説明

天井材の養生方法

【課題】天井裏において被覆材を除去するために天井材13を外す際の養生方法を提案する。
【解決手段】吊りボルト10により吊り下げられた野縁12で天井材13を支持した構造を有する天井の天井裏において被覆材を除去するために天井材13を外す際の養生方法であって、透明材料のカバー部2、袋状の作業部3、工具導入部4、及び袋状の収納部5を少なくとも含むカバー1により、取り外し予定の天井材13を覆って養生する工程と、作業部3を利用して取り外し予定の天井材13を取り外し、当該天井材13を収納部5へ収納する工程と、工具導入部4を利用して、工具をカバー内に導入し、被覆材に対し飛散抑制処理を行う工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アスベスト等の被覆材の除去に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
耐火、耐熱の被覆材として梁や壁面などに付着させた既存のアスベスト等を除去する方法として、特許文献1のように、透明材料の柔軟なカバーで施工部位を覆って養生し、そのカバーの外側から、該カバーに設けられた作業部を通して被覆材を除去する方法が提案されている。カバーの内側は吸引機により負圧に維持されるので、除去した被覆材が外側へ漏れ出すことはなく、除去した被覆材は最終的に収納部へ収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−084980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビルや地下鉄の駅など、天井スラブ等から吊りボルトにより吊り下げられた野縁で天井材を支持する構造とした天井の天井裏に、例えば被覆材を付着させた鉄骨(梁)があって、上記カバーを使用した除去方法により被覆材を除去しようとする場合、天井材の外し方が問題となる。すなわち、この場合、天井材を取り外しただけで天井裏の該当鉄骨が暴露することになるので、作業対象の鉄骨を上記カバーで養生する以前に、鉄骨を暴露させずに天井材を取り外す何らかの工夫をしなければならない。
そこで、当課題を解決するべく、天井裏において被覆材を除去するために天井材を外す際の養生方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために提案する養生方法は、
吊りボルトにより吊り下げられた野縁で天井材を支持した構造を有する天井の天井裏において被覆材を除去するために前記天井材を外す際の養生方法であって、
透明材料のカバー部、該カバー部の開口に接続された袋状の作業部、工具を密閉状態でカバー内に導入可能な工具導入部、及び前記カバー部の開口に接続された袋状の収納部を少なくとも含んで構成されたカバーにより、取り外し予定の前記天井材を覆って養生する工程と、
前記カバーの作業部を利用して前記取り外し予定の天井材を取り外し、当該取り外した天井材を前記収納部へ収納する工程と、
前記カバーの工具導入部を利用して、工具をカバー内に導入し、前記天井裏の被覆材に対し飛散抑制処理を行う工程と、を含む養生方法である。
【発明の効果】
【0006】
上記提案に係る養生方法によれば、作業部を有するカバーによって、天井裏の被覆材付着部分を暴露することなく天井材を外すことができる。且つ、外した天井材はカバーの収納部に収められるので、取り外された天井材も暴露することなく処置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】天井材を外す際の養生方法を説明する工程図。
【図2】図1に続く工程図。
【図3】図2に続く工程図。
【図4】天井材を取り外した部位を仮天井シートにより養生した状態を示す図。
【図5】仮天井シートの実施形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に示す実施形態で養生のために使用する透明材料のカバー1は、上述の特許文献1に記載されているカバーを応用したもので、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂をコーティングしたポリエステル繊維布、ポリオレフィン系樹脂をコーティングしたポリオレフィン繊維布を材料とする、柔軟なカバーである。このカバー1は、養生部位を覆うためのシート状のカバー部2と、該カバー部2の複数箇所に開けられた開口2aの周囲に口部周縁が気密接続された袋状の作業部3と、工具を密閉状態でカバー1の外側から内側(天井裏側)へ導入可能な筒状の工具導入部4と、カバー部2の1以上の箇所に開けられた開口2bの周囲に口部周縁が気密接続された袋状の収納部5と、を少なくとも含んで構成される。
【0009】
