説明

太陽電池モジュール用端子ボックス及び太陽電池モジュール

【課題】 パッキンなどの別部材を用いることなく、防水性、絶縁性を確保できる太陽電池モジュール用端子ボックスを提供する。
【解決手段】 太陽電池モジュールに装着されるボックス本体31と、ボックス本体31内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子33a…と、一端が対応する接続端子33aに接続されて他端がボックス本体31の外に引き出された外部接続用ケーブル17と、ボックス本体31に設けられケーブル17をボックス本体31の内部に引き込むための貫通孔36と、を備え、ボックス本体31のケーブル17が挿通される箇所に充填用樹脂のシリコーン溜まり17aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールに取り付けられ,他の太陽電池モジュールと電気的に接続するために用いられる太陽電池モジュール用端子ボックス及びそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、環境に優しい発電システムとして、太陽光発電システムが注目されている。この太陽光発電システムとして、例えば、建物の屋根上等にマトリックス状に敷設した太陽電池モジュールによって太陽光発電を行うものが知られている。このような太陽光発電システムでは、隣接して敷設された太陽電池モジュールを互いに電気的に接続して、各太陽電池モジュールにより発電された電力を取り出すために、各太陽電池モジュールには端子ボックスが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
太陽電池モジュール用端子ボックスには、太陽電池モジュールの出力端に電気的に接続される端子がボックス本体内に複数設けられている。これらの端子は、外部接続用のケーブルの一端に電気的に接続されており、ケーブルの他端は、他の太陽電池モジュール用端子ボックスから導出されるケーブル等に接続されるようになっている。
【0004】
上述した従来の太陽電池モジュール用端子ボックスでは、ボックス本体内部をシリコーン樹脂などにより充填することで、太陽電池モジュール用端子ボックスの防水性と絶縁性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−77391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した外部接続用ケーブルの外皮は、架橋ポリエチレンなどの樹脂が用いられている。しかしながら、この外部接続用ケーブルの外皮とシリコーン樹脂等の接着力が弱いことから、ケーブルの周囲にシリコーン樹脂が上手く回り込まずに、防水機能を保持することが困難であり、端子ボックス外部からの水が侵入するなどの問題が発生しやすい。
【0007】
この水の侵入を防ぐために、パッキンやOリングなどの部材をケーブルに取り付けることも行われているが、パッキンなどの別部材が必要となり、組み立て工数が増えると共にコストが嵩む等の難点がある。
【0008】
この発明の目的は、パッキンなどの別部材を用いることなく、防水性、絶縁性を確保できる太陽電池モジュール用端子ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、太陽電池モジュールに装着されるボックス本体と、前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と、一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、前記ボックス本体に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と、を備え、前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂の樹脂溜まりを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記ケーブル貫通孔内部に前記樹脂溜まりを設けるように構成できる。
【0011】
また、前記ケーブル貫通孔と前記ボックス本体内部との接続部近傍に前記樹脂溜まりを設けるように構成することができる。
【0012】
この発明の太陽電池モジュールは、表面部材と、裏面部材と、前記表面部材と裏面部材との間に配設された複数の太陽電池と、前記表面部材と裏面部材との間に前記複数の太陽電池を封止する封止材と、前記裏面部材に取り付けられた前記に記載の太陽電池モジュール用端子ボックスと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂の樹脂溜まりを設けることで、充填用樹脂が十分に充填され、貫通孔内部への水分等の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の端子ボックスを取り付けた太陽電池モジュールを示す平面図である。
【図2】この発明の端子ボックスを取り付けた太陽電池パネルの要部を示す平面図である。
【図3】この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第1の実施形態において、半分を断面にした側面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の太陽電池モジュール用端子ボックスの蓋部を外した状態の平面図であり、ケーブルの貫通孔部分の一部を断面にして現している。
【図5】この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第2の実施形態において、半分を断面にした側面図である。
【図6】この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第3の実施形態において、半分を断面にした側面図である。
【図7】この発明の第3の実施形態の太陽電池モジュール用端子ボックスの蓋部を外した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0016】
まず、この発明の端子ボックスが取り付けられた太陽電池モジュールにつき、図1及び図2に従い説明する。図1は、この発明の端子ボックスを取り付けた太陽電池モジュールを示す平面図、図2は、この発明の端子ボックスを取り付けた太陽電池パネルの要部を示す平面図である。
【0017】
