説明

太陽電池

【課題】耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の全ての性能を兼ね備えたセラミックスフィルムにより太陽電池用裏面保護シートの主要部を構成し、全体の性能を向上させ、セラミックスフィルムと太陽電池モジュールとの接合を簡単に行なえるようにする。
【解決手段】太陽電池モジュール1の裏面に、裏面保護シート6として必要な耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えたセラミックスフィルム7と、このセラミックスフィルム7の裏面に接合されるプラスチックフィルム9からなる裏面保護シート6が積層され、裏面保護シート6のセラミックスフィルム7にはシランカップリング剤10が含有されており、このシランカップリング剤10が架橋することで太陽電池モジュール1の裏面に裏面保護シート6が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面保護シートを備えた太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽電池モジュール用裏面保護シートとしては例えば特許文献1に開示されているように、耐候性・耐加水分解性を有するフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに配置された耐熱性を有するフィルム基材とを有するものが知られている。
【0003】
つまり、特許文献1に開示されている太陽電池モジュール用裏面保護シートは耐候性・耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を備えるために3層構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−227203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている従来の太陽電池モジュール用裏面保護シートでは、耐候性・耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えるために3つの層を備える必要があった。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の全ての性能を兼ね備えたセラミックスフィルムにより太陽電池用裏面保護シートの主要部を構成し、全体の性能を向上させ、セラミックスフィルムと太陽電池モジュールとの接合を簡単に行なえるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の太陽電池は、太陽電池モジュールの裏面に、少なくとも裏面保護シートとして必要な耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えたセラミックスフィルムと、このセラミックスフィルムの裏面に接合されるプラスチックフィルムからなる裏面保護シートが積層され、裏面保護シートのセラミックスフィルムにはシランカップリング剤が含有されており、このシランカップリング剤が架橋することで太陽電池モジュールの裏面に裏面保護シートが接合されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の太陽電池は、裏面保護シートのセラミックスフィルムが、天然粘土あるいは合成粘土に含まれる雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイトなどの成分の内、少なくとも1種を主要構成成分として粘土結晶を緻密に積層して作られた粘土薄膜からなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の太陽電池は、裏面保護シートが接合される太陽電池モジュールは、セルモジュールと、このセルモジュールをサンドイッチ状に包むエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる封止シートとで構成され、内側に位置する封止シートにはシランカップリング剤が含有されており、このシランカップリング剤が裏面保護シートのセラミックスフィルムに含有されたシランカップリング剤と架橋することで太陽電池モジュールの裏面に裏面保護シートが接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の太陽電池は、裏面保護シートとして必要な耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えたセラミックスフィルムにより太陽電池用裏面保護シートの主要部を構成でき、従来のように特性の異なる複数の層を設ける必要がない。また、この裏面保護シートの主要部はセラミックスフィルムから作られているので、太陽電池モジュール用裏面保護シートとして必要な電気絶縁特性をも兼ね備えることになる。また、太陽電池モジュールと裏面保護シートが、少なくともセラミックスフィルムに含有するシランカップリング剤が架橋することによって接合されており、太陽電池モジュールに対する裏面保護シートの接合を接着層を設ける必要がない。さらに、裏面保護シートの主要部がセラミックスフィルムで作られているので、性能の向上を図るとともに、性能を長期に亘って維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態における裏面保護シートを太陽電池モジュールに積層接合する前の状態を示す概略断面図である。
【図2】同裏面保護シートを太陽電池モジュールに積層接合した状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における裏面保護シートを太陽電池モジュールに積層接合する前の状態を示す概略断面図である。
【図4】同裏面保護シートを太陽電池モジュールに積層接合した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。
先ず、図1および図2に示す第1の実施の形態について説明すると、1はセルモジュール2と、このセルモジュール2をサンドイッチ状に包むエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる封止シート3,4とで構成される太陽電池モジュールで、外側に位置する封止シート3には太陽電池モジュール1を外側から保護する強化ガラス板5が積層接合される。また、この太陽電池モジュール1の内側に位置する封止シート4には太陽電池モジュール1を裏側から保護する裏面保護シート6が積層接合される。
【0013】
裏面保護シート6としては太陽電池モジュール用裏面保護シートとして必要な少なくとも耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えたセラミックスフィルム7とこのセラミックスフィルム7の裏面に接着剤8を介して接合されるプラスチックフィルム9とで構成されたものが使用される。
【0014】
使用される裏面保護シート6の材料であるセラミックスフィルム7は、天然粘土あるいは合成粘土に含まれる雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイトなどの成分の内、少なくとも1種を主要構成成分として作られた粘土薄膜〔独立行政法人産業技術総合研究所製クレースト(登録商標)〕が使用される。