このカバー1で養生することにより、作業者は、開口2aから袋状の作業部3へ手を突っ込んで、カバー1の内側つまり天井裏側の作業を行うことができる。工具導入部4は、カバー部2の外側の面に口部周縁を気密接続した筒状の部分で、未使用時は、カバー1の内側とは連通していない。工具を導入するときに、工具導入部4の口部内側のカバー部2にカッター等で切れ目を入れることにより開通し、当該工具導入部4の筒内を通して工具をカバー1の内側へ導入することができる。工具を導入した工具導入部4の胴部を適宜の結束具で絞り上げれば、密閉状態で工具をカバー1の内側へ導入することができる。袋状の収納部5は、取り外した天井材を収納可能なサイズに予め形成され、当該収納部5が接続される開口2bは、取り外した天井材を収納部5へ落とし込むことができるように、長円等の適切な形状に形成される。
【0010】
一例として、天井スラブS下に梁として鉄骨Hが通っている天井裏の状態が図1〜図4に図示されている。当該鉄骨Hに例えばアスベストの被覆材が付着させてあり、これを除去する作業の前に天井材を取り外すときの養生方法に関し、以下説明する。
【0011】
図示した天井の構造は、スラブSから多数の吊りボルト10が垂下し、この吊りボルト10に、梁方向へ伸延する野縁受11が固定されている。野縁受11には、直交方向へ伸延する野縁12が一定間隔で固定され、これら直交する野縁受11と野縁12とで格子状の天井下地が構成されている。野縁12の下には天井材13を支持するための支持部12aが延設されており、天井材13の縁部がこの支持部12aによって下支えされる。なお、吊りボルトに取り付けた野縁受に野縁を固定する構造の例を示すが、吊りボルトに直接野縁を固定してある構造、野縁に天井材をねじ止めする構造など、その他の構造もあり得る。
【0012】
このように、吊りボルト10により吊り下げられた野縁12で天井材13を支持した構造を有する天井において、天井裏の鉄骨Hに付着した被覆材を除去するために天井材13を外す際、まず、図1に示すように、取り外し予定の天井材13をカバー1で覆って養生する。
【0013】
カバー1の養生の前に、天井材13の目地を、例えば養生テープ14で目張りする。すなわち、天井材13の裏側には、鉄骨Hの被覆材が飛散して落ちている可能性が無いとは言えないので、被覆材が漏れ出す可能性をできるだけ抑えるべく、養生部位以外も目張りする。続いて、取り外し予定の天井材13を覆うように、カバー1を設置する。カバー1は、カバー部2の縁部を他の天井材13又は壁面等に養生テープ14にて貼り付けることにより、取り外し予定の天井板13全体を覆って設置される。カバー部2の縁部の固着には養生テープが手軽であるが、この他にも、カバー取り付け用のレールを別途設ける(特許文献1)といった手法もあり得る。
【0014】
取り外し予定の天井材13を覆うカバー1は、余裕をもって弛ませて設置される。これは、この後の作業を行い易くするためであり、特に、天井裏の作業時、図3に示すように、天井裏へカバー1を持ち上げて作業し易い状態をつくることができる。
【0015】
設置したカバー1の所定箇所に図示せぬ脱気ダクトを接続し、該脱気ダクトに吸引機(負圧除塵機)をつないで吸引するこにより、養生後のカバー1内側は、負圧に維持する。HEPAフィルタを備えて除塵機能をもつ吸引機によりカバー内を負圧に維持しつつ、カバー1の作業部3に手を突っ込んで、取り外し予定の天井材13を野縁12から取り外す作業を実行する。このときに、必要な工具を工具導入部4から導入して使用することもできる。カバー1の内側が負圧に維持されるので、仮に、天井材13の取り外しに当たって飛散する被覆材があったとしても、カバー外への漏れ出しは抑止される。取り外した天井材13は、そのままカバー1の内側において、開口2bを通し収納部5へ収納する。このとき同時に、他の天井材13裏面や野縁12の掃除を行い、被覆材が混在し得る天井裏の埃を収納部5へ取り払うとよい。
【0016】
図2に示すように、収納部5に天井材13を収納した後、収納部5の口部分において上下の離間した2箇所を所定の結束具で結束して封止し、該結束箇所の間を切断すると、収納部5に収納した天井材13を密閉状態で切り離し、別所で洗浄等の処理を施すことができる。あるいは、収納部5に袋詰めしたまま廃棄処分に回すことも可能である。
【0017】
収納部5を切り離した後、工具導入部4の口部内箇所のカバー部2に切れ目を入れ、エアレススプレーのノズルNを工具導入部4の内側を通してカバー内に導入する。カバー1の内側にノズルNを導入すると、ノズルNから図示せぬスプレー本体へ延びるホースNaが工具導入部4の内側を貫通するので、工具導入部4の胴部を結束具4aにて外側から絞り上げ、ホースNaに密着させて工具導入部4を密閉する。このように、工具導入部4を通し密閉状態で導入されたノズルNを、作業部3に手を入れて作業部3越しに把持して操作し、スプレー本体からノズルNを介し吹き出される飛散抑制剤を、手の届く範囲で被覆材に吹き付ける飛散抑制処理を実行する(図3)。このとき、天井材13を取り外して開口している部位からカバー1を天井裏へ押し上げつつ、飛散抑制剤の吹き付け作業を進めることができる。
【0018】
