説明

太陽電池モジュールの製造装置及びその製造方法

【課題】太陽電池モジュールに発生する反りを抑制することができる太陽電池モジュールの製造方法及びその製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池セル7,7の縁部7e,7e同士を重ね合わせ、半田5によって接合することにより太陽電池モジュールMを製造する。新たに接続する太陽電池セル7である接続セル11を加熱する第一ヒータ1と、半製品20側に存在している被接続セル21を加熱する第二ヒータ2と、ヒータ1,2を制御する制御装置3とを備えている。制御装置3は、半田5の凝固温度Tfの手前温度Tsで、接続セル11と被接続セル21との温度を揃えてから、凝固温度Tfに到達するようにヒータ1,2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の太陽電池セルが接続されて構成される太陽電池モジュールの製造装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題に対する意識の向上から、太陽電池モジュールを用いた太陽光発電に対する期待が高まっており、太陽電池モジュールの需要が増加している。そこで、このような需要の増加に伴って、性能の良い太陽電池モジュールを製造するための技術開発が望まれている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、複数枚の太陽電池セル(太陽電池素子)を直列に接続することで実用的な電圧を得る構成となっている。このために、特許文献1に記載の太陽電池モジュールでは、短冊形状の太陽電池セルそれぞれの表面及び裏面に導電性を有する材料が設けられていて、図5(a)(b)に示しているように、隣り合う太陽電池セル80,81の縁部80a,81a同士を上下に重ね合わせることにより、電気的に接続させる構成が採用されている。
【0004】
このような太陽電池モジュールの製造は、図5(a)に示しているように、太陽電池セル80の縁部80aの上に、新たに接続する太陽電池セル81の縁部81aを重ね合わせ、この重ね合わせた縁部80a,81a間に介在している半田(接合金属)84を、図5(b)に示しているように、上下のヒータ82,83により加熱して溶融し、その後冷却して凝固させ、電気的及び構造的に接続することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−10355号公報(図9、図10参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記製造方法によれば、次のような問題点が発生するおそれがある。すなわち、上下に重ね合わせる太陽電池セル80,81の縁部80a,81a間の半田84を、上側のヒータ82によって、上側の太陽電池セル81を介して加熱すると共に、下側のヒータ83によって、既に複数枚の太陽電池セル79に接続されている下側の太陽電池セル80を介して加熱する。この際、上下のヒータ82,83を用いて、図6(a)に示しているように、半田84の溶融温度Tf以上に太陽電池セル81,80を加熱する必要がある。そして、ヒータ82,83による加熱を停止し、太陽電池セル81,80と共に半田84を凝固温度Tf未満の温度に低下させ、半田84を凝固させる。
【0007】
しかし、この場合において、図5(a)に示しているように、下側の太陽電池セル80は既に複数枚の太陽電池セル79に接続されていることから、全体としての表面積は大きく放熱量が多くなる。これに対して、新たに接続する上側の太陽電池セル81は、1枚のみであるため、その表面積は小さく放熱量が少ない。このため、上下のヒータ82,83により縁部80a,81aを凝固温度Tf以上に一旦加熱し、その後加熱を止め、半田84を冷却させても、半田84が凝固する際に、上側と下側との放熱量の差が原因となって、図6(a)に示しているように、上側の太陽電池セル81と下側の太陽電池セル80との間で温度差Δtが発生する。
