説明

太陽電池モジュール

【課題】 発電効率が高く、且つ、十分な耐擦性を有する太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールの表面保護シート12上に、平均粒径100nm以下の蛍光体微粒子を含む,JIS K5600−5−4法による鉛筆硬度がH以上の波長変換
層11を受光面側最外層として設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに係り、特に、紫外光を可視光又は赤外光に波長変換するための波長変換層を備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電気エネルギーに変換するための太陽電池(太陽電池素子、光電変換素子)には、太陽光中の各波長の光を電気エネルギーに変換できることが望まれるが、一般的な太陽電池は、紫外光に対するエネルギー変換効率が低いものとなっている。そのため、そのような太陽電池の受光面側に、紫外光を可視光や赤外光に波長変換する波長変換層を設けることにより太陽電池の発電効率を向上させることが、提案されている。
【0003】
具体的には、太陽電池の受光面側に、波長変換層と、ガラスからなるフロントカバーとを、この順に積層すること(例えば、特許文献1参照。)や、フッ素系ポリマーマトリックス中に蛍光物質を分散させた層を波長変換層として受光面側の最外層に設けること(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。また、太陽電池素子の受光面側に、無機化合物層、透明樹脂層及び波長変換層を、この順に積層すること(例えば、特許文献3参照。)も提案されている。
【0004】
さらに、太陽電池と、波長変換機能を有する波長変換体とを別ユニットとしておくこと(波長変換体を交換可能とすること:例えば、特許文献4参照。)や、波長変換層用の蛍光体として、アルカリ土類金属のアルミン酸塩等を用いること(例えば、特許文献5参照。)も、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−202243号公報
【特許文献2】特開2006−269373号公報
【特許文献3】特開2001−094128号公報
【特許文献4】特開2003−218367号公報
【特許文献5】特開2003−218379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池の受光面側に、紫外光を可視光等に波長変換する波長変換層を設けておけば、太陽電池の発電効率を向上させることは出来る。しかしながら、発電効率が高く、且つ、実用上、十分な耐擦性を有する太陽電池モジュールは、未だ開発されていないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、発電効率が高く、且つ、実用上、十分な耐擦性を有する太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発電効率が高く、且つ、実用上、十分な耐擦性を有する太陽電池モジュールを実現すべく、鋭意、研究を行った所、発明者らは、波長変換層に含める蛍光体微粒子の平均粒径が100nmを超えてしまうと発電効率が悪くなるが、蛍光体微粒子の平均粒径が100nm以下であれば、比較的に高い発電効率を実現できることを見出した。また、発明者らは、波長変換層を、JIS K5600−5−4法による鉛筆硬度がH以上のものとしてお
けば、波長変換層を太陽電池モジュールの受光面側最外層としておいても(耐擦性を持たせるための層を波長変換層上に別途設けなくても)、十分な耐擦性を実現できることも見出した。
【0009】
本発明の『太陽電池素子と、前記太陽電池素子の受光面側を保護するための表面保護シートとを、備え、前記表面保護シートの前記太陽電池素子と対向しない側の面上に、平均粒径100nm以下の蛍光体微粒子を含む,JIS K5600−5−4法による鉛筆硬
度がH以上の波長変換層が、前記太陽電池素子の受光面側の最外層として設けられていることを特徴とする太陽電池モジュール』は、上記のような知見に基き完成するに到ったものである。
【0010】
本発明の太陽電池モジュールを実現するに際しては、波長変換層として、例えば、“前記蛍光体微粒子がマトリックス材料中に分散した層”を採用することが出来る。また、表面保護シートとしては、日射透過率80%以上の樹脂シートを採用することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発電効率が高く、且つ、実用上、十分な耐擦性を有する太陽電池モジュールを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の太陽電池モジュールを、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に、本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールの構成を示し、図2に、本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールの構成を示す。
