説明

失禁用ライナー

【課題】吸収体内における被吸収液の速やかな拡散を確保しつつ、被吸収液の漏れを抑制する。
【解決手段】失禁用ライナーは、液透過性の肌当接側シートと、液不透過性の肌非当接側シートと、これら肌当接側シート及び肌非当接側シート間に配置された、吸収材を含む吸収体6と、を備える。吸収材は30から70質量%の高吸収ポリマーを含む。吸収体6は、着用時に着用者の排尿位置UPに位置される吸収部分6Aと、吸収部分6Aの周りに吸収体6の周縁6Pまで拡がる拡散部分6Dと、拡散部分6D内に点在された拡散抑制部分6Sと、を含む。拡散部分6Dの平均吸収材密度は吸収部分6Aの平均吸収材密度よりも高く、拡散抑制部分6Sの平均吸収材密度は拡散部分6Dの平均吸収材密度よりも低い。吸収部分6Aが吸収体6の他の部分よりも肌当接側シートに向けて突出すると共に、拡散抑制部分6Sが拡散部分6Dよりも肌当接側シートに向けて突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は失禁用ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
液透過性の肌当接側シートと、液不透過性の肌非当接側シートと、これら肌当接側シート及び肌非当接側シート間に配置された、吸収材を含む吸収体と、を備える吸収性物品であって、吸収体が中央の肉厚部とその周りの薄肉部とを備え、被吸収液が肉厚部から吸収体内に吸収され、次いで肉厚部から薄肉部内に拡散するようにした吸収性物品が公知である(特許文献1参照)。このようにすると、被吸収液を速やかに吸収体内に取り込むことができ、したがって被吸収液が吸収体内に吸収されずに漏れる可能性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−237382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1において、肉厚部での被吸収液の速やかな吸収のことを考えると、被吸収液が薄肉部内を速やかに拡散するのが好ましいと考えられる。
【0005】
しかしながら、被吸収液が薄肉部内を過度に速やか拡散すると、被吸収液が吸収体の周縁から漏れるおそれがあるという問題点がある。すなわち、吸収体内における被吸収液の拡散速度を抑制する必要があるのである。尿の粘性は経血のそれよりも低いので、吸収性物品が失禁用ライナーであり被吸収液が主として尿の場合には、吸収性物品が生理用ナプキンであり被吸収液が主として経血の場合に比べて、上述の課題は深刻である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、液透過性の肌当接側シートと、液不透過性の肌非当接側シートと、これら肌当接側シート及び肌非当接側シート間に配置された、吸収材を含む吸収体と、を備える失禁用ライナーであって、吸収体が、着用時に着用者の排尿位置に位置される吸収部分と、吸収部分の周りに吸収体の周縁まで拡がる拡散部分と、拡散部分内に点在された拡散抑制部分と、を含み、拡散部分の平均吸収材密度は吸収部分の平均吸収材密度よりも高く、拡散抑制部分の平均吸収材密度は拡散部分の平均吸収材密度よりも低く、吸収部分が吸収体の他の部分よりも肌当接側シートに向けて突出すると共に、拡散抑制部分が拡散部分よりも肌当接側シートに向けて突出する、ライナーが提供される。
【発明の効果】
【0007】
吸収体内における被吸収液の速やかな拡散を確保しつつ、被吸収液の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】失禁用ライナーの平面図である。
【図2】図1の線M−Mに沿ってみた縦断面図である。
【図3】失禁用ライナーの背面図である。
【図4】吸収体の平面図である。
【図5】被吸収液の流れを説明する概略図である。
【図6】拡散抑制部分及び拡散部分の部分概略縦断面図である。
【図7】圧搾溝の部分概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、失禁用ライナー1は、長円状の本体2と、本体2の側部から幅方向外向きに突出する一対のウイング3とを備える。
