説明

女性尿失禁防止装置

【課題】完全に尿道をブロックすることなく尿道支持を提供し、かつ着脱が容易な尿失禁防止用装置を提供することを目的とする。
【解決手段】尿失禁治療のための装置であって、ノードと、尿道を支持するためのサポート部であって、ノードから放射状に延びる複数の支持アームからなるサポート部と、 装置を膣内に固定するための固着部であって、サポート部と反対の位置においてノードから放射状に延びる複数の固定アームからなる固着部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2003年5月22日に出願されたイスラエル国特許出願第156070号及び2003年7月27日に出願されたイスラエル国特許出願第157117号、による優先権を主張する、2004年5月20日に出願されたPCT出願PCT/IL2004/000433の一部継続出願であり、これらの開示内容は参照によりここに組み込まれる。本願はまた、米国特許法119条(3)に基づく、2004年3月18日に出願された米国仮出願第60/553,964号、2004年3月25日に出願された米国仮出願第60/555,977号、2004年5月13日に出願された米国仮出願第60/570,469号、2004年5月13日に出願された米国仮出願第60/570,535号、2004年8月5日に出願された米国仮出願第60/598,835号、及び2004年8月19日に出願された米国仮出願第60/602,636号、の利益を請求するものである。これらの開示内容は参照によりここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、一般に女性の尿失禁に関連する。例えば女性の失禁を予防するためのデバイスを提供する。
【背景技術】
【0003】
尿失禁は女性の間で広く見られる問題である。50%に及ぶ女性が不随意な尿漏れを時折起こしており、この問題に対処するために約25%の女性がいずれは医療相談が必要になると推定されている。最も一般的なタイプの尿失禁である緊張性尿失禁とは、運動中や咳、くしゃみ、笑ったときなどに起こる腹圧亢進による不随意の尿漏れのことをいう。緊張性尿失禁が起こる場合、通常は、骨盤底の高さより下方に位置する尿道と膀胱頚部の異常な下垂が原因となる。多くの様々な要因が緊張性尿失禁の進行に寄与するが、35〜65歳の女性や複数回の普通分娩を経験した女性の間で最もよく見られる。緊張性尿失禁は女性にとって苛立たしく不快であり、当惑させるようなこともある。多くの女性は、失禁に対処するために、生理用ナプキン又はおむつを装着しているが、これはこの問題の真の解決策ではなく、非常に不便で頼りない場合もある。外科治療は、膀胱頚部を骨盤底より上に持ち上げるために、尿道傍の組織を恥骨の骨膜又は腹直筋筋膜に固定することを伴う場合があり、それによって膀胱、膀胱頚部、及び尿道中央部へ圧力を均一に分布させる。最近では、「TVT(Tension Free Vaginal Tape)」として知られる方法が開発されている。そこでは、尿道中央部の下部にメッシュ・テープが埋め込まれ、腹圧が上昇するときに尿道がその上でよじれるハンモックを形成する。しかしながら、外科手術は重篤なケースに対してのみ適しており、女性の大多数は外科的解決策を必要としない失禁に悩んでいる。
【0004】
非外科的治療の一つの種類は、医師又は女性自身によって膣内に挿入されるデバイスの使用を伴う。ほとんどのデバイスは、尿道を通る尿の流れを抑制又は完成に遮断するように、膀胱頚部に対して圧力を加えるように設計されている。従来技術において、様々なそのようなデバイスが知られている。例えば、Moserに付与された「尿失禁デバイス」と題する米国特許出願第2002/0183711号、Jensenらに付与された「不随意排尿防止用デバイス」と題する米国特許第6,739,340号、Zunkerらに付与された「弾性失禁挿入部とその製造方法」と題する米国特許第6,679,831号、「女性の失禁制御デバイス」と題する米国特許第6,460,542号、Biswasに付与された「膣内デバイス」と題する米国特許第6,413,206号、Kreschに付与された「女性失禁の治療方法」と題する米国特許第5,785,640号、Martellyに付与された「ペッサリー」と題する米国特許第5,771,899号、Reimerに付与された「女性の不随意排尿防止のための膣の処置のためのデバイス及びデバイス挿入に使用するアプリケータ」と題する米国特許第5,618,256号、Jumaに付与された「女性用抗失禁デバイス」と題する米国特許第5,417,226号、Biswasに付与された「尿失禁デバイス」と題する米国特許第5,386,836号、Enhorningに付与された「女性用失禁デバイス」と題する米国特許第5,007,894号、及び、Biswasに付与された「尿失禁デバイス」と題する米国特許第4,920,986号である。これらの開示内容は参照によりここに組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上にリストしたデバイスの多くにおける一つの問題は、それらが、完全に尿道をブロックしてしまい、したがって、女性に排尿を許容するためには、それらを取り除くか、折り畳む必要があることである。この難点を克服するために、膀胱頚部を完全はブロックしない特殊化した形状を有する膣デバイスが開発されてきた。しかし、これらのデバイスは、大きい、装着の心地がよくない、及び煩わしい、といった傾向がある。それらは、また、膣の刺激あるいは痛みを引き起こす傾向にある。
【0006】
別の共通の欠点は、従来技術で知られている殆どのデバイスは、また、挿入ないし除去が困難であったり、苦痛であったりする傾向がある。尿流を正しく抑制するために、デバイスは、膣管中に適切に配置される必要がある。結果として、医者は、デバイスを適切に配置することを要求され得る。たいていの場合、デバイスは、長期に渡って膣内にとどまるのに、適合している(デバイスを挿入するための訓練を受けた医療専門家を要求することの時間及び費用の点で)。しかしながら、あまりに長期間膣中に位置する場合には、デバイスは、膣感染症、壊死あるいは出血を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[発明の概要]
