説明

大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法及びその製造方法により製造した発泡アルコール飲料、並びに麦芽アルコール飲料の製造方法及びその製造方法により製造した麦芽アルコール飲料

【課題】オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用する発泡アルコール及び麦芽アルコール飲料の製造方法並びにその製造方法による発泡アルコール及び麦芽アルコール飲料を提供すること。
【解決手段】大麦、小麦及び麦芽を使用することなく、ビール様発泡アルコール飲料の製造方法において、原材料の一部として、エマルスターを代表とするオクテニルコハク酸澱粉を発酵工程前の発酵前液に添加することによって、ビール様発泡アルコール飲料の製造方法及びその製造方法によって製造されたビール様発泡アルコール飲料を提供する。さらに、ビールや発泡酒などの麦芽アルコール飲料においても、使用することができる。また、添加するオクテニルコハク酸澱粉の使用量は、製造される発泡アルコール飲料においては、3〜20kg/klであることが好ましく、製造される麦芽アルコール飲料においては、5〜20kg/klであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法及びその製造方法により製造した発泡アルコール飲料、並びに麦芽アルコール飲料の製造方法及びその製造方法により製造した麦芽アルコール飲料に関する。
【0002】
より具体的には、大麦、小麦及び麦芽などの麦類を一切使用することなしに、炭素源を含有するシロップ、窒素源、ホップ、色素、起泡・泡品質を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母の使用で発酵させることによりビール様発泡アルコール飲料などの発泡アルコール飲料を製造する方法や、麦芽とアルコール発酵に必要な糖分を供給するための副原料を主成分とするビールなどの麦芽アルコール飲料の製造方法において、泡品質(泡持ち、泡立ち)を改善する原材料としてオクテニルコハク酸澱粉を使用し、且つ香味にも優れる発泡アルコール飲料及び麦芽アルコール飲料の製造方法並びにそれらの方法により製造した発泡アルコール飲料及び麦芽アルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から麦芽を主原料とする発泡性のアルコール飲料にはビールや発泡酒がある。ビールや発泡酒は麦芽以外の原料として副原料(米、コーン、スターチなどの澱粉質)が用いられる。これら副原料の澱粉質は麦芽の活性酵素により糖化させ、糖化液を発酵させてアルコール、炭酸ガスに分解してアルコール飲料としてのビールや発泡酒(以下、麦芽アルコール飲料という)が得られる。
【0004】
一方、上記麦芽アルコール飲料のように製麦工程や液化・糖化工程などの醸造工程を経ない、即ち、大麦、小麦及び麦芽を一切使用しないビール様発泡性アルコール飲料(香味がビールに類似しているアルコール飲料)(以下、ビール様発泡アルコール飲料)として、炭素源を含有するシロップ、アミノ酸含有材料などの窒素源、水、ホップ、色素、起泡・泡品質を改善する原材料と必要に応じて香料を添加して原料液を造り、当該原料液に通常のビール製造工程と同様にビール酵母を添加し、アルコール発酵させて造られるその他雑酒に分類される発泡アルコール飲料が、近年開発されて(特許文献1参照)、市販されており、そのすっきりとした香味に特徴を有する。
【0005】
ところで、これらの発泡性を有する上述したアルコール飲料において、当該飲料を特徴づける重要な要素として、泡立ち、泡持ち特性がある。例えば、ビールを飲用するに当り、グラスやジョッキにビールを注ぐと含有される炭酸が発泡し、ビールの上に泡の層が形成される。この泡層は、飲用者に対して視覚的にビールを印象付けると共にビール液面を空気から遮断し、ビールの旨みを封じ込めるという重要な機能を有する。従って、適度な泡立ちの良さと形成された泡層の持続特性(泡持ち)はビールにとって必要不可欠な特性である。
【0006】
しかしながら、従来の麦芽アルコール飲料では、麦芽原料や副原料の選定、麦芽品質の良否、あるいは糖化工程の温度制御などの製造工程管理によって最終製品のアルコール飲料としての泡立ち、泡持ちに大きく影響を及ぼすため、これらの工程管理に費やす労力は全工程のうちでもかなりの割合を占めている。
【0007】
よって、これらの麦芽アルコール飲料やビール様発泡アルコール飲料において、さらなる泡立ち、泡持ちを狙った商品の開発が望まれており、上記のビール様発泡アルコール飲料や麦芽アルコール飲料だけでなく、サイダー、コーラ、ジュースのような飲料に炭酸を含有させた発泡性清涼飲料においても、泡立ち、泡持ちを改善するための添加剤をそれらの製造方法に使用する方策が開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、上述した麦芽アルコール飲料やビール様発泡性アルコール飲料において、その品質や製造方法は未だ開発の余地があり、さらに向上した泡品質を図り、且つ芳醇さや後味の切れなどの優れた香味をも維持するような改善が必要とされている。
【特許文献1】特開2001−37462号公報
