説明

太陽電池モジュール用封止材、及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】オレフィン系の太陽電池モジュール用封止材であって、太陽電池モジュールの製造工程において、生産性を高める上での障害となっているトリミング工程が不要であり、太陽電池モジュールの生産性を向上させることのできる太陽電池モジュール用封止材シートを提供すること。
【解決手段】密度が0.900g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、ゲル分率が80%以下であり、100℃以上150℃以下における複素粘度の値が3.0×10Pa・s以上5.0×10Pa・s以下である太陽電池モジュール用封止材シートとすることによって、密着性の保持と流動性の抑制を両立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュール用封止材シート、及びそれを用いた太陽電池モジュールに関する。更に詳しくは、オレフィン系の封止材シートであって、太陽電池モジュールとしての一体化の際に、封止材シートの側辺の端面を切除処理するトリミング工程が不要である太陽電池モジュール用封止材シートと、それを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。現在、種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され、提案されている。一般に太陽電池モジュールは、透明前面基板と太陽電池素子と裏面保護シートとが、封止材シートを介して積層された構成である。
【0003】
太陽電池モジュール内に充填され、太陽電池素子を外部衝撃から保護し、又太陽電池モジュール内への水分の侵出を防止するために使用される封止材シートとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が最も一般的なものとして使用されてきたが、近年は、EVA樹脂の欠点である酢酸ガスの発生という問題を解決し、且つ、EVA樹脂の封止材シートと同等以上の耐候性、耐久性を備えるものとして、ポリオレフィン系の樹脂を使用した太陽電池モジュール用封止材シートが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、太陽電池モジュールの製造に際しては、そのような封止材シートを含む構成部材を積層して積層体とする積層工程と、積層体を真空熱ラミネート加工により一体化する一体化工程とを要するが、更に加えて、一体化工程後の上記積層体周辺部にはみ出した不要な封止材シートの不要部分を切除するトリミング工程が必須となっていた(特許文献2参照)。そして、このトリミング工程が必須であることが、太陽電池モジュールの製造工程において、生産性を高める上での大きな障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−91611号公報
【特許文献2】特開2001−177126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池モジュールの製造工程において、生産性を高める上での障害となっているトリミング工程を不要とするために、例えば、封止材組成物として、融点の高い樹脂や、架橋処理を行うことによって熱処理時の流動性を抑えた樹脂を用いることが考えられる。しかし、そのような封止材組成物を用いると、太陽電池モジュールとしての一体化の際に積層される他の構成部材の凹凸に対する回り込み特性が低くなり、太陽電池モジュール用封止材シートに求められる密着性や絶縁性を充分に確保できない。又、ラミネート加工時の圧力や温度を低くすることによって、封止材シートのはみ出しを防ぐことも考えられるが、この方法も、密着性、絶縁性の観点からは好ましいものではない。
【0007】
凹凸に対する回り込み特性が高く、且つ、流動性の低い封止材シートであれば、太陽電池モジュール用の封止材シートに求められる物性を保持しつつ、太陽電池モジュールの製造過程においてトリミング工程を不要とすることが可能であるが、そのような封止材シートは未だ存在せず、そのような物性を備える封止材シートの新たな開発が求められていた。
【0008】
本発明は以上の課題を解決するためになされたものであり、太陽電池モジュール用封止材シートに求められる密着性を備える封止材シートであって、他の構成部材と一体化して太陽電池モジュールを製造する際のトリミング工程を不要とすることが可能であり、太陽電池モジュールの生産性を向上させることのできる太陽電池モジュール用封止材シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、密度0.900g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有する太陽電池モジュール用封止材シートであって、100℃以上150℃以下における複素粘度が3.0×10Pa・S以上5.0×10Pa・S以下である太陽電池モジュール用封止材シートを用いることによって、太陽電池モジュールの製造工程において、従来必須とされていたトリミング工程を不要とすることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 密度0.900g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、ゲル分率が80%以下であり、100℃から150℃における複素粘度の値が3.0×10Pa・s以上5.0×10Pa・s以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用封止材シート。