【0015】
この「クレースト」なるセラミックスフィルム7は厚さ約1nmの粘土結晶を緻密に積層して作られたもので、具体的には厚さ約1nm、粒子径〜1μm、アスペクト比〜300程度の天然または合成の膨潤性層状珪酸塩が90質量%〜と、分子の大きさ〜数nmの天然または合成の低分子・高分子の添加物が〜10質量%からなる構成が例示される。「クレースト」なるセラミックスフィルム7は厚さが薄く、柔軟性に優れており、1枚でも使用可能であるが、適度な厚みとなるように複数枚積層接合して用いることも可能である。
【0016】
「クレースト」なるセラミックスフィルム7の耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性については次のとおりであって、裏面保護シート6として必要な全ての特性において満足していることが分かる。
・耐候性 …無機の粘土鉱物からなるので、半永久的に劣化することがない。
・耐加水分解性…粘土鉱物主成分のケイ酸塩は強固な化学結合で結合しており、加水分解 しない。
・ガスバリア性…酸素透過度;1ml/m・d・MPa未満(フィルム厚30μmの 場合)
透湿度;ほぼ0g/m/day
・耐熱性 …250℃以上
そして、本実施の形態では、太陽電池モジュール1の内側に位置する封止シート4に太陽電池モジュール1を裏側から保護する裏面保護シート6を積層接合させるにあたって、裏面保護シート6のセラミックスフィルム7にはシランカップリング剤10が含有されており、このシランカップリング剤10が架橋することで太陽電池モジュール1の裏面に裏面保護シート6が接合されている。詳しくは、裏面保護シート6のセラミックスフィルム7に含有されたシランカップリング剤10はセラミックスフィルム7の表面に浮き出た状態となり、太陽電池モジュール1の内側に位置する封止シート4と裏面保護シート6を重ねた状態で真空吸引により加熱圧着させる。そのときの加熱温度は90℃〜230℃の範囲であり、特に110℃〜190℃の範囲とするのが好ましい。また、そのときの加熱圧着時間は8〜40分の範囲が好ましい。このような封止シート4と裏面保護シート6を真空吸引により加熱圧着させる方法を採用することにより、封止シート4は軟化溶融するとともに裏面保護シート6のセラミックスフィルム7に含有されたシランカップリング剤10は架橋することによって封止シート4に裏面保護シート6が接合されることになる。
【0017】
ところで、前記セラミックスフィルム7の下側、つまり裏面に接合されるプラスチックフィルム9としては例えば耐熱性があり、引っ張り強度、曲げ応力特性、突き刺し強度などの品質的特性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが使用される。上記の耐熱性があり、品質的特性に優れたプラスチックフィルム9としては上記のポリエチレンテレフタレートフィルムの他、ポリエチレンナフタレートフィルムやポリフッ化ビニルフィルムなどが挙げられる。さらに、前記プラスチックフィルム9の裏面に耐熱性があり、品質的特性に優れたプラスチックフィルムを貼り合わせても良く、さらにはこの貼り合わされたプラスチックフィルムの裏面に上記セラミックスフィルム7と同様のセラミックスフィルムを貼り合わせても良い。
【0018】
このように、セラミックスフィルム7に、耐熱性があり、品質的特性に優れたプラスチックフィルム9が貼り合わされていることにより、セラミックスフィルム7の取り扱い時などにおける引っ張りや折り曲げ、使用環境での熱、使用時における衝撃に耐えることができ、セラミックスフィルム7を保護することができる。
【0019】
次に、図3および図4に示す第2の実施の形態について説明すると、この第2の実施の形態では太陽電池モジュール1の内側に位置する封止シート4にもシランカップリング剤11が含有されており、このシランカップリング剤11および前記セラミックスフィルム7にに含有されるシランカップリング剤10が架橋することによって太陽電池モジュール1の裏面に裏面保護シート6が接合されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0020】
以上述べた各実施の形態において、裏面保護シート6に使用されるセラミックスフィルム7は何れも約1nmの粘土結晶を緻密に積層して作られたセラミックスフィルムであるが、太陽電池モジュール用裏面保護シートとして必要な耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えたセラミックスフィルムであれば上記以外のセラミックスフィルムでも良く、上記の約1nmの粘土結晶を緻密に積層して作られたセラミックスフィルムに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0021】
1 太陽電池モジュール
2 セルモジュール
3,4 封止シート
5 強化ガラス板
6 裏面保護シート
7 セラミックスフィルム
8 接着剤
9 プラスチックフィルム
10,11 シランカップリング剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの裏面に、少なくとも裏面保護シートとして必要な耐候性、耐加水分解性、ガスバリア性、耐熱性の性能を兼ね備えたセラミックスフィルムと、このセラミックスフィルムの裏面に接合されるプラスチックフィルムからなる裏面保護シートが積層され、裏面保護シートのセラミックスフィルムにはシランカップリング剤が含有されており、このシランカップリング剤が架橋することで太陽電池モジュールの裏面に裏面保護シートが接合されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
裏面保護シートのセラミックスフィルムが、天然粘土あるいは合成粘土に含まれる雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイトなどの成分の内、少なくとも1種を主要構成成分として粘土結晶を緻密に積層して作られた粘土薄膜からなることを特徴とする請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
裏面保護シートが接合される太陽電池モジュールは、セルモジュールと、このセルモジュールをサンドイッチ状に包むエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる封止シートとで構成され、内側に位置する封止シートにはシランカップリング剤が含有されており、このシランカップリング剤が裏面保護シートセラミックスフィルムに含有されたシランカップリング剤と架橋することで太陽電池モジュールの裏面に裏面保護シートが接合されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−119553(P2011−119553A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277125(P2009−277125)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000208226)大和グラビヤ株式会社 (48)
【Fターム(参考)】