説明

天然ガス車両の燃料容器保持装置

【課題】 燃料容器の軸回りの回転ズレを確実に防止する。
【解決手段】 天然ガス車両の車体フレーム9に燃料容器10を保持するための保持装置において、燃料容器10のネック部12を車体フレーム9に対して固定して、燃料容器10の回転を規制するための回転規制手段21、32、33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスを燃料としてエンジンを駆動する車両の車体フレームに、天然ガスが貯蔵される燃料容器を保持するための保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスを燃料としてエンジンを駆動する車両(以下、天然ガス車両)が実用化されるに至っている。燃料となる天然ガスは、燃料容器内に貯蔵される。この燃料容器は、例えば、図8に示すような燃料容器保持装置により天然ガス車両の車体フレームに保持される。図8中の符号80は、図示しないクロスメンバと共に梯子状の車体フレームを形成するサイドメンバを示す。
【0003】
図8に示すように、燃料容器81は、円筒状の胴部82と、胴部82の一端に設けられ、容器元弁83が装着されたネック部84とから構成されている。胴部82の両端部82a、82bは、半球状に形成されている。燃料容器81は、胴部82がサイドメンバ80の長手方向に沿って配置された状態で、ネック部84が車両前方側に配置されている。
【0004】
燃料容器保持装置は、サイドメンバ80に取り付けられ、車両前後方向に間隔を隔てて設けられた前後の車体取付ブラケット85、86を備えている。燃料容器81は、前後の車体取付ブラケット85、86に固定バンド87で締め付けられている。これにより、燃料容器81がサイドメンバ80に保持される。
【0005】
また、従来の燃料容器保持装置においては、燃料容器81の車両前後方向の移動を防止するために、燃料容器81の両端部82a、82bの頂部を受容し得る円形の開口部88a、89aを有する前部ストッパ88及び後部ストッパ89を、燃料容器81の両端部82a、82bに押し付け固定している。前部ストッパ88は、二つの前部ロッド90を介して前側の車体取付ブラケット85に取り付けられている。後部ストッパ89は、二つの後部ロッド91を介して後側の車体取付ブラケット86に取り付けられている。前部ストッパ88と後部ストッパ89との間には、前後ロッド92が取り付けられている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−120573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の構成では、前部ストッパ88及び後部ストッパ89は、燃料容器81の車両前後方向の移動を防止するのみであり、燃料容器81の軸回りの回転ズレを規制することができなかった。つまり、上述の構成においては、燃料容器81の軸回りの回転ズレは、固定ベルト87による締め付けのみで規制されている。そのため、長期の使用や、固定ベルト87の緩み等により、燃料容器81が軸回りに回転ズレを起こすおそれがあった。
【0008】
また、上述の構成では、燃料容器81の車両前後方向の移動を防止するために、前部ストッパ88、後部ストッパ89、並びに、これらを支持するための前部ロッド90、後部ロッド91、及び前後ロッド92を設けているため、部品点数が多かった。さらに、前部ストッパ88及び後部ストッパ89を、燃料容器81の中で比較的寸法精度が低い両端部82a、82bに押し付けているため、前部ストッパ88及び後部ストッパ89の位置が定まり難く、組立が面倒であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、燃料容器の軸回りの回転ズレを確実に防止することができる天然ガス車両の燃料容器保持装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、部品点数が比較的少なく、組立が容易な燃料容器保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、天然ガス車両の車体フレームに燃料容器を保持するための保持装置において、上記燃料容器のネック部を上記車体フレームに対して固定して、燃料容器の回転を規制するための回転規制手段を備えたことを特徴とする天然ガス車両の燃料容器保持装置である。
【0012】
請求項2の発明は、天然ガス車両の車体フレームに取り付けられ、燃料容器の胴部を保持するための胴部保持部材と、該胴部保持部材に支持され、上記燃料容器のネック部と係合するための係合部材と、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定するための固定部材とを備えたことを特徴とする天然ガス車両の燃料容器保持装置である。
