、酵母、肝臓エキスが好ましい。
乳酸菌培養培地中の前記複合の栄養源の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
<乳酸菌>
前記乳酸菌培養培地で培養する乳酸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・フェルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・サケイ・サブスピーシーズ・サケイ(Lactobacillus sakei subsp. sakei)、ラクトバチルス・デルブルッキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)等が挙げられる。
前記乳酸菌は、1種単独で培養してもよいし、2種以上を併用して培養してもよい。
前記乳酸菌の中でも、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)が好ましい。
前記乳酸菌は、様々な用途に用いられているが、例えば、培養基質、牛乳、脱脂粉乳培養としての乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィラス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・カゼイが主として用いられている。
【0040】
(乳酸菌の培養方法)
前記乳酸菌の培養方法は、本発明の前記乳酸菌培養培地を用いる。
前記乳酸菌の培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも馴養培養工程を含むことが好ましく、更に、スタータ液調製工程と、増殖培養工程と、本培養工程とを含む培養方法が好ましい。
【0041】
−馴養培養工程−
前記馴養培養工程は、乳酸菌を前記乳酸菌培養培地に馴養する工程である。
前記馴養培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記馴養培養の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜45℃が好ましい。
前記馴養培養の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、24時間〜60時間が好ましい。
前記馴養培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、静置培養が好ましい。
前記馴養培養における継代の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1回〜5回が好ましい。
前記馴養培養では、10cfu/gであった菌を馴養継代により10cfu/gに増殖させることが好ましい。これにより、後述する本培養工程で安定した菌数を得ることができる。
【0042】
−スタータ液調製工程−
前記スタータ液の調製工程は、前記馴養培養した乳酸菌を培養し、後述する増殖培養に用いる乳酸菌を調製する工程である。
前記スタータ液の調製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記スタータ液の調製における培養の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜45℃が好ましい。
前記スタータ液の調製における培養の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、24時間〜60時間が好ましい。
前記スタータ液の調製における培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、静置培養が好ましい。
【0043】
−増殖培養工程−
前記増殖培養工程は、前記スタータ液を用いて乳酸菌を培養し、後述する本培養に用いる乳酸菌を調製する工程である。
前記増殖培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記増殖培養の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜45℃が好ましい。
前記増殖培養の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、24時間〜60時間が好ましい。
前記増殖培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、静置培養が好ましい。
【0044】
−本培養工程−
前記本培養工程は、前記増殖培養工程で得られた乳酸菌を用いて、乳酸菌を本培養する工程である。この本培養後に得られる培養物を後述する大豆ホエー乳酸菌発酵物とすることができる。
前記本培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記本培養の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜45℃が好ましい。
前記本培養の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、24時間〜80時間が好ましい。また、本発明の乳酸菌培養方法は、前記乳酸菌培養培地を用いているので、本培養の時間が24時間という短時間でも十分な乳酸菌数を得ることができる。
前記本培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、静置培養が好ましい。
【0045】
−pH−
前記乳酸菌の培養方法における乳酸菌培養培地のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0〜8.0が好ましく、6.6〜7.5がより好ましく、6.8〜7.0が特に好ましい。
前記pHが、5.0未満であると、酸性側で増殖低下することがあり、8.0を超えると、アルカリ性側で乳酸菌培養に適さないことがある。一方、前記pHが前記特に好ましい範囲内であると、乳酸菌培養の点で、有利である。
【0046】
−乳酸菌−
前記乳酸菌の培養方法で培養する乳酸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した乳酸菌が挙げられる。
前記乳酸菌は、1種単独で培養してもよいし、2種以上を併用して培養してもよい。
前記乳酸菌の中でも、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)が好ましい。
【0047】
(大豆ホエー乳酸菌発酵物)
前記大豆ホエー乳酸菌発酵物は、本発明の前記乳酸菌の培養方法により得られる。
前記大豆ホエー乳酸菌発酵物の酸度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜0.8質量%が好ましい。
前記乳酸菌発酵物中の乳酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.8質量%〜2.1質量%が好ましい。
前記乳酸菌発酵物中の乳酸菌数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1×10cfu/g以上が好ましい。
前記乳酸菌発酵物のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4.0〜5.0が好ましい。
【0048】
前記大豆ホエー乳酸菌発酵物における乳酸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した乳酸菌が挙げられる。
