説明

太陽光受熱器及び太陽熱発電装置

【課題】複数の経路の温度分布と各経路の熱媒体に対する昇温性能を均一化する。
【解決手段】太陽光が入射する開口部10aを有するケーシング10と、ケーシングに設けられ、外部の流体供給源から送られた熱媒体Aを太陽光で昇温させた後に外部の流体供給先へと送り出す管路系20と、を備え、管路系20は、ケーシングに収容され、ケーシングの開口部から入射した太陽光を受けて、内部に流通する熱媒体を昇温させる複数の受熱管21と、各受熱管の一端21a側に接続され、流体供給源から導入された熱媒体を各受熱管に分配する導入ヘッダ管22と、各受熱管の他端側に接続され、各受熱管を通過した熱媒体を集めて前記流体供給先へと導出する導出ヘッダ管23と、を有する太陽光受熱器5であって、導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管は、受熱管に比べて、管内径が大きくなっている(d>d,d>d)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光受熱器及び太陽熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に影響を与えないクリーンなエネルギーとして、太陽光を集光して得られる熱エネルギーを利用した装置が知られている。このような装置として、太陽光を集光して得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換することで発電を行う太陽熱発電装置の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した太陽熱発電装置では、通常、鏡を用いた集光装置と太陽光受熱器の組合せにより集光・集熱を行う。このような集光装置と受熱器の組合せ方式として、一般的にトラフ集光方式とタワー集光方式という二種類の方式がある。
トラフ集光方式とは、半円筒型のミラー(トラフ)によって太陽光を反射させ、円筒の中心を通るパイプに集光・集熱し、パイプ内を通る熱媒体の温度を上昇させるものである。しかしながら、トラフ集光方式では、ミラーが太陽光を追尾するよう向きを変えるものの一軸制御であるため、熱媒体の高い温度上昇を期待することはできない。
【0004】
これに対して、タワー集光方式とは、地上から立設されたタワー部上に太陽光受熱器を配置するとともに、タワー部の周囲を取り囲むようにヘリオスタットと呼ばれる集光用の反射光制御鏡を複数配置し、これらヘリオスタットで反射される太陽光を太陽光受熱器に導くことで集光・集熱するものである。近年では、発電サイクルの更なる高効率化を図るという観点から、太陽光受熱器で熱交換される熱媒体について、より高温化が可能なタワー集光方式の太陽熱発電装置の開発が盛んに行われている。
【0005】
タワー集光方式に用いる太陽光受熱器は、例えば特許文献2に示されるように、太陽光が入射する開口部を有するケーシングと、ケーシングに設けられ、外部の流体供給源から送られた熱媒体を太陽光で昇温させた後に外部の流体供給先へと送り出す管路系と、を備えており、管路系は、ケーシングに収容され、ケーシングの開口部から入射した太陽光を受けて、内部に流通する熱媒体を昇温させる複数の受熱管と、各受熱管の一端側に接続され、流体供給源から導入された熱媒体を各受熱管に分配する導入ヘッダ管と、各受熱管の他端側に接続され、各受熱管を通過した熱媒体を集めて流体供給先へと導出する導出ヘッダ管と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−280638号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0241939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の流路系においては、導入ヘッダ管の入口から導出ヘッダ管の出口まで熱媒体が流れる経路が受熱管の数だけ存在することとなる。
しかしながら、従来の技術においては、各経路において熱媒体のエネルギー損失が異なるものとなるので、各経路を流れる熱媒体の流量配分が不均一になってしまって、複数の経路のうちの一部に局所的な温度ムラが生じたり、各経路の熱媒体に対する昇温性能に差が生じてしまったりするという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、複数の経路の温度分布と各経路の熱媒体に対する昇温性能を均一化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る太陽光受熱器は、太陽光が入射する開口部を有するケーシングと、前記ケーシングに設けられ、外部の流体供給源から送られた熱媒体を前記太陽光で昇温させた後に外部の流体供給先へと送り出す管路系と、を備え、前記管路系は、前記ケーシングに収容され、前記ケーシングの開口部から入射した前記太陽光を受けて、内部に流通する前記熱媒体を昇温させる複数の受熱管と、前記各受熱管の一端側に接続され、前記流体供給源から導入された前記熱媒体を前記各受熱管に分配する導入ヘッダ管と、前記各受熱管の他端側に接続され、前記各受熱管を通過した前記熱媒体を集めて前記流体供給先へと導出する導出ヘッダ管と、を有する太陽光受熱器であって、前記導入ヘッダ管及び前記導出ヘッダ管は、前記受熱管に比べて、管内径が大きくなっていることを特徴とする。
