説明

太陽光発電パネル及び太陽光発電出力調整システム

【課題】太陽光発電の出力を低下方向に調整する。
【解決手段】太陽光発電出力調整システム1において、太陽光パネル2は、屋外に設置され、外部からの指示により、又は、自動的に極力太陽光を受けるように、受光面の向きを変更する。電力計3は、太陽光パネル2の出力電力を測定する。電力系統4は、電力線を通じて太陽光パネル2から電力の供給を受ける系統(配電線等)である。日射量計5は、太陽光パネル2付近に設置され、最大日射量を随時測定する。太陽光パネル制御装置6は、電力計3から太陽光パネル2の出力電力を取得し、日射量計5から最大日射量を取得し、電力系統管理装置7に送信し、その指示に応じて太陽光パネル2の受光面の向きを変えるように制御する。電力系統管理装置7は、電力会社等に設置され、電力系統4の状態を監視し、その状態や出力電力、最大日射量に応じて、太陽光パネル制御装置6に対して太陽光パネル2の出力調整を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電パネル及びその発電出力を調整するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今後、太陽光発電システムは、一般家庭を中心に大量に導入されることが見込まれている。ところが、太陽光発電による発電量は、天候に左右されるので不安定であるとともに、太陽光発電システムの大量導入により、電力系統の潮流がこれまでの流れから大きく変化するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−180660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の太陽光発電システムは、発電出力を低下方向に調整するようになっていないため、天気がよい時に、一つの電力系統に連系された多数の太陽光発電システムが一斉に発電し、電力系統への送電を始めると、以下のような問題が発生する。
(1)配電線の電圧が高くなり、基準電圧からの逸脱が起こる。
(2)電力系統の潮流が、これまでの流れから変化して、送電線や配電線の線路容量を超過する箇所が発生する。
(3)需給調整にあたり、現在は太陽光発電の出力を簡易に調整する手段がないため、太陽光発電による発電量が下がったときに即応して、電力系統への送電量を上げることができるように、大型発電所を運転する際に、最大出力から落とした(すなわち、伸び代を残した)、効率の悪い出力状態にしなければならなくなる。
(4)電力系統への出力を調整するためにバッテリーを併用する方法があるが、バッテリーを設置するには高い費用がかかる。
【0005】
なお、特許文献1には、電力変換装置が商用電力系統に出力する電力出力を制御する太陽光発電システムが開示されているが、電力変換装置の出力を制御するものであり、太陽光発電自体の出力を制御するものではない。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、太陽光発電の出力を低下方向に調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、太陽光発電パネルであって、受光量に応じた発電を行う手段と、外部からの指示に応じて前記受光量を低下方向に変更する手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、太陽光発電パネルは、受光量を低下方向に変更することにより、発電出力を低下方向に調整することができる。そして、外部から太陽光発電パネルに指示を出しながら、太陽光発電パネルの発電出力を測定、監視することにより、所望の発電出力を得ることができる。特に、太陽光発電パネルの発電出力を、必ずしも最大出力ではなく、最大出力から落とした出力に調整することができる。
【0008】
また、本発明は、上記太陽光発電パネルから電力系統へ供給される発電出力を調整するシステム(太陽光発電出力調整システム)であって、前記電力系統の送電状態を監視する電力系統管理装置と、前記太陽光発電パネルの受光量を制御する制御装置と、を備え、前記電力系統管理装置が、前記電力系統の送電状態に基づいて前記発電出力が過剰であると判断したときに、前記発電出力の低減を指示するメッセージを前記制御装置に送信し、前記制御装置が、前記電力系統管理装置から前記メッセージを受信したときに、前記太陽光発電パネルに前記受光量を減らすように指示することを特徴とする。
