説明

太陽電池モジュール

【課題】 太陽電池モジュールの単位面積当たりの発電効率を高めつつ、信頼性を向上させた太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】第1面と該第1面の裏面に相当する第2面とを有する基板と、前記第2面に形成された裏面電極と、を有する第1太陽電池素子1及び第2太陽電池素子2と、第1太陽電池素子1の裏面電極7と第2太陽電池素子2の裏面電極7’とを電気的に接続する接続導体3と、を備えた太陽電池モジュールであって、第1太陽電池素子1は、該第1太陽電池素子1の第2面1bの一部が第2太陽電池素子2の第1面2aの一部と絶縁部8を介して重なるように配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽電池モジュールは、図5に示すように単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板からなる複数の太陽電池素子20を直列に接続してなる太陽電池素子列(太陽電池ストリング21)を透光性基板22と裏面シート23とで挟み込み、充填材24で太陽電池素子列を封止して構成される。
【0003】
このような太陽電池モジュールは、隣接する太陽電池素子20同士が直に接触しないように、間隙部を設けて接続導体等で接続されている。この間隙部には太陽電池素子20が配置されていないため、発電に寄与しない領域(非発電領域)となる。そのため、このような太陽電池モジュールでは、上記間隙部を設けることにより、太陽電池モジュールの受光面積に対する発電に寄与する面積(発電領域)が小さくなる。
【0004】
そこで、非発電領域を小さくすべく、隣接する太陽電池素子同士の一部が重なるように配置し、一方の太陽電池素子の表面電極と他方の太陽電池素子の裏面電極とを半田のみで接続しているものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−003980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたものは、太陽電池モジュールを温度変化の大きい環境下で使用した場合、該温度変化に応じて太陽電池素子や充填材が膨張・収縮し、半田にせん断応力が集中し、半田にクラックが生じたり、半田が接合されている電極部分に剥がれが生じる場合があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、太陽電池モジュールの受光面積に対する発電領域を大きくして発電効率を高めつつ、信頼性を向上させた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の太陽電池モジュールは、第1面と該第1面の裏面に相当する第2面とを有する基板と、前記第2面に形成された裏面電極と、を有する第1太陽電池素子及び第2太陽電池素子と、前記第1太陽電池素子の裏面電極と前記第2太陽電池素子の裏面電極とを電気的に接続する接続導体と、を備えた太陽電池モジュールであって、前記第1太陽電池素子は、該第1太陽電池素子の第2面の一部が前記第2太陽電池素子の第1面の一部と絶縁部を介して重なるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池モジュールによれば、隣接する第1及び第2太陽電池素子の裏面電極同士を電気的に接続する構造において、上述のような絶縁部を設けているため、第1太陽電池素子の第2面に配される裏面電極と第2太陽電池素子の第1面との接触によって生じるリーク電流の発生を抑制することができる。さらに、本発明では、太陽電池素子の一部が互いに重なるように配置して隣接する太陽電池素子間の間隙を無くすことにより、太陽電池モジュールの受光面積における発電領域を大きくして発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示すものであり、(a)は断面を模式的に表した模式図、(b)は本実施形態の太陽電池素子の接続構造を説明するための部分斜視図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態の断面を模式的に表した模式図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態の断面を模式的に表した模式図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態の断面を模式的に表した模式図である。
【図5】従来の太陽電池モジュールを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、第1太陽電池素子1及び第2太陽電池素子2を含む複数の太陽電池素子と、隣接する太陽電池同士、例えば、第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子2とを電気的に接続する接続導体3と、透光性基板4と、裏面シート5と、充填材6と、を有する。
