説明

太陽電池裏面封止シート

【課題】
対封止材密着力、保存安定性、生産性及び耐候性にも優れる太陽電池裏面封止シート及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】
フッ素系樹脂及び無機系顔料を含む易接着性樹脂層が少なくとも片面に形成された基材フィルム用いた太陽電池裏面封止シート、および太陽電池裏面封止シートの易接着性樹脂層と、太陽電池モジュールのシリコンセル充填材層面とを接着してなる太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたる過酷な屋外環境下での使用に耐え得る対封止材密着力や耐環境性に優れた太陽電池裏面封止シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、石炭をはじめとする化石燃料の枯渇が危ぶまれ、これらの化石燃料により得られる代替エネルギーを確保するための開発が急務とされている。このため原子力発電、水力発電、風力発電、太陽光発電等の種々の方法が研究され、実際の利用に及んでいる。太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換することが可能な太陽光発電は、半永久的で無公害の新たなエネルギー源として実用化されつつあり、実際に利用される上での価格性能比の向上が目覚しく、クリーンなエネルギー源として非常に期待が高い。
【0003】
太陽光発電に使用される太陽電池は、太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、シリコンなどに代表される半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子を直列、並列に配線し、20年程度の長期間にわたって素子を保護するために種々のパッケージングが施され、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットは太陽電池モジュールと呼ばれ、一般に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性樹脂からなる充填材で間隙を埋め、裏面を封止シートで保護した構成となっている。熱可塑性樹脂からなる充填材としては、透明性が高く、耐湿性にも優れているという理由でエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA樹脂)が用いられることが多い。一方、裏面封止シートには、機械強度、耐候性、耐熱性、耐水性、耐化学薬品性、光反射性、水蒸気遮断性、EVA樹脂に代表される充填材との熱接着性、意匠性、最外層の端子ボックス取り付け用シリコーン系樹脂との密着力といった特性が要求されるだけではなく、紫外線光に暴露されることから耐光性に優れることが要求される。
【0004】
従来から用いられている裏面封止材用フィルムとしては、白色のポリフッ化ビニルフィルム(デュポン(株)、商品名:テドラー(登録商標))が例示でき、該フィルムでポリエステルフィルムをサンドイッチした積層構成の裏面封止材は当該用途で幅広く用いられている。また、耐候性、ガスバリア性に優れたポリエステル系フィルムを積層した構成も例示できる(特許文献1)。一般的にポリエチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステルフィルムと封止材用樹脂として最も汎用的に用いられるエチレンービニルアセテート共重合体樹脂との接着性はあまり高くない。そこで、接着強度向上の対策としてエチレンービニルアセテート共重合体系充填材層との接着性を改善するために、スチレン・オレフィン共重合体樹脂の熱接着層(ホットメルト接着剤層)を設けたものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−026354号公報([0008]〜[0010]段落)
【特許文献2】特開2003−060218号公報([0008]〜[0010]段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホットメルト系の熱接着層で良好な接着強度を得るためには、3μm程度の厚さが必要である。そのため、十分な乾燥が必要なことからコーティング時の速度が上げられない。また、ホットメルト系の樹脂で形成した塗膜の表面は比較的粘着性が高いため、コートしたフィルムロールが、夏期に層間で疑似接着(ブロッキング)してしまう問題もある。さらに、シリコンセル間を透過する光に曝されるため、裏面封止シートが光劣化し、黄変などの不具合を生じることもある。
前記のポリフッ化ビニルフィルムでポリエステルフィルムを挟んだ構成の裏面封止シートにおいては、封止材層との密着力や耐光性にも優れるため、このような課題はないが、高価であるために太陽電池モジュールの低価格化の点でも障害となる。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、太陽電池裏面封止シートとして必要とされるエチレンービニルアセテート共重合体系充填材層との十分な接着強度、フィルムロールの保存安定性、生産性および太陽電池モジュール受光面側からの光照射に対する耐候性に優れた太陽電池裏面封止シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような構成を採用する。すなわち、本発明の太陽電池裏面封止シートは、
(1)
フッ素系樹脂及び無機系顔料を含む易接着性樹脂層が少なくとも片面に形成された基材フィルム用いた太陽電池裏面封止シート、
(2)
易接着樹脂層が脂肪族系ポリイソシアネート樹脂、脂環族系ポリイソシアネート樹脂及び芳香脂肪族系ポリイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート樹脂を含み、フッ素系樹脂がテトラフロロエチレンとイソシアネート基との架橋点となる水酸基含有モノマーを繰り返し構造中に含む共重合樹脂である(1)に記載の太陽電池裏面封止シート、
(3)
易接着性樹脂層とは反対側に紫外線吸収剤を含む耐候・紫外線遮断性樹脂層を少なくとも1層有する(1)に記載の太陽電池裏面封止シート、
(4)
無機系顔料が酸化チタン、カーボンブラックからなる(1)に記載の太陽電池裏面封止シート、
(5)
フッ素系樹脂中の水酸基当量(A)と易接着性樹脂層中のポリイソシアネート系樹脂中のイソシアネート基当量(B)の比A/Bが10/1〜10/7の配合比である(1)に記載の太陽電池裏面封止シート、
(6)
(1)〜(5)に記載の太陽電池裏面封止シートの易接着性樹脂層と、太陽電池モジュールのシリコンセル充填材層面とを接着してなる太陽電池モジュール、
である。
【0008】
また、本発明の太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池裏面封止シートの易接着性樹脂層と、太陽電池モジュールのシリコンセル充填材層面とを接着してなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期にわたる過酷な屋外環境下での使用に耐え得る対封止材密着力、保存安定性、生産性及び耐候性にも優れた易接着性樹脂層を有する太陽電池裏面封止シートが得られる。
【0010】
また、本発明の太陽電池裏面封止材シートを用いれば、充填材層との密着力、耐候性に優れた太陽電池モジュールが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[太陽電池用裏面封止シート]
本発明の太陽電池裏面封止シートは、フッ素系樹脂及び無機系顔料を含む易接着性樹脂層が少なくとも片面に形成された基材フィルムを、太陽電池モジュール構造において非受光面側封止材層と接する側の面に配すことで、従来よりも優れた対封止材密着力、保存安定性、生産性及び耐候性が得られるものである。