前記乳酸菌の中でも、嗜好性の観点から、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)と、ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用が好ましく、耐熱性の観点から、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)が好ましく、増殖の速さの観点から、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)が好ましく、抗菌性ナイシンを産生することから、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)が好ましい。
【0049】
前記大豆ホエー乳酸菌発酵物は、濃縮したものであってもよいし、未濃縮のものであってもよい。
また、前記大豆ホエー乳酸菌発酵物は、例えば、おからなどのその他の成分を含んでいてもよい。
【0050】
(飲食品)
前記飲食品は、本発明の前記大豆ホエー乳酸菌発酵物を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
前記大豆ホエー乳酸菌発酵物としては、本発明の前記乳酸菌の培養方法により得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物そのものであってもよいし、濃縮などの処理をしたものであってもよい。
前記濃縮の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記した界面前進凍結濃縮法を用いることができる。
【0051】
−飲食品−
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、野菜の漬物、魚類の漬物、練り製品、飲料、惣菜、肉類加工、などが挙げられる。
【0052】
また、本発明の乳酸菌培養培地は、糖および酵母エキス、肝臓エキス、塩類等を添加することにより、酵母、真菌などを培養するための培地として使用することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。また、特に断りのない限り、「%」は質量%を示す。
【0054】
(実施例1:乳酸菌培養培地1の製造)
豆乳835Lを用意した。
前記豆乳に凝固剤として、塩化カルシウムを1,750g添加し、豆乳を凝固させ、大豆ホエー1を得た。前記大豆ホエー1の導電率は、495mS/mの値であった。
前記大豆ホエー1の浮遊物質を除去した後、苛性ソーダによりpHを6.8〜7.0に調整した。前記pHを調整した大豆ホエー1をポリアミド系複合膜からなる逆浸透装置に通過させながら循環させ、逆浸透液を排出して、前記大豆ホエー1を2倍濃縮し、乳酸菌培養培地1を得た。
前記乳酸菌培養培地1は、導電率905mS/m、無機成分の含有量302mg/100mL、pH5.9であった。
前記導電率は、25℃において、導電計(堀場製作所製)で測定した。
前記無機成分の含有量は、乳酸菌培養培地1を550℃で灰化し、原子吸光度計により測定した。
凝固剤の添加量、及び前記乳酸菌培養培地1中の無機成分の含有量を表1に示す。
【0055】
(実施例2:乳酸菌培養培地2の製造)
前記実施例1において、凝固剤として、塩化カルシウムを1,750g添加していた点を、塩化マグネシウムを1,750g添加した以外は、実施例1と同様にして、大豆ホエー2を得た。前記大豆ホエー2の導電率は、446mS/mの値であった。
得られた大豆ホエー2を実施例1と同様の方法で2倍濃縮し、導電率811mS/m、無機成分の含有量267mg/100mL、pH5.9の乳酸菌培養培地2を得た。
前記乳酸菌培養培地2の導電率、及び無機成分の含有量は、実施例1と同様にして測定した。凝固剤の添加量、及び前記乳酸菌培養培地2中の無機成分の含有量を表1に示す。
【0056】
(実施例3:乳酸菌培養培地3の製造)
前記実施例1において、凝固剤として、塩化カルシウムを1,750g添加していた点を、硫酸カルシウムを3,500g添加した以外は、実施例1と同様にして、大豆ホエー3を得た。前記大豆ホエー3の導電率は、423mS/mだった。
得られた大豆ホエー3を実施例1と同様の方法で2倍濃縮し、導電率749mS/m、無機成分の含有量244mg/100mL、pH5.9の乳酸菌培養培地3を得た。
前記乳酸菌培養培地3の導電率、及び無機成分の含有量は、実施例1と同様にして測定した。凝固剤の添加量、及び前記乳酸菌培養培地3中の無機成分の含有量を表1に示す。
【0057】
(実施例4:乳酸菌培養培地4の製造)
前記実施例1において、凝固剤として、塩化カルシウムを1,750g添加していた点を、グルコノデルタラクトンを2,625g添加した以外は、実施例1と同様にして、大豆ホエー4を得た。前記大豆ホエー4の導電率は、342mS/mだった。
得られた大豆ホエー4を実施例1と同様の方法で2倍濃縮し、導電率612mS/m、無機成分の含有量327mg/100mL、pH5.5の乳酸菌培養培地4を得た。
なお、グルコノデルタラクトンを水溶して豆乳に添加するとグルコノデルタラクトンからグルコン酸に変化して酸凝固となる。
前記乳酸菌培養培地4の導電率、及び無機成分の含有量は、実施例1と同様にして測定した。凝固剤の添加量、及び前記乳酸菌培養培地4中の無機成分の含有量を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
(試験例1:乳酸菌培養試験−1)
前記実施例1で得られた乳酸菌培養培地1を用いて、以下の培養方法で表2〜5に記載の乳酸菌を培養し、試験した。結果を表2〜5に示す。
<培養方法>
−馴養培養−
前記乳酸菌培養培地10mLを滅菌処理(121℃、15分)した後、乳酸菌を接種し(接種した乳酸菌数:10〜10)、30℃又は37℃で48時間静置培養し、馴養を5代繰り返し、馴養培養後の乳酸菌培養液を得た。
−スタータ液調製−
前記乳酸菌培養培地100mLを滅菌処理(121℃、15分)した後、前記馴養培養後の乳酸菌培養液1mLを接種し、30℃又は37℃で24時間静置培養し、スタータ液を調製した。
−増殖培養−
前記乳酸菌培養培地1,000mL〜5,000mLを滅菌処理(121℃、15分)した後、前記スタータ液を加え、30℃又は37℃、24時間静置培養し、増殖培養液を得た。
−本培養−
滅菌処理(121℃、15分)した前記乳酸菌培養培地500Lに前記増殖培養液を接種し(接種した乳酸菌数:10)、30℃又は37℃で72時間静置培養した。
なお、前記培養方法における培地のpHは、7.0とした。
前記本培養開始から24時間後、48時間後、72時間後の酸度、乳酸菌数を以下のようにして測定した。
−−乳酸菌数の測定方法−−
BCP加プレートカウント寒天培地24.6gを精製水1,000mLに加温溶解後、121℃で15分高圧滅菌し、45℃〜50℃に保温した培地15mL〜20mLを一定量の試料と混釈して固めた。
次いで、混釈平板嫌気培養で、30℃又は37℃で72時間培養し、発育集落の中で集落が黄変した集落数を測定し、グラム当りの乳酸菌数を算定した。
−−酸度の測定方法−−
培養液10mLに蒸留水10mLを加え、0.1%フェノールフタレインを指示薬として0.1N苛性ソーダ溶液で滴定し、乳酸係数0.009gを用いて酸度を算定した。
酸度の増減を、培養における乳酸菌増殖の目安としてチェックしている。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
前記試験例1で用いた乳酸菌の入手先を表6に示す。
【表6】

