説明

太陽電池モジュール用枠体およびその製造方法、並びに太陽電池モジュール

【課題】止水部材を所望の位置に配設するとともに止水部材の位置ずれを抑制して良好な止水性能および緩衝効果を得ることができる太陽電池モジュール用枠体を提供する。
【解決手段】周縁部が挿入される溝部27が長手方向に沿って設けられた枠本体21と、軟質樹脂を主成分とし、溝部27の内壁37を被覆するように押出成形により枠本体21と一体化され、周縁部が溝部27に挿入されたときに周縁部と溝部27の内壁37との間に介在する止水部材23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用枠体およびその製造方法、並びに太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への影響が少ない太陽エネルギーを利用して発電する太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池の主要部である太陽電池モジュールは、太陽電池セルなどを含む太陽電池モジュール本体と、このモジュール本体の周縁部に沿って取り付けられる枠体とを備えている。枠体はモジュール本体の周縁部を挿入する溝部を有している。
【0003】
このような太陽電池モジュールでは、モジュール本体と枠体との間の止水性能を確保するために、モジュール本体の周縁部と枠体の溝部との間にゴム、熱可塑性エラストマーなどからなる止水部材を介在させている。この止水部材を介在させることにより、モジュール本体を振動などの衝撃から保護する緩衝効果を得ることもできる。
【0004】
止水部材としては、モジュール本体の周縁部と枠体の溝部との間に注入されるシーリング材、モジュール本体の周縁部と枠体の溝部との間の隙間形状に合わせて成形されたエラストマーなどからなる成形体などが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−112960号公報
【特許文献2】特開2001−230440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、止水部材としてシーリング材を用いる場合には、モジュール本体の周縁部を枠体の溝部に挿入した後、これらの隙間にシーリング材を注入するので、隙間全体にシーリング材が行き渡らないことがある。このようにシーリング材が所望の位置に行き渡らない場合には止水性能および緩衝効果が十分に得られない。
【0007】
また、止水部材としてエラストマーなどからなる成形体を用いる場合には、成形体がモジュール本体の周縁部に嵌合されているだけであるので、溝部への挿入時などに簡単に位置ずれしてしまうことがある。このように枠体の溝部内において止水部材が所望の位置からずれると、止水性能および緩衝効果が十分に得られない。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、止水部材を所望の位置に配設するとともに止水部材の位置ずれを抑制して良好な止水性能および緩衝効果を得ることができる太陽電池モジュール用枠体およびこれを備えた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽電池モジュール用枠体は、太陽電池モジュール本体の周縁部に沿って取り付けられる長尺状の枠体であって、前記周縁部が挿入される溝部が長手方向に沿って設けられた金属製の枠本体と、軟質樹脂を主成分とし、前記溝部の内壁を被覆するように押出成形により前記枠本体と一体化され、前記周縁部が前記溝部に挿入されたときに前記周縁部と前記溝部の内壁との間に介在する止水部材と、を備えている。
【0010】
この構成では、止水部材が軟質樹脂を主成分とし、押出成形によって溝部の内壁を被覆して枠本体と一体化されているので、溝部内において止水部材を所望に位置に配設するとともに止水部材が位置ずれするのを防止することができる。これにより、良好な止水性能および緩衝効果を得ることができる。
【0011】
前記溝部は、前記周縁部を挿入する挿入方向の手前側に前記長手方向に沿って開口する開口部を有しており、前記溝部の内壁は、前記周縁部が前記溝部に挿入されたときに前記周縁部の上面に対向する上側面と、前記周縁部の下面に対向する下側面と、前記挿入方向の奥側に位置して前記周縁部の端面に対向する奥側面とを有しており、前記止水部材は、前記上側面、奥側面および下側面を膜状に覆う止水部材本体と、前記上側面を覆う前記止水部材本体から前記下側面に向かって突出するとともに前記長手方向と略平行に延びる上側凸部と、前記下側面を覆う前記止水部材本体から前記上側面に向かって突出するとともに前記長手方向と略平行に延びる下側凸部とを有しているのが好ましい。
【0012】