【0015】
これらの図から明らかなように、本発明に係る太陽電池モジュールは、少なくとも、太陽電池素子14と、太陽電池モジュールの受光面側最外層を成す『平均粒径100nm以下の蛍光体微粒子を含む,JIS K5600−5−4法による鉛筆硬度がH以上の波長
変換層11』と、当該波長変換層11下に位置する,太陽電池素子14の受光面側を保護するための表面保護シート12とを備えるように、製造されるものである。
【0016】
以下、第1実施形態に係る太陽電池モジュールの構成を中心に、本発明の太陽電池モジュールの構成を、説明する。
【0017】
《太陽電池素子14》
各実施形態に係る太陽電池モジュールに使用される太陽電池素子14は、光エネルギーを直接電力に変換するための素子である。この太陽電池素子14としては、光エネルギーを直接電力に変換できる素子でありさえすれば、どのような素子も使用することが出来る。従って、太陽電池素子14としては、単結晶シリコン太陽電池素子、多結晶シリコン太陽電池素子、アモルファスシリコン太陽電池素子、微結晶シリコン太陽電池素子、球状シリコン太陽電池などのシリコン系太陽電池素子を採用することが出来る。また、太陽電池素子14として、CIS系太陽電池素子、CIGS系太陽電池素子、GaAs系太陽電池素子などの化合物太陽電池素子を採用することも出来る。さらに、太陽電池素子14として、色素増感太陽電池素子、有機薄膜太陽電池素子、多接合型太陽電池素子、HIT太陽電池素子等を採用することも出来る。
【0018】
《波長変換層11》
波長変換層11は、太陽光中の紫外光を可視光又は赤外光に波長変換して太陽電池素子14側に供給できるようにするために設けられている層である。この波長変換層11としては、通常、紫外光を可視光又は赤外光に波長変換するための蛍光体微粒子をマトリックス材料中に分散させた部材が使用されるが、発明者らが鋭意研究した結果、波長変換層11内の蛍光体微粒子の平均粒径が100nmを超えると、太陽電池モジュールの発電量が急激に低下してしまうことが確認できている。また、波長変換層11を保護層等で覆っておかなくても、波長変換層11のJIS K5600−5−4法による鉛筆硬度(以下、
単に、鉛筆硬度と表記する)をH以上としておけば、実用上十分な耐擦性が得られることも確認できている。
【0019】
そのため、波長変換層11としては、『平均粒径100nm以下の蛍光体微粒子を含む,JIS K5600−5−4法による鉛筆硬度がH以上の波長変換層11』が採用され
る。
【0020】
なお、基本的には、波長変換層11の構成要素として使用する蛍光体微粒子(以下、単に蛍光体微粒子と表記する)の平均粒径を小さくしていた方が、蛍光体微粒子表面で散乱(前方散乱)されてしまう光量(太陽電池素子14に到達しない光量)を減らすことが出来る。そのため、蛍光体微粒子の平均粒径は、80nm以下、特に、50nm以下としておくことが好ましい。ただし、蛍光体微粒子がマトリックス材料中で凝集してしまうと、凝縮した蛍光体微粒子が、平均粒径が大きな蛍光体微粒子として機能してしまうことになる。そして、平均粒径が大きい微粒子の方が凝縮しにくいので、蛍光体微粒子の平均粒径は、5nm以上、特に、10nm以上としておくことが好ましい。
【0021】
蛍光体微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡観察、動的光散乱測定、小角X線散乱測定などによって測定できる。具体的には、電子顕微鏡観察では、観察画像の解析から各粒子の円相当径(Heywod径)を算出してその累積50%径を平均粒径とすることが出来る。また、動的光散乱測定では、得られる流体力学的径の分布における累積50%径を平均粒径とすることができ、小角X線散乱測定でも、得られる粒径分布における累積50%径を平均粒径とすることができる。上記方法の中でも、波長変換層11の断面に対する電子顕微鏡観察が、太陽電池モジュールの状態でも断面を出すことができれば確認容易である点から好ましい。
【0022】
また、蛍光体微粒子は、紫外光を、可視光又は赤外光に変換できるもの(波長域250nm〜400nmの紫外光を波長域400〜800nmの可視光または波長域800nm〜1500nmの赤外光に波長変換出来るもの)でありさえすれば良い。ただし、太陽光に多く含まれる紫外光は、波長域300〜400nmの紫外光であるし、効率良く電気エネルギーに変換できる光の波長域は、太陽電池素子14によって異なる。そのため、蛍光体微粒子としては、波長域300〜400nmの紫外光を、太陽電池素子14が効率良く電気エネルギーに変換できる波長域の光(例えば、波長域500〜800nmの可視光)に変換できる蛍光体微粒子を採用しておくことが望ましい。
【0023】
蛍光体微粒子としては、無機系蛍光体の微粒子、有機系蛍光体の微粒子、無機有機ハイブリッド蛍光体の微粒子のいずれをも採用することができるが、耐久性の観点からは、無機系蛍光体の微粒子を採用しておくことが好ましい。なお、蛍光体微粒子の材料/原料として使用できる無機系蛍光体としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムなどのアルカリ土類金属の無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシドなど挙げられる。また、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウ
ム、ルテチウムなどの希土類金属の元素金属、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド、水素化物、水酸化物、酸化物、酸素酸塩、硫化物、及びバナジン酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、 タングステン酸塩等の遷移金属酸塩などを例示できる。さらに
これらに賦活剤(アクチベータ)としてチタン,ジルコニウム,バナジウム,クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ニオブ,モリブデン,タンタル,タングステン,ビスマスなどの遷移金属元素、および、ユーロピウム,ランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジム,プロメチウム,サマリウム,ガドリニウム,テルビウム,ジスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウムなどの希土類元素のうちの少なくとも一つ以上の元素を添加したものや、上記した物質中の幾つかの物質の混合物も、蛍光体微粒子の材料/原料として使用できる。ただし、波長変換効率および蛍光体微粒子製造の観点からは、蛍光体微粒子を、イットリウムの酸化物にユーロピウムとビスマスとを添加した材料からなるもの、イットリウムのバナジン酸塩にユーロピウムとビスマスとを添加した材料からなるものとしておくことが、好ましい。
【0024】
また、波長変換層11用のマトリックス材料としては、H以上の鉛筆硬度を有する波長変換層11を容易に実現できる材料、例えば、多官能アクリレート、シロキサンアクリレートの重合物およびこれらを混合した重合物;オルガノシリコーン、ポリシラザン、アルコキシシラン、オルガノシリケートおよびこれらの重合物、さらにこれらの混合物を採用しておくことが好ましい。
【0025】
ただし、マトリックス材料が、上記材料に限られる訳ではなく、マトリックス材料として、単官能アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系;オキセタン環を有する化合物を含有するオキセタン系;エポキシ系;ウレタン系;アルコキシシラン以外のシラン化合物の重合物およびSi、Ti、Zr、Al、Znを含む金属アルコキシドの混合物などのシリコーン系;および上記材料の混合物、混合した重合物等を用いても、高い鉛筆硬度を有する波長変換層11を形成できる。
【0026】
マトリックス材料として、上記のような材料(又は、高い鉛筆硬度を有する膜が形成しにくい材料)に、ハードコート性を付与する/向上させるための微粒子を分散させたものを採用することも出来る。なお、そのような用途に使用できる微粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、タルク等を例示できる。
【0027】
波長変換層11の日射透過率が低いと、当然、太陽電池素子14への到達光量が少なくなる。そのため、マトリックス材料としては、JIS R3106記載の方法により波長
域300〜2100nmから算出される日射透過率が、少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上となる波長変換層11を実現できる材料を採用しておくべきである。
【0028】
また、マトリックス材料として、ガラス転移温度を有する材料を使用する場合には、ガ
ラス転移温度が、60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である材料を使用しておくことが望ましい。何故ならば、太陽光が照射されるとモジュール表面温度は60℃程度となるため、マトリックス材料としてガラス転移温度が比較的に低い材料を使用しておくと、太陽電池モジュールの実際の使用中に、波長変換層11の鉛筆硬度がH未満となってしまう危険性があるからである。
【0029】
また、波長変換層11の膜厚は、特に限定されない。ただし、波長変換層11の膜厚が過度に薄い場合には、蛍光体微粒子の含有量が制限されてしまうが故に、波長変換層11が十分な波長変換機能を発揮することができなくなる恐れがある。逆に、波長変換層11の膜厚が過度に厚い場合には、モジュール重量が増加し、その結果として、モジュール設
置時の固定方法を従来より強固にする必要が生じる恐れがある。そのため、波長変換層11の膜厚は、100nm〜500μm程度としておくことが好ましく、500nm〜300μm程度としておくことがより好ましく、1μm〜100μm程度としておくことが特に好ましい。
【0030】
