説明

太陽電池モジュール

【課題】 この発明は、フレームに嵌め込んだ太陽電池パネルの界面のシール材による止水性を向上させ、信頼性の高い太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】 太陽電池パネル10の周縁部にフレーム20を取り付けた太陽電池モジュールであって、フレーム20は、太陽電池パネル10の周縁部を、シール材40を介して嵌め込む嵌合部22を有し、嵌合部22は、太陽電池パネル10の周縁部が挿入される開口部22aと、太陽電池パネルの表面と対向する上面部23と、太陽電池パネル10の裏面と対向する下面部24と、下面部24から立ち上がり上面部23と連なる立壁部25を備え、立壁部25の太陽電池パネル10の表面部材12が位置する箇所にシール材40を保持するための溝部27cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールに関し、特に、フレームを備える太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を光電変換し電力を取り出す太陽電池モジュールが広く利用されている。太陽電池モジュールは、積雪荷重、風圧等の様々な環境負荷に耐えるために、太陽電池を含む太陽電池パネルの周縁部にアルミニウム材等の金属で形成されたフレームが取り付けられる。
【0003】
このような太陽電池モジュールでは、表面部材だけでなくフレームによっても強度が確保されるため、太陽電池モジュールを大型化した際にも表面部材を厚くする必要がなく、重量増加を抑えることができ、取り扱いが容易になる。さらに、表面部材の厚みを薄くすることにより透過する光量を多くして発電効率を向上させることができるという利点がある。
【0004】
上記した太陽電池モジュールは、太陽電池パネルとフレームとの間にシール材を介在させて、太陽電池パネルをフレームに嵌め込んで固定されている。これらシール材には、種々の形状、材質のものがあり、その取り付け方法には種々の提案がされている。
【0005】
特開2000−243998号公報(特許文献1)には、シリコーン樹脂等の半固形シール材をフレームの挟持部に充填し、これに太陽電池パネルを嵌め込むことにより、半固形シール材をフレームとパネル間に拡散充満させることが開示されている。
【0006】
この種の従来の太陽電池モジュールの要部断面図を図5及び図6に示す。図5に示すように、表面(受光面)側の透光性基板52と、裏面側の金属箔を絶縁フィルムで挟着した耐候性フィルム53とを用いて、太陽電池51をその間に挟み、内部の隙間に透明樹脂54を充填して太陽電池パネル50が構成される。そして、フレーム60の嵌合部62にシール材55を塗布した後、太陽電池パネル50を嵌合部62に嵌め込む。
【0007】
そして、太陽電池パネル50の周縁部に、シール材55を介して4つのアルミニウムフレーム60を嵌め込むことで、太陽電池モジュール61とする構造が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−243998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この構造においては、シール材55に流動性のシリコーン樹脂又はウレタン樹脂を使用した場合、図5の下方向(図中矢印で示す方向)に、シール材52が偏ってしまうことがある。太陽電池パネル50をフレーム60に嵌め込んで組み立てを完了したとき、シール材55が偏って固定されると、透光性基板52と透明樹脂54との間の界面が露出し、図6に示すように、嵌合部62と透光性基板52との間に染み込んだ水が透光性基板52と透明樹脂54との間或いは透明樹脂の側面から太陽電池パネル50の内部に染み込み、耐久性等に悪影響を及ぼすことになる。
【0010】
この発明は、フレームに嵌め込んだ太陽電池パネルの界面のシール材による止水性を向上させ、信頼性が向上した太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の太陽電池モジュールは、表面部材と裏面部材の間に封止材によって複数の太陽電池が封止された太陽電池パネルの周縁部に、フレームを取り付けた太陽電池モジュールであって、前記フレームは、前記太陽電池パネルの周縁部を、シール材を介して嵌め込む嵌合部分を有し、前記嵌合部分は、前記太陽電池パネルの周縁部が挿入される開口部と、前記太陽電池パネルの表面と対向する上面部と、前記太陽電池パネルの裏面と対向する下面部と、下面部から立ち上がり前記上面部と連なる立壁部を備え、前記立壁部の前記太陽電池パネルの表面部材が位置する箇所にシール材を保持するための溝部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記溝部は、前記太陽電池パネルが嵌合部分に挟み込まれた際に、前記表面部材の断面方向の表面から裏面の間に位置する箇所に設ければよい。
【0013】
また、前記立壁部の下面部側と前記下面部に前記シール材を溜めるための凹部を備えるように構成することができる。