この発明の端子ボックスが取り付けられる太陽電池モジュール1は、内部に複数の太陽電池11…を備えた太陽電池パネル10の周縁部にフレーム20が取り付けられている。太陽電池11は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が100mm程度の略正方形を有するが、これに限るものではなく、他の太陽電池を用いても良い。
【0018】
この太陽電池11内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための接合部が形成されている。例えば、単結晶シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟み、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善した太陽電池などが用いられる。
【0019】
この複数の太陽電池11の各々は互いに隣接する他の太陽電池11と扁平形状の銅箔などで構成された配線材102によって電気的に接続されている。即ち、配線材の一方端側が所定の太陽電池11の上面側の電極に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池11に隣接する別の太陽電池11の下面側の電極に接続される。これら太陽電池11…は、配線材102で直列に接続されて1つのストリングス110を形成し、ストリングス110、110間が渡り配線で接続され、太陽電池モジュール1から所定の出力、例えば、200Wの出力が発生するように構成されている。また、太陽電池パネル10は、複数の太陽電池11をガラス、透光性プラスチックのような透光性を有する表面部材と、裏面側の金属箔を絶縁性フィルムで挟着した耐侯性部材としての耐候性フィルムやガラス、透光性プラスチックのような透光性部材などからなる裏面部材との間に挟み、内部の隙間に耐候性、耐湿性に優れたEVA(ethylene vinylacetate、エチレン酢酸ビニル)等の透光性を有する封止材14により封止している。
【0020】
図1及び図2に示すように、太陽電池パネル10の裏面部材のフレーム20の近傍に端子ボックス30が接着剤等を用いて取り付けられる。
【0021】
図2に示す端子ボックス30においては、内部の端子などの構成を簡略化して記載している。端子ボックス30のボックス本体31の内部には、太陽電池パネル10から引き出された接続リードに対応して設けられた接続端子33a〜33eが設けられている。そして、その接続端子33a〜33eに対応してボックス本体31の底には、接続リードが挿入される配線孔38…が設けられている。また、ボックス本体31の両側面には外部接続用のケーブル17が挿入される貫通孔(図示しない)が設けられている。
【0022】
この図2に示す例においては、接続リード4本に対して接続端子が5つ設けている。この例では、接続端子33cには、接続リードは接続されないので、接続端子33cと接続端子33dはジャンパー線35で接続されている。接続端子33aと33b間、接続端子33aと33b間、並びに接続端子33dと33e間にはバイパスダイオード34がそれぞれ接続される。
【0023】
そして、端子ボックス30と太陽電池パネル10から引き出された接続リードの接続は、配線孔38…より、接続リードを通し、そして、各接続端子33a、33b、33d、33eに接続リードを半田付けにより接続する。そして、接続端子33aに貫通孔から挿入されたケーブル17をケーブルかしめなどの方法により強固に取り付ける。同様にして、接続端子33eに貫通孔から挿入されたケーブル17をケーブルかしめなどの方法により強固に取り付ける。
【0024】
このようにして、端子ボックス30を用いて、太陽電池パネル10から引き出された接続リードがシリーズに接続され、端子ボックス30より正極用のケーブル17、陰極用のケーブル17がそれぞれ導出される。
【0025】
次に、この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第1の実施形態につき、図3ないし図4を参照して更に説明する。図3は、この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第1の実施形態において、半分を断面にした側面図、図4は、端子ボックスの蓋部を外した状態の平面図であり、ケーブルの貫通孔部分の一部を断面にして現している。
【0026】
この第1の実施形態の太陽電池モジュール用の端子ボックス30は、前述のものと同様、直列に電気接続された複数の太陽電池を有する太陽電池パネル10の裏面側に取り付けられる。
【0027】
そして、端子ボックス30は、合成樹脂等により成形され、その内部に収容凹部を有する上面が開放された略矩形のケース構造とされたボックス本体31と、その収容凹部を閉塞状としてその上面側に取り付けられる板状の蓋体32とを有する。
【0028】
なお、この端子ボックス30は、ボックス本体31の下面を太陽電池パネル10の裏面部材側に、接着剤により接着して装着される。また、防水、防湿、放熱、結露防止等を目的として、収容凹部内に充填用樹脂としてシリコーン樹脂が充填され、蓋体32を嵌め込み固定される。
【0029】
ボックス本体31の底部には、太陽電池パネル10から引き出された接続リードが挿入される配線孔38が設けられている。またボックス本体31の左右両端部には、外部接続用のケーブル17がそれぞれ挿通されるケーブル貫通孔36が形成されている。
【0030】
また、ボックス本体31における各ケーブル貫通孔36、36との間には、配線孔38に対応して底面より突出状に左右方向に沿って複数並設された接続端子33a〜33eが設けられている。この実施形態においては、左右両側の接続端子33a、33eに、ケーブル17の芯線部17bがそれぞれカシメ接続されている。
【0031】
そして、太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続リードのそれぞれの端部が、配線孔38を通じてそれぞれボックス本体31内に挿入されると共に、対応する接続端子33a〜33eの端部にそれぞれ半田付けされる。
【0032】
また、互いに隣接配置された各接続端子33a〜33e間には、接続端子に連接して金属製の放熱板35…が形成されている。この金属製の放熱板35に、バイパス用整流素子としてのバイパスダイオード34がそれぞれまたがって配設され、接続端子間にバイパスダイオード34が接続される。
【0033】
ダイオード34で発熱した熱は、放熱部板35を通じて放熱でき、部分的な熱のこもりが有効に防止でき、広範囲で放熱でき、放熱効果の向上が図れる。従って、ダイオード34等の耐久性が向上し、ダイオード34、ひいては太陽電池モジュールの長期信頼性の向上が図れる利点がある。
