説明

太陽電池付き雪庇発生防止装置

【課題】 雪庇発生防止装置1の風下側のほぼ垂直な面の有効利用を図り、太陽電池モジュールへSの積雪を防ぎ冬期間でも効率良く発電できる太陽電池付き雪庇発生防止装置を提供する。
【解決手段】 ほぼ垂直な風下面13,23を風下側に向けた状態で設置される雪庇発生防止装置1において、雪庇発生防止装置1のほぼ垂直な風下面13,23に沿わせて太陽電池モジュールSを設置し、太陽電池モジュールSの受光面をほぼ垂直な風下側向きとし、建造物の屋上Pに雪庇発生防止装置1の風下面13,23を南東方向から南西方向の間に向けて設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物やトンネル出入口の上縁部分に設置する雪庇発生防止装置に太陽電池を取り付けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地域では、降雪時に一定方向の季節風(主に北西風)があると、屋上がほぼ平らな無落雪屋根の建造物や構造物(トンネルやシェルターなど)風下側の上縁部分に屋上の積雪が迫り出してきて雪庇が発生する。この雪庇は、屋上を吹き越す風がその建造物や構造物の風下側で風速を落して下方に向かって巻き込む渦となり、運ばれてきた雪がその粘着性によって屋上の積雪に付着することにより発生するもので、それは徐々に風下に向かって成長してゆく。大きく成長した雪庇は、自重により落下するので通行人や通過する車両に危害や損害を与えることがある。
【0003】
このような、雪庇による危害や損害を防止するため、屋上の南端から東端にかけて取り付ける雪庇発生防止装置が知られている。
【0004】
例えば、特許第3731124号公報に示されるように、傾斜面を風上側に向けた状態で設置される雪庇発生防止装置において、上記傾斜面が、水平面より45°〜60°程度起立した下部傾斜板と、その上方に連続し水平面より75°〜80°程度起立した上部傾斜板とからなるものである。
【0005】
この雪庇発生防止装置は、傾斜面に誘導された風をスムーズに上方に向け、その風速を速め、これによって建造物の風下で発生する渦の位置を壁面から離して雪庇の発生を防止する。
【0006】
なお、雪庇は建造物の屋上の少なくとも風下側一端に発生するから、雪庇発生防止装置は所定長さのものを建造物の屋上の少なくとも風下側一端の全幅に渡り一列に複数個設けられる。また、雪庇発生防止装置の風下側はほぼ垂直な平らな面として巻き込む雪や通常に降る雪の付着を防止する。さらに、風圧を受けることを前提に設置されるものであり、その下部が建造物の屋上に対して確実に強固に固定される。
【0007】
一方、太陽電池は地球環境の点からも注目され普及が進んでいる。その太陽電池モジュールの設置は、通常は南向きの傾斜した屋根に沿って並べるか、特許第3382206号公報に示されるように、地球の緯度に合わせた傾斜の架台に取り付けている。
【0008】
降雪地域では、冬期間に傾斜させて設置した太陽電池モジュールの上に雪が積もると、太陽光が太陽電池セルに届かず、発電することができない。そのため、太陽電池セル表面を易滑雪性に加工したり、融雪機能付きの太陽電池モジュールが知られている。
【0009】
例えば、特開平8−250756号公報に示されるように、太陽電池セルの表面側に抵抗発熱線を備えて、積雪を融雪するものが知られている。
【0010】
また、雪庇発生防止装置においても、その上に冠雪すると機能が失われるので、表面板に発熱体を取り付けた融雪機能付きのものが知られている。
【0011】
例えば、特開平4−353106号公報に示されるように、雪庇発生防止装置の表面板材料に太陽電池や電気等を利用して、発熱体を表面板に取り付けたり、表面板自体に発熱性をもたせるものが知られている。
【0012】
また、雪庇発生防止装置は高いところに設置されるものであり、その風下側の面の有効利用として、表示手段を設けたものが知られている。
【0013】