すると、この温度差Δtによって、熱膨張による伸び量が太陽電池セル80,81の間で異なっていることから、半田84の凝固後、さらに温度が常温に低下すると、前記伸び量の差によって縮み量も異なるため、太陽電池セル80,81の重ね合わせ部に応力が発生し、図6(b)に示しているようにモジュールMに反りが発生してしまう。
【0008】
そこで本発明は、太陽電池モジュールに発生する反りを抑制することができる太陽電池モジュールの製造装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明は、太陽電池セルの縁部同士を重ね合わせ、温度に応じて固化する接合材によって前記縁部同士を接合することにより、複数枚の前記太陽電池セルを有する太陽電池モジュールを製造する製造装置であって、新たに接続する前記太陽電池セルである接続セルを加熱する第一ヒータと、複数枚の前記太陽電池セルが接続されて形成される半製品のうち前記接続セルが接続される被接続セルを加熱する第二ヒータと、前記第一ヒータと前記第二ヒータとの内の少なくとも一方を制御対象ヒータとして制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記接合材によって前記縁部同士を接合させる反応温度の手前温度で、前記接続セルと前記被接続セルとの温度を揃えてから、当該反応温度に到達するように前記制御対象ヒータを制御することを特徴とする。
【0010】
また、前記製造装置によって行うことができる本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルの縁部同士を重ね合わせ、温度に応じて固化する接合材によって前記縁部同士を接合することにより、複数枚の前記太陽電池セルを有する太陽電池モジュールを製造する方法であって、新たに接続する前記太陽電池セルである接続セルを加熱すると共に、複数枚の前記太陽電池セルが接続されて形成される半製品のうち前記接続セルが接続される被接続セルを加熱し、前記接合材によって前記縁部同士を接合させる際に、前記接合材によって前記縁部同士を接合させる反応温度の手前温度で、前記接続セルと前記被接続セルとの温度を揃えてから、当該反応温度に到達するように、当該接続セルと当該被接続セルとの温度を調整することを特徴とする。
【0011】
接続セルと被接続セルとの温度が同じであれば、その状態から温度が変化し始めた直後では、両者間で放熱量に差があっても温度差は小さい。そこで、本発明の製造装置及び製造方法によれば、接合材によって縁部同士を接合させる反応温度の手前温度で、接続セルと被接続セルとの温度を揃えてから、反応温度に到達させるので、接続セルと被接続セルとの間で放熱量に差があっても、反応温度での両者間の温度差を従来よりも小さくすることができる。したがって、接続セルと被接続セルとの温度差が小さい状態で、縁部同士を前記反応温度に到達させることができるため、接合材によって接続セルと被接続セルとが接続される際、両者の熱膨張による伸び量は同等であり、冷却後の縮み量も同等とすることが可能となる。この結果、太陽電池モジュールに反りが発生するのを抑制することができる。
【0012】
また、前記第二ヒータが、前記制御対象ヒータであるのが好ましい。この場合、接続セルに比べて、被接続セルが接続されている半製品側は表面積が大きく放熱量が多いことから、被接続セルの温度低下速度が早いが、この被接続セルを加熱する第二ヒータを制御対象ヒータとして当該被接続セルの温度を制御することで、接続セルの温度に被接続セルの温度を揃える制御が行いやすい。
【0013】
さらに、前記第二ヒータが、前記第一ヒータよりも急加熱及び急冷却が可能となる高応答性ヒータからなり、前記制御部は、前記被接続セルの温度を段階的に変化させて前記反応温度に到達させるように、前記第二ヒータを制御するのが好ましい。