【0013】
請求項3の発明は、上記係合部材が、嵌合孔を有し、上記燃料容器のネック部が上記嵌合孔に嵌合されることで、上記係合部材が上記燃料容器のネック部と係合する請求項2記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置である。
【0014】
請求項4の発明は、上記燃料容器のネック部が、上記燃料容器の胴部に固定されるフランジ部と、該フランジ部より小径で、上記フランジ部より突出するおねじ部とを有し、上記固定部材が、上記おねじ部に螺合されるナットからなり、上記おねじ部が上記嵌合孔に嵌合された状態で、上記ナットを上記おねじ部に締め付けることで、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定する請求項3記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置である。
【0015】
請求項5の発明は、上記燃料容器のネック部が、上記燃料容器の胴部に固定されるフランジ部と、該フランジ部より小径で、上記フランジ部より突出する突出部と、上記フランジ部に設けられたねじ孔とを有し、上記固定部材が、上記ねじ孔に螺合されるボルトからなり、上記係合部材が、上記ボルトが挿通されるボルト挿通孔を有し、上記突出部が上記嵌合孔に嵌合された状態で、上記ボルトを、上記ボルト挿通孔に挿通して、上記ねじ孔に締め付けることで、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定する請求項3記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置である。
【0016】
請求項6の発明は、上記燃料容器のネック部が、上記燃料容器の胴部に固定されるフランジ部と、該フランジ部より小径で、上記フランジ部より突出する突出部と、上記フランジ部より突出するスタッドボルトとを有し、上記固定部材が、上記スタッドボルトに螺合されるナットからなり、上記係合部材が、上記スタッドボルトが挿通されるボルト挿通孔を有し、上記突出部が上記嵌合孔に嵌合され、上記スタッドボルトが上記ボルト挿通孔に挿通された状態で、上記ナットを上記スタッドボルトに締め付けることで、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定する請求項3記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料容器の軸回りの回転ズレを確実に防止することができると共に、部品点数が比較的少なく、組立が容易な燃料容器保持装置を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る燃料容器保持装置の斜視図であり、燃料容器が保持された状態を示す。図2は、図1のII矢視図であり、燃料容器が省略され、カバー取付部材が設置された状態を示す。図3は、燃料容器の取付状態を示す分解斜視図である。
【0020】
本実施の形態の燃料容器保持装置は、天然ガスを燃料としてエンジンを駆動する車両であって、特に、トラック等の大型の天然ガス車両の梯子状車体フレームに、燃料となる天然ガスが貯蔵される燃料容器を保持するための保持装置である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の燃料容器保持装置は、図示しないクロスメンバと共に梯子状の車体フレームを形成するサイドメンバ9の長手方向に沿って取り付けられ、その長手方向に沿って燃料容器10を保持する。サイドメンバ9の長手方向は、天然ガス車両の前後方向に一致する。
【0022】
図1及び図3に示すように、本実施の形態の燃料容器10は、円筒状の胴部11と、胴部11の一端に設けられたネック部12とから構成されている。胴部11の両端部11a、11bは、半球状に形成されている。燃料容器10は、胴部11がサイドメンバ9の長手方向に沿って配置された状態で、ネック部12が車両前方側に配置されている。
【0023】
ネック部12は、胴部11に固定されるフランジ部15と、フランジ部15より小径で、フランジ部15より突出する突出部16と、突出部16の外周面に設けられたおねじ部17と、突出部16の内周面に設けられためねじ部18とを有している。フランジ部15と突出部16とは、同軸に設けられている。
【0024】