この構成によれば、太陽光発電パネルから電力系統への過剰電力を抑制することができる。
【0009】
また、本発明は、上記太陽光発電パネルから電力系統へ供給される発電出力を調整するシステム(太陽光発電出力調整システム)であって、前記電力系統の送電状態を監視する電力系統管理装置と、前記太陽光発電パネルの受光量を制御する制御装置と、を備え、前記電力系統管理装置が、前記制御装置から前記太陽光発電パネルの最大可能出力の通知を受けたときに、必要に応じて前記発電出力を前記最大可能出力以下の所定値に調整する指示のメッセージを送信し、前記制御装置が、前記太陽光発電パネルの最大可能出力を前記電力系統管理装置に定期的に通知するとともに、前記電力系統管理装置から前記メッセージを受信したときに、前記所定値に応じて前記太陽光発電パネルに前記受光量を増やす、又は、減らすように指示することを特徴とする。
この構成によれば、最大可能出力以下の範囲で電力会社等が希望する発電出力に調整することができる。また、最大可能出力に対して余力を持たせた出力を指示することにより、太陽光発電パネルの出力変動を抑制し、電力系統に必要な出力を安定的に供給させることができる。
【0010】
また、本発明の上記太陽光発電出力調整システムにおいて、前記電力系統管理装置が、現在の前記発電出力から前記メッセージによる指示出力を減算した差分出力、又は、前記最大可能出力から前記メッセージによる指示出力を減算した差分出力に基づく料金を前記太陽光パネルの運用者に支払う処理を行うこととしてもよい。
この構成によれば、太陽光パネルの運用者は、電力会社等から、出力低減のない本来の売電分と、出力低減をした実際の売電分との差分を埋めてもらえることにより、出力低減をしても損をしなくなるので、発電出力の低減に協力することができる。
【0011】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、太陽光発電の出力を低下方向に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】太陽光発電出力調整システム1の構成を示す図である。
【図2】太陽光パネル制御装置6のハードウェア構成を示す図である。
【図3】太陽光パネル制御装置6の記憶部65に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は出力制御データ65Aの構成を示し、(b)は出力計算データ65Bの構成を示す。
【図4】太陽光発電出力調整システム1の出力調整処理を示すフローチャートである。
【図5】太陽光発電出力調整システム1の出力情報送信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る太陽光発電出力調整システムは、太陽光の受光量を変更することで発電出力が調整可能な太陽光発電パネルを用いて、発電出力の変動や電力系統の送電状態に応じて、電力系統に供給される発電出力を調整するものである。特に、太陽光発電用のパネル(太陽光パネル)の受光量を減少させることにより、現在出力、又は、最大出力より低下した出力に調整する。
【0015】
≪システムの構成と概要≫
図1は、太陽光発電出力調整システム1の構成を示す図である。太陽光発電出力調整システム1は、太陽光パネル2、電力計3、電力系統4、日射量計5、太陽光パネル制御装置6及び電力系統管理装置7を備える。太陽光パネル2は、太陽光を受けて発電する太陽電池を複数枚接続して必要な電力を得られるようにしたパネル状の製品であり、電力会社の顧客宅の屋外等に設置される。そして、太陽光パネル2の受光面は水平方向及び垂直方向に回転可能であり、外部からの指示により、又は、自動的に極力太陽光を受けるように、受光面の向きを変更することが可能である。電力計3は、太陽光パネル2と、電力系統4とを接続する電力線に設置され、太陽光パネル2の出力電力を測定し、太陽光パネル制御装置6に通知する。電力系統4は、電力線を通じて太陽光パネル2から電力の供給を受ける系統(配電線等)である。
【0016】
日射量計5は、太陽光パネル2自体又はその近くに設置され、太陽光パネル2が受光可能な最大日射量を随時測定し、太陽光パネル制御装置6に通知する。太陽光パネル制御装置6は、太陽光パネル2、電力計3、日射量計5及び電力系統管理装置7に接続され、電力計3から太陽光パネル2の出力電力を取得し、日射量計5から最大日射量を取得し、電力系統管理装置7に送信するとともに、電力系統管理装置7からの指示に応じて、太陽光パネル2の受光面の向きを変えるように制御する。電力系統管理装置7は、電力会社や地域エネルギーマネジメント会社(以下、「電力会社等」という)に設置され、電力系統4の送電状態を監視し、その送電状態や、太陽光パネル2の出力電力、最大日射量に応じて、太陽光パネル制御装置6に対して、太陽光パネル2の出力調整を指示する。