この場合、被接続セルを加熱する第二ヒータが高応答性ヒータであり、制御部は、この第二ヒータを制御して、被接続セルの温度を段階的に変化させて前記反応温度に到達させるので、被接続セルの温度を、接続セルの温度に追従させることが可能となり、接続セルと被接続セルとの温度を揃える制御がより一層行いやすい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続セルと被接続セルとの温度差が従来よりも小さい状態として、縁部同士を接合材の反応温度に到達させることができるので、接合材によって接続セルと被接続セルとが接続される際、両者の熱膨張による伸び量が同等であり、冷却後の縮み量も同等とすることが可能となる。この結果、太陽電池モジュールに反りが発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの製造装置によって製造される太陽電池モジュールの一部を示す説明図である。
【図2】本発明の製造装置及び製造方法を説明する概略構成図である。
【図3】接続セル及び被接続セルの温度を示している説明図(第一実施形態)である。
【図4】接続セル及び被接続セルの温度を示している説明図(第二実施形態)である。
【図5】従来技術を説明する説明図である。
【図6】従来技術による問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の太陽電池モジュールの製造装置によって製造される太陽電池モジュールの一部を示す説明図である。まず、太陽電池モジュールM(以下、単にモジュールMともいう)の構成について説明する。
【0017】
このモジュールMは、複数の太陽電池セル7(以下、単にセル7ともいう)が一方向に並んで設けられていて、これら複数のセル7の両側に電極31が設けられている。これらセル7及び電極31は、その両面からカバー部材32によって挟まれ、モジュールMは一体のシート状を成している。両面のカバー部材32は、可撓性を有し太陽光を透過させるフィルム状の樹脂部材から成り、セル7及び電極31の表面及び裏面に密着した状態となっている。
【0018】
各セル7は、導電性を有する導電性基板7a上に、下部電極層7b、半導体層7c及び上部電極層7dがこの順で積層されて構成されている。
隣り合うセル7,7同士は、その縁部7e,7eにおいて重ね合わされた状態にあり、この重ね合わされた縁部7e,7eにおいて電気的及び構造的に接続されている。なお、この重ね合わされた縁部7e,7eを、重ね合わせ部8と呼ぶ。縁部7e,7eを接合するために、本実施形態では、接合金属が介在していて、具体的には、接合金属は半田(半田ボール)5から成る。半田5は、縁部7eに沿って点在している。なお、本実施形態では、上側にあるセル7と半田5との間、及び、この半田5と下側にあるセル7との間には、導電膜9が介在しているが、導電膜9を介在させない場合であってもよい。
【0019】
各セル7は、その配列方向と平行な方向が短尺方向となり、当該配列方向と直交する方向が長尺方向となる短冊形状(細長い薄板形状)を有していて、長尺側にある縁部7eによって前記重ね合わせ部8が構成される。なお、配列方向両端部におけるセル7それぞれは、電極31と電気的及び構造的に接続されている。
【0020】
以上のような複数枚の太陽電池セル7を有する太陽電池モジュールMを製造するためには、図2(a)に示しているように、一方向(図2では左右方向)に向かってモジュールMが順次長くなるように、隣り合うセル7,7の縁部7e,7e同士を重ね合わせ、温度に応じて固化する半田5によって、これら縁部7e,7e同士を接合すればよい。
なお、図2(a)では、既に複数枚(7枚)のセル7が接続されていて、これらを半製品20と呼ぶ。そして、図2(a)は、この半製品20に対して、上から新たにセル7を接続しようとしている状態を示していて、この新たなセル7を接続セル11と呼び、半製品20側に存在していて接続セル11が接続されるセルを被接続セル21と呼ぶ。
【0021】
モジュールMを製造するための製造装置は、図2(b)に示しているように、上部の第一ヒータ1と、下部の第二ヒータ2と、第一ヒータ1と第二ヒータ2との内の少なくとも一方を制御対象ヒータとして温度制御する制御装置3とを備えている。
第一ヒータ1と第二ヒータ2とは、発熱部が上下で対向する配置にあり、重ね合わせ部8に沿って長い形状を有している。そして、第一ヒータ1と第二ヒータ2との間に、前記半製品20及び接続セル11が設けられ、半田5を用いた接続処理が、図示している製造装置により実行される。
【0022】
