説明

太陽電池モジュール用保護シート及び太陽電池モジュール

【課題】保護シートは、耐湿熱性、ガスバリア性に優れており、湿熱環境下における層間接着剤の劣化が少なく耐久性に優れた太陽電池モジュール用保護シートの提供。
【解決手段】ポリエチレンナフタレート製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用保護シート。この太陽電池モジュール用保護シートが接着されてなる太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用保護シートと、それを備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である太陽電池モジュールは、二酸化炭素を排出せずに発電できるシステムとして注目されている。その太陽電池モジュールには、高い発電効率とともに、屋外で使用した場合にも長期間の使用に耐えうる耐久性が求められている。
太陽電池モジュールの主な構成は、光発電素子である太陽電池セル、電気回路のショートを防ぐ電気絶縁体である封止材、およびそれらを保護する保護シートからなる。一般に、太陽電池モジュールの耐久性を高めるためには、保護シートを高性能化することが重要であると考えられている。
【0003】
太陽電池モジュールを長期間使用する場合、該太陽電池モジュール内の電気回路の漏電や腐食を防ぐために、太陽電池モジュール用保護シートには、高い耐湿熱性、ガスバリア性が求められている。
従来、太陽電池モジュール用保護シートの基材としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)もしくは耐加水分解PETが一般的に使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、耐加水分解性樹脂フィルムと金属酸化物被着樹脂フィルム及び白色樹脂フィルムとの3層積層体、又は金属酸化物が被着された耐加水分解性樹脂フィルムと白色樹脂フィルムとの2層積層体、又は耐加水分解性樹脂フィルムと金属酸化物が被着された白色樹脂フィルムとの2層積層体からなることを特徴とする太陽電池カバー材用バックシートが開示されている。前記耐加水分解性樹脂フィルムとしてはPETフィルムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−100788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のPETを基材とした太陽電池モジュール用保護シートは、屋外に設置される太陽電池モジュールを長期間保護するためには耐湿熱性、ガスバリア性が不十分であり、一層の性能向上が求められている。
さらに、従来のPETを基材とした太陽電池モジュール用保護シートにおいて、PET基材に他種の樹脂フィルム又は金属箔を積層する際には、PET基材と他種の樹脂フィルム等とを層間接着剤を用いて接着しているが、従来のPETを基材としたものでは、湿熱環境下における層間接着剤の劣化が見られ、他種の樹脂フィルム等がPET基材から剥離し易くなる問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、従来品よりも耐湿熱性、ガスバリア性に優れており、湿熱環境下における層間接着剤の劣化が少なく耐久性に優れた太陽電池モジュール用保護シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ポリエチレンナフタレート製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用保護シートを提供する。
【0008】
本発明において、前記基材シートの一方の面側に熱可塑性樹脂層が積層され、前記基材シートの他方の面側にフッ素樹脂層が積層されていることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記基材シートと前記フッ素樹脂層との間にガスバリアフィルム層が積層されていることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記基材シートの両面側にフッ素樹脂層が積層されている構成としてもよい。
【0011】
本発明において、前記基材シートの一方の面側に、金属層が積層され、該金属層に熱可塑性樹脂層が積層されている構成としてもよい。
【0012】
本発明において、前記基材シートの一方の面側に、金属蒸着熱可塑性樹脂層が積層されている構成としてもよい。
【0013】
また本発明は、前記太陽電池モジュール用保護シートが接着されてなる太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の太陽電池モジュール用保護シートは、ポリエチレンナフタレート製の基材シートを用いたものなので、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
また本発明の太陽電池モジュール用保護シートは、ポリエチレンナフタレート製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層された構成としたので、従来のPET基材を用いた積層シートと比べ、湿熱環境下での層間接着剤の劣化が少なくなり、長期間使用しても基材シートから他の樹脂フィルム等が剥離し難くなり、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【0015】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール本体に本発明に係る前記太陽電池モジュール用保護シートを接着したものなので、従来のPET基材を用いた保護シートを接着した場合と比べ、安全性、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの構成を示した模式図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第1実施形態の断面を示した模式図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第2実施形態の断面を示した模式図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第3実施形態の断面を示した模式図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第4実施形態の断面を示した模式図である。
