説明

失禁用パンツ

【課題】見た目が通常の下着と変わらない、外観の優れた失禁用パンツを提供する。
【解決手段】パンツ本体2の前立て部4は、着用者の肌に近い側から順に生地B、生地A、生地C18,26,32を備えており、これら三枚を重ねて(凹部20と凹部34を除いた)外周縁を縫い合わせることで形成される。生地B、生地A、生地C18,26,32それぞれは、表面に撥水加工を施した撥水部22,28,36と、裏面に吸水加工を施した吸水部24,30,38とから構成される。着用者が失禁した場合、生地B18が吸水部24で尿を素早く吸収し、撥水部22で尿が外側に漏れ出るのを防ぐ。万一尿が生地B18を通過した場合であっても、すぐ外側の生地Aおよび更にその外側の生地C26、32が通過した尿を吸水部30で吸収して保持し、撥水部28、36で更に外側に漏れ出るのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は失禁時の尿を吸収して外部に漏らさないよう保持する失禁用パンツに関し、さらに詳しくは、見た目が通常の下着と変わらず、外観に優れ、軽量であり、風合いが柔らかくしなやかで、着用時のゴワツキ感が少ない着用快適性の良好な失禁用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
加齢等により排尿の切れが悪くなり,パンツ装着後に残尿が漏れてしまったり、年齢的な問題でなくても,急激な力が掛かる等何らかの弾みで失禁してしまうといった悩みを抱えている人は少なくない。そこで、これらの問題を解決すべく従来さまざまな失禁用パンツが開発されている。
【0003】
このような失禁用パンツは、吸水シートやパッドといった尿吸収部材をパンツの股間部に設けられた専用ポケットに装着したり、生地に縫い付ける等して取り付け、これらで排泄された尿を吸収してパンツ内に保持するよう構成されている。この尿吸収部材は、例えば、漏れ出た尿を素早く透過させて表面を乾いた状態に保つ吸水透過層と尿の透過を遮断する防水層とで、尿を吸収して保持する保水層を挟み込んだ多層構造となっている。このような構造とすることで、防水層によって保水層に保持された尿が外部に漏れ出すことを防止し、かつ、肌と接触する側の面を表面が乾燥してさらさらした吸水透過層とすることで失禁後の不快感を抑えることができる。
【0004】
このような失禁用パンツは多量の尿を吸収できる点で優れている。しかし、従来の尿吸収部材は上述のような多層構造を採用したり、多量の尿を保水するために厚手の保水素材を用いるため、相当の厚みを有し、失禁用パンツに取り付けられると股間部分が厚ぼったく盛り上がってしまうため、普通のパンツと比べ外観上目立ち易いという問題や、該パンツの重量が重く、特に股間部分の生地の風合いが硬くなり、着用時にゴワついて不快感を有する問題があった。また、特に、共同入浴施設での入浴等、人前でパンツを着脱することに対し抵抗感を覚えるとの不満も多い。さらに、健康な人であれば失禁時の尿の量はほとんどの場合少量であり、必ずしも従来の尿吸収部材のように多量の尿を吸収・保水できる必要はないため、尿の保水量を抑えてでも、普通の下着のように見え外観にて優れ、軽量であり風合いが柔らかくしなやかで、着用時のゴワツキ感が少ない着用快適性の良好な失禁用パンツを求めるニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−5208号公報
【特許文献2】実用新案登録第3073933号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は上述の問題点に鑑み創作されたものであり、普通の下着のように見えて外観に優れ、軽量であり、風合いが柔らかくしなやかで、着用時のゴワツキ感が少ない着用快適性の良好な失禁パンツを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明以下の失禁用パンツを提供する。すなわちその請求項1の発明は、前立て部と、該前立て部の両側縁部にそれぞれ一方の側縁部が連結される2つの前身ごろ部と、左右の側縁部が2つの前記前身ごろ部の他方の側縁部にそれぞれ連結される後身ごろ部とを有する、ニット地からなるパンツ本体を備える失禁用パンツにおいて、
前記前立て部には、生地Bと、該生地Bの外側に位置する生地Aとを備え、前記生地B及びAは、表側が撥水加工され、裏側が吸水加工されていることを特徴とする、失禁用パンツである。