【0014】
また、前記下面部の先端部は、面取り形状に形成するように構成できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、フレームの嵌合部分の立壁部の太陽電池パネルの表面部材が位置する箇所に、シール材を保持するための溝部を設けることで、シール材が嵌合部分の下面部方向へ偏ることが抑制され、太陽電池パネルの表面部材と封止材との界面が露出することなく、確実にシール材で被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施形態の太陽電池モジュールを示す平面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態に用いられるフレームを示す断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の太陽電池モジュールの要部を示す概略断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の太陽電池モジュールの要部を示し、図1のA−A線の概略断面図である。
【図5】従来の太陽電池モジュールの要部を示す概略断面図である。
【図6】従来の太陽電池モジュールの要部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0018】
図1ないし図4に従いこの発明の実施形態につき説明する。図1は、この発明の実施形態の太陽電池モジュールを示す平面図、図2は、この発明の実施形態に用いられるフレームを示す断面図、図3は、この発明の実施形態の太陽電池モジュールの要部を示す概略断面図、図4は、図1のA−A線の概略断面図である。
【0019】
この発明の太陽電池モジュール1は、内部に複数の太陽電池11…を備えた太陽電池パネル10の周縁部にフレーム20が取り付けられている。太陽電池11は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が100mm程度の略正方形を有するが、これに限るものではなく、他の太陽電池を用いても良い。
【0020】
この太陽電池11内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための接合部が形成されている。例えば、単結晶シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟み、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善した太陽電池などが用いられる。
【0021】
この複数の太陽電池11の各々は互いに隣接する他の太陽電池11と扁平形状の銅箔などで構成された配線材102によって電気的に接続されている。即ち、配線材の一方端側が所定の太陽電池11の上面側の電極に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池11に隣接する別の太陽電池11の下面側の電極に接続される。これら太陽電池11…は、配線材102で直列に接続されて1つのストリングス110を形成し、ストリングス110、110間が渡り配線で接続され、太陽電池モジュール1から所定の出力、例えば、200Wの出力が発生するように構成されている。
【0022】
図3、図4に示すように、複数の太陽電池11が互いに銅箔等の導電材よりなる配線材(図示せず)により電気的に接続され、ガラス、透光性プラスチックのような透光性を有する表面部材12と、裏面側の金属箔を絶縁性フィルムで挟着した裏面部材としての耐候性フィルム13との間に挟まれ、内部の隙間は耐候性、耐湿性に優れたEVA(ethylene vinylacetate、エチレン酢酸ビニル)等の透光性を有する封止材14により封止され、太陽電池パネル10が形成されている。
【0023】
図3に示すように、フレーム20に嵌め込まれる太陽電池パネル10の周縁部には、太陽電池11は配設されていない。このため、裏面側の耐光性フィルム13は、太陽電池11が存在しない分、表面側の表面部材12に近づいて取り付けられることになる。すなわち、フレーム20に嵌め込まれる太陽電池パネル10の周縁部の断面高さは、太陽電池11が存在する部分の断面高さより小さく形成される。
【0024】
上記太陽電池パネル10は、周縁部にシール材40を用いてアルミニウム等の金属からなるフレーム20に嵌め込まれる。このフレーム20は、アルミニウム、ステンレス又は鋼板ロールフォーミング材等で形成されている。必要に応じて端子ボックス(図示せず)が、例えば裏面側の耐候性フィルム13の表面に設けられる。
【0025】
図2ないし図4に示すように、フレーム20の一例は、中空構造の本体部21、本体部21の上部に位置し、太陽電池パネル10の周縁部をシール材を介して嵌め込む断面コ字状の嵌合部22を有する。
【0026】