【図6】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第5実施形態の断面を示した模式図である。
【図7】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第6実施形態の断面を示した模式図である。
【図8】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第7実施形態の断面を示した模式図である。
【図9】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第8実施形態の断面を示した模式図である。
【図10】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第9実施形態の断面を示した模式図である。
【図11】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第10実施形態の断面を示した模式図である。
【図12】本発明の太陽電池モジュール用保護シートの第11実施形態の断面を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の太陽電池モジュール用保護シートを用いる太陽電池モジュールの構成を示した模式図である。
図1に例示するように、本発明の保護シートを用いる太陽電池モジュール50の構成は、表面保護シート10、裏面保護シート20、封止材30、太陽電池セル40を有する。屋外および屋内において長期間の使用に耐えうる耐候性および耐久性を太陽電池モジュールにもたせるためには、太陽電池セル40および封止材30を風雨、湿気、砂埃、機械的な衝撃などから守り、太陽電池モジュールの内部を外気から完全に遮断して密閉した状態に保つことが必要である。このため、表面保護シート10及び裏面保護シート20には、十分な耐候性をもつことが求められる。
【0018】
[第1実施形態]
図2は、本発明の太陽電池モジュール用保護シート(以下、保護シートと略記する)の第1実施形態の断面を示した模式図である。
なお、本発明の保護シートは、前記表面保護シート10及び前記裏面保護シート20のいずれにも適用可能である。以下の記載において、基材シート22にAl層を積層したり、アルミ蒸着PETシートを用いたり、二酸化チタンのような白色顔料を添加した塗工液を用いている場合は、裏面保護シート20への適用を意図したものであって、表面保護シート10として適用する場合には、透明な基材シートを用い、これに透明な他の樹脂層を組み合わせて積層する。
【0019】
本実施形態の保護シート60Aは、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと略記する)製の基材シート61の一方の面に、層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62が積層された構成になっている。
【0020】
前記基材シート61の材料であるPENは、2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとを重縮合させて得られる樹脂であり、従来の基材シート材料であるPETと比べ、ガスバリア性、機械強度に優れている。また、PEN製の基材シート61は、PET製の基材シートと比べ、耐湿熱性に優れており、該基材シート61と熱可塑性樹脂層とを層間接着剤を介して接着して積層した本実施形態の保護シート60Aは、高湿熱環境下での層間接着剤の劣化を抑制でき、基材シート61と熱可塑性樹脂層62との接着状態を長期間保持することができる。
【0021】
前記基材シート61の厚さとしては、太陽電池システムが要求する電気絶縁性、軽量性などに基づいて選択すればよく、例えば、厚さ10〜300μmの範囲であることが好ましく、30〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。このようなPEN製の基材シート61の市販品としては、例えば、帝人デュポンフィルム社製のテオネックス Q51(商品名)が挙げられる。
【0022】
前記熱可塑性樹脂層62の材料としては、特に制限されることなく、各種の樹脂材料の中から適宜選択して使用することができる。本実施形態の保護シート60Aは、該熱可塑性樹脂層62を太陽電池モジュール本体の封止材30に接着させることを意図したものであり、該封止材30と接着性が良好な樹脂を用いることが好ましい。そのような樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂(以下、EVAと略記する)、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂などが挙げられ、その中でもEVAが好ましい。
【0023】
前記熱可塑性樹脂層62の厚さは特に限定されず、封止材30に対する接着安定性、軽量性などに基づいて選択すればよく、例えば、厚さ10〜300μmの範囲であることが好ましく、30〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0024】
前記基材シート61及び前記熱可塑性樹脂層62には、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
顔料としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されない。例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン、マイカ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。より具体的には、耐久性を付与するために二酸化ケイ素で処理したルチル型二酸化チタンであるTi−Pure R105(商品名;デュポン社製)、およびジメチルシリコーンの表面処理によってシリカ表面の水酸基を修飾した疎水性シリカであるCAB−O−SIL TS−720(商品名;キャボット社製)が好ましいものとして例示できる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系およびトリアジン系等が挙げられる。