【0013】
太陽電池素子(第1太陽電池素子1及び第2太陽電池素子2)は、主として受光面となる第1面(第1太陽電池素子1の第1面1a、第2太陽電池素子2の第1面2a)と、該第1面の裏面に相当する第2面(第1太陽電池素子1の第2面1b、第2太陽電池素子2の第2面2b)と、を有する。太陽電池素子は、外部より入射される光を電気に変換する機能を有している。そのため、太陽電池素子は、内部に少なくとも1つの半導体によるPN接合を有している。このような太陽電池素子としては、光電変換機能を有するものであればよく、例えば、多結晶または単結晶のシリコン基板、アモルファスシリコン薄膜、CIGS等の化合物系の薄膜を選択できる。
【0014】
また、太陽電池素子には第2面に裏面電極が形成されている。すなわち、第1太陽電池素子1では、第2面1bに裏面電極7が形成されており、第2太陽電池素子2では、第2面2bに裏面電極7’が形成されている。
【0015】
裏面電極は、太陽電池素子で発生したキャリアを収集する機能を有する。なお、本実施形態では、各太陽電池素子の第2面(裏面)に正極及び負極の両方の裏面電極が設けられているが、太陽電池素子の第1面に表面電極を設けて、該第1面側で収集したキャリアを
第2面の裏面電極に導くような構造をとってもよい。このような裏面電極4の材質としては、例えば、銅、銀、アルミニウム等といった導電性を有する物質が好適に用いられる。そして、これらを太陽電池素子の所望の位置に蒸着またはスクリーン印刷等で塗布して焼成することにより、裏面電極4を形成できる。
【0016】
接続導体3は、隣接する太陽電池素子の裏面電極同士を電気的に接続する機能を有している。本実施形態では、第1太陽電池素子1の裏面電極7と第2太陽電池素子2の裏面電極7’とを接続している。より詳細には、第1太陽電池素子1の裏面電極7の正極と第2太陽電池素子2の裏面電極7’の負極とを接続している。なお、接続導体3は、異なる極性を有する裏面電極同士を接続するようにすればよく、第1太陽電池素子1の裏面電極7の負極と第2太陽電池素子2の裏面電極7’の正極とを接続してもよい。接続導体3は、裏面電極と半田を介して電気的に接続される。接続導体3は、例えば、幅1〜3mm程度、厚み0.1〜0.8mm程度の長尺状の銅箔に半田がディップ等で被覆されている。そのため、接続導体3は、接合する裏面電極上に配置した後、熱をかけることで接合することができる。
【0017】
透光性基板4は、太陽電池モジュールの受光面側に配置されており、太陽電池素子を保護する役割を有する。このような透光性基板2としては、例えば、白板ガラス、強化ガラス、合わせガラス、熱線反射ガラス等のガラス、またはポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂等の合成樹脂が挙げられ、太陽電池素子が光電変換可能な波長の光を透過することができる部材であれば特に限定されない。また、透光性基板2の厚みとしては、例えば、ガラスであれば厚さが3mm〜5mm程度、合成樹脂であれば、厚さが5mm〜8mm程度であるのが好ましい。
【0018】
裏面シート5は、充填材6や太陽電池素子を保護する役割を有するものである。裏面シート7には、例えば、PVF(ポリビニルフルオライド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)PEN(ポリエチレンナフタレート)、或いはこれらを積層したものを用いることができる。
【0019】
充填材6は、太陽電池素子を封止する役割を有するものである。このような充填材6としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)やポリビニルブチラール(PVB)を主成分とし、押出し機により厚さ0.4〜1mm程度のシート状に成形されたものが用いられる。そして、そのシート状に成形したものを所望の大きさに切断し、太陽電池素子を第1面側及び第2面側から挟み込んで封止する。
【0020】
充填材6には架橋剤が含有されている。この架橋剤はEVAなどの分子間を結合させる役割を有するものであり、例えば、70〜180℃の温度で分解してラジカルを発生する有機過酸化物である。有機過酸化物としては、例えば2、5−ジメチル−2、5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンやtert−ヘキシルパーオキシピバレートなどが挙げられ、EVA100質量部に対し1質量部程度の割合で含有させることが好ましい。
【0021】
なお、充填材6は、上述のEVAやPVB以外に、熱硬化性樹脂もしくは、熱可塑性樹脂に架橋剤を含有して熱硬化の特性を持たせた樹脂であれば好適に利用可能であり、例えばアクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂やEEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)等も利用可能である。