【0011】
(2) ゲル分率が2%以上80%以下である(1)に記載の太陽電池モジュール用封止材シート。
【0012】
(3) ゲル分率が40%以上である(2)に記載の太陽電池モジュール用封止材シート。
【0013】
(4) 密度0.900g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、ゲル分率が80%以下であり、100℃から150℃における複素粘度の値が3.0×10Pa・s以上5.0×10P以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用封止材シートが配置されている太陽電池モジュールであって、前記太陽電池モジュール用封止材シートの側辺の端面が切除処理されていないことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各基材間の高い密着性を備える太陽電池モジュールをトリミング工程を経ずに製造することを可能とする太陽電池モジュール用封止材シート、及びそのような封止材シートを用いた太陽電池モジュールを提供することにより、太陽電池モジュールの生産効率を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて、その層構成の例、及びその側辺の端面の態様の例を示す断面模式図である。
【図2】従来の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて、その層構成の例及びその側辺の端面の態様の例を示す断面模式図である。
【図3】従来の太陽電池モジュールの製造方法の一工程であるトリミング工程のプロセス及びその側辺の端面の態様の例を示す模式図である。
【図4】実施例及び比較例の封止材シートの温度毎の複素粘度の値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る太陽電池モジュール用封止材シートに用いる封止材組成物(以下、単に封止材組成物とも言う)、太陽電池モジュール用封止材シート(以下、単に封止材シートとも言う)、太陽電池モジュールを順次説明し、次に、太陽電池モジュールの製造方法を説明する。
【0017】
<封止材組成物>
本発明の封止材組成物は、所定の物性を有する低密度ポリエチレンと、架橋剤と、を所定の割合で含有する。以下、上記必須成分について説明した後、その他の樹脂、その他の成分について説明する。
【0018】
[低密度ポリエチレン]
本発明においては密度が0.900g/cm以下の低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。直鎖低密度ポリエチレンはエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.900g/cm以下の範囲内、好ましくは0.890g/cm以下の範囲内、より好ましくは0.870〜0.885g/cmの範囲である。この範囲であれば、シート加工性を維持しつつ良好な柔軟性と透明性を付与することができる。
【0019】
本発明においてはメタロセン系直鎖低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものである。このようなポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一である。このため、分子量分布が狭く、上記のような超低密度にすることが可能であり封止材シートに対して柔軟性を付与できる。柔軟性が付与される結果、封止材シートと透明前面基板との密着性、封止材シートと裏面保護シートとの密着性等の封止材シートと基材との密着性が高まる。
【0020】
また、結晶性分布が狭く、結晶サイズが揃っているので、結晶サイズの大きいものが存在しないばかりでなく、低密度であるために結晶性自体が低い。このため、シート状に加工した際の透明性に優れる。したがって、本発明の封止材組成物からなる封止材シートが透明前面基板と太陽電池素子との間に配置されても発電効率はほとんど低下しない。
【0021】
低密度ポリエチレンのα−オレフィンとしては、好ましくは分枝を有しないα−オレフィンが好ましく使用され、これらの中でも、炭素数が6〜8のα−オレフィンである1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンが特に好ましく使用される。α−オレフィンの炭素数が6以上8以下であることにより、封止材シートに良好な柔軟性を付与することができるとともに良好な強度を付与することができる。その結果、封止材シートと基材との密着性が更に高まる。
【0022】
低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR)は、JIS−K6922−2により測定した190℃、荷重2.16kgにおけるMFR(本明細書においては、以下、この測定条件による測定値をMFRと言う。)が0.5g/10分以上40g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以上40g/10分以下であることがより好ましい。この範囲であれば、封止材シートの流動性を保持し、積層される他の構成部材の凹凸に対する回り込み特性を付与することができる。
【0023】
本発明の封止材組成物には、更に、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有させてもよい。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける他の部材への封止材シートの接着性を向上することができる。
