説明

太陽電池用裏面保護シートおよびその製造方法、太陽電池モジュール

【課題】耐候性、耐熱性、耐湿性、寸法安定性に優れ、反りやシワの発生が防止され、しかも高い生産性で製造できる太陽電池用裏面保護シートを提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池用裏面保護シート10は、繊維基材および熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材料層11と、複合材料層11の一方に設けられた第1の機能層(I)(導体層12)と、複合材料層11の他方の面に設けられた第2の機能層(II)(保護層13)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートおよびその製造方法に関する。また、その太陽電池用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時において無公害で地球環境への負荷が小さいことから、近年急速に普及しつつある。
太陽電池の主要部である太陽電池モジュールは、通常、太陽光側である表面側に設けられたガラス基板と、裏面側に設けられた耐熱性および耐候性を有する裏面保護シートと、熱可塑性樹脂で封止された太陽電池セルとを具備する。
一つの太陽電池モジュールにおいては、数枚から数十枚の太陽電池セルが直列もしくは並列に接続されている。
【0003】
太陽電池モジュールは屋外で使用されるため、充分な耐久性および耐候性を有する構造が必要とされる。特に、裏面保護シートにおいては、耐熱性および耐候性と共に水蒸気バリア性が要求される。これは、水分の透過による充填材の変質(剥離や変色)、配線の腐食を防止して、出力を維持するためである。
【0004】
従来、この太陽電池モジュールに使用される裏面保護シートとしては、ポリエステル基材の両面に、接着剤を介してポリフッ化ビニルのフィルムが貼り合わされた積層構造の裏面保護シートが用いられてきた(特許文献1,2,3参照)。
しかしながら、この裏面保護シートで用いられる接着剤はウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂を主成分とするため、10年以上にわたる長期間の使用では、接着剤の変質による剥離が起きる可能性が指摘されていた。
例えば、ウレタン系樹脂接着剤やポリエステル系樹脂接着剤は吸湿による加水分解を受け易く、樹脂自体の耐熱性も低いことから、長期間の使用では熱や湿度、さらには紫外線の影響で変質する。その結果、機械的強度の低下から接着界面での剥離が生じ易くなる。
【0005】
そこで、接着剤の劣化による剥離を防止するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材上にフッ素系樹脂を直接押出し積層する方法が提案されている。
しかしながら、その直接押出し積層では、PET基材がフッ素樹脂の溶融温度で収縮して、得られた積層シートにシワが発生する等の問題が生じた。そこで、熱収縮が小さい耐熱PETシートやポリエチレンナフタレート(PEN)シートを用いると、コストが高くなるという問題が生じる。
【0006】
ところで、最近では、受光面積のロスを無くすために、裏面保護シートに太陽電池セル同士を接続する回路が設けられたバックコンタクト方式と呼ばれる太陽電池モジュールが開発されている。この方式での太陽電池セル同士の接続は、裏面保護シートの回路により行う。具体的には、太陽電池セルの裏面に端子部を形成し、その端子部を裏面保護シートの回路に接合して、裏面保護シートの回路を介して太陽電池セル同士を接続する。また、回路の、端子部に接触しない部分は、絶縁層で被覆されて、回路の耐腐食性と回路間の絶縁性が確保されている。
したがって、上記のように、回路を有する裏面保護シートは、裏面保護だけでなく、バックコンタクト用の回路材としての機能も有する。
【0007】
回路を有する裏面保護シートとしては、ポリエステル基材の両面に接着剤を塗布し、一方の面に金属箔、他方の面にフッ素樹脂等の耐候性樹脂フィルムを積層した積層体が挙げられる。
しかしながら、この裏面保護シートでもウレタンやポリエステルを主成分とした接着剤を使用するため、長期間の使用における剥離の問題があった。さらには、接着剤の絶縁性不足から回路間の絶縁性が確保できず、絶縁信頼性が低くなる傾向にあった。
また、ポリエステル基材は耐熱性が低いため、製造条件が制限されるという問題も生じた。具体的には、接着剤層を形成する際の乾燥、銅箔や耐候性樹脂フィルムを積層する際のラミネート、絶縁層を形成する際の硬化等を高温で処理することが困難であった。そのため、生産性が低下する傾向にあった。
【0008】
また、一般に、ポリエステル基材は高温での寸法変化が大きい。ポリエステル基材の寸法が大きく変化すると、バックコンタクト方式の太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セルとの接合部に応力が集中しやすくなる。その結果、太陽電池セルの端子部と回路との接合部の剥離や、クラックの発生等が起こるため、接続信頼性が低くなるという問題を有していた。また、銅箔とポリエステル基材の熱膨張差により、積層後の裏面保護シートに反りやシワが発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−68701号公報
【特許文献2】特開2001−68695号公報
