説明

天然の植物細胞壁組成物とその使用方法

【課題】 天然の植物細胞壁構造をカプセル化剤として利用することにある。
【解決手段】 比較的無傷の壁構造を特徴とする天然の植物細胞壁組成物とその組成物のミクロカプセル化剤としての利用に関する。好ましい例においてオート麦/大麦等の穀粉(フラワー)由来の天然細胞壁組成物であって、その天然細胞壁組成物は主としてベータ−グルカンからなっている。
【解決手段】 図5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は比較的無傷の細胞壁構造を有する天然の(ネイティブ)植物細胞壁組成物およびその組成物をマイクロ・カプセル化剤として使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル化(被包)(エンキャプシュレーション)は被カプセル化物である1つの材料を被覆材料中に取り込みカプセルを形成する工程である。生成するカプセルは例えば被カプセル化物を特殊な環境から必要な時間、場所または条件に到達し、被覆材料の構造が分解して被カプセル化物が解放されるまで保護することを含む数多くの用途に用いることができる。カプセル化技術は医薬、食品成分および化粧品工業を含む種々の産業において、通常カプセル化された医薬または組成物が被カプセル化物の解放のための必要な場所、時間または条件が到達するまで保護されることを確実にするために用いることができる。
【0003】
消化器官への医薬の供給のためのカプセル化メディアは良く知られている。一般に、被覆または壁の性質は被カプセル化物を物理的損失、被カプセル化物の酸化による分解から保護し、あるいは周囲環境からの保護を提供する。
そのようなものとして、被覆が曝される環境との関連で被覆または壁の性質は被カプセル化物が解放される方法で測定される。従って、特殊な用途として、その分解を可能にする被覆の特殊な性質が被カプセル化物の解放を目標とした特殊な時間、場所または条件に適していることが望ましい。
【0004】
カプセルは一般にそれらの粒子の大きさに従ってマクロ(粒子直径>5000ミクロンを持つもの)、ミクロ(粒子直径0.2〜5,000ミクロンを持つもの)およびナノ等に分類される。異なったカプセルの大きさには種々の用途がある。例えばミクロのカプセル化には種々の食品および非食品の工業的用途がある。最も広く用いられるミクロ・カプセル化の技術はDziezakのFood T−echnology42:136,1988に記載されている押出しおよびスプレー乾燥である。
【0005】
一例として、改良された澱粉およびデキストリン/サイクロデキストリンは広くカプセル化のための壁材料として使用されている。これらの壁材料は化合物を分解(例えば酸化的、光的等)から保護するが、一旦摂取されると、それらは腸液中で速やかに溶解され、腸のアミラーゼ酵素によって消化される。壁材料の厚さは解放の時間を調整するように設計され、これによって人間/動物の腸管中で化合物の抑制された解放に柔軟性を与えることになる。
【0006】
脂質基質の壁材料(モノーおよびジグリセライド等)の如き他の材料は、ある温度で壁材料が溶融することで被カプセル化物の解放を行わせる。
【0007】
知られているように、植物繊維の細胞壁はセルロース、ベータ−グルカン、ペントサン/ヘミ−セルロース、グルコマンナン、ガラクトマンナン、蛋白質(プロテイン)、リグニン、ペクチンおよび他の化合物のような種々のバイオ−分子化合物からなっている。これらの化合物細胞壁中の割合は、植物種が異なる毎に変化する。
【0008】
その結果、異なった植物種からの細胞壁材料の性質もまた水溶解性およびカプセル化効率のような特殊な物理化学的パラメータと酵素消化率および内蔵での微生物発酵性の如き生理学的パラメータの双方の項目において変化する。
【0009】
以前には、天然の植物細胞壁構造は精製されたこともなかったし、またカプセル化材料として利用されたこともなかった。しかしながら、カプセル化材料としてこのような材料の需要が出てきたが、これは色々な植物の細胞壁構造の物理化学的および生理学的な性質が、特殊な目標用途用のカプセル化材料を設けるに当たって柔軟性を与えるからである。