【0025】
前記層間接着剤層63の材料となる接着剤は、前記基材シート61と前記熱可塑性樹脂層62とを強固に接着できれば特に制限されず、例えばアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、エステル系接着剤などが挙げられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本実施形態の保護シート60Aは、PEN製の基材シート61の一方の面に、層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62を積層した構成なので、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができる。
また本実施形態の保護シート60Aは、PEN製の基材シート61を用いたことによって、従来のPET基材を用いた積層シートと比べ、湿熱環境下での層間接着剤層63の劣化が少なくなり、長期間使用しても基材シート61から熱可塑性樹脂層62が剥離し難くなり、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができる。
【0027】
[第2実施形態]
図3は、本発明の保護シートの第2実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Bは、PEN製の基材シート61の一方の面に、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂層64を直接積層した構成になっている。この基材シート61は、前記第1実施形態において用いたものと同じPEN製の基材シート61を用いることができる。
【0028】
前記熱可塑性樹脂層64は、Tダイを取り付けた押出機内に材料樹脂を投入し、加熱溶融した樹脂をTダイから基材シート61表面にシート状に押し出し、そのまま両者を接着させて積層するTダイ押出法などによって形成することができる。該熱可塑性樹脂層64の厚さは特に限定されず、封止材30に対する接着安定性、軽量性などに基づいて選択すればよく、例えば、厚さ10〜300μmの範囲であることが好ましく、30〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態の保護シート60Bは、PEN製の基材シート61の一方の面に、熱可塑性樹脂層64を直接積層した構成なので、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができる。
また、熱可塑性樹脂層64を基材シート61に直接積層することで、製造工程が簡略化でき、製造コストを低減することができる。
【0030】
[第3実施形態]
図4は、本発明の保護シートの第3実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Cは、基材シート61の一方の面に層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62が積層され、さらに基材シート61の他方の面にフッ素樹脂コート層65が積層された構成になっている。前記基材シート61、熱可塑性樹脂層62及び層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の保護シート60Aの場合と同様にすることができる。
【0031】
前記フッ素樹脂コート層65は、保護シート60Cに耐候性を付与するためのものであって、本実施形態にあっては、保護シートの軽量化のためにフッ素含有ポリマーを有する塗料を塗布した塗膜により形成されている。前記フッ素含有ポリマーを有する塗料としては、溶剤に溶解又は水に分散されたもので塗布可能なものであれば特に限定されない。
【0032】
前記塗料に含まれていてもよいフッ素含有ポリマーとしては、本発明の効果を損なわず、フッ素を含有するポリマーであれば特に限定されないが、前記塗料の溶媒(有機溶媒または水)に溶解し、架橋可能であるものが好ましい。該フッ素含有ポリマーの好ましい例としては、旭硝子株式会社製のLUMIFLON(商品名)、セントラル硝子株式会社製のCEFRALCOAT(商品名)、DIC株式会社製のFLUONATE(商品名)等のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類や、ダイキン工業株式会社製のZEFFLE(商品名)等のテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類や、デュポン社製のZonyl(商品名)、ダイキン工業株式会社製のUNIDYNE(商品名)等のフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類が挙げられる。これらの中でも、耐候性および顔料分散性等の観点から、CTFEを主成分としたポリマーおよびTFEを主成分としたポリマーがより好ましく、なかでも前記LUMIFLON(商品名)および前記ZEFFLE(商品名)が最も好ましい。
【0033】
前記LUMIFLON(商品名)は、CTFEと数種類の特定のアルキルビニルエーテル(VE)、ヒドロキシアルキルビニルエーテルとを主な構成単位として含む非結晶性のポリマーである。該LUMIFLON(商品名)のように、ヒドロキシアルキルビニルエーテルのモノマー単位を有するポリマーは、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性、顔料分散性、硬さ、および柔軟性に優れるので好ましい。
前記ZEFFLE(商品名)は、TFEと有機溶媒可溶性の炭化水素系モノマー(酸素を含んでいてもよい)との共重合体であり、なかでも共重合体中に反応性の高い水酸基を有する場合には、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性、および顔料分散性に優れるので好ましい。
