説明

太陽光発電装置

【課題】設置作業を容易且つ安全に行うことができ、建築コストの増大を最小限に抑制することができると共に、建築物の屋根材や防水層等を損傷させるおそれのない太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽光発電装置10,30,40は、2枚の透明な板状部材20a,20bの間に空気層12を有する複層部材11と、複層部材11の空気層12に設けられる太陽光パネル13とを備えていることを特徴とし、太陽光パネル13はプラスチックフィルム基板に薄い膜を形成して構成されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を使用して発電するための太陽光発電装置に関し、特に、2枚の透明な板状部材の間の空気層に太陽光パネルが設けられた太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出による地球温暖化現象に対する危機感の高まりに伴い、クリーンなエネルギーの供給源として太陽光パネルを利用した太陽光発電装置が注目されており、この種の従来の太陽光発電装置としては、住宅等の建築物の屋根上に太陽光パネルを設置したものがよく知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−21259号公報
【特許文献2】特開2002−289903号公報
【特許文献3】特開2005−241079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の太陽光発電装置では、建築物の屋根上に太陽光パネルを設置しているため、装置が大掛かりになり、設置作業に手間が掛かるといった問題や、高所作業のため作業の安全性を維持するのが難しいといった問題があった。
【0005】
また、太陽光パネルの寿命が建築物の寿命に比べると短いため、建築物の使用中に太陽光パネルを何度か取り替える必要があり、その取り替え作業に手間とコストが掛かるといった問題があった。
【0006】
さらに、太陽光パネルの重量に耐えるのに十分な構造補強を建築物に対して行う必要があるため、太陽光発電装置の設置コストに加えて構造補強のコストが必要となり、その結果、全体の建築コストが増大するといった問題もあった。
【0007】
さらにまた、建築物の屋根上に太陽光パネルを設置する際に屋根材や防水層等を損傷させるおそれがあるといった問題もあった。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、設置作業を容易且つ安全に行うことができ、建築コストの増大を最小限に抑制することができると共に、建築物の屋根材や防水層等を損傷させるおそれのない太陽光発電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明に係る太陽光発電装置は、2枚の透明な板状部材の間に空気層を有する複層部材と、該複層部材の空気層に設けられる太陽光パネルと、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明に係る太陽光発電装置において、前記太陽光パネルはプラスチックフィルム基板に薄い膜を形成して構成されているのが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る太陽光発電装置は、前記複層部材の空気層内に冷却エアを供給する給気設備と、前記複層部材の空気層内のエアを排出する排気設備とを備えているのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る太陽光発電装置において、前記太陽光パネルより室内側に配設された前記板状部材の前記空気層側の面又は前記太陽光パネルの室内側の面に吸熱シートが貼付されていてもよい。
【0013】
さらにまた、本発明に係る太陽光発電装置において、前記太陽光パネルより室内側に配設された前記板状部材の前記空気層側の面又は前記太陽光パネルの室内側の面に電磁シールド板が貼付されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽光パネルを空気層に設けることにより、太陽光パネルを保護し、耐久性の向上を図ることができると共に、太陽光パネルの温度上昇を抑制することができ、発電効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、クリーンエネルギーの太陽光を効率よく利用することができ、省エネルギー化を図ることができると共に、居住性を高めることができる。
【0016】
さらに、太陽光パネルを複層部材に組み込むことにより、建材一体型が可能となり、太陽光パネルの運搬作業や取付作業、或いは交換作業を簡単且つ安全に行うことができ、施工性の向上及び設置コストの低減化を図ることができる。
【0017】
さらに、太陽光パネルが軽量なため、建築物に対して構造補強を行う必要がなく、また、太陽光パネルを設置する際に、屋根材や防水層等を損傷させるおそれがないといった効果を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る太陽光発電装置を仮設防音壁に使用した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
先ず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電装置について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す模式図、図2は同実施の形態に係る太陽光発電装置を示す断面図である。