これにより、内側に配置される生地Bと、その外側に配置される生地Aとを例えば内側の生地Aを厚めに、外側に配置される生地Aを補助的なものとして生地Aより薄い生地とするなど、その配置に適した適宜な構成とすることができる。
請求項2の発明は、請求項1記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Bは厚みが1.0mm以上1.5mm以下、生地重量が350g/m以下、曲げ剛性(B)が0.2g・cm/cm以下、曲げ戻り性(2HB)が0.1g・cm/cm以下であることを特徴とする、失禁用パンツである。
これにより、排尿を直接受ける内側に比較的に厚い生地Bを配置することにより、吸水量を多くすることができるとともに、極力薄くし、軽く、柔らかく、しなやかなものとすることができる。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Bの裏側はメッシュ構造となっていることを特徴とする、失禁用パンツである。
網目を粗くすることにより、尿をより容易に吸い込むことが可能となり、かつ生地表面に凹凸構造を形成することで、肌と記事との接触面積を減少し、尿や汗によるベタつき感を軽減できる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Aは、厚みが1.0mm以下、生地重量が180g/m以下、曲げ剛性(B)が0.1g・cm/cm以下、曲げ戻り性(2HB)が0.07g・cm/cm以下であることを特徴とする、失禁用パンツである。
生地Aの厚みを生地Bより薄くすることにより、吸水機能において生地Aを生地Bに対して補助的機能を発揮させるとともに、生地Bと生地Aとの全体として極力薄くし、軽く、柔らかく、しなやかなものとすることができる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1に記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Aの裏側はメッシュ構造となっていることを特徴とする、失禁用パンツである。
網目を粗くすることにより、尿をより容易に吸込むことが可能となる。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1記載の失禁用パンツにおいて、
前記前立て部はさらに、前記生地Aの外側に生地Cを備え、
前記生地Aと生地Cとの間に、前記失禁用パンツの前開き開口部が形成されていることを特徴とする、失禁用パンツ。
これにより、排尿の際の陰茎の出し入れが容易になる。
請求項7の発明は、請求項6記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Cは、表側が撥水加工され、裏側が吸水加工されていることを特徴とする、失禁用パンツである。
これにより、排尿後に尿道に残ってしまった尿が、陰茎をしまう際に漏れ出ても、これを生地Cで確実に吸収し、パンツの外側に漏れ出ることを防止できる。
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の失禁用パンツにおいて、前記生地Cは、厚みが1.0mm以下、生地重量が180g/m2以下、曲げ剛性(B)が0.1g・cm/cm以下、曲げ戻り性(2HB)が0.07g・cm/cm以下であることを特徴とする、失禁用パンツである。
これにより、3重になった前立て部を極力薄く、軽くて柔らかく、しなやかなものとすることができる。
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1記載の失禁用パンツにおいて、
前記前立て部と前記前身ごろ部は撥水加工された糸で縫い合わされることを特徴とする、失禁用パンツである。
これにより、尿が縫合部分の糸に浸み込み、前立て部以外の部分に拡散することを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本願発明に係る失禁パンツは、吸水シート等の尿吸収部材を使用せずに一定程度の尿を吸収することができる構成としたため、普通の下着と比べて股間部分が厚ぼったく盛り上がってしまうという従来の失禁用パンツの問題点を解消することができ、失禁用パンツに対する心理的な抵抗感を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本願発明の第1の実施形態に係るトランクス型の失禁用パンツの斜視図である。
【図2】図2は失禁用パンツのパンツ本体の展開図である。