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、少なくともノードを備える、女性の尿失禁の治療のためのデバイスに関する。任意選択的に、ノードの長さが、デバイス全体の長さの30%に過ぎないか、それより少ない。本発明のいくつかの実施形態においては、デバイスは、アンカー及びサポートをさらに備える。本発明のいくつかの実施形態においては、ノード構造は、機能改善のためのデバイスのより大きな柔軟性制御を可能とする。任意選択的に、柔軟なネック部分が、デバイスのノードに配置される。柔軟性、特に、中央の中核ボディでの柔軟性は、装着者の快適性を増すことができる。本発明のいくつかの実施形態においては、使い捨ての、女性の尿失禁の治療のためのデバイスが提供される。任意選択的に、デバイスは、単一のボディ構造からなっている。任意選択的に、デバイスは、一つの材料から構築されている。任意選択的に、デバイスは、種々のサイズに製造される。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、全長が30mmから50mmの間のデバイスが提供される。任意選択的に、デバイスは、個々のユーザの必要に依存して、より大きい、あるいは、より小さい。本発明のいくつかの実施形態においては、デバイスがアプリケータを用いて挿入される。
【0008】
本発明の典型的な実施形態において、デバイスは、アームを備えたアンカー及びサポート部分を有する。任意選択的に、アームの形状及び数は可変である。任意選択的に、4つのサポートないしアンカーアームが存在する。任意選択的に、4つより多い、あるいは、4つより少ないアームが存在する。任意選択的に、アームは、同一の形状ではない。任意選択的に、アームは、種々の程度の、適合性、剛性及び弾力性を有する。任意選択的に、アームは、柔らかい先端あるいはパッドを有する。本発明のいくつかの実施形態においては、デバイスの中心軸に対するアームの角度、ないし、相互のアームの角度は、変化し得る。任意選択的に、支持アームは曲がっている。任意選択的に、アンカーアームは、ノードから実質的に垂直に放射状に出ている。本発明のいくつかの実施形態においては、支持アームのサイズ及び形状は、アンカーアームのサイズ及び形状に関連していていない。任意選択的に、アームは、片持ち梁のように作られる。
【0009】
本発明の典型的な実施形態において、デバイスは、失禁治療を強化するために、尿道に直接圧力を及ぼす追加の構造を含む。任意選択的に、追加の構造を有するデバイスは、激しい肉体的活動中に使用される。本発明のいくつかの実施形態においては、サポート部のアームを接続するリング支材によって、尿道に直接圧力が加えられる。任意選択的に、支材は、まっすぐなセグメントからなる。任意選択的に、支材は、内側に弓形になったセグメントからなる。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、尿道サポートの調整可能なサイズを有する、女性の尿失禁の治療のためのデバイスに関する。任意選択的に、サポートのサイズは例えば、展開する挿入部を用いて、機械的に調整可能である。任意選択的に、デバイスの部分が、片持ち梁のように作られている。任意選択的に、展開する挿入部は、サポートの大きさを変更するために、他の展開する挿入部と互換性がある。可変の形状及びサイズは、装着者によりフィットすることを可能にし、場合によっては、より効率的な治療をもたらすことになる。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、例えば糸のようなデバイス排除器を含む、女性の尿失禁の治療のためのデバイスに関する。本発明の典型的な実施形態において、糸に除去する力を加える際に、デバイスのアームがノードに向かって折り畳まれる。それにより、デバイスの輪郭を小さくし、より容易な、より痛みが少ない除去を可能とする。任意選択的に、糸は、支持アームに直接取り付けられており、糸に力を加える際、少なくとも、支持アームが折り畳まれ、除去をより容易にする。任意選択的に、糸は、スリング状デバイスあるいはカバーに取り付けられており、糸に力を加える際、スリング状デバイスがアームに力を及ぼし、それらが折り畳まれ、除去をより容易にする。任意選択的に、デバイスは、患者が、自身で触れる必要がなく、取り除かれる。
【0012】
したがって、ノードと、前記ノードに取り付けられた、尿道支持を提供するのに適合したサポート部と、前記ノードに取り付けられた、前記装置の動きに抵抗するのに適合した固着部と、を備える尿失禁の治療のための装置であって、前記ノードが、前記ノード、サポート部及び前記固着部を一緒に備える前記装置の全長の30%より長くない装置が提供される。任意選択的に、ノードは、尿失禁治療のための前記装置の全長の20%より長くない。任意選択的に、ノードが、尿失禁治療のための前記装置の全長の15%より長くない。本発明のいくつかの実施形態においては、サポート部が、少なくとも2つの支持アームを有する。本発明のいくつかの実施形態においては、固着部が、少なくとも2つの固着アームを有する。任意選択的に、装置は、カバーをさらに備える。任意選択的に、カバーが、実質的に、前記ノード、サポート部及び前記固着部を封入する。本発明のいくつかの実施形態においては、サポート部及び前記固着部が柔軟である。任意選択的に、ノードが柔軟である。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、デバイス排除器をさらに備える。任意選択的に、デバイス排除器は、前記サポート部に取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、前記支持アームを連結するサポート支材をさらに備える。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、前記装置を膣内に挿入するのに適合したアプリケータをさらに備える。
【0013】
したがって、尿道支持を提供するのに適合したサポート部と、前記サポート部の直径を調整するのに適合した展開する挿入部と、を備える尿失禁の治療のための装置が、提供される。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、ノード及び前記装置の動きに抵抗するのに適合した固着部をさらに備える。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、カバーをさらに備える。任意選択的に、前記カバーが、実質的に、前記ノード、サポート部、前記固着部及び展開する挿入部を封入する。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、デバイス排除器をさらに備える。任意選択的に、デバイス排除器は、前記サポート部に取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態においては、装置は、前記装置を膣内に挿入するのに適合したアプリケータをさらに備える。