【0017】
図2は、太陽光パネル制御装置6のハードウェア構成を示す図である。太陽光パネル制御装置6は、通信部61、入力部62、出力部63、処理部64及び記憶部65を備え、各部がバス66を介してデータを送受信可能なように接続されている。通信部61は、ネットワークを介して電力系統管理装置7とIP(Internet Protocol)通信等を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。入力部62は、処理部64からの指示により太陽光パネル2、電力計3及び日射量計5から測定値等を取得する部分であり、例えば、RS−232C等のシリアルインタフェースによって太陽光パネル2、電力計3及び日射量計5に接続される。出力部63は、処理部64からの指示により太陽光パネル2の受光面の向きを変える指示を出す部分であり、例えば、RS−232C等のシリアルインタフェースによって太陽光パネル2に接続される。処理部64は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、太陽光パネル制御装置6全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部65は、処理部64からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。なお、太陽光パネル制御装置6は、汎用的なPC(Personal Computer)やサーバ等であってもよいし、専用の装置であってもよい。なお、電力系統管理装置7も、PCやサーバ、専用の装置によって実現される。
【0018】
≪データの構成≫
図3は、太陽光パネル制御装置6の記憶部65に記憶されるデータの構成を示す図である。図3(a)は、出力制御データ65Aの構成を示す。出力制御データ65Aは、太陽光パネル制御装置6が太陽光パネル2の出力電力を制御するためのデータであり、太陽光パネル向き65A1、現在電力値65A2及び目標電力値65A3を含む。太陽光パネル向き65A1は、電力系統管理装置7から出力低下指示を受けた時点における太陽光パネル2の受光面の向きを示すものであり、例えば、基準となる向きに対する水平方向の角度及び垂直方向の角度である。現在電力値65A2は、目標電力値65A3の基準となる電力値であり、電力系統管理装置7から出力低下指示を受けた時点における太陽光パネル2の出力値である。目標電力値65A3は、当面の目標となる太陽光パネル2の出力値であり、出力低下指示に含まれる低下分又は低下率と、現在電力値65A2とから算出され、設定される。なお、出力低下指示に含まれる目標値そのものが設定されることもある。
【0019】
図3(b)は、出力計算データ65Bの構成を示す。出力計算データ65Bは、太陽光パネル制御装置6が電力系統管理装置7に通知すべき太陽光パネル2の出力電力値を計算するためのデータであり、日射量発電量関係式65B1、現在出力値65B2、最大日射量65B3及び最大可能出力値65B4を含む。日射量発電量関係式65B1は、日射量計5から取得される最大日射量と、太陽光パネル2の発電電力との関係を示す式であり、最大日射量65B3から最大可能出力値65B4を求めるときに用いられる。なお、日射量発電量関係式65B1は、外部から取得した計算式を設定してもよいし、電力計3の測定値及び日射量計5の測定値を随時取得し、学習しながら、その学習の結果に応じて更新してもよい。
【0020】
例えば、以下の式1のような計算式が考えられる。
ある時点の発電量[kW]
=太陽光パネル2の定格容量[kW]×{(ある時点の日射量[W/m])
/1000[W/m]}×効率 ・・・式1
【0021】
現在出力値65B2は、電力計3により測定され、電力系統管理装置7に通知すべき太陽光パネル2の現在の出力値であり、随時更新される。最大日射量65B3は、日射量計5により測定される最大日射量であり、随時更新される。最大可能出力値65B4は、電力系統管理装置7に通知すべき太陽光パネル2が出力可能な最大の電力値であり、日射量発電量関係式65B1に基づいて最大日射量65B3から算出され、設定される。