ネック部12のおねじ部17には、燃料容器10の輸送時や保管時に、プロテクタ或いはカバー(共に図示せず)が螺合又は装着される。ネック部12のめねじ部18には、燃料供給装置及びガス充填口(共に図示せず)に連結された燃料配管19を接続するための容器元弁20が螺合されて装着される。容器元弁20は、過流防止弁及び安全弁を内蔵している。
【0025】
なお、燃料容器10の種類は、いずれであっても良い。例えば、金属製容器、アルミライナーを繊維強化プラスチックで補強したアルミライナー製複合容器、及び、プラスチックライナーを繊維強化プラスチックで補強したプラスチックライナー製複合容器(オールコンポジット容器)である。また、燃料容器10に貯蔵される天然ガスは、いずれであっても良い。例えば、気体のまま高圧で貯蔵される圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)、液体状態で超低温容器としての燃料容器内に貯蔵される液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)、及び、燃料容器内の吸着材に吸着されて貯蔵される吸着天然ガス(ANG:Adsorbed Natural Gas)である。
【0026】
図1から図3に示すように、本実施の形態の燃料容器保持装置は、天然ガス車両のサイドメンバ9に取り付けられ、燃料容器10の胴部11を保持するための胴部保持部材21を備えている。この胴部保持部材21は、サイドメンバ9に取り付けられ、車両前後方向に間隔を隔てて設けられた前後の車体取付ブラケット22、23と、燃料容器10の胴部11を車体取付ブラケット22、23に締め付けるための固定ベルト24とから構成されている。
【0027】
前後の車体取付ブラケット22、23同士は、接続ブラケット25により接続されている。個々の車体取付ブラケット22、23は、車両の高さ方向に延出する垂直部22a、23aと、車両の幅方向の外側に延出する水平部22b、23bとでL字形に形成され、これら垂直部22a、23aと水平部22b、23bとの間に、補強のための傾斜部22c、23cが設けられている。
【0028】
車体取付ブラケット22、23の垂直部22a、23aの上端部には、固定ベルト24の一端との係合のための爪部(図3の符号22dを参照)が設けられている。車体取付ブラケット22、23の水平部22b、23bの先端部には、固定ベルト24の他端との係合のための孔(図3の符号22eを参照)が設けられている。前側の車体取付ブラケット22の垂直部22a及び水平部22bには、後述の係合部材32を取り付けるための複数の孔22f、22gがそれぞれ設けられている。本実施の形態においては、孔22f、22gは、ねじ孔である。
【0029】
固定ベルト24は、ベルト本体24aと、ベルト本体24aの一端に設けられ、上記の垂直部22a、23aの爪部(22d)と係合する金具24bと、ベルト本体24aの他端に設けられ、上記の水平部22b、23bの孔(22e)に挿通して係合されるボルト24cとから構成されている。
【0030】
図2に示すように、本実施の形態の燃料容器保持装置は、燃料容器10を覆うカバー(図示せず)を取り付けるためのカバー取付部材27を備えている。カバー取付部材27は、車体取付ブラケット22、23の垂直部22a、23aの上端部に取り付けられ車両幅方向の外側に延出する前後のカバー取付ブラケット28を備えている。前後のカバー取付ブラケット28には、燃料容器10の全長よりやや長い、車両前後方向に延出するカバーフレーム29が取り付けられている。カバーフレーム29における前後端部には、それぞれ、カバーの前後部を構成する前カバー30a及び後カバー30bが取り付けられている。前カバー30a及び後カバー30bは、車両前後方向に延出するカバー取付ブラケット31を介して、車体取付ブラケット22、23の垂直部22a、23aの下端部に連結されている。
【0031】
図1から図3に示すように、本実施の形態の燃料容器保持装置は、胴部保持部材21に支持され燃料容器10のネック部12と係合するための係合部材32と、燃料容器10のネック部12を係合部材32に固定するための固定部材とを備えている。
【0032】
本実施の形態の係合部材32は、燃料容器10のネック部12が嵌合される嵌合孔35を有するプレート部36と、車両前後方向に延出し、一端がプレート部36に取り付けられ、他端が前側の車体取付ブラケット22に取り付けられる延出部37とを備えている。
【0033】