この構成では、止水部材が上側面を覆う止水部材本体から延びる上側凸部と下側面を覆う止水部材本体から延びる下側凸部とを有しているので、モジュール本体の周縁部が溝部に挿入されるときには、周縁部は、上側凸部および下側凸部と長手方向に線接触または帯状に面接触することになり、上側凸部および下側凸部以外の部位である止水部材本体との接触面積が小さくなる。これにより、モジュール本体を溝部に挿入するときの摩擦力を小さくすることができるので、モジュール本体を溝部に挿入しやすくなるとともに、挿入時の摩擦力が原因で止水部材がはがれるなどの不具合が生じるのを抑制することができる。
【0013】
前記止水部材は、互いに略平行に配列された複数の前記上側凸部と、互いに略平行に配列された複数の前記下側凸部とを有しているのが好ましい。
【0014】
この構成では、上側凸部および下側凸部がそれぞれ複数形成されているので、長手方向に延びる線接触領域または帯状の面接触領域が溝部の手前側から奥側に向かって上下面にそれぞれ複数形成されることになる。これにより、止水性能および緩衝効果をより高めることができる。
【0015】
前記上側凸部と前記下側凸部は前記挿入方向における位置が交互になるように配設されているときには、モジュール本体の周縁部が挿入方向の手前側から奥側に移動するときに周縁部の上面と下面が上側凸部および下側凸部にそれぞれ交互に接触することになるので、上側凸部と下側凸部とが対向して配置されている場合と比較して挿入時の摩擦力を小さくすることができる。これにより、モジュール本体を溝部にさらに挿入しやすくなるとともに、挿入時の摩擦力が原因で止水部材がはがれるなどの不具合が生じるのをさらに抑制することができる。
【0016】
前記下側凸部の突出高さが前記上側凸部の突出高さよりも大きいときには、モジュール本体の重さの大半を受ける下側凸部における緩衝効果をより高めることができる。
【0017】
前記上側凸部および前記下側凸部の突出高さが前記挿入方向の手前側から奥側に向かうにつれて大きくなっているときには、モジュール本体の周縁部を溝部に挿入する過程において、挿入方向の手前側では挿入時の摩擦力を小さくして挿入しやすくする一方で、挿入方向の奥側においてはモジュール本体の周縁部と上側凸部および下側凸部との接触面積を大きくして止水性能および緩衝効果を高めることができる。また、溝部の奥側においてモジュール本体の周縁部を挟持する十分な保持力も確保できる。
【0018】
前記上側凸部および前記下側凸部が突出方向の先端側に向かうにつれて先細る形状であるときには、上側凸部および下側凸部とモジュール本体の周縁部との接触面積をさらに小さくすることができる。これにより、モジュール本体の挿入時の摩擦力をさらに低減できるので、周縁部を溝部にさらに挿入しやすくなる。
【0019】
前記止水部材は、前記奥側面を覆う前記止水部材本体から前記開口部側に向かって突出するとともに前記長手方向と略平行に延びる奥側凸部をさらに有しているのが好ましい。
【0020】
この構成では、溝部の奥側に奥側凸部を有しているので、モジュール本体の周縁部の端面に対する緩衝効果を高めることができる。また、太陽電池モジュール本体が例えば温度上昇により膨張した場合には、奥側凸部が変形することにより、モジュール本体の熱膨張を吸収することができる。
【0021】
前記奥側凸部が、突出高さよりも上下方向の幅の方が大きい扁平な形状を有しているときには、周縁部の端面との接触面積を大きくすることができるので、モジュール本体に対する緩衝効果をより高めることができる。
【0022】
前記挿入方向の手前側の前記下側面は、前記止水部材よりも硬質な硬質樹脂が前記長手方向に沿って被覆されているのが好ましい。通常、モジュール本体の周縁部を溝部に挿入する際には、下側面の手前側にモジュール本体の周縁部を当接した状態で奥側にスライド移動させる。本構成では、スライド移動させるときの周縁部の下面と溝部の下側面の手前側との摩擦力を低減することができるので、モジュール本体の周縁部を溝部にさらに挿入しやすくなる。
【0023】
前記枠本体の外表面が前記止水部材よりも硬質な硬質樹脂により被覆されているときには、枠本体の腐食を抑制して枠体の耐久性を向上させることができる。
【0024】
前記硬質樹脂が押出成形により前記枠本体の外表面に被覆されているときには、硬質樹脂を被覆する塗装などの他の方法に比べて生産性を向上させることができる。
【0025】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール本体と、このモジュール本体の周縁部に沿って取り付けられた上記の太陽電池モジュール用枠体とを備え、前記周縁部と前記溝部の内壁との間に前記止水部材が介在している。
【0026】