【特許文献3】特開昭61−251176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、耐候性、耐熱性、耐湿性、寸法安定性に優れ、反りやシワの発生が防止され、しかも高い生産性で製造できる太陽電池用裏面保護シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]繊維基材および熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材料層と、該複合材料層の一方に設けられた第1の機能層(I)と、前記複合材料層の他方の面に設けられた第2の機能層(II)とを有することを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
[2]前記第1の機能層(I)が、電気伝導性を有する導体層であり、
前記第2の機能層(II)が、耐候性を有する保護層であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池用裏面保護シート。
[3]電気伝導性を有する導体層が金属箔を有することを特徴とする[2]に記載の太陽電池用裏面保護シート。
[4]前記金属箔がパターン加工されていることを特徴とする[3]に記載の太陽電池用裏面保護シート。
[5]前記金属箔が銅箔であることを特徴とする[3]または[4]に記載の太陽電池用裏面保護シート。
[6]前記第1の機能層(I)及び前記第2の機能層(II)が共に、耐候性を有する保護層であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池用裏面保護シート。
[7]前記耐候性を有する保護層が、フッ素含有樹脂を含む層であることを特徴とする[2]〜[6]のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
[8]繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸または塗布し、乾燥させて得たプリプレグの一方の面に第1の機能層(I)を積層し、他方の面に第1の機能層(II)を積層することを特徴とする太陽電池用裏面保護シートの製造方法。
[9]受光面側に配置された透光性基板と、裏面側に配置された裏面保護シートと、透光性基板および裏面保護シートの間に配置された太陽電池セルと、太陽電池セルを封止する封止層とを具備する太陽電池モジュールであって、
裏面保護シートが、[1]〜[7]のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シートであることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、耐候性、耐熱性、耐湿性、寸法安定性に優れ、反りやシワの発生が防止され、しかも高い生産性で製造できる。また、本発明の太陽電池用裏面保護シートにおいて、一方の機能層(I)が導体層であり、バックコンタクト方式の太陽電池セルを適用する場合には、太陽電池セルとの接続信頼性、回路間の絶縁信頼性が高くなる。
本発明の太陽電池用裏面保護シートの製造方法によれば、耐候性、耐熱性、耐湿性、寸法安定性に優れ、反りやシワの発生が防止された裏面保護シートを高い生産性で製造できる。
本発明の太陽電池モジュールは、上記裏面保護シートを用いるため、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態例の太陽電池用裏面保護シートを示す側断面図である。
【図2】図1に示す太陽電池用裏面保護シートの製造方法の一工程を説明する側断面図である。
【図3】図1に示す太陽電池用裏面保護シートの製造方法の一工程を説明する側断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態例の太陽電池モジュールを示す側断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態例の太陽電池用裏面保護シートを示す側断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態例の太陽電池モジュールを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態例>
(太陽電池用裏面保護シート)
本発明の太陽電池用裏面保護シート(以下、「裏面保護シート」と略す。)の第1の実施形態例について説明する。
図1に本実施形態例の裏面保護シートを示す。本実施形態例の裏面保護シート10は、基材である複合材料層11と、複合材料層11の一方の面に設けられた導体層12と、複合材料層11の他方の面に設けられた保護層13と、導体層12の一部が露出するように複合材料層11および導体層12を被覆した絶縁層14とを有する。
本実施形態例の裏面保護シート10は、バックコンタクト方式の太陽電池セルの接続に用いるものである。
【0015】
複合材料層11は、繊維基材および熱硬化性樹脂の硬化物を含有する層である。
繊維基材を構成する繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、フッ素繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。これらのうち、熱硬化性樹脂との親和性、絶縁信頼性、材料コストの観点からガラス繊維が好ましい。
繊維基材の形態としては、繊維端の突出による保護層13のピンホール形成を防止でき、また、導体層12および保護層13との界面における気泡の発生を防止できることから、平織り、綾織、朱子織り、目抜き平織り、目抜きカラミ織り等、長繊維を用いた織物が好ましい。これに対し、短繊維状物は、繊維端が突出し易く、保護層13にピンホールを形成させやすく、導体層12および保護層13との界面に気泡が発生し易いため、好ましくない。