【特許文献2】特開2004−81171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は上述に鑑みてなされたものであり、従来の問題点を解決した麦芽、大麦、小麦を原料に使用しないビール様発泡アルコール飲料などの発泡アルコール飲料及び麦芽アルコール飲料を提供することにあり、従来に比して大幅に泡立ち、泡持ちなどの泡特性が向上するように改善するとともに優れた香味をも実現したビール様発泡アルコール飲料などの発泡アルコール飲料及び麦芽アルコール飲料の製造方法並びにその製造方法によって製造された発泡アルコール飲料及び麦芽アルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、上記目的は、請求項1に記載されるが如く、大麦、小麦及び麦芽を使用することなく、炭素源を含有するシロップ、窒素源、ホップ、色素、起泡・泡品質を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母の使用によって発酵させることによる大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法において、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用することを特徴とする発泡アルコール飲料の製造方法によって達成される。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用することで、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法を提供できる。
【0012】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記オクテニルコハク酸澱粉は、エマルスターであることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、原材料の一部としてエマルスターを使用することで、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法を提供できる。
【0014】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記オクテニルコハク酸澱粉は、製造される発泡アルコール飲料1klに対し、3kg以上、20kg以下で使用されることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、原材料の一部としてオクテニルコハク酸澱粉を、本発明によって得られるビール様発泡アルコール飲料1klに対し、3kg以上、20kg以下で使用することによって、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法を提供できる。
【0016】
請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記オクテニルコハク酸澱粉は、発酵工程前に添加されることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前記オクテニルコハク酸澱粉を、発酵工程前に添加して使用することによって、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法を提供できる。
【0018】
請求項5にかかる発明は、麦芽とアルコール発酵に必要な糖分を供給するための副原料を主成分とする麦芽アルコール飲料の製造方法において、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用することを特徴とする麦芽アルコール飲料の製造方法によって達成される。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用することで、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共に、芳醇さ、濃厚さ、後味の切れなどの香味をも改善する麦芽アルコール飲料、つまり発泡酒やビールの製造方法を提供できる。
【0020】
請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の発明において、前記オクテニルコハク酸澱粉は、エマルスターであることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、原材料の一部としてエマルスターを使用することで、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共に、芳醇さ、濃厚さ、後味の切れなどの香味をも改善する麦芽アルコール飲料、つまり発泡酒やビールの製造方法を提供できる。
【0022】
請求項7にかかる発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記オクテニルコハク酸澱粉は、製造される麦芽アルコール飲料1klに対し、5kg以上、20kg以下で使用されることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、原材料の一部としてオクテニルコハク酸澱粉を、本発明によって得られるビール又は発泡酒などの麦芽アルコール飲料1klに対し、5kg以上20kg以下で使用することによって、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共に、芳醇さ、濃厚さ、後味の切れなどの香味をも改善する麦芽アルコール飲料、つまり発泡酒やビールの製造方法を提供できる。
【0024】
請求項8にかかる発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の発明において、前記オクテニルコハク酸澱粉は、発酵工程前に添加されることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、前記オクテニルコハク酸澱粉を、発酵工程前に添加して使用することによって、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共に、芳醇さ、濃厚さ、後味の切れなどの香味をも改善する麦芽アルコール飲料、つまり発泡酒やビールの製造方法を提供できる。