【0010】
ベータ−グルカンの特殊な例において、ベータ−グルカンに富む大麦およびオート麦穀粒(全粒または精白物)からの天然の細胞壁構造はミクロカプセル化用の被覆材料として使用されて来なかった。澱粉、デキストリンおよびサイクロデキストリンに比べてベータ−グルカンの人間の腸管内での特有の性質は特殊な目標用途のための魅力的な被覆材料になることである。特に、ベータ−グルカンの性質はi)澱粉に比べて人間の腸管の中/遠位区域内で体温で変化する溶解度(穀粒からの分離中に用いられた処理パラメータに依存する)、ii)ベータ−グルカンを消化できる人間の腸管の前位区域内で酵素が存在しないこと、iii)人間の腸管の遠位区域での微生物(ミクロ−フローラ)が発酵(ベータ−グルカンを消化できる)、iv)ベータ−グルカンはニュートラスューティカルであり、およびv)ベータ−グルカンは極めて低カロリー化合物であることを含んでいる。
【0011】
かくして特にカプセル化剤として更に特別にはベータ−グルカンが天然の細胞壁構造を含んでいる場合のカプセル化剤としての需要が出て来ている。
【0012】
更にまた、異なった物理化学的および生理学的性質(セルロース、ベータ−グルカン、ペントサン/ヘミ−セルロース、グルコマンナン、ガラクトマンナン、プロティン、リグニン、ペクチンおよび他の化合物の色々な糖質を有する細胞壁構造の力で)を持つ構造の需要も他のカプセル化用途における利用として出て来ている。
【0013】
先行技術を考慮しても天然の植物細胞壁構造がこれまでにカプセル化剤として利用されて来なかったことが判る。
【0014】
例えば、米国特許第6,562,459は水不溶性穀粒の多糖類(澱粉)からミクロスフェアを生産する方法を開示している。多糖類は溶剤に溶解し、沈殿剤を加えてミクロスフェアの生成と回収を行う。適当な溶剤はDMSO、ホルムアマイド、アセタマイドまたは高ないしは低pHの水溶液を含んでおり、適当な沈殿剤は水、ジクロロメタン、およびアルコール/水混合物を含んでいる。生産されるマクロスフェアは1nm〜100μmの直径で25%までの球面偏差である。ミクロスフェアは医薬的用途において活性物質を配送するためのキヤリヤを含んで、カプセル化材料として活性物質の遅放性キャリヤとして等色々な目的に用いることができ、生物学的適合性であり生分解性であると述べられており、特に人間または動物の用途に有利である。この方法はα−結合のグルコースポリマー(植物源からの澱粉、アミロースおよびアミロペクチン、動物源からのグリコーゲンおよび微生物源からのデキストラン)および直鎖および分岐ポリマーの混合物を用いる。
【0015】
他の文献の米国特許出願第2002/0164374は25℃と37℃の間で相変化して液体となり医薬発送システムとしての用途の生分解性の不溶性ポリマーを開示している。米国特許第6,569,463および米国特許第6,248,363は固体キャリヤで保持されたカプセル化被覆および活性剤を開示している。米国特許第5,573,783はキャリヤが医薬のナノ粒子で被覆されている低溶解性医薬の発送形成が開示されている。米国特許第5,534,270は無菌化されたナノ微粒子結晶医薬粒の製造法が開示されている。米国特許第6,624,300および米国特許第6,323,338はベータ−グルカンをフィルムの形で濃縮する水性方法を開示している。そして米国特許第6,500,463は可塑化できるマトリックス材料と液体可塑剤を含むカプセル化システムを開示している。
【0016】
【特許文献1】USP6,562,459
【特許文献2】USP6,569,463
【特許文献3】USP6,248,363
【特許文献4】USP5,573,783
【特許文献5】USP5,534,270
【特許文献6】USP6,624,300
【特許文献7】USP6,323,338
【特許文献8】USP6,500,463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