【0034】
また、前記塗料に含まれていてもよいフッ素含有ポリマーの例として、硬化性官能基を有するフルオロオレフィンのポリマーが挙げられ、該具体例としては、TFE、イソブチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体、ならびにTFE、VdF、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0035】
また、前記塗料に含まれていてもよいフッ素含有ポリマーにおける共重合可能なモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、および安息香酸ビニル等のカルボン酸のビニルエステル類や、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類が挙げられる。
【0036】
前記塗料としては、前記フッ素含有ポリマーの他に、架橋剤、触媒、および溶媒を含むことができ、さらに必要であれば、顔料および充填剤などの無機化合物を含むこともできる。
【0037】
前記塗料に含まれる溶媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、メタノール、イソプロパノール、エタノール、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、またはn−ブチルアルコールのうち、いずれか1種以上を有する溶媒を好ましく用いることができる。なかでも、塗料中の含有成分の溶解性の観点から、前記溶媒はMEKまたはMIBKのうち、いずれか1種以上を有するものであることがより好ましい。
【0038】
前記塗料に含んでいてもよい顔料としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されない。例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン、マイカ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。より具体的には、耐久性を付与するために被覆及び表面処理されたルチル型二酸化チタンであるデュポン社製のTi−Pure R105(商品名)、およびジメチルシリコーンの表面処理によってシリカ表面の水酸基を修飾した疎水性シリカであるCabot社製のCAB−O−SIL TS−720(商品名)が好ましいものとして例示できる。
【0039】
前記塗膜は耐候性、耐擦傷性を向上させるため、架橋剤により硬化していることが好ましい。該架橋剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、金属キレート類、シラン類、イソシアネート類、およびメラミン類が好ましく用いられるものとして挙げられる。前記保護シートを屋外において30年以上使用することを想定した場合、耐候性の観点からは、前記架橋剤として、脂肪族のイソシアネート類が好ましい。
【0040】
前記塗料の組成としては、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、例えば前記LUMIFLON(商品名)をベースとした塗料の組成物として、前記LUMIFLON(商品名)、顔料、架橋剤、溶媒および触媒を混合してなるものが挙げられる。該組成比としては、該塗料全体を100質量%としたときに、LUMIFLON(商品名)は3〜80質量%が好ましく、10〜40質量%程度がより好ましく、顔料は5〜60質量%が好ましく、10〜30質量%程度がより好ましく、有機溶媒は20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%程度がより好ましい。
前記有機溶媒としては、MEKとキシレンとシクロヘキサノンとの混合溶媒が例示できる。また、前記触媒としては、ジブチルジラウリン酸スズ、ジオクチルジラウリン酸スズを例示でき、有機溶媒中で前記LUMIFLON(商品名)とイソシアネートとの架橋を促進するために用いられる。
【0041】
前記塗料を基材シート61の他方の面に塗布する方法としては、公知の方法で行うことができ、例えばロッドコーターで所望の膜厚になるように塗布すればよい。
前記塗料が硬化して形成される前記フッ素樹脂コート層65の膜厚としては特に限定されず、例えば5μm以上の膜厚とすればよい。水蒸気バリア性、耐候性および軽量性の観点から、該フッ素樹脂コート層65の膜厚としては、5〜50μmが好ましく、8〜40μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
前記塗布した塗料の乾燥プロセスにおける温度は、本発明の効果を損なわない温度であればよく、前記架橋促進及び基材シート61への影響を低減する観点から、50〜130℃程度の範囲であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の保護シート60Cは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の他方の面に前記フッ素樹脂コート層65を積層したことによって、保護シート60Cの耐候性、ガスバリア性を向上させることができる。
【0043】
[第4実施形態]
図5は、本発明の保護シートの第4実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Dは、PEN製の基材シート61の一方の面に、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂層64を直接積層し、さらに基材シート61の他方の面に、前記第3実施形態において用いたものと同様のフッ素樹脂コート層65を積層した構成になっている。前記基材シート61、前記熱可塑性樹脂層64及び前記フッ素樹脂コート層65の詳細は、前記第1〜第3実施形態の保護シート60A〜60Cにおけるそれぞれ対応するシート又は層と同様にすることができる。
【0044】