【0026】
請求項9にかかる発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡アルコール飲料の製造方法により得られる発泡アルコール飲料によって達成できる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する大麦、小麦及び麦芽を使用しない、例えば、ビール様発泡アルコール飲料を提供できる。
【0028】
請求項10にかかる発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡アルコール飲料の製造方法により得られ、残存するエキス分(真性エキス濃度)が2重量%未満である発泡アルコール飲料によって達成できる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、一般的に醸造酒を蒸留して製造せずに、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡アルコール飲料の製造方法で得られる、泡品質が向上し、且つ香味をも改善された、残存するエキス分が2重量%未満である発泡アルコール飲料、つまりスピリッツを新規な手法で提供できる。
【0030】
請求項11にかかる発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の麦芽アルコール飲料の製造方法により得られる麦芽アルコール飲料によって達成できる。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、従来の発泡酒やビールに比べて、泡立ち、泡持ちなどの泡特性の向上を達成すると共に、芳醇さ、濃厚さ、後味の切れなどの香味をも改善された麦芽アルコール飲料、つまり発泡酒やビールの製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として、大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に添加することによって、泡立ち、泡持ちなどの泡品質の向上を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する、例えば、ビール様発泡アルコール飲料などの発泡アルコール飲料を提供できる。
【0033】
また、本発明によると、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として、麦芽アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に添加することによって、泡立ち、泡持ちなどの泡品質の向上を達成すると共に、後味の切れ、芳醇さ、濃厚さなどの香味を有する、例えば、発泡酒などの麦芽アルコール飲料を提供できる。
【0034】
さらにまた、本発明によると、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として、上記発泡アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に添加することによって、新規なスピリッツを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の最良の実施形態について、原材料の一部としてオクテニルコハク酸澱粉を使用する大麦、小麦及び麦芽を一切使用しない発泡アルコール飲料の好ましい態様、すなわちビール様発泡アルコール飲料(以下、同じ)の製造方法を詳細に説明する。
【0036】
下記に本発明が適用されるその他雑酒に分類されるビール様発泡アルコール飲料の一般的な製造方法を説明する。
【0037】
まず、炭素源を含有するシロップ、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素、及び起泡・泡品質を改善する原材料は湯を加えて糖成分とアミノ酸を豊富に含む溶液とされ、このような液を一旦煮沸した後、ホップ粕などを除去し、冷却して発酵前液とされる。このようにして製造された発酵前液は、通常のビールの製造工程で行われるように、ビール酵母などの発酵酵母を使用して発酵させて、その後、貯酒する。これにより、麦芽や大麦、小麦などの澱粉質材料を使用することなく、ビール様発泡アルコール飲料を得ることができる。なお、一般的に、ビールらしさを付与する香料、機能性を付与するその他の添加物、又は香味に特徴を与えるハーブ類は発酵を終えた段階で必要に応じて添加してもよい。製造されたビール様発泡アルコール飲料は、ビールと同様の香味を持ち、且つ炭酸ガスの発泡性を有するビール様発泡アルコール飲料とすることができる。
【0038】
以上は、ビール様発泡アルコール飲料の一般的な製造工程である。
【0039】
本発明の一つの態様は、上記ビール様発泡アルコール飲料の製造方法において、泡品質を向上し、且つ香味をも改善するオクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用するものである。
【0040】
本発明で使用するオクテニルコハク酸澱粉は、澱粉に無水オクテニルコハク酸を作用して得られるオクテニルコハク酸澱粉であり、松谷化学工業株式会社製のエマルスター(以下、同じ)である。
【0041】