【0022】
そして、本実施形態では、図1(a)に示すように、第1太陽電池素子1は、該第1太陽電池素子1の第2面1bの一部が第2太陽電池素子2の第1面2aの一部と絶縁部8を介して重なるように配置されている。すなわち、本実施形態では、第1及び第2太陽電池素子が瓦重ねされるように配置されている。本実施形態では、太陽電池モジュールを平面視したときに、同列の第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子2とを隙間なく配置できるため、太陽電池モジュールの受光面積あたりの発電面積を高めることができ、発電電力量も多く得ることができる。また、第1及び第2太陽電池素子を平面視したときに重なる領域の大きさとしては、素子端部から0.5mm〜2mm程度が第1太陽電池素子1による第2太陽電池素子2の影損失を低減するという観点から好適である。
【0023】
また、本実施形態における絶縁部8は、第1太陽電池素子1の裏面電極7と第2太陽電池素子2の第1面2aとの接触を抑制し、該接触によって生じるリーク電流の発生を防止する役割を有している。すなわち、絶縁部8は、上記接触を抑制するように配置されていればよく、太陽電池素子(太陽電池モジュール)を平面視して、第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子とが重なる部分の全面に配してもよいし、図2に示すように、重なる部分の一部に設けるような構成としてもよい。絶縁部8を第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子とが重なり部分の全面に設ける形態であれば、より効率良くリーク電流の発生を低減できる。また、絶縁部8を第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子とが重なり部分よりも大きくなるように配置してもよい。一方で、絶縁部8を第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子とが重なり部分の一部に設ける形態は、部品点数を少なくできるという観点から好適である。
【0024】
このような絶縁部8としては、例えば、耐熱性・耐候性に優れた樹脂が好ましい。また、充填材6にEVAを用いた場合、EVAのラミネート・架橋温度(160〜200度)に耐える絶縁物であればよく、セラミック系やエポキシ系等の接着剤やアクリルやポリカーボネイト等の樹脂成形品であってもよい。また、上記樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリイミド及びポリテトラフルオロエチレンを選択すれば、耐水性を高めることができるため、絶縁耐圧性能の劣化を低減するという観点から好適である。また、絶縁部8の形状は、特に限定されるものではないが、製造が簡易になるという観点から、テープ状が好ましい。また、このようなテープ状の場合、絶縁部8の厚みは、太陽電池素子同士の絶縁を実現しつつ、製造工程が簡易になるという観点から、100μm〜500μm程度が好ましい。
【0025】
絶縁部8は、第1及び第2太陽電池素子を互いに固定するような接着作用を有していてもよい。このように、太陽電池素子を固定するような接着作用を有する絶縁部8を用いれば、太陽電池素子の位置ずれを低減できるという観点から好適である。なお、接着作用を有する絶縁部8は、上述したようなセラミック系やエポキシ系等の接着剤である。このような接着剤は、半田に比べると柔らかい物質であるため、温度変化による太陽電池素子の膨張または収縮によって生じるせん断応力の集中を緩和することができる。
【0026】
一方で、接着作用がない絶縁部8を用いれば、太陽電池素子が熱によって膨張または収縮した場合であっても、上記膨張や収縮によって生じるせん断応力が絶縁部8に作用するのを低減できるため、絶縁部8のクラックの発生を抑制できる。なお、このような接着作用がない絶縁部8は、上述したようなポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリイミド及びポリテトラフルオロエチレン、アクリル、ポリカーボネイト等が挙げられる。
【0027】
また、絶縁部8は、図3に示すように、絶縁性を有する充填材6を用いることで代用することも可能である。すなわち、このような形態では、第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子との重なり部分に絶縁性を有する充填材6を配置している。このような充填材6としては、例えば、上述したようなEVAやPVBが好適である。このように、絶縁性を有する充填材6を用いれば、充填材6が太陽電池素子の封止だけでなく、絶縁部としても機能するので、部品点数を少なくすることができる。加えて、第1太陽電池素子1と第2太陽電池素子との重なり部分の屈折率と、他の充填材6が配されている部分との屈折率を同じにすることができるため、入射光の不要な散乱を低減することができる。
