説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート及び太陽電池モジュール

【課題】従来品よりも耐湿熱性に優れており、湿熱環境下における劣化が少なく耐久性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートの提供。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。この太陽電池モジュール用裏面保護シートが接着されてなる太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シートと、それを備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である太陽電池モジュールは、二酸化炭素を排出せずに発電できるシステムとして注目されている。その太陽電池モジュールには、高い発電効率とともに、屋外で使用した場合にも長期間の使用に耐えうる耐久性が求められている。
太陽電池モジュールの主な構成は、光発電素子である太陽電池セル、電気回路のショートを防ぐ電気絶縁体である封止材、およびそれらを保護する保護シート(表面保護シートと裏面保護シート)からなる。一般に、太陽電池モジュールの耐久性を高めるためには、保護シートを高性能化することが重要であると考えられている。
【0003】
太陽電池モジュールを長期間使用する場合、該太陽電池モジュール内の電気回路の漏電や腐食を防ぐために、太陽電池モジュール用保護シートには、高い耐湿熱性、ガスバリア性が求められている。
従来、太陽電池モジュール用保護シートの基材としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)もしくは耐加水分解PETが一般的に使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、耐加水分解性樹脂フィルムと金属酸化物被着樹脂フィルム及び白色樹脂フィルムとの3層積層体、又は金属酸化物が被着された耐加水分解性樹脂フィルムと白色樹脂フィルムとの2層積層体、又は耐加水分解性樹脂フィルムと金属酸化物が被着された白色樹脂フィルムとの2層積層体からなることを特徴とする太陽電池カバー材用バックシート(裏面保護シート)が開示されている。前記耐加水分解性樹脂フィルムとしてはPETフィルムが用いられている。
また特許文献2には、PETなどの樹脂からなる基材シートに、硬化性官能基含有フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュール用バックシート(裏面保護シート)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−100788号公報
【特許文献2】国際公開第2007/010706号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のPETを基材とした太陽電池モジュール用裏面保護シートは、屋外に設置される太陽電池モジュールを長期間保護するためには耐湿熱性が不十分であり、一層の性能向上が求められている。
また、特許文献2のように、PET基材の表面にフッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を形成することにより、PET基材の耐候性を向上させる効果がえられるが、高湿熱環境下では、PET基材の表層が加水分解することにより、フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が剥がれやすくなるという欠点を有していた。
なお、耐湿熱性に優れた樹脂材料としては、例えばポリフェニレンエーテルが挙げられる。しかしながら、ポリフェニレンエーテル製の基材シートは、引裂強さが弱いために、太陽電池モジュール用裏面保護シートの基材シートとして適用し難い問題がある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、従来品よりも耐湿熱性に優れており、湿熱環境下における劣化が少なく耐久性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ポリフェニレンエーテル製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供する。
【0008】
本発明において、前記基材シートの一方の面側に熱可塑性樹脂層が積層され、前記基材シートの他方の面側にフッ素樹脂層が積層されていることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記基材シートと前記熱可塑性樹脂層との間にガスバリアフィルム層が積層されていることが好ましい。
【0010】
また本発明は、前記太陽電池モジュール用裏面保護シートが接着されてなる太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、ポリフェニレンエーテル製の基材シートを用いたものなので、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
また本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、ポリフェニレンエーテル製の基材シートを用いたものなので、耐湿熱性に優れており、高湿熱環境下であっても基材シートの劣化が少なくなるので、基材シートにフッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を積層した構造であっても該塗膜の密着性を向上させることができ、該塗膜が剥がれ難くなる。