延出部37は、好ましくは複数、本実施の形態では二つ設けられ、これら二つの延出部37を介して、プレート部36が前側の車体ブラケット22に支持される。本実施の形態の延出部37は、ロッド37aと、ロッド37aの両端部にそれぞれ設けられた取付具37b、37cとからなる。一方の取付具37bには、プレート部36を取り付けるための複数の孔37dが設けられている。本実施の形態の孔37dは、ねじ孔である。他方の取付具37cには、前側の車体取付ブラケット22に取り付けるための複数の孔37eが設けられている。本実施の形態の孔37eは、ボルト41が挿通されるボルト挿通孔である。
【0034】
図4に示すように、本実施の形態の係合部材32のプレート部36は、燃料容器10のネック部12を嵌合させる嵌合孔35を有する。また、プレート部36は、前後のプレート38、39を接合してボックス構造(閉断面)を形成するように構成している。これは、万が一車両が前方衝突したときに燃料容器10の前方への移動を極力防止すると共に、燃料容器10の軸回りの回転ズレを規制するのに十分な強度を確保するためである。後側のプレート39に嵌合孔35が設けられ、これは燃料容器10のネック部12のおねじ部17(突出部16)の外径よりわずかに大きく、フランジ部15の外径より小さく設定され、嵌合孔35におねじ部17が嵌合された状態で、フランジ部15がプレート部36に着座或いは面接触できるようになっている。嵌合孔35は、燃料容器10のネック部12と同形状の円形に形成されている。プレート部36(プレート39)とフランジ部15とが面接触するため、燃料容器10のネック部12を、係合部材32に安定して固定することができる。
【0035】
前側のプレート38には、後側のプレート39の嵌合孔35より大きな開口部34が設けられている。開口部34は、後述のナット33が干渉しないような大きさとされ、本実施の形態では矩形状に形成されている。
【0036】
各プレート38、39には、係合部材32の延出部37を取り付けるための複数の孔38a、39aが設けられている。本実施の形態の孔38a、39aは、ボルト42が挿通されるボルト挿通孔である。
【0037】
図3に示すように、本実施の形態の固定部材は、燃料容器10のネック部12のおねじ部17に螺合されるナット33からなる。ナット33は、リング状に形成されている。ナット33の内周面には、ネック部12のおねじ部17に螺合されるめねじ部33aが設けられている。ナット33の前端面には、ナット33の締め付け、緩めを行うための特殊工具を嵌合させるための複数の孔33bが設けられている。ただし、ナット33の形態は、これに限らず、例えば、外径部が六角形状のナットも用いることができる。
【0038】
本実施の形態の燃料容器保持装置の組立の手順の一例を、図3を参照して説明する。
【0039】
まず、前側の車体取付ブラケット22及び後側の車体取付ブラケット23をサイドメンバ9に取り付けて、これらを、接続ブラケット25により連結する。次に、ボルト41(図1参照)を、係合部材32の延出部37の孔37eに挿通して、前側の車体取付ブラケット22の孔22f、22gに締め付けて、延出部37の後端部を、前側の車体取付ブラケット22に取り付ける。次に、ボルト42(図1参照)を、係合部材32のプレート部36の孔38a(39a)に挿通して、延出部37の孔37dに締め付けて、プレート部36を、延出部37の前端部に取り付ける。
【0040】
次に、燃料容器10の胴部11を、前後の車体取付ブラケット22、23の水平部22b、23bに載置し、燃料容器10の重量を胴部保持部材21に支持させる。そして、燃料容器10をプレート部36側(前方)にずらして移動させ、燃料容器10のネック部12のおねじ部17を、係合部材32の嵌合孔35に嵌合する。これにより、燃料容器10のネック部12が、係合部材32のプレート部36と係合される。
【0041】
この際、燃料容器10のネック部12のフランジ部15の前端面が、プレート部36に当接するまで、燃料容器10をプレート部36側にずらして移動させることで、燃料容器10が前後方向に位置決めされる。
【0042】
次に、ナット33を、嵌合孔35から突出した、燃料容器10のネック部12のおねじ部17に締め付けて、燃料容器10のネック部12のフランジ部15とナット33とで係合部材32のプレート部36を挟み込むことで、燃料容器10のネック部12が係合部材32のプレート部36に固定される。
【0043】
次に、固定ベルト24の金具24bを、前後の車体取付ブラケット22、23の爪部(22d)に係合させて、固定ベルト24のボルト24cを、前後の車体取付ブラケット22、23の水平部22b、23bの孔(22e)に挿通し、ナット40を、固定ベルト24のボルト24cに締め付ける。こうして、燃料容器10の胴部11が、固定ベルト24により締め付けられ、前後の車体取付ブラケット22、23に保持される。
【0044】
次に、カバー取付部材27及びカバーを取り付ける。これにより、燃料容器10の装置への保持と、装置の組立及び車体フレームへの取付が完了する。