このようにすれば、管内径を大きくされた導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管(以下、「ヘッダ管」という。)における熱媒体のエネルギー損失が、受熱管に比べて小さくなる。このため、各経路でのエネルギー損失の総和に対する、ヘッダ管でのエネルギー損失の割合が相対的に小さくなる一方で、受熱管でのエネルギー損失の割合が相対的に大きくなる。換言すれば、各経路で長さが異なるヘッダ管においてエネルギー損失を抑えるので、各経路でのエネルギー損失の総和の差分も小さくなる。従って、各経路を流れる熱媒体の流量の差分を小さくすることができ、各経路の流量配分を均一的にすることができる。よって、複数の経路の温度分布と各経路の熱媒体に対する昇温性能とを均一化することができる。
【0010】
また、前記導出ヘッダ管は、前記導入ヘッダ管に比べて、管内径が大きく設定されていることを特徴とする。
このようにすれば、導出ヘッダ管が、導入ヘッダ管に比べて管内径が大きく設定されているので、受熱管で昇温して体積流量が増加した熱媒体が流れる導出ヘッダ管において、熱媒体の流速が増加することを抑制する。これにより、熱媒体の流速に比例するエネルギー損失も抑えることができる。従って、各経路を流れる熱媒体の流量の差分を更に小さくすることができ、流量配分をより均一的にすることができる。
【0011】
また、前記導入ヘッダ管及び前記導出ヘッダ管のうち少なくとも一方は、前記外部との間で前記熱媒体を流通させる流通口が複数設けられていることを特徴とする。
このようにすれば、導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管のうち少なくとも一方に、流通口が複数設けられているので、各受熱管開口から、該受熱管開口に最も近接する流通口までの平均距離を小さくすることができる。これにより、流通口と受熱管開口との間で生じるエネルギー損失を抑えることができ、各経路を流れる熱媒体の流量の差分を小さくすることができる。従って、各経路への流量配分を均一的にすることができる。
なお、流通口は、受熱管の配列方向に離間して設けるのが望ましい。
【0012】
また、前記熱媒体は、空気であることを特徴とする。
このようにすれば、熱媒体が空気であるので、空気を均一的に昇温させることができる。
【0013】
また、本発明に係る太陽熱発電装置によれば、上記のうちいずれか一に記載の太陽光受熱器と、地上に立設され、前記太陽光受熱器を高所位置に固設するためのタワーと、前記タワーの周囲に所定の角度範囲で配置され、それぞれ前記太陽光を前記太陽光受熱器の開口部に入射させる複数のヘリオスタットと、前記流体供給源となる圧縮機と前記流体供給先となるタービンと前記タービンにより回転駆動される発電機を備えるガスタービンユニットと、を備えることを特徴とする。
このようにすれば、上記本発明の太陽光受熱器を備えているので、複数の経路の温度分布と各経路の熱媒体に対する昇温性能が均一化されるので、耐久性に優れたシステム構成にすることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る太陽光受熱器によれば、複数の経路の温度分布と各経路の熱媒体に対する昇温性能を均一化することができる。
また、本発明に係る太陽熱発電装置によれば、複数の経路の温度分布と各経路の熱媒体に対する昇温性能が均一化されるので、耐久性に優れたシステム構成にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽熱発電装置100の側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る太陽光受熱器5の概略正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る太陽光受熱器5の概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る太陽光受熱器5の概略側面断面図であって、図2におけるI−I線断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る流路系20の断面図であって、各経路C(C1,2,3…)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
以下の説明では、本発明の太陽光受熱器と、太陽光受熱器により加熱された熱媒体を用いて発電を行うガスタービンユニットと、が一体的に構成された太陽熱発電装置を例にして説明する。
【0017】
『太陽熱発電装置』
図1は、本発明の実施形態に係る太陽熱発電装置100の側面図である。