【0021】
本実施の形態に係る太陽光発電装置10は、建築物の開口部に取り付けられる複層ガラス11と、複層ガラス11の空気層12に設けられる太陽光パネル13と、太陽光パネル13間の複数の直流配線14を1本の直流配線15にまとめるための接続箱16と、太陽光パネル13で発電した直流電力を交流電力に変換するためのパワーコンディショナー17と、太陽光パネル13で発電した電力を前記建築物内の所要箇所に分配するための分電盤18と、電力会社との間で売買した電力を計量する電力量計19とを備えて構成されている。
【0022】
なお、接続箱16、パワーコンディショナー17、分電盤18、及び電力量計19等を設置する代わりに、太陽光パネル13に小型充電器を接続し、太陽光パネル13から直接電力を取り出すように構成してもよい。
【0023】
図2に良く示されているように、複層ガラス11は、空気層12を介して2枚の板ガラス20a,20bを対向させることにより形成され、2枚の板ガラス20a,20bの外周部に沿ってスペーサ21が介装されている。このスペーサ21は筒状を成し、スペーサ21の互いに対向する面には凹部22が形成され、スペーサ21の中空部には乾燥剤23が充填されている。また、スペーサ21と各板ガラス20a,20bとの隙間には第1シール材24が充填されていると共に、スペーサ21の外側の各板ガラス20a,20bの間には第2シール材25が充填されており、各板ガラス20a,20bの周縁部は密封されている。
【0024】
太陽光パネル13は、ガラス又はプラスチック基板を用いた軽量で薄型のパネルにより形成されており、例えば、プラスチックフィルム基板に負の電極、第1薄膜素材、第2薄膜素材、正の電極を順次重合して1μm程度の薄い膜を形成したパネルにより構成されている。そして、太陽光パネル13は、その外周部がスペーサ21の凹部22に嵌合することにより空気層12内に固定されている。
【0025】
このような構成を備えた太陽光発電装置10において、太陽光が板ガラス20a,20bを透過して太陽光パネル13に照射されると、電子が前記第1薄膜素材に集まると共に正孔が前記第2薄膜素材に集まり、両薄膜素材の間に起電力が発生し、前記各電極間で直流電力を取り出すことができる。そして、この直流電力は、順次、直流配線14、接続箱16、直流配線15を通って、パワーコンディショナー17に送られ、交流電力に変換された後、分電盤18を介して建築物内の所要箇所に分配され、電力会社との間で売買された電力は電力量計19によって計量される。
【0026】
上記した本実施の形態に係る太陽光発電装置10によれば、太陽光パネル13を空気層12内に設けているため、太陽光パネル13を保護し、耐久性の向上を図ることができると共に、太陽光パネル13の温度上昇を抑制することができ、発電効率の向上を図ることができる。
【0027】
次に、図3を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態に係る太陽光発電装置について説明する。ここで、図3は本発明の第2の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す断面図である。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、上記した本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電装置10と同様の構成については、図3中、図1及び図2と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0028】
本実施の形態に係る太陽光発電装置30において、太陽光パネル13は、室内側の板ガラス20aの空気層12側の面に貼付されることにより、空気層12に設けられている。したがって、この場合、スペーサ21には太陽光パネル13を固定するための凹部22を形成する必要がなく、スペーサ21は単純な角筒形状を成している。
【0029】
上記した本実施の形態に係る太陽光発電装置30によれば、太陽光パネル13を空気層12内に設けることにより、太陽光パネル13を保護し、耐久性の向上を図ることができると共に、太陽光パネル13を室内側の板ガラス20aの空気層12側の面に貼付することにより、太陽光パネル13の温度上昇を抑制することができ、発電効率の向上を図ることができる。さらに、太陽光パネル13を固定するための凹部22をスペーサ21に形成したりする必要がないため、太陽光パネル13の取付作業が簡素化され、製造コストの低減化を図ることができる。
【0030】
次に、図4及び図5を参照しつつ、本発明の第3の実施の形態に係る太陽光発電装置について説明する。ここで、図4は本発明の第3の実施の形態に係る太陽光発電装置を示す断面図、図5は同実施の形態に係る太陽光発電装置を示す斜視図である。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、上記した本発明の第1の実施の形態に係る太陽光発電装置10と同様の構成については、図4及び図5中、図1及び図2と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施の形態に係る太陽光発電装置40は、複層ガラス11の空気層12内に冷却エアを供給する給気設備41と、複層ガラス11の空気層12内のエアを排出する排気設備42とを備えている。また、太陽光パネル13は室内側の板ガラス20aの空気層12側の面に貼付されることにより、空気層12に設けられている。したがって、この場合、スペーサ21には太陽光パネル13を固定するための凹部22を形成する必要はなく、スペーサ21は単純な角筒形状を成している。