【図3】図3は失禁用パンツの前立て部を示す、図1におけるA−A線拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本願発明の実施形態について説明する。
【0011】
まず図1,2を用いて、本願発明に係る失禁用パンツ1の全体的な構成を説明する。図1は、失禁用パンツ1の斜視図である。図2はパンツ本体2の展開図であり、縫い合わせの関係が分かるよう、パンツ本体2の各部(前立て部4,前身ごろ部40,後身ごろ部46,股下まち部48)が一部重なった状態で示してある。
【0012】
本実施形態に係る失禁用パンツ1はいわゆるトランクス型のパンツであり、パンツ本体2と、パンツ本体2の上部開口部の縁に沿って縫い付けられるゴム紐50とを備える。図2に示すように、パンツ本体2は、略長方形状の上部5と中央から左右に開かれて逆V字状に広がった形状の下部6とからなる前立て部4と、左右に1つずつ対称に配置されたL字状の前身ごろ部40,40と、下側で逆U字状に切り欠かれた後身ごろ部46と、弓なりに曲がった形状の股下まち部48とから構成される、ニット生地からなる部材である。本実施の形態では前立て部4はニット生地を3重に組み合わせた構造となっており、陰茎を出し入れするための前開き開口部12が形成されている。
【0013】
パンツ本体2は前述の各部を縫い合わせることで完成する。すなわち、後身ごろ部46の左右の側縁部それぞれに前身ごろ部40,40の一方の側縁部が1つずつ縫い合わされ、さらに前身ごろ部40,40の他方の側縁部それぞれに、着用時に陰部を収受する前立て部4の左右の側縁部がそれぞれ縫い合わされる。そして、互いに縫い合わされた前立て部4,前身ごろ部40,40及び後身ごろ部46の下側縁部に股下まち部48が縫い合わさせる。
【0014】
とりわけ、前立て部4は、逆V字状に開かれた下部6の内側において対向する僅かに円弧状の縁部7,7を互いに縫い合わせるとともに、図2において符号8,10で示す縫合縁部(太線部)を,前身ごろ部40,40の符号42,44で示す曲線状の縫合縁部(太線部)それぞれと縫い合わせることで立体的な形状となり、失禁用パンツ1の着用感を向上させる。
【0015】
図3を参照して、前立て部4についてより詳細に説明する。図3は失禁用パンツ1の前立て部4を示す、図1におけるA−A線拡大端面図である。
【0016】
前立て部4は、着用者の肌に近い側から順に生地B18、生地A26、生地C32を備え、前述のようにパンツ生地を3重に組み合わせた構造となっている。これら生地B18、生地A26、生地C32それぞれは略同形となっているが、生地B18、生地A26の片側の縁部(図2において右側)が上下方向中央部において内側にえぐれた形状(凹部20)となっている。また、失禁用パンツ1の外側の生地となる生地C32についても、生地18、生地A26の凹部20とは逆側の縁部(図2において左側)が、上下方向中央部において内側にえぐれた形状(凹部34)となっている。
【0017】
前立て部4は、生地B18と生地A26を凹部20に沿って互いに縫い合わせたのち、生地B18、生地A26、生地C32を三枚重ねた状態で(凹部20と第3パンツ生地32の凹部34を除いた)外周縁を縫い合わせることで形成される。生地C32の凹部34と生地B18、生地A26、及び生地B18、生地A26の凹部20と生地C32はそれぞれ縫い合わされていないため、それぞれが表側開口部14,裏側開口部16を形成する。表側開口部14と裏側開口部16は前立て部4の生地A26と生地C32の間で連通し、陰茎を出し入れするための前開き開口部12を形成する。
【0018】
前立て部4は着用者の陰部を収容する箇所であり、失禁時の尿を吸収・保持する機能を備えている。本実施形態において、生地B18、生地A26、生地C32それぞれは、表面に撥水加工が施された表側の撥水部22,28,36と、裏面に吸水加工が施された裏側の吸水部24,30,38とから構成されている。吸水加工によって生地の裏面を親水化させることで、吸水部24,30,38の網目内に尿を吸い込み易くなり、網目空間に十分な水分を保持することが可能となる。また、表面の撥水加工により、網目空間に保持された水分が撥水部22,28,36を通過して外側に漏れるのを防ぐことができる。
【0019】
具体的には、着用者が失禁した場合、基本的には生地B18が尿を吸収し、吸水部24の網目内に尿を保持するとともに、撥水部22で尿が外側に漏れ出るのを防ぐ。また、補助的に適宜、配置された生地A26の吸水部30によって、尿の吸水量や保水量を多くするとともに、撥水部28で尿が外側に漏れ出るのを防ぐことができる。しかも、吸水シート等の尿吸収部材を使用しないため、尿を吸収・保持した状態で合っても通気性が良く、陰部の蒸れを防ぐことができる。