【0012】
[基材フィルム]
本発明の太陽電池裏面封止シートにおいて、非受光面側封止材層と接する側の面に配す易接着性樹脂層を形成する際の基材としては種々の樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂フィルムやポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂フィルム、これらの樹脂を混合した樹脂フィルムが挙げられる。中でも強度、寸法安定性、熱安定性に優れていることからポリエステル樹脂フィルムが好ましく、さらに安価であることからPETやPEN等のポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。また、ポリエステル系樹脂は共重合体であっても良く、共重合成分としては、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体のジカルボン酸成分などを使用することができる。
【0013】
本発明の太陽電池裏面封止シートは外気に直接さらされる環境下に用いられる観点から基材フィルムとしては耐加水分解性に優れる樹脂フィルム、すなわち耐加水分解性フィルムであることが好ましい。通常、ポリエステル樹脂フィルムはモノマーを縮合重合させたいわゆるポリマーを原料として製膜されるものであるが、モノマーとポリマーの中間に位置づけられるオリゴマーが1.5〜2質量%程度含まれている。オリゴマーの代表的なものは環状三量体であり、その含有量が多いフィルムは屋外などの長期暴露において機械的強度の低下や、雨水等による加水分解の進行に伴う亀裂、材破などを生じる。これに対して耐加水分解性フィルムにおいては、固相重合法で重合して得られる環状三量体の含有量が1.0質量%以下のポリエステル樹脂を原料としてポリエステル樹脂フィルムを製膜することで、高温高湿度下での加水分解を抑制することが可能であり、さらに耐熱性及び耐候性にも優れたフィルムが得られる。上記環状三量体含有量の測定は、例えばポリマー100mgをオルトクロロフェノール2mlに溶解させた溶液を用いて、液体クロマトグラフィーにて測定することで樹脂重量に対する含有量(重量%)を測定する方法で求められる。
【0014】
また、太陽電池裏面封止材シートを構成する樹脂フィルムには、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、充填剤、着色顔料等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加した樹脂フィルム等も用いることができる。
【0015】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂フィルム、これらの樹脂を混合した樹脂フィルムに白色顔料を練り込んだ樹脂原料を製膜したフィルムが挙げられる。白色フィルムは、バックシートまで入射してきた光を反射させて半導体素子におけるエネルギー変換を補助する目的で用いられ、セルに近い層に配されるのが好ましい。基材フィルムとして好ましく用いられる白色フィルムは、太陽光を反射させ発電効率を向上させる為に使用する。白色フィルムは、好ましくは、波長λ=550nmの反射率が、30%以上のフィルムであり、より好ましくは、反射率が40%以上のフィルム、さらに好ましくは、反射率が50%以上のフィルムである。中でも、強度、寸法安定性、熱安定性に優れていることからポリエステル樹脂フィルムが好ましく、さらに安価であることからPETやPEN等のポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。ポリエステル系樹脂フィルムを構成するポリエステル系樹脂は、その構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレートや、その構成単位の80モル%以上がエチレンナフタレートであるポリエチレンナフタレートや、その構成単位の80モル%以上がポリ乳酸であるポリ乳酸フィルム等で代表されるが、特に限定されない。また、ポリエステル系樹脂は共重合体であっても良く、共重合成分としては、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体のジカルボン酸成分などを使用することができる。
【0016】
白色顔料としては、酸化チタンや酸化亜鉛を利用することができ、混錬することで白色度が80%以上、不透明度が80%以上の白色樹脂フィルムとする。
また、白色樹脂フィルムには、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加した樹脂フィルム等も用いることができる。
【0017】
上記の太陽電池裏面封止材用の樹脂フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、封止シートの耐電圧特性、コスト等を勘案すると、25〜250μmの範囲が好ましい。
【0018】
また、基材フィルムには水蒸気バリア性を付与する目的で蒸着法等により少なくとも一層の無機酸化物層が形成されている水蒸気遮断性フィルムを用いても良い。本発明における「水蒸気遮断性フィルム」とはJIS K7129(2000年版)に記載のB法にて測定される水蒸気透過率が5g/(m・day)以下の樹脂フィルムである。水蒸気遮断性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂フィルムやポリプロピレンなどのオレフィン系フィルムの少なくとも一方の表面に、蒸着法等により少なくとも一層の金属薄膜層や無機酸化物層を設けたフィルムが挙げられるが、太陽電池用裏面封止材としては、電気絶縁性が高いことが要求されるため、導電性層である金属薄膜層ではなく、無機酸化物層の方が好ましい。基材フィルムの中では、強度、寸法安定性、熱安定性に優れていることからポリエステル樹脂フィルムが好ましく、さらに安価であることからPETやPEN等のポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。ポリエステル系樹脂フィルムを構成するポリエステル系樹脂は、その構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレートや、その構成単位の80モル%以上がエチレンナフタレートであるポリエチレンナフタレート等で代表されるが、特に限定されない。また、ポリエステル系樹脂は共重合体であっても良く、共重合成分としては、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体のジカルボン酸成分などを使用することができる。蒸着等により無機酸化物層が設けられたフィルムのガスバリア性は、少なくとも基材であるポリエステル系樹脂フィルムの熱寸法安定性に起因するため、ポリエステル系樹脂フィルムは二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0019】
上記樹脂フィルムの厚さは、無機酸化物層を形成する時の安定性やコスト等の理由から、好ましくは1〜100μmの範囲であり、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、特に好ましくは10〜30μm程度が実用的である。
【0020】
