太陽電池モジュール
【課題】耐候性及び耐熱性の両方に優れた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール1aは、板体10と、板体10に対向しているシート11と、板体10とシート11との間に設けられている充填剤層13と、充填剤層13内に配置されている太陽電池12とを備えている。充填剤層13は、第1の充填剤層13aと、第2の充填剤層13bとを有する。第1の充填剤層13aは、シート11に接するように設けられている。第1の充填剤層13aは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としている。第2の充填剤層13bは、第1の充填剤層13aに含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレンを主成分としている。
【解決手段】太陽電池モジュール1aは、板体10と、板体10に対向しているシート11と、板体10とシート11との間に設けられている充填剤層13と、充填剤層13内に配置されている太陽電池12とを備えている。充填剤層13は、第1の充填剤層13aと、第2の充填剤層13bとを有する。第1の充填剤層13aは、シート11に接するように設けられている。第1の充填剤層13aは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としている。第2の充填剤層13bは、第1の充填剤層13aに含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレンを主成分としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。特に、本発明は、板体とシートとの間に設けられている充填剤層内に配置されている太陽電池を備える太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷が小さいエネルギー源として、太陽電池モジュールが大いに注目されている。
【0003】
太陽電池モジュールは、受光することにより発電する太陽電池を備えている。太陽電池は、水分などとの接触により劣化しやすい。このため、太陽電池を外気から隔離する必要がある。従って、太陽電池は、通常、板体とシートとの間に設けられている充填剤層の内部に配置されている。すなわち、太陽電池は、充填剤層によって封止されている。
【0004】
充填剤層の材料としては、例えば、下記の特許文献1などにおいて、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられている。EVAにより充填剤層を形成した場合、充填剤層の水分透過性を低くできると共に、充填剤層の光透過率を高くすることができる。従って、EVAは、充填剤層の材料として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−129926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、EVAの特性は、酢酸ビニル含量によって変化する。例えば、酢酸ビニル含量が多いEVAは、吸水しやすい一方、酢酸ビニル含量が少ないEVAは、吸水しにくい。このため、充填剤層の水分透過性が低く、優れた耐候性を有する太陽電池モジュールを得るためには、充填剤層の形成に、酢酸ビニル含量が少ないEVAを用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、酢酸ビニル含量が少ないEVAは、高温時における流動性が高い。このため、酢酸ビニル含量が少ないEVAを用いて充填剤層を形成した場合、太陽電池モジュールが高温になったときに、充填剤層が流動するため、太陽電池モジュールの耐熱性が劣悪となる虞があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐候性及び耐熱性の両方に優れた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、充填剤層の一部が、酢酸ビニル含量が少ないEVAを主成分としていたとしても、所定の条件を満たす場合は、太陽電池モジュールの耐熱性が劣悪とならないことを見出した。具体的には、本発明者らは、板体とシートとの間に設けられている充填剤層のうち、シートに接している部分のうちの少なくとも一部が、酢酸ビニル含量が多いEVA、または酢酸ビニルユニットを含まないエチレンを主成分としている場合は、充填剤層の残りの部分が酢酸ビニル含量が少ないEVAを主成分としていても良好な耐熱性が得られることを見出した。その結果、本発明者らは、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る太陽電池モジュールは、板体と、シートと、充填剤層と、太陽電池とを備えている。シートは、板体に対向している。充填剤層は、板体とシートとの間に設けられている。太陽電池は、充填剤層内に配置されている。充填剤層は、第1の充填剤層と、第2の充填剤層とを有する。第1の充填剤層は、シートに接するように設けられている。第1の充填剤層は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としている。第2の充填剤層は、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレンを主成分としている。
【0011】
なお、本発明の「酢酸ビニル含量」とは、JIS K7192:1999(ISO 8985に対応)で規定されている酢酸ビニル含量である。本発明において、酢酸ビニル含量は、JIS K7192:1999(ISO 8985に対応)に規定のけん化法により測定することができる。具体的には、酢酸ビニル含量は、以下の方法により測定することができる。まず、試料を所定量だけ秤量する。秤量する試料の量は、酢酸ビニル含量が10質量%未満の場合は、1g、10質量%〜20質量%の場合は0.5g、20質量%〜40質量%の場合は0.3g、40質量%以上の場合は、0.2gとする。次に、秤量した試料に、キシレン約50ml及び0.1Nの水酸化カリウムのエタノール溶液20mlを加え、200℃で2時間還流する。還流後、冷却したサンプルに0.1Nの硫酸水溶液を30ml加え、攪拌する。その後、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて、得られた溶液中の過剰の硫酸溶液の体積を滴定する(滴定試験1)。また、上記滴定試験を、試料を加えずに行う(滴定試験2)。次に、下記式(1)に基づいて酢酸ビニル含量を算出する。
【0012】
酢酸ビニル含量(質量%)=((0.00869(A−B))/S)×100 ……… (1)
但し、上記式(1)において、
A:滴定試験1において過剰であると判断された硫酸水溶液の体積(ml)、
B:滴定試験2において過剰であると判断された硫酸水溶液の体積(ml)、
S:滴定試験1において秤量した試料の質量(g)、
である。
【0013】
本発明において、「エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする」とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体のみからなるか、または、エチレン・酢酸ビニル共重合体に、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤やシラン変成樹脂などのエチレン・酢酸ビニル共重合体以外の樹脂が、約5質量%以内の割合で含まれていることをいう。
【0014】
また、「ポリエチレンを主成分とする」とは、ポリエチレンのみからなるか、または、ポリエチレンに、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤やシラン変成樹脂などのポリエチレン以外の樹脂が、約5質量%以内の割合で含まれていることをいう。
【0015】
本発明において、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、20質量%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明において、第2の充填剤層は、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする層である場合は、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量の1.5倍以上であることが好ましい。
【0017】
本発明において、第1の充填剤層は、太陽電池に接していてもよい。
【0018】
本発明において、太陽電池は、第1の充填剤層と第2の充填剤層との間に配置されていてもよい。
【0019】
本発明において、太陽電池は、第2の充填剤層の内部に配置されていてもよい。
【0020】
本発明において、太陽電池は、第1の充填剤層の内部に配置されていてもよい。
【0021】
本発明において、第1の充填剤層は、板体とシートとの両方に接するように設けられていてもよい。
【0022】
本発明において、第2の充填剤層は、板体とシートとの両方に接するように設けられていてもよい。
【0023】
本発明において、第1の充填剤層は、第2の充填剤層を包囲するように配置されていてもよい。
【0024】
本発明において、板体がガラス板であり、シートが樹脂シートであってもよい。
【0025】
本発明において、太陽電池は、板体側からの光を受光するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、耐候性及び耐熱性の両方に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図3】第3の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図4】第4の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図5】第5の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図6】第6の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図7】第7の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図8】第8の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図9】第9の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図10】第10の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図11】第11の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図12】第12の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1〜図12に示す太陽電池モジュール1a〜1lを例に挙げて説明する。但し、太陽電池モジュール1a〜1lは、単なる例示である。本発明は、太陽電池モジュール1a〜1lに何ら限定されない。
【0029】
また、以下の実施形態において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0030】
《第1の実施形態》
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【0031】
図1に示すように、太陽電池モジュール1aは、板体10と、シート11と、充填剤層13と、太陽電池12とを備えている。
【0032】
(板体10及びシート11)
板体10と、シート11とは、太陽電池12の保護部材としての機能を有する。板体10は、太陽電池モジュール1aの機械的強度を担保する部材である。板体10は、剛性を有する部材である限りにおいて特に限定されない。板体10は、ガラス板や樹脂板などにより構成することができる。なかでも、板体10は、ガラス板により構成されていることが好ましい。ガラス板は、剛性及び光透過率が高く、かつ耐候性に優れているからである。