ここで、地球上で太陽熱発電装置の立地に適する場所は、太陽からの直達日射が強く良好な回帰線に近い亜熱帯高圧帯の乾燥地域である。例えば、本実施形態の太陽熱発電装置は、特に亜熱帯高圧帯の中における高緯度地域に配置される片側配置方式を採用している。なお、本実施形態は、片側配置方式に限定されるものではない。
図1において、符号1で示すものは、地上Gに設けられたヘリオスタットフィールドであり、ここでは北半球の地域であるとして説明する。太陽熱発電装置100は、このヘリオスタットフィールド1に照射される太陽光H(例えば、図1中H1,H2)を集光し受熱する集光受熱システム101と、集光受熱システム101で受熱した熱により加熱された空気A(熱媒体)を用いて発電を行うガスタービンユニット102と、を備えている。ここで、ガスタービンユニット102は、詳細を省略するが、集光受熱システム101で加熱された空気A(作動流体)が圧縮される圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気Aが供給されるタービンと、圧縮機とタービンとを同軸で連結するロータと、ロータに接続された発電機と、を主に備える。そして、タービンに供給される空気Aによりロータが回転することで、圧縮機により空気Aを圧縮するとともに、発電機により発電をさせることが可能となっている。
【0018】
集光受熱システム101は、ヘリオスタットフィールド1上に配置され、太陽光H(H1,H2)を反射するための複数のヘリオスタット2と、地上Gに立設されたタワー3と、タワー3の上部に設置されて太陽光Hを受光する太陽光受熱器5と、を備えている。例えば、本実施形態において、タワー3は、ヘリオスタットフィールド1の一端側(南北方向における南側端部)に配置されている。また、ヘリオスタット2は、ヘリオスタットフィールド1における他端側(北側)であって、タワー3を中心にして略水平面内における所定の角度範囲の領域に配列されている。すなわち、ヘリオスタットフィールド1は、タワー3を中心にして扇形状に設定されている。なお、ヘリオスタットフィールド1が南半球の地域にある場合には、タワー3とヘリオスタット2の配置関係は、上記した北半球の場合とは反対方向のものとなる。
【0019】
タワー3は、地上Gから上方に向かって立設された複数(例えば、四本)の支柱3aと、各支柱3a間を架け渡すように連結された梁部3bと、を備えている。また、タワー3の上部には、上述した太陽光受熱器5等を支持するフレーム3dが設けられている。
【0020】
『太陽光受熱器』
図2は太陽光受熱器5の概略正面図、図3は概略平面図、図4は概略側面断面図(図2におけるI−I線断面図)、である。以下の説明では、太陽光Hの照射方向における上流側(本実施形態では北側)を前側、下流側(本実施形態では南側)を後側として説明する。
図2〜図4に示すように、太陽光受熱器5は、太陽光Hが入射する開口部10aを有するケーシング10と、ケーシング10に配設され、ガスタービンユニット102の圧縮機(流体供給源)から送られた空気Aを太陽光Hで昇温させた後にガスタービンユニット102のタービン(流体供給先)へと送り出す管路系20とを備えている。
ケーシング10は、図2〜図4に示すように、箱型状に形成されており、前部の下半分が斜めに切り欠かれた形状となっている。より具体的には、前壁11が後壁12に比べて天壁13から略半分の長さだけ垂下し、底壁14が天壁13に比べて後壁12から略半分の長さだけ前方に延出しており、前壁11の下端縁と底壁14の前端縁とが斜壁15によって接続されている。
【0021】
斜壁15には、地上Gに向けて開口する開口部10aが形成されている。具体的に、開口部10aは、その開口方向が斜め前下方に向けて開放され、ヘリオスタット2で反射された太陽光Hが、開口部10aを通してケーシング10内に取り込まれるようになっている。なお、ケーシング10の内表面には、全域に亘って図示しない断熱材が設けられている。これにより、ケーシング10内の熱エネルギーが、ケーシング10の壁面から外部に向けて放射されることを抑制している。
【0022】
後壁12の中央部は、上述したタワー3のフレーム3dに連結され、これによりケーシング10がタワー3に支持されている。
【0023】
管路系20は、図2に示すように、複数の受熱管21と、導入ヘッダ管22と、導出ヘッダ管23とを有している。
複数の受熱管21は、それぞれケーシング10に収容されており、延在方向を上下方向に向けた状態で、後壁12の内表面に沿って互いに所定のピッチを空けて一列に配列されている。各受熱管21は、下端(一端)が導入ヘッダ管22と、上端(他端)が導出ヘッダ管23とに接続されている。
この受熱管21は、開口部10aから入射した太陽光Hを受けて加熱された管壁により、内部に流通する空気Aを昇温させる。
【0024】
導入ヘッダ管22には、複数の受熱管21における空気Aの流通方向上流端(下端)がまとめて接続されており、ガスタービンユニット102の圧縮機から導入された空気Aを各受熱管21に分配する。