【0014】
したがって、膣に挿入されたときに失禁の治療に適合したボディと、前記装置に動きを与えるためのデバイス排除器と、を備える尿失禁の治療のための装置が、提供される。任意選択的に、前記デバイス排除器が糸である。本発明の典型的な実施形態において、前記装置が、柔軟であり、前記糸によって変形する。
【0015】
したがって、前記失禁治療装置を挿入すること、前記失禁治療装置を、尿道中央部の支持を与えるように位置させて配備すること、を含む、尿失禁の治療のための装置を用いる方法が、提供される。任意選択的に、挿入がアプリケータによって容易になる。本発明のいくつかの実施形態においては、方法は、前記装置を取り除くことを、さらに含む。任意選択的に、取り除くことが、デバイス排除器により容易になる。
【0016】
したがって、前記膣デバイスを収める収納器と、止め具と、を備える膣デバイスを挿入するための装置であって、前記止め具が過挿入を防止する装置が、提供される。任意選択的に、前記止め具が前記収納器上で、前記装置を前記膣へ前記止め具まで挿入する際に、前記膣デバイスが前記膣内で展開するのに適切な位置にあるような位置に配置される。本発明の典型的な実施形態において、前記止め具が、前記収納器上に、調節可能なように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の例示的な実施形態における内部支持構造体の側面図である。
【図1B】本発明の例示的な実施形態における内部支持構造体の上面図である。
【図1C】本発明の例示的な実施形態における内部支持構造体の斜視図である。
【図1D】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の狭窄した柔軟な首部を有する、内部支持構造体の側面図である。
【図2A】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の内部支持構造体の側面図である。
【図2B】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の内部支持構造体の上面図である。
【図2C】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の支持構造の底面図である。
【図2D】本発明の例示的な実施形態における、外側に突出するアーム先端を有する、任意選択の内部支持構造体の側面図である。
【図3A】本発明の例示的な実施形態における、尿道支持リングを有する、任意選択の内部支持構造体の側面図である。
【図3B】本発明の例示的な実施形態における、尿道支持リングを有する、任意選択の内部支持構造体の断面図である。
【図3C】本発明の例示的な実施形態における、尿道支持リングを有する、任意選択の内部支持構造体の上面図である。
【図3D】本発明の例示的な実施形態における、支持リングを有する、任意選択の内部支持構造体の斜視図である。
【図4A】本発明の例示的な実施形態における、拡張可能な内部支持構造体の側面図である。
【図4B】本発明の例示的な実施形態における、拡張可能な内部支持構造体の上面図である。
【図4C】本発明の例示的な実施形態における、拡張可能な内部支持構造体の斜視図である。
【図5A】本発明の例示的な実施形態における、後退した配置にある拡張可能な内部構造体の断面図である。
【図5B】本発明の例示的な実施形態における、拡張した配置にある拡張可能な内部構造体の断面図である。
【図6A】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の拡張可能な内部支持構造体の側面図である。
【図6B】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の拡張可能な内部支持構造体の上面図である。
【図6C】本発明の例示的な実施形態における、任意選択の拡張可能な内部支持構造体の底面図である。
【図7A】本発明の例示的な実施形態における、後退した配置にある任意選択の拡張可能な内部構造体の断面図である。
【図7B】本発明の例示的な実施形態における、拡張した配置にある任意選択の拡張可能な内部構造体の断面図である。
【図8A】本発明の例示的な実施形態における拡張挿入体の側面図である。
【図8B】本発明の例示的な実施形態における拡張挿入体の斜視図である。
【図8C】本発明の例示的な実施形態における拡張挿入体の上面図である。
【図9A】本発明の例示的な実施形態における任意選択のカバーの説明図である。
【図9B】本発明の例示的な実施形態における、カバー内部にある任意選択の内部支持構造体を示す断面図である。
【図10A】本発明の例示的な実施形態における、アプリケータの斜視図である。
【図10B】本発明の例示的な実施形態における、代替のアプリケータの斜視図である。
【図11】本発明の例示的な実施形態における、アプリケータ内にある失禁防止デバイスを示す断面図である。
【図12A】本発明の例示的な実施形態により配置されている失禁デバイスを示す、女性骨盤領域の図である。
【図12B】本発明の例示的な実施形態において、所定の位置にある失禁デバイスを示す、女性骨盤領域の説明図である。
【図12C】本発明の例示的な実施形態により所定の位置にある失禁デバイスをクローズアップした、女性骨盤領域の説明図である。
【図12D】本発明の例示的な実施形態による挿入プロセスを記述するフローチャートである。
【図13A】本発明の例示的な実施形態により除去されている失禁デバイスを示す、女性骨盤領域の図である。
【図13B】本発明の例示的な実施形態による除去プロセスを記述するフローチャートである。
【図13C】本発明の例示的な実施形態における支持アームに取り付けられた収縮ハーネスを有する、任意選択の内部構造体の斜視図である。
【図13D】本発明の例示的な実施形態における収縮ハーネスに収縮力が加えられているときの、任意選択の内部構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図とともに、次の例示的な実施形態を参照しながら、本発明の非限定的な実施形態を説明する。概して図は一定の縮尺で記載されておらず、どの寸法も例示でしかなく、必ずしもこれに限定するものではない。図において、一つ以上の図に現れる同一の構造、要素、又は部分は、それが現れる全ての図において、可能な限り同じ又は類似の番号が付されている。
【0019】
[序文]