【0034】
ケーブル17は、貫通孔36からボックス本体31の内部に差し込まれる。ケーブル17は図示しないケーブル固定具にて端子ボックス30のボックス本体31に固定される。
【0035】
このケーブル17の外皮17aは、例えば、架橋ポリエチレンで構成されている。この架橋ポリエチレンは、シリコーン樹脂との接着性が良くなく、また、僅かな隙間には樹脂が入り込みにくい。そのため、この実施形態では、貫通孔36の内部に、十分シリコーン樹脂が入り込むように、シリコーン溜まり37aを設けている。すなわち、この第1の実施形態では、貫通孔36の内径をケーブル17の外径より十分大きな径にし、その間にシリコーン樹脂が十分にボックス本体31の収容凹部内から入り込むようにシリコーン溜まり37aを形成している。
【0036】
このように構成することで、ケーブル17の芯線部17aを接続端子33a(33e)と接続した後、ボックス本体31の収容凹部内にシリコーン樹脂を充填すると、シリコーン樹脂は、貫通孔36とケーブル17の外皮17a間を通り、シリコーン溜まり37aに十分にシリコーン樹脂が供給される。この結果、この貫通孔36とケーブル17の間にシリコーン樹脂が充填され、貫通孔36から内部への水分等の浸入を防止することができる。
【0037】
次に、この発明の第2の実施形態につき図5を参照して説明する。図5は、この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第2の実施形態において、半分を断面にした側面図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにここでは説明を割愛する。
【0038】
第1の実施形態においては、シリコーン溜まり37aを貫通孔36の内部に形成しているのに対し、この第2の実施形態においては、ケーブル17の貫通孔36とボックス本体31の内部との接続部近傍にシリコーン溜まり37bを設けている。このボックス本体31の内部の貫通孔36と臨む部分のボックス本体31の下方部の周囲を大きくしてシリコーン溜まり37bを設けている。このシリコーン溜まり37bにより、貫通孔36に臨むボックス本体31の内部にはシリコーン樹脂が十分に充填されることになる。ケーブル17のボックス本体31へ挿入される部分にはシリコーン樹脂が確実に充填されるので、貫通孔36とケーブル17の隙間から染み込んだ水分もシリコーン溜まり37b部分で十分に充填されたシリコーン樹脂により、内部への浸入を阻止することができる。
【0039】
なお、上記の第2の実施形態においては、貫通孔36の内径は、ケーブル17の外径より僅かに大きく形成しているが、第1の実施形態のように、貫通孔36の内部にもシリコーン溜まり17aを設けると、貫通孔36内部のシリコーン溜まり17aとボックス本体31の内部のシリコーン溜まり17bの両者の効果によりさらに防水性が向上する。
【0040】
次に、この発明の第3の実施形態につき図6及び図7を参照して説明する。図6は、この発明の太陽電池モジュール用端子ボックスの第3の実施形態において、半分を断面にした側面図、図7は、端子ボックスの蓋部を外した状態の平面図であり、ケーブルの貫通孔部分の一部を断面にして現している。尚、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにここでは説明を割愛する。
【0041】
第1の実施形態においては、シリコーン溜まり37aを貫通孔36の内径を大きくして内部に形成しているのに対し、この第3の実施形態においては、ケーブル17の芯線部17bが貫通孔36の内部に位置するようにし、このケーブル17の芯線部17bと貫通孔36の内壁との間をシリコーン溜まり37cとしたものである。この第3の実施形態では、貫通孔36の内部でケーブル17の芯線部17bとシリコーン樹脂が接着することになる。芯線部17bとシリコーン樹脂との接着力は、ケーブル17の外皮17aとシリコーン樹脂との接着力よりも良好なので、第1、第2の実施形態よりも更に防水性を向上させることができる。
【0042】
尚、上記した各実施形態におけるバイパスダイオードの配置数や端子の配置数及び形状等は必要に応じて適宜決定すれば良く、各実施形態何ら限定されない。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、この発明は、薄膜太陽電池モジュールにも適用することができる。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
30 端子ボックス
31 ボックス本体
32 蓋部
33a〜33e 接続端子
36 貫通孔
37a、37b、37c シリコーン溜まり
17 ケーブル
17a 外皮
17b 芯線部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールに装着されるボックス本体と、
前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と、
一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、
前記ボックス本体に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と、を備え、
前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂の樹脂溜まりを設けたことを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。
【請求項2】
前記ケーブル貫通孔内部に前記樹脂溜まりを設けたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用端子ボックス。
【請求項3】
前記ケーブル貫通孔と前記ボックス本体内部との接続部近傍に前記樹脂溜まりを設けたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用端子ボックス。
【請求項4】
表面部材と、裏面部材と、前記表面部材と裏面部材との間に配設された複数の太陽電池と、前記表面部材と裏面部材との間に前記複数の太陽電池を封止する封止材と、前記裏面部材に取り付けられた前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用端子ボックスと、を備える太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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