例えば、特開平11−117573号公報に示されるように、案内標識や広告等の表示手段として利用するもの、特開2006−37576号公報に示されるように、看板や広告用の表示に利用するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3731124号公報
【特許文献2】特許第3382206号公報
【特許文献3】特開平8−250756号公報
【特許文献4】特開平4−353106号公報
【特許文献5】特開平11−117573号公報
【特許文献6】特開2006−37576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の、傾斜させて設置した太陽電池モジュールの上に雪が積もると発電することができないため、太陽電池セルの表面側に抵抗発熱線を備えたものでは、発電していない時に融雪のために電力を消費することとなり矛盾すること、そのために太陽電池モジュールの価格が高くなってしまうこと、などにより融雪機能付きはほとんど普及していない。
【0016】
傾斜した架台に太陽電池モジュールを取り付けたものでは、太陽電池モジュールが台風のような強風にあおられるため、屋根に対して確実に強固に固定することが必要となる。
【0017】
太陽電池モジュールへの積雪を防ぎ、強風にあおられないため、太陽電池からの配線を保護し隠すため、建造物の南向きの垂直の壁面に沿って多数枚連続に並べることも考えられるが、一般家屋では南面には窓が有り壁面が分割されていて面積が少なく、太陽電池モジュールを多数枚連続に並べて貼ることが難しい。
【0018】
一方、雪庇発生防止装置は屋上の南端から東端にかけて取り付けられ、その風下側はほぼ垂直な面が南向きから東向きにかけて現れるが、一般家屋では表示手段として利用する用途が無い。
【0019】
そこで本発明は、雪庇発生防止装置の風下側のほぼ垂直な面の有効利用を図り、太陽電池モジュールへの積雪を防ぎ冬期間でも効率良く発電できる太陽電池付き雪庇発生防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明の太陽電池付き雪庇発生防止装置は、ほぼ垂直な風下面13,23を風下側に向けた状態で設置される雪庇発生防止装置1において、雪庇発生防止装置1のほぼ垂直な風下面13,23に沿わせて太陽電池モジュールSを設置し、太陽電池モジュールSの受光面をほぼ垂直な風下側向きとしたものである。
【0021】
請求項2の発明の太陽電池付き雪庇発生防止装置は、建造物の屋上Pに雪庇発生防止装置1の風下面13,23を南東方向から南西方向の間に向けて設置したものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、雪庇発生防止装置1のほぼ垂直な風下面13,23に沿わせて太陽電池モジュールSを設置したことにより、雪庇発生防止の効果と太陽電池モジュールSの設置架台を兼用できるから、雪庇発生防止装置1の風下側のほぼ垂直な面の有効利用が図れる。
【0023】
また、太陽電池モジュールSの受光面をほぼ垂直な風下側向きとしたことにより、受光面に雪が積もることが無いから、太陽光を受けて冬期間でも発電できる。
【0024】
請求項2の発明によれば、建造物の屋上Pに雪庇発生防止装置1の風下面13,23を南東方向から南西方向の間に向けて設置したことにより、太陽電池モジュールSの受光面が南東方向から南西方向の間に向くことになり、太陽光を充分に受けて効率良く発電できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は太陽電池付き雪庇発生防止装置を示す断面図である。
【図2】図2は図1の正面図である
【図3】図3は図1の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
