説明

太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュール

【課題】本発明は、優れた拡散反射性により発電効率が促進され、かつ耐久性に優れた太陽電池モジュール用バックシートの提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明は、熱溶着によって太陽電池モジュールの裏面側に積層される太陽電池モジュール用バックシートであって、シート状に形成されたバックシート本体と、このバックシート本体の表面に積層され、熱によって発泡する複数の発泡剤及びこの発泡剤のバインダーを含む発泡剤層とを備える。太陽電池モジュールに熱融着されると発泡剤層の発泡剤が発泡して気泡が形成される。この気泡によって光が屈折及び反射するので、太陽電池セルの間を透過した光を太陽電池セルに効果的に再帰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を構成するユニットである太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題に対する意識の高まりから、クリーンエネルギー源としての太陽光発電が注目され、種々の形態からなる太陽電池が開発されている。この太陽電池は、一般的には直列又は並列に配線された複数枚の太陽電池セルをパッケージングし、ユニット化した複数の太陽電池モジュールから構成されている。
【0003】
上記太陽電池モジュールは、屋外で長期間使用し得る十分な耐久性、耐候性等が要求される。図4に示すように、一般的な太陽電池モジュール61の具体的な構造としては、ガラス等からなる透光性基板62と、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂からなる充填剤層63と、光起電力素子としての複数枚の太陽電池セル64と、上記充填剤層63と同様の充填剤層65と、太陽電池モジュール用バックシート66とがこの順に積層され、真空加熱ラミネーション法等により一体成形されている。上記太陽電池モジュール用バックシート66は、耐候性、耐久性、ガスバリア性等が要求されているため、従来、ガスバリア性を発現する無機物層67の表面及び裏面を一対の合成樹脂層68でサンドイッチした積層体が採用されている。
【0004】
この太陽電池モジュール用バックシート66にあっては、太陽電池セル64同士の間を通過して合成樹脂層68に入射した光が一部反射するものの、反射性があまり高くなく、しかも合成樹脂層68の表面が平面なので入射光がほぼ正反射するため、反射光が太陽電池セル64に再帰しにくく、このため太陽電池モジュール用バックシート66では、入射した太陽光線を効率的に利用できていない。
【0005】
この点に鑑みて、白色ポリエチレンテレフタレート層の上に、球状粒子を樹脂に含有してなる球状粒子含有層を配設した太陽電池モジュール用バックシートが提案されている(特開2009−302361号公報参照)。しかしながら、この太陽電池モジュール用バックシートにあっても、実際には太陽光線を十分に利用できていない。これは、球状粒子含有層の樹脂から球状粒子に光が入射した際に、樹脂と粒子との屈折率差によって光は屈折されるが、この光が再度球状粒子から樹脂へ入射されると上記屈折率差によって再度光が屈折され、このため十分な光の屈折がなされていないことが考えられる。このため、上記粒子の存在にかかわらず、結果としてほぼ正反射に近い反射となり、太陽電池セルに再帰できないためと考えられる。よって、この太陽電池モジュール用シートを用いても、太陽電池セルに再帰する割合が低く、入射した太陽光線を十分に利用できていない。
【0006】
なお、耐用年数が経過した太陽電池モジュールから剥離された太陽電池モジュール用バックシートは一般的に焼却処分されるが、通常太陽電池モジュール用バックシートは樹脂製であるので焼却によって二酸化炭素が発生する。しかし、そもそも太陽電池モジュールはクリーンエネルギーを生成することを目的とするものであるので、上記焼却により発生する二酸化炭素量が少ないことが望まれる。
【0007】
この点に鑑みて、内部に気泡を有する発泡ポリエチレンテレフタレートシート(以下、単に発泡PETシートということがある)をバックシート本体に積層した太陽電池モジュール用バックシートが提案されている。この太陽電池モジュール用バックシートは、気泡の存在する分(体積)だけ使用される樹脂量が少なくなるため、焼却時に二酸化炭素の発生量が減少する。しかし、発泡PETシートに含有される気泡は僅かであるため、気泡の存在による二酸化炭素の減少量は僅かである。さらに、上記のように含有される気泡は僅かであるので、気泡によって光の拡散や反射が多少起こると考えられるものの、太陽光線を効率的に利用できるとは到底言えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−302361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、優れた光拡散反射性により発電効率が促進される太陽電池モジュール用バックシート、及びこれを用いた太陽電池モジュールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、熱溶着されることにより太陽電池モジュールの裏面側に配設される太陽電池モジュール用バックシートであって、シート状に形成されたバックシート本体、及びこのバックシート本体の表面に積層され、熱によって発泡する複数の発泡剤とこの複数の発泡剤のバインダーとを含む発泡剤層を備えることを特徴とする。
【0011】
当該太陽電池モジュール用バックシートにあっては、熱溶着されて太陽電池モジュールの裏面側に積層されると、この熱融着時の熱によって発泡剤層の発泡剤が発泡する。これにより当該太陽電池モジュール用バックシートの表面側の熱融着部分において、上記発泡剤の発泡による気泡が形成されることになる。このため、当該太陽電池モジュール用バックシートを積層することにより太陽電池セルの間を透過した光を、上記気泡によって屈折及び反射することができる。特に、気泡の内部は気体であり屈折率が低いため、気泡の周囲の樹脂との屈折率差が大きく、これによって気泡を通過する光を大きく屈折できるとともに、気泡に入射する光を反射しやすい。このため、上記太陽電池セルの間を通過した光を太陽電池セルに効果的に再帰させることができ、これにより太陽電池モジュールの光電変換効率を高め、発電効率を高めることができる。特に、この気泡は、バインダーによってバックシート本体に固着された発泡剤から形成されるので、従来の発泡PETシートの気泡と異なり太陽電池セルに光を再帰させるに十分な数又は/及び大きさの気泡を得ることができ、この気泡が光の拡散及び反射に十分に寄与し、上述のような発電効率の向上が図られる。
【0012】
また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、発泡剤が、バインダーの平均界面よりも表面側に突出するよう配設されていることが好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシートを積層する際に、当該太陽電池モジュール用バックシートに対面する例えば充填材層が溶融されると、上記発泡剤は表面側に突出するよう配設されているため、上記充填材層の裏面の溶融部分に発泡剤の少なくとも一部が侵入するような状態で発泡剤が発泡することになる。このように太陽電池セルに近い箇所に気泡が形成されるので、この気泡と太陽電池モジュールの裏面との界面によって光が反射及び屈折し、これにより、太陽電池セルの間を透過した光を拡散して、より効果的に太陽電池セルに再帰させることができる。
【0013】
上記構成を採用する場合には、バインダーの平均界面からバックシート本体までの距離が、発泡剤の平均粒子径の50%以上95%以下であることが好ましい。これにより、発泡剤の底部がバックシート本体の表面と実質的に接した状態で、発泡剤の上部がバインダーの平均界面より表面側に突出するので、発泡剤により形成される気泡を上述のように太陽セルに近い箇所に位置させることができる。
【0014】
さらに、当該太陽電池モジュール用バックシートは、発泡剤層が、バインダーの形成材料であるポリマー組成物に発泡剤を含有する塗工液の塗工により形成されている構成を採用することが好ましい。かかる構成を採用すれば、塗工によって発泡剤層を容易且つ確実に形成することができ、さらにこのように発泡剤層を形成した当該太陽電池モジュール用バックシートを太陽電池モジュールに熱融着することによって上述の利点を有する気泡を形成することができる。なお、塗工液に含有される発泡剤の割合を調整することによって、発泡剤がバインダーの平均界面よりも表面側に突出した発泡剤層を容易且つ確実に形成することができる。
【0015】
