説明

太陽光発電システムの発電量推定方法

【課題】太陽光発電システムの発電量の推定には、日射量データをもとに推定する方法が多数提案されている。しかし、気象庁が提供する日照データは、地域が限定されていて且つ、データ更新が1時間ごとであることより、広域での利用及びリアルタイム性に、課題がある。
【解決手段】本発明は前記課題を解決する為に、配電線に連系された太陽光発電システムにおいて、配電線の既知のロードカーブと、変電所において計測された変電所電圧、変電所電流情報から計測される瞬時の有効電力及び、瞬時の無効電力から、瞬時の負荷有効電力を推定する手段を備え、前記負荷有効電力から前記有効電力を減算した値を太陽光発電システムの発電量と推測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用系統に連系された太陽光発電システムの発電量推定方法に関わり、詳しくは、既知の配電線のロードカーブをもとに、変電所等で、計測される無効電力からリアルタイムに太陽光発電システムの発電量を推定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因の一つと考えられている二酸化炭素の排出量を削減する為に、発電時に温室効果ガスを発生しない太陽光発電システムや風力発電システムなどの自然エネルギーを用いた分散型電源がクリーンなエネルギーとして導入が盛んになってきている。日本政府は、太陽光発電を2020年に現状の20倍程度の約2,800万kW、2030年に現状の約40倍程度の約5,300万kWの導入目標を掲げている。太陽光発電は、資源の乏しい日本にとっては未来を担う期待のエネルギーである。
【0003】
太陽光発電システムが電力系統へ導入されると、太陽光発電システムの導入による電力系統からみた電力需要の減少分が正確に把握できない。そのため系統事故により太陽光発電システムが系統から解列した場合、停電により復旧が必要な電力需要の減少分が正確に把握できず、早期の事故復旧に影響がでるおそれがあることが報告されている(例:次世代送配電ネットワーク研究会)。
【0004】
上記のような課題に対し、経済産業省では、太陽光発電の出力を把握する技術の開発として、天気予報や、日射量から太陽光発電出力を把握する技術や、スマートメーター(双方向通信機能を有する電子電力計量器)により、需要家の電力需給状態を把握する技術の開発等を行っている。
【0005】
図8は、太陽光発電システムが電力系統に導入された場合の従来の推定方法の一例である。系統電源1で発生した電力を配電用変電所2で、電圧変換され遮断器を介して配電線に接続にされた電力系統へ、太陽電池4とパワーコンディショナ5からなる太陽光発電システム10が、連系変圧器7を介して電力系統と接続される。従来は、気象庁など提供する当該エリアの日射量Sを日射計31から取得し、太陽光発電量推定部30へ送る。又、太陽光発電システムの感度σ(連系数、変換効率などから算出)を契約データにより確認する。太陽光発電量推定部で、次の式により太陽光発電量(PV)を推定している。 PV=σ×S
【0006】
上記のように、従来から知られている太陽光発電システムの発電量の推定方法としては、国内に設定された複数の地域の各日射量をもとに、地域を特定し、その地域のデータベースを用いて、日射量を推定する方法が提案されている(特許文献1)。又、所定の地点の実測日射量データベースと、衛星写真に基づいて算出された所定の区域の衛星写真データベースを用いて推測する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−065686号公報
【特許文献2】特開2006−210750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2のように太陽光発電システムの発電量を推定する方法として、日射量データをもとに推定する方法が多数提案されている。しかし、気象庁が提供する日照データは、地域が限定されていることと、且つ更新周期が1時間ごとであることより、広域での利用及びリアルタイム性に欠けるという課題がある。また、太陽光発電システムの仕様、発電容量、連系の数、変換効率などから発電量を推定する方法に関しても、当該配電線へ連系される太陽光発電システムの仕様は、系統との連系契約から、一般に送り出す側の電力量は、電気事業者側で把握が可能である。
【0009】
しかし、実負荷側に太陽光発電システム等が設置され、負荷の一部が太陽光発電システムでまかなわれることになる。すなわち実際の運転状況や、需要化サイドでの手動停止や、太陽光発電システムに故障が発生しているといったことまでは、把握できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記課題を解決する為に、配電線に連系された太陽光発電システムにおいて、配電線の既知のロードカーブと、変電所において計測された変電所電圧、変電所電流情報から計測される瞬時の有効電力及び、瞬時の無効電力から、瞬時の負荷有効電力を推定する手段を備え、前記負荷有効電力から前記有効電力を減算した値を太陽光発電システムの発電量と推測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、変電所電圧、電流情報から連系される太陽光発電システムの発電量の推定が可能であり、気象庁などの第3機関のデータ利用が不要となる。また、変電所電圧、電流情報は既設変電所設備にて容易に取得できるので、日射計など、新たな設備を必要としない。さらに、電気回路で、現時点の瞬時計測値を利用することにより、太陽光発電システムの発電量の推定のリアルタイム性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明におけるシステム構成例
【図2】本発明における発電量推定フローチャート
【図3】本発明における配電線のロードカーブ例
【図4】図3における同一時刻のPQ特性
【図5】本発明におけるロードカーブから算出したPQ特性
【図6】本発明における計測Qから既知PQ特性を用いて推定した太陽光発電量
【図7】系統から見た負荷への電力供給
【図8】従来の一般的な太陽光発電システムの構成例
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
