説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート

【課題】本発明は、金属箔や無機薄膜を用いなくともガスバリア性に優れ、太陽電池モジュールに対する密着性にも優れることから太陽電池モジュールの耐候性や長期信頼性の向上に寄与し得る太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートは、低異方性液晶ポリマーフィルムを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用の裏面保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の問題が大きくなるに伴い、二酸化炭素を排出しないエネルギー源として太陽電池に注目が集まっており、その市場流通量が世界的にも著しい増加を示している。
【0003】
しかし、全消費電力に対する太陽電池由来の電力の割合は未だわずかであり、太陽電池のさらなる普及のためには、発電コストの低減が大きな課題の一つとなっている。具体的には、歩留の向上を含めた製造コストの低減やエネルギー変換効率の向上に加え、長期信頼性の向上が必要である。
【0004】
従来、太陽電池の長期信頼性を高めるために、太陽電池モジュールに裏面保護シートを設けることが行われてきた。この裏面保護シートは、太陽電池モジュールの耐候性、耐水性、ガスバリア性、耐薬品性などの向上に寄与すると共に、太陽電池モジュールへ意匠性も付与することができる。かかる裏面保護シートは、主に耐候性樹脂フィルムとガスバリア性材料により構成されていた。ガスバリア性材料としてはアルミ箔などの金属箔が多く用いられ、多くの裏面保護シートは、金属箔の両面を耐候性樹脂フィルムで挟む構造を有する。金属箔を用いない場合には、ガスバリア性材料層として無機酸化膜や無機窒化膜などの無機系薄膜と耐候性樹脂フィルムを組合わせたシートが用いられていた。
【0005】
ところが、金属箔や無機系薄膜を用いた裏面保護シートには幾つかの問題が考えられる。例えば金属箔を用いる場合、前述したようにその両面には耐候性樹脂フィルムがラミネートされるが、当該フィルムの強度が不足していると太陽電池モジュールに接着する際に太陽電池素子の電極が貫通して金属箔まで達し、短絡が引き起こされる可能があった。また、無機系薄膜を用いる場合には、コストの増加の他、温度や湿度の変化あるいは折り曲げなどにより剥離やクラックが起こり得る。より詳しくは、無機薄膜を有する裏面保護シートでは、当初の問題は無い場合であっても、促進試験により剥離などが生じるので、過酷な条件下での使用や長期の使用により性能が劣化するおそれがあり、その長期信頼性は十分とはいえない。
【0006】
そこで、これら金属箔や無機系薄膜等を用いることなく樹脂フィルムのガスバリア性を高めるために、樹脂フィルムの厚さや積層数を増やすことが考えられる。しかしこのような裏面保護シートは、材料コストや製造コストが増加する。さらに、厚みのある裏面保護シートへは均一に圧力を負荷するのは難しいため、太陽電池モジュールへ封止樹脂を介してラミネートする際に積層不良が発生し、歩留りが低下する。また、薄いフィルムであれば太陽電池素子の回路形状に沿って変形できるために隙間無くラミネートし易いが、厚みのある裏面保護シートは回路形状に応じて変形し難いので、裏面保護シート、封止樹脂および回路との間に隙間ができ、その隙間から水分などが入り込んで太陽電池の長期信頼性を低下させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、太陽電池モジュールでは長期信頼性を高めるために裏面保護シートが用いられるのが一般的である。
【0008】
この裏面保護シートでは、樹脂フィルムのみではガスバリア性を十分に確保できないことから、通常、金属箔や無機系薄膜が併用される。しかし、これら金属箔等を併用すると、材料コストの増加、絶縁特性の低下、衝撃や折り曲げなどによる剥離といった問題が生じる。一方、金属や無機系薄膜等を用いずに樹脂フィルムのガスバリア性を高めるべく厚さを増やすと、密着性などに問題が生じる。
【0009】
そこで本発明の目的は、金属箔や無機系薄膜を用いなくともガスバリア性に優れ、太陽電池モジュールに対する密着性にも優れることから太陽電池モジュールの耐候性や長期信頼性の向上に寄与し得る太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、ガスバリア性を確保するためのコア層として液晶ポリマーフィルムを用いれば上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートは、低異方性液晶ポリマーフィルムを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートとしては、さらに表面保護層が設けられたものが好適である。表面保護層により紫外線や水分などを原因とする液晶ポリマーフィルムの劣化を抑制し、太陽電池モジュールの長期信頼性をより一層高めることが可能になる。