また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、バックシート本体が、最表面にポリエチレンを主成分とする熱融着層を有する構成を採用することが好ましい。これにより、熱融着時においてポリエチレンを主成分とする熱融着層が溶融され、熱融着部の溶融部分に発泡剤の底部側が侵入するような状態で発泡剤が発泡することになる。これにより、気泡の底部と熱融着層との界面によって光を拡散及び反射させることができる。
【0016】
さらに、当該太陽電池モジュール用バックシートは、発泡剤が、熱分解型発泡剤である構成を採用することが好ましい。これにより、太陽電池モジュール用バックシートと太陽電池モジュールとが熱融着される際に、この熱融着時の熱によって熱分解型発泡剤が発泡して、この熱融着部分に気泡を形成することができる。
【0017】
上記熱分解型発泡剤としては、熱分解により窒素を放出するものが好適に用いられる。これにより形成される気泡の内部の気体が窒素となるので、仮に気泡が太陽電池セル等と接した位置に形成されたとしても、窒素は不活性ガスであるので太陽電池セル等に悪影響を与えない。
【0018】
また、上記熱分解型発泡剤の分解温度が、100℃以上240℃以下であることが好ましい。これにより、通常の太陽電池モジュールと太陽電池モジュール用バックシートとの熱融着処理の処理温度と同等もしくは若干高い温度で熱分解型発泡剤を発泡させることができ、上記熱融着処理と略同時に上記発泡を行うことができる。
【0019】
さらに、当該太陽電池モジュール用バックシートは、発泡剤が熱発泡性マイクロカプセルである構成を採用することが好ましい。これにより、太陽電池モジュール用バックシートと太陽電池モジュールとが熱融着される際に、この熱融着時の熱によって熱発泡性マイクロカプセルが膨張して、この熱融着部分に内部に気泡を有する熱発泡性マイクロカプセルを配設することができる。
【0020】
さらに、上記課題を解決するためになされた本発明のバッシート付き太陽電池モジュールは、上記構成からなる当該太陽電池モジュール用バックシートと、この太陽電池モジュール用バックシートの表面に熱融着された充填材層と、この充填材層内に配設される太陽電池セルと、充填層の表面に配設される透光性基板とを備えている。
【0021】
これにより、太陽電池セルの間を透過した光を、発泡剤の発泡により形成された気泡によって太陽電池セルに効果的に再帰させることができ、これにより光電変換効率を高め、発電効率を高めることができる。
【0022】
上記説明において、「表面」とは、太陽電池モジュール及びこれを構成する太陽電池モジュール用バックシートの受光側の面を意味する。また、「裏面」とは、この「表面」の反対側の面を言う。また、「バインダーの平均界面からバックシート本体までの距離」とは、JIS−K−7130に規定される5.1.2のA−2法により測定した値の平均値である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールによれば、気泡による優れた光拡散反射性によって、発電効率が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール用バックシートを示す模式的断面図
【図2】図1の太陽電池モジュール用バックシートを積層接着する前の状態の太陽電池モジュールを示す模式的断面図
【図3】図1の太陽電池モジュール用バックシートを積層接着した状態の太陽電池モジュールを示す模式的断面図
【図4】従来の一般的な太陽電池モジュールを示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参酌しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1の本実施形態の太陽電池モジュール用バックシート1(以下、バックシートということがある)は、シート状に形成されたバックシート本体2と、このバックシート本体2の表面に積層された発泡剤層7とを備えている。
【0027】
<バックシート本体2>
このバックシート本体2は、種々の形態のものが採用可能であるが、例えば、表面側基材層3と、この表面側基材層3の表面に積層された熱融着層4と、表面側基材層3の裏面に積層されたガスバリア層5と、このガスバリア層5の裏面に積層された裏面側基材層6とを備えたものを採用することが可能である。
【0028】
(表面側基材層3)
表面側基材層3は、合成樹脂を主成分として形成されている。この表面側基材層3の主成分の合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。上記樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性等を有するポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0029】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0030】
上記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0031】
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばa)シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、b)当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
【0032】
なお、表面側基材層3の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また表面側基材層3の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤8、防カビ剤、顔料等が挙げられる。上記表面側基材層3の成形方法としては、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法が採用される。
【0033】
表面側基材層3の厚さ(平均厚さ)の下限としては、25μmが好ましく、50μmが特に好ましい。一方、表面側基材層3の厚さの上限としては、250μmが好ましく、188μmが特に好ましい。表面側基材層3の厚さが上記下限未満であると、当該太陽電池モジュール用バックシート1の積層の際の取扱いが困難になり、また後述する顔料の含有による表面側基材層3の着色及びその機能性が不十分になる等の不都合が発生する。逆に、表面側基材層3の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0034】
表面側基材層3中に顔料を分散含有するとよい。このように表面側基材層3中に顔料を分散含有することで、表面側基材層3ひいては当該太陽電池モジュール用バックシート1の耐熱性、耐候性、耐久性、熱的寸法安定性、強度等の諸特性を向上することができる。また、表面側基材層3中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。さらに、表面側基材層3中に黒色顔料等を分散含有し、表面側基材層3を種々の色に着色することで、太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。
【0035】
この白色顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸鉛、硫酸バリウムなどを使用することができる。中でも、合成樹脂層を形成する樹脂材料中への分散性に優れ、合成樹脂層の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が比較的大きい炭酸カルシウムが好ましい。この炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、バテライトなどの結晶タイプがあり、どの結晶タイプでも使用できる。この炭酸カルシウムは、ステアリン酸、ドデジシルベンゼンスルホン酸ソーダ、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等で表面処理されていてもよく、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の不純物が10%以下程度含まれていてもよい。その他の顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料、ウルトラマリン,紺青等の青色顔料、べんがら(酸化鉄赤),カドミウムレッド,モリブデンオレンジ等の赤色顔料、メタリック光沢を与える金属粉顔料などが挙げられ、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する。
【0036】