【0016】
熱硬化性樹脂の硬化物を形成する熱硬化性樹脂としては、副生物を生成せずに硬化する付加重合型等の熱硬化性樹脂が好ましい。付加重合型の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、シアナート樹脂、シアン酸エステル樹脂−エポキシ樹脂、シアン酸エステル−マレイミド樹脂、シアン酸エステル−マレイミド−エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、マレイミド−ビニル樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
複合材料層11の厚さは、絶縁破壊耐性、耐突き刺し性を確保できることから、50μm以上であることが好ましく、100〜300μmであることがより好ましい。
【0018】
導体層12は、電気伝導性を有する層である。導体層12の一部は絶縁層14が被覆されず露出している。その露出した部分は太陽電池セルとの接合部になる。
電気伝導性を有する層としては、例えば、金属箔を有する層、導電性成分(金属粒子、カーボン粒子、導電性ポリマー等)を含有する層などが挙げられる。これらのうち、電気特性に優れることから、金属箔を有する層が好ましい。
金属箔としては、金箔、アルミニウム箔、銅箔、亜鉛箔、ステンレス箔等を使用することができ、これらのうち、電気特性と材料コストの観点から、銅箔が好ましい。
金属箔を有する層は、金属箔の他に、金属箔を支持する支持層を有してもよい。
導体層12の厚さは10μm以上であることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。特に金属箔として銅箔を用いる場合には、電気特性の観点から、10μm以上であることが好ましく、12〜35μmであることがより好ましい。
【0019】
本実施形態例における導体層12は、パターン加工が施され、接合される太陽電池セル同士を直列に接続するための回路が形成されている。
パターン加工が施された導体層12の形成方法としては、例えば、図2に示すように、複合材料層11の片面に設けられた、パターン加工が施されていない導体層(以下、「未加工導体層」という。)12aにドライレジストフィルムを用いたフォトリソグラフィおよびエッチングを適用して、図3に示すように、回路が形成された導体層12を得るようにパターン加工する方法が挙げられる。
また、パターン加工が施された導体層12の形成方法として、回路が形成されるパターンを有する打ち抜き型を用いて未加工導体層12をプレス打抜き加工する方法も適用できる。この場合には、後述するように、打抜き加工した導体層12をプリプレグに積層することになる。
上記パターン加工が施された導体層12の形成方法のうち、材料コストや廃材処理、生産性の観点から、未加工導体層12をプレス打抜き加工する方法が好ましい。
【0020】
保護層13は、耐候性を有し、複合材料層11および導体層12を保護する層である。また、保護層13は、耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れることが好ましい。
保護層13としては、低コストで、クラックやピンホールが形成されにくいことから、フッ素含有樹脂を含む層が好ましい。
フッ素含有樹脂として、例えばポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合樹脂(ECTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)・ヘキサフルオロプロピレン(HFP)・ビニリデンフロライド(VDF)の三元共重合体樹脂等が挙げられる。
保護層13がフッ素含有樹脂を含む場合には、複合材料層11との密着性を改善するため、その表面に、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の易接着処理が施されていることが好ましい。
【0021】
また、保護層13として、ロールでも入手が可能な厚さ50μm以下の超極薄ガラス、ポリエステル系フィルムに金属化合物もしくは無機化合物が蒸着積層された蒸着フィルムなどを用いることもできる。これらは、優れた水蒸気バリア性を有している。ただし、長極薄ガラス、蒸着フィルムは製造コストが高く、クラックやピンホールが生じ易い傾向にある。
【0022】
保護層13の厚さは5〜200μmであることが好ましい。特に、保護層13として、フッ素含有樹脂を含む場合には、水蒸気バリア性の観点から25〜100μmであることが好ましい。
【0023】
絶縁層14は、電気抵抗値が10−6Ω以上の絶縁性を有し、導通してはならない導体層12同士の間に設けられて不要な短絡を防止すると共に、導体層12の空気の接触を妨げて耐腐食性を得るための層である。
絶縁層14を構成する材料は絶縁性を有する樹脂が用いられる。絶縁性を有する樹脂としては、各種熱硬化性樹脂の硬化物が挙げられる。絶縁層14を形成する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂類、ビスマレイミド類、ビスマレイミド類とジアミンとの付加重合物、フェノール樹脂、レゾール樹脂、イソシアネート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート及びビニル基含有ポリオレフィン化合物等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性、絶縁性等の性能のバランスからエポキシ樹脂が好ましい。