本発明の製造方法は、太陽電池モジュール本体の周縁部に沿って取り付けられる長尺状の枠体を製造する方法であって、前記周縁部が挿入される溝部が長手方向に沿って設けられた金属製の枠本体を成形する第1工程と、前記枠本体を長手方向に沿って移動させて金型に設けられた所定形状の貫通口を通過させるとともに、前記金型に設けられて前記貫通口と連通する流路を通じて溶融した軟質樹脂を主成分とする材料を注入することにより、前記周縁部と前記溝部との間に介在させるための止水部材用被膜を前記溝部の内壁に成形する第2工程と、を備えている。
【0027】
この方法では、上記のような押出成形によって止水部材用被膜を溝部の内壁に被覆して枠本体と一体化させることができるので、生産性に優れている。
【0028】
また、本発明の製造方法は、前記第2工程において、前記流路が第1流路であり、前記金型に設けられて前記貫通口と連通する第2流路を通じて溶融した硬質樹脂を注入し、前記枠本体の外表面に前記硬質樹脂被膜を、前記止水部材用被膜と同時に成形するのが好ましい。
【0029】
この方法では、止水部材用被膜と同時に硬質樹脂被膜を枠本体の外表面に成形することができるので、生産性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、止水部材が軟質樹脂を主成分とし、押出成形によって溝部の内壁を被覆して枠本体と一体化されているので、溝部内において止水部材を所望に位置に配設するとともに止水部材が位置ずれするのを防止することができる。これにより、良好な止水性能および緩衝効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態にかかる太陽電池モジュールを示す底面図である。
【図2】(a)は図1における枠体の縦枠を示す断面図であり、(b)は図1における枠体の縦枠を方向S側から見た側面図である。
【図3】(a)は図1における枠体の横枠の断面図であり、(b)は図1における枠体の横枠を方向F側から見た正面図である。
【図4】(a)は本発明の第1実施形態にかかる太陽電池モジュール用枠体の主要部を示す断面図であり、(b)は枠本体の主要部を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる太陽電池モジュール用枠体の主要部を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる太陽電池モジュール用枠体の主要部を示す断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる太陽電池モジュール用枠体の主要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態にかかる太陽電池モジュール11は、太陽電池モジュール本体13と枠体15とを備えている。太陽電池モジュール本体13は、矩形状を有し、例えば、図略のガラス層、封止層、多結晶シリコンなどにより形成された太陽電池セル、耐候性フィルムなどが積層一体化された構造を有している。
【0033】
枠体15は、矩形状の太陽電池モジュール本体13の周縁部に沿って取り付けられるものであって、一対の縦枠17と一対の横枠19とからなる。縦枠17および横枠19は、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料を押出加工することによりそれぞれ成形されている。縦枠17はその両端部に段部17aを有し、横枠19はその両端部に段部17aに適合する形状の段部19aを有している。これらの段部17a,19aは、枠体15がモジュール本体13の周縁部に取り付けられた状態において互いに嵌め合わされてほぼ段差のない角部を形成している。
【0034】
図2(c)および図3(c)に示すように、縦枠17および横枠19は、ほぼ同じ断面形状を有しており、溝部27を有する枠本体21と、溝部27の内壁を被覆する止水部材23と、枠本体21の外表面を被覆する硬質樹脂被膜25とを備えている。止水部材23は、モジュール本体13の周縁部と溝部27との間に介在する。モジュール本体13は、図2(a)および図3(a)に矢印で示す挿入方向Dに向けて溝部27に挿入される。
【0035】
枠本体21は、上下方向に長い略矩形の閉じた空間を有する矩形部21aと、矩形部21aの上面の外側(挿入方向D側)の端部から上方に延びた後、内側に折り曲がり側方に延びる屈曲部21bと、矩形部21aの上面の内側端部から内側の側方に延び、モジュール本体13の挿入時にその下面を支持するフランジ部21cと、矩形部21aの下端から内側の側方に延び、現場設置時の安定性を高めるための座部21dとを有し、矩形部21aの上部、屈曲部21bおよびフランジ部21cにより溝部27が構成されている。
【0036】