天然の植物細胞壁構造をカプセル化剤として利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、微粒子構造を有する天然の植物細胞壁組成物が提供される。好ましい例においては、微粒子構造はハチの巣構造である。他の好ましい例においては、組成物はオート麦または大麦のフラワー由来であるか、および/または天然の植物細胞壁組成物は主体的にベータ−グルカンよりなっている。
【0019】
本発明の更なる例によれば、ベータ−グルカン(BG)繊維濃縮生産物の製造方法は、フラワー(穀粉)とアルコールを混合してフラワー/アルコールのスラリーを形成するa)段階、高BG含量を有する繊維残渣をアルコールから分離するb)段階、およびb)段階からの繊維残渣を少なくとも1回の追加処理段階にかけるc)段階からなっているが、この追加処理段階はb)段階からの繊維残渣をアルコールと混合して繊維残渣/アルコールのスラリーを形成し、そして繊維残渣/アルコールのスラリーを音波処理、プロテアーゼまたはアミラーゼ処理段階あるいは音波処理、プロテアーゼまたはアミラーゼ処理段階の組合せにかけ、然る後最終の繊維濃縮物を繊維残渣/アルコールのスラリーから分離することを含んでおり、反応条件が微粒子の天然の植物細胞壁構造を持つ繊維濃縮物を形成するように調整されることを特徴としている。
【0020】
また更なる例によれば、本発明はカプセル化剤としての天然の植物細胞壁組成物の使用を提供する。
【0021】
また更なる例において、本発明は化合物を天然の植物細胞壁組成物中にカプセル化する方法を提供するが、この方法は天然の植物細胞壁組成物を被カプセル化物と被カプセル化物の天然の植物細胞壁組成物中への吸蔵(オクルージョン)を促進する条件下で混合するa)段階と生成するカプセルを1つまたはそれ以上の適当な溶媒中で洗浄して被カプセル化物を含まない残渣をカプセルを傷付けることなく除去するb)工程からなっている。より特殊な例においては、a)段階の条件は天然の植物細胞壁組成物を部分的に溶解して被カプセル化物の天然の植物細胞壁組成物中への取り込みを容易にする。他の例においては、a)段階の前に、天然の植物細胞壁組成物はそれが水で湿めらされる前混合段階にかけられる。
【0022】
しかも他の例では、本発明は化合物を微粒子構造を有する天然の植物細胞壁組成物中にカプセル化する方法を提供するが、この方法は天然の植物細胞壁組成物を被カプセル化物と、天然の植物細胞壁組成物の部分的溶解を促進する条件下で混合するa)段階、混合条件を調整して天然の植物細胞壁組成物を壁材料として沈殿させることによって被カプセル化物の取り込みとカプセル形成を行うb)段階と、カプセルを乾燥するc)段階からなっている。
【0023】
本発明はまた、高度の分散能で特徴付けられるベータ−グルカン濃縮物を提供する。
【0024】
本発明に従って、完全にまたは部分的に無傷の天然の植物の細胞壁のユニークな構造及びそれらの性質が記述される。更に、ユニークな植物細胞壁構造を用いた被包(エンキャプシュレーション)のプロセスが同様に記述される。
【0025】
この記述が穀粒(好ましくはオート麦(エンバク)及び大麦)由来のベータ−グルカンに富む植物細胞壁の文脈で書かれるが、他の穀物(例えば小麦、ライ麦、米等)、マメ科植物(野生エンドウ豆、レンチル、ひなエンドウ豆)及び他の植物種からの無傷または天然の植物細胞壁の分離は、本発明によって考慮される。更に、フラワー(穀粉)の語は小麦粉、あらびき粉、または小麦粉フラクションのいずれか1つあるいはその組合せがこの分野の当業者によって理解されるように含むことができる。
【0026】
出願人のコ・ペンディングの特許出願、米国特許出願S/N10/397,215(ここで参考文献としてまとめられている)に記載されるように、高粘度のベータ−グルカン製品及び高粘度繊維濃縮物を製造する方法が述べられている。特に出願人のコ・ペンディング出願は、次の段階a)、b)、c)を含むベータ−グルカン(BG)濃縮物製品の製造方法を記載している。
a)フラワー及びアルコールを混合してフラワー/アルコールのスラリーを形成する
b)そのアルコールから繊維残渣を分離するが、その際その繊維残渣は高BG含量を有している
そして
