説明

大豆加工食品および大豆加工食品原料

【課題】 本発明は食品成分のほとんどをおからが占めると共に、ユーザーが摂取しやすい食感をも有するおから大豆加工食品および大豆加工食品原料を提供することにある。
【解決手段】 大豆から豆乳を絞りとった後のおからを摩砕してペースト状にしたおから原料に、ペースト状の海藻原料及び蒟蒻粉を加えて微温湯攪拌して溶解混合物を生成し、その溶解混合物に水酸化物を添加した後、これを放置して凝固成形して得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆、とくに豆乳を絞って残留したおからを主原料とした大豆加工食品および大豆加工食品原料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おからは、大豆サポニン、イソフラボン、カルシウム、レシチンや食物繊維等のさまざまな有効成分が含まれている。このうち、大豆サポニンは脂質の過酸化抑制、脂肪の代謝促進等による動脈硬化や肥満の予防、イソフラボンは骨粗鬆症、前立腺肥大、更年期諸症状の予防改善、またレシチンにはコレステロールの血管沈着防止作用による動脈硬化予防改善、神経伝達物質精製作用による記憶力減退、認知症の予防改善効果が報告されている。
【特許文献1】特開2004−89113
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
おからは豆腐の製造過程において、豆乳の絞りかすとして得られるものである。近年、前述したような豊富な栄養素を含んでいることが知られるようになり、おからを取り入れた大豆加工食品が数多発表されている。しかしながら、従来発表されている「おから」を成分とする大豆加工食品のほとんどは、食べ易さを追求するあまり、加工食品全体に占めるおからの比率を低くして、添加物を加えて食感のみを向上させたものであった。このため「おから」に含まれる種々の有効成分が十分に摂取できず、おからの有用性が明確であるにもかかわらず、有効に提供されていない問題点があった。
【0004】
本発明は、以上に述べたような実情に鑑みて、食品成分のほとんどをおからが占めると共に、ユーザーが摂取しやすい食感をも有するおから大豆加工食品および大豆加工食品原料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明は、大豆から豆乳を絞りとった後のおからを摩砕してペースト状にしたおから原料に、ペースト状の海藻原料及び蒟蒻粉を加えて微温湯攪拌して溶解混合物を生成し、その溶解混合物に水酸化物を添加した後、これを放置して凝固成形して得ることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載の発明は、大豆から豆乳を絞りとった後のおからを摩砕してペースト状にしたおから原料に、ペースト状の海藻原料と小麦粉と水分を加えて混合練成して得ることを特徴とする。
ここで小麦粉は、強力粉や中力粉、薄力粉などを含む概念である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、ペースト状にした「おから」原料に同じくペースト状にした海藻原料と蒟蒻粉を加えることにより、おからを主原料とする食品であるにも関わらず、海藻原料が「おから」原料全体になじんで「おから」独特のパサついた食感を消し、さらに蒟蒻粉が弾力性のある歯ごたえを与えるので、ユーザーの口の中に含まれた後も滑らかで且つ弾力性のある好適な食感を呈することから、従来、公知の有効成分と食感とのバランスをとることが非常に難しく、主原料として使用することができなかった「おから」の問題点を巧みに解消した大豆加工食品を提供できる。
【0008】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、ペースト状にしたおから原料に同じくペースト状にした海藻減量と小麦粉の混合物に水分を加えて生成することで、おからの有効成分を余すことなく含んでいると共に、おから独特の食べ難い風味や匂いが消された粘性のある原料が得られることにより、ここで得られた大豆加工食品原料を焼いたり、蒸したり、揚げる等の様々な調理方法で調理すれば、例えばケーキやちくわ、パンといった様々な食品に違和感無く適用することができ、おからの食品への適用可能性が広がることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本実施による大豆加工食品および大豆加工食品原料について、以下に製造手順を説明する。
