説明

天然繊維成形体の製造方法

【課題】相溶性重合体に起因する製造上の扱い難さを解消し、効率よく製造することができる天然繊維成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本方法は、天然繊維(ケナフ繊維)と熱可塑性を有する生分解性樹脂(ポリ乳酸)とを含む天然繊維成形体の製造方法において、天然繊維と生分解性樹脂との両方に対して相溶性を有する粉末状の相溶性重合体が含有された液状添着剤191と、繊維状及び/又は粒子状の生分解性樹脂50と、を接触させて、相溶性重合体が添着された生分解性樹脂を得る添着工程、相溶性混合物が添着された生分解性樹脂と天然繊維とを混合して天然繊維混合物を得る混合工程、天然繊維混合物を加熱圧縮して天然繊維成形体を得る成形工程、をこの順に備え、液状添着剤191は、液体(水)と、液体に分散して含有された粉末状の相溶性重合体と、液体に分散又は溶解して含有されたバインダ樹脂と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然繊維成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、天然繊維と熱可塑性の生分解性樹脂とを含む耐湿性に優れた天然繊維成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然繊維は、環境的観点から注目され、化石燃料を用いた樹脂成形体等の代替用途に期待されている。天然繊維はその交絡のみで成形体としての賦形性及び実用的強度等を得ることが難しいため、繊維と同様に環境的観点から生分解性樹脂などのバインダと共に複合材料として利用される。
しかし、天然繊維は一般に吸湿性が高く、天然繊維が含まれた成形体は湿老化すると強度等が設計値より低下するという問題がある。この問題は、天然繊維の吸湿により進行するだけでなく、天然繊維に吸収された水分に起因してバインダである生分解性樹脂が加水分解することも一因として考えられる。
このような観点から天然繊維と生分解性樹脂とを含む成形体の耐湿性を向上させる優れた方法が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−288938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、天然繊維と生分解性樹脂との両方に対して相溶性を有する相溶性重合体を用いることにより、生分解性樹脂の配合量を抑制しながら、耐湿性を向上させることができるという技術が示されている。
しかし、上記相溶性重合体は、生分解性樹脂の溶融温度で反応し、生分解性樹脂の溶融粘度を上げる性質がある。このため、生分解性樹脂を繊維状にしようとした場合、生分解性樹脂に相溶性重合体が反応してしまい紡糸することが困難である。また、前記相溶性重合体はそれ自身が粘着性を有するため、繊維状に形成した生分解性樹脂の表面に添着させ、天然繊維と混合しようとする場合に、粘着性により生分解性樹脂繊維と天然繊維とがうまく混ざらないという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、相溶性重合体に起因する製造上の扱い難さを解消し、効率よく製造することができる天然繊維成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)天然繊維と熱可塑性を有する生分解性樹脂とを含む天然繊維成形体の製造方法であって、
上記天然繊維と上記生分解性樹脂との両方に対して相溶性を有する粉末状の相溶性重合体が含有された液状添着剤と、繊維状及び/又は粒子状の上記生分解性樹脂と、を接触させて、該相溶性重合体が添着された該生分解性樹脂を得る添着工程、
上記相溶性混合物が添着された上記生分解性樹脂と上記天然繊維とを混合して天然繊維混合物を得る混合工程、
上記天然繊維混合物を加熱圧縮して上記天然繊維成形体を得る成形工程、をこの順に備え、
上記液状添着剤は、液体と、該液体に分散して含有された粉末状の上記相溶性重合体と、該液体に分散又は溶解して含有されたバインダ樹脂と、を含むことを特徴とする天然繊維成形体の製造方法。
(2)上記バインダ樹脂は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂のうちの少なくとも1種である上記(1)に記載の天然繊維成形体の製造方法。
(3)上記液状添着剤は、更にカルボジイミド化合物を含有する上記(1)又は(2)に記載の天然繊維成形体の製造方法。
(4)上記添着工程後であって且つ上記混合工程前に、
上記相溶性重合体が添着された上記生分解性樹脂に、更に油剤を添着する油剤付与工程を備える上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
(5)上記天然繊維は、ケナフ繊維である上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
(6)上記生分解性樹脂は、ポリ乳酸である上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
(7)上記相溶性重合体は、重合性二重結合及び親水性部を有する第1単量体と、重合性二重結合及びエポキシ基を有する第2単量体と、を含む2種以上の単量体が重合された共重合体である上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の天然繊維成形体の製造方法によれば、相溶性重合体に起因する製造上の扱い難さを解消し、効率よく天然繊維成形体を製造できる。また、相溶性重合体の使用量が少なくともより均一且つ適量を生分解性樹脂へ添着でき、天然繊維成形体内で相溶性重合体をより効果的に機能させることができる。従って、耐湿性により優れた天然繊維成形体を得ることができる。
バインダ樹脂がウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂のうちの少なくとも1種である場合は、添着性能に優れ、液状添着剤を構成する液体が乾燥除去された後にも、粉末状の相溶性重合体を生分解性樹脂の表面により確実に維持することができる。
液状添着剤が更にカルボジイミド化合物を含有する場合は、生分解性樹脂の加水分解をより効果的に抑制でき、高い耐久性を有する天然繊維成形体が得られる。
添着工程後であって且つ混合工程前に、相溶性重合体が添着された生分解性樹脂に、更に油剤を添着する油剤付与工程を備える場合は、特に天然繊維と生分解性樹脂との混合工程をスムーズに行うことができる。とりわけ、生分解性樹脂を繊維化して用いる場合には、生分解性繊維の滑りが良くなるなど取扱い性が向上し、天然繊維との繊維同士の混合を効率よく行うことができる。
