説明

太陽電池用バックシート

【課題】発電効率および意匠性に優れた太陽電池モジュールを提供できる太陽電池用バックシートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂[A]100質量部と、赤外線反射特性を有する無機顔料[B]0.1〜15質量部とを含有する低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物から成る太陽電池用バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用バックシートに関し、詳しくは、発電効率および意匠性に優れた太陽電池モジュールを提供できる太陽電池用バックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽の光から直接電気を得ることが出来る太陽電池は、半永久的で無公害の新たなエネルギー源として実用化されつつある。最近では非晶質シリコン等の半導体装置を利用した太陽電池が急速に普及しつつあり、一般住宅用の電源としても使用されるようになってきた。太陽電池を屋根部材と一体に構成して使用する際には、複数の太陽電池素子を組み合わせ、表裏面を適当なカバー材料で保護した太陽電池モジュールとして使用するのが一般的である。具体的には、太陽光の受光面側から、透明ガラス基板、封止膜(例えばエチレン酢酸ビニル共重合体フィルム)、太陽電池素子、封止膜(例えばエチレン酢酸ビニル共重合体フィルム)及び裏面側の保護部材として高耐光性樹脂フィルムから成るバックシートの順で構成されている。
【0003】
太陽電池モジュールへの入射光を有効に利用して電力変換効率を高めるためには、高い反射能を有する白色系の色調の反射層がバックシートとして設置されていることが好ましい(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、一般住宅において太陽電池を使用する場合、その設置箇所は、通常、屋根であり、一般住宅の屋根における意匠性の観点から、太陽電池用バックシートの色として暗色系の色が好まれる。また、太陽電池素子の性能は、高温となるほど発電効率が低下するため、太陽電池用バックシートを暗色系の色で形成すれば、蓄熱性が高いことから発電効率が低くなる。さらに、太陽電池素子は、赤外線領域に感度領域を有しており、暗色系の色では赤外線反射能が低いことから、やはり発電効率が低くなる。すなわち、太陽電池用バックシートにおいて、発電効率と意匠性との相反する性能が要求される。
【0004】
一般に、太陽電池用バックシートは熱可塑性樹脂で形成される。熱可塑性樹脂として、成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、耐候性および耐衝撃性に優れる成形品を与える低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物の用途は、雨どい等の屋外家屋の構造部材、自動車内装部品、エアーコンディショナーのダクトカバー等であり、太陽電池用バックシートとして使用することは知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−100788号公報
【特許文献2】国際公開第2004/15014号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、発電効率および意匠性に優れた太陽電池モジュールを提供できる太陽電池用バックシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂と特定量の赤外線反射特性を有する無機顔料とから成る低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物から太陽電池用バックシートを形成することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の要旨は、熱可塑性樹脂[A]100質量部と、赤外線反射特性を有する無機顔料[B]0.1〜15質量部とを含有する低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物から成る太陽電池用バックシートに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池用バックシートによれば、暗色系の色でありながら低蓄熱性であり、高い赤外線反射能を有し、発電効率および意匠性に同時に優れる太陽電池モジュールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の太陽電池用バックシートは、熱可塑性樹脂[A]100質量部と、赤外線反射特性を有する無機顔料[B]0.1〜15質量部とを含有する低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物と略記することがある)から成る。
【0011】
熱可塑性樹脂[A]としては特に限定されないが、ゴム強化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン・α−オレフィン系樹脂など)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸エステル化合物の(共)重合体など)、フッ素樹脂、スチレン系樹脂(芳香族ビニル化合物などの(共)重合体など)、エチレン・酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。また、これらのうち、ゴム強化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂が特に好ましい。
【0012】
上記ゴム強化ビニル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)をそのまま用いてもよいし、あるいは、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物から成るものを用いてもよい。
【0013】
上記ゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体などのジエン系(共)重合体並びにそれらの水素添加物、エチレン・プロピレン・(非共役ジエン)共重合体、エチレン・ブテン−1・(非共役ジエン)共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体、アクリルゴム、ポリウレタンゴム及びシリコーンゴム等の非ジエン系(共)重合体が挙げられる。更に、上記スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物の他に、スチレンブロックとスチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物などが含まれる。上記ゴム質重合体(a)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。本発明においては、ゴム強化ビニル系樹脂を乳化重合により得る場合には、ラテックス状のゴム質重合体が好ましい。
【0014】
上記ラテックスを用いる場合の、ラテックス中のゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、好ましくは50〜800nmであり、更に好ましくは100〜500nm、特に好ましくは100〜400nmである。50nm未満では太陽電池用バックシートの耐衝撃性が劣る傾向にあり、800nmを超えると太陽電池用バックシートの表面光沢が劣る傾向にある。
【0015】
