説明

妊婦用飲料

【課題】胎児期の栄養状態を良好に保つために、妊婦が簡単に摂取することができ、特に胎児のエネルギー源となる成分を含有する妊婦用飲料を提供する。
【解決手段】糖質、ビタミン及びミネラルを含有する妊婦用飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胎児の栄養状態を良好に保つための妊婦用飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、出生体重が2500g以下の低出生体重児の増加が報告されている。これは、妊婦の妊娠期における低栄養が原因と考えられている。低出生体重児は、将来、生活習慣病になるリスクが高くなることが指摘されおり(例えば、非特許文献1等を参照)、胎児期の栄養状態を良好に保つために、母親である妊婦自身の栄養管理が重要であると考えられている。しかしながら、胎児の健康に着目した食品であって、特にエネルギー補給を目的とした食品は、未だないのが現状である。このような背景から、エネルギー補給を目的とし、さらに、胎児に必要なビタミン、ミネラル等を含有する食品が求められている。
【非特許文献1】Peter D. Gluckman et al.; Science Vol. 305; 17, September, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、胎児期の栄養状態を良好に保つために、妊婦が簡単に摂取することができ、胎児のエネルギー源となる成分を含有する妊婦用飲料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、糖質、ビタミン及びミネラルを含有する飲料であれば上記課題を解決し得ることを見出し、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は、以下の妊婦用飲料を提供するものである。
項1.糖質、ビタミン及びミネラルを含有する妊婦用飲料。
項2.糖質が、砂糖、ハチミツ、麦芽糖、乳糖及びデキストリンからなる群より選択される少なくともいずれか1種である項1に記載の妊婦用飲料。
項3.ビタミンが、葉酸及び/又はビタミンBである項1に記載の妊婦用飲料。
項4.ミネラルが、鉄、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛からなる群より選択される少なくともいずれか1種である項1に記載の妊婦用飲料。
項5.さらに、穀物粉を含有する項1〜4のいずれかに記載の妊婦用飲料。
項6.穀物粉が大豆粉である項5に記載の妊婦用飲料
項7.さらに、クエン酸及びトレハロースを含有する項1〜4のいずれかに記載の妊婦用飲料。
項8.梅果汁及びトレハロースを含有する項1〜4のいずれかに記載の妊婦用飲料。
項9.鉄を0.0005〜0.06重量%及び大豆粉を0.5重量%以上含有する、項1に記載の妊婦用飲料。
項10.鉄を0.0005〜0.06重量%、クエン酸を0.005重量%以上含有する、請求項1に記載の妊婦用飲料。
項11.鉄を0.0005〜0.06重量%、梅果汁を0.25〜10重量%及びトレハロースを0.1〜10重量%含有する、請求項1に記載の妊婦用飲料。
項12.大豆粉を0.5重量%以上配合することを特徴とする鉄味のマスキング方法。
項13.クエン酸を0.005重量%以上配合することを特徴とする鉄味のマスキング方法。
項14.梅果汁を0.25〜10重量%及びトレハロースを0.1〜10重量%配合することを特徴とする鉄味のマスキング方法。
項15.ビタミンCを0.03〜0.3重量%配合することを特徴とする葉酸の安定方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の妊婦用飲料は、飲料形態であることから、妊婦が1日に必要とされる栄養素を手軽に摂取することができる。また、本発明の妊婦用飲料は、鉄味がマスキングされ、飲みやすい味に調製されていることから、妊娠前及び妊娠中という長期間でも、継続的に飲用しやすいものである。さらに、本発明の妊婦用飲料を妊娠前及び妊娠中に亘って飲用すれば、胎児の栄養状態を良好に保つことによって、出生時に低体重となることを防止でき、ひいてはその子供が将来生活習慣病を発症するリスクを低くすることが期待できる。
【0007】