絶縁層14の厚さは導体層12上で40〜100μmであることが好ましい。
【0024】
上述の裏面保護シート10では、接着剤を用いずに導体層12および保護層13が基材である複合材料層11に直接積層されているため、耐候性、耐熱性、耐湿性に優れ、耐久性が高い。導体層12および保護層13の直接積層が可能になったのは、後述するように、半硬化状態で接着性を有するプリプレグに導体層12および保護層13を積層するためである。
さらに、絶縁性低下の原因になる接着剤を使用しない上に、複合材料層11と導体層12とが強固に接着しているため、裏面保護シート10は回路間の絶縁信頼性に優れる。
また、基材である複合材料層11は繊維基材および熱硬化性樹脂の硬化物を含有するため、耐熱性および寸法安定性に優れる。そのため、温度変化が生じても太陽電池セルとの接合部における応力集中を避けることができ、太陽電池セルの端子部と回路との接合部の剥離やクラックの発生を防止でき、接続信頼性が高い。また、複合材料層11の寸法安定性が高いことにより、導体層12との熱膨張差を小さくできるため、反りやシワの発生を防止できる。
また、ポリエステル基材を用いない上記裏面保護シート10を得るための製造工程では高温での処理を適用できる。例えば、導体層12および保護層13の積層温度を180℃以上にすることができ、絶縁層14の形成での硬化処理温度を180℃以上にできる。高温での処理が可能になることにより、短時間で裏面保護シート10の製造を完結させることができる。しかも接着剤を用いないため、接着剤の塗布、乾燥等を省略でき、簡便である。したがって、裏面保護シート10は高い生産性で得られる。
また、複合材料層11は耐熱性が高いため、太陽電池セルの端子部との接合に高温処理が必要になる半田接合を適用できる。
【0025】
(裏面保護シートの製造方法)
上記裏面保護シート10を製造する方法について説明する。
まず、プリプレグ11aの一方の面に導体層12を積層し、プリプレグ11aの他方の面に保護層13を積層する。
ここで、プリプレグ11aは、上述した繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸または塗布し、乾燥させて得たものである。プリプレグ11aでは、熱硬化性樹脂が半硬化状態であるため、接着性を有している。
また、保護層13の積層は、導体層12の積層と同時であってもよいし、導体層12の積層より後であってもよいし、導体層12の積層より前であってもよい。
【0026】
プリプレグ11aに導体層12および保護層13を積層する方法としては、例えば、真空状態での加圧積層法、ロールラミネーター等を用いた大気圧下での積層などが挙げられる。これらのうち、積層界面での気泡の発生を防止でき、接着強度を高め、屋外での長期間の使用における剥離の発生をより防止できる点で、真空状態での加圧積層法が好ましい。真空状態での加圧積層法における真空度は2.7kPa(20Torr)以下であることが好ましく、1.3kPa(10Torr)以下であることがより好ましい。
また、加圧積層法は、プリプレグ11aに導体層12および保護層13を同時に積層でき、より生産性に優れるという利点も有する。
【0027】
積層条件は、プリプレグ11aの種類によっても異なるが、通常、積層温度150〜200℃、積層圧力0.5〜3.0MPa、積層時間10〜40分である。また、積層温度は含浸する熱硬化性樹脂の溶融温度±30℃であることが好ましい。積層温度が低く過ぎると、熱硬化性樹脂が充分に溶融せず、導体層12および保護層13の表面に対して密着する面積が小さくなり、接着強度が低くなる傾向にある。また、積層温度が高過ぎると、熱硬化性樹脂中の溶媒が急激に蒸発するため、気泡が発生し易く、また樹脂の粘度が下がり過ぎて導体層12と保護層13との間から流出して、裏面保護シート10の厚さが不均一になる傾向にある。
【0028】
積層の最中または積層の後、プリプレグ11aを加熱し、プリプレグ11aに含まれる熱硬化樹脂を硬化させて、複合材料層11を形成する。
次いで、絶縁層14を形成し、絶縁層14によって複合材料層11と、導体層12の太陽電池セルの端子部が接触しない部分とを被覆する。絶縁層14の形成方法としては、熱硬化性樹脂を塗布、印刷または積層し、硬化する方法が適用される。
絶縁層14を形成する熱硬化性樹脂の形態としては、ワニス、2液性インキ、ドライフィルム等が挙げられる。これらのうち、導体層12の一部を露出させるために絶縁層14に開口部を形成する必要があることから、ドライフィルムが好ましく、特に、感光性を有する熱硬化性樹脂をフィルム基材上に塗布し、半硬化させて得たドライフィルムがより好ましい。
また、複合材料層11および導体層12の上に絶縁層14が設けられない部分の寸法が数ミリ以上と充分に大きい場合には、材料コストと生産性の観点から、ワニスやインキを用いたスクリーン印刷によって絶縁層14を形成することが好ましい。
以上の方法により、裏面保護シート10を得ることができる。
【0029】
上述した裏面保護シート10の製造方法では、半硬化状態で接着性を有するプリプレグ11aに導体層12および保護層13を積層するため、接着剤を用いずに導体層12および保護層13を基材である複合材料層11に直接積層できる。したがって、耐候性、耐熱性、耐湿性に優れ、耐久性が高く、回路間の絶縁信頼性に優れた裏面保護シート10を製造できる。
【0030】
<太陽電池モジュール>
