説明

太陽熱による藻類に含まれる揮発性燃料オイルの分離法

【課題】藻類に含まれる燃料オイルとして使用可能な有機化合物を低コストで藻類から分離すること。
【解決手段】太陽熱吸収膜で表面被覆した圧力容器内に水と藻類を充填し密閉後、太陽光線を照射して造出した50〜300℃の高温度の環境下で加熱し、発生した水蒸気によって圧力容器内部の圧力が、1.4〜5.0気圧の範囲内で、予め定めた圧力に達した時に可及的速やかに常圧まで減圧し、再び加熱加圧し減圧するという操作を1回以上繰り返して炭化水素などの揮発性成分を藻類から分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類に含まれる揮発性燃料オイルの分離に関する。
【背景技術】
【0002】
藻類に含まれる炭化水素、炭水化物はじめその他の有機物には、燃料、工業薬品、化粧品あるいは医薬品に用いられる有用な物質が含まれている事が知られているが、その分離抽出には機械的な細胞膜破壊法、超音波振動法、圧縮加圧法、接触クラッキング法、溶剤抽出法、超臨界溶液による抽出法あるいは蒸溜法などの方法が実施されてきた。しかし、その分離抽出のために必要とするエネルギーが、特に燃料を目的とする炭化水素および炭水化物において、燃料として得られるエネルギーより大きくなるという経済的な理由から産業として成り立たない状況が続いてきた。そのために、燃料以外の付加価値の大きい医薬品や化粧品などに使用される物だけが企業化されているが、燃料オイルは経済性を模索する試行錯誤の状況が続いてきた。
しかしながら地球上の人口増加に伴って、二酸化炭素による地球温暖化という環境問題や化石燃料の枯渇問題とも絡んで、その解決を迫られている状況にある。
本発明の技術分野に関連しては、過去に多数の特許が出願されている。その中から代表的な例を上げる。特許文献1は、機械的な方法で藻の細胞膜を破壊しエタノールを採取する例である。特許文献2は、回転刃による機械的な細胞膜破壊の例である。この後、蒸留などにより燃料などの有機物を採取するものと考えられる。特許文献3は水分5〜96%含んだ藻から、機械的方法、酵素処理、アルカリ処理、などの方法で細胞膜を破壊したのち超臨界二酸化炭素、アルコールその他の溶剤による抽出工程を経て燃料などの有機物を採取する例である。特許文献4は、接触クラッキング工程を経て、溶剤を用いて炭化水素を抽出する例である。特許文献5は、植物の種などから有用物質を採取するときに、外部から圧力容器とポンプを用いて、常温に於いて加圧と減圧操作を行うというものである。特に大豆から豆腐を作る時に、この加圧と減圧操作によって巣のない豆腐が出来ると記載している。
非特許文献1と2は、前川孝昭( 筑波大名誉教授、筑波バイオテック研究所長)渡邉 信( 筑波大教授 )両氏の藻類から燃料を採取する技術に関する論説である。非特許文献3は米国 OriginOil社の藻類から燃料油を抽出する同社の技術を解説したもので、現在では世界で最も効率の良い抽出技術と言われている。同社は、2011年、世界で初めて採算のとれる藻類からの採油に成功したと発表している。この技術の中心は超音波振動を藻に印加させて藻類の細胞膜破壊を起こす事が骨格となっている。しかし超音波振動だけでは細胞膜の破壊は不十分で、更なる改善が望まれている。詳細は不明であるが、二酸化炭素も注入していると発表している。非特許文献4は、微細藻からEPAなどの有価物および燃料オイルを培養抽出する事業の可能性を技術面および経済面から調査検討した報告である。広大な培養地の問題、水の調達問題、藻培養に関わる技術的問題や有価物の抽出問題などについて諸外国の状況も含めて詳細に検討を加えている。EPAなど付加価値の高いものは採算に合うが、燃料オイルについては採油の更なる低価格化の検討が必要との見解である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開 平7−87983
【特許文献2】特開 2010−162499
【特許文献3】特開 2011−68741
【特許文献4】特許公表 2010−539300
【特許文献5】特開 2005−87183