c)b)段階からの繊維残渣に少なくとも1つの追加処理段階を行うが、この追加処理段階はb)段階からの繊維残渣をアルコールと混合して繊維残渣/アルコールのスラリーを形成すること及び繊維残渣/アルコールのスラリーに音波処理、プロテアーゼまたはアミラーゼ処理段階或いは音波処理とプロテーゼまたはアミラーゼ処理段階を施し、然る後に最終繊維濃縮物を繊維残渣/アルコールのスラリーから分離する
【0027】
出願人の方法論を利用して製造される天然の植物細胞壁からは繊維濃縮物は更に精製され、製品構造の走査型電子顕微鏡検査法(SEM)試験を通じて、および繊維濃縮物によって発現される性質から特徴付けられる。
【0028】
図面1A、1B、2A、2B、3及び4を参照して、未処理の大麦及びオート麦のフラワーの構造(夫々図1A及び図2A)と出願人の方法論に従った各精白穀粒粉から製造されたベータ−グルカン濃縮物の構造(夫々図1B、図2及び3及び4)が実験室及びパイロットプラントに基づく方法として示されている。
【0029】
大麦について図1A及び1Bに示されるように、図1Aの未処理の大麦フラワーは細胞壁構造並びに細胞内容物を含む無傷のフラワー粒子を示している。無傷細胞壁構造は主としてベータ−グルカンとある種のヘミ・セルロース、セルロース及び蛋白質(プロテイン)からなっており、細胞の内部はプロテイン・マトリックスに埋まった澱粉顆粒を優位的に含んでいる。上記の方法論に従った処理を行うことによって、図1Bは本質的にフラワーの無傷細胞壁構造を示しており、この構造では細胞内の澱粉及びプロテイン成分が減少して(即ち細胞内容物は除去されている)、微粒子構造を持ったベータ−グルカンに富む細胞壁/繊維濃縮物を生成しており、特にこの例ではハチの巣構造をなっている。同様の結果がオートフラワー及びオートベータ−グルカン濃縮物の図2A及び2Bに示されている。
【0030】
電子顕微鏡検査から明らかなように、処理されたフラワーは種々の無傷度を有する植物細胞の天然の細胞壁構造に相当する構造を作り出す。本発明に従いかつここに記載される天然の植物細胞壁構造は、植物細胞壁の側壁または実質的部分に相当する比較的平面の微粒子から単一または複合植物細胞の複合側壁まで亘っている。特殊な例では、天然の植物壁構造は、ここでハチの巣構造と定義される個々のまたは複合の細胞の本質的に無傷細胞壁構造の中の有意のボイドスペースを定義する。
【0031】
図3及び4は大麦及びオートフラワーから夫々得られ、上記の方法論に従ってパイロットプラントのスケールで処理されたベータ−グルカン濃縮物の模範的な走査電子顕微鏡グラフである。これらの顕微鏡グラフはパイロットプラントスケールにおいてハチの巣構造を作り出すプロセスの有効性を示している。
【0032】
被包(エンキャプシュレーション)
図5を参照して、被包物(エンキャプシュレート)を天然の細胞壁中に被包するための方法論10が記載されている。特に図5は被包剤(エンキャプシュラント)としてベータ−グルカン濃縮物または繊維濃縮物12を利用した1つの可能なアプローチとして押出し技術を用いた被包を述べている。他の被包技術は下に述べるように既知のスプレー乾燥、スプレー冷却、遠心押出し及び封入複合の個々または組合せプロセスを含むことができる。
【0033】
押出し技術によって、繊維濃縮物12は水と予備的混合段階を受け、好ましくは繊維濃縮物の湿度を15〜40(%)に調整する。予備的混合は知られているように乾燥繊維濃縮物を水と穏やかに混合することにより行われる。
【0034】
湿った繊維濃縮物は、次いで押出機(段階16)に加えられ、所望の被包物(エンキャプシュレート)が押出機の好ましくは入口近くに加えられ、繊維濃縮物と被包物とを押出機内で確実に最大限混合および飽和を行う。あるいはまた、被包物は前混合工程の間に加えることができる。
押出機は繊維濃縮物の部分的溶解が起こり被包物の飽和とシーリングを促進かつ可能にする条件下で操作することが好ましい。押出機の入口および出口における含湿量および温度/熱を含む変数のコントロ−ルは、被包を増大するのに効果的である。
【0035】
押出機からの滲出物は集められ、好ましくは種々の洗浄18、濾過および回収20の諸工程(再洗浄、濾過および回収22を適当に含む)および乾燥24の工程にかけられ、改良された物理的性質を有する生成物を提供する。更なるシーリング工程26を組合せて行ってもよい。
【0036】