導入ヘッダ管22は、ケーシング10内の下部において、後壁12における内表面に沿って受熱管21の配列方向に延在する配管であり、延在方向両端が閉塞されている。この導入ヘッダ管22の両端側においては、流体供給路31の入口(流通部)20aがそれぞれに一つずつ形成されている。
各流体供給路31は、導入ヘッダ管22から下方に沿って延在し、ケーシング10の底壁14に形成された貫通孔14a(図4参照)内に遊挿されてケーシング10の外部に引き出されている。そして、流体供給路31の上流端は、上述したガスタービンユニット102の圧縮機に接続され、圧縮機から空気Aが供給されるようになっている。なお、流体供給路31と貫通孔14aとの間には、流体供給路31とケーシング10とを相対変位可能に封止するシール部材を設けるのが好ましい。
【0025】
導出ヘッダ管23は、複数の受熱管21における空気Aの流通方向下流端(上端)がまとめて接続されており、各受熱管21を経た空気Aを集めてガスタービンユニット102へと導出する。
導出ヘッダ管23は、ケーシング10内の上部において、後壁12における内表面に沿って受熱管21の配列方向に延在する配管であり、延在方向両端が閉塞されている。この導入ヘッダ管22の延在方向中央においては、流体排出路32の出口(流通部)20bが一つ形成されている。
この流体排出路32は、導出ヘッダ管23から上方に向かって延在し、ケーシング10の天壁13に形成された貫通孔13a(図4参照)内に遊挿されてケーシング10の外部に引き出されている。そして、流体排出路32の下流側は、上述したタービンに接続されており、受熱管21で加熱された空気Aが、流体排出路32を通ってタービンに供給されるようになっている。なお、流体排出路32と貫通孔13aとの間には、流体排出路32とケーシング10とを相対変位可能に封止するシール部材を設けるのが好ましい。
【0026】
この管路系20は、図4に示すように、受熱管21の管内径dに比べて、導入ヘッダ管22の管内径dと、導出ヘッダ管23の管内径dとが大きく設定されている。また、導入ヘッダ管22の管内径dに比べて、導出ヘッダ管23の管内径dが大きく設定されている。
管路系20においては、導入ヘッダ管22の二つの入口20aから導出ヘッダ管23の出口20bまで空気Aが流れる経路Cが受熱管21毎に形成される(図5参照)。
【0027】
ここで、一般的に、管路の圧力損失ΔPは、
ΔP=4f(ρu/2)・(L/D)…式1
で求められる。なお、fは管摩擦係数、ρは流体の密度、uは流体の平均速度、Lは管路の全長、Dは管内径である。また、管摩擦係数fについては、例えばSwamee−Jain式を用いることができる。
【0028】
続いて、上述した太陽光受熱器5の作用について説明する。
まず、ガスタービンユニット102の圧縮機から流体供給路31を介して管路系20に空気Aが送られると、二つの入口20aから空気Aが導入ヘッダ管22に導入される。導入ヘッダ管22に導入された空気Aは、各受熱管21に分配されて受熱管21のいずれかに流入し、受熱管21内を通過する間に太陽光Hで加熱された管壁によって昇温する。そして、受熱管21を通過して昇温した空気Aは、導出ヘッダ管23で集められ、ガスタービンユニット102のタービンに向けて導出される。
【0029】
この際、受熱管21の管内径dに比べて、導入ヘッダ管22の管内径dと導出ヘッダ管23の管内径dとがそれぞれ大きく設定されていることから、各経路Cにおいて、受熱管21に比べて、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23の方が、単位長さ当たりで空気Aが比較的にスムーズに通過する。
【0030】
また、空気Aは、受熱管21を通過する際に昇温して熱膨張をすることによって体積流量が増加する。このため、受熱管21及び導入ヘッダ管22に比べて、導出ヘッダ管23を通過する空気Aの体積流量が大きくなるが、導出ヘッダ管23の管内径dを受熱管21の管内径dと導入ヘッダ管22の管内径dよりも大きく設定していることから、空気Aが導出ヘッダ管23をスムーズに通過する。
【0031】
以上説明したように、太陽光受熱器5によれば、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23において、空気Aがスムーズに通過する。
より詳細に説明すると、各経路Cにおいては、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23のそれぞれにおいて、その長さが異なる(図5参照)。換言すれば、各経路Cの受熱管21の配設位置に応じて、各受熱管21の管入口21aから該管入口21aに近接する入口20aまでの距離、及び、各受熱管21の管出口21bから出口20bまでの距離、がそれぞれ異なったものとなる。このため、各経路Cにおいて長さが共通する受熱管21よりも、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23の方が、経路C相互間のエネルギー損失のバラつきに影響を与え易い(式1参照)。つまり、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23においては、管内径dが小さくなると空気Aの流速が大きくなることから、入口20a及び出口20bから離間する受熱管21ほどエネルギー損失が大きくなる傾向にある。