矩形部21aにおける内側の側板の内面にはビスを挿入するための挿入溝35が長手方向に沿って上下2箇所に形成されている。また、図2(b)に示すように、縦枠17における両端部の側面にはビスを挿入するための挿入口29が上下2箇所にそれぞれ形成されている。これにより、モジュール本体13の周縁部が枠体15の溝部27に挿入された状態でビスを挿入口29に挿入すると、ビスの先端側が横枠19の挿入溝35にも挿入されて縦枠17と横枠19を連結することができる。また、縦枠17および横枠19の底面に設けられた挿通口31,33に図略のビスを挿入することにより、枠体15がモジュール本体13に固定される。
【0037】
(第1実施形態)
図4(a)は、本発明の第1実施形態にかかる枠体15(縦枠17および横枠19)の主要部を示す断面図であり、図4(b)は枠本体21の主要部を示す断面図である。図4(a),(b)に示すように、枠体15の溝部27は、モジュール本体13の周縁部を挿入する挿入方向Dの手前側に開口する開口部を有している。この開口部は枠体15の長手方向に沿って形成されている。溝部27の上側面から下側面までの長さは、太陽電池モジュール本体13の周縁部の厚みよりも僅かに大きくなるように設計されている。
【0038】
溝部27の内壁37は、モジュール本体13の周縁部の上面に対向する上側面37aと、周縁部の下面に対向する下側面37bと、挿入方向Dの奥側に位置して周縁部の端面に対向する奥側面37cとを有している。
【0039】
止水部材23は、上側面37a、奥側面37cおよび下側面37bをこの順に連続的に膜状に覆う止水部材本体23aと、上側面37aを覆う止水部材本体23aから下側面37bに向かって突出する3つの上側凸部23bと、下側面37bを覆う止水部材本体23aから上側面37aに向かって突出する3つの下側凸部23cと、奥側面37cを覆う止水部材本体23aから開口部側に向かって突出する奥側凸部23dとを有している。
【0040】
止水部材本体23aは、溝部27の内壁37のほぼ全面を覆うように設けられている。また、上側凸部23b、下側凸部23cおよび奥側凸部23dは、長手方向と略平行に枠体15の一端から他端までそれぞれ延設されている。
【0041】
3つの上側凸部23bと3つの下側凸部23cは、挿入方向Dにほぼ等間隔でかつ互いに略平行に並んでいる。また、上側凸部23bと下側凸部23cは一つずつが対になるように上下方向に対向する位置にそれぞれ設けられている。各上側凸部23bおよび各下側凸部23cは、断面が略三角形であり、突出方向の先端側に向かうにつれて先細る形状を有している。
【0042】
奥側凸部23dは、楕円を半分にしたような断面形状を有し、突出高さよりも上下方向の幅の方が大きい扁平な形状を有している。この奥側凸部23dは、モジュール本体13が例えば温度上昇により膨張した場合には、奥側凸部23dが変形することにより、モジュール本体13の熱膨張を吸収することができる。したがって、奥側凸部23dは奥側面を覆う止水部材本体23aの上下方向の略中央付近に設けられているのがよく、奥側面を覆う止水部材本体23aの上方と下方には図4(a)に示すように奥側凸部23dが形成されていない部分を残しておくのがよい。この部分は、奥側凸部23dが変形可能な変形代となる。
【0043】
止水部材23は、軟質樹脂を主成分とし、押出成形により枠本体21と一体化されている。本実施形態のように枠本体21の材料としてアルミニウム、その合金などの金属を用いる場合には、枠本体21と止水部材23との接着性を向上させるために、枠本体21の表面の洗浄、前処理などを行った後で押出成形するのが好ましい。
【0044】
軟質樹脂としては、例えばスチレン系、オレフィン系、エステル系、アミド系、ウレタン系、アクリル系などの熱可塑性エラストマーや、軟質塩化ビニル樹脂などを用いることができる。
【0045】
枠本体21の外表面は止水部材23よりも硬質な硬質樹脂被膜25が形成されている。この硬質樹脂被膜25は押出成形により枠本体の外表面に被覆されている。硬質樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂などのスチレン系樹脂、PET、PBT、PLA、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。
【0046】
また、硬質樹脂被膜25の表面にさらに耐候性を向上させるシートが被覆されていてもよい。耐候性シートとしては、例えば耐候性の高いアクリル樹脂、ASA樹脂などからなるシートを用いたり、上記の硬質樹脂として例示した樹脂に耐候性改良剤を混入して耐候性を向上させた材料からなるシートなどを用いることができる。
【0047】
次に、枠体15の製造方法について説明する。まず、アルミニウムなどの金属材料を押出加工することにより枠本体21を成形する。
【0048】