図4に、上記裏面保護シート10を用いた太陽電池モジュールの一実施形態例を示す。この太陽電池モジュール1は、受光面側に配置された透光性基板30と、裏面側に配置された裏面保護シート10と、透光性基板30および裏面保護シート10の間に配置された多数の太陽電池セル40a,40a・・・と、太陽電池セル40a,40a・・・を封止する封止層50とを具備する。
本実施形態例では、太陽電池セル40aの端子部41と裏面保護シート10の導体層12とは、導電性ペーストによって形成されたバンプ60によって接続されている。
また、この太陽電池モジュール1における裏面保護シート10は、保護層13が裏面になるように配置されている。
【0031】
透光性基板30としては、例えば、ガラス基板、透明樹脂基板などが挙げられる。透明樹脂基板を構成する透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
本実施形態例で使用される太陽電池セル40aは、裏面に端子部41を備えるバックコンタクト方式のものである。太陽電池セル40aとしては、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、化合物型、色素増感型などが挙げられる。これらの中でも、発電効率に優れる点では、単結晶シリコン型が好ましい。
封止層50は、封止用樹脂フィルムにより形成される。封止用樹脂フィルムとしては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、シリコーンフィルム、ポリビニルブチラールフィルム、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂フィルムなどが使用される。通常、封止用フィルムは、太陽電池セル40aを挟み込むように2枚以上で使用される。
【0032】
この太陽電池モジュール1は、例えば、以下の製造方法により製造される。
すなわち、まず、封止用樹脂フィルム50b、太陽電池セル40a、封止用樹脂フィルム50a、透光性基板30を積層して積層体を得る。その際、封止用樹脂フィルム50bとして、太陽電池セル40aの端子部41と裏面保護シート10とを接続する部分が開口したものを用いる。
また、裏面保護シート10の、導体層12の露出した部分に導電性ペーストを塗布してバンプ60を設ける。
次いで、バンプ60を設けた裏面保護シート10と前記積層体とを、バンプ60と太陽電池セル40aの端子部41とが重なるように重ね、その状態で真空ラミネートする。
真空ラミネートでは、例えば、真空引きを行いながら120〜140℃で5分間予備加熱した後、減圧下、120〜150℃で3〜10分間加熱し、両側から押圧する。これにより、封止用樹脂フィルム50a,50bを溶融させ、バンプ60の導電性ペーストを熱硬化させ、太陽電池セル40aと裏面保護シート10とを接続して、一体化させる。
さらに、140〜160℃で20〜40分間加熱し、封止用樹脂フィルム50a,50bを熱硬化させ、側面をブチルゴムでシールし、アルミニウムの枠体で固定して、太陽電池モジュール1を得る。
【0033】
以上の方法により、裏面保護シート10、封止用樹脂フィルム50b、太陽電池セル40a、封止用樹脂フィルム50a、透光性基板30を密着させると同時に、太陽電池セル40aを導体層12により電気的に直列に接続して、図4に示す太陽電池モジュール1を得る。
【0034】
上記太陽電池モジュール1では、上記裏面保護シート10を用いるため、長時間使用しても、回路間の不要な短絡、裏面保護シート10と太陽電池セル40aとの接合の剥離、太陽電池セル40aおよび封止層50の劣化が防止されている。そのため、太陽電池モジュール1は耐久性に優れ、出力を長期間にわたって維持できる。
【0035】
<第2の実施形態例>
(裏面保護シート)
本発明の裏面保護シートの第2の実施形態例について説明する。
図5に本実施形態例の裏面保護シートを示す。本実施形態例の裏面保護シート20は、基材である複合材料層21と、複合材料層11の一方の面に設けられた第1の保護層22と、複合材料層21の他方の面に設けられた第2の保護層23とを有する。
本実施形態例における複合材料層21は、第1の実施形態例で使用された複合材料層11と同じものが使用され、第1の保護層22および第2の保護層23は、第1の実施形態例で使用された保護層13と同じものが使用される。
【0036】
本実施形態例の裏面保護シート20においても、第1の実施形態例の裏面保護シート10と同様に、耐候性、耐熱性、耐湿性、寸法安定性に優れ、反りやシワの発生が防止され、しかも高い生産性で製造できる。
【0037】
(裏面保護シートの製造方法)
上記裏面保護シート20を製造する方法について説明する。
まず、プリプレグ21aの一方の面に第1の保護層22を積層し、プリプレグ21aの他方の面に第2の保護層23を積層する。ここで、プリプレグ21aは、第1の実施形態例におけるプリプレグ11aと同じものが使用される。
また、第2の保護層23の積層は、第1の保護層22の積層と同時であってもよいし、第1の保護層22の積層より後であってもよいし、第1の保護層22の積層より前であってもよい。
積層の最中または積層の後、プリプレグ21aを加熱し、プリプレグ21aに含まれる熱硬化樹脂を硬化させて、複合材料層21を形成する。
以上の方法により、複合材料層21に第1の保護層22および第2の保護層23が接着した裏面保護シート20を得ることができる。
【0038】
上述した裏面保護シート20の製造方法では、半硬化状態で接着性を有するプリプレグ21aに第1の保護層22および第2の保護層23を積層するため、接着剤を用いずに第1の保護層22および第2の保護層23を基材である複合材料層21に直接積層できる。したがって、耐候性、耐熱性、耐湿性に優れ、耐久性が高い裏面保護シート10を製造できる。
