説明

太陽光発電用接続箱

【課題】 接続箱ケースの気密性の保持と、ケースを介して効果的に放熱する構成を簡易な構成で実現する。
【解決手段】 接続箱ケースの背板10a上に開閉器が組み付けられた基板4をネジ止めするネジ孔を備えた複数の雌ネジ体7が配置され、逆流防止ダイオード2を組み付けた放熱板5を密着させる平坦部を有し、放熱板5は雌ネジ体7を挿通する複数の孔12を有すると共に、逆流防止ダイオード2を組み付けた状態で平坦な裏面を備え、雌ネジ体7を介してケース背板10a上に取り付けられた基板4と雌ネジ体7を挿通して背板10a上に配置された放熱板5とは重なりエリアWを有し、基板4の重なりエリアWの適宜部位には放熱板5を押圧する舌片11が形成され、基板4を雌ネジ体7にネジ止めすることで、放熱板4が舌片11に押圧されてケース背板10aに密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムにおいて太陽電池の発電電力を集電してパワーコンディショナに送り出す接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、複数の太陽電池パネルにより発電が行われ、発電された直流電力が接続箱で1回路の出力にまとめられてパワーコンディショナに送られる。そして、パワーコンディショナにおいて家庭で利用できる交流電力に変換される。
このように使用される接続箱は、開閉器や逆流防止ダイオード、更にサージアブソーバ、導入されたケーブルと接続するための端子台等が組み込まれて屋外に設置される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−261177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接続箱に組み込まれる機器や部材のうち、逆流防止ダイオードは大きな発熱を伴う。そのため、放熱板に取り付けてケースに組み込まれる。しかしながら、ケースは屋外に設置されるため、密閉された環境に設置されることになり、温度が上昇し易く温度上昇を所定の範囲に抑制するために大きな放熱板が使用された。その結果、接続箱全体が大型なものになっていた。
また、上記特許文献1に開示されている接続箱では、ケース上部に放熱用の孔を設けて温度上昇の抑制を図ることでケースの大型化を抑制できるが、気密性が損なわれるため屋外に設置する構造にするにはその分ケースの構造が複雑になった。
【0005】
そのため、ケース自体を放熱板として機能させれば、放熱板を小型にしても温度上昇を抑制でき、ケースの小型化に貢献できると考えられるが、接続箱の高い気密性を維持することと放熱板をケースにネジ止め等により密着させる取り付け形態を両立させることは難しかった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、接続箱ケースの気密性の保持と、ケースを介して効果的に放熱する構成を簡易な構成で実現する太陽光発電用接続箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ケース内に逆流防止ダイオード、直流開閉器等が組み込まれた太陽光発電用接続箱であって、ケース内のケース背板上には、前記開閉器が組み付けられた基板をネジ止めするための雌ネジ体が突起形成されると共に、前記逆流防止ダイオードを組み付けた放熱板を密着させる平坦部を有し、前記放熱板は、前記雌ネジ体に係合する複数の係合部を有すると共に、前記逆流防止ダイオードを組み付けた状態で平坦な裏面を備え、前記雌ネジ体を介してケース背板上に取り付けた基板と前記雌ネジ体に係合した状態で前記平坦部に配置された前記放熱板とは重なりエリアを有し、前記基板の前記重なりエリアの適宜部位には前記放熱板を前記ケース背板へ押圧する押圧部が形成され、前記基板の前記雌ネジ体へのネジ止めにより、前記放熱板が前記ケース背板に密着することを特徴とする。
この構成によれば、放熱板は基板のネジ止め操作により接続箱の背面に密着するため、別途ネジ止め等の密着操作を行うことなく、簡易な構成で放熱板をケースに密着させることができる。この結果、ケースを密閉構造としても、逆流防止ダイオードの放熱を良好に行うことができ、放熱板の小型化、ひいては接続箱の小型化に貢献できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、前記押圧部が、基板を略直角に後方に折り曲げて形成した舌片から成ることを特徴とする。
この構成によれば、後方に折り曲げた舌片により基板を押圧するので、基板と放熱板の間に空間を設けることができ、重なりエリアを設けても放熱板の放熱作用が妨げられるようなことがない。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記放熱板に設けられた前記係合部は、前記雌ネジ体が挿通して係合する孔であることを特徴とする。
この構成によれば、放熱板は平坦部に確実に位置決めでき、ズレが発生することがない。そのため、ネジ止め等の固定手段を用いることなく、簡易な操作で密着させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平坦な裏面を備えた放熱板は基板のネジ止めにより接続箱の背面に密着するため、別途ネジ止め等することなく簡易な構成で密着させることができる。よって、接続箱ケースの気密性を維持したまま逆流防止ダイオードの放熱を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る太陽光発電用接続箱の一例を示す斜視図であり、扉を外した状態を示している。
【図2】図1の正面図である。
【図3】X−X線断面図であり、(a)は箱全体の断面、(b)はA部の拡大図である。
【図4】Y−Y線断面図であり、(a)は箱全体の断面、(b)はB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る太陽光発電用接続箱の一例を示す説明図であり、図1は斜視図、図2は正面図である。何れも接続箱ケース10の前面を閉塞する扉を外した状態を示し、1は直流開閉器、2は逆流防止ダイオード、3は端子台、4は基板、5は放熱板である。直流開閉器1及び端子台2は基板4にネジ止めして組み付けられ、逆流防止ダイオード2は放熱板5にネジ止めして組み付けられている。ケース10は前面を図示しない扉で閉塞することで、密閉された接続箱を構成する。