加えて、産後の授乳期にも、母親が本発明の妊婦用飲料を飲用することにより、母乳を通して乳児の栄養状態を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.妊婦用飲料
本発明において妊婦用飲料とは、糖質、ビタミン及びミネラルを含有する飲料であって、女性が妊娠前から出産後の長期に亘って継続的に摂取することができ、特に胎児のエネルギー源となって胎児の栄養状態を良好に保持できることを特徴とする飲料を指す。以下、本発明の妊婦用飲料の各成分について説明する。
【0009】
(1)糖質
胎児のエネルギー源はグルコースであり、その大部分を母体からの供給に依存していることが知られている(応用栄養学 東京化学同人 2005年出版)。従って、本発明の妊婦用飲料に配合される糖質としては、グルコースを構成単位として有する糖を含有するものが好ましい。このような糖質としては、例えば、砂糖、ハチミツ、麦芽糖、デキストリン(粉末水飴)、乳糖、トレハロース等が挙げられる。中でもデキストリンは、甘味が少ないため、多量に配合しても本発明の妊婦用飲料の味を損なうことがなく好ましい。これらの糖質のいずれか1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。2種以上の糖質を組み合わせて使用する場合は、例えば、甘味の少ないデキストリンを主体に、その他の糖質を組み合わせて甘味を調整することができる。上記のような糖質を使用することにより、本発明の妊婦用飲料から摂取された糖質が妊婦の体内で分解され、グルコースとして効率的に胎児に供給される。
【0010】
本発明の妊婦用飲料に含有される上記糖質は、2〜15重量%程度、好ましくは3〜14重量%程度、より好ましくは4〜13重量%程度、さらに好ましくは5.5〜12.5重量%程度であることが望ましい。
【0011】
(2)ビタミン
本発明の妊婦用飲料に配合されるビタミンとしては、妊娠期に欠乏しがちなビタミンを適宜選択することができ、特に限定されないが、例えばビタミンB、葉酸、ビタミンB、ビタミンB12等が挙げられ、これらのうちから1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。妊娠時にはタンパク質合成が盛んなため、タンパク質合成に関与するビタミンBを充分に摂取することが望ましいとされている。また、葉酸は胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させる効果があるとされている。従って、本発明の妊婦用飲料には、ビタミンB及び葉酸を配合することが好ましい。
【0012】
上記ビタミンの原料としては、食品衛生学的に許容されるものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、これらのビタミンを多く含有する野菜や果物等の天然原料を使用することもできるが、例えばビタミンBの原料としては、ピリドキシン塩酸塩等が挙げられる。また、葉酸の原料としては、プテロイルグルタミン酸等が挙げられる。
【0013】
本発明の妊婦用飲料におけるビタミンの配合量は、第7次食事摂取基準等に従って適宜調整され、妊婦が食事以外に摂取すべき量を補うことができる限り特に限定されないが、例えばビタミンBであれば、通常、0.00005〜0.025重量%程度、好ましくは0.00015〜0.0025重量%程度、より好ましくは0.0003〜0.0005重量%程度である。また、葉酸であれば、通常、0.00005〜0.0005重量%程度、好ましくは0.0001〜0.0004重量%程度、より好ましくは0.00015〜0.00025重量%程度である。
【0014】
(3)ミネラル
本発明の妊婦用飲料に配合されるミネラルとしては、例えば、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられ、これらのうちから1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。妊婦は、胎児に鉄、カルシウムを奪われやすく、これらのミネラル不足に陥りやすいことから、本発明の妊婦用飲料には、鉄及びカルシウムを配合することが望ましい。
【0015】