【0010】
特に図2に示されるように、本体2は、互いに重ね合わされた肌当接側シート4及び肌非当接側シート5と、これら肌当接側シート4と肌非当接側シート5との間に配置された吸収体6と、肌当接側シート4と吸収体6との間に配置されたクッションシート7とを含んで構成される。一方、ウイング3は、肌当接側シート4の側縁を越えて幅方向外向きに拡がる肌非当接側シート5の部分5aと、部分5aに重ね合わされたサイドシート8とを含んで構成される。ここで、肌当接側シート4と肌非当接側シート5、肌非当接側シート部分5aとサイドシート8はそれぞれ、例えばホットメルト接着剤、ヒートシール加工等により互いに接合される。なお、本発明による実施例では、サイドシート8は肌当接側シート4にも重ね合わされ接合されており、したがって本体2はサイドシート8をも含んで構成されている。また、肌非当接側シート5はウイング3まで延びなくてもよい。この場合、ウイング3は、サイドシート8のみ、又はサイドシート8とこれに重ねられる別シートとから構成することができる。
【0011】
また、図2及び図3に示されるように、本体2の裏面に対応する肌非当接側シート5の外面には、幅方向に互いに離間しつつ縦方向に互い平行に延びる帯状の粘着剤9が適用され、ウイング3の裏面に対応する肌非当接側シート5の外面には粘着剤10が適用される。
【0012】
更に、ライナー1には、肌当接側シート4から吸収体6に到る一対の圧搾溝11が形成される。本発明による実施例では、圧搾溝11はその長さ方向に交互に繰り返された深溝及び浅溝から構成される。なお、圧搾溝11がその長さ方向に連続する深溝から構成されるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明による実施例ではライナー1は縦方向中心線L−L及び幅方向中心線M−Mに関しそれぞれ対称的に形成されている。
【0014】
肌当接側シート4は液透過性を有し、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート等ポリオレフィン系の熱可塑性疎水性繊維を親水処理した織布や不織布、パルプやコットン等の天然繊維、レーヨン当のセルロース繊維から構成される。本発明による実施例では、肌当接側シート4として、PE/PP繊維からなる20から40g/mのエアスルー不織布が使用される。
【0015】
肌非当接側シート5は液不透過性及び透湿性を有し、例えば疎水性の不織布、不透水性のプラスチックフィルム、不織布と不透水性プラスチックフィルムとのラミネートシート、耐水性の高いメルトブローン不織布、強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布から構成される。本発明による実施例では、肌非当接側シート5として、20から35g/m程度の非透湿性PEフィルムが使用される。なお、肌非当接側シート5を非透湿性を有する材料から構成することもできる。
【0016】
吸収体6は液保持性を有し、吸収材を含んで構成される。吸収材は例えばフラッフ状パルプ又はエアレイド不織布と、粒状の高吸収ポリマー(SAP)とを含む。ここで、フラッフ状パルプは例えば化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維から構成され、エアレイド不織布は例えばパルプと合成繊維とを熱融着させ又はバインダーで固着させた不織布から構成され、SAPは例えばデンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーから構成される。なお、本発明による実施例では、吸収体6はパルプ及びSAPからなる吸収材を薄葉紙又は液透過性のスパンボンド不織布,SMS不織布等で包むことによって形成される。
【0017】