本発明において形成される無機酸化物層を構成する無機酸化物としては、金属酸化物および金属窒化酸化物等を例示することができる。また、無機酸化物層は、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等で形成することができる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式が好ましい。無機酸化物層を構成する金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム合金および酸化珪素等を例示することができ、また金属窒化酸化物としては、酸化窒化珪素等を例示することができる。特に、水蒸気遮断性および生産効率の点などから、酸化アルミニウム、酸化珪素および酸化窒化珪素などの無機酸化物やこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0021】
無機酸化物層の膜厚は、用いられる無機物の種類や構成により適宜選択されるが、一般的には2〜300nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜50nmの範囲である。膜厚が300nmを超えると、特に金属酸化物層の場合にはそのフレキシビリティ(柔軟)性が低下し、製膜後(後加工工程等において)の折り曲げ、引っ張りなどの外力で、薄膜に亀裂やピンホール等を生じる恐れがあり、水蒸気遮断性が著しく損なわれることがある。また、無機物層の形成スピードが低下するため、生産性を著しく低下させることがある。一方、2nm未満の膜厚では、均一な膜が得られにくく、さらには膜厚が十分でないことがあり、水蒸気遮断性の機能を十分に発現することができないことがある。
【0022】
さらに、樹脂フィルムには必要に応じて、例えば、コロナ放電やプラズマ放電等の放電処理、あるいは酸処理等の表面処理を行ってもよい。
【0023】
[易接着性樹脂層]
本発明における基材フィルムに積層する易接着性樹脂層は、(1)フッ素系樹脂 と(2)無機顔料 とで構成されている。易接着性樹脂層は太陽電池モジュールを形成する際にエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)シートなどに代表される封止材層と熱圧着工程で密着する必要があり、またその密着強度を長期に渡り屋外で曝露される環境下でも維持する必要がある。従って、易接着層を形成する樹脂は耐候性を有する樹脂が好ましい。特に太陽電池モジュール前面から入射した光線のうち、セル間を抜けて封止材層及び裏面封止材層に到達する光に対して、光劣化反応を生じない耐性を示す樹脂を選定することが、長期に渡り密着性能を安定に維持するためには必要である。一般に、樹脂層の耐光性を向上させる手法としては、有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤を単独で、あるいは複数種を混合してバインダー樹脂に混ぜ、さらに光により励起されるラジカルを失活させるメカニズムによって光安定性を増す目的で光安定化剤(HALS)を併用する。しかし、バインダー樹脂に紫外線吸収剤や光安定化剤を後添加して形成した樹脂層では、高温加湿環境下、あるいは紫外線受光に伴い、紫外線吸収剤や光安定化剤が塗膜中から塗膜表面にブリードアウトし、ぬれ性、塗膜表面の密着力などが変化するだけでなく、当初発現していた紫外線光カット性能が失われるといった不具合を生じやすい。これに対して、本発明ではポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などと比較して、極めて耐光性に優れるフッ素系樹脂をバインダー樹脂として用いることで、上記の課題の解決を図った。またフッ素系樹脂は難燃性にも優れるため、太陽電池裏面封止シート用フィルムの難燃性を向上させる効果もある。また基材フィルムとの密着力向上、あるいは本発明の太陽電池裏面封止シート用フィルムを用いた太陽電池裏面封止シートは、太陽電池モジュール製造工程において、高温処理に曝されることから塗膜の耐熱性向上を目的に、適切な架橋構造を導入可能なようにフッ素系樹脂に硬化性の官能基を導入した樹脂が好ましい。
【0024】
フッ素系樹脂に硬化性を与える官能基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基などが挙げられ、樹脂の製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択される。中でも、硬化反応性が良好な点から水酸基、シアノ基、シリル基が好ましく、特に樹脂の入手が容易な点や反応性が良好な点から水酸基が好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基含有単量体を共重合することによりフッ素系樹脂に導入される。
【0025】
水酸基含有単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などが挙げられる。これらの中でも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。他の水酸基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどが例示できる。
【0026】
硬化性官能基が導入されるフッ素系樹脂としては、構成単位の観点から、例えばパーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系樹脂が挙げられる。具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはTFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、さらにはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0027】
共重合可能な他の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類、ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0028】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系樹脂が、顔料分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0029】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系樹脂としては、例えばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などが挙げられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などが好ましい。TFE系の硬化性樹脂塗料としては、例えばダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズなどが例示できる。
【0030】
本発明における樹脂層の厚みは0.2〜10μmが好ましく、さらに好ましくは1〜5μmである。この樹脂層を塗布方法により形成する場合、樹脂層の厚みが0.2μm未満であると、塗工時にはじきや膜切れといった現象を生じ易く、均一な塗膜を形成し難いために、基材フィルム及び封止材層に対する密着力、何より耐候性が十分に発現しない場合がある。一方、樹脂層の厚みが10μmを越えると、耐候性は十分発現するが、塗工方式に制約を生じる、生産コストが高くなる、搬送ロールへの塗膜粘着やそれに伴う塗膜の剥がれ等を生じ易くなるなどの点が懸念される。
【0031】
本発明における樹脂層を塗布用法により形成するためのコーティング液の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールおよび水等を例示することができ、該コーティング液の性状としてはエマルジョン型および溶解型のいずれでも良い。
【0032】