【0033】
なお、板体10の厚さは、特に限定されない。板体10の厚さは、例えば、3mm〜6mm程度とすることができる。
【0034】
シート11は、板体10と対向している。シート11は、可撓性を有する部材である限りにおいて特に限定されない。シート11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などからなる樹脂シートなどにより構成することができる。なお、シート11を構成する樹脂シートの内部には、例えば、アルミニウム箔などの遮光箔や、水分透過性が低い無機バリア層等が設けられていてもよい。無機バリア層は、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物などにより形成することができる。
【0035】
なお、シート11の厚さは、特に限定されない。シート11の厚さは、例えば、150μm〜300μm程度とすることができる。
【0036】
充填剤層13は、板体10とシート11との間に充填されている。充填剤層13は、太陽電池12を封止するための部材である。このため、充填剤層13は、封止層とも呼ばれる。この充填剤層13の構成については、後に詳述する。
【0037】
(太陽電池12)
充填剤層13の内部には、複数の太陽電池12が配置されている。複数の太陽電池12は、板体10,充填剤層13,シート11の積層方向zに対して垂直な配列方向xに沿って配列されている。複数の太陽電池12は、積層方向zを法線方向とする平面状にマトリクス状に配置されていてもよい。
【0038】
複数の太陽電池12は、配線材14によって、直列または並列に電気的に接続されている。なお、太陽電池12と配線材14との接着は、例えば、樹脂中に導電性粒子が分散している導電性樹脂接着剤や、半田などにより行うことができる。
【0039】
本実施形態においては、複数の太陽電池12のそれぞれは、受光面12aが板体10側を向き、裏面12bがシート11側を向くように配置されている。すなわち、本実施形態においては、複数の太陽電池12のそれぞれは、板体10側からの光を受光する。但し、本発明は、この構成に限定されない。太陽電池は、例えば、受光面がシート側を向き、裏面が板体側を向くように配置されていてもよい。また、太陽電池の両主面のそれぞれが受光面であってもよい。
【0040】
太陽電池12の構造は、特に限定されない。太陽電池12は、例えば、HIT(登録商標)構造を有するHIT太陽電池であってもよいし、他の構造の太陽電池であってもよい。
【0041】
一般的に、太陽電池12は、受光によりキャリア(電子及び正孔)を生成する光変換部を備えている。光変換部は、pn接合や、pin接合等の半導体接合を有する半導体材料から構成されている。半導体材料としては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの結晶シリコン半導体、非晶質シリコン半導体、GaAs等の化合物半導体などが挙げられる。
【0042】
光変換部の第1及び第2の主面のそれぞれには、キャリアを集電する集電電極が形成されている。この集電電極が、隣り合う太陽電池12間において配線材14により接続されることにより、複数の太陽電池12が電気的に接続されている。なお、集電電極は、一般的に、相互に平行に延びる複数のフィンガーと、フィンガーの延びる方向と垂直な方向に延びており、複数のフィンガーのそれぞれに接続されている1または複数のバスバーとを備えているが、これに限るものではない。
【0043】
(充填剤層13)
次に、本実施形態における充填剤層13の構成について詳細に説明する。
【0044】
充填剤層13は、第1の充填剤層13aと、第2の充填剤層13bとを有する。
【0045】
第1の充填剤層13aは、シート11に接するように設けられている。本実施形態では、具体的には、シート11と板体10との間に、第1の充填剤層13aと、第2の充填剤層13bとが、シート11側からこの順番で積層されている。シート11と第1の充填剤層13aとは接着されている。第1及び第2の充填剤層13a、13b間も接着されている。第2の充填剤層13bと板体10とも接着されている。
【0046】
太陽電池12は、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界に配置されている。よって、第1の充填剤層13aは、太陽電池12に接している。なお、図1では、描画の便宜上、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界は、積層方向zにおいて、太陽電池12が設けられた領域内に位置しているように描画しているが、例えば、積層方向zにおいて、太陽電池12の受光面12aや裏面12bと略面一であってもよい。
【0047】
第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとのそれぞれの積層方向zに沿った厚みは、特に限定されない。第1の充填剤層13aの積層方向zに沿った厚みは、例えば、0.3mm〜0.8mm程度であることが好ましい。第2の充填剤層13bの積層方向zに沿った厚みは、例えば、0.3mm〜0.8mm程度であることが好ましい。充填剤層13全体の積層方向zに沿った厚みは、例えば、0.6mm〜2.0mm程度であることが好ましい。第1の充填剤層13aの積層方向zに沿った厚みと、第2の充填剤層13bの積層方向zに沿った厚みとの比は、1:2〜2:1の範囲内であることが好ましい。
【0048】
第1の充填剤層13aは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分としている。第1の充填剤層13aは、EVAからなるものであってもよいし、EVAと他の樹脂の混合物や共重合体、EVAに添加剤が添加されたものであってもよい。ここで、上記他の樹脂としては、例えば、シラン変成樹脂などが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0049】
第2の充填剤層13bは、EVA、または酢酸ビニルユニットを含まないポリエチレンを主成分としている。第2の充填剤層13bは、EVAまたはポリエチレンからなるものであってもよいし、EVAまたはポリエチレンと他の樹脂の混合物や共重合体、EVAまたはポリエチレンに添加剤が添加されたものであってもよい。
【0050】
なお、上記他の樹脂としては、例えば、シラン変成樹脂などが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0051】
第2の充填剤層13bがEVAを主成分とする場合において、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量よりも少ない。第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、30質量%以下であることが好ましい。第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、酢酸ビニル含量が少ないEVAまたは酢酸ビニル含量がゼロであるポリエチレンを主成分としており、水分透過性が低い第2の充填剤層13bが設けられている。このため、本実施形態の太陽電池モジュール1aでは、例えば、酢酸ビニル含量が多い第1の充填剤層のみにより充填剤層を構成した場合よりも、太陽電池12に到達する水分量が少ない。よって、水分に起因する太陽電池12の劣化を抑制することができる。従って、太陽電池モジュール1aは、良好な耐候性を有する。
【0053】
さらに、本実施形態では、酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分としており、高温になったときにも流動性が低い第1の充填剤層13aが、板体10に比べて剛性が低いシート11に接するように設けられている。このため、良好な耐熱性を実現することができる。すなわち、本実施形態のように、酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分とし、高温時の流動性が低い第1の充填剤層13aをシート11に接するように設け、さらに、酢酸ビニル含量が少ないEVAまたはポリエチレンを主成分とし、水分透過性が低い第2の充填剤層13bを設けることにより、良好な耐候性と、良好な耐熱性とを両立させることができる。
【0054】
なお、酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分とする第1の充填剤層13aをシート11に接するように設けることにより耐熱性を改善することができる理由としては、充填剤層13aの、板体10に対して剛性が低いシート11側の部分の高温時における流動性を抑えることができるためであると考えられる。但し、高温になったときに流動性の高い第2の充填剤層13bが設けられているにも関わらず、シート11に接するように第1の充填剤層13aを設けることにより、大幅に耐熱性を改善することができた理由は、定かではない。
【0055】
第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の1.5倍以上である場合には、良好な耐候性と良好な耐熱性とをより高い次元で両立させることができる。より好ましくは、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の2倍以上であり、さらに好ましくは、5倍以上である。
【0056】
第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量が20質量%以上である場合は、より良好な耐熱性が得られ、25質量%以上である場合は、さらに良好な耐熱性が得られる。
【0057】
但し、第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量が多すぎると、EVA中の含水量が多くなりすぎ劣化を促進させるおそれがある。従って、第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、30質量%以下であることが好ましい。
【0058】
第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量が20質量%以下である場合は、より良好な耐候性が得られる。第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、より好ましくは、15質量%以下であり、さらに好ましくは、5質量%以下である。第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、ゼロであってもよい。すなわち、第2の充填剤層13bは、ポリエチレンからなるものであってもよい。
【0059】
本実施形態では、高温になったときに流動性の低い第1の充填剤層13aが太陽電池12に接するように設けられている。このため、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0060】
本実施形態では、太陽電池12の受光面12a側に配置されている板体10は、水分透過性が低いガラス板により構成されている。このため、板体10側からは、太陽電池モジュール1a内に水分は進入しにくい。よって、太陽電池モジュール1aの出力に大きく影響する太陽電池12の受光面12a及び充填剤層13の受光面12a側に位置する部分が劣化しにくい。従って、太陽電池モジュール1aの耐候性をより改善することができる。
【0061】
特に、本実施形態では、太陽電池12の受光面12a側に、水分透過性の低い第2の充填剤層13bが配置されており、水分透過性の高い第1の充填剤層13aは配置されていない。このため、太陽電池12の受光面12aに到達する水分をより少なくすることができる。よって、太陽電池12の受光面12aの劣化がより効果的に抑制されている。従って、太陽電池モジュール1aの耐候性をさらに改善することができる。