ここで、吸収材の質量すなわちパルプ及びSAPの合計質量に対する、SAPの質量比をSAP質量比と称すると、本発明による実施例では、SAP質量比が30から70質量パーセントに設定される。SAP質量比が30質量パーセントよりも小さいと、液拡散性を付与するための十分な吸収材密度を確保することが困難となる。SAP質量比が70質量パーセントよりも大きいと、パルプなどの繊維成分が相対的に不足し、高吸収ポリマーのゲルブロッキング現象が発生しやすくなり、それにより、液拡散性が低下し、又は、着用時に吸収体に作用する外力により吸収体が崩れるおそれがある。なお、生理用ナプキンのSAP質量比は一般に0〜10質量パーセントであり、多くても20質量パーセントであるので、本発明に係る失禁用ライナーはこの点で生理用ナプキンと構成を異にする。
【0018】
クッションシート7は例えばポリオレフィン系の熱可塑性疎水性繊維を親水処理した不織布から構成される。不織布としてはエアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布等が用いられる。本発明による実施例では、クッションシート7として、PE/PP繊維からなる20〜40g/mのエアスルー不織布が使用される。
【0019】
サイドシート8は例えばポリオレフィン系の熱可塑性疎水性繊維の不織布から構成される。不織布としてはエアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布等が用いられる。本発明による実施例では、サイドシート8として、PE/PP繊維からなる15〜35g/mのエアスルー不織布が使用される。
【0020】
粘着剤9,10は例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−エチレン共重合体(SEBS)等のホットメルト粘着剤から構成される。
【0021】
吸収体6は図4に示されるように、幅方向に延びる区画線DF,DRによって互いに区画された、前領域6Fと、後領域6Rと、これら前領域6F及び後領域6R間の中間領域6Iとを含む。この場合、前領域6Fは吸収体6の前端6EFと前方区画線DFとの間に、中間領域6Iは前方区画線DFと後方区画線DRとの間に、後領域6Rは後方区画線DRと吸収体6の後端6ERとの間に、それぞれ区画される。
【0022】
中間領域6Iの縦方向及び幅方向の中央部分には、縦方向に沿って拡がる長円状の吸収部分6Aが設けられ、吸収部分6A周りの中間領域6Iには高拡散部分6DHIが設けられる。
【0023】
前領域6F及び後領域6Rの幅方向中央部分にはそれぞれ、吸収部分6Aから縦方向に延びる高拡散部分6DHF,6DHRが設けられる。また、高拡散部分6DHF,6DHRの両側、すなわち前領域6F及び後領域6Rの幅方向周辺部分にはそれぞれ、低拡散部分6DLF,6DLRが設けられる。なお、高拡散部分6DHI,6DHF,6DHR及び低拡散部分6DLF,6DLRは吸収体6の周縁6Pまで拡がっている。
【0024】
更に、前領域6F及び後領域6Rには、拡散抑制部分6Sが点在して設けられる。すなわち、高拡散部分6DHF,6DHR内及び低拡散部分6DLF,6DLR内に拡散抑制部分6Sが不連続に設けられる。なお、本発明による実施例では拡散抑制部分6Sは中間領域6Iに設けられない。しかしながら、拡散抑制部分6Sを中間部分6Iに設けてもよい。あるいは、拡散抑制部分6Sを前領域6Fのみ又は後領域6Rのみに設けるようにしてもよい。
【0025】
したがって、拡散部分6Dが高拡散部分6DHI,6DHF,6DHR及び低拡散部分6DLF,6DLRによって構成されると考えると、吸収体6は、吸収部分6Aと、吸収部分6Aの周りに吸収体6の周縁まで拡がる拡散部分6Dと、拡散部分6D内に点在された拡散抑制部分6Sとを含むということになる。また、吸収部分6Aが中間領域6I内に設けられ、拡散部分6Dが吸収部分6A周りの中間領域6Iと、前領域6F及び後領域6Rとに設けられ、拡散抑制部分6Sが、中間領域6Iに設けられることなく、前領域6F及び後領域6Rの少なくとも一方において拡散部分6D内に点在して設けられるということになる。
【0026】
なお、本発明による実施例では吸収体6は縦方向中心線L−L及び幅方向中心線M−Mに関しそれぞれ対称的に形成されている。
【0027】