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】前川孝昭 筑波バイオテック研究所 ホームページ http://maekawabio.org/aurantio.pdf
【非特許文献2】渡邉 信 (藻類バイオマスエネルギー技術の展望) http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/〜eefforum/1st3EF/1st3EFwatanabe.pdf
【非特許文献3】OriginOil 社(米国)のホームページ http://www.originoil.com/technology/overview.html
【非特許文献4】平成23年度農林水産省 緑と水の環境技術革命プロジェクト事業 「耕作放棄地における微細藻培養技術の確立と事業化方策の検討に係る事業化可能性調査報告」 平成23年4月 スメーブジャパン(株)他2社共同執筆 www.j−phoenix.com/pages/65/file20110625.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
藻類から、燃料オイルを低コストで分離することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
藻類の組織内において、炭化水素などの揮発性有機化合物は、藻類の細胞膜破壊に要するエネルギーの消費が多大なために、経済的に分離採取する事が出来なかった。
本発明は、太陽光線を照射する事によって造出された高温度の環境の中で、水分を含んだ藻類入りの圧力容器を加熱し、発生した水蒸気によって高圧状態となった藻類に対し、急激な減圧操作を加え、藻類の細胞膜組織の結合を破壊し、揮発性有機化合物を水との比重の差を利用して藻類組織と分離することを基本的な手段とするものである。
【0007】
具体的には(1)、太陽光線を照射する事によって造出された50〜300℃の高温度の環境の中に設置された(1−1)「太陽熟吸収膜で表面被覆された金属製の圧力容器」(以下圧力容器と略称)の内部に、この圧力容器の30〜90%の容積範囲内で水没状態となるように水を調合した藻類を導入したのち
(1−2)圧力容器を密閉して加熱し、発生した水蒸気により上昇した圧力容器内の圧力が1.4〜5.0気圧の間の予め定めた圧力に達した時に、可及的速やかに常圧まで減圧して藻類に衝撃を与える加熱と減圧の繰り返し操作を1回以上行い
(1−3)次いで圧力容器から藻類を水槽中に排出し、藻類が水槽中において水没状態になるように水槽の水量を調節して撹拌したのち静置し、「炭化水素などの有機化合物で、沸点が常圧で300℃以下の揮発性成分」(以下揮発性成分と略称)を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【0008】
(2)、前記圧力容器が、(2−1)圧力容器の30〜90%の容積範囲で水没状態となるように水を調合した藻類を、圧力容器内に導入するための開閉弁または開閉蓋を装着した入り口部
(2−2)加熱して発生した水蒸気により、藻類に対し加圧と減圧操作を1回以上繰り返し行ってから、藻類を圧力容器外に排出するための開閉弁または開閉蓋を装着した出口部
(2−3)圧力容器内の圧力を常圧まで減圧し、再度圧力を復旧させるための圧力調整弁を装着した開口部
以上の3種類の開口部が設けられている事を特徴とする加熱処理装置である1項に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【0009】
(3)、前記圧力容器が、(3−1)出口部および圧力調整弁を装着した開口部が閉じられており、入り口部が開口状態の時に、圧力容器内の30〜90%の容積範囲で水没状態となるように水を調合した藻類を入り口部から圧力容器内に導入し
(3−2)この水を調合した藻類の容積が、圧力容器の30〜90%の容積範囲内となった時に、入り口部の開閉弁または開閉蓋を閉じて、太陽光線を照射する事によって造出された50〜300℃の高温度の環境の中で加熱され