本実施形態の保護シート60Dは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の他方の面に前記フッ素樹脂コート層65を積層したことによって、保護シート60Dの耐候性、ガスバリア性を向上させることができる。
【0045】
[第5実施形態]
図6は、本発明の保護シートの第5実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Eは、PEN製の基材シート61の一方の面に層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62が積層され、さらに基材シート61の他方の面に層間接着剤63を介してフッ素樹脂フィルム66が積層された構成になっている。前記基材シート61、熱可塑性樹脂層62及び層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の場合と同様にすることができる。
【0046】
前記フッ素樹脂フィルム66は、保護シート60Eに耐候性を付与するためのものであって、本実施形態にあっては、フッ素含有ポリマーを有するシートを用いている。
前記フッ素含有ポリマーを有するシートとしては、例えばポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を主成分とするポリマーをシート状に加工したものが好ましいものとして挙げられる。前記PVFを主成分とするポリマーとしてはデュポン社製のTedlar(商品名)を用いることができる。前記PVDFを主成分とするポリマーとしてはアルケマ社製のKynar(商品名)を用いることができる。また、前記ECTFEを主成分とするポリマーとしてはSolvay Solexis社製のHalar(商品名)を用いることができる。前記ETFEを主成分とするポリマーとしては旭硝子社製のFluon(商品名)を用いることができる。
前記フッ素含有ポリマーを有するシートの厚さとしては、耐候性および軽量化の観点から、一般に5〜200μmの範囲が好ましく、10〜100μmの範囲がより好ましく、10〜50μmの範囲が最も好ましい。
【0047】
本実施形態の保護シート60Eは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の他方の面に前記フッ素樹脂フィルム66を積層したことによって、保護シート60Eの耐候性、ガスバリア性を向上させることができる。
【0048】
[第6実施形態]
図7は、本発明の保護シートの第6実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Fは、PEN製の基材シート61の一方の面に、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂層64を直接積層し、さらに基材シート61の他方の面に、前記第5実施形態において用いたものと同様のフッ素樹脂フィルム66を積層した構成になっている。前記基材シート61、前記熱可塑性樹脂層64、前記層間接着剤層63及び前記フッ素樹脂フィルム66の詳細は、前記第1〜第5実施形態の保護シート60A〜60Eにおけるそれぞれ対応するシート又は層と同様にすることができる。
【0049】
本実施形態の保護シート60Fは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の他方の面に前記フッ素樹脂フィルム66を積層したことによって、保護シート60Fの耐候性、ガスバリア性を向上させることができる。
【0050】
[第7実施形態]
図8は、本発明の保護シートの第7実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Gは、PEN製の基材シート61の一方の面に層間接着剤63、シリカ蒸着PET層67、層間接着剤層63、熱可塑性樹脂層68を順に積層した構成になっている。前記基材シート61及び前記層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の場合と同様にすることができる。
【0051】
前記シリカ蒸着PET層67は、PETフィルム表面にシリカ(SiO)を蒸着したフィルムを用いている。このシリカ蒸着PET層67は、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れており、該シリカ蒸着PET層67を積層することによって保護シート60Gの水蒸気バリア性を向上させることができる。該シリカ蒸着PET層67の厚さは特に限定されないが、PETフィルム厚みが5〜50μmの範囲が好ましく、6〜40μmの範囲がより好ましく、またシリカ層厚みは1〜500nmの範囲が好ましく、10〜100nmの範囲がより好ましい。
【0052】
前記熱可塑性樹脂層68の材料としては、特に制限されることなく、各種の樹脂材料の中から適宜選択して使用することができる。そのような樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、PET、白色PETなどが挙げられる。
【0053】
本実施形態の保護シート60Gは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、シリカ蒸着PET層67を積層したことによって、保護シート60Gの水蒸気バリア性を高めることができる。
【0054】
[第8実施形態]
図9は、本発明の保護シートの第8実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Hは、基材シート61の一方の面に層間接着剤層63を介してフッ素樹脂フィルム66を積層し、さらに基材シート61の他方の面にも層間接着剤層63を介してフッ素樹脂フィルム66を積層した構成になっている。前記基材シート61、層間接着剤層63及びフッ素樹脂フィルム66の詳細は、前記第1実施形態及び前記第5実施形態の対応するシート及び層と同様にすることができる。
【0055】
本実施形態の保護シート60Hは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の両方の面にフッ素樹脂フィルム66を積層したことによって、保護シート60Hの耐候性、ガスバリア性を向上させることができる。
【0056】
[第9実施形態]