第一ヒータ1は、発熱することで、新たに接続する接続セル11の縁部7eを介して、半田5を加熱する。第一ヒータ1の発熱を停止させると、接続セル11の温度を低下させることが可能となる。本実施形態の第一ヒータ1は、シーズヒータから成る。
第二ヒータ2は、発熱することで、半製品20側に存在していて前記接続セル11が接続される被接続セル21の縁部7eを介して、半田5を加熱する。さらに、第二ヒータ2の発熱を停止させると、被接続セル21の温度を低下させることが可能となる。本実施形態の第二ヒータ2は、セラミックヒータから成り、第一ヒータ1よりも急加熱及び急冷却が可能となる高応答性ヒータである。
【0023】
制御装置3は、処理装置(CPU)及び記憶装置を有するコンピュータによって構成されている。記憶装置には、所定のコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムを前記処理装置(CPU)が実行することで、制御装置3は、第一ヒータ1と第二ヒータ2とを制御対象ヒータとして温度制御する機能を有する。制御装置3は、第一ヒータ1及び第二ヒータ2に対して、発熱状態と発熱停止状態とを切り替える制御を行う。
【0024】
図3は、制御装置3がヒータの制御を実行することによる接続セル11及び被接続セル21の温度を示している説明図である。縦軸は、接続セル11及び被接続セル21の温度を示しており、半田5の反応温度、すなわち凝固温度(凝固点)をTfで示している。
制御装置3は、第一ヒータ1及び第二ヒータ2を発熱させ、接続セル11及び被接続セル21の縁部7e,7e(重ね合わせ部8)の温度を、凝固温度Tfよりも高い温度T1に上昇させる(加熱工程)。上昇温度T1は接続セル11と被接続セル21との間でほぼ同じである。
【0025】
その後、制御装置3は、第一ヒータ1及び第二ヒータ2の両者の発熱を停止させる。これにより、冷却工程が開始され、接続セル11は第一の勾配C1で温度が低下し始め、被接続セル21は第一の勾配C1よりも大きな第二の勾配C2で温度が低下し始める。これは、接続セル11と被接続セル21との材質は同じであるが、前記のとおり(図2(a)に示しているように)被接続セル21は、既に他のセル7と接続され半製品20となっていることから、その表面積が接続セル11よりも大きく、このため被接続セル21側(半製品20)の放熱量は、1枚のみからなる接続セル11の放熱量よりも大きくなるためである。
【0026】
そこで、制御装置3は、前記冷却工程において、半田5が縁部7e,7e同士を接合する凝固温度Tfの手前温度Ts(Ts>Tf)で、接続セル11と被接続セル21との温度を揃えるために、第二ヒータ2を再び発熱状態として被接続セル22の温度を所定時間Δt1について手前温度Tsに維持させる。なお、本実施形態では、制御装置3は、第一ヒータ1も再度発熱状態として接続セル11の温度を所定時間Δt2(Δt2<Δt1)について手前温度tsに維持させる。
本実施形態の手前温度Tsでは、半田5は溶融した状態にある。また、手前温度Tsは、凝固温度Tfよりも5℃の範囲内で高温となる温度である(Tf<Ts≦Tf+5℃)。さらに、接続セル11と被接続セル21との温度を手前温度Tsに揃えるが、この「揃える」には、完全に同一の温度に揃える場合の他に、接続セル11と被接続セル21との内の一方の温度が手前温度Tsになった際に、他方の温度との差が5℃の範囲で揃える場合も含む。
なお、図3によれば、接続セル11及び被接続セル21の縁部7e,7eを温度T1に上昇させる前記加熱工程の途中でも、縁部7e,7eの温度が手前温度Tsに揃っているが、この加熱工程では必ずしも揃っている必要はなく、本実施形態では、前記のとおり冷却工程において、縁部7e,7eの温度を手前温度Ts(Ts>Tf)で揃える必要がある。
【0027】