【0065】
前記試験例1の結果から、乳酸菌培養培地の25℃における導電率が、550mS/m〜1,450mS/mである実施例1の乳酸菌培養培地1は、乳酸菌の培養に優れており、また、酸度にも優れていることが判った。
前記試験例1の結果から、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)が、乳酸菌数が多い傾向であることが判った。また、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)が、安定して培養することができることが判った。また、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)の増殖速度が速いことが判った。
なお、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)は耐熱性(50℃〜60℃、30分に耐える)であり、有胞子性の菌であることも確認された。
また、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)は安定した培養であった。
【0066】
(試験例2:乳酸菌培養試験−2)
前記実施例1〜4で得られた乳酸菌培養培地1〜4を用いて、前記試験例1と同様の培養方法で、(1)ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)との併用、(2)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、(3)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、(4)ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)を培養し、凝固剤が異なる乳酸菌培養培地における乳酸菌の培養を試験した。結果を表7〜10に示す。
なお、乳酸菌数、酸度の測定方法は前記試験例1と同様にして行った。
【0067】
前記(1)ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)との併用の結果を表7に示す。
【表7】

【0068】
前記(2)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の結果を表8に示す。
【表8】

【0069】
(3)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)の結果を表9に示す。
【表9】

【0070】
(4)ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)の結果を表10に示す。
【表10】