吸収部分6A、高拡散部分6DHI,6DHF,6DHR、低拡散部分6DLF,6DLR、拡散抑制部分6Sは平均吸収材密度が互いに異なっている。すなわち、吸収体6の部分xの平均吸収材密度をD(x)と表すとすると、D(6D)>D(6A)とされている。また、D(6S)<D(6D)とされ、特に本発明による実施例ではD(6S)<D(6A)とされている。更に、D(6DHI,6DHF,6DHR)>D(6DLF,6DLR)とされている。
【0028】
すなわち、D(6S)<D(6A)<D(6DLF,6DLR)<D(6DHI,6DHF,6DHR)とされている。
【0029】
なお、D(6A)=0.1〜0.18g/cm、D(6DHI,6DHF,6DHR)=0.2〜0.3g/cm、D(6DLF,6DLR)=0.15〜0.25g/cm、D(6S)=0.01〜0.09g/cmが好ましい。実際の製品では、D(6A)=0.15g/cm、D(6DHI,6DHF,6DHR)=0.26g/cm、D(6DLF,6DLR)=0.18g/cm、D(6S)=0.03g/cmであった。
【0030】
着用時、本体2は粘着剤9によって着用者の下着のような衣類の内面に固着され、ウイング3は粘着剤10によって衣類の外面に固着される。すなわち、本体2及びウイング3間に衣類を挟むことによりライナー1が衣類の内側に固定される。なお、ライナー1が固定される衣類は一般的に、胴回り及び脚回りが伸縮するパンツ形状をなしており、着用者の胴回り及び脚回りにフィットすることで、生地全体が着用者の肌に沿うことになる。その結果、衣類の内側に固定されるライナー1も着用者の肌に沿って、股部を中心として前後方向に延びる状態で、着用されることになる。
【0031】
この場合、ライナー1は衣類の股部の、前後方向のほぼ中央に固定される。その結果、着用者の排尿位置UP(図4)が吸収体6の吸収部分6A、特に吸収部分6Aのうち前領域6Fに近い位置に位置することになる。したがって、主として尿から構成される被吸収液は主として吸収部分6Aに吸収される。吸収部分6Aは吸収材密度が低いので、被吸収液は吸収部分6A内をゆっくりと拡散する。被吸収液が次いで拡散部分6D(高拡散部分及び低拡散部分)に達すると、拡散部分6Dは吸収材密度が高いので、被吸収液は毛細管現象でもって拡散部分6D内に引き込まれ、拡散部分6D内を速やかに拡散する。
【0032】
被吸収液が次いで拡散抑制部分6Sに達すると、拡散抑制部分6Sの吸収材密度が低いので、図5に矢印Uで示されるように被吸収液は拡散抑制部分6Sを迂回して拡散部分6D内を進行する。あるいは、拡散抑制部分6S内をゆっくりと拡散する。その結果、被吸収液の拡散速度が低下され、したがって被吸収液が吸収体6の周縁から漏れるのを抑制することができる。
【0033】
また、拡散部分6D内において、被吸収液が高拡散部分6DHI,6DHF,6DHRから低拡散部分6DLF,6DLRに流入することによっても、被吸収液の拡散速度が抑制される。低拡散部分6DLF,6DLRの平均吸収材密度がより低いからである。
【0034】
ここで、吸収体6の部分xの平均吸収材密度D(x)(g/m)は当該部分xにおける吸収材の平均坪量(g/m)を当該部分xの平均厚さ(mm)で割り算して得られるものである。本発明による実施例では、吸収材はパルプ及びSAPから構成されるので、吸収材の坪量はパルプ及びSAPの坪量の合計となる。
【0035】
吸収体6の平均吸収材密度は例えば次のようにして設定される。すなわち、吸収体6の部分xの平均パルプ坪量及び平均SAP坪量をそれぞれBP(x),BS(x)で表すとすると、BP(6A)>BP(6D)>BP(6S)となるように、BS(6A)>BS(6D)>BS(6S)となるように吸収体6が形成される。したがって、部分xの平均吸収材坪量をB(x)で表すとすると、B(6A)>B(6D)>B(6S)となるように吸収体6が形成される。ここで、高拡散部分6DHI,6DHF,6DHRの平均パルプ坪量及び平均SAP坪量はそれぞれ互いにほぼ等しくされ、平均吸収材坪量も互いにほぼ等しくされる。
【0036】