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、平均粒子径の調節などを考慮し、通常、乳化重合法が好ましいが、この場合、平均粒子径は乳化剤の種類・量、開始剤の種類・量、重合時間、重合温度および攪拌条件などの製造条件を適宜選択することにより調節することが出来る。また、粒子径分布の他の調節方法としては、異なる粒子径の上記ゴム質重合体(a)の少なくとも2種類をブレンドする方法でもよい。
【0016】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体成分(b)としては特に限定されず、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物などが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0017】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、臭素化スチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0019】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0020】
上記マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらのうち、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。尚、マレイミド系化合物を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
【0021】
上記酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0022】
上記ビニル系単量体成分(b)としては、芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、その場合、芳香族ビニル化合物(b1)と、それ以外のビニル系単量体(b2)との重合割合(b1)/(b2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(10〜95)質量%/(5〜90)質量%、より好ましくは(20〜85)質量%/(15〜80)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性、太陽電池用バックシートの美的外観性が劣る傾向にあり、多すぎると、ビニル系単量体(b2)の使用による効果が十分に発揮できない傾向にある。尚、上記ビニル系単量体(b2)としては、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物などから選ばれた少なくとも1種である。
【0023】
無機顔料[B]を含まない熱可塑性樹脂[A]のみを用いて得られる太陽電池用バックシートが透明性または透明感を有する場合、無機顔料[B]を含む上記樹脂組成物から成る太陽電池用バックシートは、無機顔料[B]に由来する色の着色性、鮮映性が向上する。透明性あるいは透明感を出すためには、ゴム質重合体(a)の屈折率に、ビニル系単量体(b)の重合体の屈折率を合わせる又は近づけることで達成できる。屈折率を合わせる又は近づけるために、ビニル系単量体成分(b)として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含むことが好ましく、この(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含むビニル系単量体成分(b)の重合体およびゴム質重合体(a)の各屈折率の差が小さくなるように選択される。また、この場合の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0024】
上記の場合、(メタ)アクリル酸エステル化合物と、それ以外のビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物から選ばれた少なくとも1種である。
【0025】
尚、前述のように、上記ゴム強化ビニル系樹脂は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体成分の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物であってもよい。この(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体成分(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ単量体成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で異なる単量体成分を重合して得られる重合体であってもよい。更に、これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
【0026】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、更に以下の単量体化合物を共重合させたものとすることが出来る。その例としては、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、カルボン酸基、オキサゾリン基などの群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル化合物が挙げられる。その例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
【0027】
ここで、上記ゴム強化ビニル系樹脂が、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)である場合、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体成分の重合によって得られた(共)重合体(A2)とから成る場合、のいずれにおいても、樹脂組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、硬度、剛性が劣る傾向にある。
【0028】
次に、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合による方法で製造することが出来る。乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水などが用いられる。
【0029】
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するために用いられるゴム質重合体(a)及びビニル系単量体成分(b)は、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0030】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等で代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物などが挙げられ、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括又は連続的に添加することが出来る。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0031】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられ、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
【0032】
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系などのアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型などのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。上記乳化剤の使用量は、通常、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対して、0.3〜5.0質量%である。