【0071】
前記試験例2の結果から、凝固剤としてグルコノデルタラクトンを用いて得られた大豆ホエーを用いた場合には、乳酸菌の菌数が多く、また、酸度も高く、優れていた。
【0072】
(試験例3:大豆ホエー中の少糖類の利用の確認)
前記試験例1において、乳酸菌としてラクトバチルス・デルブルッキを用い、培養する前後の乳酸菌培養培地1中の少糖類の変化を調べた。なお、前記少糖類は、大豆ホエーの炭水化物に存在しているものである。結果を表11に示す。
なお、前記少糖類の量は、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。具体的には、大豆ホエーを中和し超音波抽出した。定容後、ろ過液を濃縮し、メンブランフィルターろ過して、試料を高速クロマトグラフ(島津製作所製)で分析した。示差屈折率検出器としてRID−10Aを用い、カラムとしてφ4.6m/m×250m/m(和光純薬(株))を用いた。
【0073】
【表11】

【0074】
前記試験例3の結果から、培養後には少糖類の量が減少しており、乳酸菌の発酵に少糖類が利用されていることが確認された。
【0075】
前記試験例1〜3の結果から、凝固剤、少糖類を含む大豆ホエーを用いた乳酸菌培養培地では、培養により乳酸菌が菌数10cfu/gを示したことから、大豆ホエーは培養基質としての特徴を有することが判った。
【0076】
(試験例4:乳酸菌培養試験−3)
本発明の乳酸菌培養培地と、他の培地とにおける乳酸菌の培養を試験した。
−乳酸菌−
有胞子性乳酸菌である前記バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)を使用した。
【0077】
−培地−
(1)大豆ホエー濃縮培地
前記乳酸菌培養培地1をpH7.0に調整したものを115℃、15分間滅菌したものを大豆ホエー濃縮培地とした。前記大豆ホエー培地100mL当りの組成を表12に示す。
【表12】

【0078】
(2)大豆の煮汁
丸大豆1.0kgを19時間水漬し、吸水大豆を2.25kg用意した。これに加水し、100℃で3時間煮沸した煮汁2.43Lを得た。この煮汁は、固形分濃度4.38%、pH5.9、蛋白質0.028%であった。
【0079】
(3)豆乳
丸大豆を浸漬し粉砕後、100℃で2分間加熱処理した。これをろ過分離し、豆乳を分離した。大豆に対する吸水量も含めた加水5倍量では、豆乳固形分濃度11%〜12%であった。
なお、加水量9倍〜10倍量では、豆乳濃度6.5%〜7.0%になる。また、豆乳固形分濃度は、加水量の影響により異なり、木綿豆腐では6%〜7%。油揚の豆腐では5%〜6%、絹豆腐では11%〜12%、凍り豆腐では6%〜7%である。
【0080】
(4)MRS broth(乳酸菌用培地)
ベクトン・ディッキンソン社製のラクトバシラスMRSブロスを使用した。
前記MRS broth 1L当りの組成を表13に示す。
【表13】

【0081】
−培養方法−
試験例1の培養方法において、本培養の時間を72時間から24時間に変えた以外は、試験例1と同様にして、前記培地(1)〜(4)を用いて、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)を培養した。
また、試験例1と同様にして、本培養開始から24時間後の酸度、乳酸菌数を測定した。結果を表14に示す。
【0082】
【表14】