また、部分xの平均厚さをT(x)で表すとすると、T(6A)>T(6DLF,6DLR)>T(6DHI,6DHF,6DHR)となるように吸収体6が形成される。ここで、高拡散部分DHI,6DHF,6DHRの厚さ及び低拡散部分6DLF,6DLRの厚さはそれぞれ互いにほぼ等しくされている。
【0037】
なお、T(6A)=4.0〜6.0mm、T(6DHI,6DHF,6DHR)=1〜1.5mm、T(6DLF,6DLR)=1.2〜2.2mm、T(6S)=2.5〜3.5mmが好ましい。実際の製品では、T(6A)=5.0mm、T(6DHI,6DHF,6DHR)=1.3mm、T(6DLF,6DLR)=1.9mm、T(6S)=2.8mmであった。ここで、厚さの測定は厚み測定器(株式会社尾崎製作所製 ダイヤルシックネスゲージ 型式H−0.4N、仕様上の測定力初圧が「0.4N以下」とされているもの)を用いて行われた。この場合、直径10mmの円形の測定子が用いられた。
【0038】
具体的に説明すると、吸収体6は、例えば通気性を有する型であるメッシュパターン上にパルプ及びSAPを積層することにより形成される。このメッシュパターンには、吸収部分6Aに対応する位置に凹部が形成されており、拡散抑制部分6Sに対応する位置に凸部が形成されている。その結果、吸収部分6Aの吸収材坪量が大きくなり、拡散抑制部分6Sの吸収材坪量Bが小さくなる。次いで、吸収部分6A、低拡散部分6DLF,6DLR、高拡散部分6DHI,6DHF,6DHR、拡散抑制部分6Sに対応する突起を有するプレスローラーでもって吸収体6がプレスされる。例えば、高拡散部分6DHI,6DHF,6DHRに対応する突起の高さは高くされており、拡散抑制部分6Sに対応する突起の高さは低くされている。その結果、高拡散部分6DHI,6DHF,6DHRの厚さが小さくなり、拡散抑制部分6Sの高さが大きくなる。なお、上述したプレスによって吸収材6の表面及び裏面の一方又は両方にわずかな凹凸が形成され、吸収材6の部分xの厚さが均一でない場合がある。このため、上述の説明では平均厚さを用いている。
【0039】
この場合、図2に示されるように、吸収部分6Aは吸収体6の他の部分よりも肌当接側シート4すなわち着用者に向けて突出している。その結果、吸収部分6Aが着用者の排尿位置UP(図4)に確実に当接され、被吸収液が確実に吸収部分6Aから吸収される。
【0040】
また、図6に示されるように、拡散抑制部分6Sは隣接する高拡散部分6DHF,6DHR及び低拡散部分6DLF,6DLRよりも肌当接側シート4すなわち着用者に向けて突出している。その結果、被吸収液が拡散抑制部分6S内を拡散したとしても、被吸収液は矢印Uで示されるように、主として拡散抑制部分6Sの底部を拡散し、拡散抑制部分6Sの頂部をほとんど拡散しない。その結果、ライナー1が着用者に押し付けられた場合でも、一旦吸収された被吸収液が着用者の肌に付着するのを抑制することができ、したがって着用者の肌をドライな状態に維持することができる。特に、前領域6Fには、着用者の体のふくらみが当たり圧力が作用する傾向にあるので、前領域6Fに拡散抑制部分6Sを設けるのが好ましい。また、着用者が座り又はかがんだ場合には、後領域6Rに圧力が作用する傾向にあるので、後領域6Rにも拡散抑制部分6Sを設けるのが好ましい。
【0041】
また、図6に示されるように、拡散抑制部分6Sはテーパー状をなしている。この場合、例えば拡散抑制部分6Sの中心部分6SCの厚さは周辺部分6SPの厚さよりも大きく、したがって中心部分6SCの平均吸収材密度は周辺部分6SPの平均吸収材密度よりも低くなっている。その結果、被吸収液が拡散抑制部分6S内を拡散したとしても、被吸収液は主として周辺部分6SP内を拡散し、頂部を含む中心部分6SC内をほとんど拡散しない。
【0042】
更に、拡散抑制部分6S同士間において、肌当接側シート4と拡散部分6D(高拡散部分及び低拡散部分)との間に空隙12が形成される。その結果、吸収体6から肌当接側シート4に戻るのを更に抑制することができ、着用者の肌を長時間にわたりドライな状態に維持することができる。
【0043】