【0020】
また、前開き開口部12から陰茎を出して排尿した場合に尿道に尿が残ってしまい、陰茎をしまう際にこれが漏れ出すことがある。しかし、本実施形態においては生地Aの外側に生地Cが配置され、その生地C32も吸水部38を備えているため、陰茎をしまう際に漏れ出た尿を生地C32の吸水部38で素早く吸収することができる。さらに、生地C32は撥水部36も備えているため、生地B18、生地A26と同様に、吸水部38で吸収された尿が外側に漏れ出ることが防止される。
【0021】
なお、図示していないが、生地A26および生地B18は裏側の吸水部30あるいは24がメッシュとなっており、生地の網目が撥水部28や22よりも粗くなっている。網目を大きくすることによって、尿をより容易に網目内に吸い込むことが可能となっている。また、図3に示すように、生地B18は、生地A26及び生地C32に比べ、表側の撥水部22に対して裏側の吸水部24が厚くなっている。吸水部24を厚くすることで、陰茎からの排尿を直接受ける吸水部24においてより多量の尿を吸収できるようにしている。
【0022】
上記実施形態においては生地B18、生地A26、生地C32それぞれを前立て部4の全体形状と略同形としたが、必ずしもこれに限定されない。とりわけ、陰部と接触して直接尿を吸収する生地B18や生地A18は失禁時に尿を吸収できる位置に配置されていれば良く、前立て部4全体に渡って取り付けられている必要は無い。失禁時に尿が排出され得る箇所に設けられていればよい。
【0023】
本実施形態はトランクス型の失禁用パンツとしたが、ブリーフ型等他の形式のパンツであってもよい。また、本願発明に係る構成は、男性用の失禁パンツに限らず、女性用の失禁用パンツに用いることも可能である。その際は、例えば前立て部4に生地C32を設けず、前開き開口部12を省略した構成としても良い。
【0024】
他の実施形態として、前立て部4と、前身ごろ部40,40や股下まち部48とを撥水加工された糸で縫い合わせても良い。従来から前立て部4(又はそこに取り付けた吸水シート)で吸収した尿が糸をつたって前身ごろ部40,40等のパンツ本体2の他の部分に漏れ出してしまう問題があった。しかし、前立て部4と他の部分を撥水加工された糸で縫い合わせることにより、糸に尿が浸み込むことがないため、縫合部分から尿が浸みて広がることを防ぐことができ、失禁によってパンツ本体2の前立て部4以外の部分が濡れてしまうのを防止できる。これにより失禁後の不快感を軽減することができる。
【0025】
本発明に係る編地の生地重量および生地の厚みはJIS L 1096:2010に準じて測定を行う。
【0026】
また、本発明に係る編地の力学特性はKES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)による。(B) 及び(2HB) は編物の曲げ剛性及び曲げヒステリシスを表わす。測定は2
0 cm× 2 0 cmの試料を間隔1 cmのチャックに把持し、曲率K = − 2 . 5 〜 + 2 . 5 cm- 1 の範囲で、変形速度0
. 5 0 cm- 1 /secの等速度曲率の純曲げを行なう。(B) は試料の単位長さ当りの曲げモ− メントM
と曲率K との曲線の傾斜を表わす。ここでは、曲率K = 0 . 5 と1 . 5 との間の傾斜、曲率K = − 0 . 5 と− 1 . 5 との間の傾斜を平均した値を用いる。また(2HB)
は、曲率K = 0 . 5 〜 1 . 5 及び曲率K = − 0 . 5 〜 − 1 . 5 の範囲におけるヒステリシス幅の平均値のことである。ここでは曲率K
= 0 . 5 , 1 . 5 , − 0 . 5 , − 1 . 5 の平均値を用いる。またE M T(伸長率(%)) はKES-FB1で測定する。測定は2
0 cm× 2 0 cmの試料を間隔5 cmのチャックに把持し、4 . 0 0 × 1 0 - 3 / secの歪み速度で最大荷重2 5 0 gf/cmまで引っ張って行なう。
【0027】
本発明に係る生地Bの厚みは1.0以上1.5mm以下が好ましく、生地重量については350g/m2以下が好ましい。また、生地Bの曲げ剛性(B)は0.2g・cm/cm以下が好ましく、曲げ戻り性(2HB)は0.1g・cm/cm以下が好ましい。生地Bはより多くの尿を保水することを目的とするため、補助的に設けられる生地Aより生地の厚みや生地重量はやや高い値となるが、極力、生地の厚みは薄く、生地重量は軽くなるようにし、着用快適性を確保する。生地Bの保水量は10cm四方あたり5cc程度にすることが好ましく、それより高い保水量を確保しようとすると生地の厚みを厚くする必要が生じ、結果として生地重量も重くなり、生地が硬くなり、着用快適性を犠牲にせざるを得なくなる。