以上のようにして、適宜カバー1で養生しつつ天井板13を取り外し、飛散抑制処理を鉄骨Hの1スパン分施し終わると、特許文献1のカバー及び被覆材除去方法を使用して、鉄骨Hの被覆材を除去する。すなわち、透明材料で形成され、鉄骨(又は面)を覆うカバー部と、カバー部に取り付けられ、その開口端がカバー部に形成された開口に接続され、カバー部内面からカバー部で覆われた空間に向かって突出するように配置される袋状の作業部と、カバー部に接続され、鉄骨(又は面)から除去された被覆材を内部に収納する袋状の収納部と、カバー部で覆われた空間と収納部の内部とを連通させ、空間と収納部との間に細長い通路を形成する連通部と、カバー部に形成され、被覆材除去用の工具を空間内に導入可能な工具導入部と、を備えたカバーを用いて、そのカバー部の端部を、鉄骨(又は面)に取り付けられたカバー取付用部材に取り付け、鉄骨(又は面)をカバー部で覆うステップと、カバー部に取り付けられた作業部にカバー部の外側から手を挿入し、鉄骨(又は面)に付着させられている被覆材を除去するステップと、除去した被覆材を空間から連通部を通して収納部に収納するステップと、連通部を閉鎖して収納部を封止するステップと、連通部の閉鎖部分よりカバー部側を切り離すことにより、収納部をカバー部から切り離すステップと、を実施する。被覆材除去が完了すれば、次に、異なる材質の被覆材を使用して、耐火被覆の復旧作業が実施される。
【0019】
天井材13の取り外し作業は、1スパンの鉄骨Hに対し1日で終了するとは限らない。この場合、翌日の作業までの間、天井材13を取り外した部位に関し、飛散防止処理後に養生をしておく必要がある。すなわち、飛散防止処理が終わってカバー1を撤去した後に、天井材13を取り外した部位に露出している野縁12を利用して、図4及び図5に示す仮天井シート20を仮設することにより、当該天井材13を取り外した部位を養生する工程が実行される。
【0020】
仮天井シート20は、矩形の防炎シート材21の表面に、線状材22を格子状に固定して構成される。線状材22にはロープを使用することができ、本実施形態の場合、線状材22を、シート材21の表面に溶着した面ファスナー23によって、固定している。面ファスナー23を利用した固定により、線状材22の取り外し、交換を容易に行える。シート材21に固定された線状材22は、露出している野縁12へ面ファスナー24により結束され、これにより仮天井シート20が、天井材13を取り外した部位を覆うように設置され、当該部位が養生される。結束具の面ファスナー24は、線状材22とシート材21との間をくぐらせて野縁12に巻き付けることで、線状材22を野縁12に結束する。シート材21の周縁は、養生テープ14によって他の天井材13や壁面等に貼り付けられる。
【0021】
作業再開時には、養生テープ14を剥がし、面ファスナー24を野縁12から外せば、簡単に仮天井シート20を取り外すことができる。
【符号の説明】
【0022】
S スラブ
H 鉄骨(梁)
1 カバー
2 カバー部
2a,2b 開口
3 作業部
4 工具導入部
5 収納部
10 吊りボルト
11 野縁受
12 野縁
13 天井材
14 養生テープ
20 仮天井シート
21 シート材
22 線状材
23 面ファスナー(線状材固定用)
24 面ファスナー(結束用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトにより吊り下げられた野縁で天井材を支持した構造を有する天井の天井裏において被覆材を除去するために前記天井材を外す際の養生方法であって、
透明材料のカバー部、該カバー部の開口に接続された袋状の作業部、工具を密閉状態でカバー内に導入可能な工具導入部、及び前記カバー部の開口に接続された袋状の収納部を含んで構成されたカバーにより、取り外し予定の前記天井材を覆って養生する工程と、
前記カバーの作業部を利用して前記取り外し予定の天井材を取り外し、当該取り外した天井材を前記収納部へ収納する工程と、
前記カバーの工具導入部を利用して、前記天井裏の被覆材に対し飛散抑制処理を行う工程と、
を含む養生方法。
【請求項2】
前記カバーにより前記取り外し予定の天井材を覆って養生する前に、前記天井材間の目地に目張りをする工程を含む、請求項1記載の養生方法。
【請求項3】
前記飛散防止処理が終わって前記カバーを撤去した後に、前記天井材を取り外した部位に露出している前記野縁を利用して仮天井シートを仮設することにより、当該天井材を取り外した部位を養生する工程を含む、請求項1又は請求項2記載の養生方法。
【請求項4】
請求項3記載の養生方法で使用される前記仮天井シートであって、
シート材の表面に格子状に固定した線状材を含んで構成され、
該線状材を前記野縁に結束して使用する、仮天井シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−52350(P2012−52350A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195983(P2010−195983)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000189800)常盤工業株式会社 (9)
【出願人】(503364320)井上定株式会社 (4)
【出願人】(500303940)株式会社 小川テック (14)
【出願人】(510169424)株式会社トッププランニングJAPAN (4)
【出願人】(510169435)株式会社ヨシケン (4)
【Fターム(参考)】