また、本発明の製造方法は、前述のビール様発泡アルコール飲料の製造方法の発酵前液にオクテニルコハク酸澱粉を添加し、煮沸工程を経て、発酵を行う。これにより、単に発泡アルコール飲料の製造後にオクテニルコハク酸澱粉を添加して調製したものに比べて、香味が劣化したりすることなく、余分な甘味が加わらずにすっきりとした味となり、さらなる泡品質が改善される発泡アルコール飲料が提供できる。また、オクテニルコハク酸澱粉は、その製造工程における仕込段階で他の原料とともに最初から添加してもよいし、又は煮沸後の冷却時に調製された発酵前液に添加してもよい。しかしながら、製造工程における溶解性、殺菌性を考慮すると、発酵前であれば、いずれの工程で添加してもよいが、望ましくは、煮沸前に添加することが好ましい。さらにまた、下記の実施例で詳述するが、オクテニルコハク酸澱粉、すなわちエマルスターを添加するだけでも泡立ち、泡持ちなどの泡特性は改善されるが、上記の発泡アルコール飲料の製造工程にエンドウタンパクを添加して組み合わせることにより、さらなる泡品質の向上が達成できる。また、オクテニルコハク酸澱粉の適正な使用量としては、下記の実施例で詳述するが、得られる発泡アルコール飲料1klに対して、3〜20kgが適当である。
【0042】
同様に、本発明の他の態様として、麦芽アルコール飲料の製造方法にも適用することができ、発酵前にオクテニルコハク酸澱粉を添加して使用することで、泡品質が向上して、香味にも優れたビールや発泡酒などの麦芽アルコール飲料が提供できる。下記の実施例に詳述するが、上記発泡アルコール飲料の場合と同様に、製造方法の発酵前にオクテニルコハク酸澱粉を、製造して得られる麦芽アルコール飲料1klに対して、5〜20kg添加して使用することが好ましい。
【0043】
よって、本発明の発泡アルコール飲料は、オクテニルコハク酸澱粉を添加することによって、のど越しのすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有し、泡立ち、泡持ちなどのさらなる泡品質を達成することができる。したがって、オクテニルコハク酸澱粉は、泡品質を向上し、且つ優れた香味を有するビール様発泡アルコール飲料などの大麦や小麦などの麦類及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の原材料の一部としての適性が高い。さらに、オクテニルコハク酸澱粉を麦芽アルコール飲料の製造工程に添加することによって、従来の発泡酒やビールに比べて、泡立ち、泡持ちなどの泡特性のさらなる向上を達成すると共に、芳醇さ、濃厚さ、後味の切れなどの香味をも改善された麦芽アルコール飲料、つまり発泡酒やビールの製造方法を提供できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明の製法にしたがって実施した具体例を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
ここでは、上述したようなオクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用する場合に適用して実施した試験醸造を説明する。なお、本実施例は、400Lスケールの醸造設備において試験的に実施したものである。異なった使用量でオクテニルコハク酸澱粉を使用した12種類のビール様発泡アルコール飲料、1種類のスピリッツ、5種類の発泡酒を製造し、これらについて官能検査、及び泡持ちの比較試験を行った。
【0046】
実施例1及び2は、それぞれ6種類のビール様発泡アルコール飲料を、実施例3はスピリッツを、実施例4は発泡酒を、400Lスケールの醸造設備において試験的に実施し、何れも原材料以外の工程条件は同じとし、最終的に試験製品の最終アルコール濃度をすべてアルコール5.0容量%に調整した。
(実施例1)
実施例1は、麦芽、大麦を使用することなく、炭素源を含有するシロップ、ホップ、色素、香味・発酵性を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母を使用して発酵させることによりビール様発泡アルコール飲料を製造する方法に糖質を泡立ち、泡持ちを改善する原材料としてオクテニルコハク酸澱粉(松谷化学工業株式会社製:エマルスター、以下同じ)を使用することにより本発明を適用した例で、以下の手順で実施した。
【0047】
以下の原料を使用して発酵前液を調整する。
【0048】
使用原料:ビール様発泡アルコール飲料を製造するために、エマルスターを使用しないコントロールの試験醸造(#1−1)、エマルスター3.0kg(#1−2)、同5.0kg(#1−3)、同10.0kg(#1−4)、同20.0kg(#1−5)、同25.0kg(#1−6)とした。各エマルスターの使用量は得られる発泡アルコール飲料1kl当たりの使用量である。そして何れの試験も原料のシロップは14.64kgの米糖化液(特開2004−08131号公報)、残りはDE50のシロップ(日本コーンターチ社製:コーンシラップ S75)を使い全原料量で69kgになる様に調整した。何れのシロップも商業的に入手可能であり、固形分75%である。また、DEとはDextrose equivalentの略で、でん粉の糖化率を示す。この実施例1では、エンドウタンパクを使用しないこと以外は、発明の実施の形態で述べたビール様発泡アルコール飲料の製造工程に従って製造した。
【0049】
すなわち、カラメル色素240g(池田糖化工業社製:コクヨカラメル、以下同じ),ホップペレット400gに300−350Lのお湯を加えて、更にシロップを加えて溶解させ、60−90分間煮沸する。
【0050】
その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、エキスの濃度を12.0重量%に調整し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得る。この発酵前液に、それぞれの使用量のエマルスターを添加し、さらにビール酵母を3000万cells/mL添加して、6−12℃で5日間発酵させる。その後、−1℃で貯酒を行った。