本発明は、尿失禁女性の治療のためのデバイス及びデバイスの変形を提供する。本発明のデバイスは使い捨て可能で、短期間で使い切って捨てられ、(必要であれば)新しいデバイスに取り替えられるのに適している。代替的に、このデバイスは使用の合間に消毒することにより、リサイクルして使用される。本発明のデバイスは簡単で使い易く、任意選択的に生理中に膣にタンポンを挿入するのと変わらない、使い勝手が良く、慣れた方法で、楽々と挿入される。先行技術の大きく煩わしいデバイスとは対照的に、本発明のデバイスは快適で、一度挿入すると、再び取り出すまで女性はそのことを考える要がない。不随意の排尿が起こる場合、それはしばしば膀胱内の圧力の上昇のために発生するが、それを補償する膀胱頚部又は尿道からの反対圧力は全く無い。このことは、一般に膀胱頚部と尿道の腹腔内圧系から離れた低い位置への異常な下垂の結果である。これは、「運動機能亢進」として知られ、本来なら尿道と膀胱頚部とを恥骨の裏側に沿って高い位置に保持する支持機構が相当の損傷を受けた結果である。膀胱頚部と尿道の下降は、例えば、女性が咳やくしゃみをしたり、あるいは笑ったりするときに、不随意な尿の漏出を起こす。
【0020】
[失禁治療用デバイス]
図1Aを参照すると、失禁デバイス100の例示的な実施形態の側面図が示されている。説明の便宜のため、デバイス100は中心軸150が中心に配置され、3つの部分に分けられている。膣内でデバイスを安定させるために、「アンカー」要素として機能する上部106が与えられる。アンカーには2つのタイプがある。膣の中心軸方向に機能する軸アンカーと、左右すなわち膣の中心軸と実質的に垂直な方向に機能する放射アンカーである。尿道支持をもたらすために、「支持」要素の役割を果たす下部110が与えられる。本発明のいくつかの実施形態において、尿道中央部の位置に支持がもたらされる。本発明のいくつかの実施形態において、底部支持部110は、アンカーデバイス100を適所に配置させるための少なくとも一つのアンカーの形状を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、デバイス100の全長は30mmと50mmの間である。任意選択的に、患者の個々の必要に応じて、デバイス100はそれよりも大きいか小さい。
【0021】
また、「ノード」として機能し、またアンカー106及び支持要素110に接続される中間部108が与えられる。本発明のいくつかの実施形態において、このデバイス又はここで説明する多くの他のデバイスのノードは、デバイスの全長のほんのごく一部の長さを有する。本発明のいくつかの実施形態において、ノードの長さはデバイスの全長の15%に満たない。本発明のいくつかの実施形態において、ノードの長さはデバイスの全長の20%に満たない。本発明の別の実施形態において、ノードの長さはデバイスの全長の30%に満たない。本発明のいくつかの実施形態において、デバイスの全長と比べて短いノードは、タイン剛性、快適性、及びデバイス100のサイズをより柔軟に変えることを可能にする。任意選択的に、ノードには他よりも長い軸は備えられておらず、各軸は長さが等しい(例えば、球体又は立方体など)。本発明の例示的な実施形態において、デバイスの全長と比べて小さなノードは、後述するアンカー及び支持アームの動作のよりも卓越した制御を可能にする。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、デバイス100の要素は、図9A及びBに示されるカバーの内部支持構造体として機能する。一部の女性に対しては、ここに記載されるデバイスは脱出の治療として使用できることに注目されたい。
【0023】
例示的な実施形態において、アンカー要素106及び支持要素110は、4つのアーム112と114とをそれぞれ有する。本発明の例示的な実施形態において、4つのアームが各部分に与えられ、通常は2つが膀胱の方へ圧力を加え、2つは腸管に隣接する膣底部の方へ圧力を加える。本発明のいくつかの実施形態において、膀胱の方へ圧力を加える2つの支持アームは、尿道の両側にある自然の溝にフィットする。任意選択的に、アンカー要素及びサポート要素には、多かれ少なかれアームが備えられる。例えば、もしデバイス100の望ましくない移動の心配があれば、アンカー要素はより多くのアームを有してもよい。本発明の別の実施形態において、アームは、ノード108に対して、及び/又は互いに対して、多様な角度で提供される。任意選択的に、アーム112及び114は、柔軟であるか若しくは硬く、生体適合性材料で構成されている。本発明の例示的な実施形態において、アンカー要素は装着者の膣及び/又は尿道に大きな圧力を加えることがなく、それによって更に快適性を向上させる。本発明のいくつかの実施形態において、支持部の場合には、尿道を支持可能なアームの代わりに、あるいはアンカー部の場合には、デバイスが意図せず移動することを防止できるアームの代わりに、別の構造を有する。例えば、少なくとも一つの円錐、突起、及び/又はノードに取り付けられた拡張部が固定及び支持のために使用することができる。
【0024】
デバイスのアンカーアームは、デバイスが意図せず適所を外れて移動することを防ぐ。本発明の例示的な実施形態において、アームは柔軟である。この柔軟性はデバイスが膣の内部へ更に移動することを防ぐアンカーアームの能力を高める。力がデバイスに加わり、膣の内部へデバイスを移動しようとするとき、柔軟なアンカーアームは広がろうとする。アンカーアームのこの拡張動作は、デバイスと膣壁との摩擦を増大させ、移動を妨げる。アームは柔軟ではあるものの、膣の入り口に向かうデバイスの望ましくない移動を妨げるには十分に堅いことに留意されたい。任意選択的に、アームは堅いがノードは柔軟であり、従ってノードは柔軟なアンカー及び支持を提供する。膣口に向かう移動は、膣内に位置する隆起の、膣口に対して、ちょうど後方に位置するアームによって抵抗される。これらの特徴は、デバイスを所定の場所に維持するのにも役立つ上述した膣壁のテンティング反応とは独立に、及び連動して働く。
【0025】
デバイス100のアンカーアームの付加的な特徴は、支持アームから遠隔制御することである。このことは、デバイスによって尿道に加えられる圧力の大きさを低減する。代替的に又は付加的に、支持アームが尿道中央部の支持を提供する一方で、アンカーアームは、膣内に位置する隆起の、膣口に対して、ちょうど後部側に位置できるように、支持要素に対するアンカーアームの遠隔位置が計算される。このような構成は、装着者への快適性を増大させ、デバイスに隣接する組織への不要な損傷を防ぎ、デバイスのアンカー機能を増強する。また、本発明のいくつかの実施形態において、排尿するためにデバイスを取り外す必要無く装着者が自発的に排尿することを可能にする。