しかしながら、太陽光受熱器5においては、管内径dに比べて管内径d,dが大きく設定されている。このため、各経路Cでのエネルギー損失の総和に対する、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23でのエネルギー損失(後述するΔPf,ΔPf)の割合が受熱管21に比べて小さくなる一方で、導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23に比べて受熱管21でのエネルギー損失(後述するΔPf)割合が大きくなる。換言すれば、各経路Cで長さが異なる導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23においてエネルギー損失を抑えるので、各経路Cでのエネルギー損失の総和の差分も小さくなる。従って、各経路Cを流れる空気Aの流量の差分を小さくすることができ、経路C相互間の流量配分を均一的にすることができる。よって、複数の経路Cの温度分布と各経路Cの空気Aに対する昇温性能とを均一化することができる。
【0032】
また、導出ヘッダ管23の管内径dを、受熱管21の管内径d及び導入ヘッダ管22の管内径dよりも大きく設定しているので、導出ヘッダ管23に体積流量が増加した空気Aが流れても、空気Aの流速が増加することを抑える。これにより、空気Aの流速に比例するエネルギー損失も抑えることができる。従って、各経路Cを流れる空気Aの流量の差分を更に小さくすることができ、各経路Cへの流量配分をより均一的にすることができる。
【0033】
また、導入ヘッダ管22に入口20aが二つ設けられているので、各受熱管21の管入口21aから、該管入口21aに最も近接する入口20aまでの平均距離を小さくすることができる。これにより、入口20aと受熱管21の管入口21aとの間で生じるエネルギー損失(後述するΔPf)を抑えることができ、各経路Cを流れる空気Aの流量の差分を小さくすることができる。従って、流量配分を均一的にすることができる。
【0034】
また、上述した太陽熱発電装置100によれば、太陽光受熱器5を備えているので、複数の経路Cの温度分布と各経路の空気Aに対する昇温性能が均一化されるので、耐久性に優れたシステム構成にすることが可能である。
【0035】
上述した実施形態においては、管内径d>管内径d>管内径dに設定したが、以下の方法で管内径d(d,d,d)を設定することにより、経路C相互間でのエネルギー損失を更に均一的にすることが可能である。
すなわち、図5に示すように、経路Cのエネルギー損失Δfiは、主に、入口20aの放流損失(=ΔPf)、入口20aから受熱管21の管入口21aまでの摩擦損失(=ΔPf)、受熱管21の管入口21aへの吸込損失(=ΔPf)、受熱管21における摩擦損失(=ΔPf)、受熱管21の管出口21bからの放流損失(=ΔPf)、受熱管21の管出口21bから出口20bまでの摩擦損失(=ΔPf)の総和ΣΔPfとなる。
このため、経路C1,2,3…毎にΔPfを積分する。すなわち、経路CのΣΔPf(=PC1)、経路CのΣΔPf(=PC2)、経路CのΣΔPf(=PC3)…経路CのΣΔPf(=PCn)を求める。
【0036】
上述したように、導入ヘッダ管22の管内径d及び導出ヘッダ管23の管内径dが、受熱管21の管内径dと同程度であると、入口20aから受熱管21までの摩擦損失(=ΔPf)、受熱管21の管入口21aへの吸込損失(=ΔPf)、受熱管21の管出口21bへの放流損失(=ΔPf)がそれぞれ大きくなって、PC1,PC2,PC3…PCnの差分が大きくなる(経路C相互間のバラつきが大きくなって不均一になる。)。
このため、PC1,PC2,PC3…PCnの各差分を小さくするように、受熱管21の管内径dに比べて導入ヘッダ管22の管内径d及び導出ヘッダ管23の管内径dを大きくする。管内径d,d,dを決定するに際しては、|PC1−PC2|≒|PC1−PC3|≒…≒|PC1−PCn|≒|PC2−PC3|≒|PC2−PC4|≒…≒|PC2−PCn|≒…≒|PC(n−1)−PCn|となり且つこの値が極小値となる条件を満たす最適解をシミュレーション計算等で見つけて設計する。このようにすることで、経路C,C,C…Cにおいて、PC1,PC2,PC3…PCnの各差分が小さくなってそれぞれにおけるエネルギー損失が略同一となるので、流量配分の均一化を更に図ることができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、受熱管21を直線状に配列すると共に導入ヘッダ管22及び導出ヘッダ管23を真直状に構成したが、受熱管21を周状に配列すると共に受熱管21の配列方向に延びる導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管を用いてもよい。