【0062】
なお、本実施形態に係る太陽電池モジュール1aは、例えば、以下に例示する製造方法により製造することができる。
【0063】
まず、シート11の上に、第2の充填剤層13bを形成するための、EVAまたはポリエチレンを主成分とするシートを1または複数枚配置する。その上に、配線材14により電気的に接続された複数の太陽電池12を配置し、さらにその上に、第1の充填剤層13aを形成するための、EVAを主成分とするシートを1または複数枚配置する。最後に、板体10を積層する。形成された積層体を、減圧雰囲気中において、加熱圧着することにより、太陽電池モジュール1aを完成させることができる。
【0064】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0065】
《第2の実施形態》
図2は、第2の実施形態に係る太陽電池モジュール1bの略図的断面図である。
【0066】
図2に示すように、第2の実施形態では、水分透過性が低い第2の充填剤層13bが板体10及びシート11の両方に接するように設けられている。具体的には、太陽電池モジュール1bの周縁部には、積層方向zにおいて板体10からシート11にわたって第2の充填剤層13bが設けられている。すなわち、積層方向zから視た際に、第1の充填剤層13aの外側には、第2の充填剤層13bが設けられている。
【0067】
なお、第2の実施形態に係る太陽電池モジュール1bは、例えば、第1の充填剤層13aを形成するためのシートの面積を、第2の充填剤層13bを形成するためのシートの面積よりも小さくすることにより、上記第1の実施形態で説明した製造方法と実質的に同様の方法により製造することができる。
【0068】
《第3の実施形態》
図3は、第3の実施形態に係る太陽電池モジュール1cの略図的断面図である。
【0069】
図3に示すように、第3の実施形態では、高温においても流動性が低い第1の充填剤層13aが板体10及びシート11の両方に接するように設けられている。具体的には、本実施形態では、太陽電池モジュール1cの周縁部には、積層方向zにおいて板体10からシート11にわたって第1の充填剤層13aが設けられている。すなわち、積層方向zから視た際に、第2の充填剤層13bの外側には、第1の充填剤層13aが位置している。
【0070】
なお、第3の実施形態に係る太陽電池モジュール1cは、例えば、第2の充填剤層13bを形成するためのシートの面積を、第1の充填剤層13aを形成するためのシートの面積よりも小さくすることにより、上記第1の実施形態で説明した製造方法と実質的に同様の方法により製造することができる。
【0071】
《第4の実施形態》
図4は、第4の実施形態に係る太陽電池モジュール1dの略図的断面図である。
【0072】
上記第1〜第3の実施形態では、複数の太陽電池12が、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界に配置されている例について説明した。それに対して第4の実施形態では、図4に示すように、第2の充填剤層13bが複数の太陽電池12よりもシート11側にまで至るように形成されており、太陽電池12は、第2の充填剤層13b内に配置されている。すなわち、太陽電池12は、水分透過性が低い第2の充填剤層13bによって包囲されている。
【0073】
なお、第4の実施形態に係る太陽電池モジュール1dは、例えば、第1の充填剤層13aを形成するためのシートと太陽電池12との間に、第2の充填剤層13bを形成するためのシートを介在させることにより、上記第1の実施形態で説明した製造方法と実質的に同様の方法により製造することができる。
【0074】
《第5の実施形態》
図5は、第5の実施形態に係る太陽電池モジュール1eの略図的断面図である。
【0075】
図5に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール1eの上記第4の実施形態の太陽電池モジュール1dと異なる点は、上記第3の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1eの周縁部には、積層方向zにおいて第1の充填剤層13aが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第2の充填剤層13bの外側には、第1の充填剤層13aが位置している。
【0076】
《第6の実施形態》
図6は、第6の実施形態に係る太陽電池モジュール1fの略図的断面図である。
【0077】
図6に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール1fの第4の実施形態の太陽電池モジュール1dと異なる点は、上記第2の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1fの周縁部には、積層方向zにおいて第2の充填剤層13bが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第1の充填剤層13aの外側には、第2の充填剤層13bが位置している。
【0078】
《第7の実施形態》
図7は、第7の実施形態に係る太陽電池モジュール1gの略図的断面図である。
【0079】
図7に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール1gの上記第1の実施形態の太陽電池モジュール1aとは異なる点は、第1の充填剤層13aが複数の太陽電池12よりも板体10側にまで至るように形成されており、複数の太陽電池12が第1の充填剤層13a内に配置されている点である。
【0080】
なお、本実施形態の太陽電池モジュール1gは、第2の充填剤層13bを形成するためのシートの上に太陽電池12を配置する前に、第1の充填剤層13aを形成するためのシートを配置することにより、上記第1の実施形態において説明した製造方法と実質的に同様の製造方法により製造することができる。
【0081】
《第8の実施形態》
図8は、第8の実施形態に係る太陽電池モジュール1hの略図的断面図である。
【0082】
図8に示すように、第8の実施形態の太陽電池モジュール1hの第7の実施形態の太陽電池モジュール1gと異なる点は、上記第2及び第6の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1hの周縁部には、積層方向zにおいて第2の充填剤層13bが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第1の充填剤層13aの外側には、第2の充填剤層13bが位置している。
【0083】
《第9の実施形態》
図9は、第9の実施形態に係る太陽電池モジュール1iの略図的断面図である。
【0084】
図9に示すように、第9の実施形態の太陽電池モジュール1iの第7の実施形態の太陽電池モジュール1gと異なる点は、上記第3及び第5の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1iの周縁部には、積層方向zにおいて第1の充填剤層13aが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第2の充填剤層13bの外側には、第1の充填剤層13aが位置している。
【0085】
《第10〜第12の実施形態》
図10は、第10の実施形態に係る太陽電池モジュール1jの略図的断面図である。図11は、第11の実施形態に係る太陽電池モジュール1kの略図的断面図である。図12は、第12の実施形態に係る太陽電池モジュール1lの略図的断面図である。
【0086】
図10〜図12に示すように、第10〜第12の実施形態では、第1の充填剤層13aが板体10及びシート11の両方に接している。第1の充填剤層13aは、第2の充填剤層13bを包囲するように設けられている。
【0087】
図10に示すように、第10の実施形態では、複数の太陽電池12は、第2の充填剤層13b内に配置されている。
【0088】
図11に示すように、第11の実施形態では、複数の太陽電池12は、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界に配置されている。
【0089】
図12に示すように、第12の実施形態では、複数の太陽電池12は、第1の充填剤層13a内に配置されている。
【0090】
上記第2〜第12の実施形態に係る太陽電池モジュール1b〜1lにおいても、上記第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1aと同様に、シート11に接するように、高温において流動性の低い第1の充填剤層13aが設けられており、かつ水分透過性の低い第2の充填剤層13bが設けられている。このため、優れた耐候性及び優れた耐熱性の両立を図ることができる。
【0091】
また、第2,第3及び第11の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、高温において流動性の低い第1の充填剤層13aが複数の太陽電池12に接するように設けられている。従って、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0092】
第2〜第6の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、太陽電池12の受光面12a側に、水分透過性の低い第2の充填剤層13bが配置されており、水分透過性の高い第1の充填剤層13aは配置されていない。従って、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0093】
第4〜第6及び第10の実施形態においては、複数の太陽電池12が第2の充填剤層13b内に配置されている。すなわち、複数の太陽電池12が、水分透過性の低い第2の充填剤層13bにより包囲されている。このため、複数の太陽電池12に水分が到達することをより効果的に抑制できる。よって、複数の太陽電池12の水分による劣化をより効果的に抑制することができる。従って、より優れた耐候性を実現することができる。
【0094】
第7〜第9及び第12の実施形態では、複数の太陽電池12が第1の充填剤層13a内に配置されている。すなわち、複数の太陽電池12が、高温における流動性が低い第1の充填剤層13aにより包囲されている。このため、高温雰囲気中においても、複数の太陽電池12が第1の充填剤層13aによって好適に保護される。従って、さらに優れた耐熱性を実現することができる。
【0095】
第3,第5及び第9〜第12の実施形態では、高温における流動性が低い第1の充填剤層13aが板体10とシート11との両方に接するように設けられている。このため、高温時において、充填剤層13の変形をより効果的に抑制することができる。特に、第3,第5及び第9〜第12の実施形態では、第2の充填剤層13bの外側に第1の充填剤層13aが位置している。よって、高温における流動性の高い第2の充填剤層13bの高温における流動も効果的に抑制される。従って、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0096】
なかでも、第10〜第12の実施形態では、第2の充填剤層13bが第1の充填剤層13aにより包囲されている。このため、第2の充填剤層13bの高温における流動をさらに効果的に抑制される。従って、さらに優れた耐熱性を実現することができる。
【0097】
第2,第6及び第8の実施形態では、水分透過性の低い第2の充填剤層13bが板体10とシート11との両方に接するように設けられている。具体的には、太陽電池モジュール1b、1f、1hの周縁部には、積層方向zにおいて第2の充填剤層13bが板体10からシート11にわたって設けられている。このため、太陽電池モジュール1b、1f、1hの周縁部からの太陽電池モジュール1b、1f、1h内への水分進入も効果的に抑制される。従って、より優れた耐候性を実現することができる。
【0098】