ついで、この枠本体21を図略の金型の貫通口に長手方向に沿って挿入して金型内を通過させる。このとき、金型の貫通口に溶融した軟質樹脂および溶融した硬質樹脂を別々の注入口からそれぞれ加圧注入する。各注入口は貫通口にそれぞれ連通しており、金型の貫通口内では、軟質樹脂と硬質樹脂が混合しないように仕切りが設けられている。金型の貫通口は、枠本体21に止水部材23および硬質樹脂被膜25が被覆された枠体15の断面形状とほぼ同じ形状に設計されている。これにより、枠本体21の溝部27に止水部材23が被覆されるとともに、枠本体21の外表面に硬質樹脂被膜25を同時に被覆することができる。
【0049】
次に、得られた枠本体21の両端部を縦枠17の段部17aまたは横枠19の段部19aの形状に加工することにより縦枠17および横枠19が得られる。ついで、これらの縦枠17および横枠19をモジュール本体13の周縁部に取り付けてビスで固定することによって太陽電池モジュール11が得られる。
【0050】
以上説明したように、第1実施形態によれば、止水部材23が軟質樹脂を主成分とし、押出成形によって溝部27の内壁37を被覆して枠本体21と一体化されているので、溝部27内において止水部材23を所望に位置に配設するとともに止水部材23が位置ずれするのを防止することができる。これにより、良好な止水性能および緩衝効果を得ることができる。
【0051】
また、第1実施形態によれば、止水部材23が、上側面37aを覆う止水部材本体23aから延びる上側凸部23bと下側面37bを覆う止水部材本体23aから延びる下側凸部23cとを有しているので、モジュール本体13の周縁部が溝部27に挿入されるときには、周縁部は、上側凸部23bおよび下側凸部23cと長手方向に線接触または帯状に面接触することになり、上側凸部23bおよび下側凸部23c以外の部位である止水部材本体23aとの接触面積が小さくなる。これにより、モジュール本体13を溝部27に挿入するときの摩擦力を小さくすることができるので、モジュール本体13を溝27部に挿入しやすくなるとともに、挿入時の摩擦力が原因で止水部材23がはがれるなどの不具合が生じるのを抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態によれば、上側凸部23bおよび下側凸部23cがそれぞれ複数形成されているので、長手方向に延びる線接触領域または帯状の面接触領域が溝部27の手前側から奥側に向かって上下面にそれぞれ複数形成されることになる。これにより、止水性能および緩衝効果をより高めることができる。
【0053】
また、第1実施形態によれば、上側凸部23bおよび下側凸部23cが突出方向の先端側に向かうにつれて先細る形状であるので、上側凸部23bおよび下側凸部23cとモジュール本体13の周縁部との接触面積をさらに小さくすることができる。これにより、モジュール本体13の挿入時の摩擦力をさらに低減できるので、周縁部を溝部27にさらに挿入しやすくなる。
【0054】
また、第1実施形態によれば、止水部材23は、奥側面を覆う止水部材本体23aから開口部側に向かって突出するとともに長手方向と略平行に延びる奥側凸部23dを有しているので、モジュール本体13の周縁部の端面に対する緩衝効果を高めることができる。また、モジュール本体13が例えば温度上昇により膨張した場合には、奥側凸部23dが変形することにより、モジュール本体13の熱膨張を吸収することができる。
【0055】
また、第1実施形態によれば、奥側凸部23dが、突出高さよりも上下方向の幅の方が大きい扁平な形状を有しているので、周縁部の端面との接触面積を大きくすることができる。これにより、モジュール本体13に対する緩衝効果をより高めることができる。
【0056】
また、第1実施形態によれば、下側面37bにおける挿入方向Dの手前側には、止水部材23よりも硬質な硬質樹脂が長手方向に沿って被覆されているので、下側面37bの手前側にモジュール本体13の周縁部を当接された状態で奥側にスライド移動させるときの周縁部の下面と溝部27の下側面37bの手前側との摩擦力を低減することができる。これにより、モジュール本体13の周縁部を溝部27にさらに挿入しやすくなる。
【0057】
また、第1実施形態によれば、枠本体がアルミニウムまたはその合金からなり、枠本体21の外表面が止水部材23よりも硬質な硬質樹脂により被覆されているので、枠本体21の腐食を抑制して枠体の耐久性を向上させることができる。また、この硬質樹脂は押出成形により枠本体21の外表面に被覆されているので、硬質樹脂を被覆するための塗装工程などの工程が不要になり、生産性を向上させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
図5は本発明の第2実施形態にかかる枠体15の主要部を示す断面図である。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