この制御により、接続セル11と被接続セル21との温度を手前温度Tsとして揃えることができ、このようにして温度を揃えてから、制御装置3は、接続セル11と被接続セル21との温度が、凝固温度Tfに到達する(下に超える)ように調整すべく、第一ヒータ1及び第二ヒータ2の制御を行う。すなわち、接続セル11と被接続セル21との温度を手前温度Tsに揃え終わると(時刻ta)、第一ヒータ1及び第二ヒータ2の両者の発熱を停止する。凝固温度Tfに到達する(下に超える)と、半田5は凝固した状態となる。なお、この冷却工程では、接続セル11と被接続セル21との温度を、凝固温度Tfよりも下に超えさせるが、その冷却は、自然冷却でもよく、強制的な冷却であってもよい。
【0028】
この制御によれば、接続セル11と被接続セル22とで放熱量が異なっていても、同じ手前温度Tsであれば、その温度Tsから温度が低下し始めた直後では、両者の温度差は極めて小さいため、当該手前温度Tsから温度が低下し始めた直後に到達する凝固温度Tfにおいて、接続セル11と被接続セル21との温度を同一(又は温度差を僅か)とすることができる。したがって、接続セル11と被接続セル21との温度差が僅かな状態(又は同一の状態)として、縁部7e,7e同士を、凝固温度Tfに到達させることができる。
これにより、半田5によって接続セル11と被接続セル21とが接続される際、両者の熱膨張による伸び量が同等であり、冷却後の縮み量も同等とすることが可能となる。この結果、太陽電池モジュールMに反りが発生するのを防止することができる。
【0029】
図4は、制御装置3によって実行される温度制御の他の実施形態を説明する説明図である。図4は、図3と同様に、接続セル11及び被接続セル21の温度を示している。
図4の場合、第一ヒータ1及び第二ヒータ2の両者を制御装置3が温度制御してもよいが、第一ヒータ1については制御装置3の機能に寄らずに、当該第1ヒータ1に付属している例えばタイマーやサーモスタットの機能により、接続セル11が温度T1となるまで第一ヒータ1は発熱し、その後、凝固温度Tfを経てさらに温度が低下するまで発熱を停止し続けるように構成してもよい。この場合、第二ヒータ2のみが、制御装置3による温度制御を行う制御対象ヒータとなる。
【0030】
図4の場合について説明する。第一ヒータ1及び第二ヒータ2は発熱し、接続セル11及び被接続セル21の縁部7e,7e(重ね合わせ部8)の温度を、凝固温度Tfよりも高い温度T1に上昇させる。上昇温度T1は、接続セル11と被接続セル21との間でほぼ同じである。
その後、第一ヒータ1及び第二ヒータ2の両者の発熱を停止させる。これにより、接続セル11は第一の勾配C1で温度が低下し始め、被接続セル21は第一の勾配C1よりも大きな第二の勾配C2で温度が低下し始める。
なお、第一ヒータ1は、これ以後、発熱しないため、接続セル11は、凝固温度Tfを超えるまで及び超えてからも、一定の温度勾配C1で冷却される。
【0031】
これに対して、制御装置3は、冷却工程の開始後、凝固温度Tfの手前温度Ts(Ts>Tf)で被接続セル21の温度を接続セル11の温度に揃えるために、第二ヒータ2を段階的に発熱状態として、温度低下が遅い接続セル11の温度に対して、被接続セル21の温度を手前温度Tsで合わせる制御を行う。
この制御により、接続セル11と被接続セル21との温度を手前温度Tsで揃えることができ、このようにして温度を揃えてから、制御装置3は、接続セル11と被接続セル21との温度が、凝固温度Tfに到達する(下に超える)ように、第二ヒータ2の制御を行う。すなわち、第二ヒータ2に対して、発熱状態及び発熱停止状態を複数回繰り返し行う制御を行うことにより、被接続セル21の温度が手前温度Tsに到達するのを遅らせ、被接続セル21の温度低下を、接続セル11の温度低下に追従させている。
【0032】
このように、接続セル11の温度に、被接続セル21の温度を追従させるためには、当該被接続セル21の縁部7eを加熱する第二ヒータ2が、第一ヒータ1よりも急加熱及び急冷却が可能となる高応答性ヒータとする必要がある。そして、制御装置3は、被接続セル21の温度を段階的に変化させて凝固温度Tfに到達させるように、高応答性ヒータである第二ヒータ2を制御すればよい。
【0033】
この制御により、前記の場合(図3の場合)と同様、接続セル11と被接続セル21との温度差が僅かな状態(又は同一の状態)として、縁部7e,7e同士を、凝固温度Tfに到達させることができる。