樹脂層を基材フィルム上に形成する方法は特に制限されるべきものではなく、公知のコーティング手法を用いることができる。コーティング手法としては、種々の方法を適用することができ、例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法およびグラビアロールコーティング法等や、これらを組み合わせた方法を利用することができる。中でも、グラビアロールコーティング法は、コーティング層形成組成物の安定性を増す理由で好ましい方法である。
【0033】
[着色顔料]
本発明において用いる無機系顔料は、紫外線カットという目的で用いる。また同時に裏面封止シートの最内層、つまり太陽電池モジュールの前面から見た場合、セル間から見える裏面封止シートの外観の色調を調色する目的もある。現在、太陽電池用裏面封止シートの外観は白色や黒色が主流であり、これらの顔料自体も特定の波長の光線を吸収及び/又は反射することから、基材シートを保護するという効果が得られる。また、太陽電池モジュール内の電気配線パターンなどの設計パターンを目隠しできるという効果もある。
【0034】
白色顔料としては、耐紫外線性を有する酸化チタンが好ましい。発色の観点から、その数平均粒子径は0.1〜1.0μmが好ましく、フッ素系樹脂に対する分散性やコストの観点からより好ましくは0.2〜0.5μmである。
【0035】
黒色顔料としては、無機顔料、有機顔料等の各種着色顔料を使用できるが、汎用性、価格、発色性能、また耐紫外線性の観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの数平均粒子径は、発色の観点から0.01〜0.5μmが好ましく、フッ素系樹脂に対する分散性やコストの観点からより好ましくは0.02〜0.1μmである。
【0036】
着色顔料の配合量に関しては、発色させたい色調の設計に合わせて適宜調整すれば良い。ただし、顔料配合量が少なすぎる場合には意匠性に優れた色調外観が得られないこと、紫外線遮断性能が不十分になること、逆に配合量が多すぎる場合にはコストが高くなること、樹脂層の硬度が大幅に向上すること、対封止材密着力の低下(密着力不良)を生じやすくなること、顔料が塗膜表面にブリードアウトするなどの懸念がある。
【0037】
上記の理由から、着色顔料の配合量としては、樹脂層100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、より好ましくは30〜70質量部である。
【0038】
[架橋剤]
また前記の通り、樹脂層の特性向上の目的でフッ素系樹脂の水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤を配合しても良い。架橋剤を併用した場合には、基材フィルムと樹脂層との間の密着力の向上、あるいは架橋構造の導入に伴う樹脂層の耐熱性向上といった効果が得られる。特に、本発明における樹脂層が最内層に位置するように太陽電池裏面封止材の設計を施した場合には、太陽電池モジュール製造工程、具体的にはガラスラミネート工程(セル充填工程)において、樹脂層が最大150℃程度の高温下で、長い場合には30分以上の熱処理に曝される、その環境下で樹脂層(塗膜)が溶融、流動などを示さないよう、特に耐熱性が要求される。本発明では、水酸基含有フッ素系樹脂を用いることから、該水酸基と反応し得る架橋剤の使用が可能であり、中でもポリイソシアネート系樹脂を硬化剤として使用し、ウレタン結合(架橋構造)の生成を促す処方が好ましい。架橋剤として用いるポリイソシアネート系樹脂としては、芳香族系ポリイソシアネート、芳香脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネートおよび脂肪族系ポリイソシアネート等が例示でき、各々以下に示すジイソシアネート化合物を原料とする樹脂である。
【0039】
芳香族系ポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートとしては、例えばm−またはp−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4′−、2,4′−又は2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、および4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等が例示される。
【0040】
芳香脂肪族系ポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートとしては、例えば1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)や、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が例示される。
【0041】
脂環族系ポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、および1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)等が例示される。
【0042】
脂肪族系ポリイソシアネートの原料となるジイソシアネートとしては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、および2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0043】
ポリイソシアネートの原料としては、これらのジイソシアネートを複数種組み合わせて用いること、ビューレット変性体、ヌレート変性体などの変性体として用いることも可能である。中でもポリイソシアネートの原料としては、樹脂骨格中に紫外線域の光の吸収帯を有する芳香環を含有する樹脂は、紫外線照射に伴い黄変し易いことから、脂環族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤を用いることが好ましい。また、水酸基含有フッ素系樹脂との架橋反応の易進行性、架橋度、耐熱性、耐紫外線性などの観点からヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体が好ましい。
【0044】
[その他添加剤]
さらに、本発明にかかるフッ素系樹脂を含むコーティング液には、その特性を損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化剤、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、架橋助剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などを添加してもよい。
【0045】
使用できる熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、硫黄化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
使用できる強化剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
使用できる架橋助剤としては、従来公知のスズ系、他の金属系、有機酸系、アミノ系の架橋助剤が使用できる。
【0047】
使用できる紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が例示できる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、その他として、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
【0048】