【0024】
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、例えば、特開2003−46105号公報に記載されている方法で製造でき、当該樹脂を太陽電池モジュールの封止材組成物の成分として使用することにより、強度、耐久性等に優れ、且つ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、その他の諸特性に優れ、更に、太陽電池モジュールを製造する加熱圧着等の製造条件に影響を受けることなく極めて優れた熱融着性を有し、安定的に、低コストで、種々の用途に適する太陽電池モジュールを製造し得る。
【0025】
低密度ポリエチレンとグラフト重合させるエチレン性不飽和シラン化合物として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランより選択される1種以上を使用することができる。
【0026】
エチレン性不飽和シラン化合物の含量であるグラフト量は、後述するその他のポリエチレン系樹脂を含む封止材組成物中の全樹脂成分の合計100質量部に対して、例えば、0.001〜15質量%位、好ましくは、0.01〜5質量%位、特に好ましくは、0.05〜2質量%位となるように適宜調整すればよい。本発明において、エチレン性不飽和シラン化合物の含量が多い場合には、機械的強度及び耐熱性等に優れるが、含量が過度になると、引っ張り伸び及び熱融着性等に劣る傾向にある。
【0027】
封止材組成物に含まれる上記の密度が0.900g/cm以下のポリエチレンの含有量は、組成物中で好ましくは10質量%以上99質量%以下、より好ましくは50質量%以上99%質量以下であり、更に好ましくは90質量%以上99%質量以下である。封止材組成物の融点が80℃未満となる範囲内であれば他の樹脂を含んでいてもよい。これらは、例えば添加用樹脂として用いてもよく、後述のその他の成分をマスターバッチ化するために使用してもよい。
【0028】
[架橋剤]
架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。
【0029】
架橋剤の含有量としては、封止材シートの全樹脂成分の合計100質量部に対して0.02質量部以上2.0質量部以下の含有量であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上1.5質量部以下の範囲である。0.3質量部以上の架橋剤を添加することにより、本発明の封止材シートに用いる低密度ポリエチレンにも十分な耐久性を付与することができる。一方、架橋剤の添加量が1.5質量部を超えると、架橋工程における架橋の進行が過剰となり、モジュール化の際の他部材の凹凸への追従性が不十分となり好ましくない。
【0030】
[架橋助剤]
本発明においては架橋助剤として、炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーを用いることができる。架橋助剤としてより好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものが用いられる。これにより、太陽電池モジュールとしての一体化工程を終えるまでのいずれかの工程において、適度な架橋反応を促進させて、太陽電池モジュールとして一体化された状態における封止材シートのゲル分率を80%以下とする。
【0031】
又、本発明の封止材シートを太陽電池モジュールとしての一体化工程前に架橋処理を行った架橋済みの封止材シートとする場合においては、架橋助剤として上記の炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーを用いる。これにより適度な架橋反応を促進させてゲル分率を2%以上80%以下とする。
【0032】
本発明においてはこの架橋助剤が直鎖低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。これにより透明性と低温柔軟性に優れる架橋済みの封止材シートを得ることができる。
【0033】
具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等のポリアリル化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等のポリ(メタ)アクリロキシ化合物、二重結合とエポキシ基を含むグリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル及びエポキシ基を2つ以上含有する1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物を挙げることができる。これらは単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
架橋助剤の含有量としては、封止材シートの全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.01質量部〜3質量部含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量部〜2.0質量部の範囲である。この範囲内であれば適度な架橋反応を促進させて架橋済封止材シートのゲル分率を80%以下とすることができる。ゲル分率を80%以下にすることによって、従来のEVAと同程度の透明性を有しつつ、−50℃から0℃付近の低温領域でEVA以上の柔軟性を得ることができるので好ましい。ゲル分率が80%を超えると、柔軟性が低下し、又、ガラス等に対する密着性が不充分となる点において好ましくない。