【0051】
発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除き、最終的なビール様発泡アルコール飲料を得た。
【0052】
前述した様に、本実施例では、エマルスターを使って、ビール様発泡アルコール飲料を製造し、これらの6つの試験について香味、泡立ち、泡持ちについて調べた。
【0053】
【表1】

香味の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
味 :0(粗く劣る)、1(やや雑味)、2(並)、3(良好)
後味 :0(切れず)、1(やや切れず)、2(並)、3(切れる)
表1の官能評価はコントロール試験醸造の#1−1の香味を基準としている。
【0054】
また、上記香味の評価基準について、評価1から評価3を香味の許容範囲とする。
10名のパネルで官能評価を行った結果、エマルスターを使用した#1−2、#1−3、#1−4及び#1−5は、コントロール試験醸造の#1−1と比べて遜色ない、ビール、発泡酒などの麦芽アルコール飲料で好まれる香味となった。一方でエマルスターの使用量の多い#1−6では、粗く劣った傾向となり、後味の切れが劣り、香味バランスが劣った。
【0055】
また、表1は、これらの6つの試験について泡立ちについても調べた。この泡立ちは、泡立ちの評価法(Hartong変法に準ずる)で測定することにより行った。下記にその評価方法を記載する。
1.大瓶に詰めたサンプル液を2.4kg/cmのガス圧に調整し、20℃に一夜静置する。
2.サンプルを装置*にセットし開栓5分後よりNIBEM用コップに分注する(なるべく一定速度で行う)。始めの2回(約100ml)は液量が不均一なので捨てる。
3.3回目に注いだ時、いずれかのコップが泡で一杯になったら注入を止める。
4.泡が一杯になった時点の泡の高さを測定する(h)。
5.泡が一杯になった時点から30秒後の泡の高さを測定する(h3)。
6.上記測定を3回行い、その平均をとる(測定毎にグラスは乾いたものと交換する)。
7.泡立ち(%)=(h3/h)×100
*:注入装置:(J.De.Clerck Lehrbuch der Brauerei Band II 1965,p722 図参照)
上記の方法で得られた値は、試験醸造のビール様発泡アルコール飲料をコップやグラスなどの飲料用容器に注いで、泡を立てた後、その泡が減少する比率を示しており、泡立ち(%)の値が高いほど泡立ちの特性が高く良好で、それに対して低いほど泡立ちの特性が劣ることを示す。
【0056】
泡の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
×:劣る
△:やや劣る
○:概ね並
◎:良好
表1の泡評価はコントロール試験醸造の#1−1を基準としている。
【0057】
泡の総合評価(泡立ち評価法及び#1−1〜#1−6を同時にグラスに注ぎ、10名のパネルの目視による泡持ちの評価)を行った結果、エマルスターを使用した#1−2は#1−1と比べ若干良い評価となり、#1−3、#1−4、#1−5及び#1−6は、良好な結果となった。
(実施例2)
実施例2は、麦芽、大麦を使用することなく、炭素源を含有するシロップ、ホップ、色素、香味・発酵性を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母を使用して発酵させることによりビール様発泡アルコール飲料を製造する方法に泡立ち、泡持ちを改善する原材料としてオクテニルコハク酸澱粉(松谷化学工業株式会社製:エマルスター、以下同じ)を使用することにより本発明を適用した例で、以下の手順で実施した。
【0058】
以下の原料を使用して発酵前液を調整する。
【0059】
使用原料:ビール様発泡アルコール飲料を製造するために、エマルスターを使用しないコントロールの試験醸造(#2−1)、エマルスター3.0kg(#2−2)、同5.0kg(#2−3)、同10.0kg(#2−4)、同20.0kg(#2−5)、同25.0kg(#2−6)とした。各エマルスターの使用量は得られる発泡アルコール飲料1kl当たりの使用量である。そして何れの試験も原料のシロップは14.64kgの米糖化液(特開2004−08131号公報)、残りはDE50のシロップ(日本コーンターチ社製:コーンシラップ S75)を使い全原料量で69kgになる様に調整した。何れのシロップも商業的に入手可能であり、固形分75%である。また、DEとはDextrose equivalentの略で、でん粉の糖化率を示す。本実施例は、実施例1とは異なり、#2−1〜#2−6のすべての試験醸造でエンドウタンパクを使用して、発明の実施の形態で述べたビール様発泡アルコール飲料の製造工程に従って製造した。
【0060】
すなわち、エンドウタンパク200g(オルガノローディアフード社製:エンドウタンパク、以下同じ)カラメル色素240g(池田糖化工業社製:コクヨカラメル、以下同じ),ホップペレット400gに300−350Lのお湯を加えて、更にシロップを加えて溶解させ、60−90分間煮沸する。
【0061】
その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、エキスの濃度を12.0重量%に調整し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得る。この発酵前液に、それぞれの使用量のエマルスターを添加し、さらにビール酵母を3000万cells/mL添加して、6−12℃で5日間発酵させる。その後、−1℃で貯酒を行った。
【0062】