また本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、ポリフェニレンエーテル製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層された構成としたので、引裂強さを向上させることができる。
【0012】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール本体に本発明に係る前記太陽電池モジュール用裏面保護シートを接着したものなので、従来のPET基材を用いた裏面保護シートを接着した場合と比べ、高湿熱環境下での劣化が少なくなり、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの構成を示した模式図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの第1実施形態の断面を示した模式図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの第2実施形態の断面を示した模式図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの第3実施形態の断面を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いる太陽電池モジュールの構成を示した模式図である。
図1に例示するように、本発明の裏面保護シートを用いる太陽電池モジュール50の構成は、表面保護シート10、裏面保護シート20、封止材30、太陽電池セル40を有する。屋外および屋内において長期間の使用に耐えうる耐候性および耐久性を太陽電池モジュールにもたせるためには、太陽電池セル40および封止材30を風雨、湿気、砂埃、機械的な衝撃などから守り、太陽電池モジュールの内部を外気から完全に遮断して密閉した状態に保つことが必要である。このため、裏面保護シート20には、十分な耐候性をもつことが求められる。
【0015】
[第1実施形態]
図2は、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート(以下、裏面保護シートと略記する)の第1実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の裏面保護シート60Aは、ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記する)製の基材シート61の一方の面に、層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62が積層された構成になっている。
【0016】
前記基材シート61の材料であるPPE(ポリフェニレンオキサイド(PPO)などと称される場合もある)は、フェノールとメタノールとからアルキル化反応により合成される2,6−キシレノール(2,6−ジメチルフェノール)を基本原料とし、これを酸化重合法(酸化カップリング法)により重合して合成される樹脂であり、従来の基材シート材料であるPETと比べ、耐湿熱性に優れている。また、基材シート61の材料として用いるPPEは、PPE単独であっても良いし、PPEと別な樹脂材料とのポリマーアロイであってもよい。特に、引裂強さを向上させることができる点から、PPEとポリスチレンとのポリマーアロイが好ましい。
【0017】
前記基材シート61の厚さとしては、太陽電池システムが要求する電気絶縁性、軽量性などに基づいて選択すればよく、例えば、厚さ10〜300μmの範囲であることが好ましく、30〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。このようなPPE製の基材シート61の市販品としては、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製のノリル(商品名)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユピエース(商品名)、旭化成ケミカルズ社製のザイロン(商品名)などが挙げられる。
【0018】
前記熱可塑性樹脂層62の材料としては、特に制限されることなく、各種の樹脂材料の中から適宜選択して使用することができる。本実施形態の保護シート60Aは、該熱可塑性樹脂層62を太陽電池モジュール本体の封止材30に接着させることを意図したものであり、該封止材30と接着性が良好な樹脂を用いることが好ましい。そのような樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記する)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリビニルブチラールなどが挙げられる。これらの樹脂の中で、引裂強さを向上させる点でエチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリビニルブチラールが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。また、発電効率を高めるために白色であることが好ましく、白色である熱可塑性樹脂としては、白色顔料や気泡を含有するポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0019】