【0083】
試験例4の結果から、培養開始から24時間後の乳酸菌数は、(1)大豆ホエー濃縮培地が1.0×10cfu/g、(2)大豆の煮汁が7.7×10cfu/g、(3)豆乳が3.2×10cfu/g、(4)MRS brothが4.8×10cfu/gであり、(1)大豆ホエー濃縮培地は、乳酸菌用培地である(4)MRS brothと比較しても乳酸菌培養培地として有効であることが確認された。
また、(4)MRS brothによる培養後(乳酸発酵後)の乳酸菌発酵物は、臭気が好ましくなかった。一方、(1)大豆ホエー濃縮培地による培養後の乳酸菌発酵物は、若干アルコール系のヘキサナール臭が感じられたものの、異臭は無かった。そのため、(1)大豆ホエー濃縮培地による培養後の乳酸菌発酵物は、飲食に影響を与えないことが認められた。
【0084】
また、乳酸菌をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)とし、前記培地(1)大豆ホエー濃縮培地と(4)MRS broth(乳酸菌用培地)として、試験例4と同様に試験を行った。その結果、24時間後の乳酸菌数は、(1)大豆ホエー濃縮培地が5.9×10cfu/gであり、(4)MRS brothが3.5×10cfu/gであり、他の乳酸菌種と比較して、高い値であった。
【0085】
(試験例5:大豆ホエー乳酸菌発酵物の香味)
前記試験例1において、乳酸菌培養培地として前記実施例1で得られた乳酸菌培養培地1を用い、乳酸菌としてバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)との併用を用い、72時間培養後に得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物の香気成分を測定した。なお、前記大豆ホエー乳酸菌発酵物のpHは、いずれも4.0〜4.5だった。
香気成分の測定は、香気成分を香気成分ガス捕集装置により捕集後、QP5050A(島津製作所製)、カラムTC−WAX(GLサイエンス製)により香気成分のマススペクトルを測定し、該マススペクトルは、データベースにより同定した。
そして、マススペクトル測定のチャートピークの高さの値をもって評価した。結果を表15に示す。
【0086】
【表15】

【0087】
前記試験例5の結果から、ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)との併用により得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物は香味(「まろやかな芳香」、「不快臭」、「豆臭」、「n−ヘキサナール由来の臭気」)が優れていることが判った。
【0088】
(試験例6:大豆ホエー乳酸菌発酵物の感覚)
前記試験例5で得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物の感覚の評価を官能テストにより行った。結果を表16に示す
前記感覚の評価項目は、以下の通りである。
・嗅覚(臭い、香り)
・味覚(コク、五感(甘味、酸味、苦味、甘味、塩味))
・食感(なめらかさ)
・感覚(収斂味、渋味、刺激性、辛味など)
−評価基準−
前記各評価項目について、下記の基準で評価した。
5点:良い
4点:やや良い
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
【0089】
【表16】

【0090】
前記試験例6の結果から、官能評価によりバチルス・コアグランス、ストレプトコッカス・テレモフィラスとラクトバチルス・アシドフィラスとの併用により得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物は、共に感覚が優れていた。特に、ストレプトコッカス・テレモフィラスと、ラクトバチルス・アシドフィラスとの併用により得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物は、感覚が優れていることが判った。
【0091】
前記試験例5及び6の結果から、ストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)との併用により得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物は、嗜好性(香味、味覚)に優れていることから、飲料への利用に好適であると考えられる。
【0092】
(試験例7:大豆ホエー乳酸菌発酵物の栄養価)
前記試験例5において、乳酸菌培養培地として前記実施例1で得られた乳酸菌培養培地1を用い、乳酸菌としてバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)を用いて得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物の栄養価を測定した。発酵前の乳酸菌培養培地1の栄養価と併せて、結果を表17に示す。
前記栄養価の測定は、食品分析法(日本食品科学工学会編)により行った。
水分は、105℃、5時間乾燥して減量から求めた。蛋白質は、ミクロケルダール法で窒素を定量し、係数5.71を乗じて求めた。脂質は、レーゼゴットリブ法による脂質測定により求めた。灰分は、550℃で灰化した後定量して求めた。Na、Mg、K、Caは、試料を550℃で灰化し塩酸溶液を原子吸光度法により分析した。炭水化物は水分、蛋白質量、脂肪及び灰分の全量より減じた値をもって示した。
【0093】
【表17】