天然繊維がケナフ繊維である場合は、より軽く且つより高い曲げ強さを有する天然繊維成形体を得ることができる。また、ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。
生分解性樹脂がポリ乳酸である場合は、生合成可能であり、また、非石油系樹脂である樹脂を用いることとなり、高い機械的強度等の実用的な特性を得ながら、石油資源の使用を抑制できる。
相溶性重合体が重合性二重結合及び親水性部を有する第1単量体と、重合性二重結合及びエポキシ基を有する第2単量体と、を含む2種以上の単量体が重合された共重合体である場合は、天然繊維と生分解性樹脂とに対する特に優れた相溶化作用が発揮され、高い耐久性を有する天然繊維成形体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
[1]天然繊維成形体
本発明にかかる天然繊維成形体は、天然繊維と、生分解性樹脂と、を含有する。
上記「天然繊維」は天然に産する繊維である。この天然繊維としては、植物及び動物に由来する天然繊維が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち植物に由来する天然繊維(植物性天然繊維)としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた天然繊維が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0008】
また、植物体における天然繊維の採取部位は特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位から採取された天然繊維であってもよい。更に、特定の部位から得られた天然繊維のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位から得られた天然繊維を併用してもよい。
尚、本発明におけるケナフとは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に、通称名における紅麻、キュウバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、本発明におけるジュートとは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
【0009】
一方、動物に由来する天然繊維(動物性天然繊維)としては、各種動物の毛(獣毛)が挙げられる。
これらの植物性天然繊維及び動物性天然繊維のうちでは、得られる天然繊維成形体の強度及び耐久性等の特性並びに環境的な観点から植物性天然繊維が好ましい。
更に、植物性天然繊維のなかでも、ケナフから得られた植物性天然繊維が好ましく、特にケナフの靭皮から得られたケナフ繊維を含有することが好ましい。
【0010】
天然繊維の形状は特に限定されないが、通常、繊維長は10mm以上である。繊維長が10mm以上であれば、得られた天然繊維成形体においてより高い強度(曲げ強さ及び曲げ弾性率等、以下同様)を得やすい。この繊維長は10〜150mmが好ましく、20〜100mmがより好ましく、30〜80mmが特に好ましい。更に、通常、繊維径は1mm以下である。繊維径が1mm以下であれば得られる天然繊維成形体において特に高い強度が得られる。この繊維径は0.01〜1mmが好ましく、0.05〜0.7mmがより好ましく、0.07〜0.5mmが特に好ましい。更には1〜10dtexであることが好ましい。また、上記範囲を外れる形態の繊維は、天然繊維全体の10質量%以下に抑えることが好ましい。これにより得られる成形体の強度を高く維持できる。
【0011】
天然繊維成形体に含有される天然繊維の量は特に限定されないが、天然繊維及び生分解性樹脂の合計を100質量%とした場合に天然繊維は50質量%以上(また、通常90質量%以下)含有されることが好ましい。この範囲では優れた賦形性及び強度を得やすい。この天然繊維の含有量は50〜85質量%がより好ましく、65〜75質量%が特に好ましい。これらの範囲では各々更に優れた賦形性及び強度が得られる。
また、天然繊維成形体全体を100質量%とした場合に天然繊維は45質量%以上(また、通常90質量%以下)含有されることが好ましい。この範囲では優れた賦形性及び強度を得やすい。この天然繊維の含有量は45〜85質量%がより好ましく、60〜75質量%が特に好ましい。これらの範囲では各々更に優れた賦形性及び強度が得られる。
【0012】
上記「生分解性樹脂」は、生分解可能な樹脂であり、また、本発明の方法では熱可塑性を有する樹脂である。この生分解性樹脂としては、(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸及び3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体、並びに、これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体、などのヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル、(2)ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体、などのカプロラクトン系脂肪族ポリエステル、(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンアジペート、などの二塩基酸ポリエステル、等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。
これらの生分解性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、上記乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。更に、ポリ乳酸を用いる場合、その重量平均分子量は特に限定されないものの、100,000〜200,000が好ましく、100,000〜190,000がより好ましく、110,000〜180,000が特に好ましい。
【0013】
天然繊維成形体に含有される生分解性樹脂の量は特に限定されないが、天然繊維と生分解性樹脂との合計を100質量%とした場合に生分解性樹脂は50質量%未満(また、通常10質量%を超える)含有されることが好ましい。この範囲では優れた賦形性及び強度を得やすい。この生分解性樹脂の含有量は15〜50質量%(15質量%を超えて50質量%未満)がより好ましく、25〜35質量%(25質量%を超えて35質量%未満)が特に好ましい。これらの範囲では各々更に優れた賦形性及び強度が得られる。