図1から図7を用いて本発明について説明する。図1は、太陽光発電システムを導入した変電所の計測構成例である。太陽光発電システムを導入する前の変電所の1日おける電力計、無効電力計の計測値を記録する。既に、太陽光発電システムが導入されている場合に、本発明の方法を適応する場合には、雨天時等太陽光発電量が少ない時にデータを取得する必要がある。記録方法は記録計等により実施する。図3が本実施のロードカーブ例である。条件は、最大負荷1000kW、最低負荷400kW、負荷力率0.8、SC300kvarで、記録周期は、30分ごと、としている。もちろんこれより短くても長くてもいいが、30分から1時間程度が好ましい。取得したロードカーブのデータから同一時刻におけるP(有効電力)、Q(無効電力)を図4のように2軸上にプロットする。図4から、最小2乗法等を用いて、直線近似し、特性式を算出する(図5)。本事例では、P=1.667x+500 が特性式となる。
【0014】
前記のようにして、当該、配電線のPQ特性パターンを、週又は月又は季節と、天候(晴れ、曇り、雨及)び、休日、平日別等に分けて事前に取得しておく。PQ特性パターンは、特徴的なものを、月、休平日、天候などで分類しておき、推定を行う日程をもとに、カレンダー機能により、近い配電線のPQ特性パターンが選択できるように構成されている。
【0015】
図2のフローチャートを用いて、具体的な推定手順について説明する。推定する日に近い条件のPQ特性パターンを準備する。例えば。同じ季節で、天候が似ていて、平日であれば、ほぼ同じ生活パターンと思われるので、負荷を過去のデータから近似することができる(S1)。現在の無効電力Qnを計測する(S2)。無効電力計を用いて現在の無効電力値Qnを得る。無効電力計が設置されていない場合で、電圧計・電流計・電力計が設置されている場合は、次の式より、無効電力値Qnを得る。
√3・V・A=√(P^2+Qn^2) より、
Qn=√(3・V^2・A^2−P^2)
ただし、V:電圧計計測値(線間電圧)、A:電流計計測値、P:電力計計測値 とする。
【0016】
既知のPQ特性パターン、P=aQ+b から、計測された現在の無効電力をQnとする。Qnの値をもとに、Pを算出する。係数a,bは、PQ特性パターンごとに既に計算して保存されているので、前記計算は簡単に行うことができる。実施例において、計測された現在のQnが100kvarであれば、図5のPQ特性パターンより、有効電力Pは、666.7kwとなる。既知のPQ特性パターンを元に求めた、前記有効電力PをPL(推定有効電力)とする。現在の有効電力Pnを測定する(S4)。算出した推定有効電力PLから、計測した実測有効電力Pnを減算する。その結果を太陽光発電電力と推定する(S5)。
【0017】
前記のように推測できる理由を、図7をもとに説明する。系統から負荷へ供給する電力を、系統から見て正とすると、太陽光発電システムから負荷へ供給する電力は、系統から見て負となる。従って、系統送り出し側の電力Pnは、Pn=PL−Pg となる。よって太陽光発電電力Pgは、Pg=PL−Pnで推定することができる。
【0018】
前記太陽光発電システムの発電量を推定する手段が成り立つ条件として、太陽光発電システムは、力率1運転をしているものとする。また、近年、太陽光発電システムの導入が住宅地域を中心に進んでいて、太陽光発電システムが配電系統に連系された場合、太陽光発電設備から生じる逆潮流により、系統電圧が上昇し、需要家の受電電圧が電気事業法で定められている101±6Vを逸脱する可能性が出てくる。そのために電圧上昇抑制対策として、太陽光発電設備において、進相無効電力制御や、配電系統に設置するSVC等により電圧を調整している。本発明では、太陽光発電システム側ではなく、柱状変圧器の分割配置、タップ変更等により配電線の電圧上昇対策がとられているものとしている。
【0019】
すなわち、前記無効電力Qは、系統に依存する負荷が出した無効電力Qである。従って、太陽光発電システムからは、Qは出ていないので、前記系統に依存する負荷の無効電力Qを、推定する日に近いPQ特性パターンを用いて求めたPL、太陽光発電システムが導入される前の電力量と推定できる。即ち、これから、現在測定したPnを減じたものが、太陽光発電システムの発電量Pgと推測することができる。
【0020】
さらに、既知ロードカーブのデータ取得数を多くし、既知PQ特性パターンをきめ細かく用意することにより精度のいい推測が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、本発明は、太陽光発電システムや風力発電システムなどの自然エネルギーを利用した分散電源の発電量の推定に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 系統電源
2 配電用変電所
3 遮断器
4 太陽電池モジュール
5 パワーコンディショナ
6 負荷
7 連系変圧器
8 配電線
10 PV(太陽光発電システム)
20 太陽光発電量推定部
21 PT(計器用変圧器)
22 CT(計器用変流器)
30 太陽光発電量推定部
31 日射計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線に連系された太陽光発電システムにおいて、配電線の既知のロードカーブと、変電所において計測された変電所電圧、変電所電流情報から算出された瞬時の有効電力及び、瞬時の無効電力から、瞬時の負荷有効電力を推定する手段を備え、前記負荷有効電力から前記計測された有効電力を減算した値を太陽光発電装置の発電量とすることを特徴とする太陽光発電システムの発電量推定方法。
【請求項2】
前記ロードカーブは、前記太陽光発電システムを配電線に接続する前、或いは雨天時など太陽光発電量が小さい日に取得されたデータから季節、平日、休日ごとにデータベース化されていて、計測日の日付をもとに、最適なロードカーブを選択し適応することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システムの発電量推定方法。
【請求項3】
前記瞬時の負荷有効電力を推定する手段は、前記計測した無効電力Qを、前記ロードカーブから算出したPQ特性式を用いて算出することを特徴とする請求項2記載の太陽光発電システムの発電量推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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