説明

太陽電池系統の配線状態確認方法

【課題】 本発明は、太陽電池系統の配線状態確認を、外部条件に左右されず、安定的かつ効率的に行えるようにすることを提供することができる太陽電池系統の配線状態確認方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 施工面に設置された太陽電池モジュール1〜16を含む太陽電池系統17の配線状態が正常か否かを確認する方法であって、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19に電圧を印加して太陽電池モジュール1〜16を発熱させ、その温度を計測することにより配線状態を確認する構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施工された太陽電池系統の配線状態が正常か否かを確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池系統の配線状態確認方法に関する技術は、特開2002−329875号公報(特許文献1)に示されている。通常、複数の太陽電池モジュールが正常に配線されているか否かの確認は、複数の太陽電池モジュールが配線された太陽電池系統毎の電圧を測定することにより行われている。しかし、特許文献1でも述べられているように、この方法による配線状態確認は、太陽電池系統が直列接続のみで構成されている場合には、未接続があれば必ず判明するが、太陽電池系統が並列接続や直並列混在の接続で構成されている場合には、未接続があったとしても必ずしも判明しないという問題がある。そこで、この問題を解決する手段として特許文献1では、基準太陽電池モジュールを設置し、太陽電池系統と基準太陽電池モジュールの双方に太陽光を当てて発電させ、双方の電流を比較することにより未接続部を見つけ出す方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−329875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法には、以下の問題がある。
【0005】
第1には、日射量が不足すると実施できないことである。施工の工程は通常、日単位で組まれているため、配線状態確認の作業は施工を完了する日没前後の時間帯に行うことが多い。しかしながら、この配線状態確認方法は太陽光を利用しているため、日没前後の時間帯には日射量不足により実施することができず、以後の工程に影響を及ぼすことがある。
【0006】
第2には、日射量が十分でも、太陽電池モジュールに影がかかっていると実施できないことである。太陽電池モジュールが建物の屋根面に施工されるとき、当該建物の周囲には足場が設置される。その足場の高さは安全のため屋根の軒高さよりも高くなっている。そのため、太陽高度、足場の高さ、屋根面における太陽電池モジュールの位置の関係によっては、太陽光による足場の影が太陽電池系統の太陽電池モジュールにかかることがある。このとき、配線状態確認のために、基準太陽電池モジュールと太陽電池系統の発電による電流を比較し、太陽電池系統の電流が接続数から考えて「低い」という結果が得られた場合、その原因が未接続によるものなのか足場の影の影響によるものなのか判断できない。
【0007】
第3には、未接続の箇所を推定できないことである。配線状態確認により、未接続状態を見つけ出すことができた場合でも、太陽電池系統内の未接続の箇所を特定することはできないため、太陽電池系統内の全ての配線材に未接続、誤接続がないかを点検しなければならず、非効率である。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、太陽電池系統の配線状態確認を、外部条件に左右されず、安定的かつ効率的に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の発明の太陽電池系統の配線状態確認方法は、施工面に設置された太陽電池モジュールを含む太陽電池系統の配線状態が正常か否かを確認する方法であって、前記太陽電池系統の接続ケーブルに電圧を印加して前記太陽電池モジュールを発熱させ、その温度を計測することにより配線状態を確認することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の発明の太陽電池系統の配線状態確認方法は、第1の発明の温度の計測に、遠隔温度測定器を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池系統の配線状態確認を、外部条件に左右されず、安定的かつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(a)は、太陽光発電システムの模式図であり、施工面に設置された太陽電池モジュール1〜16を含む1以上の太陽電池系統17が、接続箱24を経由してパワーコンディショナ25に電気的に接続され、さらに分電盤26を経由して、建物内の負荷20、および、電力会社の商用交流電源に電気的に接続されている。太陽電池モジュールで発電される直流電力はパワーコンディショナ25で交流に変換され、建物内の負荷20で消費されたり電力会社に売電されたりする。なお、接続箱24とパワーコンディショナ25が一体となっている場合もある。