【0014】
上記天然繊維成形体には、天然繊維及び熱可塑性樹脂、並びに後述する相溶性重合体以外にも、他の成分が含有されてもよい。他の成分としては、各種帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
[2]天然繊維成形体の製造方法
本発明の天然繊維成形体の製造方法は、
上記天然繊維と上記生分解性樹脂との両方に対して相溶性を有する粉末状の相溶性重合体が含有された液状添着剤と、繊維状及び/又は粒子状の上記生分解性樹脂と、を接触させて、該相溶性重合体が添着された該生分解性樹脂を得る添着工程、
上記相溶性混合物が添着された上記生分解性樹脂と上記天然繊維とを混合して天然繊維混合物を得る混合工程、
上記天然繊維混合物を加熱圧縮して上記天然繊維成形体を得る成形工程、をこの順に備え(即ち、この順に行い)、
上記液状添着剤は、液体と、該液体に分散して含有された粉末状の上記相溶性重合体と、該液体に分散又は溶解して含有されたバインダ樹脂と、を含むことを特徴とする。
【0016】
上記「添着工程」は、天然繊維と生分解性樹脂との両方に対して相溶性を有する粉末状の相溶性重合体が含有された液状添着剤と、繊維状及び/又は粒子状の生分解性樹脂と、を接触させて、相溶性重合体が添着された生分解性樹脂を得る工程である。
尚、添着とは、相溶性重合体が生分解性樹脂に付着されることを広く意味し、例えば、相溶性重合体は生分解性樹脂に対して広くのばして付着(展着)されてもよく、点々と付着されてもよく、その他の形態で付着されてもよい。
【0017】
本方法では、生分解性樹脂と天然繊維と混合する前にこの添着工程を備えることで、相溶性重合体を添着できる。従って、混合工程後に天然繊維混合物に対して相溶性重合体を添着させる場合に比べると、天然繊維成形体内により満遍なく相溶性重合体を分散させて含有させることができる。このため、相溶性重合体を用いることによる強度向上及び耐湿性向上等の効果をとりわけ効果的に得ることができる。即ち、例えば、生分解性樹脂繊維と天然繊維との混合物である天然繊維混合物に対して、相溶性重合体を噴霧塗布する場合等に比べると、本方法では、生分解性樹脂のほぼ全量に対して確実に相溶性重合体の添着を行うことができ、また、添着量のコントロールも容易に行うことができる。
【0018】
上記「液状添着剤」は、液体と、液体に分散して含有された粉末状の相溶性重合体と、液体に分散又は溶解して含有されたバインダ樹脂と、を含む液状の添着剤である。
上記「相溶性重合体」は、天然繊維と生分解性樹脂の両方に対して相溶性を有する重合体である。即ち、相溶性重合体は、天然繊維に対してもなじみが良く且つ生分解性樹脂に対してもなじみがよい重合体である。
天然繊維のなかでも、特に植物性天然繊維の主構成成分は、水酸基を多く有するセルロースであり、従って、とりわけ高い親水性を呈する(極性が大きい)。一方、生分解性樹脂(特にポリ乳酸等)はアルキル基を多く有するポリマーであり、植物性天然繊維に比べ親油性が強い(極性が小さい)。従って、天然繊維と生分解性樹脂とはなじみ難い材料である。これに対して、天然繊維と生分解性樹脂との間に相溶性重合体を介在させることで天然繊維と生分解性樹脂との親和性が向上され、得られる天然繊維成形体の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0019】
上記相溶性重合体は、上記各材料に対する各なじみをどのように発現したものであってもよいが、親水性部(親水性基及び親水性側鎖等)と親油性部(親油性基及び親油性側鎖等)との両方を有することで発現できる。更に、これらの親水性部及び親油性部はどのようにして導入されていてもよいが、親水性部を有する第1単量体と親油性部を有する第2単量体とを共重合して得ることができる。
【0020】
このような相溶性重合体としては、重合性二重結合及び親水性部を有する第1単量体と、重合性二重結合及びエポキシ基を有する第2単量体(即ち、重合性二重結合を含むエポキシ化合物)と、を含む2種以上の単量体が重合された共重合体が好ましい。
第1単量体及び第2単量体における重合性二重結合としては、ビニル基及び1つの水素がメチル基等に置換されたビニル基などが挙げられる。これらの1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
第1単量体における親水性部としては、水酸基、アルキレンオキシド鎖、第4級アンモニウム塩、スルホン酸及びスルホン酸塩等が挙げられる。
第2単量体におけるエポキシ基は、下記化学式(1)で示される構造である。このエポキシ基は、上記天然繊維、並びに上記親水性基に比べ親油性を示すだけでなく、生分解性樹脂との反応性を有していて生分解性樹脂に直接結合できるため好ましい。即ち、例えば、生分解性樹脂がポリ乳酸等のようなポリエステル系樹脂である場合は、エステル部分が加水分解して生じた末端カルボキシル基と反応することで、生分解性樹脂に重合して高分子化したり、3次元構造化したりできる。このエポキシ基を持つ原子団としてはグリシジル基が特に好ましい。
【化1】

第2単量体は、上記エポキシ基以外にも、他の親油性基を備えることができる。その他の親油基としては、炭素数1以上のアルキル基が挙げられる。
【0022】
上記第1単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルー3−メタクリルアミドプロピルアンモニウムクロライド、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、アリルスルホン酸アンモニウム塩、メタリルスルホン酸トリエチルアミン塩等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。これらの第1単量体は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、第1単量体は、生分解性樹脂の加水分解を抑制するため、活性水素を含有しない又は活性水素を発生し難い単量体であることが好ましい。このため、第1単量体の親水性部としてはアルキレンオキシド鎖が好ましい。アルキレンオシキド鎖としては、エチレンオキシド鎖及びプロピレンオキシド鎖等が挙げられるが、これらのうちでは、エチレンオキシド鎖が好ましく、更には、ポリエチレングリコールよりも、末端水酸基が更にアルコキシル基に置換されたアルコキシポリエチレングリコールが好ましい。従って、第1単量体はアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
