説明

天然抗菌剤

【課題】 本発明は、天然の未利用材を利用することで人体に安全な抗菌剤及びそれを利用した製品を得るものである。
【解決手段】 スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物を抗菌添加剤として利用すると同時に、様々な基材(樹脂、塗料、石膏、その他)に混合することにより人体に安全な抗菌製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野は樹脂などに添加する天然抗菌剤及びその加工品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品に抗菌性能を付与するために大きく二通りの方法が開発されている。一つは無機系の抗菌材料を利用したもの。もう一つは有機系のものである。無機系の抗菌材料には銅などの金属をそのまま利用する方法、銀やチタン化合物といった金属化合物を利用する方法がある(特許文献1,2,3)。有機系のものではリグノセルロースにフェノール類を加えて得る方法(特許文献2)が考えられている。しかし、これらの抗菌材料は有害物質の使用を伴う場合やアレルギー反応が懸念される。更に、銀を含む場合には樹脂の変色が問題となる。天然のヒノキチオールなどを利用する方法では揮散や劣化の問題がある。こうした問題に対して例えば遠藤らは、ヒノキチオールを熱劣化しにくい状態に安定化させる工程を経ることにより熱可塑性樹脂添加剤として利用できることを見出した。(特許文献4)。但し、追加工程が増えるためコストが高くなる。
【特許文献1】特許第3780074
【特許文献2】特開平9−59523
【特許文献3】特開平11−58567
【特許文献4】特許第3778881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のように抗菌性能を付与させる添加剤はコストを抑制するだけでなく、その加工品においては人体に安全で且つ素材そのものの品質を低下させないものであることが望まれる。
【0004】
本発明の目的は、金属イオンに頼らずに人体への安全性が高い天然素材を利用した抗菌添加剤及びそれを使用した抗菌性加工品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮を1000μ以下、望ましくは50μ以下、更に望ましくは1μ以下の粒度の状態まで機械的粉砕したもので抗菌性能を得る。樹皮については、外皮を含む厚さ40mm以内までの比較的外側の部分を利用することが望ましい。これは外皮の方が抗菌性能や防虫性能に優れるからである。JIS L1902に定める菌液吸収法による静菌活性値の測定では、図1に示すような結果が得られる。
【0006】
ここで機械的粉砕方法としては、タブグラインダー・トルネード粉砕機・衝撃粉砕機・凍結粉砕機・開繊機・ボールミルなどが上げられる。粉砕の目的は樹脂や塗料、石膏といった様々な基材との相溶性を向上することにあるため、その目的に合致する方法であれば上記粉砕方法に限定するものではない。
【0007】
更にスギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物は樹脂、塗料、石膏などの基材との相溶性は一般に良くないため、例えば樹脂に練り込む場合は無水マレイン酸をグラフト重合させたオレフィンワックスなどの改質剤を併用することが望ましい。
【0008】
例えば樹脂に抗菌性能を付与する場合、樹脂1重量部に対してスギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物を0.001〜3重量部、改質材を0.003〜0.1重量部の割合で混合すると抗菌性能を持ちつつ木質感を活かした表面性状を持つ射出成形品から平滑面を持つ射出成形品まで得ることができる。
【0009】
更に、スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物に由来する抗菌成分は少なくとも120℃の高温環境に暴露されてもその抗菌性能を維持できることが、JIS L1902の菌液吸収法で静菌活性値2以上得られることから確認されており、成形後も良好な抗菌性能が維持される。
【0010】
樹脂に木粉を混合する技術は、樹脂の外観や触感を向上させる目的のみのためにしばしば利用されてきたが、本発明によればこうした外観品質の向上のみならず人体に安全な抗菌作用を樹脂に付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物の抗菌性能は図1に示すとおり、広範囲にわたることが観察される。
【0012】
また、上記樹皮の機械的粉砕物は天然素材なので安全であるだけでなく、抽出操作を特に必要としない。すなわち有機溶媒等の残留を心配しなくても良い。更に、樹皮は林業において産業廃棄物として扱われていることから、本発明はこれら廃棄物の有効な利用方法となりうる。
【0013】
更に、本発明品は微粉末化することにより、成形用樹脂のみならずフィルム、繊維への練り込みから塗料や石膏など様々な基材に分散させることにより、広範囲の材料に抗菌性能を付与しうる。
【0014】
以上、本発明は人体に安全な抗菌材料の提供を可能とするだけでなく産業廃棄物のリサイクルにも貢献できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態として射出成形用樹脂に利用した場合を図2に基づいて説明する。
【0016】
図2において、1は樹皮の機械粉砕物、2は基材(ここでは射出成形用樹脂)、3は1と2の相溶性を向上させる改質剤であり必要に応じて添加する。
【0017】
基材1重量部に対して、樹皮の機械粉砕物0.001〜3重量部、改質材0.003〜0.1重量部を分散する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】静菌活性値測定結果の説明図
【図2】抗菌剤添加樹脂成形品
【符号の説明】
【0018】
1 樹皮の機械粉砕物
2 基材(樹脂、塗料、石膏など)
3 改質剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ポリスチレン、ポリエステルなどの樹脂或いは塗料、石膏など1重量部に対して0.001〜3重量部を分散させることにより抗菌性能を発揮させることができる、スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物を利用したことを特徴とする抗菌添加剤及びその加工品。
【請求項2】
スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の内、外皮を含む厚さ40mm以内の部分を使用したことを特徴とする、請求項1記載の抗菌添加剤及びその加工品。
【請求項3】
スギ・ヒノキ・ヒバ・ウエスタンレッドシダー及びユーカリの中から選択された、1種以上よりなる樹皮の機械的粉砕物の内、粒度が1000μm以下であり且つ樹脂、塗料、石膏、その他基材との相溶性を向上させる添加剤を含むことを特徴とする、請求項1記載の抗菌添加剤及びその加工品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−62349(P2009−62349A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263774(P2007−263774)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(507241779)株式会社ウイルステージ (3)
【Fターム(参考)】