使用できる光安定化剤としては、ヒンダードアミン系等の光安定化剤が挙げられる。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ]−4−ピペリジニル]エステルなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
【0049】
[フッ素系樹脂と硬化剤の配合]
本発明において易接着性樹脂層を形成するフッ素系樹脂としては架橋剤との結合を形成する水酸基含有フッ素樹脂を用いることが好ましい。また架橋剤としては前記の通り、脂肪族系あるいは脂環族系のポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。通常、水酸基含有樹脂をポリイソシアネート化合物で架橋させ、硬化性樹脂層を形成する場合には、水酸基数とイソシアネート基数が揃うよう当量計算を行い、配合比を算出する。そうすることで、架橋反応を経て硬化した皮膜の耐熱性、耐水・溶剤性、耐湿熱性などが発現する。しかし、本発明では鋭意検討した結果、当量計算により導かれる配合ではなく、架橋剤として配合するポリイソシアネート化合物を過小に配合することで、封止材層との密着力に優れる易接着性樹脂層を形成することが可能であることを見出した。すなわち、硬化後の塗膜中に未架橋水酸基を積極的に残存させることで、封止材層との密着力を向上させる手法である。通常、EVA樹脂を主成分とする封止材層(シート)には、熱負荷により架橋反応が進行するポリイソシアネート化合物が架橋剤の1種として配合されている。従って。裏面封止シートの最表面に形成される易接着性樹脂層内に未架橋水酸基が残存していた場合には、封止材層との熱圧着時に、封止材層内のポリイソシアネート化合物との間でウレタン結合形成反応が進行し、封止材層と裏面封止シート層との間に共有結合を形成することができ、界面密着力は大きく向上する。この原理に従い、易接着性樹脂層の封止材層に対する密着力を向上させ、なおかつ加工性、耐ブロッキング性などを損なわないという観点からフッ素系樹脂中の水酸基当量(A)と易接着性樹脂層中のポリイソシアネート系樹脂中のイソシアネート基当量(B)の比(A/B)は、10〜10/7の配合比が好ましく、特に好ましい範囲は、5〜10/6の配合比である。配合比が10より架橋剤配合量が少ない場合には、未反応水酸基が多くなりすぎるために塗膜表面のタック性が増し、ブロッキングを生じ易くなることがあり、また水酸基由来の親水性が強くなり、塗膜の耐水性や耐湿熱性が不足するなどの不具合を生じることがある。一方、10/7よりも架橋剤配合量が多い場合には、易接着性樹脂層中の未反応水酸基数が少なくなり、封止材層中に含まれる架橋剤との架橋反応が少なくなり、封止材層と裏面封止シート層との間の密着力が不十分になるため好ましく無い。
【0050】
[太陽電池裏面封止材]
本発明によって得られる太陽電池用裏面封止シートと他の樹脂フィルムを積層することで太陽電池裏面封止材が得られるが、積層する手法としては、公知のドライラミネート法が利用できる。ドライラミネート法を用いた貼り合わせには、ポリエーテルポリウレンタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエポキシ系樹脂などを主剤とし、ポリイソシアネート系樹脂を硬化剤とする公知のドライラミネート用接着剤を用いることができる。ただし、これらの接着剤を用いて形成される接着剤層には、接着強度が長期間の屋外使用で劣化することに起因するデラミネーションなどを生じないこと、光線反射率の低下につながる黄変を生じないことなどが必要である。また、接着剤層の厚みとしては、好ましくは1〜5μmの範囲である。1μm未満であると十分な接着強度が得られ難い場合がある。一方、5μmを越えると接着剤塗工のスピードが上がらない、接着力を発現させる(主剤及び硬化剤間の架橋反応を促進する)目的で行うエージングに長時間を要すること、さらには接着剤使用量が増加することなどを理由に生産コストが上がるため、好ましくない。
【0051】
接着剤層の形成に用いる材料としては、公知のドライラミネート用接着剤を使用することができる。一般にドライラミネート用接着剤は主剤および架橋剤の2つの樹脂を希釈溶媒で希釈して調合したものが用いられるが、架橋剤としては活性水酸基との反応性に富み、その反応速度及び初期密着力の発現が早いイソシアネート基含有ポリマーを用いる処方が好ましい。これらの利点に加えて、基材フィルムとの接着強度が高く、さらにその接着強度の恒温安定性、長期耐久性にも優れる接着性樹脂層を形成することができる。このイソシアネート基含有ポリマーと組合せて用いる主剤樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオール系などのウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂を例示することができ、詳細な要求特性、加工条件適性に応じて、適宜選択して用いることができる。また、太陽電池裏面封止材の構成によっては、上記の接着剤層にもUV光が到達し、樹脂の光劣化を誘引することも考えられる。そのような観点から、接着剤層の形成に用いる樹脂としては芳香環を含有しない、あるいは含有量の少ない脂肪族系樹脂あるいは脂環族系樹脂が好ましい。
【0052】
次に、本発明の太陽電池用裏面封止シートを用いた太陽電池裏面封止材について記す。太陽電池裏面封止材には水蒸気遮断性、光反射性、長期耐湿熱・耐光耐久性、対セル充填剤密着力、電気絶縁性などに代表される種々の特性が要求される。現在、これらの要求特性を満たすべく、機能分割の考え方に則って、種々の機能性フィルム、蒸着、ウェットコーティングなどの加工技術を組み合わせた各社各様のシート設計(積層設計)がなされている。
【0053】
本発明では、本発明の太陽電池用裏面封止シートに、耐加水分解性を有するフィルム、白色フィルム、無機酸化物蒸着を有するフィルム、外層側耐候・紫外線遮断性樹脂層(フィルム、樹脂塗布層など)の1つ以上を積層することにより、各種要求特性を満たす太陽電池裏面封止用保護シートとしても良い。好ましくは、太陽電池用裏面封止シートの基材フィルムの易接着性樹脂層と反対側の面に耐候・紫外線遮断性層を積層することである。特に、耐加水分解性を有するフィルムを基材フィルムとし、この基材フィルムに、耐候・紫外線遮断性樹脂層を形成した耐加水分解性・耐候性フィルムを積層する設計あるいは本発明の易接着性樹脂層を形成した基材フィルムの反対面に耐候・紫外線遮断性樹脂層を直接積層する設計が好ましい。
【0054】
[耐候・紫外線遮断性樹脂層]
耐候・紫外線遮断性樹脂層としては、紫外線吸収剤を含む他の樹脂層を積層する。紫外線吸収剤を含む他の樹脂層を形成する樹脂としては、フッ素含有樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などを用いることができる。具体的には、フッ素含有樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)、エチレンークロロトリフルオロエチレン共重合樹脂(ECTFE)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)など、アクリル樹脂としてはポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、アクリルポリオール樹脂を各種架橋剤を用いて架橋したアクリル樹脂など、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)ポリブチレンテレフタレート(PBT)など、ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、環状オレフィン樹脂など、ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12などを例示することができる。