【0022】
≪システムの処理≫
続いて、太陽光発電出力調整システム1の基本的な処理について説明する。
図4は、太陽光発電出力調整システム1の出力調整処理を示すフローチャートである。本処理は、主として、太陽光パネル制御装置6において、処理部64が、通信部61により電力系統管理装置7から出力低下指示を受信し、入力部62から電力計3のデータを取得し、記憶部65のデータを参照しながら、出力部63から太陽光パネル2への指示を発行することにより、太陽光パネル2から電力系統4への出力を調整するものである。
【0023】
まず、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力低下指示のメッセージを受信する(S401)。出力低下指示のメッセージには、現在の出力に対する低下分若しくは低下率、又は、具体的な出力値が設定される。次に、電力計3から現在の電力値を取得し、現在電力値65A2として記憶部65に記憶するとともに、受信したメッセージに基づいて現在電力値65A2から目標電力値65A3を計算し、記憶部65に記憶する(S402)。例えば、現在電力値65A2が「10kW」であり、かつ、出力低下指示のメッセージに「−1kW」(低下分)又は「−10%」(低下率)が設定されていれば、目標電力値65A3として「9kW」が算出され、設定される。一方、出力低下指示のメッセージに「9kW」(出力値)が設定されていれば、現在電力値65A2に関係なく、目標電力値65A3として「9kW」がそのまま設定される。そして、太陽光パネル2から現在の受光面の向きを取得し、太陽光パネル向き65A1として記憶部65に記憶する(S403)。この太陽光パネル向き65A1は、太陽光パネル2の受光面の向きを、出力低下指示を受ける前の状態に戻すときに用いられる。
【0024】
S404〜S406は、実際に太陽光パネル2の出力調整を行う処理である。太陽光パネル制御装置6は、受光面の向きを動かす指示を太陽光パネル2に発行する(S404)。このとき、太陽光パネル2は、太陽光パネル制御装置6からの指示を受けて、受光面を東の方向(水平面[垂直軸]を反時計回り)に所定角度(例えば、1度)だけ回転させる。次に、電力計3から、太陽光パネル2が現在出力している電力値(現在電力値)を取得する(S405)。そして、現在電力値が目標電力値65A3と同じでなければ(S406のNO)、太陽光パネル2の受光面の向きを動かす指示を再度発行する(S404)。一方、現在電力値が目標電力値65A3と同じであれば(S406のYES)、S401で受信した出力低下指示を当面は満たすことになる。
【0025】
その後、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力低下解除指示のメッセージを受信したか否かを確認する(S407)。出力低下解除指示のメッセージは、電力会社等において、例えば、太陽光パネル2の出力低下等により電力系統4の送電状態が安定化し、出力を元に戻してもよいと判断されたときに、電力系統管理装置7から太陽光パネル制御装置6に送信される。出力低下解除指示のメッセージを受信していなければ(S407のNO)、現在の電力値を取得し(S405)、目標電力値65A3と比較する(S406)。
【0026】
出力低下解除指示のメッセージを受信していれば(S407のYES)、太陽光パネル制御装置6は、S403で記憶した太陽光パネル向き65A1に受光面を戻す指示を太陽光パネル2に発行する(S408)。このとき、太陽光パネル2は、太陽光パネル制御装置6からの指示を受けて、例えば、受光面の、水平方向の角度及び垂直方向の角度を元に戻す。
【0027】
以上により、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力低下指示を受けたときに、指示による出力低下に達するまで太陽光パネル2の受光面の向きを動かし、その後、電力系統管理装置7から出力低下解除指示を受けたときに、受光面の向きを元に戻す。
【0028】
図5は、太陽光発電出力調整システム1の出力情報送信処理を示すフローチャートである。本処理は、主として、太陽光パネル制御装置6において、処理部64が、入力部62から電力計3及び日射量計5のデータを取得し、記憶部65のデータを参照しながら、太陽光パネル2の現在出力値及び最大可能出力値を含む出力情報を作成し、作成した出力情報を通信部61により電力系統管理装置7に定期的に送信するものである。