発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除き、最終的なビール様発泡アルコール飲料を得た。
【0063】
前述した様に、本実施例では、エマルスターを使って、ビール様発泡アルコール飲料を製造し、これらの6つの試験について香味、泡立ち、泡持ちについて調べた。
【0064】
【表2】

香味の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
味 :0(粗く劣る)、1(やや雑味)、2(並)、3(良好)
後味 :0(切れず)、1(やや切れず)、2(並)、3(切れる)
表2の官能評価はコントロール試験醸造の#2−1の香味を基準としている。
【0065】
また、上記香味の評価基準について、評価1から評価3を香味の許容範囲とする。
10名のパネルで官能評価を行った結果、エマルスターを使用した#2−2、#2−3、#2−4及び#2−5は、コントロール試験醸造の#2−1と比べて遜色ない、ビール、発泡酒などの麦芽アルコール飲料で好まれる香味となった。一方でエマルスターの使用量の多い#2−6では、粗く劣った傾向となり、後味の切れが劣り、香味バランスが劣った。
【0066】
また、表2は、これらの6つの試験について泡立ちについても調べた。この泡立ちは、泡立ちの評価法(Hartong変法に準ずる)で測定することにより行った。下記にその評価方法を記載する。
1.大瓶に詰めたサンプル液を2.4kg/cmのガス圧に調整し、20℃に一夜静置する。
2.サンプルを装置*にセットし開栓5分後よりNIBEM用コップに分注する(なるべく一定速度で行う)。始めの2回(約100ml)は液量が不均一なので捨てる。
3.3回目に注いだ時、いずれかのコップが泡で一杯になったら注入を止める。
4.泡が一杯になった時点の泡の高さを測定する(h)。
5.泡が一杯になった時点から30秒後の泡の高さを測定する(h3)。
6.上記測定を3回行い、その平均をとる(測定毎にグラスは乾いたものと交換する)。
7.泡立ち(%)=(h3/h)×100
*:注入装置:(J.De.Clerck Lehrbuch der Brauerei Band II 1965,p722 図参照)
上記の方法で得られた値は、試験醸造のビール様発泡アルコール飲料をコップやグラスなどの飲料用容器に注いで、泡を立てた後、その泡が減少する比率を示しており、泡立ち(%)の値が高いほど泡立ちの特性が高く良好で、それに対して低いほど泡立ちの特性が劣ることを示す。
【0067】
泡の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
×:劣る
△:やや劣る
○:概ね並
◎:良好
表2の泡評価はコントロール試験醸造の#2−1を基準としている。
【0068】
泡の総合評価(泡立ち評価法及び#2−1〜#2−6を同時にグラスに注ぎ、10名のパネルの目視による泡持ちの評価)を行った結果、エマルスターを使用した#2−2は#2−1と比べ若干良い評価となり、#2−3、#2−4、#2−5及び#2−6は、良好な結果となった。
【0069】
また、実施例2の#2−1のエマルスターを使用しないコントロールの試験データを実施例1の#1−1のエマルスターもエンドウタンパクも使用しないコントロールの試験データと比較すると、エンドウタンパクを使用した#2−1の泡立ちがエンドウタンパクを添加しない#1−1よりも良好であり、さらに、#2−2、#2−3、#2−4、#2−5及び#2−6の泡立ち(%)をそれぞれ#1−2、#1−3、#1−4、#1−5及び#1−6の泡立ち(%)と比較しても、エマルスターだけでなく、エンドウタンパクを使用した実施例2が実施例1よりも泡立ちの特性が優ることを示した。
【0070】
(実施例3)
通常、スピリッツ類は原料酒を蒸留して製造するが、我々は上述したビール様発泡アルコール飲料の製造方法を応用して、ビール様発泡スピリッツを製造する非常に独特な製造方法を開発した。さらに、該発酵前液を酵母を使用して発酵させることによりビール様発泡アルコール飲料を製造する方法に泡特性を改善する原材料としてエマルスター(松谷化学工業株式会社製:エマルスター、以下同じ)を使用することにより本発明を適用した例で、以下の手順で実施した。
【0071】
使用原料:スピリッツを製造するために、エマルスター6.90kg(#3)とした。エマルスターの使用量は得られるスピリッツ1kl当たりの使用量である。原料のシロップは3.5kgの米糖化液、残りはDE57のシロップ(日本コーンスターチ社製:ハイマルトース M)を使い全原料量で69kgになる様に調整した。何れのシロップも商業的に入手可能であり、固形分75%である。また、DEとはDextrose equivalentの略で、でん粉の糖化率を示す。発明の実施の形態で述べたビール様発泡アルコール飲料の製造工程に従って製造した。
【0072】
すなわち、エンドウタンパク400g(オルガノローディアフード社製:エンドウタンパク、以下同じ)、カラメル色素240g(池田糖化工業社製:コクヨカラメル、以下同じ),ホップペレット400gに300−350Lのお湯を加えて、更にシロップを加えて溶解させ、60−90分間煮沸する。
【0073】
その後、ワールプールと呼ばれる沈殿槽でホップ粕などを除去し、エキスの濃度を11.0重量%に調整し、10℃までプレートクーラーで冷却し、発酵前液を得る。この発酵前液にビール酵母を3000万cells/mL添加し、6−12℃で5日間発酵させる。その後、−1℃で貯酒を行った。
【0074】
発酵液は珪藻土を利用して濾過して酵母を取り除き、最終的なスピリッツを得た。
【0075】