波長変換層11の形成(成膜)方法としては、蛍光体微粒子を分散させた樹脂バインダー(マトリックス材料)を表面保護シート12上に塗工して成膜する方法;波長変換層11を予め別の基材上に形成した後、表面保護シート12に転写する方法;波長変換層11をあらかじめ作製し、表面保護シート12とラミネートする方法などがある。なかでもモジュール作製後にも波長変換層11が設けられる点から、塗料を表面保護シート12に塗工・製膜する方法が好ましい。
【0031】
なお、塗料の塗工に使用できる技術としては、グラビアコーター、ドクターコーター、ロールコーター、バーコーター、スロットダイコーター、リップコーター、ナイフコーター、ディップコーター、キャピラリーコーター、スピンコーター、スプレーコーターなどの装置を用いる周知の技術が例示される。中でも、均質な製膜する観点から、グラビアコーター、ドクターコーター、ロールコーター、スロットダイコーター、リップコーター、ナイフコータースプレーコーターによる塗工が好ましい。
【0032】
塗料の塗工により波長変換層11を形成する場合には、塗工に適した物性に調整するために、塗料に、溶媒、高分子などの粘度調整剤、界面活性剤などの添加物を加えることが出来る。特に、溶媒が含まれる塗料の場合は、塗工後に加熱工程をおこなうことが好ましい。加熱方法としては、オーブン加熱、熱風、加熱板による輻射熱、赤外ランプによる赤外線照射などが例示される。
【0033】
さらに、マトリックス材料が、重合、架橋などの化学反応する場合には、塗工後に反応
工程をおこなうことが好ましい。反応工程はマトリックス材料に応じて適宜選択されるが、例として、加熱による熱硬化、UV照射によるUV硬化が挙げられる。
【0034】
《表面保護シート12》
表面保護シート12は、温度変化、湿度変化、風雨などから、太陽電池素子14(太陽電池素子14の受光面側)を保護するためのシート状部材である。したがって、表面保護シート12は、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性、機械強度などの表面被覆材として好適な性能を備え、しかも、当該性能が屋外暴露において長期間維持される性質を有することが好ましい。
【0035】
表面保護シート12は、太陽電池素子14を何らかの形で保護できるもでありさえすれば良い。従って、表面保護シート12としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、白板ガラス、無アルカリガラスなどのガラスおよびこれらの強化ガラス;ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ピスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂等の合成樹脂からなるものを採用することが出来る。ただし、耐候性の観点からは、表面保護シート12として、ガラスや、フッ素樹脂からなるものを用いておくことが好ましい。
【0036】
表面保護シート12の構成材料として使用するガラスは、光透過性の高さから白板ガラ
ス、無アルカリガラスが好ましく、耐衝撃強度が優れた白板強化ガラスが望ましい。また、表面保護シート12の構成材料として使用するフッ素樹脂は、光透過性の高さからETFEが好ましい。また、太陽電池モジュールの軽量化の観点からも、ETFEが好ましい。なお、表面保護シート12は、1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、表面保護シート12は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
【0037】
また、表面保護シート12は、より多くの発電量を得るために、太陽光を透過させるものが好ましい。従って、表面保護シート12としては、JIS R3106記載の方法に
より波長域300〜2100nmから算出される日射透過率が、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であるものを採用しておくべきである。
【0038】
さらに、太陽電池モジュールは、太陽光にさらされるものであるため、表面保護シート12は、耐熱性を有することが好ましい。従って、表面保護シート12の構成材料としては、その融点が、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下の材料を使用しておくべきである。
【0039】
表面保護シート12の厚みは特に規定されないが、樹脂材料の場合、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
また、ガラス材料の場合は、機械強度と重量のバランスから、通常0.8mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上であり、また、通常5mm以下、好ましくは4mm以下である。
【0040】
表面保護シート12には、波長変換層11または接する他の層との接着性の改良のために、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理等の表面処理、またはプライマー層を積層してもよい。
【0041】