第2,第3,第5,第6及び第8〜第12の実施形態では、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの界面が、太陽電池モジュールの側面に露出していない。よって、第1の実施形態などのように、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの界面が、太陽電池モジュールの側面に露出している場合よりも、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの界面から太陽電池モジュール内に侵入する水分の量を少なくすることができる。従って、太陽電池モジュールの耐候性をさらに改善することができる。
【0099】
《実施例》
(実施例1)
本実施例では、上記第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1aと同様の構成を有する太陽電池モジュールA1を以下の要領で作製した。まず、ガラス板からなる板体10の上に、酢酸ビニル含量が15質量%であり、厚みが0.6mmであるEVAシートと、配線材14により電気的に接続された複数の太陽電池12と、酢酸ビニル含量が25質量%であり、厚みが0.6mmであるEVAシートと、シート11とをこの順番で積層した。得られた積層体をラミネート法を用いて一体化し、アルミニウムからなるフレーム内に収納することにより太陽電池モジュールを作製した。本実施例では、第1の充填剤層13aにおける酢酸ビニル含量は25質量%となる。第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量は15質量%となる。
【0100】
なお、シート11としては、厚みが約190μmであるポリエチレンテレフタレートを用いた。また、用いた太陽電池12の両表面には、相互に平行に延びる複数のフィンガーと、フィンガーと直交して設けられており、フィンガーの延びる方向に相互に隔離して配置されている2本のバスバーとが集電電極として設けられていた。
【0101】
次に、作製した太陽電池モジュールについて、JIS C8991:2004に規定の高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。
【0102】
具体的には、高温高湿度試験は、太陽電池モジュールを温度:85±2℃、相対湿度:85±5%の範囲内の高温高湿槽中に、1000時間放置することにより行った。そして、高温高湿度試験前後における太陽電池モジュールの出力低下率((高温高湿度試験実施後の出力)/(高温高湿度試験実施前の出力))を測定した。また、高温高湿度試験前後における受光面12a上の2本のバスバー間の抵抗増大率(((高温高湿度試験実施後の抵抗)−(高温高湿度試験実施前の抵抗))/(高温高湿度試験実施前の抵抗))を測定した。
【0103】
温度サイクル試験は、作製した太陽電池モジュールの両端子間に導通監視装置を接続すると共に、絶縁性監視装置を太陽電池モジュールの一方の端子と、フレームとの間に接続した状態で、太陽電池モジュールの温度を−40±2℃の範囲内の温度から、100℃/時間で90±2℃の範囲内の温度にまで昇温し、10分保持した後に、−40±2℃の範囲内の温度まで、100℃/時間で冷却し、10分保持した後に、再度、100℃/時間で90±2℃の範囲内の温度にまで昇温するサイクルを200サイクル実施することにより行った。この試験中において、太陽電池モジュール周囲の空気は、2m/秒で循環させた。また、試験中において、太陽電池モジュールには、AMが1.5で、100mW/cm2の強度の光を照射した。そして、温度サイクル試験前後における太陽電池モジュールの出力低下率((温度サイクル試験実施後の出力)/(温度サイクル試験実施前の出力))を測定した。
【0104】
結果を、下記の表1に示す。
【0105】
(実施例2)
第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量を5質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールA2を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。結果を、下記の表1に示す。
【0106】
(実施例3)
第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量を0質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールA3を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。すなわち、本実施例では、第2の充填剤層13bをポリエチレンにより形成した。結果を、下記の表1に示す。
【0107】
(比較例1)
第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量を25質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールB1を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。結果を、下記の表1に示す。
【0108】
(比較例2)
第1の充填剤層13a及び第2の充填剤層13bのそれぞれにおける酢酸ビニル含量を0質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールB2を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。結果を、下記の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
上記表1に示すように、第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量が少なく、第1の充填剤層13aにおける酢酸ビニル含量が多い太陽電池モジュールA1〜A3では、高温高湿度試験による出力低下率及び抵抗増大率が小さく、かつ、温度サイクル試験による出力低下率も小さかった。
【0111】
一方、第1の充填剤層13a及び第2の充填剤層13bの両方において酢酸ビニル含量が多い太陽電池モジュールB1では、温度サイクル試験による出力低下率は小さかったものの、高温高湿度試験による出力低下率及び抵抗増大率は大きかった。
【0112】
第1の充填剤層13a及び第2の充填剤層13bの両方において酢酸ビニル含量が少ない太陽電池モジュールB2では、高温高湿度試験による出力低下率及び抵抗増大率は小さかったものの、温度サイクル試験による出力低下率は大きかった。
【0113】
これらの結果から、シート11に接するように設けられた第1の充填剤層13aを酢酸ビニル含量が少ないEVAまたは酢酸ビニルユニットを含まないポリエチレンを主成分とするものとし、第2の充填剤層13bを酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分とするものとすることにより、優れた耐候性と優れた耐熱性との両立を図ることができることが分かる。
【0114】
また、太陽電池モジュールA1〜A3の高温高湿度試験結果の比較より、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が少なくなるに従って、耐候性がさらに優れたものとなることが分かる。この結果から、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、15質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましいことが分かる。また、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の1.5倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがさらに好ましいことが分かる。
【0115】
第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が共に0質量%である太陽電池モジュールA3と太陽電池モジュールB2とでは、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が異なるにも関わらず、耐候性が同等であった。この結果から、耐候性は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量に主として相関しており、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が変化しても耐候性がそれほど変化しないことが分かる。
【0116】
第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が25質量%である太陽電池モジュールA1〜A3,B1では、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が互いに異なるにも関わらず、耐熱性が同等であった。第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が0質量%である太陽電池モジュールB2のみが耐熱性が劣悪であった。この結果から、耐熱性は、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量に主として相関しており、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が変化しても耐候性がそれほど変化しないことが分かる。
【符号の説明】
【0117】
1a〜1l…太陽電池モジュール
10…板体
11…シート
12…太陽電池
12a…太陽電池の受光面
12b…太陽電池の裏面
13…充填剤層
13a…第1の充填剤層
13b…第2の充填剤層
14…配線材
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。特に、本発明は、板体とシートとの間に設けられている充填剤層内に配置されている太陽電池を備える太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷が小さいエネルギー源として、太陽電池モジュールが大いに注目されている。
【0003】
太陽電池モジュールは、受光することにより発電する太陽電池を備えている。太陽電池は、水分などとの接触により劣化しやすい。このため、太陽電池を外気から隔離する必要がある。従って、太陽電池は、通常、板体とシートとの間に設けられている充填剤層の内部に配置されている。すなわち、太陽電池は、充填剤層によって封止されている。
【0004】
充填剤層の材料としては、例えば、下記の特許文献1などにおいて、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられている。EVAにより充填剤層を形成した場合、充填剤層の水分透過性を低くできると共に、充填剤層の光透過率を高くすることができる。従って、EVAは、充填剤層の材料として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−129926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、EVAの特性は、酢酸ビニル含量によって変化する。例えば、酢酸ビニル含量が多いEVAは、吸水しやすい一方、酢酸ビニル含量が少ないEVAは、吸水しにくい。このため、充填剤層の水分透過性が低く、優れた耐候性を有する太陽電池モジュールを得るためには、充填剤層の形成に、酢酸ビニル含量が少ないEVAを用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、酢酸ビニル含量が少ないEVAは、高温時における流動性が高い。このため、酢酸ビニル含量が少ないEVAを用いて充填剤層を形成した場合、太陽電池モジュールが高温になったときに、充填剤層が流動するため、太陽電池モジュールの耐熱性が劣悪となる虞があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐候性及び耐熱性の両方に優れた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、充填剤層の一部が、酢酸ビニル含量が少ないEVAを主成分としていたとしても、所定の条件を満たす場合は、太陽電池モジュールの耐熱性が劣悪とならないことを見出した。具体的には、本発明者らは、板体とシートとの間に設けられている充填剤層のうち、シートに接している部分のうちの少なくとも一部が、酢酸ビニル含量が多いEVA、または酢酸ビニルユニットを含まないエチレンを主成分としている場合は、充填剤層の残りの部分が酢酸ビニル含量が少ないEVAを主成分としていても良好な耐熱性が得られることを見出した。その結果、本発明者らは、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る太陽電池モジュールは、板体と、シートと、充填剤層と、太陽電池とを備えている。シートは、板体に対向している。充填剤層は、板体とシートとの間に設けられている。太陽電池は、充填剤層内に配置されている。充填剤層は、第1の充填剤層と、第2の充填剤層とを有する。第1の充填剤層は、シートに接するように設けられている。第1の充填剤層は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としている。第2の充填剤層は、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレンを主成分としている。