【0035】
[密着性向上剤]
封止材組成物に、密着性向上剤を添加することにより、更に、ガラス等の他基材との密着耐久性を高めることができる。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。尚、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0036】
密着性向上剤として、シランカップリング剤を添加する場合、その含有量は、封止材組成物の全樹脂成分の合計100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であり、上限は好ましくは5.0質量部以下、以下である。シランカップリング剤の含有量が上記範囲にあり、且つ、封止材組成物を構成するポリオレフィン系の樹脂に適量のエチレン性不飽和シラン化合物の含量されているときには、密着性がより好ましい範囲へと向上する。尚、この範囲を超えると、製膜性が低下したり、また、シランカップリング剤が経時により凝集固化し封止材シート表面で粉化する、いわゆるブリードアウトが発生する場合があり好ましくない。
【0037】
[ラジカル吸収剤]
ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を更に細かく調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の使用量は、封止材シートの全樹脂成分の合計100質量部に対して0.01質量部〜3質量部含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量部〜2.0質量部の範囲である。
【0038】
[その他の成分]
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の封止材組成物から作製された封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材シートの全樹脂成分の合計100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
【0039】
耐候性マスターバッチとは、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤及び上記の酸化防止剤等をポリエチレン等の樹脂に分散させたものであり、これを封止材組成物に添加することにより、封止材シートに良好な耐候性を付与することができる。耐候性マスターバッチは、適宜作製して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。耐候性マスターバッチに使用される樹脂としては、本発明に用いる直鎖低密度ポリエチレンでもよく、上記のその他の樹脂であってもよい。
【0040】
なお、これらの光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤及び酸化防止剤は、それぞれ1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0041】
<封止材シート>
本発明の太陽電池モジュール用封止材シートは、上記の封止材組成物を、その融点を超える温度で溶融成形してシート状又はフィルム状の封止材シートとしたものであり、オレフィン系樹脂を用いた太陽電池モジュール用封止材シートにおいて、従来着目されることのなかった封止材シートの複素粘度に着目して、封止材シートの複素粘度を所定の範囲に限定した点に特徴がある。具体的には、本発明の封止材シートは、100℃以上150℃以下における複素粘度が、3.0×10Pa・S以上5.0×10Pa・S以下である。複素粘度をこの範囲とすることによって、太陽電池モジュール用封止材シートに求められる密着性と凹凸に対する回り込み特性を確保しながら、熱ラミネート処理時の流動性を適度に抑制することが可能であり、これにより、太陽電池モジュールとしての一体化工程における封止材シートの不要なはみ出しを防いで太陽電池モジュールの製造において従来必須の工程であったトリミング工程を不要とすることができるものである。複素粘度が3.0×10Pa・s未満であると、太陽電池モジュールとしての一体化工程において行われる熱ラミネート工程時に封止材シートの積層体からのはみ出しを防ぐことができず、トリミング工程が必須となる。5.0×10Pa・sを越えると、熱ラミネート工程時の凹凸に対する回り込み特性が不充分となり密着性、絶縁性が悪化するため好ましくない。
【0042】
ここで、複素粘度(Pa・s)とは、回転型レオメーター(Anton Paar製 MCR301)を用いて、パラレルプレートジオメトリー(直径8mm)、応力0.5N、歪み5%、角速度0.1(1/s)の条件において測定し、これを複素粘度としたものである。
【0043】
本発明の封止材シートは、封止材シートの溶融形成後の段階において架橋処理が行われているものであるか否かについては特に限定されないが、上記溶融形成後、太陽電池モジュールとしての一体化工程前に、架橋処理を施した架橋済みの封止材シートであることが好ましい。架橋済みの封止材シートは、ベースとなる低密度ポリエチレンとしてMFRの高いものを選択しても熱ラミネート工程における流動を抑制できるためである。
【0044】
本発明の封止材シートのゲル分率は80%以下であり、特に架橋済みの封止材シートについては、ゲル分率は2%以上80%以下である。ゲル分率がこれらの範囲にあることにより、凹凸への封止性を良好に維持できる。尚、ゲル分率を40%以上とすることで、成形時の寸法安定性を極めて高いものとすることができるため、太陽電池モジュール一体化する工程における封止材シートの不要部分のはみ出しを極めて小さくすることができる。