【0033】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩や、硫酸、塩酸などの無機酸、酢酸、乳酸などの有機酸などが用いられる。
【0034】
溶液重合、塊状重合による製造方法は、公知の方法を採用することが出来る。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜200%、更に好ましくは15〜150%、特に好ましくは20〜100%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が10%未満では、上記樹脂組成物を用いて得られる太陽電池用バックシートの外観不良、衝撃強度の低下を招くことがある。また、200%を超えると、加工性が劣る。
【0035】
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記共重合樹脂(A1)1グラムをメチルエチルケトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
【0036】
【数1】

【0037】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、更に好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。この範囲とすることにより、成形加工性(流動性)に優れ、上記樹脂組成物を用いて得られる太陽電池用バックシートの耐衝撃性も優れる。
【0038】
尚、上記グラフト率(%)及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を重合するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、更には重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することが出来る。上記(共)重合体(A2)は、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合および懸濁重合などにより得ることが出来る。
【0039】
上記(共)重合体(A2)のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と同様にして制御することが出来る。
【0040】
上記ゴム強化ビニル系樹脂のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。
【0041】
本発明に係わる赤外線反射特性を有する無機顔料[B]としては、赤外線を吸収しにくい性質を有するものであれば特に限定されず、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる元素を含む化合物が好ましい。特に、上記元素の酸化物、複合酸化物などが好ましく、具体的には、FeO、FeO(OH)、Fe、CrO、Cr、Cr・2HO、MnO、Mn、MnO、CuO、CuO、CoO、CoO・Al、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、(Fe,Zn)Fe、CoAl、Co(Al,Cr)、Cr:Fe、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらのうち、Cr:Fe、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)が好ましい。また、上記例示した酸化物および複合酸化物は、それぞれ1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、所望の色に着色された太陽電池用バックシートとすることが出来る。
【0042】
尚、上記例示した中で、CoOは、単独で用いた場合、太陽光が当たったときに赤外線の強度などによって太陽電池用バックシートの表面に白化が発生したり、紫外線によって揮散したりすることがあるため、CoOを用いる場合は、他の無機顔料と組み合わせて用いることが好ましい。
【0043】
本発明においては、黒系、深緑系などの暗色系の色の太陽電池用バックシートを得るために、無機顔料[B]としてFe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物を用いることが好ましい。その例としては、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、Cr:Fe等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0044】
黒系、深緑系などの暗色系の色の太陽電池用バックシートとするためには、上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料[B]全体に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%となるように含有させることが必要である。100質量%でない場合の残部は、他の顔料(無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等)とすることが出来る。すなわち、以下に説明する無機顔料[C]と効果的に組み合わせることにより、所望の色に着色された太陽電池用バックシートを得ることが出来る。また、黒系、深緑系のみならず、青系、茶系などの暗色系の色についても、所望の色に応じて、1種単独であるいは色の三原色を利用した複数種の無機顔料の組み合わせによって得ることが出来る。従来の着色剤は、有機顔料あるいは染料を組み合わせるものであり、太陽電池用バックシートが退色、変色する等耐候性に劣っていたのに対し、本発明においては、無機顔料を用いているため、太陽電池用バックシートの退色、変色などを引き起こすことがない。そして、無機顔料に由来する色を鮮やかに呈し続ける太陽電池用バックシートとすることが出来る。
【0045】
上記例示した無機顔料を用いる場合、樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂[A]及び無機顔料[B]の含有割合は、熱可塑性樹脂[A]100質量部に対して、無機顔料[B]が0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜15質量部であり、より好ましくは1.0〜10質量部、特に好ましくは1.0〜7質量部である。無機顔料[B]の含有量が少なすぎると、着色鮮映性が劣る傾向にあり、一方、多すぎると、成形加工性と耐衝撃性が劣る傾向にある。
【0046】
また、黒系、深緑系などの暗色系の色の太陽電池用バックシートを得るための他の態様は、上記無機顔料[B]としてCo元素およびNi元素を含む酸化物を用いることが好ましい。その例としては、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。また、他の無機顔料と組み合わせて用いることも出来る。
【0047】
また、上記無機顔料[B]としてCo元素およびNi元素を含む酸化物を用いる場合、樹脂組成物中のCo元素およびNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5であることが好ましい。より好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは15/85〜85/15である。上記範囲とすることによって、暗色系着色性および低蓄熱性に一段と優れた樹脂組成物とすることが出来る。
【0048】