更に、第1単量体の親水性部としてはアルキレンオキシド鎖を用いる場合、特にエチレンオキシド鎖が好ましい。エチレンオキシド鎖を親水性部として有する第1単量体を用いて得られた相溶性重合体(即ち、相溶性重合体内にも親水性部としてエチレンオキシド鎖を有する)は天然繊維に対するなじみが特によいからである。
【0025】
また、第1単量体がエチレンオキシド鎖を有する場合、エチレンオキシド鎖を構成するオキシエチレン単位{−(O−CH−CH)−}の数は23以上(好ましくは30以上、より好ましくは45以上、100以下)であることが好ましい。オキシエチレン単位の数が23以上であるエチレンオキシド鎖を有する第1単量体を用いて得られた相溶性重合体は、相溶性重合体自身の粘着性(温度40℃以下における粘着性)を消失させて、固形の相溶性重合体とすることができるため、相溶性重合体を粉末化できる。従って、粉末化した相溶性重合体(粉末状の相溶性重合体)は、液体(分散媒)に分散させることで、特に粘度の低い(例えば、23℃における粘度が200mPa・s以下)の液状添着剤(ディスパージョン、エマルジョン等)とすることができる。そして、粘度の低い液状添着剤とすることで添着槽を用いた添着を行うことができるようになる。
尚、エチレンオキシド鎖を有する第1単量体を用いて得られた相溶性重合体におけるオキシエチレン単位の平均付加モル数も、上記理由から23以上(好ましくは30以上、より好ましくは45以上、100以下)であることが好ましい。
【0026】
第2単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、エポキシアルケン、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの第2単量体は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、特にグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
一方、生分解性樹脂{前記脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸など)等の各種ポリエステル}は、水分により加水分解(1次的な加水分解)を起こし、ポリエステル末端にカルボキシル基(末端カルボキシル基)が生じる。更にこの末端カルボキシル基は、生分解性樹脂の加水分解(2次的な加水分解)を促進させるという問題がある。
これに対して、上述のように第2単量体がエポキシ基を備える場合には、この第2単量体に由来した相溶性重合体のエポキシ基が末端カルボキシル基と反応し、上記加水分解(2次的な加水分解)の促進を抑制できる。加えてこのエポキシ基と末端カルボキシル基との反応により、生分解性樹脂(生分解性樹脂と相溶性重合体と)の高分子量化及び/又は三次元化が起こるこれらの作用により天然繊維成形体は水分に対する耐久性が向上され、経時的な強度低下が抑制される。また、上記エポキシ基は脂肪族ポリエステルとの親和性が特によいことにおいても好ましい。
【0027】
相溶性重合体に含まれる第1単量体に由来する構成単位(第1単量体単位)と、第2単量体に由来する構成単位(第2単量体単位)と、の割合は特に限定されず、質量比(質量%)で10:90〜90:10の範囲とすることができ、40:60〜60:40とすることが好ましく、47:53〜53:47とすることがより好ましい。この47:53〜53:47の範囲では、天然繊維に対するなじみと生分解性樹脂に対するなじみとを同程度にすることができ、とりわけ良好な相溶性を得ることができる。
特に第1単量体の親水性部としてはアルキレンオキシド鎖{とりわけオキシエチレン単位数が45以上(特に80〜100)のエチレンオキシド鎖}を備える場合には、相溶性重合体に含まれる第1単量体に由来する構成単位(第1単量体単位)と、第2単量体に由来する構成単位(第2単量体単位)と、の割合はモル比で1:99〜20:80の範囲とすることが好ましく、1:99〜5:95がより好ましい。この1:99〜5:95の範囲では、天然繊維に対するなじみと生分解性樹脂に対するなじみとを同程度にすることができ、とりわけ良好な相溶性を得ることができる。
【0028】
相溶性重合体には、第1単量体及び第2単量体以外にも他の単量体を用いてもよい。他の単量体としては、アクリロニトリル、スチレン、各種アルキル(メタ)アクリレート{ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレートなど}等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これら他の単量体を使用する場合は、相溶性重合体に含まれる第1単量体単位と第2単量体単位との合計量に対する他の単量体に由来する単位(他の単量体単位)の割合は、モル比で99.9:0.1〜90:10の範囲とすることができ、99.5:0.5〜98:2とすることが好ましい。この99.5:0.5〜98:2の範囲では、とりわけ良好な相溶性を得ることができる。
【0029】
相溶性重合体の分子量(重量平均分子量)は特に限定されないが、5,000〜100,000(5,000以上100,000以下)が好ましく、10,000〜30,000がより好ましい。5,000〜100,000の範囲であれば、特に優れた相溶性が発揮されると共に、得られる天然繊維成形体の外観をよりよく保つことができる。更に、10,000〜30,000の範囲では、とりわけ優れた相溶性が発揮されると共に、得られる天然繊維成形体の外観を特によく保つことができる。
尚、上記分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算値である。
【0030】
また、相溶性重合体は粉末状である。この相溶性重合体の平均粒径は特に限定されないが、200μm以下(好ましくは100μm以下、通常1μm以上)であることが好ましい。この範囲内では特に生分解性樹脂を繊維化した生分解性樹脂繊維を用いる場合には添着性がよい。
【0031】
相溶性重合体の使用量は特に限定されないが、用いる生分解性樹脂の全体を100質量部とした場合に1〜10質量部が好ましい。この範囲では、相溶性重合体を用いたことによる耐湿性向上効果をよりよく得ることができる。更に、相溶性重合体の上記量は3〜5質量部がより好ましい。この範囲では、相溶性重合体による質量増加及びコスト増加を抑制しつつ、特に天然繊維及び生分解性樹脂に起因する性質を高く維持できるため好ましい。