本大豆加工食品は、おもな原料として、おから原料、海藻原料、蒟蒻粉、水酸化カルシウムの各原料を使用するものであるが、ここで、前述した使用各原料のうち要部となる「おから」原料と海藻原料を説明する。
『おから原料』
おから3000重量部に水15000重量部を加えて5分間煮沸し、濾過布で含水率90パーセントまで絞り、さらに9000重量部の水により洗浄してもう一度含水率90%まで絞った初期原料を作成する。その初期原料に3000重量部の水を加えて攪拌し、電動式摩砕機にかけて摩砕することでペースト状の「おから」原料を生成した(特許第3683184号公報参照)。
『海藻原料』
希釈した酸性水に海藻を浸し、水洗いしてから活性牡蠣粉末を酸性水に溶解して生成した活性牡蠣殻エキスを、海藻加水重量の0.1〜0.5パーセント添加し、それを真空高速回転過熱釜で加熱攪拌して海藻を溶解することでペースト状の海藻原料を生成した(特許第2899255号公報参照)。
【0010】
大豆加工食品の製造の第一の手順として、上記した「おから」原料および海藻原料に蒟蒻粉を加え、微温湯でまんべんなく攪拌する。第二の手順として、第一の手順で得られた溶解混合物に水酸化カルシウムを溶かした清水を加えて攪拌し、得られた溶解混合物を型に入れた後に放置して凝固させる。第三の手順として、第二の手順で得られた凝固物を沸騰した清水で茹でて雑菌を殺菌すると共に、清水から灰汁を抜く。
【0011】
大豆加工食品原料については、蒟蒻粉にかわり、小麦粉を「おから」原料と海藻原料に加えている。具体的には、おから原料と海藻原料と小麦粉を水分と混合して得られた混合物である。得られた混合物は、例えるならパン生地のような状態となり、真空容器などに封入される。
【実施例1】
【0012】
<製造手順>
以下、本大豆加工食品の製造手順の一例を説明する
まず、本実施例に使用する各原料は、おから原料70g、海藻原料20g、蒟蒻粉10gである。
第一の手順して、おから原料70gと海藻原料20gを40〜50℃の清水400ccに溶解する。
第二の手順として、第1の手順で得られた溶解混合物に蒟蒻粉10gを加え、ゲル状になるまで攪拌した後、そのゲル化混合物に対し、水酸化カルシウム1gを溶解した150ccのアルカリ溶液を2、3回に分けて加えて攪拌し、ここで得られた混合物を容器に移して約30分間放置して凝固成形する。
第三の手順として、第二手順において得られた凝固物を適当な大きさに切り分け、この分割した複数の凝固物を沸騰した清水で約30分間茹でて、凝固物に付着した雑菌類を殺菌すると共に、残余灰汁を除去し、その後約6時間放置する。
以上、第一〜第三の手順を経ることによって、例えるなら蒟蒻のような弾力性を有する凝固物が得られる。
そして、おから原料の試料の分析成績を表1に示し、さらに、おから原料:海藻原料:蒟蒻粉が7:2:1の場合の凝固物(コンニャク)の食感の指針となる「硬さ」のデータもあわせて示す。凝固物の食感としては、おからのパサつき感は一切なく、例えるなら、蒟蒻の弾力性とゼリーの歯切れのよさを程よく混ぜたような歯応えを呈する。
【表1】

<適用例>
(a)味噌漬け
前述の各製造手順を経て得られた凝固物は、種々の加工食品に適用可能であると推測される。その一つとして味噌漬けが挙げられる。この味噌漬けは、平皿のような容器の上に薄く味噌を敷き、その上に前記凝固物を載せると共に凝固物の上面を味噌で覆って凝固物を漬ける。味噌の成分により浸漬時間は変化するものであるが、約6〜12時間の範囲内で行うことにより味噌漬けが得られる。
(b)唐揚げ
前記凝固物を一口大に千切り、凝固物の表面に付着した水分を十分取り除いた後、凝固物の表面全体に「唐揚げ粉」をまぶし、約170℃の油でキツネ色になるまで揚げることで得られる。食感は摺身揚げに近いものとなる。
【実施例2】
【0013】
以下、本大豆加工食品原料の適用例を説明する。
本大豆加工食品原料は、おから原料と海藻原料と小麦粉を清水と混合して練り物を得たものである。ただし、本大豆加工食品原料は、前述したおから原料、海藻原料、小麦粉の三原料に対し、その他の原料を加えることで多様な食品に適用可能であり、以下にその例をいくつか挙げる。
<適用例>
(a)食パン
本大豆加工食品原料による食パンの製造手順は、まず第1の手順として、ボウルの中に強力粉125gを入れ、ボウルの端々の一端側にドライイーストを小さじ2杯と1/3(約12g)、砂糖大さじ2杯と1/3(約35g)をそれぞれ入れ、ボウルの他端側におから原料100gと海藻原料15gを入れる。