【0094】
(試験例8:大豆ホエー乳酸菌発酵物の有機酸)
前記試験例5において、乳酸菌培養培地として前記実施例1で得られた乳酸菌培養培地1を用い、乳酸菌としてバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)を用いて得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物の有機酸を測定した。発酵前の乳酸菌培養培地1の有機酸と併せて、結果を表18に示す。
前記有機酸の測定は、有機酸分析計(ICS−1500、日本ダイオネクス(株)製)を用い、大豆ホエー乳酸菌発酵物の試料を分離カラム(イオン交換樹脂)に通し、その通過時間の差により有機酸成分に分離後、各有機酸の導電率を検出し、標準物質との比較によって濃度を求めた。
【0095】
【表18】

【0096】
(試験例9:大豆ホエー乳酸菌発酵物のアミノ酸)
前記試験例5において、乳酸菌培養培地として前記実施例1で得られた乳酸菌培養培地1を用い、乳酸菌としてバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)を用いて得られた大豆ホエー乳酸菌発酵物のアミノ酸を測定した。発酵前の乳酸菌培養培地1のアミノ酸と併せて、結果を表19に示す。
前記アミノ酸の測定は、アミノ酸分析計(L-8900、(株)日立ハイテクノロジー製)を用い、大豆ホエー乳酸菌発酵物を分離カラム(イオン交換樹脂)に通し、その通過時間の差により各アミノ酸成分に分離後、ニンヒドリンとの呈色反応によって検出し、標準物質との比較によって濃度を測定した。
【0097】
【表19】

【0098】
(試験例10:耐熱性試験)
乳酸菌として、(1)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、(2)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、(3)ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)を用い、乳酸菌培養培地として、乳酸菌培養培地1を15mL用い、30℃((3)ラクトバチルス・プランタラム、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)又は37℃((1)バチルス・コアグランス、(2)ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用)で24時間の静置培養を行った。なお、乳酸菌培養培地1へは、乳酸菌10cfu/mLを接種した。
24時間培養後の乳酸菌発酵物を、未加熱、50℃で30分間加熱、60℃で30分間加熱、70℃で30分間加熱、80℃で30分間加熱、90℃で30分間加熱、の処理をした後の、乳酸菌数、及び有機酸量を測定した。結果を表20〜24に示す。
なお、乳酸菌数は、試験例1と同様に測定し、有機酸量は、試験例8と同様に測定した。
【0099】
【表20】

【0100】
前記試験例10の結果、バチルス・コアグランスの乳酸菌数は、50℃で30分間加熱後は10cfu/g、60℃で30分間加熱後は10cfu/g、70℃で30分間加熱後は88cfu/gと減少し、80℃で30分間加熱後、及び90℃で30分間加熱後は不検出であった。
ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用の乳酸菌数は、50℃で30分間加熱後は10cfu/g、60℃で30分間加熱後は10cfu/g、70℃で30分間加熱後は50cfu/gと減少し、80℃で30分間加熱後、及び90℃で30分間加熱後は不検出であった。
ラクトバチルス・プランタラムの乳酸菌数は、60℃で30分間加熱後は10cfu/g、70℃〜90℃で30分間加熱後は10cfu/gに減少した。
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの乳酸菌数は、50℃で30分間加熱後は10cfu/g、60℃で30分間加熱後は10cfu/g、70℃で30分間加熱後、及び80℃で30分間加熱後は10cfu/g、90℃で30分間加熱後は133cfu/gに減少した。
耐熱性条件下において、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスは、50℃〜60℃、30分後には50%減少することが認められた。
【0101】
【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【0102】
(試験例11:耐塩性試験)
乳酸菌として、(1)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、(2)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、(3)ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)を用い、乳酸菌培養培地として、乳酸菌培養培地1を15mL用い、30℃((3)ラクトバチルス・プランタラム、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)又は37℃((1)バチルス・コアグランス、(2)ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用)で24時間の静置培養を行った。なお、乳酸菌培養培地1へは、乳酸菌10cfu/mLを接種した。
なお、前記乳酸菌培地1には、NaClを、0(コントロール)、2質量%、4質量%、6質量%、8質量%、10質量%添加し、24時間培養後の、乳酸菌数、及び有機酸量を測定した。結果を表25〜29に示す。
なお、乳酸菌数は、試験例1と同様に測定し、有機酸量は、試験例8と同様に測定した。
【0103】
【表25】