【0029】
まず、太陽光パネル制御装置6は、電力計3から太陽光パネル2の現在の出力電力値を取得し、現在出力値65B2として記憶部65に記憶する(S501)。次に、日射量計5から太陽光パネル2付近の現在の最大日射量を取得し、最大日射量65B3として記憶部65に記憶するとともに、日射量発電量関係式65B1に基づいて最大日射量65B3から最大可能出力値65B4を計算し、記憶部65に記憶する(S502)。そして、現在出力値65B2及び最大可能出力値65B4を含む出力情報を電力系統管理装置7に送信する(S503)。
【0030】
続いて、太陽光パネル制御装置6は、S503の処理後、所定時間が経過したか否かを判定する(S504)。経過していなければ(S504のNO)、時間監視を続ける(S504)。経過していれば(S504のYES)、S501に戻って、太陽光パネル2の出力情報の作成及び送信の処理を繰り返す(S501〜S503)。
【0031】
以上により、太陽光パネル制御装置6は、時々刻々変化する太陽光パネル2の出力電力に関する情報を、所定時間ごとに電力系統管理装置7に送信することになる。なお、S504の所定時間をゼロにすることにより、出力情報を絶え間なく(常時)送信することになる。
【0032】
≪実施例≫
続いて、図4の出力調整処理、図5の出力情報送信処理を用いた、太陽光発電出力調整システム1の実施例を説明する。特に、電力系統管理装置7の処理を中心に説明する。
【0033】
<実施例その1>
実施例その1は、図4の出力調整処理を用いたものである。
電力系統4の安定した運転を維持するために、電力会社等において、電力系統管理装置7は、電力系統4の送電状態を監視する。そして、例えば、電力系統4に逆潮流が発生したため、太陽光パネル2からの発電電力が過剰であり、その発電電力を抑制することが必要であると判断した場合に、電力系統管理装置7は、太陽光パネル2の出力低下指示のメッセージを太陽光パネル制御装置6に送信する。供給電力の過剰分を削減することを目的とするので、出力低下指示のメッセージには、太陽光パネル2の現在出力値に対する低下分又は低下率が設定される。このとき、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力低下指示のメッセージを受信し、出力が目標値に下がるまで太陽光パネル2を動かす。
【0034】
その後、例えば、逆潮流がなくなって電力系統4が安定した場合に、電力系統管理装置7は、出力低下解除指示のメッセージを太陽光パネル制御装置6に送信する。このとき、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力低下解除指示のメッセージを受信し、太陽光パネル2の受光面の向きを元に戻す。
【0035】
この実施例その1では、太陽光パネル2の日射量計5及び太陽追尾機能が不要である。なお、出力低下指示及び出力低下解除指示をメッセージの送受信により太陽光パネル2を制御するように説明したが、電力系統管理装置7から太陽光パネル制御装置6への出力低下指示信号のオン・オフにより制御するようにしてもよい。
【0036】
<実施例その2>
実施例その2は、図5の出力情報送信処理及び図4の出力調整処理を用いたものであり、太陽光パネル2の日射量計5及び太陽追尾機能を利用する。太陽追尾機能は、太陽光パネル2の受光面が太陽光に対して垂直になるように制御する機能であり、これにより、その時点における最大出力を得ることができる。その具体例は、例えば、特開2010−40779号公報に開示されている。
【0037】
当初、太陽光パネル2は、太陽追尾機能により最大出力を行っているものとする。太陽光パネル2の安定した出力を維持するために、電力会社等において、電力系統管理装置7は、太陽光パネル制御装置6から、太陽光パネル2の最大可能出力値及び現在出力値を含む出力情報を定期的に取得する。そして、電力会社等の意向を反映した、太陽光パネル2の出力調整指示(出力低下指示)のメッセージを太陽光パネル制御装置6に送信する。出力調整指示のメッセージには、最大可能出力値(例えば、12kW)以下の範囲で、例えば、晴天時の太陽光パネル2が出力可能な最大値に対して十分な余力(例えば、2kW)を有する出力値(例えば、10kW)が設定される。このとき、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力調整指示のメッセージを受信し、太陽光パネル2の太陽追尾機能を解除し、そのメッセージに設定された出力値になるまで太陽光パネル2を動かす。これにより、電力会社等の意向に応じた出力値からその時点の最大可能出力値までの間で、太陽光パネル2の出力を調整することができる。