雪庇発生防止装置1の風下側のほぼ垂直な面の有効利用を図り、太陽電池モジュールへSの積雪を防ぎ冬期間でも効率良く発電できる太陽電池付き雪庇発生防止装置を提供する目的を、ほぼ垂直な風下面13,23を風下側に向けた状態で設置される雪庇発生防止装置1において、雪庇発生防止装置1のほぼ垂直な風下面13,23に沿わせて太陽電池モジュールSを設置し、太陽電池モジュールSの受光面をほぼ垂直な風下側向きとし、建造物の屋上Pに雪庇発生防止装置1の風下面13,23を南東方向から南西方向の間に向けて設置することで実現した。
【実施例1】
【0027】
図1から3は、本発明の実施例に係る太陽電池付き雪庇発生防止装置である。
【0028】
雪庇発生防止装置1を建造物屋上の笠木Pの上に設置した例を示している。
【0029】
雪庇発生防止装置1には、大略傾斜面15,22とほぼ垂直な風下面13,23を設け、傾斜面14,22を風上側に向けた状態で設置される。つまり、ほぼ垂直な風下面13,23は風下側に向けた状態で設置される。
【0030】
雪庇は建造物の風下側に発生するので、降雪時の季節風を考慮すると、雪庇発生防止装置1は、建造物屋上の笠木Pの南端から東端にかけて設置される。つまり、建造物の壁面が東西南北を向いている場合には、南端と東端にLの字状に配置される場合もある。ただし、地域の地形や周りの大きな建物の影響を受けて、これと異なる特有の方向から風が吹く場合もある。
【0031】
なお、ほぼ垂直な風下面13,23とは、雪庇発生防止装置1が建造物の屋上に取り付けられるため、建造物の屋根には水勾配が付けられている場合があり、水平面から80度から100度の角度の範囲である。
【0032】
雪庇発生防止装置1には、笠木Pの上に取り付けられる下部傾斜板支持体10と、下部傾斜板支持体10の上に取り付けられる上部傾斜板支持体20を設ける。
【0033】
下部傾斜板支持体10には、水平方向の略矩形の板である下部底板11と、下部底板11の風上側から上方に立ち上げた略矩形の板である下部前板12と、下部底板11の風下側から上方に立ち上げた略矩形の板である下部後板13(風下面)と、下部後板13の上端から風上方向に水平に設けた略矩形の板である下部天板14と、下部底板11の風上側から下方に設けた取付具16を設ける。
【0034】
下部後板13には、太陽電池モジュールSを収めるための窪み13aを設ける。取付具16は、風上方向に開口したコの字状の細長い板で、建造物屋上の笠木Pにその開口をはめ込む。
【0035】
下部前板12の上端部から下部天板14の間に下部傾斜板15を着脱自在に固定する。下部傾斜板15には、傾斜させて設ける略矩形の板と下端部を垂直方向に折り曲げた垂直取付部15aを設け、下部傾斜板15は風上側に位置し、傾斜面に誘導された風をスムーズに上方に向ける。
【0036】
下部後板13の窪み13aに太陽電池モジュールSを設置する。太陽電池モジュールSの受光面をほぼ垂直な風下側向きとし、横方向を長手方向とし、その長さに雪庇発生防止装置1の幅を合わせる。実施例では、太陽電池モジュールSの横方向長さと雪庇発生防止装置1の幅を約1mとし、太陽電池モジュールSの高さ方向長さを約35cmとした。
【0037】
下部後板13の表面と太陽電池モジュールSの受光面をほぼ面一として、ほぼ垂直な下部後板13(風下面)に沿わせて太陽電池モジュールSを設置する。太陽電池モジュールSの太陽電池セル表面は易滑雪性に加工されたものが望ましい。
【0038】
上部傾斜板支持体20には、水平方向の略矩形の板である上部底板21と、上部底板21の風上側から上方に傾斜させて設ける略矩形の板である上部傾斜板22と、上部底板21の風下側から上方に立ち上げた略矩形の板である上部後板23(風下面)を設ける。
【0039】
下部傾斜板支持体10の下部天板14と上部傾斜板支持体20の上部底板21の大きさを同一とし、下部天板14の上に上部底板21を載せ、着脱自在に固定する。実施例では下部傾斜板支持体10と上部傾斜板支持体20を合わせた高さを約50cmとした。
【0040】
上部傾斜板22は風上側に位置し、傾斜面に誘導された風をスムーズに上方に向ける。上部傾斜板22の傾斜角度は下部傾斜板15より急傾斜とする。これら、下部傾斜板15と上部傾斜板22を合わせて傾斜面と称し、この傾斜面15,22によって建造物の風下で発生する渦の位置を壁面から離して雪庇の発生を防止する。