前記熱可塑性樹脂層62の厚さは特に限定されず、封止材30に対する接着安定性、軽量性などに基づいて選択すればよく、例えば、厚さ10〜300μmの範囲であることが好ましく、30〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0020】
前記基材シート61及び前記熱可塑性樹脂層62には、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
顔料としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されない。例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン、マイカ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系およびトリアジン系等が挙げられる。
【0021】
前記ラミネート用接着剤層63の材料となる接着剤は、前記基材シート61と前記熱可塑性樹脂層62とを強固に接着できれば特に制限されず、例えばアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本実施形態の保護シート60Aは、PPE製の基材シート61の一方の面に、層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62を積層した構成なので、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができる。
また本実施形態の保護シート60Aは、PPE製の基材シート61を用いたことによって、従来のPET基材を用いた積層シートと比べ、湿熱環境下での層間接着剤層63の劣化が少なくなり、長期間使用しても基材シート61から熱可塑性樹脂層62が剥離し難くなり、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができる。
さらに、PPE製の基材シート61の一方の面に、層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62を積層した構成としたことで、引裂強さを向上させることができる。
【0023】
[第2実施形態]
図3は、本発明の裏面保護シートの第2実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の裏面保護シート60Bは、基材シート61の一方の面に層間接着剤層63を介して熱可塑性樹脂層62が積層され、さらに基材シート61の他方の面にフッ素樹脂コート層64が積層された構成になっている。前記基材シート61、熱可塑性樹脂層62及び層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の保護シート60Aの場合と同様にすることができる。
【0024】
前記フッ素樹脂コート層64は、裏面保護シート60Bに耐候性を付与するためのものであって、本実施形態にあっては、保護シートの軽量化のためにフッ素含有ポリマーを有する塗料を塗布し、それを硬化させた塗膜により形成されている。前記フッ素含有ポリマーを有する塗料としては、溶剤に溶解又は水に分散されたもので塗布可能なものであれば特に限定されない。
【0025】
前記塗料に含まれていてもよいフッ素含有ポリマーとしては、本発明の効果を損なわず、フッ素を含有するポリマーであれば特に限定されないが、前記塗料の溶媒(有機溶媒または水)に溶解し、架橋可能であるものが好ましい。該フッ素含有ポリマーの好ましい例としては、旭硝子社製のLUMIFLON(商品名)、セントラル硝子社製のCEFRALCOAT(商品名)、DIC社製のFLUONATE(商品名)等のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類や、ダイキン工業社製のZEFFLE(商品名)等のテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類や、デュポン社製のZonyl(商品名)、ダイキン工業社製のUNIDYNE(商品名)等のフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類が挙げられる。これらの中でも、耐候性および顔料分散性等の観点から、CTFEを主成分としたポリマーおよびTFEを主成分としたポリマーがより好ましく、なかでも前記LUMIFLON(商品名)および前記ZEFFLE(商品名)が最も好ましい。
【0026】
前記LUMIFLON(商品名)は、CTFEと数種類の特定のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテルとを主な構成単位として含む非結晶性のポリマーである。該LUMIFLON(商品名)のように、ヒドロキシアルキルビニルエーテルのモノマー単位を有するポリマーは、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性、顔料分散性、硬さ、および柔軟性に優れるので好ましい。
前記ZEFFLE(商品名)は、TFEと有機溶媒可溶性の炭化水素系モノマー(酸素を含んでいてもよい)との共重合体であり、なかでも共重合体中に反応性の高い水酸基を有する場合には、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性、および顔料分散性に優れるので好ましい。
【0027】
