説明

天然ガスの圧接用リングバーナ

【課題】本発明は天然ガスの放出量が安定化し、火炎も安定して所定の火力を得ることが可能になると共に熟練した技能がなくても容易に且つ均等に加熱される天然ガスの圧接用リングバーナを提供することを目的とする。
【解決手段】鉄筋Wの接合面の焼幅部分を加熱するためのノズル2の端部と、バーナ本体部Aの略円弧状導管1の内部を連通する主路11との間に、支路12を介して溜り部13が形成された構造とする。また前記ノズル2として放出穴が複数であるものを用い、各ノズル2,2’の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋Wまでの距離を同一とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築現場や土木現場等で2本の鉄筋を対向させて接合する際に、その鉄筋の突合せ部分を天然ガスで均等に加熱する圧接用リングバーナ、特には鉄筋の出入自在な開口部を有した天然ガスの圧接用リングバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部を有したガス圧接用リングバーナとしては、図5に示すような環体(A’)の内周面に所定数のノズル(2’)が、鉄筋の接合面の外周に向けて等間隔に直接配置して取付けられている。この時のノズル接続構造は、太い導管(主路)に、細い穴を有したノズル(2’)を直接取付けている。例えば、特開2001−330216の図3、図4や実用新案登録第3025023号の図3などに示すようにノズルが一体に取付けられている。又、特開平7−145917号の図1や図3に示すように鉄筋の接合面の焼幅部に向けて補助火炎噴射孔(ノズル)が、円弧状部(環体)に補助分岐管(支路)を介して取付けられているものもあった。
【0003】
前記ノズル(2’)を導管の内周面に直接取付けたリングバーナでガス圧接を行う際、燃料ガスがアセチレンガスである場合には放出穴が1つで問題ないが、燃料ガスとして天然ガスを用いた時には、放出穴が複数有り且つ放出圧力がアセチレンガスの時よりも高くなり、特に円弧状部に特開平7−145917号のような補助分岐管を介して取付けられた補助火炎噴射孔には、乱流を生じて放出量が安定せず、火炎が不安定で所定の火力を得ることが難しいものであった。
【0004】
尚、ガス圧接の主流はアセチレンガスであり、天然ガスを用いるガス圧接は本発明者が提案し、最近になってようやく実用化するに至った方法である。この天然ガスを用いるガス圧接方法としては、本発明者の特許第3567118号,特許第3629224号,特許第3827965号,特願2008−259430などがある。
【0005】
他方、従来のガス圧接用リングバーナは、開口部(3)にはノズル(2’)がないため、端部のノズル(2’)を鉄筋の中心からずらせて開口部分の鉄筋外周に火炎が当てられると共に他のノズル(2’)も鉄筋の中心からずらせて鉄筋の突合せ部分が加熱されるため、円形のガス圧接用リングバーナのように鉄筋の中心に向って火炎を当てることが出来ずに加熱しているのが現状である。このため、開口部(3)を設けたガス圧接用リングバーナであっても鉄筋の突合せ部分を均等に加熱させるものとして、特開平6−313524号が提案されている。この構造は、相対する導管円弧部の中心に対し対称に配置された火口は、円筒状又は円柱状の工作物(鉄筋)の周面との交点が工作物の円周に沿って移動するように順次配置し、これらの火口は相対する導管円弧部を含む面に対し同じ方向へ傾斜したものである。この目的は、火炎を工作物の周面との交点が工作物の円周に沿って順次移動する箇所に与えることにより、火炎が工作物の周面に沿って順次放絡線を描いて工作物の周面全体を連続的に円形に包むようにして工作物の周面を均一に加熱すると共に同じ方向へ傾斜する火炎の放絡線は工作物の周面を螺旋状にうず巻く気流を生じさせて空気を吸い込んで完全燃焼が得られるようにしたものである。
【0006】
しかしながら特開平6−313524号は、工作物の外周(円周)に対して等間隔(均等幅)で火炎が当らず、且つ、各火口先端とその火口から放出する火炎が当る工作物までの距離が一定でないため、工作物の外周がより正確に均等な加熱を行うことは困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−330216号公報
【特許文献2】実用新案登録第3025023号公報
【特許文献3】特開平7−145917号公報
【特許文献4】特開平6−313524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は天然ガスの放出量が安定化し、火炎も安定して所定の火力を得ることが可能になると共に熟練した技能がなくても容易に且つ均等に加熱される天然ガスの圧接用リングバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり鉄筋の接合面の焼幅部分を加熱するためのノズルの端部と、バーナ本体部の略円弧状導管の内部を連通する主路との間に、支路を介して溜り部が形成された構造とする。また前記ノズルとして、放出穴が複数であるものを用い、各ノズルの先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋までの距離を同一とするのが好ましい。又、前記バーナ本体部として、内周面に複数のノズルを配置した一対の略円弧状導管を用い、前記ノズルの先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋までの距離を一定にするための段部が、略円弧状導管の内周面に形成されると共にそこにノズルを着脱可能に配置すると良い。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように鉄筋(W)の接合面の焼幅部分を加熱するためのノズル(2)の端部と、バーナ本体部(A)の略円弧状導管(1)の内部を連通する主路(11)との間に、支路(12)を介して溜り部(13)が形成されたものとすることにより、ノズル(2)から放出する天然ガスの炎が安定し、良好なガス圧接作業が可能になると共にアセチレンガスに比べ、天然ガスは安価であるので、燃料費が節約できるものとなる。