【0026】
図1B及び1Cは、本発明の例示的な実施形態におけるデバイス100、より具体的にはアーム112及び114の構成の説明に役立つ。アンカー要素106のアーム112は、デバイス100を内側又は外側に実質的に移動できず、若しくは回転できなくして、膣内の原位置に残留させる。これが起こる一つの理由は、虚脱して閉塞した内腔を形成する膣壁に特有の傾向の結果として起こったというものである。デバイスのアームは膣壁の先端部にて膣壁の「テンティング」を引き起こし、その結果ノード108の周囲の膣壁が弛み、それによってデバイス100を安定化させる。支持要素110のアーム114は、ハンモックとして機能し、尿道中央部の周囲の組織の上昇をもたらす。ハンモックは、TVT手術とそっくりに、張力をかけないように尿道中央部を支持する。ストレスの多い出来事(咳やくしゃみ等の最中に腹圧が上昇するとき)の間に尿を漏らす女性では、尿道が弛み下がっているが、その中央部でハンモックに接触している。尿道とハンモックの接触により、尿道内の圧力の上昇(いわば尿道の捻れのようなもの)が生じ、その結果として排尿の自制を実現する。本発明のいくつかの実施形態において、デバイス100の放射状に広がる支持アーム114は、膣腔内で25〜50mmのデバイス全径を与える。任意選択的に、患者の個々の必要に応じて、直径の大きさは前後する。
【0027】
本発明の例示的な実施形態において、アンカー要素アーム112は、アームがノード108に対する角度を増すため、デバイスの子宮に向けた移動に抵抗する。この効果的な径の増加は、更に膣の内部へのデバイスの移動に対抗するように作用する。本発明のいくつかの実施形態において、アンカー要素アーム112は、このアンカー効果を高めるために、ノードに大きな角度が与えられている。この強化されたアンカー効果は、最大角度に達するまでは、上方向の効果のみが観察されることに注意されたい。
【0028】
図1Dは、ノード118が狭窄した本発明の実施形態を図解する。本発明のいくつかの実施形態において、狭窄したノード118はデバイス100全体の柔軟性と可動域を増大させる。任意選択的に、デバイス100の柔軟性を高めるために、ワイヤー及び/又はバネ等のデバイスが首部に組み込まれる。この付加的な柔軟性は、デバイス100を装着しているときの女性の快適さを高める。ここに記載される何れの実施形態も、狭窄したノード118と併せて任意選択的に利用される。
【0029】
[任意選択の実質的に垂直なアンカーアームの実施形態]
次に図2Aを参照すると、女性尿失禁と闘うためのデバイス200の追加の実施形態が図示されている。この実施形態は、アンカー要素206、支持要素210、及びノード208から構成される。本発明のこの実施形態において、アンカー要素は、ノード208に実質的に垂直に放射状に広がるアーム212を備える。このアンカー要素アーム構成は、どちらの方向への移動にも抵抗するが、失禁デバイスの膣口に向かう不慮の移動を防ぐために特に有用である。図1Aに見られるように、支持要素アーム214はデバイス200の中心軸に向けて曲がるような形になっていて、アームの先端208はデバイスの中心軸から外側へ離れて実質的に展開することはない。このことは、アーム214の先端222がデバイス200の中心軸から大きく離れて展開した図2Dに示される実施形態220と対照的である。加えて、内側に向くアーム先端は、これらの形状は膣壁内に突出しない先端を提供するため、装着者の快適さを高め、本発明のいくつかの実施形態においてデバイス200の除去を容易にする。この実施形態は図1Aのデバイス100と同様に機能する。
【0030】
図2Dで図解されるデバイス220は、尿失禁デバイスの代替の例示的実施形態を構成する。上述のように、アーム先端222はデバイス220の中心軸から離れて放射状に展開する。この実施形態は尿道が支持される細長い部分を提供する。本願に記載されるアームの何れの形状及びサイズも、個々の女性の必要に応じて入れ替えることができる。
【0031】
[補助的支持の提供に適した失禁デバイス]
失禁であれば、全ての女性、そして全ての活動を、全く同じデバイスで対処できるというわけではない。例えば、図3A〜Dは、激しい身体活動中に尿道を直接圧迫するのに適したデバイス300を図解する。任意選択的に、この実施形態は、ここに記載される他の実施形態では効果が無い、比較的に重症の失禁をもつ女性の治療のために使用される。本発明の例示的な実施形態において、このデバイス300は、アンカー要素、支持要素、及びノードを備える。任意選択的に、デバイス300は、アンカー要素アーム312及び支持要素アーム314を備える。
【0032】
上記に加えて、支持要素アーム314に取り付けられる付加的な支持320が提供される。付加的な支持320によって加えられる尿道下部の外圧のレベルに応じて、任意選択的に一定期間の完全な又は部分的な尿道の閉塞が生じる。付加的な支持320のデバイス300への取り付けは、ノッチ322を使用して、又は何らかの他の既知の接続手段によって達成される。
【0033】
図は略円形の付加的な支持320を示すが、尿道に付加的な支持を提供できる任意の形状を任意選択的に利用できることに留意されたい。例えば、付加的な支持320部分の湾曲は、(プラス記号の形をした支持を作って)中心軸に向けて内側に付勢することができ、又は付加的な支持320は(箱の形を作って)実質的に直線部分から構成することができる。個々の装着者の必要に応じて、異なる形状が任意選択的に利用される。付加的に又は代替的に、付加的な支持320はその全長で一定の直径をもつか、様々な直径及び幅を持つ。
【0034】
[可変形状失禁デバイス]
すでに述べた通り、全ての女性が同じデバイスで治療できるわけではない。同じ基本的な解剖学的特徴は一般に全ての女性に与えられているが、これら特徴のサイズや、その相互の関係は若干異なることがある。このため、「1サイズで全ての女性に適合する」デバイスの種類を提供することは困難であろう。図1に示されるデバイスは、多様な形状に適合できる柔軟なデバイスを提供することによって、この問題に対処する。一部の女性は図1のデバイスを使用することができない可能性があるが、その特徴は供給すべきサイズの数を確実に削減する。この問題を解決するための一つの任意選択の方法が、図4A〜Cに図解されている。図解されているデバイス400は、任意選択的に他の実施形態のいくつかと同じ基本要素(すなわち、アンカー要素406、支持要素410、及びノード408)から構成されている。しかしながら、デバイス400の可変形状を可能にするいくつかの変更がある。図4Aから分かるように、患者の個々の必要に応じて、支持要素アーム414の形状が調整可能なデバイス400が提供されている。