【0013】
表面保護層としては、耐候性樹脂からなるものが好ましい。耐候性樹脂からなる表面保護層を有する裏面保護シートは、太陽電池モジュールの長期信頼性を確実に高めることができる。
【0014】
表面保護層としては、紫外線吸収性のものも好適である。液晶ポリマーの耐紫外線性を高めるために、紫外線吸収剤を含むものや紫外線吸収性の官能基を有する樹脂からなるものなど紫外線吸収性の表面保護層を設けることにより、紫外線を原因とする液晶ポリマーフィルムの特性の劣化をより確実に抑制できる。
【0015】
表面保護層としては、顔料を含むものも好ましい。顔料は、その特性に応じて、表面保護層、ひいては裏面保護シートの紫外線遮断性、光反射性、意匠性などを向上させることができる。
【0016】
本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートとしては、さらに接着層を有するものが好適である。接着層を設ければ、裏面保護シート内の各層間の接着が容易になり、また、最外層に接着層を設ければ、裏面保護シートの太陽電池モジュールへの接着が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る裏面保護シートは、液晶ポリマーフィルムを必須の構成要素とすることから、金属箔や無機系薄膜を併用したり、フィルム厚を厚くしなくても、十分なガスバリア性を有する。よって、耐絶縁性や耐候性、太陽電池モジュールに対する密着性にも優れることから、太陽電池の性能を長期的に維持でき、太陽電池の実用化に大きく寄与し得るものとして、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、単結晶シリコンや多結晶シリコンが用いられた太陽電池素子を含む、一般的な結晶系太陽電池モジュールの構成を示す模式図である。
【図2】図2は、アモルファスシリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池、それらの多接合型太陽電池、また、化合物半導体太陽電池、有機太陽電池、色素増感太陽電池を含む、一般的な薄膜系太陽電池モジュールの構成を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る裏面保護シートであって、低異方性液晶ポリマーフィルムのみからなるものの模式図である。
【図4】図4は、本発明に係る裏面保護シートであって、片面に表面保護層を有する低異方性液晶ポリマーフィルムからなるものの模式図である。
【図5】図5は、本発明に係る裏面保護シートであって、接着層を有する低異方性液晶ポリマーフィルムからなるものの模式図である。
【図6】図6は、本発明に係る裏面保護シートであって、片面に表面保護層を有し、その反対側の面に接着層を有する低異方性液晶ポリマーフィルムからなるものの模式図である。
【図7】図7は、本発明に係る裏面保護シートであって、低異方性液晶ポリマーフィルムの両面に接着層を有し、さらに当該接着層の一方の外側に表面保護層を有するものの模式図である。
【図8】図8は、本発明に係る裏面保護シートであって、両面に表面保護層を有する低異方性液晶ポリマーフィルムからなるものの模式図である。
【図9】図9は、本発明に係る裏面保護シートであって、低異方性液晶ポリマーフィルムの両面に接着層を有し、さらに当該接着層の両方の外側に表面保護層を有するものの模式図である。
【図10】図10は、本発明に係る裏面保護シートであって、低異方性液晶ポリマーフィルムの両面に表面保護層を有し、さらに当該表面保護層の一方の外側に接着層を有するものの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートは、ガスバリア性などを確保するために、低異方性液晶ポリマーフィルムを必須の構成要素として含むことを特徴とする。先ず、本発明で用いる液晶ポリマーフィルムについて説明する。
【0020】
液晶ポリマーとしては、サーモトロピック液晶ポリマーとして知られるポリエステルが好ましい。例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを主体として合成される芳香族ポリエステルであって、溶融時に液晶性を示すものである。
【0021】
サーモトロピック液晶ポリマーの代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)と、テレフタル酸と、ビフェノールから合成される第1のタイプのもの[下式(1)]、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸から合成される第2のタイプのもの[下式(2)]、PHBと、テレフタル酸と、エチレングリコールから合成される第3のタイプのもの[下式(3)]が挙げられる。本発明の裏面保護シートでは、第1〜第3のいずれのポリエステルも用いることができるが、耐熱性、寸法安定性、水蒸気バリア性の面からは全芳香族ポリエステル(第1および第2のタイプ)が好ましく、第2のタイプのポリエステルが特に好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