好ましい例として、被包剤(エンキャプシュラント)は天然の植物細胞壁材料の形でのベータ−グルカン濃縮物であり、より好ましくはハチの巣構造を持ったベータ−グルカン濃縮物である。
【0037】
洗浄工程は好ましくは穏やかな洗浄および押出物を乾燥するために45〜95%(W/W)含水アルコールと混合することであり、押出物は例えば50ミクロンのスクリーンを用いて濾過によって回収することができる。洗浄工程はまた細胞壁構造中に組み込まない被包物を除去するのに効果的である。
【0038】
代わりの被包工程は微粒子構造材料、45%(またはより高濃度の)エタノールおよび被包物の混合物を含むスラリーをジャケッティド・タンク中で作る諸工程を含んでいるが、これに微粒子構造材料の部分的溶解と微粒子構造のシーリングに通ずる適当条件を創成することが伴い、かくして被包を達成する。例えばこの部分的溶解工程はベータ−グルカンの部分的溶解を誘発するために水を加えることによってスラリーのエタノール濃度を順次減少し、スラリーの濃度を適当なレベルに上昇することによって達成される。部分溶解後、エタノール濃度は高レベル(>45%)に増加的に戻され、被包物を含んだマイクロカプセルを沈殿させる。適当な濾過と乾燥工程は乾燥粉末を形成するために用いることができる。
【0039】
被包工程のまた更なる例は、植物細胞壁材料の完全なる溶解、被包物との混合、次いで混合物のスプレー乾燥を効果的にするためである。
【0040】
部分的および完全な溶解方法の双方において、被包は疎水性被包相の使用によって増加することができ、部分的または完全的溶解被覆材料および疎水相は混合されてエマルジョンを形成し、そこで沈殿および/または疎水相の乾燥はドライスキンとしての被覆材料中に捕捉される。
【0041】
また更なる例では、異なった被包剤が組み合わされる。例えば澱粉またはデキストリン等の他の疎水性コロイドが必要ならば、ベータ−グルカン被包剤と組み合わせることができる。
【0042】
適当な被包物は当業者に知られたもので、酸化および光分解を受け易い、および/または中位/遠位の小腸への供給の必要なフレーバー剤、リーブニング剤、甘味料、ビタミン、ミネラル、トコール、ステロール、オメガ3脂肪酸およびアシドラント(酸味剤)等の医薬、食品成分あるいは化粧成分を含むことができる。
【0043】
適当なシーラントは当業者に知られたもので、加熱処理で溶解しうるモノ−およびジーグルセライドのような脂質ベース材料を含むことができる。
【0044】
分離能試験
天然の植物細胞壁構造を有するベータ−グルカン繊維濃縮物の分散能が調査された。
【0045】
背景
製品を食品成分として使用するための1つの必要要件は、水中の分離能である澱粉のような細かい粉末およびガムのような吸湿性粉末は表面が速やかに水和し小さな塊を作る。多数の工業的用途のためには、他の乾燥成分との使用前混合または高剪断の直列形ミキサーの使用が塊形成を解消する。しかしながら、或る用途では塊形成は依然として1つの問題を提起し、かくして高分散能を持つ製品を利用することが望まれる。
【0046】
実験
回転装置(ロート・トルク形式7637、コール・パーマー インストルメント カンパニ、シカゴ IL)およびウォーターバスが色々なベータ−グルカン濃縮物粉末の分散能を抑止するために用いられた。35mlの透明なチューブが回転装置(タンブラー)上に置かれ、ある設定湿度の所望量の水で満たされた。天然の細胞壁構造の微粒からなるベータ−グルカン濃縮物試料が内部に置かれ、チューブはキャップされ予め定めた頻度で所望の時間的周期で回転した。
【0047】
実験を特定の温度(例えば37℃)で行うために、チューブはウォーターバスの中を通してわずかに高い温度(典型的には0.5〜1.0℃)で回転するようにセットされ、チューブが空気中を回転する間の冷却を補償するようにした。粉末の分離能を測定するために、1%のスラリーが調整された。チューブ(35ml)はタンブラーの上に置かれ20mlの37℃水で満たされた。ベータ−グルカン濃縮物粉末(200mg)はチューブの中に入れられ、チューブは直ちにキャップして5分間60Hzで回転した。5分後、タンブラーを止め、チューブ内容物を2mmふるい(USメッシュ10等価)で超えるものをふるい分けた。チューブは同温の20ml温水で洗浄し、チューブ内容物は緩やかにスクリーン上に保持された塊の上に注いだ。塊は予め秤量された皿の中に集められ80℃で夜通し乾燥した。乾燥後、塊を皿と共に秤りこれを24時間平衡するように放置し、秤量した。分離能は次式に従って計算した。