【0035】
図8A〜Cに示される拡張挿入体800は、支持要素アーム414によって禁止される領域内に配置される。拡張挿入体800の軸部806Aは、デバイス400内に中心軸に沿って予め形成されたトンネルを貫通している。拡張挿入体は、デバイス400の中心軸に沿ってアンカー要素406に向けて移動する能力を備えている。しかしながら、本発明の例示的な実施形態において、拡張挿入体800は、アンカー要素406に向かって移動できるだけで、アンカー要素406から離れて移動することはできない。任意選択的に、ノードの中心軸の両側に2つの拡張挿入体をもつデバイスが提供される。そのような実施形態は、アンカー要素アーム412及び支持要素アーム414の可変形状制御を可能にする。
【0036】
次に図5Aを参照すると、可変形状を有する失禁治療用デバイスが図示されている。図5Aの構成は、拡張挿入体800によって形状変化していない、基本状態にあるデバイス400を図解している。図5Bは、しかしながら、デバイス400の中心軸に対する支持要素アーム414の角度を変化させるために、どのように拡張挿入体800がデバイス400と相互作用するかを説明している。拡張挿入体800がデバイス400の中心軸を通ってアンカー要素406に向かって移動すると、支持要素アーム414は中心軸に対してより広い角度をとることが分かる。
【0037】
本発明の例示的な実施形態において、拡張挿入体もデバイス400に付加的な有用性を提供する。それは、主により大きな直径が必要な場合に、膣壁からの対抗力を打ち消すために、アーム414のための補助的な支持要素として機能する。
【0038】
[垂直アンカーアームを有する可変形状失禁デバイスの実施形態]
図6A〜Cも、形状が拡張挿入体800の位置に基づいて可変である、本発明600の例示的な実施形態を図解する。可変運動の操作は図4A〜Cに示される実施形態と本質的には同じである。しかしながら、アンカー要素アーム612は若干構成が異なることに留意されたい。このタイプのアーム構成(つまり、デバイス600の中心軸に実質的に垂直に展開する)は、図2A〜Dに示されるアンカー要素アーム212に類似した機能を果たす。図面に示される実施形態はほんの一例であり、ここに記載され又は示唆される可変形状失禁デバイスは何れも、デバイスのサイズ、アームの数、アームの構成、及び/又はアームの形状に関わらず、拡張挿入体と一緒に使用することができると理解されるべきである。
【0039】
次に図7A及びBに移ると、デバイス600の複数の幾何的性質が示されている。図7Aの構成は、拡張挿入体800による形状変化をしていない、基本状態にあるデバイス600を図解している。図7Bは、しかしながら、デバイス600の中心軸及びノード608に対する、支持要素610上に配置された支持要素アーム614の角度を変化させるために、どのように拡張挿入体800がデバイス600と相互作用するかを説明している。拡張挿入体800が、デバイス600の中心軸を通ってアンカー要素606に向かって移動すると、支持要素アーム614は中心軸に対してより広い角度をとることが分かる。
【0040】
図8A〜Cは、例示的な実施形態の拡張挿入体800をより詳細に図示している。本発明のこの例示的な実施形態において、拡張挿入体800の3つの基本部材は、ヘッド804、軸806、先端808である。操作において、拡張挿入体800の軸806は、ここに記載される任意の可変形状デバイスの中心軸に沿って位置するトンネル内に押し込まれる。本発明の例示的な実施形態において、先端808は中心軸トンネルの直径より若干大きなサイズである。更に、先端808はトンネル内への挿入を容易にするが、トンネルからの除去に逆らう形状にされている。任意選択的に、トンネルの内周面に沿って一連の突起を配置することにより、展開可能な挿入体はトンネル中央に維持される。このトンネルは、矢状の先端808が、アンカー要素に向かって移動するときには通過を許容するが、挿入体800の比較的に大きな先端808部の支持要素に向けて戻る通過は妨げる。任意選択的に、様々なサイズの伸張可能な挿入体が提供され、交換され、中心軸に対する角度の程度の要求に応じて選択される。本発明の例示的な実施形態において、異なるアームを、失禁デバイスの中心軸に対して異なる角度で配置する、伸張可能な挿入体が提供される。任意選択的に、いくつかのアームは伸張可能な挿入体によって影響されない。任意選択的に、伸張可能な挿入体は回転可能である。任意選択的に、拡張挿入体800のヘッド804は、図11に示されるアプリケータ1100の中へより容易に挿入されることを可能にする柔軟な材料から構成されている。
【0041】
[カバー]
図9Aは、カバー900とともに使用される失禁デバイスを示す。本発明の例示的な実施形態において、カバー900は、柔軟で滑らかなメッシュ素材で作られている。任意選択的に、カバー900はデバイス904(図9に示される内部支持構造体として機能する)をカプセル化する小さな袋としてデザインされている。カバー900の使用は、デバイスを使用する上での一つ以上の利点を潜在的に提供する。例えば、カバーは挿入時のアプリケータとデバイスとの摩擦を低減する。加えて、カバーは、挿入中の膣とデバイスとの摩擦を低減する。本発明のいくつかの実施形態において、カバー900のメッシュ(デバイスのアームの間で伸ばされている)は、尿道用のスリング状支持としての機能を果たす。ストレスの多い出来事(咳やくしゃみ等の最中に腹圧が上昇するとき)の最中に尿を漏らす女性では、尿道は弛み下がっているが、その中央部でカバー900に接触している。このことは尿道内圧の上昇を引き起こし、その結果として排尿の自制を実現する。本発明の例示的な実施形態において、上述のように、デバイスは尿道又は膀胱頚部に圧力をかけずに、腹圧上昇があるときに支持を提供するだけである。任意選択的に、デバイスは尿道及び/又は膀胱頚部に直接圧力を加える。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、カバー900は使い捨て可能である。任意選択的に、カバーは使用の合間に消毒されて再利用可能である。任意選択的に、カバーは装飾されている。本発明のいくつかの実施形態において、カバー900は膣からデバイスを除去し易くする。第1に、カバー900は失禁デバイスと膣壁との摩擦を低減する。第2に、カバー900は、任意選択的に、糸902のようなデバイス排除器を備える。本発明の例示的な実施形態において、糸902はカバー900に取り付けられている。任意選択的に、カバー900と糸902は素材の同じ一片から構成されている。糸902はデバイスの除去を多くの方法で支援する。糸902を引くと、カバー900の引き締めを起こす。カバー900の引き締めは、膣壁の緊張をもたらす。膣壁の緊張は上述のテンティング効果を緩和し、デバイスに加えられる張力をゆるめて、デバイスの膣からの容易かつ滑らかな除去を可能にする。更に、糸902を引き続けると、アームを中心軸の方に少し折り畳み、そのためサイズを小さくして、デバイスの膣からの容易かつ滑らかな除去を可能にする。本発明の例示的な実施形態において、糸902を引き続けることにより、デバイスを膣の外へ「退場」させて、支持アームを膣口の方へ動かして(及び、それによりアンカー部も一緒に引っ張って)、急に糸を解き放し、更にその処理を繰り返すこともできる。