【0032】
上記「液体」は、相溶性重合体を分散させることができる分散媒である。即ち、この液体には、相溶性重合体が溶解されない(温度23℃において)。この液体は、水系であってもよく、非水系であってもよい。水系の液体としては、水、水に可溶なエタノール及びメタノール等のアルコール類、これらの混合物などが挙げられる。非水系の液体としては、上記水系の液体以外の液体が挙げられる。これらのなかでは、水系の液体が好ましく、更には、水がより好ましい。これらは安全性、取扱い性及び環境性能の観点から好ましい。
また、この液体は、添着剤に含有されるバインダ樹脂に対しては溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。
【0033】
上記「バインダ樹脂」は、粉末状の相溶性重合体を生分解性樹脂に添着させるためのバインダとして機能する樹脂である。このバインダ樹脂を含有することで、相溶性重合体を生分解性樹脂に確実に添着でき、上記液体が乾燥除去された後にも相溶性重合体の粒子を生分解性樹脂表面に接着した状態で維持できる。即ち、前述のような相溶性重合体と生分解性樹脂との接触により粘着性を発現させることがないために、混合工程前に添着工程を行うことができる。従来、粘着性を抑制できないために、成形体製造の後期工程で、即ち、その後に増粘しても製造上問題がない工程以降でしか相溶性重合体を添着することができなかった。
【0034】
このバインダ樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
バインダ樹脂の使用量は特に限定されないが、用いる相溶性重合体の全体を100質量部とした場合に10〜50質量部が好ましい。この範囲では、バインダ樹脂を用いたことによる相溶性重合体の生分解性樹脂への添着をより確実にすることができる。更に、バインダ樹脂の上記量は10〜30質量部がより好ましく、10〜20質量部が特に好ましい。この範囲では、バインダ樹脂を用いたことによる相溶性重合体の生分解性樹脂への添着をとりわけ確実にすることができる。
【0036】
更に、この添着工程で用いる上記液状添着剤には、上記液体、上記相溶性重合体及び上記バインダ樹脂以外に、カルボジイミド化合物を含有できる。このカルボジイミド化合物は上記液体に溶解してもよく、分散されてもよい。
添着工程では、生分解性樹脂に液状添着剤を添着させるため、この工程で併せてカルボジイミド化合物を添着することで効率よく(別工程を設けることなく)添着を行うことができる。また、生分解性樹脂に直接添着できるため、添着量のコントロールが容易であり、加水分解抑制作用をより確実に発揮させることができる。従って、カルボジイミド化合物を用いることによる耐湿性向上効果をとりわけよく得ることができる。
【0037】
上記カルボジイミド化合物は、化学式−N=C=N−で示される構造を1つ又は2つ以上有する化合物であり、非重合物でもよく、重合物でもよい。非重合物としてはモノカルボジイミド化合物及びジカルボジイミド化合物などが挙げられ、重合物としてはポリカルボジイミドなどが挙げられる。このうちポリカルボジイミドには、ダイマー及びトリマー等の各種のオリゴマーや、ポリマー等が含まれる。更に、ポリカルボジイミドは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。このカルボジイミド化合物としては、上記各種化合物のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクタデシルカルボジイミド、ジ−o−トリルカルボジイミド、ジ−p−トリルカルボジイミド、ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N’−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−トリルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物又はジカルボジイミド化合物、並びに、
ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4,’−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(ナフタレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド、などが挙げられる。
【0039】
カルボジイミドの使用量は特に限定されないが、用いる生分解性樹脂の全体を100質量部とした場合に0.1〜5質量部が好ましい。この範囲では、カルボジイミド化合物を用いたことによる生分解性樹脂の加水分解抑制作用をより効果的に得ることができる。更に、カルボジイミド化合物の上記量は0.5〜1質量部がより好ましい。この範囲では、カルボジイミド化合物による上記加水分解抑制作用をとりわけ効果的に得ることができる。
【0040】
上記液状添着剤は、生分解性樹脂と接触させることで生分解性樹脂に添着される。添着工程における液状添着剤と生分解性樹脂との接触方法は特に限定されず、スプレー塗布、ローラ塗布及びカーテン塗布等の種々の塗布方法により接触させることもできるが、生分解性樹脂を前述のような液状添着剤中に浸漬して接触させることが好ましい。即ち、水系の液体(特に水)と、オキシエチレン単位数が23以上であるエチレンオキシド鎖を有する第1単量体を用いて得られた粉末状の相溶性重合体(即ち、オキシエチレン単位数が23以上であるエチレンオキシド鎖を有する第1単量体単位を有する粉末状の相溶性重合体)と、バインダ樹脂と、が含有された液状添着剤に、生分解性樹脂を浸漬して、生分解性樹脂に相溶性重合体を添着させることが好ましい。
これにより、簡便な施設で、工程数少なく、少量の添着剤量で確実且つ満遍なく相溶性重合体の添着を行うことができる。なかでも、繊維状に加工した生分解性樹脂を、液状添着剤が貯留された添着槽内に連続供給して、繊維状生分解性樹脂に相溶性重合体を添着することがとりわけ好ましい。
【0041】
上記「混合工程」は、相溶性重合体が添着された生分解性樹脂と天然繊維とを混合して天然繊維混合物(例えば、マット状物)を得る工程である。
この混合工程における混合方法は特に限定されず、生分解性樹脂が熱可塑性を有することを利用して各種ミキサー等を用いて混合してもよいが、通常、混合助剤等の添加剤を配合しても天然繊維と生分解性樹脂とを混練することは製造効率上において難しい。
このため、生分解性樹脂(相溶性重合体が添着された生分解性樹脂)と、天然繊維と、を混合状態で堆積させて天然繊維混合物を得ることが好ましい。