黒系、深緑系などの暗色系の色の太陽電池用バックシートとするためには、上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料[B]全体に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは25〜100質量%となるように含有させることが必要である。100質量%でない場合の残部は、他の顔料(無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等)とすることが出来る。すなわち、以下に説明する無機顔料[C]と効果的に組み合わせることにより、所望の色に着色された太陽電池用バックシートを得ることが出来る。また、黒系、深緑系のみならず、青系、茶系などの暗色系の色についても、所望の色に応じて、1種単独であるいは色の三原色を利用した複数種の無機顔料の組み合わせによって得ることが出来る。
【0049】
上記例示した無機顔料を用いる場合の、樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂[A]及び無機顔料[B]の含有割合は、熱可塑性樹脂[A]100質量部に対して、無機顔料[B]が0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1.0〜10質量部、特に好ましくは1.0〜8質量部である。無機顔料[B]の含有量が少なすぎると、十分な低蓄熱性および赤外線反射能を得ることができず、着色性も劣る傾向にあり、一方、多すぎると、成形加工性、耐衝撃性が劣る傾向にある。
【0050】
尚、上記いずれの態様においても、無機顔料[B]の1つにCoOを用いる場合は、無機顔料全体を100質量%とすると、CoOの含有割合は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。残部は、他の無機顔料であり、例えば、Fe(Fe,Cr)等である。
【0051】
上記無機顔料[B]としては、上記例示したものに加え、更に、従来より赤外線反射特性を有する材料として用いられているTiO、有機顔料などを組み合わせて用いることが出来る。
【0052】
尚、上記無機顔料[B]は粉末であることが好ましく、更に好ましくは微粉末である。形状は特に限定されないが、粉末の最大長さは、好ましくは5nm〜40μm、より好ましくは15nm〜30μmである。上記範囲とすることによって、取扱い性と耐衝撃性のバランスに優れる。
【0053】
無機顔料[B]としては、ブロックタイプポリプロピレン100質量部およびこの無機顔料[B]0.5質量部から成る樹脂組成物より得られる太陽電池用バックシートのL値が好ましくは40未満、より好ましくは5〜39、特に好ましくは5〜35である。上記L値が高いと、本発明の目的の暗色系の太陽電池用バックシートが得られないことがある。
【0054】
本発明に係わる無機顔料[C]は特に限定されない。上記無機顔料[B]に含まれるようなFe、Cr、Mn、Co及びNiから選ばれる元素から構成されていてもよい。好ましくはブロックタイプポリプロピレン100質量部およびこの無機顔料[C]0.5質量部から成る樹脂組成物より得られる太陽電池用バックシートのL値が40以上である。この場合、さらに上述のようにブロックタイプポリプロピレン100質量部およびこの無機顔料[B]0.5質量部から成る樹脂組成物より得られる太陽電池用バックシートのL値が好ましくは40未満、より好ましくは5〜39、特に好ましくは5〜35である。
【0055】
上記無機顔料[C]としては、白色系無機顔料、赤色系無機顔料、緑色系無機顔料、黄色系無機顔料、茶色系無機顔料、青色系無機顔料、紫色系無機顔料、銀色系無機顔料、およびパール色系無機顔料などが挙げられ、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0056】
上記白色系無機顔料としては、ZnO、TiO、Al・nHO、[ZnS+BaSO]、CaSO・2HO、BaSO、CaCO、2PbCO・Pb(OH)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0057】
上記赤色系無機顔料としては、CdS・nCdSe、PbCrO・mPbMoO・nPbSO等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0058】
上記緑色系無機顔料としては、Cu(C、Cu(AsO、CoO・nZnO、BaMnO、Cu(OH)(CO)、Ti−Co−Ni−Zn系複合酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0059】
上記黄色系無機顔料としては、TiO・BaO・NiO、TiO・NiO・Sb、Fe・HO、PbCrO、Pb(SbO、Pb(SbO、Ti−Sb−Ni系複合酸化物、Ti−Sb−Cr系複合酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0060】
上記茶色系無機顔料としては、TiO・Sb・NiO、Zn−Fe系複合酸化物(ZnO・Fe等)、Zn−Fe−Cr系複合酸化物(ZnO・Fe・Cr等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0061】
上記青色系無機顔料としては、CoO・nAl、CoO・nSnO・mMgO、NaAl(SiO・2NaSO等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0062】
上記紫色系無機顔料としては、Co(PO、(NH)2MnO(P等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0063】
上記銀色系無機顔料としては、Al粉末、亜鉛粉末などが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0064】
上記パール色系無機顔料としては、マイカ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0065】
尚、上記白色系、銀色系、パール色系無機顔料を用いた場合、所望の色を維持しつつ、メタリック調の外観を得ることが出来る。
【0066】
上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料[C]全体に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは25〜100質量%となるように含有させることによって、そして、上記無機顔料[B]と効果的に組み合わせることにより、所望の色に着色された太陽電池用バックシートを得ることが出来る。
【0067】
また、上記無機顔料[C]としては、赤外線反射特性の有無についても特に限定されない。赤外線反射特性を有することが好ましいが、赤外線反射特性を有さないものであってもよい。
【0068】
上記の樹脂組成物において、上記無機顔料[C]の含有割合は、熱可塑性樹脂[A]100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.01〜6質量部である。無機顔料[C]の含有量が少なすぎると、色調安定性に劣る傾向にあり、一方、多すぎると、色調安定性および耐衝撃性に劣る傾向にある。
【0069】
黒色系の太陽電池用バックシートを得るための無機顔料[B]及び無機顔料[C]の好ましい組み合わせは、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)及び(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)から選ばれる無機顔料[B]と、TiO、Ti−Co−Ni−Zn系複合酸化物、NaAl(SiO・2NaSO及びTi−Sb−Cr系複合酸化物に例示される無機顔料[C]との組み合わせ等が挙げられる。
【0070】