【0043】
[アプリケータと挿入]
次に図10Aを参照すると、膣内へのデバイスの挿入に役立つアプリケータが図示されている。挿入は、通常の生理用タンポンを挿入するのと同様に、このアプリケータを使用して達成される。失禁デバイスは、膣内部に挿入される遠位端1002の内部に保持される。近位端1004を押し込むときに、デバイスは出口1006を通って押し込まれ、一旦アプリケータが膣から取り除かれると直ぐに機能することを可能にする。本発明の例示的な実施形態において、出口1006は近位端1004が押し込まれて、失禁デバイスがアプリケータの外へ押し出されるまで閉じたままであることに注意されたい。任意選択的に、出口1006は花状である。糸902は目に見え、近位端1004の開口1008の外に突出している。アプリケータ1000の断面図を図11に示す。デバイスが未だアプリケータ1000の内部にあるときには、その柔軟なアーム1112及び1114は中心軸の方に集まり、展開した構成よりも非常に小さな輪郭を与えて、小さな径のアプリケータを介した挿入を可能にする。
【0044】
本発明の例示的な実施形態によるアプリケータ1050が図10Bに示される。アプリケータ1050は、アプリケータ1000と同様に、近位端1004、遠位端1052、及び出口1056を備えているが、この実施形態は、挿入時にユーザがストッパー1058をつかむように、アプリケータ1050に沿って配置されるストッパー1058を付加的に含み、アプリケータ1050は膣内にストッパー1058の遠位縁1060まで前進させられて、効果的な治療を提供するために、膣内の適切な深さでアプリケータ1050内に置かれたデバイスが配置される。このアプリケータの実施形態を使用したデバイスの展開は、便利な深さ測定用のストッパー1058の使用を追加して、上述と同様の方法で行われる。任意選択的に、個人化のために、ストッパーは様々なサイズの女性に対応して選択可能なポジションを備えてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、膣内への挿入のための失禁治療デバイスを都合良く位置決めするアプリケータが使用される。例えば、ここに記載されるデバイスのいずれも、折り畳まれ及び/又は折り曲げられた形態で、いつでも膣の内部に挿入できるように、アプリケータ内に配置することができる。本発明の例示的な実施形態において、デバイスはアプリケータを使用して膣内に挿入され、デバイスを折り畳まれた形態に保つ機構を解除することによって、展開した形態に急速に変わる。本発明の例示的な実施形態において、デバイス排除器を使用して解除可能な結び目がデバイスの周囲に結ばれる。一旦結び目が解除されると、デバイスは膣内部に挿入され、デバイス排除器はデバイスの除去に使用できるようにアクセス可能な位置に置かれる。
【0046】
本発明の例示的な実施形態において、アンカーアームを一緒に結束することで、展開されるまでアンカーアームを低姿勢な状態に保持するために、除去糸が使用される。任意選択的に、解き易い結び目で除去糸はアンカーアームを一緒に結束する。デバイス挿入後に糸が引かれると、結び目が解かれ、アンカーレッグが急に所定の位置につくことを可能にする。本発明の例示的な実施形態において、後でデバイスの除去を可能にするために、除去糸は次に膣口から突出するか、膣の近傍に残る。任意選択的に、デバイスのアームにはアームを一緒に結束するための糸を収容する溝が設けられる。本発明のいくつかの実施形態において、使用前に格納されている間に糸がデバイスを損傷するのを防ぐために、溝は補強されている。
【0047】
次に図12Aを参照すると、その内部に配置される失禁デバイスの展開のために、膣内に挿入されているアプリケータ1000が見られる。アプリケータ1000の近位端1004部は部分的に遠位端1002に向けて押し込まれ、失禁デバイス1200のアンカー部は膣内で展開されている。近位端1004を遠位端1002の方へ押し込み続けると、デバイス1200がアプリケータ1000から完全に自由になる。デバイス1200が完全に展開すると、デバイスを所定の位置に残して、アプリケータ1000が膣から除去される。デバイスの形状と、膣内にある内部構造体との適合性のために、デバイス1200は適切な治療位置に引き寄せられる。例えば、本発明のいくつかの例示的な実施形態において、支持アームは尿道の両側に見られる襞の中に合うように適合している。支持アームの自然な傾向は、ひだに落ち着くことである。偶然の一致ではなく、本発明のいくつかの実施形態において、デバイスはそのような位置から尿道支持を提供するようにデザインされている。上述の当然の結果として、一旦デバイスが所定の位置につくと、膣の地形に順応するため、望ましくない移動への抵抗となる。本発明の例示的な実施形態において、デバイス排除器902は終始デバイス1200に連結したままとなる。任意選択的に、アプリケータは膣内でデバイス1200を展開するために使用される。
【0048】
本発明の例示的な実施形態において、図12Bに示されるように、デバイス1200の柔軟なアームは、挿入後、予め意図した張力を得て、デバイスの径を膣1202内で拡張する。デバイス・アンカー自体は膀胱1204の下方、子宮頸部1206と恥骨1208との間にあって、尿道中央1210を支持している。糸902は、任意選択的に通常の生理用タンポンと同様に膣口1212の外に突出し、除去を可能にしている。図12Bではカバーで覆われたデバイス1200が図示されているが、カバーはそれぞれの患者の必要に応じた任意選択のものであることに留意されたい。
【0049】