再び図4を参照すると、上述のウイング3は吸収体6の中間領域6Iに隣接して位置している。この場合、中間領域6Iには、比較的高密度でありしたがって比較的硬い高拡散部分6DHIが設けられている。このような硬質部位は着用時に着用者の動きによる体圧の付与や曲げ力に耐えることができる。その結果、着用時にウイング3周りにおいてライナー1にシワないしヨレが生じるのが抑制され、したがってライナー1を衣類に長時間にわたり確実に固定し続けることができる。なお、一般に、失禁用ライナー1の交換頻度は生理用ナプキンと比べて少なく、したがってライナー1の着用時間は長いので、ライナー1の長時間にわたる確実な固定が要求されている。
【0044】
また、比較的硬質の3つの高拡散部分6DHI,6DHF,6DHRが縦方向、すなわち着用者の前後方向に並べて設けられる。その結果、縦方向に延びる粘着剤9(図3)にシワないしヨレが生ずるのが抑制され、したがって着用者がライナー1を衣類に固定するのが容易になる。また、ライナー1全体のシワないしヨレの発生も抑制することができるので、吸収体6における被吸収液の拡散を狙い通り実現することができる。
【0045】
更に、図4に示されるように、上述の圧搾溝11は吸収部分6Aの両側の中間領域6Iから前領域6F及び後領域6Rまで延びている。その結果、吸収体6が圧搾溝11に沿って折れ曲がることが可能となり、ライナー1が着用者の身体に追従して変形することが可能となる。また、圧搾溝11の吸収材密度は比較的高いので、被吸収液は圧搾溝11内をも拡散して前領域6F及び後領域6Rに到り、更に拡散する。
【0046】
一方、前領域6F及び後領域6Rには、比較的低密度でありしたがって比較的柔らかい拡散抑制部分6Sが設けられている。その結果、ライナー1が着用者の身体に追従して変形することが可能となる。この場合、拡散抑制部分6Sが点在して設けられるので、すなわち不連続に設けられるので、前領域6F及び後領域6Rが過度に柔らかくなく、前領域6F及び後領域6Rに好ましくないシワないしヨレが生ずるのを抑制できる。
【0047】
ここで、図3を参照しつつ図7を参照すると、粘着剤9は圧搾溝11の前端11F周りの幅方向両側に位置すると共に、前端11Fを越えて縦方向前方に延びている。同様に、粘着剤9は圧搾溝11の後端11R周りの幅方向両側に位置すると共に、後端11Rを越えて縦方向後方に延びている。
【0048】
このようにすると、圧搾溝11の前端11F周り及び後端11R周りがそれぞれ2つの粘着剤9によって囲まれることになる。その結果、ライナー1が圧搾溝11に沿って折れ曲がっても、ライナー1が衣類Cに確実に固定され続け、したがってライナー1にシワないしヨレが生ずるのを抑制することができる。
【0049】
一方、粘着剤9は圧搾溝11の前端11F周り及び後端11R周り、特にその底部11Bと重なっていない。すなわち、圧搾溝11、特にその底部11Bに対面するライナー1ないし肌非当接側シート5の外面に、粘着剤不存在領域1xが設けられる。その結果、圧搾溝11に沿うライナー1の変形が粘着剤9によって妨げられない。したがって、着用時にライナー1の変形したときに、ライナー1が着用者の身体に容易に追従することができる。
【0050】
なお、上述した特許文献1には点在する空間層が開示されており、この空間層が本発明の拡散抑制部分に対応するかに見える。しかしながら、特許文献1では吸収材密度をまったく考慮しておらず、空間層の吸収材密度がその周囲の層の吸収材密度よりも低いか否かがわからない。また、引用文献1では、被吸収液の拡散速度の抑制という技術的課題について何ら開示されておらず、当然、その解決手段も開示されていない。
【符号の説明】
【0051】
1 失禁用ライナー
2 本体
3 ウイング
4 肌当接側シート
5 肌非当接側シート
6 吸収体
6A 吸収部分
6D 拡散部分
6S 拡散抑制部分
7 クッションシート
8 サイドシート
9,10 粘着剤
11 圧搾溝
12 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の肌当接側シートと、液不透過性の肌非当接側シートと、これら肌当接側シート及び肌非当接側シート間に配置された、吸収材を含む吸収体と、を備え、吸収材は30から70質量%の高吸収ポリマーを含む失禁用ライナーであって、