上記顔料の平均粒子径の下限としては、100nmが好ましく、300nmがより好ましい。一方、上限としては、30μmが好ましく、3μmがより好ましい。顔料の平均粒子径が上記下限未満だと、凝集等により表面側基材層3中への均一な分散が困難になるおそれがある。一方、上記上限を超えると、表面側基材層3に対する耐熱性等の諸特性向上効果が低下するおそれがある。
【0037】
上記顔料の含有量(表面側基材層3全体における濃度)の上限としては、8質量%が好ましく、より好ましくは15質量%である。一方、下限としては、30質量%が好ましく、より好ましくは20質量%である。顔料の含有量が上記下限より小さいと、表面側基材層3の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が小さくなる。一方、上記上限を超えると、表面側基材層3中での顔料の分散性が低下し、表面側基材層3の強度の低下を招来するおそれがある。
【0038】
(熱融着層4)
上記熱融着層4は、当該バックシート1を積層接着して太陽電池モジュールを形成すべく加熱されることにより溶融する樹脂層であり、例えばエチレン系重合体を主成分とする樹脂層から構成することができる。
【0039】
このエチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−ビニルエステル共重合体等を使用することができる。これらは1種単独で使用することも可能であり、また2種以上を併用することも可能である。
【0040】
上記エチレン−αオレフィン共重合体を構成するαオレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を用いることができる。
【0041】
上記エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル等を用いることができる。
【0042】
上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を構成する(メタ)アクリル酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン等を用いることができる。
【0043】
上記エチレン−ビニルエステル共重合体を構成するビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を用いることができる。
【0044】
さらに、エチレン系重合体に、グリシジル基、シラノール基、アミノ基等の反応性官能基を有する化合物が共重合されたものも用いることができる。
【0045】
また、熱融着層4の形成材料中に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を混合することも可能である。この場合、この添加材(紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤の何れか1つ又は複数)が高分子固定型であることが好ましい。この添加材としては、バックシートにおいて従来から用いられている添加剤を用いることも可能である。例えば、有機過酸化物、架橋助剤、シランカップリング剤等の添加材を熱融着層4の形成材料中に混合することが可能である。
【0046】
上記有機過酸化物としては、反応性の観点から、半減期10時間の分解温度が145℃以下のものを採用することが好ましい。この半減期10時間の分解温度が145℃以下の有機過酸化物としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等を用いることができる。これら有機過酸化物は、1種単独で用いることも可能であり、また2種以上を併用することも可能である。
【0047】
この有機過酸化物の配合量は、エチレン系重合体100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以内が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上2.0質量部以下である。有機過酸化物の配合量が上記下限未満の場合には、架橋構造の形成が不十分となる可能性があり、また上記上限を超えると、過度の反応が起こってしまい分解等によってエチレン系重合体の劣化が生ずるおそれがある。
【0048】
上記架橋助剤は、エチレン系重合体の架橋度を高めることにより、熱融着層4の機械的強度等を向上させるための助剤である。この架橋助剤としては、例えば(メタ)アクリロキシ基を含有する化合物、アリル基を含有する化合物等を用いることができる。
【0049】
(メタ)アクリロキシ基を含有する化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アミド等を用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基としては、例えばメチル、エチル、ドデシル等を用いることができる。
【0050】
架橋助剤の配合量は、エチレン系重合体100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以内であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上2.0質量部以内である。架橋助剤の配合量が上記下限未満の場合、架橋構造の形成が不十分となる可能性があり、また上記上限を超えると過度の反応によってエチレン系重合体が劣化するおそれがある。
【0051】
さらに、エチレン系重合体に光重合開始剤を添加して、光重合を行うよう設けることも可能である。
【0052】
この光重合開始剤としては、例えば水素引き抜き型や内部開裂型のものを用いることができる。
【0053】
水素引き抜き型(二分子反応型)の光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントン等を用いることができる。
【0054】
また、内部開裂型の光重合開始剤としては、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール等を用いることができる。また、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン型重合開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン型重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド等を用いることができる。
【0055】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、エチレン系重合体100質量部に対して0.1質量部以上5質量部であることが好ましい。シランカップリング剤の配合量が上記下限未満の場合、接着性が低下するおそれがあり、また上記上限を超えると、充分な耐熱性、耐光性、耐候性が得られないおそれがある。
【0056】
熱融着層4の厚さ(平均厚さ)の下限としては、20μmが好ましく、より好ましくは50μmである。一方、上限としては、300μmが好ましく、より好ましくは150μmである。熱融着層4の厚さが上記下限未満である場合、当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分となるおそれがあり、また、上記上限を超える場合、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0057】
(ガスバリア層5)
上記ガスバリア層5は、水素ガス、酸素ガス等のガスの透過を低減する機能を有する層である。このガスバリア層5は、基材フィルム(図示省略)と、この基材フィルムに積層された無機酸化層(図示省略)とを備えている。
【0058】
このガスバリア層5の基材フィルムは、合成樹脂を主成分として形成されている。この基材フィルムの主成分の合成樹脂としては、上記表面側基材層3と同様の合成樹脂が用いられ、中でも耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また基材フィルムの成形方法や基材フィルムの形成材料中の添加剤等に関しては上記表面側基材層3と同様である。
【0059】
上記基材フィルムの厚さ(平均厚さ)の下限としては、7μmが好ましく、10μmが特に好ましい。一方、基材フィルムの厚さの上限としては、20μmが好ましく、15μmが特に好ましい。基材フィルムの厚さが上記下限未満であると、無機酸化物層を形成するための蒸着加工の際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、基材フィルムの厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0060】