【0039】
(太陽電池モジュール)
図6に、上記裏面保護シート20を用いた太陽電池モジュールの一実施形態例を示す。この太陽電池モジュール2は、受光側に配置された透光性基板30と、裏面側に配置された裏面保護シート20と、透光性基板30および裏面保護シート20の間に配置された多数の太陽電池セル40b,40b・・・と、太陽電池セル40b,40b・・・を封止する封止層50とを具備する。なお、本実施形態例における透光性基板30、太陽電池セル40bおよび封止層50は、第1の実施形態例の透光性基板30および封止層50と同様のものが使用される。
本実施形態例における太陽電池セル40bは表面側および裏面側に端子部42が設けられ、配線70によって電気的に直列に接続されている。
また、この太陽電池モジュール2における裏面保護シート20は、第2の保護層23が裏面になるように配置されている。
【0040】
この太陽電池モジュール2は、例えば、以下の製造方法により製造される。
すなわち、まず、裏面保護シート20に、封止用樹脂フィルム50b、太陽電池セル40b、封止用樹脂フィルム50a、透光性基板30を積層して積層体を得る。その際、太陽電池セル40b,40b・・・はあらかじめ配線70によって電気的に接続しておく。
次いで、第1の実施形態例と同様に真空ラミネートし、側面をブチルゴムでシールし、アルミニウムの枠体で固定して、太陽電池モジュール2を得る。
【0041】
上記太陽電池モジュール2では、上記裏面保護シート20を用いるため、長時間使用しても、太陽電池セル40bおよび封止層50の劣化が防止されている。そのため、太陽電池モジュール2は耐久性に優れ、出力を長期間にわたって維持できる。
【実施例】
【0042】
本発明の裏面保護シートおよび太陽電池モジュールの実施例を以下に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
厚さ200μmのプリプレグシート(日立化成工業製、GE−N−67N)の両面に、厚さ50μmのポリフッ化ビニルフィルム(デュポン社製、テドラーフィルム)を重ね合わせて、未接着の積層体を得た。
その未接着の積層体の両面の各々に、ステンレス板およびクッション材を配置し、テストプレス機(北川精機製、500mm×500mm型)の熱板間に導入した。その後、真空引きを開始し、真空度が1.5kPaに到達した段階で加圧を開始し、未接着の積層体を圧着させた。その圧着の際の温度は175℃、圧力は2.0MPa、時間は30分間とした。
このように加熱加圧して、複合材料層の両面にポリフッ化ビニルフィルムが積層された裏面保護シートを得た。得られた裏面保護シートは、反りや気泡が見られず良好な仕上がりであった。
【0044】
(実施例2)
プリプレグシート(三菱ガス化学製;CCL−EL190、厚さ150μm)の一方の面に銅箔(日鉱金属製、JTCS箔、厚さ35μm)、他方の面にポリフッ化ビニルフィルム(デュポン社製、テドラーフィルム、厚さ25μm)を重ね合わせて、未接着の積層体を得た。
その未接着の積層体の両面の各々に、ステンレス板およびクッション材を配置し、実施例1で用いたものと同様のテストプレス機の熱板間に導入した。その後、真空引きを開始し、真空度が1.5kPaに到達した段階で加圧を開始し、未接着の積層体を圧着させた。その圧着の際の温度は180℃、圧力は2.0MPa、時間は30分間とした。
このように加熱加圧して、複合材料層の一方の面に銅箔が積層され、他方の面にポリフッ化ビニルフィルムが積層された積層シートを得た。得られた積層シートは、反りや気泡が見られず良好な仕上がりであった。
【0045】
次いで、前記積層シートの銅箔の表面にネガ型ドライフィルム(旭化成製、UFG−255、厚さ25μm)を積層し、さらに目的の回路パターンと同じ開口パターンを有するフィルムマスクを積層した。
次いで、120mJで露光し、0.7質量%炭酸ナトリウム溶液を30秒間スプレーして現像した。これにより、銅箔上にレジストパターンを形成し、水平搬送式エッチングラインにて、塩化第二鉄−塩酸溶液(比重1.4)を用いてエッチング処理した。エッチング温度は50℃、処理時間は40秒、スプレー圧は0.3MPaとした。
次いで、70℃に加熱した3.0質量%の水酸化ナトリウム溶液に1分間浸漬してレジストを剥離させて、銅箔に所定の回路パターンを形成した。
【0046】
次いで、回路パターンを形成した銅箔を有する積層シートの表面にソルダーレジストインキ(太陽インキ製造製、PSR−4000 EG30)を厚さが35μmになるようにスクリーン印刷機により印刷して、複合材料層および導体層の全体を絶縁層で被覆した。
次いで、導体層の太陽電池セルと接合する部分の上の絶縁層を除去するために、80℃で30分間予備乾燥し、フィルムマスクを用いて500mJで片面露光し、1.0質量%炭酸ナトリウム溶液を120秒間スプレーして現像した。その後、150℃で30分間加熱硬化させた。
このようにしてバックコンタクト型太陽電池セルに使用される裏面保護シートを得た。
【0047】
(実施例3)
平盤プレス機のステージ上に厚さ10mmのポリ四フッ化ビニル板を固定し、その上面に銅箔(日本電解製、PBN−10、厚さ18μm)を1枚置いた。次いで、目的の回路パターンを形成可能な形状を有するトムソン刃を用いて打ち抜き加工を行った。その打ち抜き加工では、まず、パターンの間隙や位置決め用のピン孔、アライメントマーク等の細かい形状について行い、その後、太陽電池セルの最小単位に相当する、回路全体の外形について行った。
回路パターンを形成した銅箔はエアー吸着盤を用いてステージから回収した。
【0048】