本発明に係る裏面保護シートの必須構成要素である液晶ポリマーフィルムは、低異方性のものである。通常、サーモトロピック液晶ポリマーは、溶融押出によってフィルム成形すると、ポリマー分子の大部分が押出方向(MD方向)に配向し、この分子配向に起因してフィルム物性が異方性を示す。異方性の大きな液晶ポリマーフィルムを太陽電池モジュール用裏面保護シートに使用すると、様々な欠点が生じる。例えば、環境変化に伴う熱変動により液晶ポリマーフィルムと他の層との相違が生じ、裏面保護シートにシワや反りなどを生じやすくなる。極端な場合、液晶ポリマーフィルムが他の層から剥離し、太陽電池モジュールの長期信頼性に悪影響を及ぼす。そこで本発明では、低異方性の液晶ポリマーフィルムを用いる。
【0024】
本発明において低異方性の液晶ポリマーフィルムとは、上記の分子配向を低減または解消することにより平面物性の異方性を低減または解消したものであって、いわゆる等方性の液晶ポリマーフィルムも含むものである。ここで、平面物性には、線膨張係数、熱膨張率、熱収縮率、引張強度、引張伸度、引張弾性率などが包含される。本発明において「低異方性」とは、より具体的には、液晶ポリマーフィルムの任意の平面方向Xの線膨張係数と、当該X方向に直交する平面方向Yの線膨張係数の比が1/3以上、3以下であることをいう。
【0025】
低異方性の液晶ポリマーフィルムは、フィルム成形などにより平面方向に配向した分子をランダムに配向させることにより製造することができる。例えば、溶融押出法により異方性の液晶ポリマーフィルムをいったん製造し、次いでMD方向と直交する方向(TD方向,幅方向)に一軸延伸するか、或いはMD方向とTD方向へ同時に延伸する方法により得られる。線膨張係数などの平面物性の異方性は、上記延伸時の条件を調節することにより低減または解消することができ、これにより低異方性の液晶ポリマーフィルムが得られる。
【0026】
本発明で用いる液晶ポリマーフィルムの厚みは、10μm以上、200μm以下程度とすることが好ましい。当該厚みが10μm未満であると、ガスバリア性を十分に確保できない場合があり得る。一方、当該厚みが200μmを超えると、太陽電池モジュールへ圧着する際に圧力を均一にかけることができず、太陽電池モジュールとの密着性を十分に確保できないおそれがあり得る。当該厚さとしては、25μm以上、100μm以下がより好ましい。
【0027】
液晶ポリマーフィルムには、封止樹脂、接着剤、他の層などへの密着性を向上させるため、これら封止樹脂などとの相性に合わせて表面処理を施してもよい。かかる表面処理方法は特に限定されないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、フレーム処理、化学処理、プライマー処理などを挙げることができる。
【0028】
本発明に係る裏面保護シートは、ガスバリア性確保のためのコア層として液晶ポリマーフィルムを有するものであるが、さらに表面保護層を設けてもよい。液晶ポリマーフィルムは、外部からシートへ侵入する光や水分、また、太陽電池モジュールを透過する光などの影響を受け、黄変などにより外観が劣化したり、機械強度が低下するおそれがある。そこで、表面保護層を設けることにより液晶ポリマーフィルムを保護し、その耐紫外線性や耐加水分解性を向上させることができる。
【0029】
表面保護層は、液晶ポリマーフィルムの片面側にのみ設けてもよいし、必要に応じて両面側に設けることもできる。例えば、シリコン系太陽電池モジュールとしては、シリコンウェハなどのバルク体の集積体で構成される結晶系太陽電池モジュールと、プラズマCVD法などによりガラス基板の全面に太陽電池素子が形成されている薄膜系太陽電池モジュールが存在する。薄膜系太陽電池モジュールでは、図2に示す様に全面的に太陽電池素子が形成されているため、基本的には裏面保護シートまで入射光は到達しない。よって、裏面側からの光などの悪影響を低減すべく、太陽電池モジュールと反対側の面にのみ表面保護層を設ける態様をとってもよい。一方、結晶系太陽電池モジュールでは、図1に示す様に太陽電池素子間に隙間が存在するため、発電ロス部分が生じる。この発電ロス部分では入射した光が半導体ウェハで利用されることなく裏面保護シートにまで到達するため、入射光に含まれる紫外線などの影響で長期的な屋外設置により変色などが懸念される。よって、結晶系太陽電池モジュールの裏面保護シートでは、液晶ポリマーフィルムの両面側に表面保護層を設けることが好ましい。上記では一例としてシリコン系太陽電池を挙げて説明したが、本発明の裏面保護シートは、化合物半導体太陽電池、有機太陽電池、色素増感太陽電池など他の太陽電池に用いる場合にも、それぞれの事情に応じて適宜、表面保護層を設けることが好ましい。
【0030】
液晶ポリマーフィルムの両面側に表面保護層を設ける場合、これら複数の表面保護層の材質と厚みは同一としてもよいが、目的などに応じて材質や厚みを異なるものとしてもよい。
【0031】
