説明

太陽電池モジュール用赤外線反射塗料及びそれを塗布された太陽電池モジュール

【課題】
太陽光発電に関する太陽電池モジュールにおいて、電気を消費することがないなどランニングコストが掛からないように太陽電池モジュールの温度上昇を抑制するためにその温度上昇をもたらす赤外線の光を反射し、太陽電池モジュールが住宅などの施設に設置された後であっても使用することができ、発電に有用な紫外線を十分透過することができる膜厚に調整することができる塗料及びその塗料によって作成された塗膜を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、反射光が赤紫色、赤色、橙色、黄色、緑黄色であるパール顔料と、パール顔料のバインダとなる不揮発性化合物とを含有し、パール顔料が残膜成分の10〜40重量%含有する塗料であること、及びその塗料を用いて作製された膜厚が0.5〜10μmで形成された赤外線反射塗膜であることにより解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの受光パネルに塗布する赤外線反射塗料及びそれを受光パネルに塗布された太陽電池モジュール又は太陽電池アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境問題意識から、太陽電池は、光起電力効果を利用し光エネルギーを直接電気エネルギーに変換できるため、発電の際に二酸化炭素などを発生させず、クリーンエネルギーとして急速に普及している。一般的に、太陽電池モジュールは、太陽光が透明電極を有する表面のガラス面から入射し、透明充填剤に封止されている半導体素子から構成される複数のセルに照射され電力を生じる。そして、さらに太陽電池モジュールを複数直列または並列に接続して必要となる電力を得られるようにしたものが太陽電池アレイである。
【0003】
一般的に、シリコンなどの結晶素材を素子として使用する太陽電池モジュール等では、日光によって60度以上の温度に達することもあるが、太陽電池モジュール等は温度が上昇すると出力が低下し、発電効率が低下することが知られている。このため、太陽電池モジュール等の温度上昇を抑えるため種々の検討が重ねられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、太陽電池モジュールを水冷式の冷却構造で効率的に冷却し、太陽電池モジュールにより昇温された熱媒を積極的に利用して、総合的に高効率な集光型太陽光発電装置が公開されている。
【0005】
太陽電池モジュールの温度上昇をもたらす光が、波長700nm以上の赤外線領域の光であることに着目し、赤外線を吸収又は反射する材料を用いて、太陽電池モジュールの温度上昇を抑制しようとする発明も公開されている。
【0006】
例えば、特許文献2では、樹脂に熱線遮蔽フィラーを分散させた400μmの表面充填材を透明ガラス電極に積層し、さらに熱線遮蔽フィラーを包含してなる充填剤で半導体素子を封止する太陽電池モジュールが公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−232531号公報
【特許文献2】特開2010−212381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1では、太陽光発電装置の太陽電池モジュールを水冷式で冷却することができるが、排熱を何らかの方法で冷却する必要があり、発電により増えた発電量に対し温水を冷却するために必要な電気量が多いと冷却することで余計に電気を使用している計算になり、また水冷式により余計な電気を使用していないとしても温水を冷却する装置を別途設ける必要があるため太陽発電装置は大型化し、住宅などの設置スペースが限られている施設では使用することが困難である。
【0009】
また、上述の特許文献2に記載の発明では、樹脂に熱線遮蔽フィラーを分散した表面充填材と、半導体素子を封止する透明充填剤であるEVAにも熱線遮蔽フィラーを充填することにより、太陽電池モジュールの温度上昇を抑制し、発電効率を向上しているが、新たな太陽電池モジュールを材料段階から作成するときにしか用いることができない。すわなち、汎用な太陽電池モジュールの製造工程において、後半の工程で受光パネルに対し、樹脂に熱線遮蔽フィラーを分散した表面充填材を製膜しても特許文献2ほどの効果が発現されず、また住宅などの施設に施工された後に、太陽電池モジュール又は太陽電池アレイの発電量を向上させるためのメンテナンスには使用することが困難である。
【0010】