無機酸化物層は、酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を発現するための層であり、基材フィルムの裏面に無機酸化物を蒸着することで形成される。この無機酸化物層を形成する蒸着手段としては、合成樹脂製の基材フィルムに収縮、黄変等の劣化を招来することなく無機酸化物が蒸着できれば特に限定されるものではなく、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)が採用される。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質な無機酸化物層が形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
【0061】
無機酸化物層を構成する無機酸化物としては、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば酸化アルミニウム、酸化シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム等が用いられ、中でもガスバリア性及び価格面のバランスが良好な酸化アルミニウム又は酸化シリカが特に好ましい。
【0062】
無機酸化物層の厚さ(平均厚さ)の下限としては、3Åが好ましく、400Åが特に好ましい。一方、無機酸化物層の厚さの上限としては、3000Åが好ましく、800Åが特に好ましい。無機酸化物層の厚さが上記下限より小さいと、ガスバリア性が低下するおそれがある。一方、無機酸化物層の厚さが上記上限を超えると、無機酸化物層のフレキシビリティーが低下し、クラック等の欠陥が発生しやすくなる。
【0063】
無機酸化物層は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。このように無機酸化物層を多層構造とすることで、蒸着の際に懸かる熱負担の軽減により基材フィルムの劣化が低減され、さらに基材フィルムと無機酸化物層との密着性等を改善することができる。また、上記物理気相成長法及び化学気相成長法における蒸着条件は、基材フィルムの樹脂種類、無機酸化物層の厚さ等に応じて適宜設計される。
【0064】
また、基材フィルムと無機酸化物層との密接着性等を向上させるため、基材フィルムの蒸着面に表面処理を施すとよい。このような密着性向上表面処理としては、例えば(a)コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理や、(b)プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理、蒸着アンカーコート処理などが挙げられる。これらの表面処理の中でも、無機酸化物層との接着強度が向上し、緻密かつ均一な無機酸化物層の形成に寄与するコロナ放電処理及びアンカーコート処理が好ましい。
【0065】
上記アンカーコート処理に用いるアンカーコート剤としては、例えばポリエステル系アンカーコート剤、ポリアミド系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤、エポキシ系アンカーコート剤、フェノール系アンカーコート剤、(メタ)アクリル系アンカーコート剤、ポリ酢酸ビニル系アンカーコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系アンカーコート剤、セルロース系アンカーコート剤などが挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、基材フィルムと無機酸化物層との接着強度をより向上することができるポリエステル系アンカーコート剤が特に好ましい。
【0066】
上記アンカーコート剤のコーティング量(固形分換算)の下限としては、0.1g/mが好ましく、1g/mが特に好ましい。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量の上限としては、5g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。アンカーコート剤のコーティング量が上記下限より小さいと、基材フィルムと無機酸化物層との密着性向上効果が小さくなるおそれがある。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量が上記上限を超えると、当該バックシート1の強度、耐久性等が低下するおそれがある。
【0067】
なお、上記アンカーコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、基材フィルムとのブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤、耐候性等を向上させるための紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜混合することができる。かかる添加剤の混合量としては、添加剤の効果発現とアンカーコート剤の機能阻害とのバランスから0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0068】
(裏面側基材層6)
裏面側基材層6は、合成樹脂を主成分として形成されている。この耐加水分解樹脂層の主成分の合成樹脂としては、耐加水分解性及び耐熱性に優れるポリエチレンナフタレート(PEN)が用いられている。
【0069】
このポリエチレンナフタレートとは、エチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステル樹脂で、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として合成される。
【0070】
このエチレンナフタレート単位は、ポリエステルの全繰り返し単位の80モル%以上が好ましい。エチレンナフタレート単位の割合が80モル%未満となるとポリエチレンナフタレートの耐加水分解性、強度、バリア性が低下するおそれがある。
【0071】
上記ナフタレンジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、上記耐加水分解性等の面からは2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。
【0072】
裏面側基材層6は、主成分であるポリエチレンナフタレート中に、カルボジイミド化合物を含有するとよい。このようにガルボジイミド化合物を含有することで、裏面側基材層6の耐加水分解性が格段に向上する。このカルボジイミド化合物の含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が特に好ましい。このようにカルボジイミド化合物の含有量を上記範囲とすることで、裏面側基材層6の耐加水分解性を効果的に向上することができる。
【0073】
このカルボジイミド化合物としては、例えば(a)N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド等のモノカルボジイミド、及び(b)ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物が挙げられる。これらの中でも、N,N’−ジフェニルカルボジイミド及びN,N’−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましく、裏面側基材層6の耐加水分解性をより向上することができる。また、カルボジイミド化合物の分子量としては、200〜1000の範囲、特に200〜600の範囲が好ましい。分子量が上記上限を超えると樹脂中でのカルボジイミド化合物の分散性が低下し、分子量が上記下限未満であるとカルボジイミド化合物の飛散性が上昇するおそれがある。
【0074】
また、裏面側基材層6は、主成分であるポリエチレンナフタレート中に、上記カルボジイミド化合物に加えて酸化防止剤を含有するとよい。このようにポリエチレンナフタレート中にカルボジイミド化合物と酸化防止剤を共に含有することで、上記耐加水分解性が格段に向上し、さらにカルボジイミド化合物の分解も抑制することができる。この酸化防止剤の含有量としては、0.05質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。酸化防止剤の含有量が上記下限未満では、カルボジイミドの分解抑制機能及び耐加水分解性の向上効果が低下するおそれがあり、酸化防止剤の含有量が上記上限を超えると裏面側基材層6の色調が損なわれるおそれがある。この酸化防止剤としては、具体的にはヒンダードフェノール系化合物及びチオエーテル系化合物、特にヒンダードフェノール系化合物が好ましく、裏面側基材層6の耐加水分解性を効果的に向上することができる。カルボジイミド化合物の含有量に対する酸化防止剤の含有量の質量比としては、0.1以上1.0以下が好ましく、0.15以上0.8以下が特に好ましい。この質量比が上記下限未満では、カルボジイミド自体の加水分解を抑制する効果が不十分となるおそれがあり、逆に、この質量比が上記上限を越えると、カルボジイミドの加水分解を抑制する効果が頭打ちになる。なお、カルボジイミド化合物及び酸化防止剤の添加方法は、ポリエチレンナフタレートに混練する方法でも、ポリエチレンナフタレートの重縮合反応に添加する方法でもよい。