(3−3)加熱により発生した水蒸気によって圧力容器内の圧力が1.4〜5.0気圧の間の予め定めた圧力に達した時に、可及的速やかに圧力調整弁を開いて圧力容器内の圧力を常圧まで減圧して藻類に衝撃を与える加熱と減圧の繰り返し操作を1回以上行う事を特徴とする1項に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【0010】
(4)、前記圧力容器の表面に被覆された太陽熱吸収膜が、(4−1)カーボンブラック、黒鉛、酸化銅、二酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クローム、酸化鉄、硫化鉛または硫化ニッケルから選ばれた単体、複合体または混合体で構成された物質からなり
(4−2)これらの物質が、蒸着、スパッタリングあるいはCVDなどの物理的表面被覆処理、メッキあるいは酸化処理などの化学的表面被覆処理または合成樹脂バインダーと混練されて製造された塗料を塗布乾燥して表面被覆処理した被膜の何れかであることを特徴とする1項に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【0011】
(5)、前記圧力容器が、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅または銅合金製であることを特徴とする1項に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【0012】
(6)、(4−2)に記載された合成樹脂バインダーが、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂および合成ゴムから選ばれた単独または2種類以上の混合物であることを特徴とする1項に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【0013】
(7)、前記(3−3)に記載された、可及的速やかに圧力調整弁を開いて圧力容器内の圧力を常圧まで減圧して藻類に衝撃を与える加熱と減圧の繰り返し操作を1回以上行った時に、圧力調整弁を開いた開口部から圧力容器の外部に噴出する揮発性成分を含む水蒸気を、空冷または水冷された凝縮管を通過させて液体とし、この液体を凝縮管の出口に設けられた容器に捕捉して静置し、水面に浮上した揮発性成分を分離する方法。
【0014】
以上の1、2、3、4、5、6および7項が本発明の手段である。以下はその補足説明である。
【0015】
高温度の環境は、太陽光線を太陽光反射板または集光レンズによって照射して造出するもので、既にこの原理を利用した発電などに実用化されている。本発明では、太陽光反射板を主として使用する。この太陽光の照射による高温度の環境には、横方向のトラフ型のものと、縦方向の塔型のものがあり、本発明は、その高温度の環境に水を含んだ藻類の入った圧力容器を導入して加熱するものである。本発明では(図1)に示した横方向のトラフ型の加熱処理装置および(図2)に示した縦方向の塔型の加熱処理装置が使用可能であるが、塔型が生産性と維持管理に於いて優れており好ましい。本発明の前工程である藻類の培養装置と本発明の主部をなす太陽熱で加熱される圧力容器は連続して設置される。その接続部に近い培養装置の末端部には、藻類に含まれる水分を調整するためにメッシュ部を設けて水分を濾過し調整する事が行われる。水分量は、藻類が圧力容器内で水没する程度とする。この範囲が藻類に対する加圧と減圧の衝撃度効果が大きく好ましい。
圧力容器の表面付近の温度は、50〜300℃、圧力容器内部の藻類を加熱する温度は、110〜150℃が好ましい。300℃以上になると藻類の炭化が始まり揮発性成分も酸化される場合が生じる。その場合は窒素ガス封入下で行う事になりシステムが複雑化するので好ましくない。揮発性成分を分離した後の藻類の残渣は、水溶性有価物の回収、家畜の飼料あるいは肥料等として活用される。
圧力容器内の圧力範囲が1.4〜5.0気圧(圧力容器内温度は約110〜150℃となる)で、予め定めた圧力に到達した時に圧力容器内部の圧力を減圧し、藻類に衝撃を加えて細胞膜を破壊し、揮発性成分を分離する。この加圧操作と減圧操作は1回以上、好ましくは3回〜5回ほど繰り返して行う。これによって藻類の細胞膜はほぼ完全に破壊され、揮発性成分はほぼ100%近く分離する事が可能となる。この減圧操作は、圧力容器の大きさや藻類の種類について予め検討して定めておいた圧力に達した時に行う事になる。減圧から再加圧までの時間の間隔も圧力容器の大きさや藻類の種類について、予め検討して定めておく事になる。