スピリッツは、真性エキスが2.00重量%未満になる様に発酵度の高いマルトース、又はフラクトース、あるいはグルコース比率の高いシロップを原料に使うか、あるいはDE50のシロップで使って予め発酵前もろみ液のエキス濃度を調整する方法もある。さらに雑酒をろ過時の真性エキス2.00重量%未満にすればスピリッツに転用できる。真性エキスとは前述した仮性エキスからアルコールによる比重の影響を除いたものであり、仮性エキスより正確なエキス分を示している。
【0076】
本実施例の最終製品ではアルコール濃度を5.00容量%に調整し、真性エキスは1.95重量%となり、これはスピリッツの定義に合致する2.0重量%以下であった。
【0077】
前述した様に、本実施例では、エマルスターを使って、スピリッツを製造し、この試験について香味・泡持ちについて調べた。
【0078】
【表3】

香味の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
味 :0(粗く劣る)、1(やや雑味)、2(並)、3(良好)
後味 :0(切れず)、1(やや切れず)、2(並)、3(切れる)
泡の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価
×:劣る
△:やや劣る
○:概ね並
◎:良好
表3の官能評価は#3の香味の絶対評価である。
【0079】
10名のパネルで官能評価を行った結果、エマルスターを使用した#3は、ビール、発泡酒などの麦芽アルコール飲料と遜色ない評価となった。
【0080】
表3の泡評価は#3の絶対評価である。
【0081】
泡の総合評価(泡立ち評価法及び#3を同時にグラスに注ぎ、10名のパネルの目視による泡持ちの評価)を行った結果、エマルスターを使用した#3は良好な評価となった。
【0082】
本実施例の製品及び製造法は、一般的に醸造酒を蒸留して製造するスピリッツの製法とは明らかに異なっており、非常に独特な製造方法で新規性が高いものと理解できる。さらに、発酵終了以降に、香料、糖などを添加して、エキス分を2.00重量%以上にすればリキュールにもなる。
【0083】
(実施例4)
実施例4は、麦芽使用量は15.0kgとし、麦芽を除く原料を47.5kgとした場合の麦芽アルコール飲料、例えば、発泡酒を製造する方法について泡特性を改善する原材料として、エマルスター(松谷化学工業株式会社製:エマルスター、以下同じ)を使用することにより本発明を適用した例で、以下の手順で実施した。この実施例における仕込工程のダイヤグラムを図1に示す。麦芽全量を仕込槽に入れ、さらに温水を加えて混合し液温を50℃程度とし約30分保ち、その後約10分かけて徐々に昇温して液温は約65℃とし、麦芽に含まれる糖化酵素が十分に機能する温度となる。マイシェをこの温度に約40分間保持し、その後10分程の時間をかけて約76℃に昇温させ、約5分間保持して酵素作用による糖化を行った。
【0084】
糖化工程終了後、濾過を行って透明な麦汁を得た。次いで、この麦汁を煮沸釜に移し、この時点で当該のエマルスターを添加し、ホップを加えて60〜90分煮沸後、麦汁を沈澱槽に移して、沈澱物を分離、除去した。その後、該麦汁を発酵温度まで冷却し、これを冷麦汁として用いた。その後、麦汁エキス11.8%としてビール酵母3000万cells/mLを添加し、発酵温度13.0℃で発酵し、熟成工程を経てビール様のろ過を行った。
【0085】
以下試験用麦汁を調整する。
【0086】
発泡酒用麦汁を製造するために、エマルスターを使用しない(#4−1)、エマルスターを5kg(#4−2)、同10kg(#4−3)、同20kg(#4−4)、及び同25kg(#4−5)とした。各エマルスターの使用量は得られる麦芽アルコール飲料1kl当たりの使用量である。
【0087】
前述した様に、本実施例では、エマルスターを使って、アルコール容量5.0%の発泡酒を製造し、これらの5つの試験について香味、泡持ちについて調べた。
各試験ではアルコール、炭酸ガス含量は同一とし、香味が比較できるようにした。
【0088】
【表4】

香味の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
味 :0(粗く劣る)、1(やや雑味)、2(並)、3(良好)
後味 :0(切れず)、1(やや切れず)、2(並)、3(切れる)
表4の官能評価はコントロール試験醸造の#4−1の香味を基準としている。
【0089】
また、上記香味の評価基準について、評価1から評価3を香味の許容範囲とする。
10名のパネルで官能評価を行った結果、エマルスターを使用した#4−2、#4−3及び#4−4は、コントロール試験醸造の#4−1と比べて遜色ない、ビール、発泡酒などの麦芽アルコール飲料で好まれる香味となった。一方でエマルスターの使用量の多い#4−5では、粗く劣った傾向となり、のど越しの切れが劣り、香味バランスが劣った。
【0090】
また、表4は、これらの5つの試験について泡特性について調べた。この泡特性は泡持ちNIBEM値を測定することにより行った。NIBEM値(単位:sec)とは、一定条件下でビールや発泡酒の泡持ちをNIBEM法(注がれた泡の崩壊速度を電気伝導度で測定する方法)で測定された値であり、ビールや発泡酒で一般的に泡持ち評価に使用されている。すなわち、NIBEM値が高い値を示せば、泡持ちが良いと評価できる。
【0091】
泡の評価基準:項目毎に以下の通り、4段階評価とした。
×:劣る
△:やや劣る
○:概ね並
◎:良好
表4の泡評価はコントロール試験醸造の#4−1を基準としている。
【0092】
泡の総合評価(泡立ち評価法及び#4−1〜#4−5を同時にグラスに注ぎ、10名のパネルの目視による泡持ちの評価)を行った結果、エマルスターを使用した#4−2は#4−1と比べ若干良い評価となり、#4−3、#4−4及び#4−5は、良好な結果となった。
【0093】