【0104】
前記試験例11の結果、バチルス・コアグランスの乳酸菌数は、NaCl添加量2%〜4%では10cfu/gであり、NaCl添加量8%〜10%では10cfu/gと減少していた。
ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用の乳酸菌数は、NaCl添加量4%では乳酸菌数10cfu/g、NaCl添加量6%以上では10cfu/gに低減していた。
ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの乳酸菌数は、NaCl添加量2%〜4%で乳酸菌数10cfu/g、NaCl添加量6%以上では10cfu/gに減少したが、各添加量において安定した結果が得られた。
【0105】
【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【0106】
(試験例12:耐酸性試験)
乳酸菌として、(1)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、(2)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、(3)ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)を用い、乳酸菌培養培地として、乳酸菌培養培地1を15mL用い、30℃((3)ラクトバチルス・プランタラム、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)又は37℃((1)バチルス・コアグランス、(2)ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用)で24時間の静置培養を行った。なお、乳酸菌培養培地1へは、乳酸菌10cfu/mLを接種した。
なお、前記乳酸菌培地1には、クエン酸を、0(コントロール)、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%添加し、24時間培養後の、乳酸菌数、及び有機酸量と、培養前の有機酸量を測定した。結果を表30〜35に示す。
なお、乳酸菌数は、試験例1と同様に測定し、有機酸量は、試験例8と同様に測定した。
【0107】
【表30】

【0108】
前記試験例12の結果、バチルス・コアグランス、ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの乳酸菌数は、各クエン酸添加量において10cfu/gに増菌し安定していた。
ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用の乳酸菌数は、クエン酸添加量0.1%では乳酸菌数10cfu/gを示し、0.2%〜0.3%では10cfu/gを示し、0.4%では10cfu/g、0.5%では10cfu/gと減少した。
ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用を除く他の乳酸菌には耐酸性が認められた。
【0109】
【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【0110】
(試験例13:耐糖性試験)
乳酸菌として、(1)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、(2)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、(3)ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)を用い、乳酸菌培養培地として、乳酸菌培養培地1を15mL用い、30℃((3)ラクトバチルス・プランタラム、(4)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)又は37℃((1)バチルス・コアグランス、(2)ラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用)で24時間の静置培養を行った。なお、乳酸菌培養培地1へは、乳酸菌10cfu/mLを接種した。
なお、前記乳酸菌培地1には、グルコースを、0(コントロール)、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%添加し、24時間培養後の、乳酸菌数、及び有機酸量を測定した。結果を表36〜40に示す。
なお、乳酸菌数は、試験例1と同様に測定し、有機酸量は、試験例8と同様に測定した。
【0111】
【表36】