【0011】
請求項2のようにノズル(2),(2’)の放出穴を複数にすることにより、鉄筋(W)の接合面の外周部及び焼幅部分がより均等に加熱され、効率の良い温度上昇と加熱時間をアセチレンの時よりも短縮させることが可能となり、熟練した技能がなくても容易に、且つ、能率良くガス圧接作業が行えるものとなる。
【0012】
請求項3に示すように各ノズル(2),(2’)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を同一にすることにより、鉄筋(W)の接合面の外周部及び焼幅部分がより均等に加熱されるため、効率の良い温度上昇と加熱時間の短縮が可能となり、熟練した技能がなくても容易に、且つ、能率良くガス圧接作業が行えるものとなる。
【0013】
請求項4に示すようにバーナ本体部(A)が、内周面に複数のノズル(2),(2’)を配置した一対の略円弧状導管(1)であり、前記ノズル(2),(2’)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定にするための段部(1b)が、前記略円弧状導管(1)の内周面に形成されると共にそこに前記ノズル(2),(2’)が着脱可能に配置されることにより、ノズル(2),(2’)の先端とそのノズル(2),(2’)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離及び角度は、誰がノズル(2),(2’)を交換しても始めの状態と略同一となるため、ノズル(2),(2’)の交換を誰が行っても初期の条件が常に確保されるものとなる。又、鉄筋(W)の接合面の外周部及び焼幅部分が確実で且つ均等に加熱されるため、効率の良い温度上昇と加熱時間の短縮が可能となり、熟練した技能がなくても容易に、且つ、能率良くガス圧接作業が行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の要部断面を示す説明図である。
【図2】本実施形態の略円弧状導管を示す斜視図である。
【図3】ノズルから放出する火炎状態を示す説明図である。
【図4】本実施形態の断面を示す説明図である。
【図5】従来のリングバーナを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者によって提案された天然ガスを用いるガス圧接が安定して行えるという目的を、ノズルの端部と、バーナ本体部の略円弧状導管の内部を連通する主路との間に、支路を介して溜り部が形成された構造と成すことにより実現した。
【実施例1】
【0016】
図1、図2、図4は本発明の実施形態を示す図であり、この図に基づいて説明する。(A)は鉄筋(W)の出入自在な開口部(3)を有すると共に後述する複数のノズル(2),(2‘)を着脱可能に配置したバーナ本体部であり、該バーナ本体部(A)は図4に示すような略円弧状導管(1)が対向して一対で設けられており、この材質としてはアルミニウムなどの軽金属で形成するのが好ましいが、この材質に限定されるものではない。また前記略円弧状導管(1)の開口部(3)側と反対側の端部(1a)は、後述するU字状の導管(4)の端部と連結されている。前記略円弧状導管(1)の両端部及び中央部には、鉄筋(W)の接合面の焼幅部分を加熱するためのノズル(2)が複数個配置されており、該ノズル(2)を螺合して取付けたその端部と、前記バーナ本体部(A)の略円弧状導管(1)の内部を連通する主路(11)との間に、支路(12)を介して溜り部(13)が形成されている。尚、前記支路(12)の太さは、主路(11)の太さよりもなるべく細くさせるのが好ましく、ガス放出時に溜り部(13)にガスが充填される太さであれば良い。
【0017】
(2),(2’)は略円弧状導管(1)の内周面の段部(1b)に着脱可能に螺合させて配置したノズルであり、該ノズル(2),(2’)には、中心とその周囲に複数の放出穴が穿設されている。この放出穴は、中心と外周部に穿設され、外周部の放出穴は中心の放出穴よりも小さい。前記ノズル(2)は図2に示すような略円弧状導管(1)の両端部及び中央部に配置され、その役目は鉄筋(W)の接合面の焼幅部分を加熱するためのものであり、ノズル(2’)は鉄筋(W)の接合面の外周を加熱するためのものである。また前記各ノズル(2),(2’)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離は同一にセットされる。尚、前記ノズル(2)とノズル(2’)の構造や大きさは同じである。(4)は略円弧状導管(1)に酸素と天然ガスを供給するためのU字状の導管であり、該導管(4)は銅製パイプで形成されている。尚、前記導管(4)は銅製パイプに限定されるものではない。
【0018】