【0045】
ここで、ゲル分率(%)とは、封止材シート0.1gを樹脂メッシュに入れ、60℃トルエンにて4時間抽出したのち、樹脂メッシュごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の質量比較を行い残留不溶分の質量%を測定しこれをゲル分率としたものである。
【0046】
尚、上記の封止材組成物に含まれる全ベース樹脂の平均MFRを6g/10min以下とした場合には、ゲル分率が25%以上であれば、40%未満であっても、成形時の寸法安定性を必要な程度にまで高めることも可能である。このようにして得た封止材シートも、太陽電池モジュール一体化する工程における封止材シートの不要部分のはみ出しを極めて小さくすることができる
【0047】
<封止材シートの製造方法>
[シート化工程]
上記封止材組成物の溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。その際、成形温度の下限は封止材組成物の融点を超える温度であればよく、上限は使用する架橋剤の1分間半減期温度に応じて、押し出し製膜中に架橋が開始しない温度であればよく、それらの範囲内であれば特に限定されない。この工程により、未架橋の封止材シートを得ることができる。
【0048】
[架橋工程]
上記のシート化工程後の未架橋の封止材シートに架橋処理を施す架橋処理工程を、シート化工程の終了後、且つ、封止材シートを他の部材と一体化する太陽電池モジュールとしての一体化の工程の開始前に行うことにより。架橋済の封止材シートを得ることができる。架橋済みの封止材シートのゲル分率は2%以上80%以下である。
【0049】
架橋工程は、加熱処理が好ましいが、それに限らずUV(紫外線)やEB(電子線)等の電磁波による架橋処理であってもよい。加熱処理の場合、個別の架橋条件は特に限定されず、一般的な架橋処理条件の範囲内で、トータルな処理結果として、上記のゲル分率となるように適宜設定すればよい。なお、架橋処理が加熱処理である場合には、アニール処理を兼ねてもよい。尚、架橋工程はシート化工程に続いて連続的にインラインで行われてもよく、オフラインで行われてもよい。
【0050】
尚、太陽電池モジュール一体化する工程前の架橋処理は必ずしも必須ではなく、上記において説明した封止材組成物を用いた未架橋の封止材シートを太陽電池モジュールとしての一体化の工程において架橋してもよい。
【0051】
<太陽電池モジュール>
図1は、本発明の太陽電池モジュールについて、その層構成の例及びその側辺の端面の態様の例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。
【0052】
太陽電池モジュール1は、前面封止材層3及び背面封止材層5として本発明の封止材シートを用いることにより、その製造工程におけるトリミング工程が不要とされている。そのため、太陽電池モジュール1として一体化された後において、前面封止材層3及び背面封止材層5を構成する封止材シートの側辺の端面8が切除処理されていないことを特徴とする。
【0053】
太陽電池モジュール1は、トリミング工程を経ていないため、図1(A)〜(C)に示す通り、封止材シートの側辺の端面8が平坦化されておらず、微少な凹凸を有する状態となっている。但し、この凹凸は太陽電池モジュールとしての密着性能や意匠性に実質的な影響を及ぼさない程度の微少なものであり、太陽電池モジュール1は、密着性等、太陽電池モジュールに求められる好ましい物性を保持しつつ、その生産性を大きく向上させたものとなっている。
【0054】
ここで、従来公知の封止材シートを用いて太陽電池モジュールを製造する場合においては、トリミング工程を経ることが必須であった。「封止材シートの側辺の端面が切除処理」されることが必須である従来の太陽電池モジュール10の封止材シートの側辺の端面8の態様の具体例として、図2(A)〜(C)の態様を挙げることができる。図2(A)は、流動性が高く封止材シートのはみ出した部分が下面に積層される他の部材側に垂れ下がってしまうためトリミング工程が必要である場合、図1(B)は、封止材シートの変化が大きく、変化分を考慮してモジュール化前の封止材シートのサイズを小さく成形しておくと隙間が空いて封止性に問題が生じてしまうためトリミング工程が必要である場合、又、図2(C)は、封止材シートの形状は変化するが流動性は低く下面に積層される他の部材側に垂れ下がることはないが、形状変化が外部フレームの装着等に支障があるほど大きく、トリミング工程が必要である場合である。
【0055】
図2(A)〜(C)に示す場合においては、図3(A)に示す通り、スクレーパー等の切除手段7によって封止材シートのはみ出し部分を切除する切除処理を行うトリミング工程が必須であり、当該トリミング工程を経て製造された従来の太陽電池モジュール10においては、図3(B)に示す通り、封止材シートの側辺の端面8が切除処理によって平坦化されていることが特徴となっている。
【0056】
一方、「封止材シートの側辺の端面が切除処理されていない」本発明の太陽電池モジュール1の当該端面の態様の具体例としては、図1(A)〜(C)の態様を挙げることができる。図1(A)は、封止材シートの形状の変化が極めて小さいためにトリミング工程が不要である場合、図1(B)は、封止材シートの形状は若干変化するが、変化分が大きくなく、変化分を考慮してモジュール化前の封止材シートのサイズを若干小さく成形しておくことによりトリミング工程を不要とすることができる場合、又、図1(C)は、封止材シートの形状は若干変化するが下面に積層される他の部材側に垂れ下がることはなく、形状変化が外部フレームの装着等に支障がない範囲であり、トリミング工程を不要とすることができる場合である。