【0075】
ポリエチレンナフタレートの末端カルボキシル基量としては、10eq/T(当量/10g)以上40eq/T以下、特に10eq/T以上30eq/T以下、さらに10eq/T以上25eq/T以下が好ましい。末端カルボキシル基量が上記上限を超えるとカルボジイミド化合物による耐加水分解性の向上効果が低下するおそれがあり、末端カルボキシル基量が上記下限より小さいと生産性が低下するおそれがある。
【0076】
また、裏面側基材層6は、ポリエチレンナフタレートに加えて、芳香族ポリエステルを含有するとよい。このようにポリエチレンナフタレート中に芳香族ポリエステルを含有することで、裏面側基材層6の耐加水分解性を保持しつつ結節強度、耐デラミネーション性、機械的強度等を向上することができる。この芳香族ポリエステルの含有量としては、1質量%以上10質量%以下が好ましい。芳香族ポリエステルの含有量を上記範囲とすることで、結節強度、耐デラミネーション性、機械的強度等を効果的に向上することができる。この芳香族ポリエステルとしては、具体的にはテレフタル酸成分及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として共重合してなるポリエステルが好ましい。
【0077】
なお、ポリエチレンナフタレートの製造方法は、特に限定されるものではなく、エステル交換法、直接エステル化法等の公知の種々の方法を採用することができる。また、裏面側基材層6の成形方法や裏面側基材層6の形成材料中の添加剤等に関しては上記表面側基材層3と同様である。
【0078】
裏面側基材層6の厚さの下限としては、12μmが好ましく、25μmが特に好ましい。一方、裏面側基材層6の厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmが特に好ましい。裏面側基材層6の厚さが上記下限未満であると、ポリエチレンナフタレートの耐加水分解性による裏面側基材層6の耐久性向上効果が十分に発揮されないおそれがあり、その取扱いが困難になる等の不都合も発生する。逆に、裏面側基材層6の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0079】
(接着層)
上記のように重畳される熱融着層4、表面側基材層3、ガスバリア層5及び裏面側基材層6の各層間には接着剤層が積層されている(各図において接着層の図示は省略している)。この接着剤層によって各層が接着固定され、当該バックシート1の強度、耐久性、堅牢性等が向上し、さらに上記無機酸化物層の欠陥を封止及び保護する機能が奏される。
【0080】
接着剤層を構成する接着剤としては、ラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂が用いられる。このラミネート用接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、ホットメルトラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等が挙げられる。これらのラミネート用接着剤のなかでも、接着強度、耐久性、耐候性等に優れ、無機酸化物層表面の欠陥(例えばキズ、ピンホール、凹部等)を封止及び保護する機能を有するドライラミネート用接着剤が特に好ましい。
【0081】
上記ドライラミネート用接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル,ブチル,2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマーまたはこれらとメタクリル酸メチル,アクリロニトリル,スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂,メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム,ニトリルゴム,スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート,低融点ガラス等からなる無機系接着剤などが挙げられる。これらのドライラミネート用接着剤の中でも、当該太陽電池モジュール用バックシート1の屋外での長期間使用に起因する接着強度低下やデラミネーションが防止され、さらに接着剤層の黄変等の劣化が低減されるポリウレタン系接着剤、特にポリエステルウレタン系接着剤が好ましい。また硬化剤としては、熱黄変が少ない脂肪族系ポリイソシアネートが好ましい。
【0082】
上記溶融押出樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用する場合、より強固な接着強度を得るために、上記各フィルムの積層対向面に上述のアンカーコート処理等の表面処理を施すとよい。
【0083】
接着剤層の積層量(固形分換算)の下限としては、1g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。一方、接着剤層5の積層量の上限としては、10g/mが好ましく、7g/mが特に好ましい。接着剤層の積層量が上記下限より小さいと、接着強度や無機酸化物層の欠陥封止機能が得られないおそれがある。一方、接着剤層の積層量が上記上限を超えると、積層強度や耐久性が低下するおそれがある。
【0084】
なお、接着剤層を形成するラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂中には、取扱性、耐熱性、耐候性、機械的性質等を改良、改質する目的で、例えば溶媒、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤8、防カビ剤、顔料等の種々の添加剤を適宜混合することができる。
【0085】
<発泡剤層7>
発泡剤層7は、複数の粒子状の発泡剤8と、この発泡剤8のバインダー9とを備えており、発泡剤8が、バインダー9の平均界面よりも表面側に突出するよう設けられている。
【0086】
この発泡剤層7は、バインダー9の形成材料であるポリマー組成物に発泡剤8を含有する塗工液をバックシート本体2(熱融着層4)の表面に塗工することより形成されている。具体的には、上記発泡剤8をバインダー9の形成材料であるポリマー組成物に溶解又は分散させた塗工液を調整し、この塗工液をバックシート本体2の表面にディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等の塗工方法によって塗工して、硬化させて、発泡剤層7を形成することができる。なお、発泡剤層7の形成方法は、発泡剤8とポリマー組成物との混合物を光硬化、射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形、キャスティング等の方法を用いてフィルム状あるいはシート状に成形し、バックシート本体2の表面に接着する方法等も採用可能である。ただし、上述のように塗工によって発泡剤層7を形成することにより、表面側に発泡剤8が突出させた状態の発泡剤層7を容易且つ確実に形成することができる。
【0087】
上記発泡剤8の粒子形状は特に限定されるものではないが、略球状のものが好適に用いられる。
【0088】
また、発泡剤8の平均粒子径は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上10μm以下であり、特に好ましくは3μm以上5μm以下である。発泡剤8の平均粒子径が上記下限よりも小さい場合には、形成される気泡17が小さくなり過ぎ、十分な光拡散反射性を有さないおそれがあるとともに、表面側に発泡剤8が突出しにくくなる。一方、発泡剤8の平均粒子径が上記上限を超えると、当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分になるおそれがある。
【0089】
さらに、バインダー9の厚み(バインダー9の平均界面からバックシート本体2の表面までの距離(平均距離))は、上記発泡剤の平均粒子径の50%以上95%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以上85%以下であり、特に好ましくは70%以上75%以下である。バインダー9の厚みが上記下限よりも小さいと発泡剤8の固定が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると、熱溶融時に発泡剤8が溶融状態の太陽電池モジュールの裏面に侵入しにくくなる。