【0016】
本発明は、ボツリオコッカス、ユーグレナ、アオコ、シュウードコリシスチスあるいはイソチリス ガルバーナ、ナンノクロプロシスなどの光合成型およびオーランチオキトリウムなどの従属栄養型の藻類に適用可能である。藻類は培地の水に対し1%前後の乾燥重量の藻類しか生育せず、この乾燥藻の重量の20〜70%が炭化水素などの燃料オイルとして含まれる藻類が本発明の実施対象として好ましい。この藻類は、培地からの出口付近即ち圧力容器の入り口前付近に於いて、圧力容器内で水没状態となる程度の水を含む湿藻状態としたのち、圧力容器内に導入し、加熱、加圧および減圧操作を行い、細胞膜の結合を緩和し破壊する。この操作中において、圧力調整弁を装着した開口部を開き減圧操作を行った時に、その開口部から揮発性成分を含んだ水蒸気が噴出する。その水蒸気を凝縮管内で冷却し液体として採取し、その液体からも揮発性成分を分離する事が出来る。加圧と減圧操作回数が3回〜5回ほど繰り返し実施されると揮発性成分は殆ど圧力容器から排出される。なおこの時、圧力容器内の水量も減少するので、藻類が水没する程度に水を補給する事になる。
【0017】
本発明のプロセスに於いて、在来使われてきた超音波振動や超臨界抽出の適用ほか公知の藻類の細胞膜破壊方法を併用することも可能である。然しながら、これらの併用も本発明がその基本的基盤技術となっており、本発明に含まれ、本発明を否定するものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明による藻類から揮発性成分を分離する方法は、太陽光線を照射して造出された高温度の環境下で行われる。このため化石燃料や電力を使用して加熱することなく藻類から低コストのエネルギーで揮発性成分を採取出来る。藻類の細胞膜破壊は、水蒸気圧の開放によるショックを利用するために簡単な弁の操作によって行う事が出来て、これによってほぼ完全に細胞膜破壊が可能となる。これらの事によって課題の低コスト化を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 太陽光線を照射して造出された高温度の環境の中で、揮発性の燃料オイルと藻類を分離するトラフ型システムの説明図。
【図2】 太陽光線を照射して造出された高温度の環境の中で、揮発性の燃料オイルと藻類を分離する塔型システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、揮発性成分を含む藻類を培養したのち、それを分離する工程に関する。培養工程で、光合成型藻類にあっては水培地の炭酸ガス濃度を高めながら光を照射して藻を生育させる。従属栄養型の藻類にあっては、水培地の有機物質を栄養として藻は生育する。それらの培地は酸性に傾きがちな傾向があり、何らかの操作で水がアルカリ性となるように維持する事を必要とする。この方法は一般的には、緩衝溶液によって行われている。そのためにナトリウムなどの塩濃度を管理する必要があるが、本発明者の一人は、先に分極性陽電極による方法を提案(特願2010−291056)して培養水の負電荷密度を高めアルカリ性とする事により、ナトリウムなどの塩濃度の少ない培地環境の中で安定した藻類の生育環境の造成に成功した。本発明は、培養した藻類から揮発性の燃料オイルを分離する工程に関するものであるが、負電荷密度が高まると、アルカリ性を示すようになり本発明の実施結果ではpH値の範囲は7.1〜13.0であった。実際の作業に当たっては、好ましくは7.1〜10.0の範囲に調整する事で揮発性成分の分離も順調に運ぶ事が確認された。pHの値は、藻類の品種や大規模な工業生産などに於いては、それぞれの条件にあった適正なpH範囲に調整されて使用される事になる。例えば従属栄養型のオ−ランチトキノリウムの場合はやや低いpH7.1〜7.5の状態で燃料オイルの分離は比較的順調に進んだ。このpHと湿藻状態の調整は前工程である培養中に行った後、本発明の分離工程に進む事になる。