【0057】
トリミング工程を経ずに製造された本発明の太陽電池モジュール1は封止材シートの端面8がトリミング処理によって平坦化されていないことが特徴となっている。封止材シートの側辺の端面8の態様が、上記図1(A)〜(C)に示す3つの態様のいずれの態様であっても、或いは、それ以外の態様であったとしても、封止材シートの組成を本発明の範囲に限定することによってトリミング工程を不要としたものである限り、端面の具体的形状の詳細に関わらず本発明の範囲内である。
【0058】
尚、本発明の太陽電池モジュール1において、前面封止材層3及び背面封止材層5以外の部材である、透明前面基板2、太陽電池素子4及び裏面保護シート6については、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。又、本発明の太陽電池モジュール1は、上記部材以外の部材を含んでもよい。
【0059】
<太陽電池モジュールの製造方法>
以下に、本発明の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してなる積層体(以下、単に積層体とも言う。)を、熱ラミネーション法等の成形法により、一体成形体として加熱圧着成形する熱ラミネート工程を経て製造することができる。
【0060】
ここで、従来の製造方法においては、図3に示すように、上記の熱ラミネート工程に引き続き、熱ラミネート工程における封止材シートの溶融、拡大によって、積層体周辺部にはみ出した封止材シートの不要部分を切除するトリミング工程が必須であった。実際には、不要部分を切除することを想定して、透明前面基板2と裏面保護シート6として完成時の面積より大きな面積を有するものを予め積層し、ラミネート工程後に封止材シートの不要部分と併せて透明前面基板2と裏面保護シート6の不要部分を同時に切除して、所望のサイズの太陽電池モジュールとする製造方法が広く行われていたが、いずれにしても、このトリミング工程が必須であることが太陽電池モジュールの生産効率を高める上での障害となっていた。
【0061】
本発明の太陽電池モジュールの製造においては、前面封止材層3及び背面封止材層5として本発明の封止材シートを用いることにより、トリミング工程を不要とした。これにより、太陽電池モジュールの生産効率が大きく向上した。
【0062】
以上、実施形態を示して本発明を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において、適宜変更を加えて実施することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<封止材シートの製造>
下記表1のそれぞれの組成の成分を質量部単位で混合して溶融して各封止材組成物とし、各封止材組成物を、常法Tダイ法により厚さ400から480μmとなるように成膜して未架橋の封止材シートを得た。成膜温度は90℃以上100℃未満とした。
LLDPE1(ベース樹脂M1):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm、MFR30g/10minであるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
LLDPE2(ベース樹脂M2):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFR3.1g/10minであるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
シラン変性ポリエチレン系樹脂(ベース樹脂S1):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFR8g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得た、密度0.884g/cm、MFR6.0g/10minであるシラン変性ポリエチレン系樹脂。
シラン変性ポリエチレン系樹脂2(ベース樹脂S2):密度0.881g/cmであり、190℃でのMFRが2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得た、密度0.884g/cm、MFR1.8g/10minであるシラン変性ポリエチレン系樹脂。
架橋剤1(表1において架橋1と標記):t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名ルペロックスTBEC)
架橋剤2(表1において架橋2と標記):2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富株式会社製、商品名ルペロックス101)
架橋助剤(表1において架助と標記):トリアリルイソシアヌレート(Statomer社製、商品名SR533)
UV吸収剤(表1においてUVと標記):ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12
耐候安定剤(表1において耐候と標記):チバ・ジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770
酸化防止剤(表1において酸防と標記):チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1、3及び比較例1〜3の未架橋の各封止材シートについて、それぞれ、下記の条件で架橋処理を施して、架橋済みの封止材シートを得た。実施例2については架橋処理を行わずに未架橋の封止材シートのままとした。