これにより、半田5によって接続セル11と被接続セル21とが接続される際、両者の熱膨張による伸び量が同等であり、冷却後の縮み量も同等とすることが可能となる。この結果、太陽電池モジュールMに反りが発生するのを防止することができる。
【0034】
なお、図3の場合であっても、図4の場合と同様に、制御装置3の機能に寄らずに、当該第1ヒータ1に付属している例えばタイマーやサーモスタットの機能により、接続セル11が温度T1となるまで第一ヒータ1は発熱し、その後、凝固温度Tfを経てさらに温度が低下するまで発熱を停止し続けるように構成してもよい。この場合、図3に示している時間帯Δt2は生じない。そして、接続セル11の温度が温度T1から直線的に低下する変化が生じるが、手前温度Tsで被接続セル21の温度を第二ヒータ2によって維持していることから、当該手前温度Tsで接続セル11と被接続セル21との温度が揃った段階で、両者の温度を低下開始させれば、接続セル11と被接続セル21との両者の縁部7e,7eの温度差を、僅かな状態で凝固温度Tfに到達させることができる。
【0035】
前記のとおり(図2(a)参照)、接続セル11に比べて、被接続セル21が接続されている半製品20は表面積が大きく放熱量が多いことから、被接続セル21の温度低下速度は接続セル11よりも早い。しかし、この被接続セル21を加熱する第二ヒータ2が、制御装置3による制御対象ヒータとなり、この第二ヒータ2によって被接続セル21の温度を制御すれば、接続セル11と被接続セル21との温度を揃えることができる。
【0036】
さらに、半製品20の大きさは、セル7の接続枚数に応じて変化する。この場合、被接続セル21側における温度降下速度も、接続枚数に応じて変化する。しかし、このような場合であっても、図4に示しているように、凝固温度Tfまで段階的に被接続セル21の温度を低下させるように制御していて、しかも、この段階の数、すなわち第二ヒータ2を発熱状態とする回数や、発熱状態の継続時間を、制御装置3が前記接続枚数に応じて変更すればよい。そして、このような段階の数や継続時間は、予め制御装置3が記憶している制御プログラムに設定されており、セル7の接続枚数が異なる毎に細かな温度設定は不要となる。
【0037】
また、本実施形態では、高応答性ヒータは一方(第二ヒータ2)のみでよく、第一ヒータ11をシーズヒータ等の比較的安価なものを採用している。このため、製造装置のコストダウンに貢献することができる。
また、図2(a)に示しているように、面積が大きくなっていく半製品20側の被接続セル21を加熱するヒータを、高応答性ヒータとすることにより、好ましい製造装置となる。これは、被接続セル21側の方が、放熱性が高いことから温度変化が大きくなるが、被接続セル21の温度を迅速に昇温させて手前温度Tsに調整しやすくなるためである。
【0038】
さらに、図2(a)に示しているように、接合前の半田5(例えば半田ボール)は、半製品20側である被接続セル21の縁部7e上に間隔を有して載った状態となり、ヒータ1,2間に配置される。このため、下側にある被接続セル21を加熱するヒータを、高応答性ヒータとするのが好ましい。すなわち、半田5が載った状態にある被接続セル21を加熱するヒータは、予め、凝固温度Tfから大きく離れて低い温度となっている必要があるが、この被接続セル21を加熱するヒータを高応答性ヒータとすることで、迅速に被接続セル21を昇温させることができ、作業効率が良い。これに対して、当初より半田5が載った状態とはならない上側の接続セル11を加熱するヒータは、凝固温度Tf付近の温度に維持されていればよく、コンスタントヒータとすることができる。
【0039】
なお、前記各実施形態において、接続セル11及び被接続セル21の温度を管理しているが、このために、製造装置は、両者の温度を常時又は定期的に検出する温度センサ(図示せず)を備えていてもよいが、一度モジュールMを製造する際に、接続セル11及び被接続セル21の温度を検出することで、以後、その検出した温度に対して予めヒータの発熱タイミング等の設定を行い、その設定をプログラムに組み込めば、温度センサを不要とすることができる。