【0028】
本発明に係る生地Aの厚みは1.0mm以下が好ましい。また、生地Aの生地重量は180g/m2以下が好ましい。また生地Aの曲げ剛性(B)は0.1g・cm/cm以下が好ましい。さらに生地Aの曲げ戻り性(2HB)は0.07g・cm/cm以下が好ましい。生地Aは生地Bによって吸収保持できない分の尿を吸収保持する補助的なものであり、生地Aほど厚くする必要はない。生地の厚みや生地重量が高くなると、生地が硬くなり、着用時のゴワツキ感が強く、着用快適性を損なう。
【0029】
本発明に係る生地Cの厚みは1.0mm以下が好ましく、生地重量は180g/m2以下が好ましい。また、曲げ剛性(B)は0.1g・cm2/cm以下が好ましく、曲げ戻り性(2HB)は0.07g・cm/cm以下が好ましい。生地A、生地Bと同様に、生地の厚みや生地重量が高くなると生地が硬くなり着用時のゴワツキ感が強くなり、着用快適性を損なう。
【0030】
以下に本発明に係る実施例を記す。但しここに記した実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
パンツ本体の生地として、ポリエステル繊維56デシテックス、レーヨン84デシテックス、指定外繊維1.2デシテックス、ポリウレタン弾性繊維22デシテックスの糸を、それぞれの糸の混率がポリエステル繊維50%、レーヨン繊維24%、指定外繊維20%、ポリウレタン弾性繊維6%となるように丸編機を用いて編成し、所定の染色仕上げ加工を施した。また、前立て部の生地Aおよび生地Cはポリエステル繊維84dtex−72フィラメントの仮ヨリ加工糸を用い、生地Bはポリエステル繊維167dtex−48フィラメントの仮ヨリ加工糸を用い、それぞれダブル丸編機を用いて、生地の表面はプレーンな天竺組織とし、肌面をメッシュ編組織で編成した。前記の編成によって得られた生地A、生地B、生地Cの編地を所定の染色仕上げ加工にて加工した後に、それぞれの編地の肌面に吸水剤を付与して乾燥させ、その後にロータリースクリーン捺染機を用いて撥水剤を生地の表面に印捺処理にて印捺した後に乾燥および熱処理を施して撥水機能をもたせ、所定の仕上げ処理を行った。前記の加工処理によって得られた生地Aの厚みは0.83mmであり生地重量は169g/m2であった。また生地Aの曲げ剛性(B)は0.075g・cm/cmであり、曲げ戻り性(2HB)は0.048g・cm/cmであった。また、生地Bの厚みは1.31mm、生地重量は312g/mであり、曲げ剛性(B)は0.187g・cm/cm、曲げ戻り性(2HB)は0.095g・cm/cmであった。また、生地Cの厚みは0.75mm、生地重量は161g/m2、曲げ剛性(B)は0.071g・cm/cm、曲げ戻り性(2HB)は0.042g・cm/cmであった。
前記のパンツ本体の生地と前立て部の生地A、生地B、生地Cと所定のウェストゴムを用いて縫製し失禁用パンツを作製した。このようにして得られた失禁用パンツを実着用テストを実施した結果、外観はスポーティーであり通常の下着と変わらず、失禁時の尿をしっかり保水し、かつパンツの表面に尿のにじみは認められなかった。また着装感についても軽量であり風合いが柔らかく、着用時のゴワツキ感が少なく良好な着用快適性が確認された。
<比較例1>
パンツ本体の生地は実施例1と同様の素材を用い、前立て部の生地Aおよび生地Cはポリエステル繊維167dtex−48フィラメントの仮ヨリ加工糸を用い、生地Bはポリエステル繊維235dtex−72フィラメントの仮ヨリ加工糸を用い、それぞれダブル丸編機を用いて、生地の表面および肌面ともにプレーンな天竺組織で編成した。前記の編成によって得られた生地A、生地B、生地Cの編地を所定の染色仕上げ加工にて加工した後にそれぞれの編地の肌面に吸水剤を付与して乾燥させ、その後にロータリースクリーン捺染機を用いて撥水剤を生地の表面に印捺処理にて印捺した後に乾燥および熱処理を施して撥水機能をもたせ、所定の仕上げ処理を行った。前記の加工処理によって得られた生地Aの厚みは1.35mmであり生地重量は324g/m2であった。また生地Aの曲げ剛性(B)は0.192g・cm/cmであり、曲げ戻り性(2HB)は0.098g・cm/cmであった。また、生地Bの厚みは1.95mm、生地重量は491g/m2であり、曲げ剛性(B)は0.288g・cm/cm、曲げ戻り性(2HB)は0.147g・cm/cmであった。また、生地Cの厚みは1.32mm、生地重量は318g/m2、曲げ剛性(B)は0.189g・cm/cm、曲げ戻り性(2HB)は0.091g・cm/cmであった。