深緑色系の太陽電池用バックシートを得るための無機顔料[B]及び無機顔料[C]の好ましい組み合わせは、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)及び(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)から選ばれる無機顔料[B]と、TiO、Ti−Co−Ni−Zn系複合酸化物、NaAl(SiO・2NaSO及びTi−Sb−Cr系複合酸化物に例示される無機顔料[C]との組み合わせ等が挙げられる。
【0071】
また、濃褐色系の太陽電池用バックシートを得るための無機顔料[B]及び無機顔料[C]の好ましい組み合わせは、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)及び(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)から選ばれる無機顔料[B]と、TiO2及びTi−Sb−Ni系複合酸化物に例示される無機顔料[C]との組み合わせ等が挙げられる。
【0072】
また、上記の樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂[A]、無機顔料[B]及び無機顔料[C]の含有割合は、熱可塑性樹脂[A]100質量部に対して、無機顔料[B]が0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部であり、無機顔料[C]が0.01〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.01〜6質量部である。この範囲とすることにより、成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、赤外線反射能を有し、耐候性および耐衝撃性に優れる暗色系の太陽電池用バックシートを得ることが出来る。
【0073】
尚、上記無機顔料[C]として、緑色系無機顔料のみを用いることによって、黒色系あるいは深緑色系の太陽電池用バックシートを得ることが出来る。具体的には、Ti−Co−Ni−Zn系複合酸化物に例示される緑色系無機顔料である。上記無機顔料[B]、例えば、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)、及び、この緑色系無機顔料の併用によって、深みのある暗色系の太陽電池用バックシートを得ることが出来る。
【0074】
この場合の、熱可塑性樹脂[A]、無機顔料[B]及び無機顔料[C]の好ましい含有割合は、熱可塑性樹脂[A]100質量部に対して、無機顔料[B]が0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部であり、無機顔料[C]が0.01〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.01〜6質量部である。
【0075】
更に、上記緑色系無機顔料のみによる黒色系と異なる、より深みのある黒色系の太陽電池用バックシートを得るために、上記無機顔料[C]として、上記緑色系無機顔料に加え、白色系無機顔料および青色系無機顔料を併用することが好ましい。これらの好ましい無機顔料を例示すると、緑色系無機顔料として、Cu(OH)(CO)、Cu(C、Cu(AsO、Ti−Co−Ni−Zn系複合酸化物を、白色系無機顔料として、TiOを、青色系無機顔料として、NaAl(SiO・2NaSOを挙げることが出来る。上記無機顔料[B]と、これらの緑色系、白色系、青色系無機顔料とを組み合わせることによって、低蓄熱性および耐候性にも優れた太陽電池用バックシートとすることが出来る。
【0076】
この場合の、緑色系、白色系、青色系無機顔料の好ましい配合割合は、所望の着色を現出するように各量を選択すればよいが、これらの全体を100質量部とした場合、各顔料の配合量は、緑色系無機顔料を好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.01〜8質量部用い、白色系無機顔料を好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.01〜8質量部用い、そして、青色系無機顔料を好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.01〜8質量部用いることである。
【0077】
尚、上記無機顔料[C]は粉末であることが好ましく、更に好ましくは微粉末である。形状は特に限定されないが、粉末の最大長さは、好ましくは5nm〜40μm、より好ましくは15nm〜30μmである。上記範囲とすることによって、取扱い性と耐衝撃性のバランスに優れる。
【0078】
上記樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることが出来る。例えば、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、充填剤、滑剤、帯電防止剤などである。着色剤としては、太陽電池用バックシートの蓄熱を低く維持できる範囲で、有機顔料、有機染料、カーボンブラック等を配合することが出来る。
【0079】
上記樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を用い、各成分を混練りすることによって得られる。混練りするに際しては、各成分を一括して混練りしてもよく、多段添加方式で混練りしてもよい。このようにして得られた樹脂組成物を用いて、射出成形、シート押出、真空成形、発泡成形などによって各種太陽電池用バックシートを作ることが出来る。
【0080】
上記樹脂組成物は、下記試験条件で得られる太陽電池用バックシートの温度上昇が、通常50℃以下、好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。この試験条件によって、蓄熱性を評価することが出来る。
【0081】
[試験条件]
上記樹脂組成物から成る太陽電池用バックシート(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室に載置し、高さ200mmから、その表面に赤外線ランプ又は白熱灯(出力100W)を60分間照射し、太陽電池用バックシートの表面温度を測定し、赤外線ランプ又は白熱灯照射前の初期温度との差を上昇温度とする。
【0082】
また、本発明の太陽電池用バックシートに、波長1000〜1250nmの光を照射した際の、この波長範囲における光の反射率の最大値は、好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。但し、上限は、通常、80%である。上記最大値が高いほど、低蓄熱性に優れた太陽電池用バックシートといえる。
【0083】
上記の樹脂組成物に含まれる無機顔料[B]はそれぞれ固有の色を有するが、特に十分な濃度の色を呈色させ且つ鮮映性に優れた太陽電池用バックシートとするためには、熱可塑性樹脂[A]に対する無機顔料[B]の含有割合を十分とする以外に、無機顔料[B]の含有割合が少なめであっても、太陽電池用バックシートの厚さを大きくする等によって達成することが出来る。
【0084】
また、本発明の太陽電池用バックシートの色調をLab方式で表示したときに、L値は、好ましくは40以下であり、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下である。但し、下限は、通常、5である。L値が小さいほど、暗色系低蓄熱性太陽電池用バックシートといえる。
【0085】
上記樹脂組成物は成形加工性に優れる。従って、太陽電池用バックシートとして所望の形に成形することが可能である。
【0086】
本発明の太陽電池用バックシートを使用した太陽電池モジュールは、通常、太陽光の受光面側から、ガラス等の透明基板、封止膜、太陽電池素子、封止膜および本発明の太陽電池用バックシートの順で構成される。
【0087】