嵌合部22は、太陽電池パネル10の周縁部が挿入される開口部22aと、太陽電池パネル10の表面部材12と対向する上面部23と、太陽電池パネル10の裏面の耐候フィルム13側と対向する下面部24と、下面部24から立ち上がり上面部23と連なる立壁部25を備える。そして、立壁部25の太陽電池パネル10の表面部材12が位置する箇所にシール材を保持するための溝部27cが形成されている。
【0027】
この溝部27cは、図4に示すように、太陽電池パネル10が嵌合部22に挟み込まれた際に、表面部材12の断面方向の表面から裏面の間に位置する箇所に設けられている。すなわち、表面部材12の上面部23と対向する表面と封止材14と対向する裏面との間に位置する立壁部25に溝部27cが形成される。このように、溝部27cを形成することでシール材40は保持され、太陽電池パネル10を嵌合部22に嵌め込んだ際に、シール材40が下面部24方向に偏ることが抑制され、太陽電池パネル10の表面部材12と封止材14との界面が露出することなく、確実にシール材40で被覆することができる。
【0028】
また、嵌合部22の下面部24の先端部は、面取り形状に形成されている。太陽電池パネル10の周縁部を嵌合部22に嵌め込む際に、太陽電池パネル10の裏面側の耐候フィルム13が開口部22aの下面部24の先端部に誤って触れた場合にも、先端部が面取り形状に形成することで、耐候フィルム13に傷がつくことを防止している。
【0029】
さらに、嵌合部22の立壁部25の下面部24側と下面部24には、シール材を溜めるための凹部27b、27aがそれぞれ設けられている。これにより、フレーム20を太陽電池パネル10へ取り付けたときに、フレーム20と太陽電池パネル10の周縁部との間に十分な量のシール材40を確保できるので、止水性を向上させ、信頼性を向上させることができる。
【0030】
次に、上記構成のフレーム20を太陽電池パネル10への取り付ける方法につき説明する。太陽電池パネル10をフレーム20に取り付けるには、ディスペンサを用いて流動性のシリコーン樹脂又はウレタン樹脂からなるシール材40を溝部27cを中心として塗布する。そして、太陽電池パネル10の周縁部を開口部22aから嵌め込み嵌合部22内にシール材40を介して固定する。溝部27cを形成することでシール材40は保持され、太陽電池パネル10を嵌合部22に嵌め込んだ際に、シール材40が下面部24方向に偏ることが抑制され、太陽電池パネル10の表面部材12と封止材14との界面が露出することなく、確実にシール材40で被覆することができる。この結果、界面での止水性が向上し、信頼性を向上させることができる。
【0031】
なお、この作業の際に、誤って太陽電池パネル10の耐候フィルム13が擦れたとしても下面部24の先端部は面取り形状に形成されているので、耐候フィルム13に傷がつくことが防止できる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、この発明は、薄膜太陽電池を用いた薄膜太陽電池モジュールにも適用することができる。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
1 太陽電池モジュール
10 太陽電池パネル
11 太陽電池
12 表面部材
13 耐光性フィルム
20 フレーム
21 本体部
22 嵌合部
22a開口部
23 上面部
24 下面部
25 立壁部
26 リブ部
27a、27b 凹部
27c 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部材と裏面部材の間に封止材によって複数の太陽電池が封止された太陽電池パネルの周縁部に、フレームを取り付けた太陽電池モジュールであって、
前記フレームは、前記太陽電池パネルの周縁部を、シール材を介して嵌め込む嵌合部分を有し、前記嵌合部分は、前記太陽電池パネルの周縁部が挿入される開口部と、前記太陽電池パネルの表面と対向する上面部と、前記太陽電池パネルの裏面と対向する下面部と、下面部から立ち上がり前記上面部と連なる立壁部を備え、前記立壁部の前記太陽電池パネルの表面部材が位置する箇所にシール材を保持するための溝部が形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記溝部は、前記太陽電池パネルが嵌合部分に挟み込まれた際に、前記表面部材の断面方向の表面から裏面の間に位置する箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記立壁部の下面部側と前記下面部に前記シール材を溜めるための凹部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記下面部の先端部は、面取り形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−155217(P2011−155217A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17205(P2010−17205)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】