また、特許文献2に記載の発明では、前記の表面充填材は膜厚が400μmと厚いため、近赤外線などの熱線を反射したとしても、可視光よりもエネルギーの高い発電に有用な紫外線領域の光を、表面充填材中の樹脂が吸収してしまい十分な発電量を確保できない懸念があった。
【0011】
そこで、本発明では、電気を消費することがないなどランニングコストが掛からないように太陽電池モジュールの温度上昇を抑制するためにその温度上昇をもたらす赤外線の光を反射し、太陽電池モジュールが住宅などの施設に設置された後であっても使用することができ、発電に有用な紫外線を十分透過することができる膜厚に調整することができる塗料及びその塗料によって作成された塗膜などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、反射光が赤紫色、赤色、橙色、黄色、緑黄色であるパール顔料と、パール顔料のバインダとなる不揮発性化合物とを含有し、パール顔料が残膜成分の10〜40重量%含有することを特徴とする太陽電池モジュール用赤外線反射塗料である。
【0013】
そして、上述の赤外線反射塗料を用い、膜厚が0.5〜10μmで形成された赤外線反射塗膜である。
【0014】
そして、紫外線透過率が85%以上である上述の赤外線反射塗膜である。
【0015】
そして、上述の赤外線反射塗膜を具備する太陽電池モジュールである。
【0016】
そして、上述の赤外線反射塗料を太陽電池モジュールの受光パネルにスプレーにより塗布する塗膜作成方法である。
【0017】
そして、不揮発性樹脂が、反応性官能基を有し、太陽電池モジュールの受光パネルに塗布した後に重合することで前記パール顔料と受光パネルを密着させる上述の赤外線反射塗料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る反射光が赤紫色、赤色、橙色、黄色、緑黄色であるパール顔料と、パール顔料のバインダとなる不揮発性化合物とを含有し、パール顔料が残膜成分の10〜40重量%含有する赤外線反射塗料によれば、電気を消費することなく、赤外線を反射し、十分な紫外線を透過することができる膜厚に調整することができ、太陽電池モジュールの製造工程だけでなく、太陽電池モジュールが住宅などの施設に設置するとき又は設置された後であっても使用することができる。
【0019】
そして、上述の赤外線反射塗料を用い、膜厚が0.5〜10μmで形成された赤外線反射塗膜によれば、赤外線を反射し、十分な紫外線を透過することができる。
【0020】
そして、紫外線透過率が85%以上である上述の赤外線反射塗膜によれば、発電量を向上させられる十分な紫外線を透過することができる。
【0021】
そして、上述の赤外線反射塗膜を具備する太陽電池モジュールによれば、発電量を向上させることができる。
【0022】
そして、上述の赤外線反射塗料を太陽電池モジュールの受光パネルにスプレーにより塗布する塗膜作成方法によれば、太陽電池モジュールが住宅などの施設に設置するとき又は設置された後であっても使用でき、膜厚が0.5〜10μmの塗膜を容易に均一に作成することができる。
【0023】
そして、不揮発性樹脂が、反応性官能基を有し、太陽電池モジュールの受光パネルに塗布した後に重合することで前記パール顔料と受光パネルを密着させる上述の赤外線反射塗料によれば、パール顔料を高濃度で添加しても低粘度ゆえ、膜厚が0.5〜10μmの塗膜を容易に均一に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の塗膜が作製された太陽電池モジュールの図。
【図2】図1のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に関する実施形態について詳しく説明する。
【0026】
本発明で使用するパール顔料は、透明支持材料に金属酸化物が被膜されたパール顔料のうち、その反射光が赤紫色、赤色、橙色、黄色、緑黄色のものである。透明支持材料として、天然又は合成雲母、ガラス薄片、薄片状二酸化ケイ素又は酸化アルミニウムが用いられる。また、金属酸化物として、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は透明支持材料よりも屈折率の大きい酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が用いられ、透明支持材料に単層又は2層以上所望の膜厚にて被覆される。
【0027】
また、反射された光が赤紫色、赤色、橙色、黄色、緑黄色であることは、補色すなわち色相環で正反対に位置する関係の色の組み合わせから、それぞれの反射光に対応する透過光は、緑(波長500〜560nm)、青緑(波長490〜500nm)、緑青(波長480〜490nm)、青(波長435〜480nm)、紫(波長400〜435nm)であり、発電に使用される可視光及び可視光よりもエネルギーが高い紫外線が透過していることを意味している。