【0090】
また、発泡剤8の突出高さ(バインダー9の界面から発泡剤8の突出する端部までの平均距離)は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上5μm以下であり、特に好ましくは1.5μm以上2.5μm以下である。発泡剤8の突出高さが上記下限よりも小さいと熱溶融時に後述のように発泡剤8が溶融状態の太陽電池モジュールの裏面に侵入しにくくなり気泡17が太陽電池モジュール側に形成されにくくなり、また上記上限を超えると取扱時においてバインダー9から発泡剤8が不用意に離脱するおそれがある。
【0091】
また、発泡剤8の配合量(バインダー9の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100質量部に対する発泡剤8の固形分換算の配合量)は、2質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上50質量部以下であり、特に好ましくは15質量部以上30質量部以下である。発泡剤8の配合量が上記下限未満であると、発泡剤8の発泡により形成される気泡17の量が少なくなり、後述する気泡17の光拡散性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分となるおそれがある。
【0092】
発泡剤8の平面的存在個数(発泡剤層7の表面の単位面積当たりの発泡剤8の個数)は、10個/cm以上120個/cm以下が好ましく、より好ましくは20個/cm以上100個/cm以下、特に好ましくは30個/cm以上80個/cm以下である。発泡剤8の平面的存在個数が上記下限未満であると、発泡剤8の発泡により形成される気泡17の数が少なくなるため、後述する気泡17の光拡散性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると気泡17の数が多くなり過ぎ当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分となるおそれがある。なお、この発泡剤8は、発泡剤層7の表面に略均一に配設されている。
【0093】
(発泡剤8)
発泡剤8は、熱によって発泡する熱分解型発泡剤8を好適に用いることができる。熱分解型発泡剤8としては公知の発泡剤8から選択することができる。具体的には、オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系等を用いることができる。また、発泡促進剤等の添加剤が添加されているものを好適に用いることができる。なお、当該バックシート1の発泡剤8としては、ヒドラジド系、特にオキシベンゼンスルホニルヒドラジドが好適に用いることができ、例えば商品名ネオセルボンN#1000M(永和化成工業株式会社製)が好適に用いることができる。
【0094】
また、熱分解型発泡剤8の分解温度は、100℃以上240℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上200℃以下、特に好ましくは130℃以上170℃以下である。分解温度が上記下限値よりも低いと太陽電池モジュールと当該バックシート1との熱融着処理に際して太陽電池モジュールの裏面及び熱融着層4が完全に溶融する前に先に発泡してしまい、好適な気泡17が形成されない可能性がある。一方、分解温度が上記上限値を超えると、上記熱融着処理後にさらに発泡させるための温度まで再加熱する必要が生ずる可能性があり、作業性が煩雑となる。
【0095】
さらに、熱分解型発泡剤8の分解温度は、熱融着層4及び/又は後述の充填層15の融点よりも高いことが好ましい。これにより、当該バックシート1を積層接着するための熱融着処理に際して熱融着層4及び/又は充填層15が先に溶融し、その後に熱分解型発泡剤8が発泡することになり、好適な気泡17が形成されやすい。
【0096】
ここで、この分解温度は、熱融着層4及び/又は充填層15の融点よりも、5℃以上140℃以下高いことが好ましく、10℃以上90℃以下高いことがより好ましく、20℃以上40℃以下高いことが特に好ましい。熱分解型発泡剤8の分解温度と熱融着層4及び/又は充填層15の融点との差が、上記下限値よりも小さいと当該バックシート1を積層接着するための熱融着処理に際して熱融着層4及び/又は充填層15が完全に溶融する前に先に発泡してしまい、好適な気泡17が形成されない可能性がある。一方、熱分解型発泡剤8の分解温度と熱融着層4及び/又は充填層15の融点との差が、上記上限値を超えると、上記熱融着処理後にさらに発泡させるための温度まで再加熱する必要が生ずる可能性があり、作業性が煩雑となる。
【0097】
また、熱分解型発泡剤8は、上記分解温度条件で大気圧条件下において分解開始(発泡開始)までに要する時間が、1分以上15分以下であることが好ましく、より好ましくは3分以上10分以下、特に好ましくは5分以上7分以下である。上記分解開始までの時間が上記下限値よりも小さいと太陽電池モジュールと当該バックシート1との熱融着処理に際して太陽電池モジュールの裏面及び熱融着層4が完全に溶融する前に先に発泡する可能性が生じ、また上記上限値を超えると、上記熱融着処理に時間を要し、太陽電池モジュールの製造時間が長くなるためである。
【0098】
さらに、熱分解型発泡剤8は、分解によって生ずるガス(熱生成物)が窒素などの不活性ガスであることが好ましい。これにより発泡により形成される気泡17の内部の気体が不活性ガスとなるので、仮に気泡17が太陽電池セルと接した位置に形成されたとしても、太陽電池セルに悪影響を与えない。
【0099】
また、この熱分解型発泡剤8は、そのガス発生量(大気圧状態での発生量)が、好ましくは70ml/g以上250ml/g以下、より好ましくは90ml/g以上200ml/g以下、特に好ましくは110ml/g以上140ml/g以下のものを用いることが好ましい。ガス発生量が上記下限未満であると、発泡剤8の発泡により形成される気泡17の大きさが小さくなり、気泡17の光拡散性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると気泡17が大きくなり過ぎ当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分となるおそれがある。
【0100】
さらに、発泡剤8は、太陽電池モジュール11内で形成される気泡17の体積が、発泡前の発泡剤8の体積に対して、好ましくは1.2倍以上20倍以下、より好ましくは2倍以上15倍以下、特に好ましくは5倍以上10倍以下となるものを採用することが好ましい。発泡剤8に対する気泡17の体積増加率が、上記下限よりも小さいと形成される気泡17が小さくなり過ぎ十分な光拡散性を有さないおそれがあり、また上記上限を超えると、当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分になるおそれがある。
【0101】
また、発泡剤層7は、発泡剤8により形成される一つの気泡17の径(平均径)が、1μm以上30μm以下となるよう設けられていることが好ましく、より好ましくは2μm以上20μm以下であり、特に好ましくは4μm以上10μm以下となるよう設けられていることが好ましい。気泡17の径が上記下限未満であると、気泡17による光の拡散性が低下するおそれがあり、また気泡17の径が上記上限を超えると、バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分になるおそれがある。
【0102】
さらに、発泡剤層7は、発泡剤8により形成される気泡17の平面的存在個数(発泡剤層7の表面の単位面積当たりの気泡17の個数)は、10個/cm以上120個/cm以下が好ましく、より好ましくは20個/cm以上100個/cm以下、特に好ましくは30個/cm以上80個/cm以下である。気泡17の平面的存在個数が上記下限未満であると、気泡17の光拡散性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分となるおそれがある。
【0103】
さらに、発泡剤層7は、発泡剤8により形成される気泡17の平面的存在割合(発泡剤層7の表面に対する表面から見た気泡の総面積の比)は、5%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上40%以下であり、特に好ましくは20%以上30%以下である。気泡17の平面的存在割合が上記下限未満であると、気泡17の光拡散性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると当該バックシート1と太陽電池モジュールとの接合が不十分となるおそれがある。なお、上記気泡17の径、気泡17の平面的存在個数及び平面的存在割合は、上述した発泡剤8のガス発生量、発泡剤8の配合量、配合量の平面的存在個数等を調整することによって調節可能である。