図10は、本発明の保護シートの第9実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Iは、基材シート61の両方の面にフッ素樹脂コート層65を直接積層した構成になっている。前記基材シート61の詳細は前記第1実施形態の場合と同様にすることができ、また前記フッ素樹脂コート層65の詳細は、前記第3実施形態の場合と同様にすることができる。
【0057】
本実施形態の保護シート60Iは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の両方の面にフッ素樹脂コート層65を積層したことによって、保護シート60Iの耐候性、ガスバリア性を向上させることができる。
【0058】
[第10実施形態]
図11は、本発明の保護シートの第10実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Jは、PEN製の基材シート61の一方の面側に、層間接着剤層63、アルミ(Al)層69、オレフィン系樹脂層70、熱可塑性樹脂層71を順に積層した構成になっている。前記基材シート61及び層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の場合と同様にすることができる。
【0059】
前記Al層69は、アルミ箔、アルミ−鉄合金箔などの金属箔からなるシート、Al蒸着PETシート、Al箔ラミネートPETシートなどを使用することができる。
前記オレフィン系樹脂層70の材料としては、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂層71の材料は、太陽電池モジュール本体の封止材30との接着性の良好な熱可塑性樹脂が挙げられ、特にEVAが好ましい。
前記オレフィン系樹脂層70及び熱可塑性樹脂層71の2つの層は、樹脂フィルムの製造分野において周知の共押出し法によって製造することが好ましい。
【0060】
本実施形態の保護シート60Jは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、Al層69を積層したことによって、水蒸気バリア性を向上することができる。
【0061】
[第11実施形態]
図12は、本発明の保護シートの第11実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の保護シート60Kは、PEN製の基材シート61の一方の面側に、層間接着剤層63、Al層69、層間接着剤層63、熱可塑性樹脂層62を順に積層して構成されている。前記基材シート61、熱可塑性樹脂層62及び層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の場合と同様にすることができる。また前記Al層69は、前記第10実施形態のAl層69と同様にすることができる。前記熱可塑性樹脂層62の材料は、太陽電池モジュール本体の封止材30との接着性の良好な熱可塑性樹脂が挙げられ、特にEVAが好ましい。
【0062】
本実施形態の保護シート60Kは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、Al層69を積層したことによって、水蒸気バリア性を向上することができる。
【0063】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、図1に示すように、太陽電池モジュール50の封止材30に、前述した保護シート60A〜60Kのいずれかを接着して積層したものである。
この太陽電池モジュール50の種類や構造は特に限定されず、a−Si太陽電池、c−Si太陽電池、μc−Si太陽電池、GaAsなどの化合物半導体型太陽電池、色素増感型太陽電池とすることができる。
【実施例】
【0064】
[実施例1]
PEN基材シートとして、厚さ125μmの帝人デュポンフィルム社製のテオネックスQ51(商品名)を用いた。このPEN基材シートの一方の面に層間接着剤(主剤:三井化学社製のタケラックA−515(商品名)と、硬化剤:三井化学社製のタケネートA−3(商品名)とを、主剤:硬化剤=7:1(固形分比)で配合したもの)を塗布し、80℃、1分間乾燥して厚さ10μmの層間接着剤層を形成した。次に、この接着剤層に厚さ100μmのEVAフィルム(該フィルムはエチレン:酢酸ビニル=91:9のEVA樹脂をTダイ押出製膜機により厚さ100μmに製膜した)を重ね合わせ、ラミネートして図2に示す構成の保護シートを作製した。前記ラミネート条件は、ラミネート温度を常温とし、エージング条件を23℃±2℃、7日間とした。
【0065】
[実施例2]
実施例1で用いたものと同じPEN基材シートの一方の面に、直接、Tダイ押出製膜機によりLDPE(住友化学社製 スミカセンL211(商品名))を50μmの厚さで製膜し、図3に示す構造の保護シートを作製した。
【0066】
[実施例3]
PEN基材シートの一方の面に、直接、フッ素樹脂コート層を形成した後、他方の面に実施例1と同様にして層間接着剤層を用いてEVAフィルムを積層し、図4に示す構成の保護シートを作製した。前記フッ素樹脂コート層の形成の詳細は下記の通りとした。
【0067】
(コート剤の調製)
MEKを120質量部、疎水性シリカ(キャボット社製 CAB−O−SIL TS−720(商品名))を18.2質量部、酸化チタン(デュポン社製 Ti−Pure R105(商品名))を100質量部の量で配合したものを、顔料分散機{装置名:T.K.ホモディスパー(プライミクス社製)}にて分散させて顔料分散液を作成した。
つづいて、顔料分散液87質量部に、CTFE系共重合体(旭硝子社製 LUMIFLON LF200(商品名、固形分60%))を100質量部、イソシアネート系の架橋剤(硬化剤)(住化バイエルウレタン社製 スミジュールN3300(商品名))を10.7質量部、架橋促進剤(東洋インキ製造社製 BXX3778−10(商品名))を0.004質量部、MEKを110質量部の量で配合してコート剤を調製した。
【0068】
(基材シートへのフッ素樹脂コート)
前記PEN基材シートの一方の面に、前記コート剤を、乾燥後の塗膜厚さが13μmとなるようにバーコーターにて塗工し、120℃で2分間乾燥して、フッ素樹脂コート層を形成した。