【0042】
上記天然繊維混合物はどのようにして得てもよいが、例えば、(1)繊維状の生分解性樹脂(相溶性重合体が添着された生分解性樹脂)と天然繊維とを混繊(エアーレイにより同時堆積させる等)して天然繊維混合物とすることができる。更に(2)粉末状の生分解性樹脂(相溶性重合体が添着された生分解性樹脂)と天然繊維とを混合(エアーレイにより同時堆積させる等)して天然繊維混合物とすることができる。これらのうちでは、前記(1)がより好ましい。生分解性樹脂は、前述のように繊維状の生分解性樹脂として相溶性重合体を添着させることが容易であり、またその効果も高い。このため繊維状の生分解性樹脂を用いることが好ましいからである。
【0043】
繊維状の生分解性樹脂の形態は特に限定されないが、繊維長は10mm以上であることが好ましい。この繊維長は10〜150mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましく、30〜70mmが特に好ましい。更に、通常、繊維径は1mm以下であり、0.01〜1mmが好ましく、0.05〜0.7mmがより好ましく、0.07〜0.5mmが特に好ましい。
【0044】
また、繊維状の生分解性樹脂と天然繊維との上記混繊はどのようにして行ってもよい(混繊工程)が、通常、乾式法又は湿式法の混綿法を用いる。このうち乾式法としては、エアーレイ法及びカード法が挙げられる。また、湿式法としては抄紙法が挙げられる。これらのうちでは乾式法を用いることが好ましい。特に前述のような好ましい範囲の長さを有する天然繊維を用いる場合には湿式法に比べて乾式法の方が生産効率が高いためである。
【0045】
また、上記混繊では、上記エアーレイ法及びカード法等を経て得られた天然繊維混合物に後加工を施すこともできる。後加工としては、例えば、天然繊維混合物内の天然繊維同士の交絡を強化したり、天然繊維混合物を複層化したり{特にカード法を用いる場合には裁断前の天然繊維混合物(マット状物)を折り重ねて複層化できる}、更に、天然繊維混合物の厚みをプレス等により薄くしたりすることができる。上記した交絡の強化を行う工程(交絡工程)の方法としては、ニードルパンチ法、ステッチボンド法及びウォーターパンチ法等が挙げられる。これらのなかでは高効率であることからニードルパンチ法が好ましい。
即ち、上記混合工程は、天然繊維と繊維状の生分解性樹脂との混繊を行って天然繊維混合物を得る混繊工程と、天然繊維混合物の交絡を強化する交絡工程と、を備えることができる。
【0046】
この天然繊維混合物(マット状物)を上記の如く混繊工程を経て得る場合、目付量は特に限定されないが、3000g/m以下(通常1200g/m以上)とすることができる。更に、厚さは特に限定されないが、通常、10mm以上(更には10〜70mm、特に10〜50mm、通常100mm以下)とすることができる。
尚、本発明にいう上記目付量(g/m)は、含水率を10%にして、1mあたりの質量を電子秤等で測定した値である。
【0047】
上記「成形工程」は、天然繊維混合物を加熱圧縮して天然繊維成形体を得る工程である。この工程では、上記加熱及び上記圧縮は同時に行ってもよく、加熱に引き続いて圧縮を行ってもよいが、特に加熱をしながら圧縮を行うことが好ましい。
上記加熱により、天然繊維混合物内の生分解性樹脂が溶融(又は軟化)して天然繊維を取り込んで天然繊維同士を一体的に接合できる。この加熱を行う際の加熱温度(天然繊維混合物内部の温度)は特に限定されず、用いる生分解性樹脂の種類により適宜の温度とすることが好ましいが、ポリ乳酸等を使用する範囲においては、170〜250℃とすることが好ましく、更には、200〜230℃とすることがより好ましい。また、通常、これらの加熱を行った後には、取り扱いに適した温度にまで冷却する。更に、圧縮の際の加圧圧力は1〜10MPaとすることが好ましく、1〜5MPaとすることがより好ましい。尚、本製造方法では、この成形工程は1段で行ってもよく、多段で行ってもよい。即ち、予備成形した(予備成形工程を経た)後に本成形を行うこともできる。
【0048】
本発明の製造方法では、上記添着工程、上記混合工程、及び上記成形工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、添着工程後であって且つ混合工程前に、相溶性重合体が添着された生分解性樹脂に、更に油剤を添着する油剤付与工程が挙げられる。
【0049】
油剤付与工程は、相溶性重合体が添着された生分解性樹脂の表面に油剤を更に添着する工程である。この油剤の添着により生分解性樹脂表面の滑り性を向上させて、取扱い性をよりよくすることができる。特に繊維状の生分解性樹脂を用いる場合には、その表面の滑りがよくなり、取り扱う器機に繊維状の生分解性樹脂が絡み付く等の不具合を効果的に抑制できる。油剤付与工程は、通常、添着工程後であって且つ混合工程前に行う。
油剤の添着方法は特に限定されないが、特に繊維状の生分解性樹脂を用いる場合には、スプレー塗布によって繊維状の生分解性樹脂の表面に油剤を添着することがとりわけ好ましい。これにより、簡便な施設で、少量の油剤量で確実且つ満遍なく添着を行うことができる。
また、上記油剤とは、具体的には、リン酸エステル、エーテルカルボン酸塩・N−アシルアミン酸塩、アルキルアマイドアミン誘導体、陰イオン・非イオン活性剤配合品、及びポリオキシエチレン・アルキルエーテル等を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明の製造方法により得られる天然繊維成形体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されない。この天然繊維成形体は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び図1〜2を用いて本発明を具体的に説明する。
[1]天然繊維成形体の製造
<実施例1>
(1)液状添着剤A(相溶性重合体及びバインダ含有)の調製
第1単量体としてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート{オキシエチレン単位数n=90(nは平均付加モル数)}と、第2単量体としてのグリシジルメタクリレートと、他の単量体としてアクリロニトリルと、が質量比50:45:5(モル比3:96:1)で重合された下記化学式(2)に示す相溶性重合体を用意した。
【0052】
【化2】

但し、上記化学式(2)において、k、l及びmの合計を100モル%とした場合に、kは3モル%、lは96モル%、mは1モル%である。また、nは90である。