上記ミネラルの原料としては、食品衛生学的に許容されるものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、鉄の原料としては、クエン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、ヘム鉄等が挙げられる。また、カルシウムの原料としては、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ミルクカルシウム、貝カルシウム等が挙げられ、あるいは脱脂粉乳、牛乳、クリーム、全粉乳等の乳製品を配合してカルシウム原料としてもよい。マグネシウムの原料としては、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸三マグネシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。また、亜鉛の原料としては、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等が挙げられる。上記ミネラルの原料についても、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明の妊婦用飲料におけるミネラルの配合量は、栄養学雑誌 Vol.62 No.2 103−110(2004)等に従って適宜調整され、妊婦が食事以外に摂取すべき各種ミネラル量を補うことができる限り特に限定されないが、例えば鉄であれば、通常、0.0005〜0.06重量%程度、好ましくは0.002〜0.01重量%程度、より好ましくは0.0025〜0.0065重量%程度、さらに好ましくは0.0025〜0.004重量%程度である。また、カルシウムであれば、通常、0.001〜1重量%程度、好ましくは0.01〜0.1重量%程度、より好ましくは0.02〜0.05重量%程度である。鉄又はカルシウムの原料として各種化合物や乳製品等を用いる場合は、上記鉄又はカルシウム量に換算して配合量を適宜調整すればよい。また、カルシウムとマグネシウムは、およそ2:1の割合で摂取することが望ましいとされているため、本発明においてもこのような配合比率で組み合わせて用いることが好ましい。
【0017】
上記必須成分(1)〜(3)を、例えば、ハチミツ、麦芽糖、砂糖及びデキストリン;葉酸及びビタミンB;クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウム、あるいは、砂糖及びデキストリン;葉酸及びビタミンB;ピロリン酸第二鉄、脱脂粉乳、牛乳、というように組み合わせて配合することが好ましく、この様な組み合わせであれば、胎児の栄養状態を良好に保つことが期待できる。
【0018】
(4)その他の成分
本発明の妊婦用飲料には、上記成分以外にも、食品衛生学的に許容される従来公知の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、増粘剤、pH調製剤、酸味料、酸化防止剤等が挙げられ、妊婦が飲用することを考慮すれば、天然由来のものであることが望ましい。
【0019】
また、本発明の妊婦用飲料は、好ましくは鉄を含有することから、鉄味があらわれて飲みにくく感じられる可能性がある。従って、本発明の妊婦用飲料には、鉄味のマスキング効果を有する成分を配合させることが望ましい。鉄味をマスキングするための成分としては、例えば、クエン酸、穀物粉等が挙げられ、これらのうちから1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、クエン酸として、例えば、梅、ライム、レモン等のクエン酸を多く含有する果汁を用いてもよい。中でも梅果汁は鉄味のマスキング効果に優れ、梅果汁と他の果汁を組み合わせて用いることもできる。クエン酸とトレハロースを組み合わせて用いることにより、さらに優れた鉄味のマスキング効果が発揮され、梅果汁とトレハロースを組み合わせて配合することによって、極めて優れた鉄味のマスキング効果が得られる。
【0021】
本発明におけるクエン酸の配合割合は、配合される鉄の量によって適宜調整され得るが、0.005重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上である。クエン酸を多く含有する果汁を用いる場合は、上記クエン酸の配合量に基づいて適宜調整され得る。
【0022】