前記のパンツ本体の生地と前立て部の生地A、生地B、生地Cと所定のウェストゴムを用いて縫製し失禁用パンツを作製した。このようにして得られた失禁用パンツを実着用テストを実施した結果、失禁時の尿の保水効果やパンツ表面への尿のにじみは認められなかったが、外観は前立て部が厚く盛り上がって通常の下着の様には見えず、重量感があり風合いも硬く、着用時に前立て部がゴワツキ、着装感は不快であることが確認された。
【符号の説明】
【0031】
1:失禁用パンツ 2:パンツ本体 4:前立て部 12:前開き開口部 18:生地B 22:撥水部 24:吸水部 26:生地A 28:撥水部 30:吸水部 32:生地C 36:撥水部 38:吸水部 40:前身ごろ部 46:後身ごろ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立て部と、該前立て部の両側縁部にそれぞれ一方の側縁部が連結される2つの前身ごろ部と、左右の側縁部が2つの前記前身ごろ部の他方の側縁部にそれぞれ連結される後身ごろ部とを有する、ニット地からなるパンツ本体を備える失禁用パンツにおいて、
前記前立て部には、生地Bと、該生地Bの外側に位置する生地Aとを備え、
前記生地B及びAは、表側が撥水加工され、裏側が吸水加工されていることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項2】
請求項1記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Bは厚みが1.0mm以上1.5mm以下、生地重量が350g/m以下、曲げ剛性(B)が0.2g・cm/cm以下、曲げ戻り性(2HB)が0.1g・cm/cm以下であることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Bの裏側はメッシュ構造となっていることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Aは、厚みが1.0mm以下、生地重量が180g/m以下、曲げ剛性(B)が0.1g・cm/cm以下、曲げ戻り性(2HB)が0.07g・cm/cm以下であることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Aの裏側はメッシュ構造となっていることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1記載の失禁用パンツにおいて、
前記前立て部はさらに、前記生地Aの外側に生地Cを備え、
前記生地Aと生地Cとの間に、前記失禁用パンツの前開き開口部が形成されていることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項7】
請求項6記載の失禁用パンツにおいて、
前記生地Cは、表側が撥水加工され、裏側が吸水加工されていることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項8】
請求項6または7に記載の失禁用パンツにおいて、前記生地Cは、厚みが1.0mm以下、生地重量が180g/m2以下、曲げ剛性(B)が0.1g・cm/cm以下、曲げ戻り性(2HB)が0.07g・cm/cm以下であることを特徴とする、失禁用パンツ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1記載の失禁用パンツにおいて、
前記前立て部と前記前身ごろ部は撥水加工された糸で縫い合わされることを特徴とする、失禁用パンツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−100632(P2013−100632A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232598(P2012−232598)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【出願人】(594137960)株式会社ゴールドウイン (19)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】