【0038】
その後、例えば、太陽に薄雲がかかって来たときに、電力系統管理装置7は、電力系統4の系統電圧が低下したことを検知し、太陽光パネル2の出力最大化を指示する(出力低下解除指示の)メッセージを太陽光パネル制御装置6に送信する。このとき、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から出力最大化指示のメッセージを受信し、図4に示すS408の処理の代わりに太陽光パネル2の太陽追尾機能を動作させる。これにより、太陽光パネル2は、その時点における最大出力を発電することができ、電力系統4の電圧低下に対して電力を補給することができる。
【0039】
一方、天候が多少変化しても、太陽光パネル2の出力を一定に維持するために、太陽光パネル制御装置6は、電力系統管理装置7から受信した出力調整指示のメッセージに含まれる出力値を目標電力値65A3として、S404〜S407の処理を続けてもよい。このとき、現在電力値が目標電力値65A3を上回ることもあれば、下回ることもあるので、その大小関係に応じてS404において太陽光パネル2の受光面を動かす方向を変えるように制御する。すなわち、現在電力値を下げる際には、太陽光を避ける方向に受光面をずらす。また、現在電力値を上げる際には、太陽光を極力受ける方向に受光面をずらす。
【0040】
これによれば、天候の変化等による太陽光パネル2の出力変動を抑制し、電力系統4に必要な出力を安定的に供給することができる。これは、電力系統4における需給調整をする上で非常に有用である。
【0041】
<実施例その3>
実施例その3は、太陽光発電出力調整システム1において電力会社等が顧客に料金を支払うものである。太陽光パネル2及び太陽光パネル制御装置6を設置している顧客から見ると、電力系統管理装置7を通じて電力会社等から出力低下の指示を受けたとしても、本来買い取ってもらえる電力を減らすことになるので、通常は出力低下に対する協力はしづらい。そこで、顧客の協力を得るために、その分の料金を電力会社等が顧客に支払う方法が考えられる。以下、3つのパターンについて説明する。
【0042】
(1)太陽光パネル2が電力会社等による出力調整の対象になることにより、電力系統4に送電した電力量(kWh)以外に、発電設備(太陽光パネル2)の電力容量あたりの接続料単価(円/kW)を設定し、発電設備の電力容量に応じた接続料金が太陽光パネル2の設置者(顧客)に支払われる。
【0043】
(2)実施例その1の場合、出力低下指示が出された時の出力P1(kW)、出力低下時の出力P2(kW)及び出力低下中の時間T(h)から、仮に出力低下がなければ販売可能だった差分の電力量(kWh)を計算し([P1−P2]×T)、その差分に対する保障単価(円/kWh)を設定し、販売可能だった電力量に対する保障金額(=差分電力量×保障単価)が支払われる。
【0044】
(3)実施例その2の場合、最大可能出力値(kW)、出力調整指示の出力値(kW)及び時間から調整電力量(kWh)を計算し、保障単価(円/kWh)による保障金額(=調整電力量×保障単価)を支払う方法や、簡単に調整電力(kW)に対する保障金額を支払う方法が考えられる。
【0045】
接続料金や保障金額を支払う際、電力系統管理装置7は、例えば、支払先の顧客が開設している金融機関の口座に、当該金額を振り込む手続きの処理を行う。
【0046】
なお、上記実施の形態では、図1に示す太陽光パネル制御装置6及び電力系統管理装置7の各部を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る太陽光発電出力調整システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0047】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、太陽光発電出力調整システム1において、電力系統管理装置7が出した指示に応じて、太陽光パネル制御装置6が太陽光パネル2の受光面の向きを制御することにより、太陽光パネル2の出力を低下させる方向に調整することができる。これによれば、太陽光パネル2の設置者(顧客)は、太陽光パネル2の出力そのものが調整できることにより、電力系統4への影響を抑制する対策(蓄電池の設置等)をしなくても太陽光パネル2の大量連系が可能になるので、顧客満足度の向上を図ることができる。一方、電力系統4の運用者(電力会社等)は、電力系統4の容量や電圧、需給等を調整する上で必要な太陽光パネル2の出力制御が可能となるので、発電設備の効率的な運用や、電力系統4への対策の極小化によるコスト低減を図ることができる。