【0021】
培養後、藻類は、圧力容器内に導入された時に水没状態になる程度の水を含んで、太陽光を照射して造出された高温度の環境内に導入される。導入の方法としては、断面が円形で管状の圧力容器を垂直にした塔型が、上部の開口部から水を含む藻類を重力で落下させる事によって簡単にできるために好ましい。その材質は、熱伝導に優れた銅または銅合金製が好ましい。圧力容器は、その円周方向から太陽光線を曲面状または平面上の反射板によって照射して高温度の環境を得る事になる。藻類は加熱初期には水面の上に浮く傾向が有り、加熱、加圧および減圧操作と共に揮発性成分を水面に残して水底に沈み分離される。受光面は、温度が150℃以下であれば太陽熱吸収膜として黒色酸化銅や酸化クロームによる処理を施されたものが好ましい。黒化処理は、スパッタのような物理的表面処理よりも銅を酸化して黒色化する化学的表面処理が簡便で維持管理に優れている。塗膜を使用する場合は、バインダーとしてエポキシ樹脂、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を使用し、黒色酸化銅を吸収膜の材料とするのが好ましい。
太陽光線の照射による高温度の環境に曝された圧力容器内の圧力は1.4気圧以上となるのが好ましく、その時の温度は110〜150℃の範囲で最高圧力は5.0気圧以下が好ましい。1.4気圧以上に於いて行う減圧操作は、出来るだけ短時間に圧力調整弁を開いて減圧し、藻類に衝撃を与えて細胞膜破壊を生じさせる事が重要である。この後、30秒から1分前後経ってから減圧弁を閉めて再加熱、再加圧を開始する。水面上部に溜った揮発性成分の燃料オイルは、水底の藻類の残渣をまず圧力容器の出口から排出したのち、外部に排出して採取する。減圧ショック回数は、3回〜5回程度を標準として行う。この操作によって、燃料オイルは95%以上ほぼ100%近く採取可能である。
水を含んだ藻類が圧力容器内で加熱され揮発性成分の採取が終わるまでの時間は、1サイクル0.5〜1時間以内で次のサイクルに入る事が可能である。有効な日照時間、約6時間で約10サイクルが可能となり、藻類培養工程の速度に合わせて効率的なシステムの規模を設計する事になる。なお太陽熱は、塩浴を使って蓄熱が可能なので、これを補助的に利用することも可能であり、太陽熱を間接的に圧力容器内に伝達する事になる。この技術は既に発電などに利用されておりほぼ確立されている。
【0022】
圧力調整弁が開かれた時に、圧力容器内の圧力が開放されて外部に揮発性成分を含む水蒸気が開口部から噴出する。この噴出物は大気中に放出するのではなく、凝縮管で水冷または空冷して液化してから凝縮管の出口に設けた容器に回収する。この回収液は、静置する事によって水面上部に揮発性成分が浮上し、これを分離する。
揮発性成分を分離した藻類の残渣は、最後に、圧力容器底部に設けられた残渣捕集部に集められ、外部に排出される。
以上が、藻類から燃料オイルを分離する標準的な形態である。
【符号の説明】
【0023】
1 圧力調整弁
2 水を含む藻類が導入される入り口部
3 入り口側開閉弁または開閉蓋
4 噴出蒸気を凝縮管に送るための排出口
5 圧力容器内の水没した藻類最上面
6 圧力容器
7 圧力調整弁
8 太陽熱吸収膜
9 缶内に充填された水を含む藻類
10−1 排出口側開閉弁または開閉蓋
10−2 拝出口側開閉弁または開閉蓋 兼 加熱加圧処理後の藻類の排出口
11 加熱加圧および減圧処理後の藻類の排出口側開閉弁または開閉蓋
12 照射された太陽光線の反射板
13 噴出蒸気を凝縮管に送るための排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光線を照射する事によって造出された50〜300℃の高温度の環境の中に設置された(1)「太陽熱吸収膜で表面被覆された金属製の圧力容器」(以下圧力容器と略称)の内部に、この圧力容器の30〜90%の容積範囲内で水没状態となるように水を調合した藻類を導入したのち
(2)圧力容器を密閉して加熱し、発生した水蒸気により上昇した圧力容器内の圧力が1.4〜5.0気圧の間の予め定めた圧力に達した時に、可及的速やかに常圧まで減圧して藻類に衝撃を与える加熱と減圧の繰り返し操作を1回以上行い