吸収体が、着用時に着用者の排尿位置に位置される吸収部分と、吸収部分の周りに吸収体の周縁まで拡がる拡散部分と、拡散部分内に点在された拡散抑制部分と、を含み、拡散部分の平均吸収材密度は吸収部分の平均吸収材密度よりも高く、拡散抑制部分の平均吸収材密度は拡散部分の平均吸収材密度よりも低く、
吸収部分が吸収体の他の部分よりも肌当接側シートに向けて突出すると共に、拡散抑制部分が拡散部分よりも肌当接側シートに向けて突出する、
ライナー。
【請求項2】
前記拡散抑制部分の平均吸収材密度が前記吸収部分の平均吸収材密度よりも低い、請求項1に記載のライナー。
【請求項3】
前記吸収体が、前領域と、後領域と、これら前領域及び後領域間の中間領域と、を含み、
前記吸収部分が前記中間領域内に設けられ、
前記拡散部分が前記吸収部分周りの中間領域と、前記前領域及び後領域とに設けられ、
前記拡散抑制部分が、前記中間領域に設けられることなく、前記前領域及び後領域の少なくとも一方において前記拡散部分内に点在して設けられる、
請求項1又は2に記載のライナー。
【請求項4】
前記拡散部分が高拡散部分及び低拡散部分を含み、前記高拡散部分の平均吸収材密度は前記低拡散部分の平均吸収材密度よりも高く、
前記高拡散部分が前記吸収部分周りの前記中間領域と、前記前領域及び後領域の幅方向中央部分とに設けられ、
前記低拡散部分が前記前領域及び後領域の幅方向周辺部分に設けられる、
請求項3に記載のライナー。
【請求項5】
前記ライナーが、前記ライナーを衣類に固定するための一対のウイングであって、前記中間領域に隣接して設けられるウイングを備える、請求項4に記載のライナー。
【請求項6】
前記ライナーが、前記吸収部分の両側から前記前領域及び後領域までそれぞれ延びる一対の圧搾溝を備える、請求項3から5までのいずれか一項に記載のライナー。
【請求項7】
前記拡散抑制部分がテーパー状をなしている、請求項1から6までのいずれか一項に記載のライナー。
【請求項8】
液透過性の肌当接側シートと、液不透過性の肌非当接側シートと、これら肌当接側シート及び肌非当接側シート間に配置された、吸収材を含む吸収体と、を備え、吸収材は30から70質量%の高吸収ポリマーを含む失禁用ライナーであって、
前記吸収体が、前領域と、後領域と、これら前領域及び後領域間の中間領域と、を含み、
前記吸収体が、前記中間領域に設けられかつ着用時に着用者の排尿位置に位置される吸収部分と、前記吸収部分周りの前記中間領域並びに前記前領域及び後領域の幅方向中央部分とに設けられた高拡散部分と、前記前領域及び後領域の幅方向周辺部分に設けられた低拡散部分と、前記中間領域に設けられることなく、前記前領域及び後領域の少なくとも一方において前記拡散部分内に点在して設けられる拡散抑制部分と、を含み、高拡散部分及び低拡散部分は吸収体6の周縁まで拡がっており、前記高拡散部分及び低拡散部分の平均吸収材密度は前記吸収部分の平均吸収材密度よりも高く、前記拡散抑制部分の平均吸収材密度は前記高拡散部分及び低拡散部分の平均吸収材密度よりも低く、前記高拡散部分の平均吸収材密度は前記低拡散部分の平均吸収材密度よりも高く、
吸収部分が吸収体の他の部分よりも肌当接側シートに向けて突出すると共に、拡散抑制部分が拡散部分よりも肌当接側シートに向けて突出し、
前記拡散抑制部分がテーパー状をなしており、
前記ライナーが、前記ライナーを衣類に固定するための一対のウイングであって、前記中間領域に隣接して設けられるウイングを備え、
前記ライナーが、前記吸収部分の両側から前記前領域及び後領域までそれぞれ延びる一対の圧搾溝を備える、
ライナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−50579(P2012−50579A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194643(P2010−194643)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】