透明基板としては、一般的にガラスが使用される。ガラスは透明性および耐候性に優れるが、耐衝撃性が低く、重いため、一般住宅の屋根に載せる太陽電池の場合には、耐候性の透明樹脂も好ましく使用される。透明樹脂としては、フッ素系樹脂フィルムが挙げられる。透明基板の厚さは、ガラスを使用した場合は、通常3〜5mm、透明樹脂を使用した場合は、通常0.2〜0.6mmである。
【0088】
封止膜としては、オレフィン系樹脂が使用される。ここでオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン、あるいはジオレフィンを重合または共重合した重合体の総称であり、エチレンとビニルアセテート、アクリル酸エステルなど他のモノマーとの共重合体やアイオノマーなども含む。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、広く使用されているのは、EVAという略称で呼ばれる、エチレンービニルアセテート共重合体である。EVAは、粘着剤や接着剤として塗工される場合や、シート状で使われる場合があるが、シート状で熱圧着して使われることが一般的である。シートの厚みは、通常0.2〜5.0mmである。
【0089】
太陽電池素子としては、公知のシリコンが使用できる。シリコンとしては、アモルファスシリコンであっても、多結晶シリコンであってもよく、好ましくは多結晶シリコンである。これは、以下の理由による。アモルファスシリコンと多結晶シリコンとの太陽光スペクトルの感度帯域を比較すると、アモルファスシリコンは可視光側に感度帯域が存在するのに対し、多結晶シリコンは赤外線側に感度帯域が存在する。太陽光のエネルギー分布は、紫外線領域が約3%、可視光線領域が約47%、赤外線領域が約50%であり、赤外線領域のエネルギー割合が大きい。そのため、低蓄熱性であるだけでなく赤外線反射特性を有する本発明の太陽電池用バックシートと、太陽電池素子として多結晶シリコンとを組合せて使用することにより、発電効率が更に向上する。
【0090】
上記の太陽電池モジュールの構成単位は、接着剤を使用して接合してもよい。接着剤としては、公知の接着剤が使用でき、例えば、ブチルゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、EPDM系接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下の諸例において、部および%は特に断らない限り質量基準である。また、使用した評価方法は以下の通りである。
【0092】
(1)バックシート加工性
流動性(メルトフローレート)をもって評価し、JIS K7210に準じて測定した。測定温度は220℃、荷重は98N、単位はg/10分である。
【0093】
(2)蓄熱性
温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室において、樹脂組成物を用いて得られた長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの太陽電池用バックシート(試験片)の表面に、高さ200mmから赤外線ランプ(出力100W)を照射して、60分後の試験片の表面温度を、表面温度計を用いて測定した。単位は℃である。
【0094】
また、低蓄熱性の安定性を見るために、上記測定を5回行った際に得られた温度の最大値と最小値の差ΔTを求め、以下の基準に従って評価した。
【0095】
【表1】

【0096】
(3)耐衝撃性
アイゾット衝撃強度をもって評価した。JIS K7110の2号型試験片を成形し、アイゾット衝撃強度を測定した。単位は、kJ/mである。
【0097】
(4)耐候性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を、サンシャインウェザーオメーター(スガ試験機社製)を用いて、降雨サイクル18分/120分、ブラックパネル温度63℃として1000時間暴露し、暴露前後の色調変化値ΔEを算出した。ΔEは、多光源分光測定計(スガ試験機社製)を用いて変色度Lab(L:明度、a:赤色度、b:黄色度)を測定し、次式により算出した。
【0098】
【数2】

【0099】
式中、L、a、bは、暴露前の値を、L、a、bは暴露後の値を示す。ΔEの値は、小さい方が色の変化が小さく、色調が優れていることを示す。評価基準は以下の通りである。
【0100】
【表2】

【0101】
(5)着色鮮映性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
【0102】
【表3】

【0103】
(6)L値
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を用い、多光源分光測定計(スガ試験機社製)によりL値を求めた。
【0104】
(7)反射率
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片を用い、赤外線反射率測定計(島津製作所社製)により測定した。照射した赤外線の波長範囲は200〜2500nmである。1000〜1250nmの波長範囲における反射率の最大値を求めた。
【0105】
製造例1[ゴム強化ビニル系樹脂(A1−1)の製造]:
攪拌機を備えたガラス製反応器に、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径:270nm、ゲル含率:90%)32部(固形分換算)、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(スチレン含率25%、平均粒子径550nm)8部、スチレン15部およびアクリロニトリル5部を入れ、窒素気流中で攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点でピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄7水和物0.01部およびブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合させた。次いで、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10、t−ドデシルメルカプタン0.05部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加した。1時間重合させた後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。反応生成物のラテックスを凝固、水洗した後、乾燥してゴム強化ビニル系樹脂(A1−1)を得た。グラフト率は72%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
【0106】
製造例2[ゴム強化ビニル系樹脂(A1−2)の製造]:
まず、スチレン73部およびアクリロニトリル27部を混合して、単量体混合物を調製した。攪拌機を備えたガラス製反応器に、アクリル酸n−ブチル99部およびアリルメタクリレート1部を乳化重合して得られた重量平均粒子径が284nmであるアクリル系ゴム質重合体ラテックス100部(固形分換算)とイオン交換水110部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム1.2部およびブドウ糖0.3部をイオン交換水20部に溶解した水溶液(以下、「RED水溶液」という。)のうちの86%分と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.4部、不均化ロジン酸カリウム2.4部をイオン交換水30部に溶解した水溶液(以下、「CAT水溶液」という。)のうちの30%分と、を反応器に入れ、その直後に上記単量体混合物およびCAT水溶液をそれぞれ、3時間および3時間30分に渡って連続添加し、重合を開始した。重合開始から75℃まで昇温し、その後、75℃に保持した。重合を開始して180分後にRED水溶液の残り14%分を反応器に仕込み、60分間、同温度で保持した後に重合を終了した。以下、上記(A1−1)と同様にして、ゴム強化ビニル系樹脂(A1−2)を得た。グラフト率は50%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