【0011】
なお、本発明の「酢酸ビニル含量」とは、JIS K7192:1999(ISO 8985に対応)で規定されている酢酸ビニル含量である。本発明において、酢酸ビニル含量は、JIS K7192:1999(ISO 8985に対応)に規定のけん化法により測定することができる。具体的には、酢酸ビニル含量は、以下の方法により測定することができる。まず、試料を所定量だけ秤量する。秤量する試料の量は、酢酸ビニル含量が10質量%未満の場合は、1g、10質量%〜20質量%の場合は0.5g、20質量%〜40質量%の場合は0.3g、40質量%以上の場合は、0.2gとする。次に、秤量した試料に、キシレン約50ml及び0.1Nの水酸化カリウムのエタノール溶液20mlを加え、200℃で2時間還流する。還流後、冷却したサンプルに0.1Nの硫酸水溶液を30ml加え、攪拌する。その後、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて、得られた溶液中の過剰の硫酸溶液の体積を滴定する(滴定試験1)。また、上記滴定試験を、試料を加えずに行う(滴定試験2)。次に、下記式(1)に基づいて酢酸ビニル含量を算出する。
【0012】
酢酸ビニル含量(質量%)=((0.00869(A−B))/S)×100 ……… (1)
但し、上記式(1)において、
A:滴定試験1において過剰であると判断された硫酸水溶液の体積(ml)、
B:滴定試験2において過剰であると判断された硫酸水溶液の体積(ml)、
S:滴定試験1において秤量した試料の質量(g)、
である。
【0013】
本発明において、「エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする」とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体のみからなるか、または、エチレン・酢酸ビニル共重合体に、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤やシラン変成樹脂などのエチレン・酢酸ビニル共重合体以外の樹脂が、約5質量%以内の割合で含まれていることをいう。
【0014】
また、「ポリエチレンを主成分とする」とは、ポリエチレンのみからなるか、または、ポリエチレンに、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤やシラン変成樹脂などのポリエチレン以外の樹脂が、約5質量%以内の割合で含まれていることをいう。
【0015】
本発明において、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、20質量%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明において、第2の充填剤層は、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする層である場合は、第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量の1.5倍以上であることが好ましい。
【0017】
本発明において、第1の充填剤層は、太陽電池に接していてもよい。
【0018】
本発明において、太陽電池は、第1の充填剤層と第2の充填剤層との間に配置されていてもよい。
【0019】
本発明において、太陽電池は、第2の充填剤層の内部に配置されていてもよい。
【0020】
本発明において、太陽電池は、第1の充填剤層の内部に配置されていてもよい。
【0021】
本発明において、第1の充填剤層は、板体とシートとの両方に接するように設けられていてもよい。
【0022】
本発明において、第2の充填剤層は、板体とシートとの両方に接するように設けられていてもよい。
【0023】
本発明において、第1の充填剤層は、第2の充填剤層を包囲するように配置されていてもよい。
【0024】
本発明において、板体がガラス板であり、シートが樹脂シートであってもよい。
【0025】
本発明において、太陽電池は、板体側からの光を受光するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、耐候性及び耐熱性の両方に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図3】第3の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図4】第4の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図5】第5の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図6】第6の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図7】第7の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図8】第8の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図9】第9の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図10】第10の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図11】第11の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【図12】第12の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1〜図12に示す太陽電池モジュール1a〜1lを例に挙げて説明する。但し、太陽電池モジュール1a〜1lは、単なる例示である。本発明は、太陽電池モジュール1a〜1lに何ら限定されない。
【0029】
また、以下の実施形態において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0030】
《第1の実施形態》
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【0031】
図1に示すように、太陽電池モジュール1aは、板体10と、シート11と、充填剤層13と、太陽電池12とを備えている。
【0032】
(板体10及びシート11)
板体10と、シート11とは、太陽電池12の保護部材としての機能を有する。板体10は、太陽電池モジュール1aの機械的強度を担保する部材である。板体10は、剛性を有する部材である限りにおいて特に限定されない。板体10は、ガラス板や樹脂板などにより構成することができる。なかでも、板体10は、ガラス板により構成されていることが好ましい。ガラス板は、剛性及び光透過率が高く、かつ耐候性に優れているからである。
【0033】
なお、板体10の厚さは、特に限定されない。板体10の厚さは、例えば、3mm〜6mm程度とすることができる。
【0034】
シート11は、板体10と対向している。シート11は、可撓性を有する部材である限りにおいて特に限定されない。シート11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などからなる樹脂シートなどにより構成することができる。なお、シート11を構成する樹脂シートの内部には、例えば、アルミニウム箔などの遮光箔や、水分透過性が低い無機バリア層等が設けられていてもよい。無機バリア層は、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物などにより形成することができる。
【0035】
なお、シート11の厚さは、特に限定されない。シート11の厚さは、例えば、150μm〜300μm程度とすることができる。
【0036】
充填剤層13は、板体10とシート11との間に充填されている。充填剤層13は、太陽電池12を封止するための部材である。このため、充填剤層13は、封止層とも呼ばれる。この充填剤層13の構成については、後に詳述する。
【0037】
(太陽電池12)
充填剤層13の内部には、複数の太陽電池12が配置されている。複数の太陽電池12は、板体10,充填剤層13,シート11の積層方向zに対して垂直な配列方向xに沿って配列されている。複数の太陽電池12は、積層方向zを法線方向とする平面状にマトリクス状に配置されていてもよい。
【0038】
複数の太陽電池12は、配線材14によって、直列または並列に電気的に接続されている。なお、太陽電池12と配線材14との接着は、例えば、樹脂中に導電性粒子が分散している導電性樹脂接着剤や、半田などにより行うことができる。
【0039】
本実施形態においては、複数の太陽電池12のそれぞれは、受光面12aが板体10側を向き、裏面12bがシート11側を向くように配置されている。すなわち、本実施形態においては、複数の太陽電池12のそれぞれは、板体10側からの光を受光する。但し、本発明は、この構成に限定されない。太陽電池は、例えば、受光面がシート側を向き、裏面が板体側を向くように配置されていてもよい。また、太陽電池の両主面のそれぞれが受光面であってもよい。
【0040】
太陽電池12の構造は、特に限定されない。太陽電池12は、例えば、HIT(登録商標)構造を有するHIT太陽電池であってもよいし、他の構造の太陽電池であってもよい。
【0041】
一般的に、太陽電池12は、受光によりキャリア(電子及び正孔)を生成する光変換部を備えている。光変換部は、pn接合や、pin接合等の半導体接合を有する半導体材料から構成されている。半導体材料としては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの結晶シリコン半導体、非晶質シリコン半導体、GaAs等の化合物半導体などが挙げられる。
【0042】
光変換部の第1及び第2の主面のそれぞれには、キャリアを集電する集電電極が形成されている。この集電電極が、隣り合う太陽電池12間において配線材14により接続されることにより、複数の太陽電池12が電気的に接続されている。なお、集電電極は、一般的に、相互に平行に延びる複数のフィンガーと、フィンガーの延びる方向と垂直な方向に延びており、複数のフィンガーのそれぞれに接続されている1または複数のバスバーとを備えているが、これに限るものではない。
【0043】
(充填剤層13)
次に、本実施形態における充填剤層13の構成について詳細に説明する。
【0044】
充填剤層13は、第1の充填剤層13aと、第2の充填剤層13bとを有する。
【0045】