【0032】
給気設備41はスペーサ21の下側中空部内に挿入される給気管43を備えており、この給気管43の上部には所定間隔で給気口44が取り付けられている。また、排気設備42はスペーサ21の上側中空部内に挿入される排気管45を備えており、この排気管45の下部には所定間隔で排気口46が取り付けられている。
【0033】
このような構成を備えた太陽光発電装置40において、空気層12の温度が所定温度に達し、空気層12に設置されたセンサ(図示省略)が作動すると、空気調和設備(図示省略)から給気管43に冷却エアが供給され、該冷却エアは給気口44から空気層12内に送出される。その後、この冷却エアにより空気層12は所定温度に冷却され、その結果、前記冷却エアは、温度の上昇したエアとなって排気口46から排気管45を通って空気層12の外部に排出される。
【0034】
一方、太陽光が照射された太陽光パネル13では、上記したのと同様の手順で電力が発生され、この電力は建築物内の所要箇所に分配されると共に、電力会社との間で売買される。
【0035】
このように本実施の形態に係る太陽光発電装置40によれば、給気設備41及び排気設備42を使用して空気層12を強制的に冷却することによって、空気層12の温度を所定温度に制御することができるため、太陽光パネル13の温度上昇を確実に抑制することができ、発電効率のより一層の向上を図ることができる。
【0036】
なお、上記した第3の実施の形態に係る太陽光発電装置40のように給気設備41及び排気設備42を設置する代わりに、或いは、それらの設備に加えて、太陽光パネル13より室内側の板ガラス20aの空気層12側の面や太陽光パネル13の室内側の面に吸熱シート(図示省略)を貼付してもよい。これにより、空気層12の温度上昇を抑制することができ、太陽光パネル13の発電効率の向上を図ることができる。
【0037】
また、太陽光パネル13より室内側の板ガラス20aの空気層12側の面や太陽光パネル13の室内側の面に電磁シールド板(図示省略)を貼付してもよく、これにより、電磁シールド効果を得ることもできる。
【0038】
さらに、上記した各実施の形態では、複層ガラス11全面に亘って太陽光パネル13を固定して設置しているが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、例えば、複層ガラス11の一部に太陽光パネル13を取り付けて窓の景観性を損なわないように配慮したり、或いは、太陽光パネル13に磁性体を組み込み、複層ガラス11の外部からこの磁性体に磁石を吸引させ、この磁石を複層ガラス11に沿って移動操作することにより太陽光パネル13が移動可能なように構成してもよい。
【0039】
さらに、上記した各実施の形態では、建築物の開口部に取り付けられる複層ガラス11に太陽光パネル13を設置する場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、例えば、駐車場の屋根やトップライト、或いは、高速道路の防音壁や工事現場の仮設防音壁50のパネル部分51(図6参照)等、建築物の開口部以外の場所で、高強度のポリカーボネイト板等、複層ガラス11以外の複層部材に太陽光パネル13を設置する場合にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 太陽光発電装置
11 複層ガラス(複層部材)
12 空気層
13 太陽光パネル
20a,20b 板ガラス(板状部材)
30 太陽光発電装置
40 太陽光発電装置
41 給気設備
42 排気設備



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の透明な板状部材の間に空気層を有する複層部材と、
該複層部材の空気層に設けられる太陽光パネルと、
を備えていることを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項2】
前記太陽光パネルはプラスチックフィルム基板に薄い膜を形成して構成されている請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項3】
前記複層部材の空気層内に冷却エアを供給する給気設備と、前記複層部材の空気層内のエアを排出する排気設備とを備えている請求項1又は2に記載の太陽光発電装置。
【請求項4】
前記太陽光パネルより室内側に配設された前記板状部材の前記空気層側の面又は前記太陽光パネルの室内側の面に吸熱シートが貼付されている請求項3に記載の太陽光発電装置。
【請求項5】
前記太陽光パネルより室内側に配設された前記板状部材の前記空気層側の面又は前記太陽光パネルの室内側の面に電磁シールド板が貼付されている請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の太陽光発電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−100850(P2011−100850A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254581(P2009−254581)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】