【0112】
前記試験例13の結果、バチルス・コアグランス、及びラクトバチルス・アシドフィラスとストレプトコッカス・テレモフィラスとの併用の乳酸菌数は、無添加区(コントロール)に比べて若干少ないが、10cfu/gを示しグルコース添加の影響は極めて少なかった。
ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの乳酸菌数は、いずれのグルコース添加量においても10cfu/gを示し、グルコース添加量3%で乳酸菌数が最大値を示し、グルコース添加量4%〜5%では若干減少した。
【0113】
【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【0114】
上記試験例10〜13の結果から、各種乳酸菌は、食品製造、加工への適正に対応する耐熱性、耐塩性、耐酸性、及び耐糖性を有していることが認められた。
【0115】
上記試験例の結果から、本発明の乳酸菌培養培地は、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の培養に好適であることが判った。
また、上記試験例の結果から、本発明の大豆ホエー乳酸菌発酵物に用いる乳酸菌としては、嗜好性の観点から、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用が好ましく、耐熱性の観点から、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)が好ましく、増殖の速さの観点から、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)が好ましく、抗菌性ナイシンを産生することから、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)が好ましいこと判った。
【0116】
(配合例1:和風調味料)
下記組成に従い、和風調味料(1L)を常法により製造した。
・大豆ホエー乳酸菌発酵物(試験例5の乳酸菌がストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilusとの併用で得られたもの) ・・・ 600mL
・濃口しょうゆ ・・・ 100mL
・食塩 ・・・ 25g
・かつおエキス ・・・ 15mL
・こんぶエキス ・・・ 10mL
・みりん ・・・ 50mL
・たんぱく加水分解物 ・・・ 30mL
・上白糖 ・・・ 40g
・液糖(果糖ブドウ糖液糖) ・・・ 20g
・酵母エキス ・・・ 20g
・調味料(アミノ酸等) ・・・ 5g
・しいたけエキス ・・・ 85mL
【0117】
(配合例2:洋風調味料)
下記組成に従い、洋風調味料(1L)を常法により製造した。
・大豆ホエー乳酸菌発酵物(試験例5の乳酸菌がストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)と、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)との併用で得られたもの) ・・・ 500mL
・たまねぎ ・・・ 80g
・にんにく ・・・ 15g
・しょうが ・・・ 10g
・食酢 ・・・ 20mL
・トマトピューレ ・・・ 30g
・オリーブオイル ・・・ 10g
・しょうゆ ・・・ 93mL
・肉エキス ・・・ 70g
・たんぱく加水分解物 ・・・ 30g
・上白糖 ・・・ 35g
・果糖ブドウ糖液糖 ・・・ 25g
・でん粉 ・・・ 40g
・食塩 ・・・ 25g
・酵母エキス ・・・ 15g
・香辛料 ・・・ 2.0g
【0118】
(配合例3:ラクトリベラホエー)
下記組成に従い、ラクトリベラホエー(1L)を常法により製造した。
・大豆ホエー乳酸菌発酵物(試験例5の乳酸菌がバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)で得られたもの) ・・・ 720g
・液糖(果糖ブドウ糖液糖) ・・・ 80g
・上白糖 ・・・ 20g
・リンゴ酢 ・・・ 100mL
・クエン酸 ・・・ 2g
・蜂蜜 ・・・ 58g
・ゆず絞り汁 ・・・ 20mL
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の乳酸菌培養培地は、乳酸菌の培養能力に優れており、有効利用されていない大豆ホエーの新たな用途として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆ホエーを含有する乳酸菌培養培地であって、
前記培地の25℃における導電率が、550mS/m〜1,450mS/mであることを特徴とする乳酸菌培養培地。
【請求項2】
大豆ホエーが、25℃における導電率が300mS/m〜750mS/mの大豆ホエーを濃縮した濃縮大豆ホエーである請求項1に記載の乳酸菌培養培地。
【請求項3】
大豆ホエーが、カルシウム、及びマグネシウムの少なくともいずれかを含み、
前記大豆ホエーにおける、前記カルシウムの含有量が30mg/100mL以上、及び前記マグネシウムの含有量が30mg/100mL以上の少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の乳酸菌培養培地。
【請求項4】
大豆ホエーが、豆乳にグルコノデルタラクトンを加えて得られる請求項1から3のいずれかに記載の乳酸菌培養培地。
【請求項5】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の少なくともいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の乳酸菌培養培地。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の乳酸菌培養培地を用いて乳酸菌を培養することを特徴とする乳酸菌の培養方法。
【請求項7】
少なくとも馴養工程を含む請求項6に記載の乳酸菌の培養方法。
【請求項8】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の少なくともいずれかである請求項6から7のいずれかに記載の乳酸菌の培養方法。
【請求項9】
乳酸菌培養培地のpHが5.0〜8.0である請求項6から8のいずれかに記載の乳酸菌の培養方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の乳酸菌の培養方法により得られることを特徴とする大豆ホエー乳酸菌発酵物。
【請求項11】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)とストレプトコッカス・テレモフィラス(Streptococcus thermophilus)との併用、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の少なくともいずれかである請求項10に記載の大豆ホエー乳酸菌発酵物。
【請求項12】
請求項10から11のいずれかに記載の大豆ホエー乳酸菌発酵物を含有することを特徴とする飲食品。


【公開番号】特開2011−97865(P2011−97865A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254138(P2009−254138)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(507172082)羽二重豆腐株式会社 (2)
【Fターム(参考)】