また、例えば、梅果汁とトレハロースを組み合わせて用いる場合であれば、梅果汁の配合量は、JAS法(果実飲料の日本農林規格)に基づくストレート換算した濃度の果汁の配合量として0.001〜10重量%程度、好ましくは0.005〜10重量%程度、好ましくは0.25〜10重量%程度、より好ましくは0.5〜5重量%程度、さらに好ましくは1〜2.5重量%程度;トレハロースの配合量は0.1〜10重量%程度、好ましくは0.5〜5重量%程度、より好ましくは1〜2重量%程度であることが望ましい。
【0023】
本発明の妊婦用飲料中に含まれる鉄の量を1とした場合、鉄に対する梅果汁(JAS法(果実飲料の日本農林規格)に基づくストレート換算した果汁濃度)の配合比率は、通常50〜5000、好ましくは100〜1000、より好ましくは500〜750;トレハロースの配合比率は、通常50〜5000、好ましくは100〜1000、より好ましくは500〜750である。
【0024】
マスキング成分として含有される穀物粉としては、大豆、大麦、小麦等の粉を使用することができ、好ましくは大豆粉である。本発明における穀物粉の配合割合は、配合される鉄の量によって適宜調整され得るが、例えば大豆粉の場合、0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である。本発明の妊婦用飲料中の鉄の配合量を1とした場合、鉄に対する大豆粉の配合比率は、通常、50〜5000、好ましくは100〜1000、より好ましくは500〜750である。本発明者らは、本発明の妊婦用飲料に大豆粉等の穀物粉を前記配合量で添加することにより、長期に亘って鉄味をマスキングすることができることを見出した。
【0025】
また、本発明の妊婦用飲料の糖含有率(ブリックス)は、5〜25程度、好ましくは10〜20程度、より好ましくは13〜15程度であることが望ましい。このような糖含有率であれば、ミネラルとして鉄を配合した場合に鉄味のマスキング効果が期待できる。
【0026】
本発明の妊婦用飲料には、味の改善を目的として、必要に応じて牛乳、生クリーム、キャラメルパウダー等の脂質;イヌリン、難消化性デキストリン等の食物繊維;ショウガ液等の香辛料;麦茶、ハトムギ、チコリ根、タンポポ根、黒豆茶、ハブ茶等の抽出物を添加することもできる。これらの配合量は、他の成分の配合量に従って適宜調整され得る。
妊婦が太りすぎると、妊娠糖尿病、妊娠中毒症、難産等の問題を生じる可能性があることから、本発明の妊婦用飲料における脂質含有量は、1重量%程度以下に抑えることが望ましく、通常、0.6〜0.8重量%程度、好ましくは0.3〜0.5重量%程度である。
【0027】
また、本発明の妊婦用飲料のカロリーは、胎児のエネルギー源となることを考慮すれば、糖質を主体として10〜1000kcal/200ml程度、好ましくは50〜450kcal/200ml程度、より好ましくは50〜250kcal/200ml程度、さらに好ましくは50〜150kcal/200ml程度にすることが望ましい。
【0028】
本発明の好ましい実施態様として、例えば、上記成分を含有する酸性飲料又は中性飲料が挙げられる。
【0029】
[酸性飲料]
本発明の妊婦用飲料を酸性飲料として調製する場合は、必要に応じて炭酸、果汁等を配合することが望ましい。さらに、従来からつわり症状の改善に効果があることが知られているショウガ液等を配合してもよい。これらを配合することによって、つわり期の妊婦にも飲みやすい味に調製することができる。
本発明の妊婦用飲料は、好ましくは葉酸を含有するが、葉酸は酸性下において熱、光、酸素等によって分解されやすい性質を有する。従って、本発明の酸性飲料のpHは、3.5〜4.5程度、好ましくは3.7〜4.3程度、より好ましくは3.9〜4.1程度であることが望ましい。本発明の酸性飲料のpHを上記範囲に保つため、従来公知のpH調整剤を使用することができる。
【0030】
また、ビタミンCを配合して葉酸の安定性を高めることもできる。この場合、ビタミンCの配合量は、0.03〜0.3重量%程度、好ましくは0.04〜0.2重量%程度、より好ましくは0.05〜0.1重量%程度であって、葉酸の配合量を1とした場合に葉酸の配合量に対するビタミンCの配合比率は、10〜10000程度、好ましくは100〜1000程度、より好ましくは200〜500程度ことが望ましい。
【0031】
[中性飲料]