また、前記塗料に含まれていてもよいフッ素含有ポリマーの例として、硬化性官能基を有するフルオロオレフィンのポリマーが挙げられ、該具体例としては、TFE、イソブチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体、ならびにTFE、VdF、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0028】
また、前記塗料に含まれていてもよいフッ素含有ポリマーにおける共重合可能なモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、および安息香酸ビニル等のカルボン酸のビニルエステル類や、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類が挙げられる。
【0029】
前記塗料としては、前記フッ素含有ポリマーの他に、架橋剤、触媒、および溶媒を含むことができ、さらに必要であれば、顔料などの無機化合物を含むこともできる。
【0030】
前記塗料に含まれる溶媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、メタノール、イソプロパノール、エタノール、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、またはn−ブチルアルコールのうち、いずれか1種以上を有する溶媒を好ましく用いることができる。なかでも、塗料中の含有成分の溶解性の観点から、前記溶媒はMEKまたはMIBKのうち、いずれか1種以上を有するものであることがより好ましい。
【0031】
前記塗料に含んでいてもよい顔料としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されない。例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン、マイカ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。より具体的には、耐久性を付与するために被覆及び表面処理されたルチル型二酸化チタンであるデュポン社製のTi−PURE R105(商品名)、およびジメチルシリコーンの表面処理によってシリカ表面の水酸基を修飾した疎水性シリカであるキャボット社製のCAB−O−SIL TS(商品名)が好ましいものとして例示できる。
【0032】
前記塗膜は耐候性、耐擦傷性を向上させるため、架橋剤により硬化していることが好ましい。該架橋剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、金属キレート類、シラン類、イソシアネート類、およびメラミン類が好ましく用いられるものとして挙げられる。前記保護シートを屋外において30年以上使用することを想定した場合、耐候性の観点からは、前記架橋剤として、脂肪族のイソシアネート類が好ましい。
【0033】
前記塗料の組成としては、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、例えば前記LUMIFLON(商品名)をベースとした塗料の組成物として、前記LUMIFLON(商品名)、顔料、架橋剤、溶媒および触媒を混合してなるものが挙げられる。該組成比としては、該塗料全体を100質量%としたときに、LUMIFLON(商品名)は3〜80質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、顔料は5〜60質量%が好ましく、10〜30質量%程度がより好ましく、有機溶媒は20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
前記有機溶媒としては、MEKとキシレンとシクロヘキサノンとの混合溶媒が例示できる。また、前記触媒としては、ジブチルジラウリン酸スズ、ジオクチルジラウリン酸スズを例示でき、有機溶媒中で前記LUMIFLON(商品名)とイソシアネートとの架橋を促進するために用いられる。
【0034】
前記塗料を基材シート61の他方の面に塗布する方法としては、公知の方法で行うことができ、例えばロッドコーターで所望の膜厚になるように塗布すればよい。
前記塗料が硬化して形成される前記フッ素樹脂コート層64の膜厚としては特に限定されず、例えば5μm以上の膜厚とすればよい。耐候性および軽量性の観点から、該フッ素樹脂コート層64の膜厚としては、5〜50μmが好ましく、8〜40μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
前記塗布した塗料の乾燥プロセスにおける温度は、本発明の効果を損なわない温度であればよく、前記架橋促進及び基材シート61への影響を低減する観点から、50〜130℃程度の範囲であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の保護シート60Bは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、基材シート61の他方の面に前記フッ素樹脂コート層64を積層したことによって、裏面保護シート60Bの耐候性を向上させることができる。
【0036】
[第3実施形態]
図4は、本発明の裏面保護シートの第3実施形態の断面を示した模式図である。
本実施形態の裏面保護シート60Cは、PPE製の基材シート61の一方の面に、層間接着剤層63、シリカ蒸着PET層65、層間接着剤層63、熱可塑性樹脂層62を順に積層した構成になっている。前記基材シート61、前記熱可塑性樹脂層62及び前記層間接着剤層63の詳細は、前記第1実施形態の場合と同様にすることができる。