【0028】
また、図3に示した形態では、絶縁性を有する充填材6で絶縁部8を代用しているが、絶縁部8を充填材6と他の絶縁部とで構成するようなものであってもよい。このような形態としては、絶縁部8を互いに間隔を空けて配置するような複数のスペーサと、隣り合うスペーサの間に絶縁性を有する充填材6とを配するようなものである。このような形態によれば、太陽電池モジュールの製造時に、予めスペーサで太陽電池素子同士の接触を防ぐことができるため、基板に発生するクラック等を低減できるとともに、充填材が充填されるまでに太陽電池素子同士が接触するのを防止できる。なお、このスペーサは、例えば、上述した絶縁部8と同じ材質のものを利用すればよい。
【0029】
また、上述したような絶縁物質を配する形態ではなく、図4に示すように、絶縁部8を空隙部8’としてもよい。このような空隙部8’で絶縁部8を構成すれば、リーク電流の発生を低減できるとともに、太陽電池素子が熱によって膨張または収縮した場合であっても、上記膨張や収縮によって生じるせん断応力の影響を受けないため、長期的な信頼性を向上させることができる。
【0030】
次に、図1に示した本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明する。
【0031】
まず、第2太陽電池素子2の裏面電極7’に接続導体3の一端を半田等で接続する。次に、第1太陽電池素子1の第2面1bが上になるように載置し、第2太陽電池素子2と重なる部分となる第1太陽電池素子1の第2面1bに絶縁部8を配置する。次いで、絶縁部8の上に第2太陽電池素子2の重ねる部分を載せて、第2太陽電池素子2から延びている接続導体3と第1太陽電池素子1の裏面電極7とを半田等で接続する。この工程を繰り返すことにより、複数の太陽電池素子を接続導体で電気的に接続し、太陽電池ストリングを形成する。
【0032】
次いで、透光性基板4上に充填材6を積層し、前述した太陽電池ストリングの受光面を透光性基板4側に向けて積層する。その上に、さらに充填材6をもう一枚積層し、太陽電池ストリングを一対の充填材6で挟み込んだ後、裏面シート5を積層する。最後に、これをラミネート装置により減圧下にて加熱加圧を行うことで、透光性基板側の充填材6と裏面シート5側の充填材6が軟化、融着して太陽電池ストリングを封止しつつ、全ての部材が一体化することで太陽電池モジュールを作製できる。
【符号の説明】
【0033】
1:第1太陽電池素子
1a:第1太陽電池素子の第1面
1b:第1太陽電池素子の第2面
2:第2太陽電池素子
2a:第2太陽電池素子の第1面
2b:第2太陽電池素子の第2面
3:接続導体
4:透光性基板
5:裏面シート
6:充填材
7、7’:裏面電極
8:絶縁部
8’:空隙部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と該第1面の裏面に相当する第2面とを有する基板と、前記第2面に形成された裏面電極と、を有する第1太陽電池素子及び第2太陽電池素子と、
前記第1太陽電池素子の裏面電極と前記第2太陽電池素子の裏面電極とを電気的に接続する接続導体と、を備えた太陽電池モジュールであって、
前記第1太陽電池素子は、該第1太陽電池素子の第2面の一部が前記第2太陽電池素子の第1面の一部と絶縁部を介して重なるように配置されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記絶縁部は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリイミド及びポリテトラフルオロエチレンのうち少なくとも1つを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第1太陽電池素子及び前記第2太陽電池素子を封止する充填材をさらに備え、
前記充填材は、絶縁性を有するとともに、
前記絶縁部は、前記充填材を含んでなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記絶縁部は、互いに離間して配置された複数のスペーサと前記充填材とを含んでなり、隣り合う前記スペーサ間に前記充填材が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記絶縁部は、空隙であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−77103(P2011−77103A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224267(P2009−224267)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】