また、表面保護シート12に、紫外線遮断、熱線遮断、防汚性、防曇性、耐擦性、導電性、反射防止、防眩性、光拡散、光散乱、ガスバリア性等の機能を付与してもよい。特に、太陽電池モジュールが、太陽光からの強い紫外線にさらされるものであるという観点からは、表面保護シート12に、紫外線遮断機能を持せておくことが好ましい。なお、紫外線遮断機能の表面保護シート12への付与は、紫外線遮断機能を有する層を塗工製膜等により表面保護シート12上に積層することや、紫外線遮断機能を発現する材料を溶解・分散させるなどして表面保護シート12に含有させることにより、行うことが出来る。
【0042】
《封止層13a、封止層13b、裏面保護シート15》
図2から明らかなように、本発明の太陽電池モジュールの必須構成要素は、波長変換層11、表面保護シート12、太陽電池素子14だけである。ただし、太陽電池モジュールの補強や太陽電池素子14の保護のために、図1に示してあるように、本発明の太陽電池モジュールに、封止層13a、封止層13b及び裏面保護シート15(または、これらの層/シートの中の一部)を設けておくことが出来る。
【0043】
封止層13(封止層13a、13b)の構成材料としては、太陽電池モジュールを補強することや、太陽電池素子14を何らかの形で保護できるものでありさえすれば、どのような材料も使用することが出来る。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体などのポリオレフィンフィルム
などを、封止層13の構成材料として用いることができる。なお、封止層13は、1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止層13は、単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムからなるものであってもよい。
【0044】
太陽電池素子14の受光面側に設ける封止層13aとしては、発電量が低くなることを防止するために、光透過が高いものを採用しておくべきである。具体的には、この封止層13aとしては、日射透過率が、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上の層を採用しておくべきである。当然、太陽電池素子14の受光面と反対側に設ける封止層13bは、光を透過するものである必要はなく、不透明なものであっても良い。
【0045】
さらに、太陽電池モジュールは光を受けて熱せられることが多いため、封止層13も耐熱性を有することが好ましい。従って、封止層13の構成材料としては、その融点が、100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下であるものを採用しておくべきである。
【0046】
封止層13の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常1000μm以下、好ましくは800μm以下、より好ましくは600μm以下である。厚くすると、太陽電池モジュール全体の強度が高まるが、厚くしすぎると、柔軟性が低下するためである。
【0047】
また、封止層13に、紫外線遮断、熱線遮断、導電性、易接着性、防眩性、光反射、光拡散、光散乱、ガスバリア性等の機能を付与しておいてもよい。なお、太陽電池モジュールは、太陽光からの強い紫外線にさらされるものであるため、封止層13(特に、封止層13a)には、紫外線遮断機能を持たせておくことが好ましい。なお、紫外線遮断機能の封止層13への付与は、紫外線遮断機能を有する層を塗工製膜等により封止層13上に積層することや、紫外線遮断機能を発現する材料を溶解・分散させるなどして封止層13に含有させることにより、行うことが出来る。
【0048】
裏面保護シート15としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムおよびシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のシートを、裏面保護シート15として使用することができる。
【0049】
これらの樹脂のシートの中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0050】
裏面保護シート15として、金属材料からなるシートを用いることもできる。例えば、アルミニウム箔および板、ステンレス製薄膜および鋼板などが挙げられる。かかる金属材料には、腐食防止を施していることが好ましい。なお、前記の金属は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0051】
さらに、裏面保護シート15として、樹脂と金属の複合材料からなるシートを用いることができる。例えばアルミニウム箔にフッ素系樹脂フイルムを接着した防水性の高いシートを裏面保護シート15として用いることが出来る。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー,デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0052】