(3)次いで圧力容器から藻類を水槽中に排出し、藻類が水槽中において水没状態になるように水槽の水量を調節して撹拌したのち静置し、「炭化水素などの有機化合物で、沸点が常圧で300℃以下の揮発性成分」(以下揮発性成分と略称)を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【請求項2】
前記圧力容器が、(1)圧力容器の30〜90%の容積範囲で水没状態となるように水を調合した藻類を、圧力容器内に導入するための開閉弁または開閉蓋を装着した入り口部
(2)加熱して発生した水蒸気により、藻類にたいし加圧と減圧操作を1回以上繰り返し行ってから、藻類を圧力容器外に排出するための開閉弁または開閉蓋を装着した出口部
(3)圧力容器内の圧力を常圧まで減圧し、再度圧力を復旧させるための圧力調整弁を装着した開口部
以上の3種類の開口部が設けられている事を特徴とする加熱処理装置である請求項1に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【請求項3】
前記圧力容器が、(1)出口部および圧力調整弁を装着した開口部が閉じられており、入り口部が開口状態の時に、圧力容器の30〜90%の容積範囲で水没状態となるように水を調合した藻類を入り口部から圧力容器内に導入し
(2)この水を調合した藻類の容積が、圧力容器の30〜90%の容積範囲となった時に、入り口部の開閉弁または開閉蓋を閉じて、太陽光線を照射する事によって造出された50〜300℃の高温度の環境の中で加熱され
(3)加熱により発生した水蒸気によって圧力容器内の圧力が1.4〜5.0気圧の間の予め定めた圧力に達した時に、可及的速やかに圧力調整弁を開いて圧力容器内の圧力を常圧まで減圧して藻類に衝撃を与える加熱と減圧の繰り返し操作を1回以上行う事を特徴とする請求項1に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【請求項4】
前記圧力容器の表面に被覆された太陽熱吸収膜が、(1)カーボンブラック、黒鉛、酸化銅、二酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クローム、酸化鉄、硫化鉛または硫化ニッケルから選ばれた単体、複合体または混合体で構成された物質からなり
(2)これらの物質が、蒸着、スパッタリングあるいはCVDなどの物理的表面被覆処理、メッキあるいは酸化処理などの化学的表面被覆処理または合成樹脂バインダーと混練されて製造された塗料を塗布乾燥して表面被覆処理した被膜の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【請求項5】
前記圧力容器が、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅または銅合金製であることを特徴とする請求項1に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【請求項6】
請求項4の(2)に記載された合成樹脂バインダーが、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂および合成ゴムから選ばれた単独または2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の揮発性成分を水面の上部に、藻類の残渣を水底に分離する方法。
【請求項7】
請求項3の(3)に記載された、可及的速やかに圧力調整弁を開いて圧力容器内の圧力を常圧まで減圧して藻類に衝撃を与える加熱と減圧の繰り返し操作を1回以上行った時に圧力調整弁を開いた開口部から圧力容器の外部に噴出する揮発性成分を含む水蒸気を、空冷または水冷された凝縮管を通過させて液体とし、この液体を凝縮管の出口に設けられた容器に捕捉して静置し、水面に浮上した揮発性成分を分離する方法。

【図1】
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【図2】
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