【0055】
次にこれらの樹脂に配合する紫外線吸収剤としては、無機系紫外線吸収剤や有機系紫外線吸収剤を用いる。無機系紫外線吸収剤としては、白色顔料としても用いることができる酸化チタン、酸化亜鉛や、黒色顔料としても用いることができるカーボンブラックなどが例示でき、有機系紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が例示できる。有機系紫外線吸収剤は具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、その他として、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。本発明の用途である太陽電池モジュールは20年、場合によってはそれ以上の長期に渡って屋外で使用されることから用いる紫外線吸収剤としては無機系紫外線吸収剤の方が、耐久性の観点で好ましい。
【0056】
[樹脂層に用いる光安定化剤]
また、同様に前記樹脂層に好ましく用いられる光安定化剤としては、ヒンダードアミン系等の光安定化剤が挙げられる。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ]−4−ピペリジニル]エステルなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
【0057】
本発明では、上記の記載のうち、樹脂層に紫外線吸収剤及び光安定化剤を共重合させたアクリルポリオール系樹脂を用いることが好ましい。また、紫外線吸収剤及び光安定化剤を共重合させたアクリルポリオール系樹脂と無機系紫外線吸収剤を混合して樹脂層を形成すると紫外線遮断性能がより向上することからさらに好ましい。
【0058】
[樹脂層に用い得るその他の添加剤]
また、前記の耐候・紫外線遮断性樹脂層には、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、強化剤、可塑剤、滑剤、充填剤、着色顔料等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。例えば、熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、硫黄化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
強化剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0060】
[樹脂層の製造方法]
紫外線吸収剤を含む他の樹脂層として、具体的には次のようなフィルム、コーティング層が例示できる。例えば、酸化チタン、あるいはカーボンブラックを含有するポリフッ化ビニルフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−ビニルアセテートフィルムをフィルムとして例示できる。また、酸化チタン、あるいはカーボンブラックを含有するテトラフルオロエチレン系共重合樹脂含有塗料、アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート系樹脂を含有する塗料を用いて形成するコーティング層が例示できる。
【0061】
中でも太陽電池モジュール用裏面封止シートの製造コスト、耐紫外線性を両立する手段としては、酸化チタン、あるいはカーボンブラックを含有するテトラフルオロエチレン系共重合樹脂含有塗料、アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート系樹脂を含有する塗料を用いて形成するコーティング層が他の樹脂層としては好ましい。
【0062】
前記の耐候・紫外線遮断性樹脂層を積層する方法は特に問わないが、溶融押出し積層する方法やその他の樹脂や添加剤を含有する液状塗料を塗布し、熱、光、電子線などにより硬化させるコーティング法や、その他の樹脂や添加剤を含むフィルムと接着剤を用いて貼り合せるラミネート法などが例示できる。
【0063】
例えば、コーティング法により形成する場合には、コーティング液の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールおよび水等を例示することができ、該コーティング液の性状としてはエマルジョン型および溶解型のいずれでも良い。
【0064】
耐候・紫外線遮断性樹脂層を基材フィルム上に形成する方法は特に制限されるべきものではなく、公知のコーティング手法を用いることができる。コーティング手法としては、種々の方法を適用することができ、例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法およびグラビアロールコーティング法等や、これらを組み合わせた方法を利用することができる。なかでも、グラビアロールコーティング法は、コーティング層形成組成物の安定性を増す理由で好ましい方法である。
【0065】
また、接着剤を用いてその他の樹脂や添加剤を含むフィルムと貼り合せるラミネート法に関しては、公知のドライラミネート法が利用できる。ドライラミネート法を用いた樹脂フィルムの貼り合わせには、ポリエーテルポリウレンタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエポキシ系樹脂などを主剤とし、ポリイソシアネート系樹脂を硬化剤とする公知のドライラミネート用接着剤を用いることができる。ただし、これらの接着剤を用いて形成される接着剤層には、接着強度が長期間の屋外使用で劣化することに起因するデラミネーションなどを生じないこと、光線反射率の低下につながる黄変を生じないことなどが必要である。また、接着剤層の厚みとしては、好ましくは1〜10μmの範囲である。1μm未満であると十分な接着強度が得られ難い場合がある。一方、10μmを越えると接着剤塗工のスピードが上がらない、接着力を発現させる(主剤及び硬化剤間の架橋反応を促進する)目的で行うエージングに長時間を要すること、さらには接着剤使用量が増加することなどを理由に生産コストが上がるため、好ましくない。
【0066】
本発明にかかる接着剤層の形成に用いる材料としては、公知のドライラミネート用接着剤を使用することができる。一般にドライラミネート用接着剤は主剤および架橋剤の2つの樹脂を希釈溶媒で希釈して調合したものが用いられるが、架橋剤としては活性水酸基との反応性に富み、その反応速度及び初期密着力の発現が早いイソシアネート基含有ポリマーを用いる処方が好ましい。これらの利点に加えて、基材フィルムとの接着強度が高く、さらにその接着強度の恒温安定性、長期耐久性にも優れる接着性樹脂層を形成することができる。このイソシアネート基含有ポリマーと組合せて用いる主剤樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオール系などのウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂を例示することができ、詳細な要求特性、加工条件適性に応じて、適宜選択して用いることができる。また、太陽電池裏面封止材の構成によっては、上記の接着剤層にもUV光が到達し、樹脂の光劣化を誘引することも考えられる。そのような観点から、接着剤層の形成に用いる樹脂としては芳香環を含有しない、あるいは含有量の少ない脂肪族系樹脂あるいは脂環族系樹脂が好ましい。
【0067】
[太陽電池モジュール]
上記のようにして作成した太陽電池裏面封止シートを太陽電池モジュールに使用するに際し、太陽電池裏面封止シートの易接着性樹脂層を太陽電池モジュールのシリコンセル充填材層面とに接着させて、太陽電池モジュールに組み込む。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて、具体的に本発明の太陽電池用裏面封止シートについて説明する。実施例中で「部」とは、特に注釈のない限り「質量部」であることを意味する。