【0013】
直流開閉器1は、太陽光発電装置や電路のメンテナンスの際に太陽光発電装置を電路から切り離すために設置され、逆流防止ダイオード2は夜間等に発電していない時に電力が逆流するのを防止するために設けられる。
【0014】
図3は図2におけるX−X線断面、図4はY−Y線断面をそれぞれ示している。図2に示すように、放熱板5はケース10内の背板10a上の平坦部に配置される一方、基板4は図3,図4に示すように背板10aとは一定の隙間を設けて略平行に設置され、基板4と放熱板5とは重なりエリアWを有している。
具体的に、逆流防止ダイオード2は放熱板5にネジ6によりネジ止めされるが、放熱板5は比較的厚く形成され、例えば3.0mmの厚みを有し、裏面が平坦な例えばアルミ板が使用される。この放熱板5に対して逆流防止ダイオード2を固定するためにネジ6が螺入されるが、螺入したネジ6の先端が放熱板5の裏面から突出しないネジ6が選択される。この結果、逆流防止ダイオード2を組み付けた後でも、放熱板5は裏面の平坦な状態が維持される。
【0015】
背板10aは全域が平坦に形成され、基板4を装着するための雌ネジ体7が溶接により突設されている。雌ネジ体7は、ネジ8を螺入するためのネジ孔を中央に備えた円筒体であり、基板4に設けられたネジ止め部4aに合わせて複数設けられ、この実施形態では4カ所に形成されている。
【0016】
そして、4カ所に形成された雌ネジ体7のうち、上部2カ所は放熱板5の装着エリア内に設けられており、放熱板5の雌ネジ体7に対応する2箇所には雌ネジ体7を挿通するための孔12(図3に示す)が穿設されている。放熱板5は、この孔12に雌ネジ体7を挿通することで位置決めが成され、舌片11に押圧されることで、背板10aに密着する。
【0017】
尚、ケース10の背板10aは、放熱板5を装着するエリアが平坦に形成されていればよく、他の部位は凹凸を設けても良い。また放熱板5は、裏面に加えて逆流防止ダイオード2を組み付ける表面も平坦な形状としているが、表側は適宜部位に放熱フィンを設けても良い。
【0018】
一方、基板4は適宜部位(ここでは4箇所)にネジ止め部4aである透孔を有し、重なり部Wを形成する部位となる上端は後方に略直角に折り曲げられ、一様な奥行きの舌片11が形成されている。この舌片11は、雌ネジ体7の高さと放熱板5の厚みを鑑みた奥行きで形成され、上部2箇所のネジ止め部4aの上下左右の複数箇所で放熱板5を押圧するよう、複数配置されている。
そして、放熱板5を雌ネジ体7に係合させてケース10内に配置した状態で、基板4をネジ8によりケース10内に装着すると、舌片11が放熱板5を背板10aに押圧する。
【0019】
このように、放熱板5は基板4のネジ止め操作により接続箱ケース10の背面に密着するため、別途ネジ止め等の密着操作を行うことなく、簡易な構成で放熱板をケース10に密着させることができる。この結果、ケース10を密閉構造としても、逆流防止ダイオード2の放熱を良好に行うことができ、放熱板5の小型化、ひいては接続箱の小型化に貢献できる。
また、基板4に設けた舌片11により放熱板5が押圧されるので、基板4と放熱板5の間に空間を設けることができ、重なりエリアを設けても放熱板4の放熱作用が妨げられるようなことがない。
更に、放熱板5は雌ネジ体7により位置決めされ、孔12に挿通することで位置ズレを防止するため、別途固定手段を用いなくても位置ズレを起こすことがない。
【0020】
尚、上記実施形態では、放熱板5に孔12を設けて背板上の雌ネジ体7を挿通させて位置決めを実施しているが、放熱板5に例えばU字状の切り欠きを設けて雌ネジ体7に係合させても良い。
また、基板4の上部を放熱板5の下部と重ねているが、上下の位置関係を反転しても良いし、左右に並べて重ねても良い。更に、基板4が放熱板5全体を覆うように配置しても良い。完全に重ねても、上述したように基板4と放熱板5に間に空間を設けることで、良好に放熱させることは可能である。そして、重ねる範囲を広げることで、ケース10の内部空間を更に有効に利用でき、接続箱の小型化を更に図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・直流開閉器、2・・逆流防止ダイオード、3・・端子台、4・・基板、5・・放熱板、10・・接続箱ケース、10a・・背板、11・・舌片(押圧部)、12・・孔(係合部)、W・・重なりエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に逆流防止ダイオード、直流開閉器等が組み込まれた太陽光発電用接続箱であって、
ケース内のケース背板上には、前記開閉器が組み付けられた基板をネジ止めするための雌ネジ体が突起形成されると共に、前記逆流防止ダイオードを組み付けた放熱板を密着させる平坦部を有し、
前記放熱板は、前記雌ネジ体に係合する複数の係合部を有すると共に、前記逆流防止ダイオードを組み付けた状態で平坦な裏面を備え、
前記雌ネジ体を介してケース背板上に取り付けた基板と前記雌ネジ体に係合した状態で前記平坦部に配置された前記放熱板とは重なりエリアを有し、
前記基板の前記重なりエリアの適宜部位には前記放熱板を前記ケース背板へ押圧する押圧部が形成され、
前記基板の前記雌ネジ体へのネジ止めにより、前記放熱板が前記ケース背板に密着することを特徴とする太陽光発電用接続箱。
【請求項2】
前記押圧部が、基板を略直角に後方に折り曲げて形成した舌片から成ることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電用接続箱。
【請求項3】
前記放熱板に設けられた前記係合部は、前記雌ネジ体が挿通して係合する孔であることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽光発電用接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243867(P2012−243867A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110670(P2011−110670)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】