本発明の妊婦用飲料を中性飲料として調製する場合、必要に応じて、麦茶、ハトムギ、チコリ根、タンポポ根、黒豆茶、ハブ茶等の抽出液を配合することができる。このような抽出液を配合することによって、コーヒーや茶のような風味を付けることができ、さらに乳製品を配合することによって、より飲みやすい味に調製できる。しかも、上記の抽出液は、カフェインを含有しないため、妊婦や授乳中の母親にとって好ましい飲料である。
中性飲料のpHは、特に限定されないが、5.5〜7程度、好ましくは5.8〜6.7程度、より好ましくは6〜6.5程度であることが望ましい。
【0032】
本発明の妊婦用飲料を、1日、妊婦1人あたり、100〜400ml程度、150〜300ml程度、より好ましくは150〜250ml程度飲用することが望ましい。
【0033】
胎内において、胎児(胚子)は、母親がまだ妊娠に気づいていない時期から成長し続けている。従って、本発明の妊婦用飲料の飲用時期は特に限定されるものではなく、胎児の栄養状態を常に良好に保つためには、妊娠前及び妊娠中に亘って、上記1日摂取量を毎日飲用することが望ましい。また、本発明の妊婦用飲料に含有される栄養素は、乳児の栄養状態を良好に保つための栄養素でもあることから、授乳期の母親が本発明の妊婦用飲料を飲用することによって、乳児の栄養状態を良好に保つことが期待できる。
【0034】
2.妊婦用飲料の製造
本発明の妊婦用飲料は、従来公知の方法に従って調製することができ、例えば、上記成分を蒸留水や上記抽出液等に溶解し、これを攪拌機、ホモジナイザー等を用いて攪拌混合して得られる。
【0035】
本発明の妊婦用飲料に含有されるミネラルとして鉄を配合する場合は、クエン酸又はクエン酸を多く含有する果汁及びトレハロースを上記配合量に従って配合し、他の成分と共に攪拌混合することによって、該飲料の鉄味をマスキングすることが可能である。あるいは、代わりに大豆粉等の穀物粉を用いても、同様の効果が得られる。
【0036】
また、本発明の妊婦用飲料に含有されるビタミンとして葉酸を配合する場合は、ビタミンCを上記配合量に従って配合し、他の成分と共に攪拌混合することによって該飲料中の葉酸の安定性を高めることができる。
【0037】
必要に応じて、本発明の妊婦用飲料に均質化処理、殺菌処理等を行ってもよい。均質化処理は従来公知の方法に従って行うことができ、均質化条件は該飲料の状態によって適宜設定され得るが、例えば100〜1000kgf/cm、好ましくは250〜800kgf/cm、より好ましくは400〜600kgf/cmである。
【0038】
また、必要に応じ、缶、ペットボトル、ビン、紙パック、パウチ等の容器に充填後、従来公知の方法に従って殺菌処理を行うことができ、殺菌方法は特に限定されないが、例えばレトルト殺菌、プレート殺菌、直接加熱殺菌等が挙げられる。容器に充填する際、例えば、上記1日摂取量を1缶に充填すれば、妊婦は1日1缶を飲用するだけで必要なエネルギー及び栄養素を摂取することができることから、簡便であり好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び実験例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び実験例に限定されない。
【0040】
実施例1(酸性飲料)
下表1に示される処方に従って原料を蒸留水に溶解した後、全量が200mlになるように蒸留水で調整して炭酸を混合し、酸性飲料を得た。炭酸を混合する際の原料が溶解された液体のCO圧力は、20℃で0.1〜0.2MPaである。得られた酸性飲料を缶に充填し、70℃にて10分間殺菌を行った。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例2(中性飲料)
下表2に示される処方に従って麦茶、ハトムギをベースに、乳製品と大豆粉を配合したノンカフェインの中性飲料を得た。
(1)ハトムギと麦茶を3:2の割合で混合し、20倍量の100℃のお湯で10分間抽出した。抽出液をメッシュで濾過し、冷却して抽出液を得た。
(2)チコリ根とタンポポ根を3:2の割合で混合し、20倍量の95℃のお湯で7分間抽出した。抽出液をメッシュで濾過し、冷却して抽出液を得た。
(3)上記(1)及び(2)で得られた抽出液とその他の原料を攪拌混合し、蒸留水で全量が2000gになるように調整した。その後、70℃まで加熱し、500kgf/cmの均質化処理を2回行った。均質化処理後、缶に充填し、巻き締めを行った。
(4)加熱加圧殺菌(レトルト殺菌)を、F値で16の条件にて行った。