分離能%=[Wtsample−Wtlumps]・100/Wtsample

ここでWtsampleは試料の重さ(この場合200mg)でWtlumpsは乾燥かつ安定化した塊の重さである。
【0048】
結果
表1はアルカリ抽出によって先行技術に従って調製した市販の50%オート・ベータ−グルカン濃縮物の分離能を、本発明に従って調製した大麦およびオートのベータ−グルカン濃縮物と比較した。
【0049】
その結果は、塊形成問題は市販のオート製品試料について保存したが、本発明に従って調製した試料には塊形成がなかった。
更に市販のオート・ベータ−グルカン濃縮物試料は平均分散能51%を示したが、本発明に従った各試料はいずれも99%以上の分散能を示した。
【0050】
<表1> 本発明に従って調製された大麦およびオートのベータ−グルカン濃縮物試料と市販のオート・ベータ−グルカン濃縮物(1%スラリーとして分散された200mg)の比較


【0051】
本発明の上記実例は例示目的のみを意図している。変更、修正および変化は本発明のクレームで専ら定義された発明の範囲から離れることなしに当事者にとって特別な実例として実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】大麦粉の走査電子顕微鏡写真である。
【図1B】大麦粉から得られた実験室処理のベータ−グルカン濃縮物の走査電子顕微鏡写真で、本発明に従って壁構造材料のハチの巣構造を示している。
【図2A】オート麦粉の走査電子顕微鏡写真である。
【図2B】オート麦粉から得られた実験室処理のベータ−グルカン濃縮物の走査電子顕微鏡写真で、本発明に従って壁構造材料のハチの巣構造を示している。
【図3】大麦粉から得られたパイロットプラント処理のベータ−グルカン濃縮物の2つの走査電子顕微鏡写真で、本発明に従ってハチの巣構造を示している。
【図4】オート麦から得られたパイロットプラント処理のベータ−グルカン濃縮物の2つの走査電子顕微鏡写真で、本発明に従ってハチの巣構造を示している。
【図5】本発明に従ったカプセル化方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒状構造を有する天然の植物細胞壁組成物。
【請求項2】
微粒状構造がハチの巣構造である請求項1記載の天然の植物細胞壁組成物。
【請求項3】
組成物がオートムギまたは大麦の穀粉由来のものである請求項1または2記載の天然の植物壁組成物。
【請求項4】
微粒状構造が植物細胞壁の側壁または実質的部分に相当する比較的平面の微粒子あるいは単一または複式植物細胞の複式側壁に相当する多面微粒子のいずれか1つあるいは組合せと定義される請求項1〜3のいずれか1項記載の天然の植物細胞壁組成物。
【請求項5】
ハチの巣構造が個々のまたは複合の植物細胞の本質的に無傷の細胞壁構造の中に有意の中空空間を持っている微粒子構造と定義される請求項2記載の天然の植物細胞壁組成物。
【請求項6】
天然の細胞壁組成物が主としてベータ−グルカンよりなっている請求項1〜5のいずれか1項記載の天然の植物細胞壁組成物。
【請求項7】
次の段階を含むベータ−グルカン(BG)繊維濃縮製品を製造する方法。
a)フラワー(穀粉)とアルコールを混合してフラワー/アルコールのスラリーを形成すること
b)アルコールから繊維残渣を分離し、その際繊維残渣は高BG含量を有していること
および
c)b)段階からの繊維残渣を少なくとも1つの追加的処理段階にかけること、追加的処理段階はb)段階からの繊維残渣をアルコールと混合して繊維残渣/アルコールのスラリーを形成し、繊維残渣/アルコールのスラリーを音波処理、プロテアーゼ又はアミラーゼ処理段階あるいは音波処理とプロテアーゼ又はアミラーゼ処理段階の組合わせにかけた後、最終の繊維濃縮物を繊維残渣/アルコールのスラリーから分離すること、かつそれらの反応条件は微粒の天然の細胞壁構造を有する繊維濃縮物を形成するように調整されること。