プリプレグシート(住友ベークライト製、ELC−4765、厚さ200μm)の一方の面にポリフッ化ビニルフィルム(デュポン社製、テドラーフィルム、厚さ25μm)を重ね、プリプレグシートの他方の面に、上記の回路パターンを形成した銅箔を所定の位置に積層して、未接着の積層体を得た。
その未接着の積層体の両面の各々に、ステンレス板およびクッション材を配置し、実施例1で用いたものと同様のテストプレス機の熱板間に導入した。その後、真空引きを開始し、真空度が1.5kPaに到達した段階で加圧を開始し、未接着の積層体を圧着させた。その圧着の際の温度は170℃、圧力は2.0MPa、時間は30分間とした。
このように加熱加圧して、複合材料層の一方の面に銅箔が積層され、他方の面にポリフッ化ビニルフィルムが積層された積層シートを得た。得られた積層シートは、反りや気泡が見られず良好な仕上がりであった。
【0049】
そして、回路上に染み出したプリプレグ由来の樹脂片をバフ研磨(ジャブロ工業製、JPバフ)にて切削除去し、次いで、独立した回路同士を接続するように、スクリーン印刷機により導電性銀インキ(東洋インキ製造製、REXALPHA /RA FS 005)を配線形状に印刷し、180℃で60分間焼成した。
【0050】
上記のようにして得た、回路を形成した銅箔を有する積層シートの表面に、ソルダーレジストインキ(山栄化学製、SSR−671W−9)を厚さが35μmになるようにスクリーン印刷機により印刷して、複合材料層および導体層を絶縁層で被覆した。その際、導体層の太陽電池セルと接合する部分には絶縁層が形成されないようなスクリーン印刷版を用いた。
その後、80℃で15分間予備乾燥した後、150℃で60分間加熱硬化させて、銅箔の太陽電池セルと接合される部分を露出させる絶縁層を形成した。
このようにしてバックコンタクト型太陽電池セルに使用される裏面保護シートを得た。
【0051】
(比較例1)
ポリエステルシート(東レ製、ルミラーS−10、厚さ250μm)の片面にコロナ放電処理を施し、その処理面にウレタン系接着剤(東洋インキ製造製 LIS−073−50)をワイヤーバーにより、塗布量が乾燥状態で約5.0g/mになるよう塗布して塗膜を形成した。次いで、形成された塗膜を90℃で5分間乾燥して接着層を形成し、その接着層にポリフッ化ビニルシート(デュポン社製、テドラーフィルム、50μm)をラミネートした。ラミネートはロールラミネーター(大成ラミネーター製、VA−II−700PH)を用い、ロール温度90℃、ロール圧0.5MPa、ロールスピード0.3 m/分とした。
ポリエステルシートの他方の面についてもコロナ放電処理を施し、接着剤を用いてポリフッ化ビニルシートをラミネートして、未接着の積層体を得た。
この未接着の積層体を40℃で24時間反応させて、裏面保護シートを得た。得られた裏面保護シートは反りや気泡が見られず良好な仕上がりであった。
【0052】
(比較例2)
ポリエステルシート(帝人製、Sグレード、厚さ250μm)の一方の面にコロナ放電処理を施し、その処理面にポリエステル系接着剤(東洋インキ製造製、IS−051)をワイヤーバーにより、塗布量が乾燥状態で約5.0g/mになるよう塗布して塗膜を形成した。次いで、形成された塗膜を90℃で5分間乾燥して接着層を形成し、その接着層に銅箔(日鉱金属製、JTCS箔、厚さ35μm)をラミネートした。ラミネートはロールラミネーター(大成ラミネーター製、VA−II−700PH)を用い、ロール温度100℃、ロール圧0.5MPa、ロールスピード0.3 m/分とした。
ポリエステルシートの他方の面についてもコロナ放電処理を施し、接着剤を用いてポリフッ化ビニルシート(デュポン社製、テドラーフィルム、厚さ50μm)をラミネートして、未接着の積層体を得た。
この未接着の積層体を40℃で24時間反応させて、積層シートを得た。得られた積層シートは反りや気泡が見られず良好な仕上がりであった。
【0053】
次いで、得られた積層シートについて、実施例2と同様にして、銅箔に回路パターンを形成し、絶縁層を設けて、バックコンタクト型太陽電池セルに使用される裏面保護シートを得た。
得られた裏面保護シートはポリエステルシートの収縮により、銅箔側を外側にして大きくカールした。
【0054】
上記実施例1〜3および比較例1,2得られた各裏面保護シートの特性を以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
(接着強度測定)
[条件1]
前処理条件;なし
測定装置;オリエンテック社製テンシロンRTC−1250
チャック間距離;60mm
試験片形状;10mm×100mm×約0.4mm n=5
クロスヘッド速度;5.0mm/分
[条件2]
前処理条件;温度85℃/相対湿度85質量%/時間3,000時間
測定装置、チャック間距離、試験片形状、クロスヘッド速度は条件1と同じ。
[条件3]
前処理条件;温度105℃/相対湿度100質量%/時間192時間
測定装置、チャック間距離、試験片形状、クロスヘッド速度は条件1と同じ。
[条件4]
前処理条件;−40℃→室温→80℃→室温のサイクルを200サイクル
測定装置、チャック間距離、試験片形状、クロスヘッド速度は条件1と同じ。
なお、表1中、「PVF」の欄はポリフッ化ビニルフィルムと複合材料層との接着強度であり、「Cu」の欄は銅箔と複合材料層との接着強度である。
【0055】
(耐エッチング液試験)
試験片形状;100mm×100mm×約0.4mm n=5
薬液;塩化第二鉄〜塩酸溶液 比重1.4
浸漬条件;50℃/120分
変色については目視観察により評価した(なし、軽微、あり)。
剥離については顕微鏡観察により評価した(なし、軽微、あり)。
【0056】
(耐熱性試験)