この実施形態2にかかる枠体15は、上側凸部23bと下側凸部23cが、挿入方向Dにおける位置が交互になるように配設されている点が第1実施形態と異なっている。この第2実施形態によれば、モジュール本体13の周縁部が挿入方向Dの手前側から奥側に移動するときに周縁部の上面と下面が上側凸部23bおよび下側凸部23cにそれぞれ交互に接触することになる。
【0060】
したがって、上側凸部23bと下側凸部23cとが対向して配置されている第1実施形態の場合と比較して挿入時の摩擦力を小さくすることができる。これにより、モジュール本体13を溝部27にさらに挿入しやすくなるとともに、挿入時の摩擦力が原因で止水部材23がはがれるなどの不具合が生じるのをさらに抑制することができる。
【0061】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態にかかる枠体15の主要部を示す断面図である。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
この第3実施形態にかかる枠体15は、下側凸部23cの突出高さが上側凸部23bの突出高さよりも大きい点が第1実施形態と異なっている。この第3実施形態によれば、モジュール本体13の重さの大半を受ける下側凸部23cにおける緩衝効果をより高めることができる。
【0063】
(第4実施形態)
図7は本発明の第4実施形態にかかる枠体15の主要部を示す断面図である。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
この第4実施形態にかかる枠体15は、上側凸部23bおよび下側凸部23cの突出高さが、挿入方向Dの手前側から奥側に向かうにつれて大きくなっている点が第1実施形態と異なっている。この第3実施形態によれば、モジュール本体13の周縁部を溝部27に挿入する過程において、挿入方向Dの手前側では挿入時の摩擦力を小さくして挿入しやすくする一方で、挿入方向の奥側においてはモジュール本体13の周縁部と上側凸部23bおよび下側凸部23cとの接触面積を大きくして止水性能および緩衝効果を高めることができる。また、溝部27の奥側においてモジュール本体13の周縁部を挟持する十分な保持力も確保できる。
【0065】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、上記実施形態では、枠本体が金属からなる場合を例に挙げて説明したが、枠本体は硬質の樹脂などを成形したものであってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、図4〜7に示す各形態を個別に実施した場合を例に挙げて説明したが、2つ以上の形態を組み合わせたものであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、枠本体の外表面のほぼ全体に硬質樹脂が被覆されている形態を例に挙げて説明したが、硬質樹脂を外表面全体に被覆するのではなく、例えば溝部の下側面における挿入方向の手前側に、止水部材よりも硬質な硬質樹脂を長手方向に沿って被覆するだけでもよい。これにより、モジュール本体の周縁部をスライド移動させて溝部に挿入する際に、周縁部の下面と溝部の下側面の手前側との摩擦力を低減することができるので、モジュール本体の周縁部を溝部にさらに挿入しやすくなる。
【0068】
また、上記実施形態では、枠本体に止水部材および硬質樹脂被膜を被覆する方法として、枠本体に同時に押出成形する場合を例に挙げて説明したが、止水部材と硬質樹脂被膜は、別工程でそれぞれ形成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
11 太陽電池モジュール
13 太陽電池モジュール本体
15 太陽電池モジュール用枠体
17 縦枠
19 横枠
21 枠本体
23 止水部材
23a 止水部材本体
23b 上側凸部
23c 下側凸部
23d 奥側凸部
25 硬質樹脂被膜
27 溝部
29,31,33 挿通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール本体の周縁部に沿って取り付けられる長尺状の枠体であって、
前記周縁部が挿入される溝部が長手方向に沿って設けられた金属製の枠本体と、
軟質樹脂を主成分とし、前記溝部の内壁を被覆するように押出成形により前記枠本体と一体化され、前記周縁部が前記溝部に挿入されたときに前記周縁部と前記溝部の内壁との間に介在する止水部材と、を備えた太陽電池モジュール用枠体。
【請求項2】
前記溝部は、前記周縁部を挿入する挿入方向の手前側に前記長手方向に沿って開口する開口部を有しており、