【請求項8】
フラワー(穀粉)がオートまたは大麦の粉である請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の天然の細胞壁組成物のカプセル化剤としての使用。
【請求項10】
天然の細胞壁組成物が主体的にベータ−グルカンからなっている請求項9記載の使用。
【請求項11】
a)請求項1の天然の細胞壁組成物を被カプセル物と、被カプセル化物の天然の細胞壁構造内でのカプセル化を促進する条件下で混合すること
および
b)生成したカプセルを1つまたはそれ以上の溶剤中で洗浄してカプセルを傷付けることなしに被カプセル化物から遊離した残渣を取り除くこと
を含む天然の細胞壁組成物中に化合物をカプセル化する方法。
【請求項12】
段階a)の条件が部分的に天然の細胞壁組成物を可溶化して被カプセル化物の天然の細胞壁組成物中に取込むのを容易にする請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階a)が押出し工程である請求項11〜12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
段階a)に先立って、天然の細胞壁組成物を予備的混合にかけて天然の細胞壁組成物を水で湿潤させる請求項11〜13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
予備的混合が天然の細胞壁組成物の湿度含量を15〜40%(W/W)に調整する請求項14記載の方法。
【請求項16】
カプセルがシールされている請求項11〜15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
a)請求項1の天然の細胞壁組成物を被カプセル化物と天然の細胞壁組成物の部分的可溶化を促進する条件で混合すること
b)混合条件を調整して天然の細胞壁組成物を壁材料として沈殿させ、これによって被カプセル化物を取り込み、そしてカプセルを形成すること
および
c)カプセルを乾燥すること
これらの段階を含み微粒構造を有する天然の細胞壁組成物中に、化合物をカプセル化する方法。
【請求項18】
段階a)が天然の細胞壁組成物および被カプセル化物を水性エタノール(>45%W/W)中で混合し、次いでエタノール濃度を5〜45%W/Wに低下させることを含み、段階b)がエタノール濃度を>45%に再調整することを含んでいる請求項17記載の方法。
【請求項19】
段階a)が天然の細胞壁組成物の完全な可溶化とそれに続く乾燥を含んでいる請求項17記載の方法。
【請求項20】
被カプセル化物が疎水性媒体中にあり、段階a)が疎水性媒体を天然の細胞壁組成物の水性相と混合し、水性/疎水性のエマルジョンを形成することを含んでいる請求項17〜19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
図1B、2B、3または4に示されたハチの巣構造を有するベータ−グルカン濃縮物。
【請求項22】
高分散能を有するベータ−グルカン濃縮物。
【請求項23】
分散能が52%より大きい請求項22記載のベータ−グルカン濃縮物。
【請求項24】
分散能が99%より大きい請求項22記載のベータ−グルカン濃縮物。

【図5】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−529576(P2007−529576A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503166(P2007−503166)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000413
【国際公開番号】WO2005/090408
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500143302)ザ ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティー オブ アルバータ (1)
【Fターム(参考)】