【0053】
上記相溶性重合体と、バインダ樹脂であるアクリル樹脂エマルジョン(昭和高分子株式会社製、品名「AG−100」)と、を用意し、これらを水100質量部に対して、相溶性重合体が2.0質量部、アクリル樹脂エマルジョン(但し、固形分換算)が0.4質量部(相溶性重合体100質量部に対して20質量部に相当)、の割合となるように含有させて液状添着剤Aを調製した。
【0054】
(2)紡糸工程、添着工程及び油剤付与工程
図1に模式的に示すようにポリ乳酸(L体95モル%、重量平均分子量110,000〜130,000)のペレットを溶融紡糸法を用いて繊維化した。即ち、ホッパ11からポリ乳酸ペレットを投入して、結晶化装置12で結晶化(設定温度110℃)を行い、次いで、乾燥装置13にて乾燥(設定温度110〜140℃、加水分解防止処理)を行った。その後、押出機14で結晶化されたポリ乳酸を溶融し、押し出し、紡糸装置15から連続的に吐出させて繊維化した。更に、紡糸装置15から吐出されたポリ乳酸繊維をパン16に集約してトウ50(延伸及び捲縮を行っていない状態のポリ乳酸繊維)を得た。
【0055】
次いで、図2に模式的に示すように、得られたトウ50からポリ乳酸繊維を引出して、湯洗槽17にて湯洗を行い、次いで、多段の延伸装置18(181〜183)にて延伸を行った。その後、液状添着剤191が貯留された添着槽19に延伸されたポリ乳酸繊維を通して、ポリ乳酸繊維の表面に液状添着剤を添着(ポリ乳酸繊維100質量部に対して相溶性重合体が1.0質量部添着される)させた。更に、液状添着剤が添着されたポリ乳酸繊維51を油剤付与装置20(ポリ乳酸繊維51に油剤をスプレー塗布する装置であり、下方に受け台を有することができる)に通して油剤を添着させた。次いで、捲縮装置21を通してポリ乳酸繊維に捲縮をかけ、その後、乾燥装置22を通して乾燥させ、裁断機23(ロータリーカッター)で裁断を行って、長さ51mmであり、相溶性重合体及び油剤が添着されたポリ乳酸繊維の短繊維52を得た。
【0056】
(3)混合工程、予備成形工程及び成形工程
長さ51mmの上記相溶性重合体及び油剤が添着されたポリ乳酸繊維52と、長さ70mmにカットされたケナフ繊維(天然繊維、ケナフの靭皮の繊維)と、を質量比で30:70となるようにエアーレイ法により両繊維を堆積させたマット状体を得た(混合工程)。
このマット状体を熱プレス機にセットし、厚さ2.5mmのスペーサと共に235℃に加熱した金型間に挟み、圧力2.36MPa(24kgf/cm)で熱プレスを施して、マット状体内部の温度が210℃となるまでプレス(予備成形工程)して、厚さ2.5mmの予備成形体(プレボード)を得た。
更に、235℃に加熱されたオーブンで予備成形体内部の温度が210℃になるまで予備成形体を加熱し、厚さ2.3mmのスペーサと共に100℃に加熱した金型間に挟み、圧力3.54MPa(36kgf/cm)で180秒間の熱プレスを施して天然繊維成形体(ボード状体)を得た(成形工程)。
【0057】
<実施例2>
(1)液状添着剤Bの調製(相溶性重合体、バインダ及びカルボジイミド化合物含有)
実施例1と同じ相溶性重合体と、実施例1と同じバインダ樹脂と、カルボジイミド化合物(日清紡株式会社製、品名「カルボジライト E−04」)と、を用意し、これらを水100質量部に対して、相溶性重合体が2.0質量部、アクリル樹脂エマルジョン(但し、固形分換算)が0.4質量部(相溶性重合体100質量部に対して20質量部に相当)、カルボジイミド化合物が0.4質量部、の割合となるように含有させて液状添着剤Bを調製した。
【0058】
(2)紡糸工程、添着工程及び油剤付与工程
実施例1と同様に紡糸を行ってポリ乳酸繊維のトウ50を得た。次いで、液状添着剤Aに換えて液状添着剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、長さ51mmであり、相溶性重合体及び油剤が添着されたポリ乳酸繊維の短繊維52を得た。
【0059】
(3)混合工程、予備成形工程及び成形工程
予備成形工程における金型温度を230℃にした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸繊維52とケナフ繊維と堆積させたマット状体を得た(混合工程)。次いで、同様に予備成形工程を行い、成形工程を行って天然繊維成形体(ボード状体)を得た(成形工程)。
【0060】
<比較例1>
(1)紡糸工程及び油剤付与工程
ポリ乳酸100質量部に対してカルボジイミド化合物(日清紡株式会社、品名「HMV−8CI」)が1.0質量部の割合で混練含有された混合材料を実施例1と同様に紡糸を行ってポリ乳酸繊維のトウ50を得た。次いで、添着工程を設けないこと以外は、実施例1と同様にして、長さ51mmであり、相溶性重合体が添着されておらず、油剤は添着されたポリ乳酸繊維の短繊維52を得た。
【0061】
(2)混合工程、予備成形工程及び成形工程
実施例1と同様にして上記(2)で得られたポリ乳酸繊維を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸繊維とケナフ繊維と堆積させたマット状体(ポリ乳酸繊維70:ケナフ繊維30、質量%)を得た(混合工程)。次いで、同様に予備成形工程を行い、成形工程を行って天然繊維成形体(ボード状体)を得た(成形工程)。
【0062】
<比較例2>
比較例1における上記(2)の混合工程において、ポリ乳酸繊維とケナフ繊維と堆積させたマット状体におけるポリ乳酸繊維とケナフ繊維との配合割合を50:50(質量%)とした以外は、比較例1と同様にして天然繊維成形体(ボード状体)を得た。
【0063】
[2]天然繊維成形体の評価
(1)湿老化前の特性評価
実施例1及び2並びに比較例1及び2で得られた天然繊維成形体の各々について、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。この測定に際しては、密度0.6g/cm且つ含水率約10%の状態における厚さ2.3mm、幅50mm、長さ150mmの長方形の各天然繊維成形体からなる板状の試験片を用いた。そして、各試験片を支点間距離(L)100mmとした2つの支点(曲率半径3.2mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重の負荷を行い、各試験片の曲げ強さを測定した。(JIS K7171)。この結果を表1に示す。
更に、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(東ソー株式会社製、型式「8020」、解析ソフト「LC−8020」)を用いて各試験片に含まれるポリ乳酸の重量平均分子量を測定し、表1に併記した。