表面保護層の厚みとしては、5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、100μm以下、より好ましくは50μm以下であることが推奨される。
【0032】
表面保護層の材質としては、必要性や目的などに応じて適宜選択すればよいが、耐候性に優れた樹脂が好ましい。耐候性樹脂の種類は特に限定されないが、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、各種ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂などを挙げることができる。また、これら樹脂へ所望の特性を付与するために、紫外線吸収性の官能基などを導入してもよい。これら樹脂は、単独で用いることもできるし、適切なものを2種以上選択した上で混合して用いることもできる。
【0033】
表面保護層へは、紫外線の影響から液晶ポリマーフィルムを保護するために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、サルチレート系などが挙げられる。また、無機系等の紫外線吸収剤としては、代表的なものとして酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウムなどの微粒子を使用することができる。
【0034】
紫外線吸収剤の添加量は、特に限定されないが、通常、樹脂中0.1質量%以上、10質量%以下の範囲内が好ましく、特に0.3質量%以上、10質量%以下の範囲内が好ましい。
【0035】
表面保護層へは、紫外線遮断性、光反射性、意匠性などの性能を向上させるために、顔料を添加することが好ましい。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。また、有機顔料としては、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの多環式系顔料などを挙げることができる。これら顔料は、溶融した耐候性樹脂やワニス状の樹脂に添加してよく混合して使用すればよい。また、顔料の配合割合は、各顔料の添加目的などに応じて適宜調整すればよいが、その特性を十分に発揮せしめるためには、表面保護層全体に対して5質量%以上配合することが好ましい。一方、過剰に配合すると表面保護層の強度などが低下するおそれがあり得るので、当該割合を80質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
さらに表面保護層には、架橋剤、静電気防止剤、難燃剤などを配合してもよい。
【0037】
表面保護層は、溶融した上記耐候性樹脂と紫外線吸収剤などとの混合物を液晶ポリマーフィルム上へ溶融押出したり、また、ワニス状樹脂を液晶ポリマーフィルムにコーティングすることにより形成することができる。或いは、フィルム上の表面保護層と液晶ポリマーフィルムとを熱圧着してもよいし、接着層を介して両者を積層してもよい。表面保護層は、いったんフィルム状に加工する必要がないことから、コーティング法により液晶ポリマーフィルム上に形成することが好ましい。
【0038】
本発明の裏面保護シートには、さらに接着層を設けてもよい。かかる接着層は、密着性を向上させる必要のある層間の接着のために適宜設けることができ、ガスバリア性を確保するためのコア層である液晶ポリマーフィルムと表面保護層との積層を容易にするために設けるものであってもよいし、裏面保護シートの最外面に設け、太陽電池モジュールの封止樹脂と裏面保護シートとの密着性を向上させるためのものであってもよい。
【0039】
接着層を構成する樹脂としては、耐水性や耐薬品性に優れているものが好ましい。かかる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アミノ系樹脂などを挙げることができる。これら樹脂は、単独で用いることもできるし、適切なものを2種以上選択した上で混合して用いることもできる。また、これら接着層には、必要に応じて顔料、紫外線吸収剤、架橋剤等を適宜添加することもできる。
【0040】
本発明に係る裏面保護シートは、液晶ポリマーフィルムを必須のものとして有し、必要に応じて表面保護層や接着層を含むものであるが、太陽電池モジュールの使用環境によりさらなるガスバリア性向上が望まれる場合、金属箔や無機薄膜を裏面保護シート内のいずれかの層に適宜設けることができる。また、表面高度を高める必要がある場合には、最外部にハードコート層を適宜設けてもよい。このハードコート層は、帯電防止性のものであってもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
実施例1 低異方性液晶ポリマーフィルムのみからなる裏面保護シート
図3は、低異方性の液晶ポリマーフィルムのみからなる裏面保護シートである。液晶ポリマーフィルムは熱可塑性樹脂であることから、かかる裏面保護シートは、太陽電池モジュールの封止樹脂層へ熱圧着により接着させることができる。
【0043】