【0107】
製造例3[ゴム強化ビニル系樹脂(A1−3)の製造]:
リボン型攪拌翼、助剤連続添加装置および温度計を装備したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン系ゴム質重合体(JSR製、商品名「EP84」)20部、スチレン56部、アクリロニトリル24部およびトルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.45部を添加し、内温を更に上昇させ、100℃とした後、この温度に保ちながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応が開始してから4時間目から内温を120℃とし、この温度に保ちながら更に2時間反応を行って終了した。グラフト率は55%であった。内温を100℃まで冷却した後、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、内容物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、40mmφベント付き押出機でシリンダー温度を220℃、真空度を700mmHgとして、揮発分を実質的に脱揮させ、ペレット化した。ゴム強化ビニル系樹脂(A1−3)のグラフト率は55%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は、0.5dl/gであった。
【0108】
製造例4[共重合体(A2)の製造]:
スチレン75部、アクリロニトリル25部を用いて、塊状重合でビニル系重合体(A2−1)を得た。極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
【0109】
以下の諸例において、着色剤としては下記のものを用いた。
【0110】
(1)無機顔料[B]
【0111】
B−1:Fe及びCrの複合酸化物:日本フェロー社製の商品「フェローカラー42−703A」(化学組成は、Cr:88〜91%、Fe:7〜10%であり、色は黒色である。)
【0112】
B−2:Fe−Mnの複合酸化物:日本フェロー社製の商品「フェローカラー42−350A」
【0113】
B−3:Cu−Cr−Mnの複合酸化物:日本フェロー社製の商品「フェローカラー42−303B」
【0114】
B−4:Ni−Co−Fe−Crの複合酸化物:川村化学工業社製の商品「AE801ブラック」
【0115】
(2)無機顔料[C]
【0116】
C−1:TiO:石原産業社製の商品「CR−60−2」
【0117】
C−2:Ti−Ci−Ni−Zn系複合酸化物:川村化学社製の商品「MD100」
【0118】
C−3:群青:東京新日本化成社製の商品「NUB1FLOW」
【0119】
C−4:Ti−Sb−Ni系複合酸化物:川村化学社製の商品「BR100」(3)有機顔料[D]等
【0120】
D−1:ペリレン系有機顔料:BASF社製の商品「Paliogen Red 3911HD」
【0121】
D−2:イソインドリン系有機顔料:大日精化社製の商品「DISCOALL 443」
【0122】
D−3:シアニン系有機顔料:住友化学社製の商品「Sumitone Cyanine Blue GH」
【0123】
D−4:カーボンブラック
【0124】
尚、上記無機顔料[B]又は[C]を含む太陽電池用バックシートのL値を調べるため、ブロックタイプポリプロピレン(商品名「BC6C」、日本ポリケム社製)100部と、上記無機顔料[B]又は[C]0.5部と、から成る樹脂組成物を調製し、その太陽電池用バックシートを作製し、上記の方法でL値を得た。その結果を表4に示す。
【0125】
【表4】

【0126】
実施例1〜9及び比較例1〜5:
各成分を、表1及び表2に示す配合割合でミキサーにより3分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜200℃で溶融混練り押出し、ペレットを得た。得られたペレットを十分に乾燥し、評価用の試験片を得た。この試験片を用いて下記評価を上記記載の方法で行った。評価結果を表5及び表6に示す。
【0127】
【表5】

【0128】
【表6】

【0129】
表5より、実施例1乃至9は、いずれも成形加工性、蓄熱性、耐衝撃性、反射率、耐候性および着色鮮映性のバランスに優れる。一方、比較例1、3及び5は、着色剤としてカーボンブラックを用いた例であり、表6より、耐候性および着色鮮映性に優れるが、温度上昇(蓄熱性−25℃)がそれぞれ55℃、55℃及び56℃と高く、いずれも蓄熱性、反射率に劣っている。また、比較例2及び4は、有機顔料を用いて着色した例であり、蓄熱性は十分であるが、耐候性および着色鮮映性に劣っている。
【0130】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、目的、用途に応じて種々の態様をとることが出来る。上記樹脂組成物は、所定の熱可塑性樹脂[A]及び無機顔料[B]を含有するものであるから、上記実施例のように、熱可塑性樹脂および無機顔料を別々に準備するのではなく、グラフトしているビニル系単量体成分の重合体および無機顔料がゴム質重合体を被覆しているような状態の複合化熱可塑性樹脂を原料としてもよいし、ビニル系単量体成分の(共)重合体を無機顔料の存在下で合成し、無機顔料を被覆した(共)重合体を用いてもよい。
【0131】
実施例10〜17、比較例6〜7及び参考例1〜5:
各成分を、表7〜10に示す配合割合でミキサーにより3分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜200℃で溶融混練り押出し、ペレットを得た。得られたペレットを十分に乾燥し、評価用の試験片を得た。この試験片を用いて各種評価を上記記載の方法で行った。評価結果を表7〜10に示す。
【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【0135】
【表10】

【0136】
表7〜8より、実施例10〜17は温度上昇が25〜30℃と良好であり、低蓄熱性の安定性が十分であり、反射率が高く、L値が15〜33と小さく、耐候性、着色鮮映性に優れる。一方、比較例6は、無機顔料[B]及び[C]を含有せず有機顔料のみで着色した例であり、表9より、温度上昇は33℃(58−25=33)と優れるが、耐候性および着色鮮映性に劣っていた。参考例1、2及び5は、無機顔料[B]を含有するが、無機顔料[C]を含有しない例であり、温度上昇がそれぞれ、55℃、54℃、55℃と高くなった。参考例2は有機顔料を含有し耐候性が十分ではなく、着色鮮映性に劣る。参考例5は、低蓄熱性の安定性が十分ではなかった。無機顔料[B]を含有するが、無機顔料[C]を含有しない参考例4は、温度上昇が低く、反射率も高いが、低蓄熱性の安定性に劣る。比較例7は、無機顔料[B]の含有量が0.08部と少ない例であり、L値が50と高く、低蓄熱性の安定性が十分ではなかった。参考例3は、無機顔料[C]の含有量の合計が11.4部と多い例であり、L値が53と高く、また、耐衝撃性に劣る。
【0137】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、目的、用途に応じて種々の態様をとることが出来る。上記樹脂組成物は、所定の熱可塑性樹脂[A]、無機顔料[B]、および[C]を含有するものであるから、上記実施例のように、熱可塑性樹脂および無機顔料を別々に準備するのではなく、グラフトしているビニル系単量体成分の重合体および無機顔料がゴム質重合体を被覆しているような状態の複合化熱可塑性樹脂を原料としてもよいし、ビニル系単量体成分の(共)重合体を無機顔料の存在下で合成し、無機顔料を被覆した(共)重合体を用いてもよい。