第二の手順として、約40℃に設定した清水120ccをボウルにおけるドライイーストを入れた側に投入し、箆でドライイーストを溶かし込むように粘り気が出てくるまで砂糖・強力粉と攪拌し、粘り気が出たら「おから」原料と海藻原料も一緒に攪拌し、その混合物に粉っぽさがなくなるまで攪拌する。そして、粉っぽさが無くなった段階でボウルから混合物を取り出し、パン生地となる混合物のきめが細かくなり弾力性が出てくるまで捏ねる。
第三の手順として、第二の手順で得られた混合物を再びボウルに入れてラッピングフィルム等で開放部を封じ、約1時間程度、室温よりやや暖かい場所で混合物(パン生地)を発酵させる。そして、発酵により混合物(パン生地)が約2倍程度に膨らんだときに、ボウルの封入してある箇所を開放して内部のガスを抜き出し、再びボウルを封入して約10〜15分間ベンチタイムをとる。
第四の手順として、ベンチタイムをとった後にボウルを封入してある箇所を開放してガスを抜き、混合物(パン生地)を型に入れて約1時間発酵させる。発酵によりパン生地が目視して約1.5倍に膨らんだときに、約190℃に予熱したオーブンで約23分間焼く。最後に焼きあがった混合物(パン生地)を型から外し、クーラーの上にのせて冷ますことにより、パンが完成する。
(b)ケーキ
本大豆加工食品原料によるケーキの製造手順は、まず第一の手順として、ボウルの中に卵黄4個とサラダ油60ccを入れて混合物が白っぽくなるまで攪拌し、さらに砂糖25gを加えて再度攪拌する。
第二の手順として、第一の手順の状態にあるボウルの中におから原料80gと海藻原料10gと豆乳大さじ1杯と1/2(約22〜23g相当)を加えて攪拌する。さらにボウルの中に小麦粉70gを入れて篩で軽く混ぜ合わせる。
第三の手順として、別途用意したボウルの中に4個分相当の卵白と砂糖25gを入れて泡立てて堅いメレンゲを作る。そして前記メレンゲ1/3をおから原料と海藻原料の入ったボウルに入れて混ぜ合わせた後、残りのメレンゲも加えて泡を潰さないようにボウルの底から切るように軽く混ぜ合わせる。
第四の手順として、混ぜ合わせ済みのボウルからケーキ型(本実施例ではシフォン型を適用)に流し込み、混合物から空気を抜いた後に180℃に余熱したオーブンで約45分焼く。その後ケーキ型から焼きあがった混合物を外して冷ますことで、ケーキが完成する。
(c)コロッケ
本大豆加工食品原料によるコロッケの製造手順は、まず第一の手順として、みじん切りにしたタマネギ140gを植物性油でキツネ色になるまで炒め、さらに合挽肉50gを入れて合挽肉がバラけるように潰しながら炒めていく。
第二の手順として、茹でたジャガイモ300gを湯切りした後に潰し、おから原料300gと海藻原料約35〜40gと前述したタマネギ、合挽肉を入れて混ぜ合わせて調味料を添加する。
第三の手順として、適当な大きさに成形し、小麦粉、とき卵、パン粉の順に付着させたものを180℃の油で揚げることで、コロッケが完成する。
(d)ちくわ
本大豆加工食品原料によるちくわの製造手順は、まず第一の手順として、すり鉢の中に、魚肉50gとおから原料50g、海藻原料約6〜7gを入れ、さらに小麦粉6〜7gと卵白1個分、食塩2.5gを加えて粘りが出るまで摺り込む。このとき、すり鉢の下に保冷部材などを敷き、混合物が10℃以下となるように保冷する。
第二の手順として、混合物を芯材に巻きつけてオーブン内に設置し、表面に焼き色が付くまで焼くことで、ちくわが完成する。
(e)その他適用可能性
本大豆加工食品原料は、前述した(a)〜(d)の食品以外の適用も可能である。
具体的には、(a)〜(d)で説明した製造手順に比較的近い手順で製造できるクッキーやハンバーグ、アイス、餃子、ラーメンやうどん等の麺類、ドレッシング、豆腐、プリン、スープ、かまぼこ、さつま揚げなどを製造できると推測される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆から豆乳を絞りとった後のおからを摩砕してペースト状にしたおから原料に、ペースト状の海藻原料及び蒟蒻粉を加えて微温湯攪拌して溶解混合物を生成し、その溶解混合物に水酸化物を添加した後、これを放置して凝固成形して得ることを特徴とする大豆加工食品。
【請求項2】
大豆から豆乳を絞りとった後のおからを摩砕してペースト状にしたおから原料に、ペースト状の海藻原料と小麦粉と水分を加えて混合練成して得ることを特徴とする大豆加工食品原料。