図12には、失禁治療を行うための適切な位置にある、本発明の例示的な実施形態が図示されている。図12Cは、カバーを断面図とした、所定の位置にあるデバイスの近接図であり、カバー内の内部支持構造体が示されている。デバイス1200は、上述のように、尿道中央部1210の下で、子宮頸部1206と恥骨1208との間に位置している。本発明の例示的な実施形態において、デバイスは尿道へ積極的に大きな圧力をかけないことに留意されたい。むしろ、(例えば咳などの)ストレスの多い出来事のために尿道が下方に移動したときに、支持として機能する。支持を提供するために、膣壁の生来のテンティング傾向に加えて、任意選択的にデバイス1200のアーム間に吊された「ハンモック」状支持としてカバーが利用される。
【0050】
次に図12Dを参照すると、本発明の例示的な実施形態により失禁デバイスを挿入する過程を説明するフローチャート1218が示されている。アクション1220において、アプリケータ1000の遠位端1002が膣口に挿入される。本発明の例示的な実施形態において、アプリケータは膣口に対して任意の回転角で挿入できることに留意されたい。アクション1222にて、アプリケータ1000は、失禁デバイスを適切に展開するのに十分な量だけ、ユーザによって膣内に押し込まれる。次にアクション1224にて、遠位端1002を実質的に移動させずに保持したまま、近位端1004が遠位端1002の方へ押し込まれる。このようにして、近位端1004は、図10に示されるように、出口1006を通してアプリケータの外へデバイスを押し出す「プランジャ」として機能する。一旦デバイスが完全にアプリケータ1000から解放されて、膣内で展開すると、遠位端1002と近位端1004とを含むアプリケータ1000は、アクション1226にてユーザによって膣から取り除かれる。デバイス排除器902は、プロセスを通じてデバイスに取り付けられたまま残され、その結果、膣口から突出する。任意選択的に、アクション1228にてアプリケータ1000は処分される。
【0051】
[除去]
失禁デバイスの除去は、任意選択的に、本発明の例示的な実施形態により、デバイス排除器1302によって支援される。図13Aは、膣から取り出されているデバイス1300を示す。デバイス除去の基本的なプロセスを上で説明した。しかしながら、糸1302に加わる下向きの力が、ここで説明するようにカバーに膣内でデバイスの輪郭を縮小させ、より容易な除去を可能にする点に留意することが重要である。カバーを使わない、しかし同じ効果を利用する、任意選択のデバイスの除去を、図13C及びDと併せて後述する。
【0052】
次に13Bを参照すると、膣からデバイスを取り除くプロセスを説明するフローチャート1310が示されている。アクション1312にて、ユーザはデバイス排除器を探し出し、膣口から離れたデバイス排除器に力を加え始める。デバイス排除器に加わるこの張力は、デバイスのカバーに、デバイスのアームへ圧力を加えさせる。アームがデバイスの中心軸の方へ折り畳まれると、本質的にデバイスの直径を縮小する。アクション1314にて、デバイスが膣から除去され始めると、除去する力が連続的にデバイス排除器に加えられる。アクション1316にて、デバイスが膣から解放されてユーザによって除去されるまで、ユーザはこの力を維持する。任意選択的に、デバイスはアクション1318にて処分される。
【0053】
[容易な除去のための任意選択の実施形態]
本発明の例示的な実施形態において、膣から容易に除去されるのに適した失禁治療用デバイス1380が提供される。図13Cに示されるものは、一般に、アンカー部1386、支持部1390及びノード1388から構成される失禁デバイスである。糸1389などのデバイス排除器は、デバイスの支持要素アーム1394に直接取り付けられる。図13Dから、下向きの力(すなわち、膣口に向く力)が加えられ、支持要素アーム1394はデバイス1380の中心軸の方に折り畳まれることが分かる。任意選択的に、下向きの除去力からのアームへのダメージを防ぐために、アーム1394と糸との連結は強化されている。付加的な力が加えられてアームが折り畳まれることによりデバイスの直径が小さくなると、デバイス1380を膣の外へ引き抜くことが容易になる。加えて、デバイス排除器の使用は、非侵襲的かつ衛生的な方法で、気分を害することなく、女性がデバイス1380を除去することを可能にする。この技術は、剛直又は柔軟な支持要素アーム1394と共に利用できることに留意されたい。例えば、剛直なアームの場合、ノード1388が柔軟な材料で構成されている限り、アーム1394に加わる力は、結果としてノード1388が剛直なアームに加わるストレスを吸収し、アームが中心軸に向けて折り畳まれることを可能にする。本発明のいくつかの実施形態において、アームの先端はデバイスの中心軸から外側に向いておらず、デバイスと膣壁との摩擦が小さいために、より容易な除去を可能にする。
【0054】
例として提供し、本発明の範囲を限定することを意図していない、実施形態の詳細な説明を用いて本発明を説明してきた。記載された実施形態は様々な特徴を含むが、その全てが本発明の全ての実施形態で必要とされるわけではない。本発明のいくつかの実施形態は、その特徴のいくつかのみ又はその特徴の可能な組み合わせを利用する。記載された本発明の多様な実施形態、及び、記載の実施形態に示されるものとは異なる特徴の組み合わせを含む本発明の実施形態が、当業者によって想到されるであろう。特許請求の範囲において、用語「〜からなる」、「〜構成される」、「〜を備える」、「〜を含む」、「〜を有する」、「〜をもつ」及びその同根語が使用される場合は、「〜を含むが、それに限定されない」を意味する。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿失禁治療のための装置であって、
ノードと、
尿道を支持するためのサポート部であって、前記ノードから放射状に延びる複数の支持アームからなるサポート部と、
前記装置を膣内に固定するための固着部であって、前記サポート部と反対の位置において前記ノードから放射状に延びる複数の固定アームからなる固着部と、を備えることを特徴とする装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【公開番号】特開2012−5895(P2012−5895A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223943(P2011−223943)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2007−503495(P2007−503495)の分割
【原出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(505432544)コンティピ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】