試験片形状;100mm×100mm×約0.4mm n=5
前処理条件;180℃/120分
反り測定;水平盤上に基板を置き、最大高さを測定
収縮測定;試験片の寸法変化から算出
反りおよび収縮が小さい程、耐熱性に優れる。
【0057】
(絶縁信頼性試験)
絶縁信頼性は実施例2,3および比較例2の裏面保護シートについて評価した(n=4)。
回路パターン;櫛型電極パターン
櫛型寸法;線幅/間隙=550/50、550/100、550/400、550/600の5タイプ
処理条件;温度135℃/相対湿度85質量%/時間192時間
印加電圧;1.0V
絶縁性判断;電気抵抗値が10−6Ω以上で絶縁とした。
なお、表1では、「絶縁性を有していたもの/4」で評価した。すなわち、「4/4」で最も絶縁信頼性に優れる。また、その右横には処理時間を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、接着剤を用いていない積層体である実施例1〜3の裏面保護シートでは、温度85℃/相対湿度85質量%/3,000時間の処理後の接着強度の低下が少なかった。また、複合材料層はポリエステル基材のように加水分解や結晶化が起きないため、温度105℃/相対湿度100質量%/192時間の処理後においても劣化しなかった。したがって、実施例1〜3の裏面保護シート耐久性に優れていた。
また、接着剤を使用しないことにより、エッチング液のような強酸に対する腐食性にも優れ、耐候性に優れていた。
また、複合材料層は耐熱性と寸法安定性に優れるため、熱処理後の反りや収縮が少なかった。さらに、接着剤を使用せずに積層を真空中で行ったため、接着界面に気泡がなく、絶縁信頼性に優れていた。
これに対し、ポリエステル基材および接着剤を用いた比較例1,2の裏面保護シートでは、耐熱性が低く、絶縁信頼性も低かった。したがって、比較例1,2の裏面保護シートは耐久性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の裏面保護シートは太陽電池モジュールの裏面の保護に用いられる。特に、回路パターンを有する導体層が複合材料層に積層されたものについては、バックコンタクト方式の太陽電池セル同士を電気的に直列に接続することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1,2 太陽電池モジュール
10,20 裏面保護シート
11,21 複合材料層
11a.21a プリプレグ
30 透光性基板
40a,40b 太陽電池セル
41,42 端子部
50 封止層
50a,50b 封止用樹脂フィルム
60 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材および熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材料層と、該複合材料層の一方に設けられた第1の機能層(I)と、前記複合材料層の他方の面に設けられた第2の機能層(II)とを有することを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
【請求項2】
前記第1の機能層(I)が、電気伝導性を有する導体層であり、
前記第2の機能層(II)が、耐候性を有する保護層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項3】
電気伝導性を有する導体層が金属箔を有することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項4】
前記金属箔がパターン加工されていることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項5】
前記金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項3または4に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項6】
前記第1の機能層(I)及び前記第2の機能層(II)が共に、耐候性を有する保護層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項7】
前記耐候性を有する保護層が、フッ素含有樹脂を含む層であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項8】
繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸または塗布し、乾燥させて得たプリプレグの一方の面に第1の機能層(I)を積層し、他方の面に第2の機能層(II)を積層することを特徴とする太陽電池用裏面保護シートの製造方法。
【請求項9】
受光面側に配置された透光性基板と、裏面側に配置された裏面保護シートと、透光性基板および裏面保護シートの間に配置された太陽電池セルと、太陽電池セルを封止する封止層とを具備する太陽電池モジュールであって、
裏面保護シートが、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シートであることを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61151(P2011−61151A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212232(P2009−212232)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】