【0104】
(バインダー9)
バインダー9は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を硬化させることで形成される。このバインダー9によって熱融着層4表面に発泡剤8が略等密度に配置固定される。なお、このバインダー9を形成するためのポリマー組成物中には、基材ポリマーの他に種々の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0105】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、種々のものを採用可能であるが、当該バックシート1の熱融着時において溶融可能なものが好適に用いられ、例えば、上記熱融着層4の形成材料と同一素材のものや、また後述する充填層13の形成材料と同一の素材ものを用いることができる。
【0106】
また、バインダー9は融点(或いはガラス転移温度)が、熱分解型発泡剤8の分解温度よりも低いことが好ましい。これにより、当該バックシート1を積層接着するための熱融着処理に際してバンイダー9が先に溶融(或いは軟化)し、その後に熱分解型発泡剤8が発泡することになり、好適な気泡17が形成されやすい。ここで、バインダー9の融点(或いはガラス転移温度)が、熱分解型発泡剤8の分解温度よりも、5℃以上140℃以下低いことが好ましく、10℃以上90℃以下低いことがより好ましく、20℃以上40℃以下低いことが特に好ましい。バインダー9の融点(或いはガラス転移温度)と熱分解型発泡剤8の分解温度との差が、上記下限値よりも小さいと当該バックシート1を積層接着するための熱融着処理に際してバインダー9が完全に溶融(或いは軟化)する前に先に熱分解型発泡剤8が発泡してしまい、好適な気泡17が形成されない可能性がある。一方、バインダー9の融点(或いはガラス転移温度)と熱分解型発泡剤8の分解温度との差が、上記上限値を超えると、上記熱融着処理後にさらに発泡させるための温度まで再加熱する必要が生ずる可能性があり、作業性が煩雑となる。
【0107】
<太陽電池モジュール11の製造方法>
次に、当該バックシート1を用いた太陽電池モジュール11の製造方法を説明する。
【0108】
この製造方法は、(1)透光性基板12、表面側の充填層を構成するシート13、複数枚の太陽電池セル14、裏面側の充填層を構成するシート15及び当該バックシート1をこの順に積層する工程と(図2参照)、(2)この積層体を真空吸引により一体化して加熱圧着する真空加熱ラミネーション法等により一体成形する加熱ラミネート工程とを有している。上記太陽電池モジュール11の製造方法において、各積層対向面にコロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、酸化処理、プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理等を施すことなどが可能である。
【0109】
(透光性基板12)
上記透光性基板12は、最表面に積層されるものであり、(a)太陽光に対する透過性及び電気絶縁性を有すること、(b)機械的、化学的及び物理的強度、具体的には耐候性、耐熱性、耐久性、耐水性、水蒸気等に対するガスバリア性、耐風圧性、耐薬品性、堅牢性に優れること、(c)表面硬度が高く、かつ表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れることが要求される。
【0110】
透光性基板12の形成材料としては、ガラス及び合成樹脂が使用される。透光性基板12に使用される合成樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0111】
なお、合成樹脂製の透光性基板12の場合、(a)ガスバリア性等を向上させる目的で上記PVD法又はCVD法によりその一方の面に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の透明蒸着膜を積層すること、(b)加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、充填剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等の各種添加剤を含有することも可能である。
【0112】
透光性基板12の厚さ(平均厚さ)としては、特に限定されず、使用する材料に応じて所要の強度、ガスバリア性等を具備するよう適宜選択される。合成樹脂製の透光性基板12の厚さとしては6μm以上300μm以下が好ましく、9μm以上150μm以下が特に好ましい。また、ガラス製の透光性基板12の厚さとしては、一般的には3mm程度とされている。
【0113】
(充填層)
また、表面側の充填層を構成するシート13及び裏面側の充填層を構成するシート15は、上記加熱ラミネート時に溶融し、その後冷却されて固化することにより、透光性基板12及び当該バックシート1間における太陽電池セル14の周囲に充填されている(図3参照)。この充填層13及び充填層15は、透光性基板12及びバックシート1との接着性や、太陽電池セル14を保護するための耐スクラッチ性、衝撃吸収性等を有している。さらに、充填層13及び充填層15は、上記諸機能に加え、太陽光を透過する透明性を有している。
【0114】
この充填層13及び充填層15の形成材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好適に用いられ、その他、フッ素系樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等に優れるエチレン−酢酸ビニル系樹脂、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂が特に好ましい。
【0115】
また、充填層13及び充填層15の形成材料としては、特開2000−34376公報に示される熱可逆架橋性オレフィン系重合体組成物、具体的には(a)不飽和カルボン酸無水物と不飽和カルボン酸エステルとによって変性された変性オレフィン系重合体であって、1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均結合数が1個以上で、かつ該変性オレフィン系重合体中のカルボン酸無水物基数に対するカルボン酸エステル基数の比が0.5〜20である変性オレフィン系重合体と、(b)1分子当たりの水酸基の平均結合数が1個以上の水酸基含有重合体とを含み、(a)成分のカルボン酸無水物基数に対する(b)成分の水酸基数の比が0.1〜5のもの等も使用される。
【0116】
なお、充填層13及び充填層15の形成材料には、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等の向上を目的として例えば架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。また形成された(熱溶融された後に固化された)充填層13及び充填層15の厚さ(平均厚さ)としては、特に限定されるものではないが、200μm以上1000μm以下が好ましく、350μm以上600μm以下が特に好ましい。
【0117】
(太陽電池セル14)
上記太陽電池セル14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子であり、充填層13及び充填層15間に配設される。複数枚の太陽電池セル14は、略同一平面内で且つ互いに若干離間して敷設され、図示していないが直列又は並列に配線されている。この太陽電池セル14としては、例えば単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型やタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等の第3〜第5族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe)等の第2〜第6族化合物半導体太陽電子素子等を使用することができ、それらのハイブリット素子も使用することができる。なお、複数枚の太陽電池セル14の間には、上記充填層13又は充填層15が隙間なく充填されることになる。
【0118】
(加熱ラミネート工程)
上記製造方法の上記加熱ラミネート工程においては、まずバックシート本体2の表面の熱融着層4、発泡剤層7のバインダー9及び充填層13,15が溶融し、これらの溶融樹脂が一体的に接合される。この際、発泡剤8はバインダー9から表面側に突出しているので、一部が充填層13内に侵入する。