【0069】
<特性の評価方法>
本発明で用いた特性の評価方法は、下記のとおりである。
【0070】
(1)塗布量測定
易接着性樹脂層の塗布量は、コート層形成後に500cmの面積に切り出し、その試験片の質量を質量(1)とした。次に、その試験片から樹脂層をn-酢酸ブチルに溶解させ、剥がし取り、再び試験片の質量を測定し、質量(2)とした。続いて、下式に基づき、単位面積当たりの塗布量を算出した。この塗布量測定を3つの試験片について行い、その平均値を塗布量とした。
・塗布量[g/m]={(質量(1))−(質量(2))}×20。
【0071】
(2)基材フィルム/易接着性樹脂層間の密着強度評価
作製した太陽電池用裏面封止シートの基材フィルムとコーティング層(樹脂層)との間の密着力(塗膜密着力)について、JIS K 5400(1990年版)に記載の方法に基づいてクロスカット試験を実施し、下記の特性分類をした。
○:100マス塗膜残存/100マス中
△:81〜99マス塗膜残存/100マス中
×:80マス以下の塗膜残存/100マス中。
【0072】
(3)封止材層との密着強度の測定
JIS K 6854に基づいて、EVAシートとの接着力を測定した。試験した疑似太陽電池モジュールサンプルは作製した太陽電池裏面封止シートの易接着性樹脂層面にEVAシートを重ね、さらにその上に厚さ0.3mmの半強化ガラスを重ね、市販のガラスラミネーターを用いて真空引き後に135℃加熱条件下、29.4N/cm荷重で15分プレス処理をしたものを用いた。EVAシートは、サンビック(株)製の500μm厚シートを用いた。接着強度試験の試験片の幅は10mmとし、2つの試験片について各々測定を1回行い、2つの測定値の平均値を接着強度の値とした。接着強度は40N/10mm以上あることが実用上問題ないレベルと判断した。
【0073】
(4)耐紫外線性評価
岩崎電気社製アイスーパーUVテスターSUV−W151を用いて、60℃×50%RH雰囲気にて紫外線強度100mW/cmで144時間、擬似太陽電池モジュールにガラス面側からあるいは外層面(裏面封止シート)側から紫外線照射を行った。その後、表色系b値の測定を行った。
【0074】
(5)耐湿熱性評価
エスペック社製恒温恒湿オーブンを用いて、85℃、85%RHの環境下で2000時間の湿熱処理を擬似太陽電池モジュールに施した。その後、封止材層と裏面封止シート間の密着強度測定をその特性の耐湿熱性評価の目的で実施した。
【0075】
(6)耐ブロッキング性試験
太陽電池裏面封止シートから5cm四方のサイズで試験片10枚を切り出し、接着性樹脂層面が向かい合わない方向で重ね合わせ(すなわち 接着性樹脂層/基材フィルム//接着性樹脂層/基材ポリエステルフィルム)、インキブロッキングテスターを用いて5kgf/cm2の荷重を掛けた状態で40℃の環境に1週間放置した。その後、インキブロッキングテスターからサンプルを外し、試験片同士の貼り付き有無を確認した。この際、10枚の試験片のいずれもが貼り付きを示していない場合をブロッキング発生無しと判断した。
(易接着性樹脂層形成用塗料1〜5の調整)
水酸基含有テトラフルオロエチレン系共重合樹脂と無機顔料として配合された酸化チタンを含むダイキン工業株式会社製のコーティング剤“ゼッフル”GK570白(固形分濃度:65質量%)にヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂である住化バイエル社製 デスモジュール(登録商標)N3300(固形分濃度:100質量%)を水酸基含有テトラフルオロエチレン系共重合樹脂中の水酸基数とポリイソシアネート系樹脂中のイソシアネート基数の比が1/0.1の比になるように予め計算した量配合し、さらに固形分濃度30質量%(樹脂固形分濃度)の塗料となるように予め算出した希釈剤:酢酸n−ブチルを量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度30質量%(樹脂固形分濃度)の易接着性樹脂層形成用塗料1を得た。
【0076】
また、同様に表1に示す配合比で調合して易接着性樹脂層形成用塗料2〜5を得た。
【0077】
(耐候性コート層形成用塗料1の調整)
(株)日本触媒株式会社製の、紫外線吸収剤及び光安定化剤(HALS)がアクリルポリオール樹脂に架橋されたことを特徴とするコーティング剤であるハルスハイブリットポリマー(登録商標)BK1(固形分濃度:40質量%)に表2に示す配合の着色顔料および溶剤を一括混合し、ビーズミル機を用いて分散した。その後、同じく表2に示す配合の可塑剤を添加して、固形分濃度が51質量%である耐候・紫外線遮断性樹脂層形成用主剤塗料を得た。
【0078】
次に前述の方法で得た樹脂層形成用塗料にヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂である住化バイエル社製 デスモジュール(登録商標)N3300(固形分濃度:100質量%)を樹脂層形成用主剤塗料との質量比が100/4の比になるように予め計算した量配合し、さらに固形分濃度20質量%(樹脂固形分濃度)の塗料となるように予め算出した希釈剤:酢酸n−プロピルを量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度20質量%(樹脂固形分濃度)の耐光性コート層形成用塗料1を得た。
【0079】
なお、上記の調整に用いた着色顔料および可塑剤としては下記の製品を使用した。
白色顔料:酸化チタン粒子 テイカ社製 JR−709
可塑剤:DIC社製ポリエステル系可塑剤 ポリサイザーW−220EL
(ドライラミネート用接着剤の調整)
硬化剤との反応部位として水酸基を構造中に含む樹脂を主成分とするDIC(株)製の耐湿熱性を有するドライラミネート剤 ディックドライ(登録商標)TAF−300を36部、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート系樹脂を主成分とするDIC(株)製TAFハードナーAH−3を3部、および酢酸エチルを30質量部量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度30質量%のドライラミネート用接着剤を得た。本接着剤を用いてフィルムをドライラミネート法で貼り合わせた後、実施例及び比較例に記載の通り、エージングを施すことで、水酸基とイソシアネート基が架橋反応し、ウレタン結合を形成する。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
(実施例1)
基材フィルムとして東レ(株)製の環状三量体の含有量が1重量%以下である耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム ルミラー(登録商標)X10S(125μm)を準備した。この基材フィルムの一方の面に、コロナ処理を施し、さらにワイヤーバーを用いて易接着性樹脂層形成用塗料1を塗布し、150℃で30秒間乾燥し、乾燥後塗布量が1.0g/mとなるように易接着性樹脂層を設けた。このようにして太陽電池裏面封止シート1を製造した。
【0083】
(実施例2)
乾燥後塗布量が3.0g/mとなるように易接着性樹脂層を設けた以外は実施例1に記載の方法と同様にして太陽電池裏面封止シート2を製造した。
【0084】
(実施例3)
易接着性樹脂層形成用塗料1の換わりに易接着性樹脂層形成用塗料2を用いた以外は実施例2に記載の方法と同様にして太陽電池裏面封止シート3を製造した。
【0085】
(実施例4)
易接着性樹脂層形成用塗料1の換わりに易接着性樹脂層形成用塗料3を用いた以外は実施例2に記載の方法と同様にして太陽電池裏面封止シート4を製造した。
【0086】
(実施例5)