【0043】
【表2】

【0044】
実験例1:酸性飲料における鉄味のマスキング効果
(1)下表3の処方で実施例1の方法に従って、試験液(酸性飲料)を得た。
【0045】
【表3】

【0046】
(2)上記(1)で得られた試験液200mlに、クエン酸を10mg、20mg、30mg、40mg又は50mg、あるいはトレハロース2g、3g、4g又は5gをそれぞれ添加した。クエン酸又はトレハロースを添加した試験液を用い、鉄味のマスキング効果について評価した(モニター数:3人)。結果を、下表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4より、クエン酸では鉄味のマスキング効果が確認されたが、トレハロースではマスキング効果が得られないことが示された。
【0049】
(3)上記(1)で得られた試験液200mlに、梅果汁(5倍濃縮)を添加し、鉄味のマスキング効果について評価した(モニター人数:3人)。結果を下表5に示す。表中、梅果汁添加量は、5倍濃縮梅果汁の添加量を指し、梅果汁濃度はJAS法(果実飲料の日本農林規格)に基づいてストレート換算した場合の濃度を表す。
【0050】
【表5】

【0051】
結果より、梅果汁を添加することによって鉄味がマスキングされることが示された。
【0052】
(4)上記(1)で得られた試験液に梅果汁(5倍濃縮)と、ライム果汁又はトレハロースを添加し、各試験液を飲用して鉄味のマスキング効果を評価した(モニター人数:3人)。梅果汁の果汁濃度は、1%である。結果を下表6に示す。
【0053】
【表6】

【0054】
表6より、梅果汁を添加された酸性飲料では、やや鉄味が感じられるものの鉄味のマスキング効果が確認された。また、梅果汁及びトレハロースを共に配合すると、優れた鉄味のマスキング効果が得られた。
【0055】
実験例2:中性飲料における鉄味のマスキング効果
(1)下表7の処方で実施例2の方法に従って、試験液(中性飲料)を得た。表7は、得られる試験液200gあたりの組成を表す。
【0056】
【表7】

【0057】
(2)上記(1)で得られた試験液(200g)に大豆粉1g、2g、3g、4g又は5g添加し、大豆粉添加直後と、50℃にて2週間放置した後の各試験液における鉄味のマスキング効果を評価した(モニター人数:3人)。結果を下表8に示す。
【0058】
【表8】

【0059】
表8より、大豆粉1gを添加した試験液は、大豆粉添加直後は鉄味のマスキング効果が確認されたが、経時的にマスキング効果が低下した。これに対し、大豆粉を3g以上添加した試験液は、長時間放置後も初期のマスキング効果が保持されていた。また、大豆粉を2g添加した試験液も、初期のマスキング効果に比べてやや低下しているものの、長期間放置後も鉄味のマスキング効果を維持していることが確認された。

実験例3:酸性飲料中の葉酸安定性
(1)下表9の処方で実施例1の方法に従って、試験液(酸性飲料)を得た。
【0060】
【表9】

【0061】
(2)上記(1)で得られた試験液200mlに葉酸を600μg及びビタミンCを150mg添加したものと、該試験液に葉酸600μgを単独で加えたものの経時的な葉酸含有量の変化を観察した。
【0062】
その結果、ビタミンCを添加することによって、酸性飲料中に含有される葉酸の分解が抑制されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質、ビタミン及びミネラルを含有する妊婦用飲料。
【請求項2】
糖質が、砂糖、ハチミツ、麦芽糖、乳糖及びデキストリンからなる群より選択される少なくともいずれか1種である請求項1に記載の妊婦用飲料。
【請求項3】
ビタミンが、葉酸及び/又はビタミンBである請求項1に記載の妊婦用飲料。
【請求項4】
ミネラルが、鉄、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛からなる群より選択される少なくともいずれか1種である請求項1に記載の妊婦用飲料。
【請求項5】
さらに、穀物粉を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の妊婦用飲料。
【請求項6】
さらに、クエン酸及びトレハロースを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の妊婦用飲料。