第1の充填剤層13aは、シート11に接するように設けられている。本実施形態では、具体的には、シート11と板体10との間に、第1の充填剤層13aと、第2の充填剤層13bとが、シート11側からこの順番で積層されている。シート11と第1の充填剤層13aとは接着されている。第1及び第2の充填剤層13a、13b間も接着されている。第2の充填剤層13bと板体10とも接着されている。
【0046】
太陽電池12は、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界に配置されている。よって、第1の充填剤層13aは、太陽電池12に接している。なお、図1では、描画の便宜上、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界は、積層方向zにおいて、太陽電池12が設けられた領域内に位置しているように描画しているが、例えば、積層方向zにおいて、太陽電池12の受光面12aや裏面12bと略面一であってもよい。
【0047】
第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとのそれぞれの積層方向zに沿った厚みは、特に限定されない。第1の充填剤層13aの積層方向zに沿った厚みは、例えば、0.3mm〜0.8mm程度であることが好ましい。第2の充填剤層13bの積層方向zに沿った厚みは、例えば、0.3mm〜0.8mm程度であることが好ましい。充填剤層13全体の積層方向zに沿った厚みは、例えば、0.6mm〜2.0mm程度であることが好ましい。第1の充填剤層13aの積層方向zに沿った厚みと、第2の充填剤層13bの積層方向zに沿った厚みとの比は、1:2〜2:1の範囲内であることが好ましい。
【0048】
第1の充填剤層13aは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分としている。第1の充填剤層13aは、EVAからなるものであってもよいし、EVAと他の樹脂の混合物や共重合体、EVAに添加剤が添加されたものであってもよい。ここで、上記他の樹脂としては、例えば、シラン変成樹脂などが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0049】
第2の充填剤層13bは、EVA、または酢酸ビニルユニットを含まないポリエチレンを主成分としている。第2の充填剤層13bは、EVAまたはポリエチレンからなるものであってもよいし、EVAまたはポリエチレンと他の樹脂の混合物や共重合体、EVAまたはポリエチレンに添加剤が添加されたものであってもよい。
【0050】
なお、上記他の樹脂としては、例えば、シラン変成樹脂などが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0051】
第2の充填剤層13bがEVAを主成分とする場合において、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量よりも少ない。第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、30質量%以下であることが好ましい。第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、酢酸ビニル含量が少ないEVAまたは酢酸ビニル含量がゼロであるポリエチレンを主成分としており、水分透過性が低い第2の充填剤層13bが設けられている。このため、本実施形態の太陽電池モジュール1aでは、例えば、酢酸ビニル含量が多い第1の充填剤層のみにより充填剤層を構成した場合よりも、太陽電池12に到達する水分量が少ない。よって、水分に起因する太陽電池12の劣化を抑制することができる。従って、太陽電池モジュール1aは、良好な耐候性を有する。
【0053】
さらに、本実施形態では、酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分としており、高温になったときにも流動性が低い第1の充填剤層13aが、板体10に比べて剛性が低いシート11に接するように設けられている。このため、良好な耐熱性を実現することができる。すなわち、本実施形態のように、酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分とし、高温時の流動性が低い第1の充填剤層13aをシート11に接するように設け、さらに、酢酸ビニル含量が少ないEVAまたはポリエチレンを主成分とし、水分透過性が低い第2の充填剤層13bを設けることにより、良好な耐候性と、良好な耐熱性とを両立させることができる。
【0054】
なお、酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分とする第1の充填剤層13aをシート11に接するように設けることにより耐熱性を改善することができる理由としては、充填剤層13aの、板体10に対して剛性が低いシート11側の部分の高温時における流動性を抑えることができるためであると考えられる。但し、高温になったときに流動性の高い第2の充填剤層13bが設けられているにも関わらず、シート11に接するように第1の充填剤層13aを設けることにより、大幅に耐熱性を改善することができた理由は、定かではない。
【0055】
第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の1.5倍以上である場合には、良好な耐候性と良好な耐熱性とをより高い次元で両立させることができる。より好ましくは、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の2倍以上であり、さらに好ましくは、5倍以上である。
【0056】
第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量が20質量%以上である場合は、より良好な耐熱性が得られ、25質量%以上である場合は、さらに良好な耐熱性が得られる。
【0057】
但し、第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量が多すぎると、EVA中の含水量が多くなりすぎ劣化を促進させるおそれがある。従って、第1の充填剤層13aに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、30質量%以下であることが好ましい。
【0058】
第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量が20質量%以下である場合は、より良好な耐候性が得られる。第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、より好ましくは、15質量%以下であり、さらに好ましくは、5質量%以下である。第2の充填剤層13bに含まれるEVAにおける酢酸ビニル含量は、ゼロであってもよい。すなわち、第2の充填剤層13bは、ポリエチレンからなるものであってもよい。
【0059】
本実施形態では、高温になったときに流動性の低い第1の充填剤層13aが太陽電池12に接するように設けられている。このため、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0060】
本実施形態では、太陽電池12の受光面12a側に配置されている板体10は、水分透過性が低いガラス板により構成されている。このため、板体10側からは、太陽電池モジュール1a内に水分は進入しにくい。よって、太陽電池モジュール1aの出力に大きく影響する太陽電池12の受光面12a及び充填剤層13の受光面12a側に位置する部分が劣化しにくい。従って、太陽電池モジュール1aの耐候性をより改善することができる。
【0061】
特に、本実施形態では、太陽電池12の受光面12a側に、水分透過性の低い第2の充填剤層13bが配置されており、水分透過性の高い第1の充填剤層13aは配置されていない。このため、太陽電池12の受光面12aに到達する水分をより少なくすることができる。よって、太陽電池12の受光面12aの劣化がより効果的に抑制されている。従って、太陽電池モジュール1aの耐候性をさらに改善することができる。
【0062】
なお、本実施形態に係る太陽電池モジュール1aは、例えば、以下に例示する製造方法により製造することができる。
【0063】
まず、シート11の上に、第2の充填剤層13bを形成するための、EVAまたはポリエチレンを主成分とするシートを1または複数枚配置する。その上に、配線材14により電気的に接続された複数の太陽電池12を配置し、さらにその上に、第1の充填剤層13aを形成するための、EVAを主成分とするシートを1または複数枚配置する。最後に、板体10を積層する。形成された積層体を、減圧雰囲気中において、加熱圧着することにより、太陽電池モジュール1aを完成させることができる。
【0064】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0065】
《第2の実施形態》
図2は、第2の実施形態に係る太陽電池モジュール1bの略図的断面図である。
【0066】
図2に示すように、第2の実施形態では、水分透過性が低い第2の充填剤層13bが板体10及びシート11の両方に接するように設けられている。具体的には、太陽電池モジュール1bの周縁部には、積層方向zにおいて板体10からシート11にわたって第2の充填剤層13bが設けられている。すなわち、積層方向zから視た際に、第1の充填剤層13aの外側には、第2の充填剤層13bが設けられている。
【0067】
なお、第2の実施形態に係る太陽電池モジュール1bは、例えば、第1の充填剤層13aを形成するためのシートの面積を、第2の充填剤層13bを形成するためのシートの面積よりも小さくすることにより、上記第1の実施形態で説明した製造方法と実質的に同様の方法により製造することができる。
【0068】
《第3の実施形態》
図3は、第3の実施形態に係る太陽電池モジュール1cの略図的断面図である。
【0069】
図3に示すように、第3の実施形態では、高温においても流動性が低い第1の充填剤層13aが板体10及びシート11の両方に接するように設けられている。具体的には、本実施形態では、太陽電池モジュール1cの周縁部には、積層方向zにおいて板体10からシート11にわたって第1の充填剤層13aが設けられている。すなわち、積層方向zから視た際に、第2の充填剤層13bの外側には、第1の充填剤層13aが位置している。
【0070】
なお、第3の実施形態に係る太陽電池モジュール1cは、例えば、第2の充填剤層13bを形成するためのシートの面積を、第1の充填剤層13aを形成するためのシートの面積よりも小さくすることにより、上記第1の実施形態で説明した製造方法と実質的に同様の方法により製造することができる。
【0071】
《第4の実施形態》
図4は、第4の実施形態に係る太陽電池モジュール1dの略図的断面図である。
【0072】
上記第1〜第3の実施形態では、複数の太陽電池12が、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界に配置されている例について説明した。それに対して第4の実施形態では、図4に示すように、第2の充填剤層13bが複数の太陽電池12よりもシート11側にまで至るように形成されており、太陽電池12は、第2の充填剤層13b内に配置されている。すなわち、太陽電池12は、水分透過性が低い第2の充填剤層13bによって包囲されている。
【0073】
なお、第4の実施形態に係る太陽電池モジュール1dは、例えば、第1の充填剤層13aを形成するためのシートと太陽電池12との間に、第2の充填剤層13bを形成するためのシートを介在させることにより、上記第1の実施形態で説明した製造方法と実質的に同様の方法により製造することができる。
【0074】
《第5の実施形態》
図5は、第5の実施形態に係る太陽電池モジュール1eの略図的断面図である。
【0075】