【0040】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、太陽電池セル同士を接合するための接合材を、本実施形態では、接合金属として半田5を用いた場合を説明したが、これ以外であってもよく、温度に応じて固化する材料であればよい。例えば、導電性の良い熱可塑性樹脂とすることができる。
【0041】
また、前記接合材は、凝固温度より高温な状態から、温度が低下することで凝固するもの以外に、温度が上昇して硬化温度に達すると硬化してセル同士を接合させるもの(例えば、導電性の良い熱硬化性樹脂)であってもよい。この場合、前記制御装置3によるヒータの温度制御は、冷却工程ではなく加熱工程で行う必要があり、接合材は加熱(昇温)により反応して接合させるものであることから、接合材の反応温度は硬化温度となり、手前温度は硬化温度よりも低温となる。
【0042】
また、制御装置3は、第一ヒータ1と第二ヒータ2との内の少なくとも一方を制御対象ヒータとして温度制御すればよく、放熱量は接続セル11の方が小さいが、被接続セル21側が、ヒータの温度低下が遅くその影響を受け、結果として被接続セル21の方が、温度低下速度が遅くなる場合、接続セル11を加熱する第一ヒータ1を制御対処ヒータとする必要がある。
【符号の説明】
【0043】
1:第一ヒータ、 2:第二ヒータ、 3:制御装置(制御部)、 5:半田(接合材)、 7:太陽電池セル、 7e:縁部、 11:接続セル、 20:半製品、 21:被接続セル、 M:太陽電池モジュール、 Tf:凝固温度(反応温度)、 Ts:手前温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの縁部同士を重ね合わせ、温度に応じて固化する接合材によって前記縁部同士を接合することにより、複数枚の前記太陽電池セルを有する太陽電池モジュールを製造する製造装置であって、
新たに接続する前記太陽電池セルである接続セルを加熱する第一ヒータと、
複数枚の前記太陽電池セルが接続されて形成される半製品のうち前記接続セルが接続される被接続セルを加熱する第二ヒータと、
前記第一ヒータと前記第二ヒータとの内の少なくとも一方を制御対象ヒータとして制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記接合材によって前記縁部同士を接合させる反応温度の手前温度で、前記接続セルと前記被接続セルとの温度を揃えてから、当該反応温度に到達するように前記制御対象ヒータを制御することを特徴とする太陽電池モジュールの製造装置。
【請求項2】
前記第二ヒータが、前記制御対象ヒータである請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造装置。
【請求項3】
前記第二ヒータが、前記第一ヒータよりも急加熱及び急冷却が可能となる高応答性ヒータからなり、
前記制御部は、前記被接続セルの温度を段階的に変化させて前記反応温度に到達させるように、前記第二ヒータを制御する請求項2に記載の太陽電池モジュールの製造装置。
【請求項4】
太陽電池セルの縁部同士を重ね合わせ、温度に応じて固化する接合材によって前記縁部同士を接合することにより、複数枚の前記太陽電池セルを有する太陽電池モジュールを製造する製造方法であって、
新たに接続する前記太陽電池セルである接続セルを加熱すると共に、複数枚の前記太陽電池セルが接続されて形成される半製品のうち前記接続セルが接続される被接続セルを加熱し、前記接合材によって前記縁部同士を接合させる際に、
前記接合材によって前記縁部同士を接合させる反応温度の手前温度で、前記接続セルと前記被接続セルとの温度を揃えてから、当該反応温度に到達するように、当該接続セルと当該被接続セルとの温度を調整することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−71300(P2011−71300A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220860(P2009−220860)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】