その後、発泡剤8が発泡することにより、充填層13、バインダー9及び熱融着層4の溶融部分に気泡17が発生する。
そして、冷却されることによって充填層13、バインダー9及び熱融着層4が固化して、当該太陽電池モジュール11が製造されることになる。
【0119】
<太陽電池モジュール11>
図3は、上記製造方法によって製造された太陽電池モジュール11を示し、透光性基板12と、充填層13と、複数枚の太陽電池セル14と、充填層15と、当該バックシート1とが表面側からこの順に積層されている。
【0120】
上記構成からなる当該太陽電池モジュール11は、太陽電池セル14同士の間を通過してバックシート1側に入射した光が、気泡17によって拡散反射する。そして、この反射した光が再度太陽電池セル14の間を通過し、透光性基板12に入射した光が、この透光性基板12の裏面で反射することによって、太陽電池セル14に入射される。このため、当該バックシート1は、太陽電池セル14の間を透過した光を太陽電池セル14に効果的に再帰させることができるので、太陽電池モジュール11の光電変換効率を高め、発電効率を高めることができる。なお、太陽電池セル14が裏面側も受光面として機能する場合には、気泡17で反射した光がそのまま太陽電池セル14の裏面に入射して発電効率がより高められる。
【0121】
また、当該バックシート1にあっては全面に亘り発泡剤8が配設されているので、上記気泡17が太陽電池セル14の裏面側にも位置することになり、当該バックシート1によって好適な絶縁性が得られることになる。
【0122】
さらに、当該バックシート1と太陽電池モジュールとの間に気泡17は存在するので、耐用期間が過ぎてリワークする必要が生じた際に、この気泡17の存在によって当該バックシート1を比較的容易に剥離することが可能となり、リワークの作業性が高いという利点を有する。
【0123】
また、従来の発泡PETシートに比較すると、気泡17の存在量が多いため焼却時の二酸化炭素発生量が少ない。
【0124】
なお、本発明の太陽電池モジュール用バックシート1及び太陽電池モジュール11は上記実施形態に限定されるものではない。
【0125】
例えば、バックシート本体2の構成は上記実施形態のものに限定されるものではなく、例えばガスバリア層5を有さないバックシート本体2を採用することも可能である。また、上記実施形態においては、反射性を持たせるべくバックシート本体2の表面側基材層3のみを白色としたものであったが、その他の層にも白色顔料を含有させて反射性を付与することも可能であり、さらには反射層をさらに積層する構造を採用することも可能である。また、上記実施形態においては、表面側基材層と裏面側基材層とを備えるものについて説明したが、例えば基材層が一層のみからなるもの等も本発明の意図する範囲内である。
【0126】
また、上記実施形態においては、発泡剤として熱分解型発泡剤を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の発泡剤を採用することができ、例えば熱発泡性マイクロカプセルを採用することも可能である。
【0127】
この熱発泡性マイクロカプセルは、内部に発泡剤を封入した微小なカプセルから構成されており、加熱されることにより封入されている発泡剤が気化して、内部に気泡を有する状態にカプセルが膨張するよう設けられているものである。このカプセルは熱可塑性重合体から構成することができ、例えば塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体等から構成することができ、特に熱可塑性重合体の熱安定性の観点から、ニトリル系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分としたアクリル系共重合体を用いることが好ましい。また、封入される発泡剤の種類は、特に限定されないが、カプセルを構成する熱可塑性重合体の軟化温度以下の温度の沸点を有する液体を用いることが好ましく、例えばプロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、メチルヘプタン類、トリメチルペンタン類、ハイドロフルオロエーテル類が挙げられ、これらの発泡剤を1種又は2種以上併用して用いることもできる。
【0128】
なお、上記熱発泡性マイクロカプセルは、平均粒子径、突出高さ、配合量等が上記実施形態と同様の数値範囲のものを採用することが好ましい。また、この熱発泡性マイクロカプセルの発泡開始温度は、上記実施形態の熱分解型発泡剤8の分解温度と同様に、100℃以上240℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上200℃以下、特に好ましくは130℃以上170℃以下である。なお、この発泡開始温度と、熱融着層の融点等との差が、上記実施形態の熱分解型発泡剤8の分解温度と同様の範囲となるよう設けられていることが好ましい。さらに、この熱発泡性マイクロカプセルは、太陽電池モジュール内で発泡した状態において内部の気泡の体積が、発泡前の熱発泡性マイクロカプセルの体積に対して、好ましくは1.2倍以上20倍以下、より好ましくは2倍以上15倍以下、特に好ましくは5倍以上10倍以下となるものを採用することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明の太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュールは、太陽電池の構成要素として有用であり、特に今日普及しつつある家屋屋根据え置き型の太陽電池や電卓等の小型電気機器用の太陽電池等に好適に使用される。
【符号の説明】
【0130】
1 太陽電池モジュール用バックシート
2 バックシート本体
3 表面側基材層
4 熱融着層
5 ガスバリア層
6 裏面側基材層
7 発泡剤層
8 発泡剤
9 バインダー
11 太陽電池モジュール
12 透光性基板
13,15 充填層
14 太陽電池セル
17 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着されることにより太陽電池モジュールの裏面側に配設される太陽電池モジュール用バックシートであって、
シート状に形成されたバックシート本体と、
このバックシート本体の表面に積層され、熱によって発泡する複数の発泡剤及びこの複数の発泡剤のバインダーを含む発泡剤層と
を備えることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項2】
上記発泡剤が、バインダーの平均界面よりも表面側に突出するよう配設されている請求項1に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項3】
上記バインダーの平均界面からバックシート本体までの距離が、発泡剤の平均粒子径の50%以上95%以下である請求項2に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項4】
上記発泡剤層が、上記バインダーの形成材料であるポリマー組成物に発泡剤を含有する塗工液の塗工により形成されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項5】
上記バックシート本体が、最表面にポリエチレンを主成分とする熱融着層を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項6】
上記発泡剤が、熱分解型発泡剤である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項7】
上記熱分解型発泡剤が、熱分解により窒素を放出する請求項6に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項8】
上記熱分解型発泡剤の分解温度が、100℃以上240℃以下である請求項6又は請求項7に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項9】
上記発泡剤が、熱発泡性マイクロカプセルである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシートと、
この太陽電池モジュール用バックシートの表面に熱融着された充填材層と、
この充填材層内に配設される太陽電池セルと、
充填層の表面に配設される透光性基板と
を備える太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−16748(P2013−16748A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150439(P2011−150439)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】