実施例2 片面に表面保護層を有する裏面保護シート
図4は、低異方性液晶ポリマーフィルムの片面に表面保護層が設けられた裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは、表面保護層が設けられた面と反対側の面を太陽電池モジュールの封止樹脂層に接着させることにより、裏面側から入る光などから液晶ポリマーフィルムの劣化を防ぎ、太陽電池モジュールの長期信頼性をより一層高めることができる。
【0044】
実施例3 接着層を有する裏面保護シート
図5は、低異方性液晶ポリマーフィルムの片面に接着層が設けられた裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは、接着層を介して、太陽電池モジュールの封止樹脂層へ容易に接着させることができる。
【0045】
実施例4 接着層と表面保護層を有する裏面保護シート
図6は、低異方性液晶ポリマーフィルムの片面に表面保護層が設けられており、その反対側の面に接着層が設けられた裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは、太陽電池モジュールの長期信頼性をより一層高めることができる上に、太陽電池モジュールの封止樹脂層へ容易に接着させることができる。
【0046】
実施例5 接着層と表面保護層を有する裏面保護シート
図7は、上記実施例4の裏面保護シートにおいて、低異方性液晶ポリマーフィルムと表面保護層との間にさらに接着層を設けた裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは、上記実施例4に係るシートの特性に加え、原料である低異方性液晶ポリマーフィルムと表面保護層とを接着層を介して容易に接着できることから、効率的に製造することが可能である。
【0047】
実施例6 表面保護層を有する裏面保護シート
図8は、低異方性液晶ポリマーフィルムの両面に表面保護層が設けられた裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは主に結晶系太陽電池モジュールで用いられるものであり、裏面側から侵入する光のみならず、半導体ウェハ間の隙間から透過してくる光からも液晶ポリマーフィルムが保護されていることから、液晶ポリマーフィルムの劣化がより一層抑制されている。
【0048】
実施例7 表面保護層と接着層を有する裏面保護シート
図9は、上記実施例6の裏面保護シートにおいて、低異方性液晶ポリマーフィルムと2つの表面保護層との間に接着層が設けられている裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは、上記実施例6に係るシートの特性に加え、原料である低異方性液晶ポリマーフィルムと表面保護層とを接着層を介して容易に接着できることから、効率的に製造することが可能である。
【0049】
実施例8 表面保護層と接着層を有する裏面保護シート
図10は、上記実施例6の裏面保護シートにおいて、一方の表面保護層の片面であり、シートの最外面に接着層が設けられている裏面保護シートである。かかる裏面保護シートは、上記実施例6に係るシートの特性に加え、接着層を介して太陽電池モジュールの封止樹脂層へ容易に接着できることができる。
【符号の説明】
【0050】
1:裏面保護シート、 10:液晶ポリマーフィルム、 11:表面保護層、 12:接着層、 2a:保護ガラスなどの透明性基材、 2b:透明電極付きガラス基板などの透明性基材、 3:太陽電池素子、 4:封止樹脂層、 5a:結晶系太陽電池モジュール、 5b:薄膜系太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低異方性液晶ポリマーフィルムを含むことを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
さらに表面保護層を含む請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
表面保護層が耐候性樹脂からなるものである請求項2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
表面保護層が紫外線吸収性のものである請求項2または3に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
表面保護層が顔料を含むものである請求項2〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項6】
さらに接着層を含む請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−182950(P2010−182950A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26408(P2009−26408)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】