【0013】
本発明では、図1(b)に示すような構成で、太陽電池系統17の配線状態が正常か否かの確認を行った後、図1(a)に示すような構成の太陽光発電システムにする。
【0014】
本発明の太陽電池系統の配線状態確認方法は、事前に想定した太陽電池モジュール1〜16の発熱状態と図1(b)に示すように、配線状態確認用電源23から太陽電池系統17の接続ケーブル18,19に電圧を印加した後の太陽電池モジュール1〜16の発熱状態とを比較する。そのため、太陽電池モジュール1〜16の出力ケーブル、接続ケーブル18,19の未接続、誤接続、太陽電池モジュール1〜16の出力ケーブル、接続ケーブル18,19の断線の箇所や故障している太陽電池モジュール1〜16の確認にあたり、太陽電池モジュール1〜16の直列接続、並列接続、直並列が混在する接続のいずれの場合にも外部条件に左右されず、安定的かつ効率的に配線状態を確認することができる。
【実施例】
【0015】
実施例として、図2に示すような太陽電池モジュール1〜16の直並列が混在する2直列8並列の太陽電池系統17を挙げる。なお、太陽電池モジュールの数、接続の直列数や並列数は、これに限るものではない。また、太陽電池系統17が2以上の場合、それぞれの太陽電池系統17で、太陽電池モジュールの数や、接続の並列数が違っていても構わない。以下、配線状態確認作業について説明する。
【0016】
図3に示すように、施工面に太陽電池モジュール1〜16を設置し、太陽電池系統17の配線を完了した後、以下の作業を行う。
【0017】
(配線状態確認作業A)
1.各太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定する。
【0018】
2.図1(b)に示すように、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに配線状態確認用電源23を接続し、太陽電池モジュール1〜16を発熱させた後、各太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定する。配線状態確認用電源23の種類は、直流、交流のいずれでも良い。
【0019】
3.各太陽電池モジュール1〜16が均等に発熱していることを確認する。
【0020】
4.配線状態確認用電源23をはずし、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aを接続箱24へ接続する。
【0021】
本発明の配線状態確認方法は太陽光を利用しないため、日射量の少ない日没前後の時間帯や、日射のない夜間の時間帯でも実施することができる。
【0022】
各太陽電池モジュール1〜16の表面温度の測定は、一般的な接触式の温度計を使用し、太陽電池モジュール1〜16上で行っても良いが、この場合、測定毎に太陽電池モジュール1〜16の上を移動していく必要がある。そこで、放射温度計など、非接触式の遠隔温度測定器を使用すれば、太陽電池モジュール1〜16の表面から離れた場所からでも太陽電池モジュール1〜16の温度測定ができるので効率が良い。さらには、例えば、サーモカメラなどの非接触式の遠隔温度測定器で施工面全体を撮影し、複数の太陽電池モジュール1〜16の表面温度を色分けされた温度分布として視覚的に確認するようにすれば効率はさらに良くなる。
【0023】
次に、配線状態と太陽電池モジュール1〜16の表面温度の状態について説明する。
【0024】
図3、図5、図7、図9中では、電圧印加前の表面温度を「白」とし、次いで表面温度が高い状態を「灰」、さらに表面温度が高い状態を「黒」で示す。
【0025】
図2は、正常に配線された太陽電池系統17である。太陽電池モジュール1〜16表面の温度が均等であり、太陽電池モジュール1〜16の一部に影がかかっていない状態で、この太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに電圧を印加したところ、図3のように全ての太陽電池モジュール1〜16の温度が均等となった。
【0026】