前記溝部の内壁は、前記周縁部が前記溝部に挿入されたときに前記周縁部の上面に対向する上側面と、前記周縁部の下面に対向する下側面と、前記挿入方向の奥側に位置して前記周縁部の端面に対向する奥側面とを有しており、
前記止水部材は、前記上側面、奥側面および下側面を膜状に覆う止水部材本体と、前記上側面を覆う前記止水部材本体から前記下側面に向かって突出するとともに前記長手方向と略平行に延びる上側凸部と、前記下側面を覆う前記止水部材本体から前記上側面に向かって突出するとともに前記長手方向と略平行に延びる下側凸部とを有している、請求項1に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項3】
前記止水部材は、互いに略平行に配列された複数の前記上側凸部と、互いに略平行に配列された複数の前記下側凸部とを有している、請求項2に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項4】
前記上側凸部と前記下側凸部は前記挿入方向における位置が交互になるように配設されている、請求項3に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項5】
前記下側凸部の突出高さは前記上側凸部の突出高さよりも大きい、請求項3に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項6】
前記上側凸部および前記下側凸部の突出高さは、前記挿入方向の手前側から奥側に向かうにつれて大きくなっている、請求項3に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項7】
前記上側凸部および前記下側凸部は、突出方向の先端側に向かうにつれて先細る形状である、請求項2〜6のいずれかに記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項8】
前記止水部材は、前記奥側面を覆う前記止水部材本体から前記開口部側に向かって突出するとともに前記長手方向と略平行に延びる奥側凸部をさらに有している、請求項2〜7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項9】
前記奥側凸部は、突出高さよりも上下方向の幅の方が大きい扁平な形状を有している、請求項8に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項10】
前記挿入方向の手前側の前記下側面は、前記止水部材よりも硬質な硬質樹脂が前記長手方向に沿って被覆されている、請求項2〜9のいずれかに記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項11】
前記枠本体の外表面は前記止水部材よりも硬質な硬質樹脂により被覆されている、請求項2〜9のいずれかに記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項12】
前記硬質樹脂は押出成形により前記枠本体の外表面に被覆されている、請求項10または11に記載の太陽電池モジュール用枠体。
【請求項13】
太陽電池モジュール本体と、このモジュール本体の周縁部に沿って取り付けられた請求項1〜12のいずれかに記載の太陽電池モジュール用枠体とを備え、前記周縁部と前記溝部の内壁との間に前記止水部材が介在している太陽電池モジュール。
【請求項14】
太陽電池モジュール本体の周縁部に沿って取り付けられる長尺状の枠体を製造する方法であって、
前記周縁部が挿入される溝部が長手方向に沿って設けられた金属製の枠本体を成形する第1工程と、
前記枠本体を長手方向に沿って移動させて金型に設けられた所定形状の貫通口を通過させるとともに、前記金型に設けられて前記貫通口と連通する流路を通じて溶融した軟質樹脂を主成分とする材料を注入することにより、前記周縁部と前記溝部との間に介在させるための止水部材用被膜を前記溝部の内壁に成形する第2工程と、を備えた太陽電池モジュール用枠体の製造方法。
【請求項15】
前記第2工程において、前記流路が第1流路であり、前記金型に設けられて前記貫通口と連通する第2流路を通じて溶融した硬質樹脂を注入し、前記枠本体の外表面に前記硬質樹脂被膜を、前記止水部材用被膜と同時に成形する、請求項14に記載の太陽電池モジュール用枠体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−161218(P2010−161218A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2668(P2009−2668)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】