実施例1:架橋温度220℃、架橋時間2.5分で、オーブンによる架橋処理
実施例3:電子線照射装置(岩崎電気株式会社製、製品名EC250/15/180L)を用い、加速電圧200kV、照射強度4.5Mradで両面照射して計10Mradを照射することによる架橋処理
比較例1:架橋温度220℃、架橋時間2.0分で、オーブンによる架橋処理
比較例2:架橋温度200℃、架橋時間2.0分で、オーブンによる架橋処理
比較例3:架橋温度240℃、架橋時間4.0分で、オーブンによる架橋処理
【0066】
実施例1〜3及び比較例1〜3の各封止材シートのゲル分率を測定した結果は、下記の表2の通りであった。
【0067】
【表2】

【0068】
又、実施例1〜3及び比較例1〜3の各封止材シートについて、70℃〜150℃の範囲において、下記の方法で複素粘度を測定した。結果を図4に示す。
[複素粘度の試験方法]
複素粘度は、回転型レオメーター(Anton Paar製 MCR301)を用いて、パラレルプレートジオメトリー(直径8mm)、応力0.5N、歪み5%、角速度0.1(1/s)の条件にて測定した。
【0069】
<評価例1>
2枚のガラス基板(青板ガラス 150mm×150mm×3.0mm)の間に、同サイズにカットした実施例1〜3及び比較例1〜3の封止材シートを積層した積層体を、真空加熱ラミネータで、150℃、18分で、100kPaで加圧し、熱ラミネート処理を行って一体化し、それぞれの実施例及び比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の試験条件において、封止材シートの不要部分のはみ出しの有無を評価した。結果を表3に示す。
[封止材シートの不要部分のはみ出しの有無の試験方法]
上記太陽電池モジュール評価用サンプルにおいて、封止材シートのガラス基板の各側辺からはみ出している部分を観察し、封止材の一部がガラス基板の端部からの最大幅で3mm以上露出しているもの、及び、封止材の一部がガラス基板の端面に沿って垂れ下がっているものを「はみ出し有り」とし、それ以外のものを「はみ出し無し」として評価した。
【0070】
<評価例2>
表面に凹凸のあるシボガラスからなるガラス基板(白板フロート半強化ガラス 3KWE33 75mm×50mm×3.2mm)上に、15mm幅にカットした実施例1〜3及び比較例1〜3の封止材シートを積層した積層体を150℃、18分で、真空加熱ラミネータで処理を行い、それぞれの実施例及び比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の試験条件における密着性を評価した。結果を表3に示す。
[密着性の試験方法]
剥離試験:上記太陽電池モジュール評価用サンプルにおいて、ガラス基板上に密着している封止材シートを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い密着強度を測定した。
【0071】
【表3】

【0072】
表2及び図3より、複素粘度が特定の範囲にある実施例1〜3の封止材シートは、凹凸のあるシボガラスに対しても充分な密着強度を備えており、太陽電池モジュール用封止材として凹凸への回り込み特性を考慮に入れた上での十分に好ましい密着性を備えている。そして、実施例1〜3の封止材シートは、なお且つ、太陽電池モジュールとしての一体化の工程において、トリミング工程が不要であることが分かる。尚、複素粘度の値が好ましい範囲にない比較例1、2はトリミング工程が必須となり、ゲル分率の高い比較例3は、トリミング工程は不要であるものの、密着性が不充分となることが分かる。
【符号の説明】
【0073】
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
8 封止材シートの側辺の端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度0.900g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、
ゲル分率が80%以下であり、
100℃から150℃における複素粘度の値が3.0×10Pa・s以上5.0×10Pa・s以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用封止材シート。
【請求項2】
ゲル分率が2%以上80%以下である請求項1に記載の太陽電池モジュール用封止材シート。
【請求項3】
ゲル分率が40%以上である請求項2に記載の太陽電池モジュール用封止材シート。
【請求項4】
密度0.900g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、
ゲル分率が80%以下であり、
100℃から150℃における複素粘度の値が3.0×10Pa・s以上5.0×10P以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用封止材シートが配置されている太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池モジュール用封止材シートの側辺の端面が切除処理されていないことを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−41974(P2013−41974A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177701(P2011−177701)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】