図5に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール1eの上記第4の実施形態の太陽電池モジュール1dと異なる点は、上記第3の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1eの周縁部には、積層方向zにおいて第1の充填剤層13aが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第2の充填剤層13bの外側には、第1の充填剤層13aが位置している。
【0076】
《第6の実施形態》
図6は、第6の実施形態に係る太陽電池モジュール1fの略図的断面図である。
【0077】
図6に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール1fの第4の実施形態の太陽電池モジュール1dと異なる点は、上記第2の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1fの周縁部には、積層方向zにおいて第2の充填剤層13bが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第1の充填剤層13aの外側には、第2の充填剤層13bが位置している。
【0078】
《第7の実施形態》
図7は、第7の実施形態に係る太陽電池モジュール1gの略図的断面図である。
【0079】
図7に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール1gの上記第1の実施形態の太陽電池モジュール1aとは異なる点は、第1の充填剤層13aが複数の太陽電池12よりも板体10側にまで至るように形成されており、複数の太陽電池12が第1の充填剤層13a内に配置されている点である。
【0080】
なお、本実施形態の太陽電池モジュール1gは、第2の充填剤層13bを形成するためのシートの上に太陽電池12を配置する前に、第1の充填剤層13aを形成するためのシートを配置することにより、上記第1の実施形態において説明した製造方法と実質的に同様の製造方法により製造することができる。
【0081】
《第8の実施形態》
図8は、第8の実施形態に係る太陽電池モジュール1hの略図的断面図である。
【0082】
図8に示すように、第8の実施形態の太陽電池モジュール1hの第7の実施形態の太陽電池モジュール1gと異なる点は、上記第2及び第6の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1hの周縁部には、積層方向zにおいて第2の充填剤層13bが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第1の充填剤層13aの外側には、第2の充填剤層13bが位置している。
【0083】
《第9の実施形態》
図9は、第9の実施形態に係る太陽電池モジュール1iの略図的断面図である。
【0084】
図9に示すように、第9の実施形態の太陽電池モジュール1iの第7の実施形態の太陽電池モジュール1gと異なる点は、上記第3及び第5の実施形態と同様に、太陽電池モジュール1iの周縁部には、積層方向zにおいて第1の充填剤層13aが板体10からシート11にわたって設けられている点である。このため、本実施形態では、積層方向zから視た際に、第2の充填剤層13bの外側には、第1の充填剤層13aが位置している。
【0085】
《第10〜第12の実施形態》
図10は、第10の実施形態に係る太陽電池モジュール1jの略図的断面図である。図11は、第11の実施形態に係る太陽電池モジュール1kの略図的断面図である。図12は、第12の実施形態に係る太陽電池モジュール1lの略図的断面図である。
【0086】
図10〜図12に示すように、第10〜第12の実施形態では、第1の充填剤層13aが板体10及びシート11の両方に接している。第1の充填剤層13aは、第2の充填剤層13bを包囲するように設けられている。
【0087】
図10に示すように、第10の実施形態では、複数の太陽電池12は、第2の充填剤層13b内に配置されている。
【0088】
図11に示すように、第11の実施形態では、複数の太陽電池12は、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの間の境界に配置されている。
【0089】
図12に示すように、第12の実施形態では、複数の太陽電池12は、第1の充填剤層13a内に配置されている。
【0090】
上記第2〜第12の実施形態に係る太陽電池モジュール1b〜1lにおいても、上記第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1aと同様に、シート11に接するように、高温において流動性の低い第1の充填剤層13aが設けられており、かつ水分透過性の低い第2の充填剤層13bが設けられている。このため、優れた耐候性及び優れた耐熱性の両立を図ることができる。
【0091】
また、第2,第3及び第11の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、高温において流動性の低い第1の充填剤層13aが複数の太陽電池12に接するように設けられている。従って、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0092】
第2〜第6の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、太陽電池12の受光面12a側に、水分透過性の低い第2の充填剤層13bが配置されており、水分透過性の高い第1の充填剤層13aは配置されていない。従って、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0093】
第4〜第6及び第10の実施形態においては、複数の太陽電池12が第2の充填剤層13b内に配置されている。すなわち、複数の太陽電池12が、水分透過性の低い第2の充填剤層13bにより包囲されている。このため、複数の太陽電池12に水分が到達することをより効果的に抑制できる。よって、複数の太陽電池12の水分による劣化をより効果的に抑制することができる。従って、より優れた耐候性を実現することができる。
【0094】
第7〜第9及び第12の実施形態では、複数の太陽電池12が第1の充填剤層13a内に配置されている。すなわち、複数の太陽電池12が、高温における流動性が低い第1の充填剤層13aにより包囲されている。このため、高温雰囲気中においても、複数の太陽電池12が第1の充填剤層13aによって好適に保護される。従って、さらに優れた耐熱性を実現することができる。
【0095】
第3,第5及び第9〜第12の実施形態では、高温における流動性が低い第1の充填剤層13aが板体10とシート11との両方に接するように設けられている。このため、高温時において、充填剤層13の変形をより効果的に抑制することができる。特に、第3,第5及び第9〜第12の実施形態では、第2の充填剤層13bの外側に第1の充填剤層13aが位置している。よって、高温における流動性の高い第2の充填剤層13bの高温における流動も効果的に抑制される。従って、より優れた耐熱性を実現することができる。
【0096】
なかでも、第10〜第12の実施形態では、第2の充填剤層13bが第1の充填剤層13aにより包囲されている。このため、第2の充填剤層13bの高温における流動をさらに効果的に抑制される。従って、さらに優れた耐熱性を実現することができる。
【0097】
第2,第6及び第8の実施形態では、水分透過性の低い第2の充填剤層13bが板体10とシート11との両方に接するように設けられている。具体的には、太陽電池モジュール1b、1f、1hの周縁部には、積層方向zにおいて第2の充填剤層13bが板体10からシート11にわたって設けられている。このため、太陽電池モジュール1b、1f、1hの周縁部からの太陽電池モジュール1b、1f、1h内への水分進入も効果的に抑制される。従って、より優れた耐候性を実現することができる。
【0098】
第2,第3,第5,第6及び第8〜第12の実施形態では、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの界面が、太陽電池モジュールの側面に露出していない。よって、第1の実施形態などのように、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの界面が、太陽電池モジュールの側面に露出している場合よりも、第1の充填剤層13aと第2の充填剤層13bとの界面から太陽電池モジュール内に侵入する水分の量を少なくすることができる。従って、太陽電池モジュールの耐候性をさらに改善することができる。
【0099】
《実施例》
(実施例1)
本実施例では、上記第1の実施形態に係る太陽電池モジュール1aと同様の構成を有する太陽電池モジュールA1を以下の要領で作製した。まず、ガラス板からなる板体10の上に、酢酸ビニル含量が15質量%であり、厚みが0.6mmであるEVAシートと、配線材14により電気的に接続された複数の太陽電池12と、酢酸ビニル含量が25質量%であり、厚みが0.6mmであるEVAシートと、シート11とをこの順番で積層した。得られた積層体をラミネート法を用いて一体化し、アルミニウムからなるフレーム内に収納することにより太陽電池モジュールを作製した。本実施例では、第1の充填剤層13aにおける酢酸ビニル含量は25質量%となる。第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量は15質量%となる。
【0100】
なお、シート11としては、厚みが約190μmであるポリエチレンテレフタレートを用いた。また、用いた太陽電池12の両表面には、相互に平行に延びる複数のフィンガーと、フィンガーと直交して設けられており、フィンガーの延びる方向に相互に隔離して配置されている2本のバスバーとが集電電極として設けられていた。
【0101】
次に、作製した太陽電池モジュールについて、JIS C8991:2004に規定の高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。
【0102】
具体的には、高温高湿度試験は、太陽電池モジュールを温度:85±2℃、相対湿度:85±5%の範囲内の高温高湿槽中に、1000時間放置することにより行った。そして、高温高湿度試験前後における太陽電池モジュールの出力低下率((高温高湿度試験実施後の出力)/(高温高湿度試験実施前の出力))を測定した。また、高温高湿度試験前後における受光面12a上の2本のバスバー間の抵抗増大率(((高温高湿度試験実施後の抵抗)−(高温高湿度試験実施前の抵抗))/(高温高湿度試験実施前の抵抗))を測定した。
【0103】
温度サイクル試験は、作製した太陽電池モジュールの両端子間に導通監視装置を接続すると共に、絶縁性監視装置を太陽電池モジュールの一方の端子と、フレームとの間に接続した状態で、太陽電池モジュールの温度を−40±2℃の範囲内の温度から、100℃/時間で90±2℃の範囲内の温度にまで昇温し、10分保持した後に、−40±2℃の範囲内の温度まで、100℃/時間で冷却し、10分保持した後に、再度、100℃/時間で90±2℃の範囲内の温度にまで昇温するサイクルを200サイクル実施することにより行った。この試験中において、太陽電池モジュール周囲の空気は、2m/秒で循環させた。また、試験中において、太陽電池モジュールには、AMが1.5で、100mW/cm2の強度の光を照射した。そして、温度サイクル試験前後における太陽電池モジュールの出力低下率((温度サイクル試験実施後の出力)/(温度サイクル試験実施前の出力))を測定した。
【0104】
結果を、下記の表1に示す。
【0105】
(実施例2)
第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量を5質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールA2を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。結果を、下記の表1に示す。
【0106】
(実施例3)