【0028】
このようなパール顔料は、必要に応じて作成することもできるが、市販されているものを使用してもよい。市販されているパール顔料として、Iriodin(登録商標)201 Rutile Fine Gold、Iriodin(登録商標)211 Rutile Fine Red、Iriodin(登録商標)205 Rutile Platinam Gold、Iriodin(登録商標)249 Flash Gold、Iriodin(登録商標)259 Flash Redなどを使用することができる。
【0029】
なお、紫外線を十分透過できる限りにおいて、金属酸化物として酸化鉄など着色されたもので被覆され得られたパール顔料を単独で又は他のパール顔料と配合して使用することを妨げるものではない。
【0030】
本発明で使用するパール顔料のバインダとなる不揮発成分は、上記のパール顔料を分散することができ製膜したときに塗膜残分の主成分となる有機系化合物のことをいう。
【0031】
このような不揮発性化合物として、高分子化合物、製膜している最中又は製膜後に重合することにより高分子となる化合物など種々挙げられる。例えば、高分子化合物として、スチレン系樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系樹脂など)、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体などを使用することができる。
【0032】
また、製膜している最中又は製膜後に重合することにより高分子となる化合物として、エポキシアクリレート樹脂となるアクリル化合物とエポキシ化合物、ウレタン樹脂となるアルコール化合物又はアクリル酸を含有する化合物とイソシアネート化合物、フッ素樹脂になる架橋部位を有するフッ素化合物とその硬化剤、ポリエステル樹脂となるアルコール化合物とカルボン酸含有化合物、(メタ)アクリル樹脂となる(メタ)アクリル化合物と光又は熱重合開始剤、エポキシ樹脂となるエポキシ化合物とアミン化合物又は酸無水物又は光重合開始剤などを使用することができる。
【0033】
また、製膜するときに、本発明で使用するパール顔料を均一分散させるため、太陽電池モジュールの受光パネルへの濡れ性を向上させるため、又は膜厚を均一にするためなどの目的で、レベリング剤、シランカップリング剤、界面活性剤、乳化剤、可塑剤、増粘剤など各種添加剤を使用することができる。
【0034】
本発明の赤外線反射塗料には、必要に応じて有機溶剤又は水などの溶媒によって希釈して使用され、当該赤外線反射塗料を太陽電池モジュールの受光パネルに塗布して不揮発性化合物が重合又は必要に応じて添加した溶剤が揮発することにより塗膜が形成され、種々の効果を発現することができる。そして、形成された塗膜には、パール顔料が10〜40重量%含有する。さらに好ましくは、パール顔料が12〜37重量%である。パール顔料が少ないと、赤外線を反射させ太陽電池モジュールの温度上昇を抑えるために、塗膜の膜厚を厚くする必要があるが、パール顔料のバインダとなる不揮発性が太陽光発電に有用な紫外線を吸収してしまい所望の発電量を確保できない。また、パール顔料が多いと、相対的にバインダとなる不揮発性化合物が少なくなりパール顔料が太陽電池モジュールの受光パネルに安定的に固定されずに風雨にさらされ脱落するので、やはり所望の発電量を確保できない。
【0035】
また、本発明の赤外線反射塗料には、膜厚を調整するため、ハンドリングを向上させるためなどの理由で添加される溶媒は、不揮発性化合物のうち、高分子化合物、製膜後に重合することによりさらに高分子となる化合物のいずれにも用いることができる。用いられる溶媒は、有機系溶剤又は水が挙げられる。有機系溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられ、これらを単独又は複数組合せて使用することができる。また、水は、精製水、水道用水、工業用水など任意の水を使用することができる。さらに、上述した有機系溶剤に水を添加することもできる。
【0036】
また、本発明の赤外線反射塗料には、塗膜の生成速度を速くするため、塗膜の強度又は硬度を向上させるためなどの理由で、鎖状高分子を橋掛け構造にする架橋剤や不揮発性化合物を重合反応により高分子化する重合触媒などを添加することができる。架橋剤としては、アミン化合物、酸無水物、カルボン酸含有化合物、エポキシ化合物、アルコール系化合物、シラノール系化合物、硫黄系化合物などが挙げられ、高分子の側鎖にある官能基の種類に対応して適宜選択される。また、重合触媒としては、ウレタン樹脂の生成を促進するスズ系触媒、ポリエステル樹脂の生成を促進するチタン系触媒、アルミ系触媒、アンチモン系触媒、ゲルマニウム系触媒などが挙げられる。