【0037】
前記シリカ蒸着PET層65は、PETフィルム表面にシリカ(SiO)を蒸着したフィルムを用いることが好ましい。このシリカ蒸着PET層65は、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れており、該シリカ蒸着PET層65を積層することによって裏面保護シート60Cの水蒸気バリア性を向上させることができる。該シリカ蒸着PET層65の厚さは特に限定されないが、PETフィルム厚みが5〜50μmの範囲が好ましく、6〜40μmの範囲がより好ましく、またシリカ層厚みは1〜500nmの範囲が好ましく、10〜100nmの範囲がより好ましい。PETの加水分解を防ぐ観点から、PET側を封止材側に設けることが好ましい。これにより、PETに達する水蒸気を低減し、PETの加水分解を抑制することができる。
【0038】
本実施形態の保護シート60Cは、前記第1実施形態の保護シート60Aと同じく、従来のPET基材を用いたものと比べ、耐湿熱性、ガスバリア性を向上させることができ、これを太陽電池モジュール本体に接着して用いることで、耐久性に優れた太陽電池モジュール50を提供することができるなどの効果が得られ、さらに、シリカ蒸着PET層65を積層したことによって、保護シート60Cの水蒸気バリア性を高めることができる。
【0039】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、図1に示すように、太陽電池モジュール50の封止材30の裏面側に、前述した裏面保護シート60A〜60Cのいずれかを接着して積層したものである。
この太陽電池モジュール50の種類や構造は特に限定されず、a−Si(アモルファスシリコン)太陽電池、c−Si(結晶シリコン)太陽電池、μc−Si(微結晶シリコン)太陽電池、GaAs(ガリウム砒素)などの化合物半導体型太陽電池、色素増感型太陽電池とすることができる。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
PPE基材シートとして、厚さ152μmのSABICイノベーティブプラスチックス社製 ノリル EFR735(商品名)を用いた。
このPPE基材シートの一方の面に層間接着剤(主剤:三井化学社製のタケラックA−515(商品名)と、硬化剤:三井化学社製のタケネートA−3(商品名)とを、主剤:硬化剤=7:1(固形分比)で配合したもの)を塗布し、80℃、1分間乾燥して厚さ10μmの層間接着剤層を形成した。
次に、この接着剤層に厚さ100μmのEVAフィルム(該フィルムはエチレン:酢酸ビニル=91:9のEVAをTダイ押出製膜機により厚さ100μmに製膜した)を重ね合わせ、ラミネートして、図2に示す構成の裏面保護シートを作製した。
前記ラミネート条件は、ラミネート温度を常温とし、エージング条件を23℃±2℃、7日間とした。
【0041】
[実施例2]
EVAフィルムの代わりに、白色PETフィルム(東レ社製 ルミラーE20(商品名)、厚さ75μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、裏面保護シートを作製した。
【0042】
[実施例3]
PPE基材シートの一方の面に、フッ素樹脂コート層を形成した後、他方の面に、実施例1と同様にして層間接着剤層を介してEVAフィルムを積層することにより、図3に示す構成の裏面保護シートを作製した。
前記フッ素樹脂コート層の形成の詳細は下記の通りとした。
【0043】
(コート剤の調製)
MEKを120質量部、疎水性シリカ(キャボット社製 CAB−O−SIL TS−720(商品名))を18.2質量部、酸化チタン(デュポン社製 Ti−Pure R105(商品名))を100質量部の量で配合したものを、顔料分散機{装置名:T.K.ホモディスパー(プライミクス社製)}にて分散させて顔料分散液を作成した。
つづいて、顔料分散液87質量部に、CTFE系共重合体(旭硝子社製 LUMIFLON LF200(商品名、固形分60%))を100質量部、イソシアネート系の架橋剤(硬化剤)(バイエルマテリアルサイエンス社製 DESMODUR N3300(商品名))を10.7質量部、架橋促進剤(東洋インキ製造社製 BXX3778−10(商品名))を0.004質量部、MEKを110質量部の量で配合してコート剤を調製した。
【0044】
(基材シートへのフッ素樹脂コート)
前記PPE基材シートの一方の面に、前記コート剤を、乾燥後の塗膜厚さが13μmとなるようにバーコーターにて塗工し、120℃で2分間乾燥して、フッ素樹脂コート層を形成した。
【0045】
[実施例4]
EVAフィルムに代えて、前記白色PETフィルムを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、裏面保護シートを作製した。
【0046】
[実施例5]
PETフィルム(帝人デュポンフィルム社製 マイラーA(商品名)、厚さ12μm)の一方の面に、厚さ50nmとなるようにシリカ(SiO)を蒸着してシリカ蒸着PETフィルムを作製した。
実施例1と同様のPPE基材シートの一方の面に、実施例1に記載の層間接着剤を用いて前記シリカ蒸着PETフィルムを接着し、更に該シリカ蒸着PETフィルムに層間接着剤を用いて、実施例1で用いたものと同じEVAフィルムを接着し、図4に示す構成の裏面保護シートを作製した。
なお、層間接着剤及びラミネート条件は実施例1と同じとした。
【0047】
[実施例6]