【0045】
なお、燃料容器保持装置と燃料容器10とを予め一体化(モジュール化)した状態で、燃料容器保持装置を、サイドメンバ9に取り付けても良い。
【0046】
本実施の形態の燃料容器保持装置は、燃料容器10のネック部12を車体フレームに対して固定して、燃料容器10の軸回りの回転ズレを規制するための回転規制手段を備えている。本実施の形態においては、胴部保持部材21と係合部材32と固定部材(ナット33)とが、上記の回転規制手段をなす。つまり、本実施の形態によれば、燃料容器10のネック部12が、係合部材32と胴部保持部材21とを介して、サイドメンバ9に対して固定されるため、万が一、固定ベルト24に緩みが生じたとしても、燃料容器10の軸回りの回転ズレを確実に防止することができる。
【0047】
また、万が一、車両が前方衝突して、燃料容器10が慣性力により前方に移動しようとする場合や、固定ベルト24に緩みが生じて、燃料容器10が前方に移動しようとする場合にも、燃料容器10のネック部12が、係合部材32のプレート部36に当接するため、燃料容器10のフランジ部15の前方への移動が防止される。
【0048】
また、万が一、固定ベルト24に緩みが生じて、燃料容器10が後方に移動しようとする場合にも、燃料容器10のネック部12が、固定部材33により係合部材32に固定されているので、燃料容器10が、後方へ移動することはない。
【0049】
つまり、本実施の形態によれば、前側の係合部材32及び固定部材33により、燃料容器10の車両前後方向の移動(ズレ)を防止している。このため、図8で示した従来の燃料容器保持装置における、車両後方向の移動を防止するために必要としていた、後部ストッパ89と、後部ストッパ89を支持するための後部ロッド91及び前後ロッド92とを省略することができ、部品点数を従来に比べて削減することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、燃料容器10の中で比較的寸法精度が高いネック部12を一定位置に確実に保持できる。そのため、燃料配管19を燃料容器10の容器元弁20に取り付ける際の位置バラツキが少なくなり、組立を容易にすることが可能となる。
【0051】
本発明は以上説明した実施の形態に限定はされない。
【0052】
例えば、図5に示す他の実施の形態のように、燃料容器10のネック部12が、フランジ部15の前端面に設けられたねじ孔51を有し、固定部材が、ねじ孔51に螺合されるボルト52からなり、係合部材32のプレート部36が、ボルト52が挿通されるボルト挿通孔53を有しても良い。この場合、突出部16が嵌合孔35に嵌合された状態で、ボルト52を、ボルト挿通孔53に挿通して、ねじ孔51に締め付けることで、燃料容器10のネック部12を係合部材32に固定する。なお、図示例では、ねじ孔51、ボルト52、及び、ボルト挿通孔53が、それぞれ、二つずつ設けられているが、これらを、一つずつ或いは三つ以上ずつ設けても良い。
【0053】
また、図6に示すさらなる他の実施の形態のように、燃料容器10のネック部12が、フランジ部15の前端面より突出するスタッドボルト61を有し、固定部材が、スタッドボルト61に螺合されるナット62からなり、係合部材32のプレート部36が、スタッドボルト61が挿通されるボルト挿通孔63を有しても良い。この場合、突出部16が嵌合孔35に嵌合され、スタッドボルト61がボルト挿通孔63に挿通された状態で、ナット62をスタッドボルト61に締め付けることで、燃料容器10のネック部12を係合部材32に固定する。なお、図示例では、スタッドボルト61、ナット62、及び、ボルト挿通孔63が、それぞれ、二つずつ設けられているが、これらを、一つずつ或いは三つ以上ずつ設けても良い。
【0054】
また、図7に示すように、係合部材32のプレート部36を、一つのプレート71から構成しても良い。この場合、プレート71には、突出部16が嵌合される嵌合孔72と、係合部材32の延出部37を取り付けるための孔73とが設けられる。
【0055】
また、燃料容器10の形状は、上述の実施の形態には限定されない。例えば、胴部11の両端部11a、11b又はこれらのうちいずれか一方が、略平面状に形成されていても良い。
【0056】
また、燃料容器保持装置が、車両幅方向(例えば、クロスメンバの長手方向)に沿って燃料容器を保持するものであっても良い。
【0057】
さらに、本発明が適用される車両は、トラック等の大型車両に限らず、乗用車両等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態に係る燃料容器保持装置の斜視図であり、燃料容器が保持された状態を示す。