【0037】
そして、製膜した後に、任意に溶媒を加えたときは、溶媒を自然に又は加熱により揮発させ、パール顔料と不揮発性化合物などを含有する塗膜が得られる。また、不揮発性化合物が、製膜している最中又は製膜後に重合することにより高分子となる化合物のときは、その化合物の種類に応じて数十度〜百度以上に加熱され、塗膜が得られてもよい。
【0038】
本発明の赤外線反射塗膜は、膜厚が0.5〜10μmで形成されることが好ましく、0.6〜5.0μmで形成されることがさらに好ましく、0.9〜3.0μmで形成されることが最も好ましい。この範囲より薄い塗膜であると、発電量モジュールの温度上昇を抑制することができない。一方、この範囲より厚い塗膜であるとモジュールの温度上昇を抑制することができるが、バインダである樹脂に紫外線が吸収されるなどの理由で発電量が小さくなる。
【0039】
本発明の赤外線反射塗膜は、紫外線透過率が85%以上であることが好ましい。ここで紫外線の透過率は、分光光度計を用い、受光パネルとして汎用に用いられるガラス素材から成る板に作製され、波長350nmの電磁波を照射したときに算出されるものである。
【0040】
本発明で使用する太陽電池モジュールは、シリコンの単結晶型、多結晶型、アモルファス型の半導体素子と、透明な樹脂から成りその半導体素子を封止する充填材と、ガラス素材から成り太陽光を受光する側に位置し、充填材と直接的又は間接的に接着される受光パネルと、受光パネルと反対側の充填材側面に密着する裏面フィルムと、アルミニウム素材から成り太陽電池モジュールの外枠であるフレームなどから構成される汎用のものである。また、半導体素子が、シリコンではなくインジウム、ガリウム、ヒ素を含有するものやカルコパライト系と称される銅、インジウム、ガリウム、セレンを含有するものなどであっても使用することができる。さらには、太陽光を受光する部材として一般的なガラスではなくプラスチックフィルムを使用し、太陽光を電気に変換する素子として有機材料を使用する有機色素増感太陽電池と呼ばれる種類の太陽電池に対しても使用してもよい。
【0041】
太陽電池モジュールの受光パネルに本発明の赤外線反射塗料を製膜する方法として、厚さが0.5〜10μmの薄膜とするために赤外線塗料をガススプレーによる噴霧する方法、バーコーターにて塗布する方法、アプリケーターにて塗布する方法、スピンコートにて塗布する方法、スクリーン印刷など印刷手法にて塗布する方法などが好ましい。
【0042】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
熱硬化性アクリル樹脂(DIC株式会社製、商品名「アクリディックA860」)15.0質量部と、イソシアネート系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「バーノックDN980」)2.0質量部さらに有機溶剤として酢酸イソブチル80.0質量部を加えてよく混合する。そこに本発明を構成する、反射光が黄色を呈するパール顔料(Merck社製、商品名「Iriodin(登録商標)205Rutile Platinam Gold」)3.0質量部を攪拌機で混ぜながら少しずつ加えて均一な溶液にて本発明の赤外線反射塗料を得た。バインダ成分である「アクリディックA860」の不揮発分は55%、「バーノックDN980」の不揮発分は75%であるので樹脂不揮発分は9.75質量部となり、パール顔料の残膜成分に対する含有率は{3.0/(9.75+3.0)}×100=23.5%となる。これをアプリケータでガラス板上に塗布し60℃で2時間、加熱乾燥し本発明の太陽電池モジュールの受光パネルの部分を模したガラス板を得た。塗布量を22.0g/m2とすると乾燥後の塗布量が2.8g/m2となる。塗膜比重を1.4とするとこれは計算上ちょうど2.0μmの膜厚に相当する。また、太陽電池モジュール(日天株式会社製、商品名「NTN40」)に同様な塗膜を作製した。
【実施例2】
【0044】