【0069】
[実施例4]
PEN基材シートの一方の面に実施例3と同様にしてフッ素樹脂コート層を形成した後、他方の面に実施例2と同様にしてLDPE層を形成し、図5に示す構成の保護シートを作製した。
【0070】
[実施例5]
実施例1と同様にしてPEN基材シートの一方の面に層間接着剤層を用いてEVAフィルムを積層した後、PEN基材シートの他方の面に、層間接着剤を用いて、PVFフィルム(デュポン社製 Tedlar(商品名)、厚さ25μm)を積層し、図6に示す構成の保護シートを作製した。
【0071】
[実施例6]
実施例5で用いたPVFフィルムに代えて、ETFEフィルム(旭硝子社製 アフレックス(商品名)、厚さ25μm)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして図6に示す構成の保護シートを作製した。
【0072】
[実施例7]
実施例5で用いたPVFフィルムに代えて、PVDFフィルム(アルケマ社製 Kynar(商品名)、厚さ30μm)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして図6に示す構成の保護シートを作製した。
【0073】
[実施例8]
実施例2と同様に、PEN基材シートの一方の面にLDPE層を積層した後、PEN基材シートの他方の面に、実施例5の場合と同様にしてPVFフィルム(デュポン社製 Tedlar(商品名)、厚さ25μm)を積層し、図7に示す構成の保護シートを作製した。
【0074】
[実施例9]
実施例2と同様に、PEN基材シートの一方の面にLDPE層を積層した後、PEN基材シートの他方の面に、ETFEフィルム(旭硝子社製 アフレックス(商品名)、厚さ25μm)を積層し、図7に示す構成の保護シートを作製した。
【0075】
[実施例10]
実施例2と同様に、PEN基材シートの一方の面にLDPE層を積層した後、PEN基材シートの他方の面にPVDFフィルム(アルケマ社製 Kynar(商品名)、厚さ30μm)を積層し、図7に示す構成の保護シートを作製した。
【0076】
[実施例11]
PETフィルム(帝人デュポンフィルム社製 Mylar−A(商品名)、厚さ12μm)の一方の面に、厚さ50nmとなるようにシリカ(SiO)を蒸着してシリカ蒸着PETフィルムを作製した。
実施例1と同様のPEN基材シートの一方の面に、層間接着剤を用いて前記シリカ蒸着PETフィルムを接着し、更に該シリカ蒸着PETフィルムに層間接着剤を用いて、実施例1で用いたものと同じEVAフィルムを積層し、図8に示す構成の保護シートを作製した。なお、層間接着剤及びラミネート条件は実施例1と同じとした。
【0077】
[実施例12]
実施例11と同様に、PEN基材シートの一方の面に層間接着剤を用いて前記シリカ蒸着PETフィルムを接着し、更に該シリカ蒸着PETフィルムに、実施例2の場合と同様にTダイ押出製膜機によってLDPEを50μmの厚さで製膜し、保護シートを作製した。
【0078】
[実施例13]
実施例11と同様に、PEN基材シートの一方の面に層間接着剤を用いて前記シリカ蒸着PETフィルムを接着し、更に該シリカ蒸着PETフィルムに、白色PETフィルム(東レ社製 ルミラーE20(商品名)、厚さ38μm)を層間接着剤を用いて積層し、図8に示す構成の保護シートを作製した。なお、層間接着剤及びラミネート条件は実施例1と同じとした。
【0079】
[実施例14]
実施例1と同様のPEN基材シートの両面に、層間接着剤を用いてPVFフィルム(デュポン社製 Tedlar(商品名)、厚さ25μm)を積層し、図9に示す構成の保護シートを作製した。
【0080】
[実施例15]
PVFフィルムに代えてETFEフィルム(旭硝子社製 アフレックス(商品名)、厚さ25μm)を用いたこと以外は、実施例14と同様にして図9に示す構成の保護シートを作製した。
【0081】
[実施例16]
PVFフィルムに代えてPVDFフィルム(アルケマ社製 Kynar(商品名)、厚さ30μm)を用いたこと以外は、実施例14と同様にして図9に示す構成の保護シートを作製した。
【0082】
[実施例17]
実施例1と同様のPEN基材シートの両面に、実施例3のフッ素樹脂コート層の形成と同様のコート剤及び手法によってフッ素樹脂コート層を形成し、図10に示す構成の保護シートを作製した。
【0083】
[実施例18]
PEN基材シートの一方の面に、層間接着剤を用いてアルミ箔(日本製箔社製 PACAL21(商品名)、厚さ20μm)を積層した後、アルミ箔の面に、厚さ50μmのPP(日本ポリプロ社製 ノバテックPP EA9(商品名)と厚さ50μmのEVA(三井・デュポンポリケミカル社製 エバフレックスV5961(商品名)を共押出することにより、図11に示す構成の保護シートを作製した。
【0084】
[実施例19]
PEN基材シートの一方の面に、層間接着剤を用いてアルミ箔を積層した後、アルミ箔の面に、層間接着剤層を用いて厚さ100μmのEVAフィルムを積層することにより、図12に示す構成の保護シートを作製した。
【0085】
[比較例1]
PEN製基材シートに代えて、PET製基材シート(帝人デュポン社製 Mylar−A(商品名)、厚さ125μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護シートを作製した。
【0086】
[比較例2]
PEN製基材シートに代えて、PET製基材シート(東レ社製 ルミラーX10S(商品名)、厚さ125μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護シートを作製した。
【0087】
以上のように作製したそれぞれの保護シートを試料として、以下の評価方法により、フィルム強度(破断強度)測定、水蒸気透過度(WVTR)測定、接着強度(T字剥離)試験及び促進試験を行った。接着強度(T字剥離)試験の結果を表1に記し、それ以外の試験の結果を表2にまとめて記す。
【0088】
<フィルム強度(破断強度)測定>
破断強度の測定は、JIS K7127:1999に準拠して行った。測定条件は次の通りとした。
・試験環境:23℃、50%RH
・サンプルサイズ:幅15mm×長さ100mm