裏面保護シート15の膜厚は、通常50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、通常5cm以下、好ましくは3cm以下、より好ましくは1cm以下、さらに好ましくは500μm以下である。上記範囲より薄いと太陽電池モジュールの強度不足や防湿性が担保できない恐れがあり、厚いと太陽電池モジュール重量が増加してしまうが故に、設置時の固定方法を従来より強固にする必要が生じる恐れがあるからである。
【0053】
また、裏面保護シート15に、紫外線遮断、熱線遮断、防汚性、耐擦性、易接着性、導電性、光反射、防眩性、光拡散、光散乱、耐候性、ガスバリア性等の機能を付与してもよい。特に、防湿性の観点から、裏面保護シート15には、ガスバリア性能を付与しておくことが好ましい。
【0054】
本発明の太陽電池モジュールは、発電量を多くする観点から、波長変換層11から太陽電池素子14までの日射透過率を、80%以上とすることが好ましく、83%以上とすることがより好ましく、86%以上とすることがさらに好ましく、90%以上とすることが特に好ましい。なお、理想的には100%であるが、太陽電池モジュール表面での反射を考慮すると通常99%以下である。
【0055】
また、本発明の太陽電池モジュールでは、紫外光が、波長変換層11でより多く波長変換されることが望ましい。そのため、波長変換層11から太陽電池素子14までの紫外線透過率(JIS R3106記載の方法で算出されるもの)は通常10%、好ましくは5
%以下、より好ましくは1%以下である。また、太陽電池モジュール受光面から測定された紫外線反射率(JIS R3106記載の方法で算出されるもの)は、通常3%、好ま
しくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。
【0056】
最後に、本発明の太陽電池モジュールの一実施例を説明しておくことにする。
【0057】
以下で説明する本発明の太陽電池モジュールの一実施例は、図1に示した構成を有するものである。そして、実施例に係る太陽電池モジュールは、以下の工程により製造したものとなっている。
【0058】
実施例に係る太陽電池モジュールの製造時には、まず、シンロイヒ社製ルミライト・ナノR−Y202(粒径30−40nm)と、東レ・ダウコーニング社製ハードコート塗料AY42−150(シリカ、多官能アクリレート、シロキサンアクリレート含有溶液)とを混合した塗料を表面保護シート12としての白板強化ガラス上に塗工する工程が行われている。
【0059】
次いで、白板強化ガラス上に塗工した塗料を紫外線照射により硬化させることにより、平均粒径30−40nmの蛍光体微粒子を含有する波長変換層11と表面保護シート12との積層体を形成する工程が行われている。
【0060】
そして、実施例に係る太陽電池モジュールは、当該積層体を、封止層13a、13bとしてのEVAフィルム(三井ファブロ社製ソーラーエバ)、太陽電池素子14としてのモザビア社製多結晶シリコン太陽電池素子、裏面保護シート15としてのAGC社製ETFEフィルムを積層・真空ラミネートすることによって、製造したものとなっている。
【0061】
このような工程により製造された実施例に係る太陽電池モジュールは、平均粒径が30−40nmの蛍光体微粒子を含む,鉛筆硬度がH以上の波長変換層11を有するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の太陽電池モジュールは、さまざまな形で利用することが出来る。具体的には、高い耐擦性を有しているものであるため、本発明の太陽電池モジュールは、屋根等に設置することにより光熱費を減少させるために利用することが出来る。
【符号の説明】
【0063】
11 波長変換層
12 表面保護シート
13a、13b 封止層
14 太陽電池素子
15 裏面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池素子と、前記太陽電池素子の受光面側を保護するための表面保護シートとを、備え、
前記表面保護シートの前記太陽電池素子と対向しない側の面上に、平均粒径100nm以下の蛍光体微粒子を含む,JIS K5600−5−4法による鉛筆硬度がH以上の波
長変換層が、前記太陽電池素子の受光面側の最外層として設けられている
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記波長変換層が、前記蛍光体微粒子がマトリックス材料中に分散した層である
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記表面保護シートが、日射透過率80%以上の樹脂シートである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−142179(P2011−142179A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1434(P2010−1434)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】