【図2】図1のII矢視図であり、燃料容器が省略され、カバー取付部材が設置された状態を示す。
【図3】燃料容器の取付状態を示す分解斜視図である。
【図4】係合部材のプレート部の分解斜視図である。
【図5】他の実施の形態に係る、燃料容器の取付状態を示す分解斜視図である。
【図6】さらなる他の実施の形態に係る、燃料容器の取付状態を示す分解斜視図である。
【図7】係合部材のプレート部の変形例を示す斜視図である。
【図8】従来の燃料容器保持装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
9 車体フレーム(サイドメンバ)
10 燃料容器
11 胴部
12 ネック部
15 フランジ部
16 突出部
17 おねじ部
19 燃料配管
20 容器元弁
21 胴部保持部材
22 車体取付ブラケット
23 車体取付ブラケット
24 固定ベルト
32 係合部材
33 固定部材(ナット)
35 嵌合孔
36 プレート部
37 延出部
51 ねじ孔
52 固定部材(ボルト)
53 ボルト挿通孔
61 スタッドボルト
62 固定部材(ナット)
63 ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス車両の車体フレームに燃料容器を保持するための保持装置において、上記燃料容器のネック部を上記車体フレームに対して固定して、燃料容器の回転を規制するための回転規制手段を備えたことを特徴とする天然ガス車両の燃料容器保持装置。
【請求項2】
天然ガス車両の車体フレームに取り付けられ、燃料容器の胴部を保持するための胴部保持部材と、該胴部保持部材に支持され、上記燃料容器のネック部と係合するための係合部材と、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定するための固定部材とを備えたことを特徴とする天然ガス車両の燃料容器保持装置。
【請求項3】
上記係合部材が、嵌合孔を有し、上記燃料容器のネック部が上記嵌合孔に嵌合されることで、上記係合部材が上記燃料容器のネック部と係合する請求項2記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置。
【請求項4】
上記燃料容器のネック部が、上記燃料容器の胴部に固定されるフランジ部と、該フランジ部より小径で、上記フランジ部より突出するおねじ部とを有し、上記固定部材が、上記おねじ部に螺合されるナットからなり、上記おねじ部が上記嵌合孔に嵌合された状態で、上記ナットを上記おねじ部に締め付けることで、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定する請求項3記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置。
【請求項5】
上記燃料容器のネック部が、上記燃料容器の胴部に固定されるフランジ部と、該フランジ部より小径で、上記フランジ部より突出する突出部と、上記フランジ部に設けられたねじ孔とを有し、上記固定部材が、上記ねじ孔に螺合されるボルトからなり、上記係合部材が、上記ボルトが挿通されるボルト挿通孔を有し、上記突出部が上記嵌合孔に嵌合された状態で、上記ボルトを、上記ボルト挿通孔に挿通して、上記ねじ孔に締め付けることで、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定する請求項3記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置。
【請求項6】
上記燃料容器のネック部が、上記燃料容器の胴部に固定されるフランジ部と、該フランジ部より小径で、上記フランジ部より突出する突出部と、上記フランジ部より突出するスタッドボルトとを有し、上記固定部材が、上記スタッドボルトに螺合されるナットからなり、上記係合部材が、上記スタッドボルトが挿通されるボルト挿通孔を有し、上記突出部が上記嵌合孔に嵌合され、上記スタッドボルトが上記ボルト挿通孔に挿通された状態で、上記ナットを上記スタッドボルトに締め付けることで、上記燃料容器のネック部を上記係合部材に固定する請求項3記載の天然ガス車両の燃料容器保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−35891(P2006−35891A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214465(P2004−214465)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】