・引っ張り速度:200mm/min
・試験方法:フィルムの上端・下端をそれぞれ万能引張り試験機に固定した。200mm/minの速度で試料を引張り、フィルムが破断した際の荷重を測定した。
それぞれの保護シートは、後述する<促進試験>のPCTを行う前の状態(PCT/0時間)を100%とし、PCTの時間経過(24時間後、48時間後及び96時間後)においてそれぞれ破断強度を測定し、PCT/0時間の破断強度に対するパーセント(破断強度保持率)を算出し、その結果を表2に記す。また、それぞれの保護シートのMD方向(表2中でMDと記す)、CD方向(表2中でCDと記す)について破断強度保持率を求め、それぞれの結果を表2中に記す。
【0089】
<水蒸気透過度(WVTR)測定>
水蒸気透過度(WVTR)の測定は、JIS K7129:2008に準拠して行った。測定条件は次の通りとした。
・測定方法:乾湿センサ法
・測定装置:Lyssy社製 L80−5000
・試験方法:高湿度チャンバ(40℃90%RH)と低湿度チャンバ間に試料を固定した。低湿度チャンバの湿度が9%RHから11%RHに変化するまでの時間を計測し、標準試料との比較により、水蒸気透過度(WVTR)を算出した。
それぞれの保護シートは、後述する<促進試験>のPCTを行う前の状態(PCT/0時2間)、PCTの時間経過(24時間後、48時間後及び96時間後)においてそれぞれ水蒸気透過度(WVTR)を算出し、その結果を表2に記す。
【0090】
<接着強度(T字剥離)試験>
接着強度試験は、JIS K6854−3:1999に準拠して行い、実施例1、比較例1,2の各保護シートについて実施した。試験条件は次の通りとした。
・試験環境:23℃、50%RH
・サンプルサイズ:幅25mm×長さ150mm
・剥離速度:300mm/min
・試験方法:層間接着剤で貼り合わされた基材シートとEVAフィルムをそれぞれ万能引張り試験機の上下に固定した。測定中には剥離部が180°となるように固定し、基材シート/EVAフィルム間を剥がした際の負荷を測定し、基材/EVA層間剥離強度(単位:N/25mm)を求めた。
それぞれの保護シートは、後述する<促進試験>のDHを行う前の状態(DH/0時間)、DHの時間経過(1000時間後、2000時間後及び3000時間後)においてそれぞれ基材/EVA層間剥離強度を測定し、その結果を表1に記す。
【0091】
<促進試験>
(1)プレッシャークッカー試験(PCT)
試料をA4サイズに切り取り、121℃、2atm、100%RHの条件下に置き、経時におけるフィルム強度(破断強度)、水蒸気透過度を測定した。
(2)ダンプヒート試験(DH)
試料をA4サイズに切り取り、85℃、85%RHの条件下に置き、経時における接着強度(剥離強度)を測定した。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1の結果より、基材シートとしてPEN製の基材シートを用いた実施例1の保護シートは、PET製の基材シートを用いた比較例1,2の保護シートと比べ、基材シート/EVA層の層間接着剤の劣化が少なくなり、長期間にわたって該層間接着剤の接着力が維持され、基材シートからEVA層が剥離するのを防止できることが実証された。
【0095】
表2の結果より、基材シートとしてPEN製の基材シートを用いた実施例1〜17の保護シートは、PET製の基材シートを用いた比較例1,2の保護シートと比べ、フィルム強度(破断強度)の保持率が高く、高湿熱雰囲気中でも機械強度の劣化が抑制でき、また水蒸気透過率も変化も少なかった。
従って、本発明によれば、耐湿熱性、ガスバリア性に優れており、湿熱環境下における層間接着剤の劣化が少なく耐久性に優れた太陽電池モジュール用保護シートを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の保護シートは、耐湿熱性、ガスバリア性に優れており、湿熱環境下における層間接着剤の劣化が少なく耐久性に優れている。本発明の保護シートを太陽電池モジュール本体に固定して太陽電池モジュールを構成することによって、安全性、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 表面保護シート
20 裏面保護シート
30 封止材
40 太陽電池セル
50 太陽電池モジュール
60A〜60K 保護シート
61 基材シート
62 熱可塑性樹脂層
63 層間接着剤層
64 熱可塑性樹脂層
65 フッ素樹脂コート層(フッ素樹脂層)
66 フッ素樹脂フィルム(フッ素樹脂層)
67 シリカ蒸着PET層(ガスバリアフィルム層)
68 熱可塑性樹脂層
69 Al層(金属層)
70 オレフィン系樹脂層
71 熱可塑性樹脂層
72 白色PET層
73 熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレート製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項2】
前記基材シートの一方の面側に熱可塑性樹脂層が積層され、前記基材シートの他方の面側にフッ素樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項3】
前記基材シートと前記フッ素樹脂層との間にガスバリアフィルム層が積層されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項4】
前記基材シートの両面側にフッ素樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項5】
前記基材シートの一方の面側に、金属層が積層され、該金属層に熱可塑性樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項6】
前記基材シートの一方の面側に、金属蒸着熱可塑性樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用保護シートが接着されてなる太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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