この場合、受熱管21を円弧状あるいは全周状に配列してもよく、導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管を円弧状あるいは全周状に延びる構成にしてもよい。また、導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管を、全周状に構成した場合には、導入ヘッダ管及び導出ヘッダ管の内部を複数の空間に分割してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態においては、導入ヘッダ管22と導出ヘッダ管23との双方の管内径d,dを受熱管21の管内径dよりも大きく構成したが、どちらか一方のみを大きくしたとしても、経路C相互間のエネルギー損失の均一化を図ることが可能である。
【0039】
また、上述した実施形態においては、導入ヘッダ管22において入口20aを二つ設ける構成にしたが、三つ以上設けてもよいし、一つだけ設ける構成にしてもよい。なお、入口20aは任意の位置に設けることができる。
【0040】
また、上述した実施形態においては、導出ヘッダ管23において出口20bを一つ設ける構成にしたが、二つ以上設ける構成にしてもよい。この場合においても、出口20bを一つだけ設ける場合に比べて、出口20bと各受熱管21の管入口21aとの平均距離を小さくすることができるので、各経路Cの導出ヘッダ管23におけるエネルギー損失を抑えることができる。
【0041】
また、上述した実施形態においては、ガスタービンユニット102の圧縮機から太陽光受熱器5に空気Aを送ると共に、太陽光受熱器5からガスタービンユニット102のタービンに空気Aを送る構成としたが、他の流体供給源から太陽光受熱器5に空気Aを送られてもよいし、太陽光受熱器5から他の流体供給先へ空気Aを送ってもよい。また、受熱管21で空気A以外を昇温させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
2…ヘリオスタット
3…タワー
5…太陽光受熱器
10…ケーシング
10a…開口部
20…管路系
20a…入口(流通口)
20b…出口(流通口)
21…受熱管
22…導入ヘッダ管
23…導出ヘッダ管
A…空気(作動流体)
C(C,C,C…C)…経路
H(H1,H2)…太陽光
d(d,d,d)…管内径
100…太陽熱発電装置
102…ガスタービンユニット(流体供給源,流体供給先)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が入射する開口部を有するケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、外部の流体供給源から送られた熱媒体を前記太陽光で昇温させた後に外部の流体供給先へと送り出す管路系と、を備え、
前記管路系は、前記ケーシングに収容され、前記ケーシングの開口部から入射した前記太陽光を受けて、内部に流通する前記熱媒体を昇温させる複数の受熱管と、
前記各受熱管の一端側に接続され、前記流体供給源から導入された前記熱媒体を前記各受熱管に分配する導入ヘッダ管と、
前記各受熱管の他端側に接続され、前記各受熱管を通過した前記熱媒体を集めて前記流体供給先へと導出する導出ヘッダ管と、を有する太陽光受熱器であって、
前記導入ヘッダ管及び前記導出ヘッダ管は、前記受熱管に比べて、管内径が大きくなっていることを特徴とする太陽光受熱器。
【請求項2】
前記導出ヘッダ管は、前記導入ヘッダ管に比べて、管内径が大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光受熱器。
【請求項3】
前記導入ヘッダ管及び前記導出ヘッダ管のうち少なくとも一方は、前記外部との間で前記熱媒体を流通させる流通口が複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽光受熱器。
【請求項4】
前記熱媒体は、空気であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の太陽光受熱器。
【請求項5】
請求項1からの4のうちいずれか一項に記載の太陽光受熱器と、
地上に立設され、前記太陽光受熱器を高所位置に固設するためのタワーと、
前記タワーの周囲に所定の角度範囲で配置され、それぞれ前記太陽光を前記太陽光受熱器の開口部に入射させる複数のヘリオスタットと、
前記流体供給源となる圧縮機と前記流体供給先となるタービンと前記タービンにより回転駆動される発電機を備えるガスタービンユニットと、
を備えることを特徴とする太陽熱発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113459(P2013−113459A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257882(P2011−257882)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)