アクリルシリコン樹脂エマルジョン(昭和高分子株式会社製、商品名「ポリゾールAP−3900」)18.0質量部、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(長瀬産業株式会社製、商品名「テキサノール」)5.0質量部、さらに水80.0質量部を加えてよく混合する。そこに本発明を構成する、反射光が黄色を呈するパール顔料(Merck社製、商品名「Iriodin(登録商標)249Flash Gold」)2.0質量部を攪拌機で混ぜながら少しずつ加えて均一な溶液にて本発明の赤外線反射塗料を得た。バインダ成分である「ポリゾールAP−3900」の不揮発分は50%であるので、造膜助剤と合わせ不揮性化合物は14.0質量部となり、パール顔料の残膜成分に対する含有率は{2.0/(14.0+2.0)}×100=12.5%となる。これをエアスプレーでガラス板上に塗布し60℃で2時間、加熱乾燥させて本発明の太陽電池モジュールの受光パネルの部分を模したガラス板を得た。塗布量を20.0g/m2とすると乾燥塗布量が2.2g/m2となる。塗膜比重を1.4とするとこれは計算上ほぼ1.6μmの膜厚に相当する。また、太陽電池モジュール(日天株式会社製、商品名「NTN40」)に同様な塗膜を作製した。
【実施例3】
【0045】
架橋型フッ素樹脂(セントラル硝子株式会社製、商品名「セフラルコートCC−04」)8.0質量部と、オルガノシラノール系硬化剤(三菱化学株式会社製、商品名「MS57」)2.0質量部さらに有機溶剤として酢酸エチル40.0質量部とイソプロパノール37質量部を加えてよく混合する。そこに本発明を構成する、反射光が赤色を呈するパール顔料(Merck社製、「Iriodin(登録商標)259Flash Red」)3.0質量部を攪拌機で混ぜながら少しずつ加えて均一な溶液にて本発明の赤外線反射塗料を得た。また、塗布直前に硬化を促進するための触媒として極微量のジブチル錫ジアセテートを加えた。バインダ樹脂成分である「セフラルコートCC−04」の不揮発分は50%、「MS57」の完全硬化後の不揮発分はほぼ60%であるので、樹脂不揮発分は5.2質量部となり、パール顔料の残膜成分に対する含有率は{3.0/(5.2+3.0)}×100=36.6%となる。これをエアスプレーでガラス板上に塗布し60℃で10時間、加熱乾燥させて本発明の太陽電池モジュールの受光パネルの部分を模したガラス板を得た。塗布量を20.0g/m2とすると乾燥塗布量が1.64g/m2となる。塗膜比重を1.8とするとこれは計算上ほぼ0.9μmの膜厚に相当する。また、太陽電池モジュール(日天株式会社製、商品名「NTN40」)に同様な塗膜を作製した。
【実施例4】
【0046】
熱硬化性アクリル樹脂(DIC株式会社製、商品名「アクリディックA860」)17.0質量部と、イソシアネート系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「バーノックDN980」)2.0質量部さらに有機溶剤として酢酸イソブチル80.7質量部を加えてよく混合する。そこに反射光が黄色を呈するパール顔料Merck社製、商品名「Iriodin(登録商標)205 Rutile Platinam Gold」)1.3質量部を攪拌機で混ぜながら少しずつ加えて塗料を得た。バインダ成分である「アクリディックA860」の不揮発分は55%、「バーノックDN980」の不揮発分は75%であるので樹脂不揮発分は10.85質量部となり、パール顔料の残膜成分に対する含有率は{1.3/(10.85+1.3)}×100=10.7%となる。これをアプリケータでガラス板上に塗布し60℃で2時間、加熱乾燥させて太陽電池モジュールの受光パネルの部分を模したガラス板を得た。塗布量を114.0g/m2とすると乾燥塗布量が13.0g/m2となる。塗膜比重を1.3とするとこれは計算上ほぼ10.0μmの膜厚に相当する。また、太陽電池モジュール(日天株式会社製、商品名「NTN40」)に同様な塗膜を作製した。
【0047】
(比較例1)
実施例3で使用したパール顔料を、反射光が青色を呈するパール顔料(Merck社製、商品名「Iriodin(登録商標)289Flash Blue」)に代えて用いた以外は実施例3と同様の手順で塗料を調製した。
【0048】
(比較例2)
熱硬化性アクリル樹脂(DIC株式会社製、商品名「アクリディックA860」)17.0質量部と、イソシアネート系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「バーノックDN980」)2.0質量部さらに有機溶剤として酢酸イソブチル80.7質量部を加えてよく混合する。そこに反射光が黄色を呈するパール顔料Merck社製、商品名「Iriodin(登録商標)205 Rutile Platinam Gold」)0.3質量部を攪拌機で混ぜながら少しずつ加えて塗料を得た。バインダ成分である「アクリディックA860」の不揮発分は55%、「バーノックDN980」の不揮発分は75%であるので樹脂不揮発分は10.85質量部となり、パール顔料の残膜成分に対する含有率は{0.3/(10.85+0.3)}×100=2.69%となる。これをアプリケータでガラス板上に塗布し60℃で2時間、加熱乾燥させて太陽電池モジュールの受光パネルの部分を模したガラス板を得た。塗布量を250.0g/m2とすると乾燥塗布量が28.4g/m2となる。塗膜比重を1.25とするとこれは計算上ほぼ23.0μmの膜厚に相当する。また、太陽電池モジュール(日天株式会社製、商品名「NTN40」)に同様な塗膜を作製した。