EVAフィルムの代わりに、前記白色PETを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、裏面保護シートを作製した。
【0048】
[比較例1]
PPE製基材シートに代えて、PET製基材シート(帝人デュポンフィルム社製 メリネックス 238(商品名)、厚さ125μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして裏面保護シートを作製した。
【0049】
[比較例2]
PPE製基材シートに代えて、PET製基材シート(帝人デュポンフィルム社製 メリネックス 238(商品名)、厚さ125μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして裏面保護シートを作製した。
【0050】
前記実施例1〜6、比較例1,2でそれぞれ作製した裏面保護シートについて、<引裂強さ>、<破断強度保持率測定>及び<フッ素樹脂層の密着性>の各項目について、以下の通りの測定条件で測定し、比較した。
【0051】
<引裂強さ>
JIS K7128−1:1998「プラスチック−フィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法」に準拠して、試験速度200mm/minで測定した。
裏面保護シートの加工方向をMD、MDに対して垂直な方向をCDとして表示した。その結果を表1に記す。
【0052】
<破断強度保持率測定>
破断強度の測定は、JIS K7127:1999に準拠して行った。
測定条件は次の通りとした。
・試験環境:23℃、50%RH
・サンプルサイズ:幅15mm×長さ150mm
・引張速度:200mm/min
・試験方法:裏面保護シートの上端・下端を、チャック間隔が100mmになるようにそれぞれ万能引張試験機に固定した。200mm/minの速度で試料を引張り、裏面保護シートが破断した際の荷重を測定した。
それぞれの保護シートは、後述する<耐湿熱性試験>、<耐候性試験>を行う前の破断荷重と、一定時間の試験を行った後の破断荷重を測定し、試験前の破断荷重に対する比率(パーセント)を算出し、破断強度保持率とした。
<耐湿熱性試験>を行った場合の破断強度保持率測定結果を表2に示す。また、<耐候性試験>を行った場合の破断強度保持率測定結果を表3に示す。
【0053】
<フッ素樹脂層の密着性>
実施例3および比較例2で作製した裏面保護シートについて、後述する<耐湿熱試験>を行う前及び時間経過後(24時間後、48時間後及び96時間後)において、それぞれ日本工業規格JIS K−5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−塗膜の機械的性質−付着性(クロスカット法)」に準拠して、フッ素樹脂層の密着性を評価した。
フッ素樹脂層に、1mm間隔で切り込みを入れ、100個(縦10個×横10個)の碁盤目を形成し、その碁盤目にセロハンテープ(商品名:CT−24、ニチバン社製)を貼着した後、セロハンテープを剥離した際、剥離せずに残った碁盤目の数を調べた。結果を表4に記す。
【0054】
<耐湿熱性試験>
試料をA4サイズに切り取り、IEC60068−2−66に準じて、121℃、2atm、100%RHの条件下に24時間、48時間、96時間置いた。
【0055】
<耐候性試験>
試料をA4サイズに切り取り、スガ試験機社製 スーパーキセノンウェザーメーター SX−75(商品名)を用い、
・ブラックパネル温度63℃
・放射照度60W/m(300〜400nm)
・水スプレー 18分/120分
・照射面 基材シート面またはフッ素樹脂層
の条件下に、1000時間、2000時間、3000時間置いた。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の裏面保護シートは、耐湿熱性に優れており、湿熱環境下における耐久性に優れている。本発明の保護シートを太陽電池モジュール本体に固定して太陽電池モジュールを構成することによって、安全性、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 表面保護シート
20 裏面保護シート
30 封止材
40 太陽電池セル
50 太陽電池モジュール
60A〜60C 裏面保護シート
61 基材シート
62 熱可塑性樹脂層
63 層間接着剤層
64 フッ素樹脂コート層(フッ素樹脂層)
65 シリカ蒸着PET層(ガスバリアフィルム層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル製の基材シートの一方又は両方の面側に熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記基材シートの一方の面側に熱可塑性樹脂層が積層され、前記基材シートの他方の面側にフッ素樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記基材シートと前記熱可塑性樹脂層との間にガスバリアフィルム層が積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートが接着されてなる太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−159913(P2011−159913A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22289(P2010−22289)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】