実施例4に記載の方法で作製した太陽電池裏面封止シート4の易接着性樹脂層とは反対側の面にコロナ処理を施し、さらにワイヤーバーを用いて耐候性コート層形成用塗料1を塗布し、150℃で30秒間乾燥し、乾燥後塗布量が3.0g/mとなるように耐候性コート層を設けた。このようにして太陽電池裏面封止シート5を製造した。
【0087】
(実施例6)
基材フィルムを東レ(株)製白色ポリエチレンテレフタレートフィルムであるルミラー(登録商標)E20F(50μm)を用いて、実施例3に記載の方法と同様の方法で易接着性樹脂層を形成した。また、基材フィルムとして東レ(株)製の環状三量体の含有量が1重量%以下である耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム ルミラー(登録商標)X10S(125μm)を準備した。この基材フィルムの一方の面に、コロナ処理を施し、さらにワイヤーバーを用いて耐候性コート層形成用塗料1を塗布し、150℃で30秒間乾燥し、乾燥後塗布量が3.0g/mとなるように耐候性コート層を設けた。次に易接着性樹脂層を形成した白色フィルムの易接着性樹脂層を形成した面とは反対側の面に、ワイヤーバーを用いてドライラミネート用接着剤を塗布し、80℃で45秒間乾燥し、乾燥後塗布量が5.0g/m2となるようにドライラミネート接着剤層を形成した。次に接着剤層面に前記の通り作製した耐候性コート層形成済みフィルムの耐候性コート層を形成した面と反対側の面を貼り合わせ、ドライラミネートを行い、太陽電池裏面封止シート6を製造した。
【0088】
(比較例1)
易接着性樹脂層を形成しないで、ルミラー(登録商標)X10S(東レ(株)製、125μm)を太陽電池裏面封止シート7として、比較例とする。
【0089】
(比較例2)
易接着性樹脂層形成用塗料1の換わりに易接着性樹脂層形成用塗料4を用いた以外は実施例2に記載の方法と同様にして太陽電池裏面封止シート8を製造した。
【0090】
(比較例3)
易接着性樹脂層形成用塗料1の換わりに易接着性樹脂層形成用塗料5を用いた以外は実施例2に記載の方法と同様にして太陽電池裏面封止シート9を製造した。
【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
(実施例1〜5と、比較例1との比較)
比較例1で得られる太陽電池裏面封止シート7は、易接着性樹脂層が形成されていないため、封止材として使用したEVAシートとの密着力が5N/10mmと非常に弱かった。また、擬似モジュールのガラス面側からの紫外線照射試験に伴い、ガラス、封止材層を透過した紫外光により、ポリエチレンテレフタレートフィルムが光劣化し、黄変を示した。一方、実施例1〜6で得られる太陽電池裏面封止シート1〜6の場合、本発明の易接着性樹脂層が真空ラミネート工程での加熱により封止材と架橋反応を起こし、強固に密着し、いずれも40N/10mm以上の密着力を示した。また、擬似モジュールのガラス面側からの紫外線照射試験を行った場合にも、易接着性樹脂層を形成するフッ素系共重合樹脂自体が耐候性を有し、また無機顔料として配合している酸化チタンが紫外線を吸収するため、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム層まで紫外光は到達せず、その結果光劣化反応は抑制されるため、黄変などの変化は見られなかった。
【0094】
(実施例1〜5と、比較例2との比較)
比較例2で得られる太陽電池裏面封止シート8は、フッ素系共重合樹脂中の水酸基当量(A)とポリイソシアネート系樹脂のイソシアネート基当量(B)が等しく配合された易接着性樹脂層形成用塗料4を用いて易接着性樹脂層が形成されているため、封止材層との間に架橋反応を生じず、封止材との密着力が10N/10mmと弱かった。さらに耐湿熱性試験においても密着力の低下が見られることから、長期に屋外で曝露される場合には、極端なケースでは封止材層から裏面封止シートが剥離するという事態が懸念され好ましく無い。一方、実施例1〜6で得られる太陽電池裏面封止シート1〜6の場合、封止材層との間で架橋反応を生じるために初期の対封止材密着力がいずれも40N/10mm以上と良好な上、耐湿熱性試験に伴う密着力の低下も小さく、長期に渡り屋外で使用した場合にも、良好な密着力を保持するものと考えられる。
【0095】
(実施例1〜6と、比較例3との比較)
比較例3で得られる太陽電池裏面封止シート9は、フッ素系共重合樹脂中の水酸基当量(A)とポリイソシアネート系樹脂のイソシアネート基当量(B)がA/0.1Bの比で配合された易接着性樹脂層形成用塗料5を用いて易接着性樹脂層が形成されているため、易接着性樹脂層中にはポリイソシアネートとの架橋反応を生じず水酸基が大量に残存している。そのため、塗膜表面の粘着性が高く、耐ブロッキング性試験において基材フィルムと易接着性樹脂層との間に貼り付きが見られ、安定的に生産することは難しいことが示唆された。また、残存水酸基数が多いことに起因して塗膜の親水性が比較的高く、対封止材密着力の対湿熱性も劣り、湿熱試験に伴い密着力の低下が見られることから、長期に屋外で曝露される場合には、極端なケースでは封止材層から裏面封止シートが剥離するという事態が懸念され好ましく無い。一方、実施例1〜6で得られる太陽電池裏面封止シート1〜6の場合、封止材層との間で架橋反応を生じるために初期の対封止材密着力がいずれも40N/10mm以上と良好な上、耐湿熱性試験に伴う密着力の低下も小さく、長期に渡り屋外で使用した場合にも、良好な密着力を保持するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の太陽電池裏面封止用シートは、対封止材密着力、保存安定性、生産性及び耐候性にも優れ、太陽電池モジュールにおいて好適に用いられることから、本発明の太陽電池裏面封止用シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールは有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂及び無機系顔料を含む易接着性樹脂層が少なくとも片面に形成された基材フィルムを用いた太陽電池裏面封止シート。
【請求項2】
易接着性樹脂層が脂肪族系ポリイソシアネート樹脂、脂環族系ポリイソシアネート樹脂及び芳香脂肪族系ポリイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート樹脂を含み、フッ素系樹脂がテトラフロロエチレンとイソシアネート基との架橋点となる水酸基含有モノマーを繰り返し構造中に含む共重合樹脂である請求項1に記載の太陽電池裏面封止シート。
【請求項3】
易接着性樹脂層とは反対側に紫外線吸収剤を含む耐候・紫外線遮断性樹脂層を少なくとも1層有する請求項1に記載の太陽電池裏面封止シート。
【請求項4】
無機系顔料が酸化チタン、カーボンブラックからなる請求項1に記載の太陽電池裏面封止シート。
【請求項5】
フッ素系樹脂中の水酸基当量(A)と易接着性樹脂層中のポリイソシアネート系樹脂中のイソシアネート基当量(B)の比A/Bが10/1〜10/7の配合比である請求項1に記載の太陽電池裏面封止シート。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の太陽電池裏面封止シートの易接着性樹脂層と、太陽電池モジュールのシリコンセル充填材層面とを接着してなる太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2011−222575(P2011−222575A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86721(P2010−86721)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】