次に本発明品の組立て方について説明する。先ず図2に示すように略円弧状導管(1)にノズル(2),(2’)を螺合させて固定する。次に図2の状態のものを一対用意し、略円弧状導管(1)の端部(1a)にU字状の導管(4)の端部を螺合させて連結すると共にノズル(2)とノズル(2’)が略円弧状導管(1)の内周側に来るように形を整える。この時、ノズル(2’)は略円弧状導管(1)の段部(1b)にノズル(2’)が螺合して配置されるため、ノズル(2’)から放出する火炎は、鉄筋(W)の外周長さ(外径)をノズル(2’)の個数で割った位置、つまり、図4に示す鉄筋外周円の内部に描示する分配線と鉄筋(W)の外周の交点に各ノズル(2’)の先端が向くようにセットされることにより、外周長さ分(所定幅)が均等に加熱されるものとなると共に、前記交点と各ノズル(2’)の先端との距離が全て同じになるのである。尚、前記ノズル(2’)は、ノズル(2)の如く支路(12)を介して溜り部(13)が形成された場所に取付けても良いが、図4に示す如く主路(11)に直接取付けても良い。この時、ノズル(2’)は主路(11)に沿って配置する場合にはガスがスムーズに放出される。しかしノズル(2)のように主路(11)に対して略々直角方向に支路(12)を設けて配置する場合には、支路(12)を主路(11)の太さに近づけて、その支路(12)に直接取り付けると、乱流を生じて放出量が安定しないと共に火炎が不安定になってしまう。このため、支路(12)は主路(11)に対して、細くすると共に溜り部(13)を形成させることにより、ガス炎が安定するものとなった。
【0019】
次に本発明の使用方法について説明する。予め2本の鉄筋(W)を対向させて図示しない圧接器に取付けておく。先ず本発明品の開口部(3)を鉄筋(W)に向けて、バーナ本体部(A)の内部に鉄筋(W)を入れると共にバーナ本体部(A)の中心部に鉄筋(W)が来るようにセットする(図4参照)。次に前記圧接器によって鉄筋(W)が加圧された後、本発明品の各ノズル(2),(2’)に着火させると、火炎は各ノズル(2),(2’)から鉄筋(W)の所定位置に当る。この火炎が鉄筋(W)の所定位置に当って鉄筋(W)を均等に加熱する。この状態について更に詳細に説明する。予め鉄筋(W)の外周がノズル(2’)の配置個数で割られた分配線によって均等に振り分けられると共に、段部(1b)にノズル(2’)を配置させることにより、各ノズル(2’)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離、つまり、図4で示す点線矢印の長さが全て同じになり、鉄筋(W)の接合面の外周部が均等に加熱されるものとなる。
【0020】
一方、鉄筋(W)の接合面の焼幅部分は、図3に示すようにノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離が、接合面の外周部に当る前記点線矢印の長さと同じであるため、均一な加熱が可能となる。
【0021】
更に、図1に示すようにノズル(2)の端部と、バーナ本体部(A)の略円弧状導管(1)の内部を連通する主路(11)との間に、支路(12)を介して溜り部(13)が形成されているため、主路(11)から供給されるガスが一旦溜り部(13)に溜った状態となり、ノズル(2)から天然ガスが放出されると、溜り部(13)に溜ったガスがノズル(2)に背圧を加えた状態となることにより、天然ガスであっても安定した放出量が確保できる共に安定した炎も確保できるものとなるのである。
【符号の説明】
【0022】
W 鉄筋
A バーナ本体部
1 略円弧状導管
11 主路
12 支路
13 溜り部
1b 段部
2,2’ ノズル
3 開口部
4 導管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋(W)の出入自在な開口部(3)を有すると共に複数のノズル(2),(2’)を配置したバーナ本体部(A)と、該バーナ本体部(A)に酸素と天然ガスを供給するためのU字状の導管(4)とから少なくとも構成するリングバーナであって、鉄筋(W)の接合面の焼幅部分を加熱するためのノズル(2)の端部と、前記バーナ本体部(A)の略円弧状導管(1)の内部を連通する主路(11)との間に、支路(12)を介して溜り部(13)が形成されたことを特徴とする天然ガスの圧接用リングバーナ。
【請求項2】
前記ノズル(2),(2’)の放出穴が複数である請求項1記載の天然ガスの圧接用リングバーナ。
【請求項3】
前記各ノズル(2),(2’)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離が同一である請求項1又は2記載の天然ガスの圧接用リングバーナ。
【請求項4】
前記バーナ本体部(A)が、内周面に複数のノズル(2),(2’)を配置した一対の略円弧状導管(1)であり、前記ノズル(2),(2’)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定にするための段部(1b)が、前記略円弧状導管(1)の内周面に形成されると共にそこに前記ノズル(2),(2’)が着脱可能に配置された請求項1記載の天然ガスの圧接用リングバーナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242051(P2011−242051A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114217(P2010−114217)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(394024983)東海ガス圧接株式会社 (12)
【出願人】(596171384)株式会社 徳武製作所 (14)
【出願人】(390024914)東京ガスケミカル株式会社 (13)
【Fターム(参考)】