したがって、表1及び2に示したデータから、エマルスターの使用量の範囲が、試験醸造して得たビール様発泡アルコール飲料1klに対し、3〜20kgのビール様発泡アルコール飲料は、優れた泡持性を保持することが確認された。また、上記の使用範囲のビール様発泡アルコール飲料は、当該飲料特有のすっきりとした爽快感を有しつつも、他の使用量の試験と比較してビールや発泡酒などの麦芽アルコール飲料で好まれる、優れた香味や後味の切れを維持することが確認された。また、エマルスターだけの添加でも泡立ち、泡持ちなどの泡特性は向上するが、エンドウタンパクをも添加することによって、さらなる泡特性の向上を図ることが確認された。
【0094】
さらに、表4に示したデータから、エマルスターの使用量の範囲が、試験醸造して得た発泡酒1klに対し、5〜20kgの発泡酒は、上記ビール様発泡アルコール飲料と同様に、優れた泡持性を保持することが確認された。また、他の使用量の試験と比較して、優れた香味や後味の切れを維持することが確認された。
【0095】
またさらに、表3に示したデータから、新規なスピリッツを提供できることが確認された。
【0096】
以上説明したように、上記の結果から、本発明の発泡アルコール飲料及び麦芽アルコール飲料の製造方法において、エマルスターに代表されるオクテニルコハク酸澱粉は、泡立ち、泡持ちを改善する一方で、優れた香味を有するための原材料として使用できる。よって、本発明によると、泡特性の向上を図ることが出来ると共に大麦、小麦及び麦芽などの麦類を一切使用しない発砲アルコール飲料の特徴であるスッキリ感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有したビール様発泡アルコール飲料を提供することが可能となる。さらに、ビールや発泡酒などの麦芽アルコール飲料においても、優れた香味を維持しつつ、泡特性の向上を図る原料として使用することが可能である。
【0097】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】発泡酒及びビールなどの麦芽アルコール飲料の製麦工程における仕込工程を示すダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦、小麦及び麦芽を使用することなく、炭素源を含有するシロップ、窒素源、ホップ、色素、起泡・泡品質を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母の使用によって発酵させることによる大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法において、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用することを特徴とする発泡アルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
前記オクテニルコハク酸澱粉は、エマルスターであることを特徴とする請求項1に記載の発泡アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
前記オクテニルコハク酸澱粉は、製造される発泡アルコール飲料1klに対し、3kg以上、20kg以下で使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡アルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
前記オクテニルコハク酸澱粉は、発酵工程前に添加されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
麦芽とアルコール発酵に必要な糖分を供給するための副原料を主成分とする麦芽アルコール飲料の製造方法において、オクテニルコハク酸澱粉を原材料の一部として使用することを特徴とする麦芽アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
前記オクテニルコハク酸澱粉は、エマルスターであることを特徴とする請求項5に記載の麦芽アルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
前記オクテニルコハク酸澱粉は、製造される麦芽アルコール飲料1klに対し、5kg以上、20kg以下で使用されることを特徴とする請求項5又は6に記載の麦芽アルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
前記オクテニルコハク酸澱粉は、発酵工程前に添加されることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の麦芽アルコール飲料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の発泡アルコール飲料の製造方法により得られる発泡アルコール飲料。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の発泡アルコール飲料の製造方法により得られ、残存するエキス分(真性エキス濃度)が2重量%未満である発泡アルコール飲料。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれかに記載の麦芽アルコール飲料の製造方法により得られる麦芽アルコール飲料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−166758(P2006−166758A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361705(P2004−361705)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】