【0138】
また、本発明には含まれないが、上記無機顔料[C]の代わりに、上記無機顔料[B]と併用する無機顔料(以下、「無機顔料[D]」ともいう。)として、赤外線反射特性を有さず、ブロックタイプポリプロピレン100質量部およびこの無機顔料[D]0.5質量部から成る樹脂組成物より得られる太陽電池用バックシートのL値が、例えば、40未満、好ましくは35以下である条件を満たすものを用いても、成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、耐候性および耐衝撃性に優れる暗色系の太陽電池用バックシートを与える樹脂組成物を得ることが出来る。この場合の、熱可塑性樹脂[A]、無機顔料[B]及び無機顔料[D]の含有割合は、上記で説明した熱可塑性樹脂[A]、無機顔料[B]及び無機顔料[C]の含有割合と同様とすることが出来る。
【0139】
上記の樹脂組成物は、これを用いて成形する際の加工性に優れ、得られる太陽電池用バックシートは、所望の色を正確に実現し、熱の吸収が安定して少なく、変形、収縮が発生しにくい。更には、耐候性および耐衝撃性にも優れる。特に、無機顔料[B]がFe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である場合には、無機顔料[C]と併用した際の暗色系着色のバランスをとりやすく、太陽電池用バックシートの低蓄熱性に優れる。なかでも、Co元素およびNi元素を含む酸化物であり、樹脂組成物中のCo元素およびNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である場合には、低蓄熱性に優れ且つL値が40以下である暗色系の鮮映な太陽電池用バックシートを得ることが出来る。
【0140】
また、太陽電池素子は赤外線領域に感度帯域を有しているため、上記樹脂組成物から成る太陽電池用バックシートに、波長1000〜1250nmの光を照射した際の、この波長範囲における光の反射率の最大値が15%以上である場合には、優れた太陽電池用バックシートとすることが出来る。
【0141】
上記熱可塑性樹脂[A]として、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物を用いる場合には、特に成形加工性に優れ、且つ、蓄熱が少なく、耐候性および耐衝撃性に優れる太陽電池用バックシートを得ることが出来る。また、上記ビニル系単量体成分に芳香族ビニル化合物を含む場合には、成形加工性、表面外観性に優れる。
【0142】
また、本発明の太陽電池用バックシートは、熱の吸収が少なく、高温時の変形、収縮が発生しにくく赤外線反射特性に優れる。更には、耐候性および耐衝撃性にも優れる。従って、本発明の太陽電池用バックシートは、工業的に高い価値を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂[A]100質量部と、赤外線反射特性を有する無機顔料[B]0.1〜15質量部とを含有する低蓄熱性熱可塑性樹脂組成物から成る太陽電池用バックシート。
【請求項2】
熱可塑性樹脂[A]が、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体成分の(共)重合体(A2)との混合物から成る請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
熱可塑性樹脂[A]中のゴム質重合体(a)の含有量が3〜40重量%である請求項1又は2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室に前記組成物から成る太陽電池用バックシート(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を載置し、高さ200mmから、その表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射し、太陽電池用バックシートの表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を上昇温度とした場合、当該上昇温度が50℃以下である請求項1〜3の何れかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
ビニル系単量体成分(b)が芳香族ビニル化合物を含有する請求項1〜4の何れかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
無機顔料[B]が、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物である請求項1〜5の何れかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
無機顔料[B]は、Fe、Cr及びMnから選択される少なくとも2種の元素を含有する酸化物である請求項6に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
無機顔料[B]は、Co元素及びNi元素を含有する酸化物であり、前記組成物中のCo元素およびNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である請求項6又は7に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
さらに、熱可塑性樹脂[A]100質量部に対し無機顔料[C]0.01〜10質量部を含有する請求項1〜8の何れかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項10】
無機顔料[B]が、ブロックタイプポリプロピレン100質量部および無機顔料[B]0.5質量部から成る太陽電池用バックシートのL値が40未満である条件を満たし無機顔料[C]が、ブロックタイプポリプロピレン100質量部および無機顔料[C]0.5質量部から成る太陽電池用バックシートのL値が40以上である条件を満たす請求項9に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項11】
無機顔料[C]が、白色系無機顔料、赤色系無機顔料、緑色系無機顔料、黄色系無機顔料、茶色系無機顔料、青色系無機顔料、紫色系無機顔料、銀色系無機顔料およびパール色系無機顔料から選択される少なくとも1種である請求項9又は10に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項12】
無機顔料[C]として、緑色系無機顔料を使用する請求項11に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項13】
無機顔料[C]として、更に、白色系無機顔料および青色系無機顔料を使用する請求項12に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項14】
前記組成物から成る太陽電池用バックシートの色調をLab方式で表示したときに、L値が40以下である請求項1〜13の何れかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項15】
前記組成物から成る太陽電池用バックシートに、波長1000〜1250nmの光を照射した際の、当該波長範囲における当該光の反射率の最大値が15%以上である請求項1〜14の何れかに記載の太陽電池用バックシート。

【公開番号】特開2007−103813(P2007−103813A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294349(P2005−294349)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】