図4は、接続ケーブル19のコネクタ19bと太陽電池モジュール5の出力ケーブルのコネクタ5aを未接続状態とした太陽電池系統17である。この太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに電圧を印加したところ、太陽電池モジュール1〜16表面の温度状態は図5のように2枚の太陽電池モジュール5,6が発熱しない状態となった。これは、当該2枚の太陽電池モジュール5,6に電圧が印加されないためと考えられる。また、接続ケーブル19のコネクタ19bと太陽電池モジュール5の出力ケーブルのコネクタ5a、太陽電池モジュール6の出力ケーブルのコネクタ6aと太陽電池モジュール5の出力ケーブルのコネクタ5b、接続ケーブル18のコネクタ18bと太陽電池モジュール6の出力ケーブルのコネクタ6bの内、少なくとも1箇所以上未接続状態とした場合も同じ結果になった。
【0027】
図6は、接続ケーブル18,19のそれぞれのコネクタ18c,18d、19c,19dを未接続状態とした太陽電池系統17である。この太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに電圧を印加したところ、太陽電池モジュール1〜16表面の温度状態は図7のように8枚の太陽電池モジュール1〜8が発熱しない状態となった。これは、当該8枚の太陽電池モジュール1〜8に電圧が印加されないためと考えられる。また、接続ケーブル18,19のそれぞれのコネクタ18c,18d、19c,19dの内、少なくとも1箇所以上未接続状態とした場合も同じ結果になった。
【0028】
図8は、太陽電池モジュール5の出力ケーブルのコネクタ5aに接続されるはずの接続ケーブル19のコネクタ19bと太陽電池モジュール6の出力ケーブルのコネクタ6aとを誤接続状態とさせた太陽電池系統17である。この太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに電圧を印加したところ、太陽電池モジュール1〜16表面の温度状態は図9に示すように1枚の太陽電池モジュール5が発熱せず、1枚の太陽電池モジュール6が、より高い温度で発熱する状態となった。これは、発熱していない太陽電池モジュール5には電圧が印加されず、より高い温度で発熱している太陽電池モジュール6には2倍の電圧が印加されたためと考えられる。
【0029】
これらの実験結果からわかるように、太陽電池系統17が正常に配線されていたときに太陽電池モジュール1〜16間の表面温度が均等になる場合には、太陽電池系統17に未接続や誤接続があると太陽電池モジュール1〜16の間の表面温度は均等でない状態となる。
【0030】
したがって、太陽電池系統17に電圧を印加して太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定することによって配線が正常な状態か否かを確認でき、また、太陽電池モジュール1〜16の出力ケーブル、接続ケーブル18,19の未接続や誤接続があるときには、表面温度の状態からその箇所を推定できるのである。
【0031】
また、太陽電池モジュール1〜16の一部に影がかかっていて電圧印加前の温度分布が既に一様でない場合でも、前記配線状態確認作業Aに替えて、以下の配線状態確認作業Bまたは配線状態確認作業Cにより配線状態確認ができる。ここで、1枚の太陽電池モジュール1〜16の中に影がかかっている部分と影がかかっていない部分がある場合、温度の測定はそれぞれ行うと良い。
【0032】
(配線状態確認作業B)
1.各太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定する。
【0033】
2.図1(b)に示すように、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに配線状態確認用電源23を接続し、太陽電池モジュール1〜16を発熱させた後、各太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定する。配線状態確認用電源23の種類は、直流、交流のいずれでも良い。
【0034】
3.発熱後の温度から発熱前の温度を差し引いた温度上昇が、各太陽電池モジュール1〜16間で均等であることを確認する。
【0035】
4.配線状態確認用電源23をはずし、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aを接続箱24に接続する。
【0036】
前記配線状態確認作業Bは、発熱前後の温度を比較するため、太陽電池モジュール1〜16の一部に影がかかっていて、発熱前の温度分布が一様でなかったとしても、配線状態確認ができる。
【0037】
(配線状態確認作業C)
1.各太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定する。
【0038】
2.初期温度、外気温、日射量、印加電圧、印加時間等の諸条件から、発熱後の表面温度を計算する。
【0039】
3.図1(b)に示すように、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aに配線状態確認用電源23を接続し、太陽電池モジュール1〜16を発熱させた後、各太陽電池モジュール1〜16の表面温度を測定する。配線状態確認用電源23の種類は、直流、交流のいずれでも良い。