【0049】
(比較例3)
塗料を使用せず、各実施例及び比較例1及び2で用いたガラス板と同じガラス板を用いた。また、太陽電池モジュール(日天株式会社製、商品名「NTN40」)をそのまま用いた。
【0050】
(下地接着性)
各実施例及び比較例で得られたガラス板上に作製された塗膜を、JIS K 5600 −5 −6に記載されている塗膜の付着性(クロスカット法)試験に準じて試験を行った。実施例1〜4、比較例1及び2において、いずれも剥離することなく良好な接着性を示した。
【0051】
(赤外線反射率)
各実施例及び比較例で得られたガラス板上に作製された塗膜を、分光光度計(株式会社島津製作所製、商品名「UV−3150」)を用いて、波長800nmの電磁波を照射して反射率(%)を測定した。
【0052】
(紫外線透過率)
各実施例及び比較例で得られたガラス板上に作製された塗膜を、分光光度計(株式会社島津製作所製、商品名「UV−3150」)を用いて、波長350nmの電磁波を照射して透過率(%)を測定した。透過率が85%以上であることが好ましい。
【0053】
【表1】

【0054】
(太陽電池モジュールの受光パネルの表面温度の測定)
各実施例及び比較例で得られた太陽電池モジュールを、南面、仰角20°で天日曝露し、所定時間後の受光パネル表面温度を、非接触型温度計(佐藤商事株式会社製、商品名「CT−200D」)を用いて、測定した。
【0055】
(太陽電池モジュールの発電量の測定)
各実施例及び比較例で得られた太陽電池モジュールを、南面、仰角20°で天日曝露し、50Ω抵抗を流れる電流値でその発生電力量を計測した。
【0056】
【表2】

【0057】
いずれの実施例でも明らかなように本発明の赤外線反射塗料を塗布すると、未塗布の太陽電池モジュール(比較例3)よりもいずれも発電量を向上させることができた。これは適正なパール顔料とその膜厚を選択したためであり、パール顔料の選定を間違えたり(比較例1)また、膜厚を厚くしたりすると(比較例2)、実施例ほどの発電量を得られない。
【符号の説明】
【0058】
1・・・太陽電池モジュール
11・・アルミフレーム
12・・受光パネル
13・・ガラス板
14・・保護フィルム
15・・充填剤
16・・半導体素子
2・・・赤外線反射塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光が赤紫色、赤色、橙色、黄色、緑黄色であるパール顔料と、前記パール顔料のバインダとなる不揮発性化合物とを含有し、前記パール顔料が残膜成分の10〜40重量%含有することを特徴とする太陽電池モジュール用赤外線反射塗料。
【請求項2】
膜厚が0.5〜10μmで形成されたことを特徴とする請求項1に記載した赤外線反射塗料により作成された太陽電池モジュール用赤外線反射塗膜。
【請求項3】
紫外線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール用赤外線反射塗膜。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれかに記載した赤外線反射塗膜を具備することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の赤外線反射塗料を太陽電池モジュールの受光パネルにスプレーにより塗布する塗膜作成方法。
【請求項6】
前記不揮発性樹脂が、反応性官能基を有し、太陽電池モジュールの受光パネルに塗布した後に重合することで前記パール顔料と受光パネルを密着させることを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射塗料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−104775(P2012−104775A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254503(P2010−254503)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(504221602)株式会社PGSホーム (3)
【Fターム(参考)】