第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量を0質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールA3を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。すなわち、本実施例では、第2の充填剤層13bをポリエチレンにより形成した。結果を、下記の表1に示す。
【0107】
(比較例1)
第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量を25質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールB1を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。結果を、下記の表1に示す。
【0108】
(比較例2)
第1の充填剤層13a及び第2の充填剤層13bのそれぞれにおける酢酸ビニル含量を0質量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の構成を有する太陽電池モジュールB2を作製し、上記実施例1と同様に、高温高湿度試験及び温度サイクル試験を行った。結果を、下記の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
上記表1に示すように、第2の充填剤層13bにおける酢酸ビニル含量が少なく、第1の充填剤層13aにおける酢酸ビニル含量が多い太陽電池モジュールA1〜A3では、高温高湿度試験による出力低下率及び抵抗増大率が小さく、かつ、温度サイクル試験による出力低下率も小さかった。
【0111】
一方、第1の充填剤層13a及び第2の充填剤層13bの両方において酢酸ビニル含量が多い太陽電池モジュールB1では、温度サイクル試験による出力低下率は小さかったものの、高温高湿度試験による出力低下率及び抵抗増大率は大きかった。
【0112】
第1の充填剤層13a及び第2の充填剤層13bの両方において酢酸ビニル含量が少ない太陽電池モジュールB2では、高温高湿度試験による出力低下率及び抵抗増大率は小さかったものの、温度サイクル試験による出力低下率は大きかった。
【0113】
これらの結果から、シート11に接するように設けられた第1の充填剤層13aを酢酸ビニル含量が少ないEVAまたは酢酸ビニルユニットを含まないポリエチレンを主成分とするものとし、第2の充填剤層13bを酢酸ビニル含量が多いEVAを主成分とするものとすることにより、優れた耐候性と優れた耐熱性との両立を図ることができることが分かる。
【0114】
また、太陽電池モジュールA1〜A3の高温高湿度試験結果の比較より、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が少なくなるに従って、耐候性がさらに優れたものとなることが分かる。この結果から、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、15質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましいことが分かる。また、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量の1.5倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがさらに好ましいことが分かる。
【0115】
第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が共に0質量%である太陽電池モジュールA3と太陽電池モジュールB2とでは、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が異なるにも関わらず、耐候性が同等であった。この結果から、耐候性は、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量に主として相関しており、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が変化しても耐候性がそれほど変化しないことが分かる。
【0116】
第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が25質量%である太陽電池モジュールA1〜A3,B1では、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が互いに異なるにも関わらず、耐熱性が同等であった。第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が0質量%である太陽電池モジュールB2のみが耐熱性が劣悪であった。この結果から、耐熱性は、第1の充填剤層13aに含まれるEVAの酢酸ビニル含量に主として相関しており、第2の充填剤層13bに含まれるEVAの酢酸ビニル含量が変化しても耐候性がそれほど変化しないことが分かる。
【符号の説明】
【0117】
1a〜1l…太陽電池モジュール
10…板体
11…シート
12…太陽電池
12a…太陽電池の受光面
12b…太陽電池の裏面
13…充填剤層
13a…第1の充填剤層
13b…第2の充填剤層
14…配線材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体と、
前記板体に対向しているシートと、
前記板体と前記シートとの間に設けられている充填剤層と、
前記充填剤層内に配置されている太陽電池とを備え、
前記充填剤層は、前記シートに接するように設けられており、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする第1の充填剤層と、前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレンを主成分とする第2の充填剤層とを有する太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、20質量%以上である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第2の充填剤層は、前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする層であり、
前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、前記第2の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量の1.5倍以上である請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1の充填剤層は、前記太陽電池に接している請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記太陽電池は、前記第1の充填剤層と前記第2の充填剤層との間に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池は、前記第2の充填剤層の内部に配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記太陽電池は、前記第1の充填剤層の内部に配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記第1の充填剤層は、前記板体と前記シートとの両方に接するように設けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記第2の充填剤層は、前記板体と前記シートとの両方に接するように設けられている請求項1〜8のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記第1の充填剤層は、前記第2の充填剤層を包囲するように配置されている請求項1〜6及び8のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記板体がガラス板であり、前記シートが樹脂シートである請求項1〜10のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記太陽電池は、前記板体側からの光を受光する請求項1〜11のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項1】
板体と、
前記板体に対向しているシートと、
前記板体と前記シートとの間に設けられている充填剤層と、
前記充填剤層内に配置されている太陽電池とを備え、
前記充填剤層は、前記シートに接するように設けられており、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする第1の充填剤層と、前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体、またはポリエチレンを主成分とする第2の充填剤層とを有する太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、20質量%以上である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第2の充填剤層は、前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含量が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする層であり、
前記第1の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は、前記第2の充填剤層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量の1.5倍以上である請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1の充填剤層は、前記太陽電池に接している請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記太陽電池は、前記第1の充填剤層と前記第2の充填剤層との間に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池は、前記第2の充填剤層の内部に配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記太陽電池は、前記第1の充填剤層の内部に配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記第1の充填剤層は、前記板体と前記シートとの両方に接するように設けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記第2の充填剤層は、前記板体と前記シートとの両方に接するように設けられている請求項1〜8のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記第1の充填剤層は、前記第2の充填剤層を包囲するように配置されている請求項1〜6及び8のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記板体がガラス板であり、前記シートが樹脂シートである請求項1〜10のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記太陽電池は、前記板体側からの光を受光する請求項1〜11のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−159711(P2011−159711A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18658(P2010−18658)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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