【0040】
4.計算値と発熱後の温度とを比較する。
【0041】
5.配線状態確認用電源23をはずし、太陽電池系統17の接続ケーブル18,19の末端のコネクタ18a,19aを接続箱24に接続する。
【0042】
前記配線状態確認作業Cは、発熱後の温度の計算値と実測値を比較するため、太陽電池モジュール1〜16の一部に影がかかっていて、発熱前の温度分布が一様でなかったとしても、配線状態確認ができる。
【0043】
前記配線状態確認作業A、配線状態確認作業B、配線状態確認作業Cは、太陽電池モジュール1〜16の出力ケーブル、接続ケーブル18,19の未接続、誤接続の場合であるが、太陽電池モジュール1〜16の出力ケーブル、接続ケーブル18,19が断線している場合は太陽電池モジュール1〜16の出力ケーブル、接続ケーブル18,19が未接続の場合の考え方を適用することができる。また、太陽電池モジュール1〜16の何れかが故障している場合には、その太陽電池モジュールは全く発熱しないことや、異常な発熱状態となることがあるため、故障している太陽電池モジュール1〜16を効率的に推定することができる。
【0044】
また、前記配線状態確認作業A、配線状態確認作業B、配線状態確認作業Cのいずれにおいても、接続箱24とパワーコンディショナ25の間の配線材に電圧を印加すれば、接続箱24に接続されている全ての系統の接続ケーブルに電圧を印加することにより全ての系統の配線状態確認作業を同時に行うことができ、より効率的である。
【0045】
本発明の方法は、施工中の配線状態確認だけでなく、竣工後の点検やメンテナンスの際の、太陽電池モジュールの出力ケーブル、接続ケーブルの断線調査や、故障している太陽電池モジュールの調査にも用いることができる。
【0046】
配線状態確認は接続ケーブル、接続箱24とパワーコンディショナ25の間の配線材等に電圧を印加し、太陽電池モジュールの表面温度を測定することにより行う。表面温度の測定は、長いポールの先にサーモカメラを取り付け、屋根面を撮影すれば、足場がなくても容易に行える。本発明の方法で、太陽電池モジュールの出力ケーブル、接続ケーブルの断線が生じている箇所や、故障している太陽電池モジュールを推定できるため、太陽電池モジュールの出力ケーブル、接続ケーブルや太陽電池モジュールの交換作業も容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の活用例として、施工された太陽電池系統の配線状態が正常か否かを確認する方法に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は配線状態確認後の太陽光発電システムの実施形態を示す図(単線結線図)、(b)は本発明の配線状態確認方法の実施形態(電圧印加)を示す図(単線結線図)である。
【図2】実験例1の配線状態を示す図である。
【図3】実験例1の温度状態を示す図である。
【図4】実験例2の配線状態を示す図である。
【図5】実験例2の温度状態を示す図である。
【図6】実験例3の配線状態を示す図である。
【図7】実験例3の温度状態を示す図である。
【図8】実験例4の配線状態を示す図である。
【図9】実験例4の温度状態を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1〜16…太陽電池モジュール
5a,5b,6a,6b…コネクタ
17…太陽電池系統
18,19…接続ケーブル
18a,19a…コネクタ
18b,19b…コネクタ
18c,19c…コネクタ
18d,19d…コネクタ
20…負荷
23…配線状態確認用電源
24…接続箱
25…パワーコンディショナ
26…分電盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面に設置された太陽電池モジュールを含む太陽電池系統の配線状態が正常か否かを確認する方法であって、前記太陽電池系統の接続ケーブルに電圧を印加して前記太陽電池モジュールを発熱させ、その温度を計測することにより配線状態を確認することを特徴とする太陽電池系統の配線状態確認方法。
【請求項2】
前記温度の計測に、遠隔温度測定器を用いることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池系統の配線状態確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−152332(P2009−152332A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328132(P2007−328132)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】