【0041】
下部傾斜板支持体10の下部後板13の表面と上部傾斜板支持体20の上部後板23の表面をほぼ面一として、ほぼ垂直な上部後板23(風下面)の表面に沿わせて太陽電池モジュールSを設置する。太陽電池モジュールSで発生した直流電力は、パワーコンディショナにより交流電力に変換され、家庭で消費されたり電力会社に売電される。
【0042】
下部傾斜板支持体10の下部前板12の風上側に可動取付具30を設ける。可動取付具30は、上部がLの字状で下部が風下方向に開口したコの字状の細長い板で、建造物屋上の笠木Pにその開口をはめ込む。下部前板12と可動取付具30の間に複数の調節ボルトを設け、下部傾斜板支持体10の取付具16と可動取付具30の間の距離を調節自在に固定し、建造物屋上の笠木Pに対して確実に強固に固定する。
【0043】
太陽電池モジュールSは南方向に向けて設置するのが一番効率良く、太陽電池付き雪庇発生防止装置1の下部後板13と上部後板23を南東方向から南西方向の間に向けて設置すると良い。つまり、太陽電池モジュールSの受光面をほぼ垂直な向きとしているため受光面積の減少が著しく、南東方向から東側には太陽電池の付かない雪庇発生防止装置とすると良い。
【0044】
太陽電池付き雪庇発生防止装置1は、所定長さのものを建造物屋上の笠木Pに少なくとも風下側一端の全幅に渡り一列に複数個連結して設けられ、太陽電池モジュールSも複数個連続に並べられ、太陽電池からの配線を太陽電池モジュールSの裏側、若しくは下部傾斜板支持体10の中に隠して保護することができる。また、連結した雪庇発生防止装置1の両端部は中に雪が入らないように、断面形状に合わせた板で塞がれる。
【0045】
以上の実施例では、太陽電池付き雪庇発生防止装置1を建造物屋上の笠木Pの上に取り付ける例を示したが、屋根材や壁面を利用して取り付けても良く、またトンネルやシェルターなどの構造物に取り付けても良い。
【0046】
また、雪庇発生防止装置1として傾斜面15,22に誘導された風をスムーズに上方に向け、建造物の風下で発生する渦の位置を壁面から離して雪庇の発生を防止する例を示したが、ほぼ垂直な風下面13,23を風下側に向けた状態で設置されるものであれば良く、雪庇の発生を防止する機構はこれに限定されるものではない。
【0047】
また、風下面13,23の表面と太陽電池モジュールSの受光面をほぼ面一として、ほぼ垂直な風下面13,23に沿わせて太陽電池モジュールSを設置する例を示したが、太陽電池モジュールSの受光面が風下面13,23と平行に沿わせてあれば良く、風下面13,23の表面より太陽電池モジュールSの受光面がやや突出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 雪庇発生防止装置
13 風下面としての下部後板
23 風下面としての上部後板
P 建造物の屋上としての笠木
S 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ垂直な風下面を風下側に向けた状態で設置される雪庇発生防止装置において、雪庇発生防止装置のほぼ垂直な風下面に沿わせて太陽電池モジュールを設置し、太陽電池モジュールの受光面をほぼ垂直な風下側向きとした太陽電池付き雪庇発生防止装置。
【請求項2】
建造物の屋上に雪庇発生防止装置の風下面を南東方向から南西方向の間に向けて設置した請求項1記載の太陽電池付き雪庇発生防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157718(P2011−157718A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19913(P2010−19913)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000137063)株式会社ホクエイ (29)
【出願人】(302022500)
【Fターム(参考)】