【0064】
(2)湿老化及び湿老化後の特性評価
実施例1及び2並びに比較例1及び2の各試験片を、温度50℃且つ湿度95%RHの環境下に400時間置いたのち取り出し、常温常湿下(23℃、65%RH)に1日放置して含水率が約10%になった各試験片の曲げ強さを、上記[2](1)の湿老化前の測定と同様にして測定し、その結果を表1に併記した。
更に、湿老化前後における厚さtから、試験片の板厚の増加率を算出し、表1に併記した。
また、上記(1)と同様にして湿老化後の各試験片に含まれるポリ乳酸の重量平均分子量を測定し、表1に併記した。
【0065】
【表1】

【0066】
[3]実施例の効果
比較例1の天然繊維成形体の曲げ強さは、湿老化前は30MPaと高かったものの、湿老化後に12MPaまで低下し、その維持率(曲げ強さの維持率)は40%と小さかった。また、湿老化前後における板厚の増加率は21%と大きく膨潤していることが分かる。更に、重量平均分子量は湿老化前後での差異はほとんど認められないものの、実施例1及び2に比べて小さいことが分かる。
比較例2の天然繊維成形体の曲げ強さは、湿老化前は32MPaと高く、湿老化後にも19MPaを維持しており、維持率(曲げ強さの維持率)は59%と優れていた。しかし、湿老化前後における板厚の増加率は12%と比較的大きく、試験片が膨潤していることが分かる。更に、重量平均分子量は湿老化前後での差異はほとんど認められないものの、実施例1及び2に比べて小さいことが分かる。
【0067】
これに対して、実施例1の天然繊維成形体の曲げ強さは、湿老化前は32MPaと高く、湿老化後にも19.5MPaを維持しており、維持率(曲げ強さの維持率)は61%と優れていた。更に、湿老化前後における板厚の増加率は10%と小さく、試験片はほとんど膨潤していないことが分かる。更に、重量平均分子量は湿老化前後での差異はほとんど認められず、29万以上と大きいことが分かる。
【0068】
また、実施例2の天然繊維成形体の曲げ強さは、湿老化前は30MPaと高く、湿老化後にも21MPaを維持しており、維持率(曲げ強さの維持率)は70%と非常に優れていた。更に、湿老化前後における板厚の増加率は8%と小さく、試験片はほとんど膨潤していないことが分かる。更に、重量平均分子量は湿老化前が25万であり、湿老化後には37万にまで上昇していた。これらのことから、カルボジイミド化合物の配合によりポリ乳酸の架橋が進行されて重量平均分子量が大きくなり、また、カルボジイミドに末端封止剤としての作用によりポリ乳酸の加水分解が特に効果的に抑制された結果であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の天然繊維成形体の製造方法は、自動車関連分野及び建築関連分野などにおいて広く利用される。特に自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に好適であり、なかでも自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等に好適である。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】紡糸工程を説明する模式的な説明図である。
【図2】添着工程などを説明する模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0071】
11;ホッパ、12;結晶化装置、13;乾燥装置、14;押出機、15;紡糸装置、16;パン、17;湯洗槽、18;延伸装置(181〜183)、19;添着槽、191;液状添着剤、20;油剤付与装置、21;捲縮装置、22;乾燥装置、23;裁断機(ロータリーカッター)、50;ポリ乳酸繊維のトウ(延伸及び捲縮される前のポリ乳酸繊維)、51;相溶性重合体が添着されたポリ乳酸繊維、52;ポリ乳酸繊維の短繊維(カット繊維)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と熱可塑性を有する生分解性樹脂とを含む天然繊維成形体の製造方法であって、
上記天然繊維と上記生分解性樹脂との両方に対して相溶性を有する粉末状の相溶性重合体が含有された液状添着剤と、繊維状及び/又は粒子状の上記生分解性樹脂と、を接触させて、該相溶性重合体が添着された該生分解性樹脂を得る添着工程、
上記相溶性混合物が添着された上記生分解性樹脂と上記天然繊維とを混合して天然繊維混合物を得る混合工程、
上記天然繊維混合物を加熱圧縮して上記天然繊維成形体を得る成形工程、をこの順に備え、
上記液状添着剤は、液体と、該液体に分散して含有された粉末状の上記相溶性重合体と、該液体に分散又は溶解して含有されたバインダ樹脂と、を含むことを特徴とする天然繊維成形体の製造方法。
【請求項2】
上記バインダ樹脂は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1に記載の天然繊維成形体の製造方法。
【請求項3】
上記液状添着剤は、更にカルボジイミド化合物を含有する請求項1又は2に記載の天然繊維成形体の製造方法。
【請求項4】
上記添着工程後であって且つ上記混合工程前に、
上記液状添着剤が添着された上記生分解性樹脂に更に油剤を添着する油剤付与工程を備える請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
【請求項5】
上記天然繊維は、ケナフ繊維である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
【請求項6】
上記生分解性樹脂は、ポリ乳酸である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。
【請求項7】
上記相溶性重合体は、重合性二重結合及び親水性部を有する第1単量体と、重合性二重結合及びエポキシ基を有する第2単量体と、を含む2種以上の単量体が重合された共重合体である請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の天然繊維成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−126154(P2009−126154A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306465(P2007−306465)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】