【0048】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0049】
(1)上記実施の形態では、太陽光パネル2が受光面の向きにより受光量を変更し、出力を調整するように記載したが、受光量を変更することができれば、他の方式や装置であってよい。例えば、受光面を動かすのではなく、太陽光パネル2の受光面を液晶で覆い、液晶に通電して太陽光の透過量を調整することにより、実際の受光量を変更してもよい。また、太陽光を集めて熱による発電を行う太陽熱発電装置を用い、平面鏡の向きを変えることにより集光量を変更してもよい。
【0050】
(2)上記実施の形態のうち、実施例その1の電力系統管理装置7は、電力系統4の送電状態を監視し、その送電状態に応じて出力低下指示のメッセージを太陽光パネル制御装置6に送信するように記載したが、太陽光パネル制御装置6から現在の太陽光パネル2の出力を取得するようにしてもよい。これによれば、電力系統4の状態だけでなく、現在の出力を確認することで、より適切な出力低下指示を出すことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 太陽光発電出力調整システム
2 太陽光パネル(太陽光発電パネル)
4 電力系統
5 太陽光パネル制御装置(制御装置)
6 電力系統管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光量に応じた発電を行う手段と、
外部からの指示に応じて前記受光量を低下方向に変更する手段と、
を備えることを特徴とする太陽光発電パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光発電パネルから電力系統へ供給される発電出力を調整するシステムであって、
前記電力系統の送電状態を監視する電力系統管理装置と、
前記太陽光発電パネルの受光量を制御する制御装置と、
を備え、
前記電力系統管理装置は、前記電力系統の送電状態に基づいて前記発電出力が過剰であると判断したときに、前記発電出力の低減を指示するメッセージを前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記電力系統管理装置から前記メッセージを受信したときに、前記太陽光発電パネルに前記受光量を減らすように指示する
ことを特徴とする太陽光発電出力調整システム。
【請求項3】
請求項1に記載の太陽光発電パネルから電力系統へ供給される発電出力を調整するシステムであって、
前記電力系統の送電状態を監視する電力系統管理装置と、
前記太陽光発電パネルの受光量を制御する制御装置と、
を備え、
前記電力系統管理装置は、前記制御装置から前記太陽光発電パネルの最大可能出力の通知を受けたときに、必要に応じて前記発電出力を前記最大可能出力以下の所定値に調整する指示のメッセージを送信し、
前記制御装置は、前記太陽光発電パネルの最大可能出力を前記電力系統管理装置に定期的に通知するとともに、前記電力系統管理装置から前記メッセージを受信したときに、前記所定値に応じて前記太陽光発電パネルに前記受光量を増やす、又は、減らすように指示する
ことを特徴とする太陽光発電出力調整システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の太陽光発電出力調整システムであって、
前記電力系統管理装置は、
現在の前記発電出力から前記メッセージによる指示出力を減算した差分出力、又は、前記最大可能出力から前記メッセージによる指示出力を減算した差分出力に基づく料金を前記太陽光パネルの運用者に支払う処理を行う
ことを特徴とする太陽光発電出力調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39769(P2012−39769A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177909(P2010−177909)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】