説明

妨害波源峻別装置

【課題】車室内外の両方にアンテナがあることを必要とせず、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを特定する技術を提供する。
【解決手段】妨害波源峻別装置は、所定のチャネルで妨害波を受信しているか否かを判定し(ステップ130)、妨害波を受信していると判定した場合、当該チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、変動量が第2の基準値を超えていれば、車両の車外に妨害波の発生機器があると判定する(ステップ140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妨害波源峻別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、違法な電波機器が販売されており、その電波が正規の通信システムにとって妨害波となりうる可能性が高まりつつある。加えて、通信機器でなくても意図せず妨害波を出している機器もあり、今後さらに妨害波は多くなっていく傾向である。妨害波が存在すると、無線通信が正常に動作しない危険性がある。また、妨害波は常に車外にあるとは限らない。現在、車室内には様々な電気機器が使用されており、今後もその数は増えていく傾向である。その増加に伴い、意図しない妨害波が発生する可能性も高まっていく。したがって、正規の通信システムに影響を与えてしまう妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを特定する技術が望まれる。
【0003】
電波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを特定する技術としては、車内および車外それぞれに、指向性のあるアンテナを配置し、入力される電波の強度を測定し、その強度によってユーザが携帯している送受信機が、車内外のどちらにあるかを判断する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−207263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この技術は、妨害波の検出に関するものでもなく、また、アンテナが車内外に複数個必要となってしまい、その結果、部品数およびアンテナ設置用スペースが増大してしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、車室内外の両方にアンテナがあることを必要とせず、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを特定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両に搭載される妨害波源峻別装置であって、所定のチャネルで妨害波を受信しているか否かを判定する妨害波判定手段(130)と、妨害波を受信していると前記妨害波判定手段(130)が判定した場合、前記チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、前記車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、前記変動量が第2の基準値を超えていれば、前記車両の車外に妨害波の発生機器があると判定する妨害波源判定手段(140)と、を備えた妨害波源峻別装置である。
【0008】
このように、車両の外部に妨害波の発生機器があれば、車両の移動に伴うフェージングによって当該妨害波を受信したチャネルの受信強度の変動量が大きくなり、逆に、車両の内部に妨害波の発生機器があれば、車両の移動に伴うフェージングが発生せず、当該妨害波を受信したチャネルの受信強度の変動量が小さくなることを利用して、車外に妨害波の発生機器があるのか車内に妨害波の発生機器があるのかを判定することができる。
【0009】

また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記妨害波源判定手段(140)は、妨害波を受信していると前記妨害波判定手段(130)が判定した場合、前記車両が移動しているときにのみ、前記チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、前記車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、前記車両が移動しているときにのみ、前記変動量が第2の基準値を超えていれば、前記車両の車外に妨害波の発生機器があると判定することを特徴とする。このように、車両が移動しているときにのみ、フェージングを利用した妨害波発生機器の所在を峻別することで、より精度の高い峻別が可能となる。
【0010】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る妨害波源峻別装置1の構成図である。
【図2】制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図3】通信トランザクション例のシーケンス図である。
【図4】妨害波の発生機器が車両内にあるか車両外にあるか
【図5】車両10内に妨害波発生機器20が存在する状態を示す図である。
【図6】図5の場合の受信信号の信号レベル変化を示す図である。
【図7】車両10外に妨害波発生機器20が存在する状態を示す図である。
【図8】図7の場合の受信信号の信号レベル変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に本実施形態に係る妨害波源峻別装置1の構成を示す。この妨害波源峻別装置1は、車両の例えば車室内に搭載され、車外の通信機器と通信する装置である。本実施形態においては、妨害波源峻別装置1は、DSRC車載機であり、より具体的には、有料道路の通行料金の支払いを実現するためのETC車載機(自動料金収受システムの車載機)である(なお、ETCは登録商標である)。
【0013】
近年、違法な電波機器が販売されており、その電波が正規の通信システムにとって妨害波となりうる可能性が高まりつつある。加えて、通信機器でなくても意図せず妨害波を出している機器もあり、今後さらに妨害波は多くなっていく傾向である。妨害波が存在すると、無線通信が正常に動作しない危険性がある。また、妨害波は常に車外にあるとは限らない。現在、車室内には様々な電気機器が使用されており、今後もその数は増えていく傾向である。その増加に伴い、意図しない妨害波が発生する可能性も高まっていく。したがって、正規の通信システムに影響を与えてしまう妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを特定する技術が望まれる。
【0014】
特にETCシステム(自動料金収受システム)は、ETC車載機とETC路側機(通常有料道路の出口ゲート付近または入口ゲート付近に設置されている)との通信が正常に行なわれなかった場合、ゲートが開かなくなってしまう。したがって、妨害波を検出した場合は、ETCシステム等を停止させる、若しくは妨害波自体の発生を停止させる等の処置が必要となる。そのためにも、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを特定することが望ましい。
【0015】
そこで、本実施形態では、車両が移動すると電波伝搬のフェージングによって車外からの電波の強度がばたつくことを利用する。すなわち、車両の走行中に、妨害波の受信レベル(電波強度)の変動量が大きい場合に、妨害波の発生機器が車外にあると判定し、車両の走行中に、妨害波の受信レベルの変動量が少ない場合に、妨害波の発生機器が車内にあると判定する。
【0016】
図1に示す通り、妨害波源峻別装置1は、アンテナ11、通信部12、RSSI検出部13、制御部14等を有している。
【0017】
アンテナ11は、ETC路側機との通信のために設けられたアンテナであり、例えば車室内のウインドシールド付近に固定配置された1本のアンテナから構成されている。
【0018】
通信部12は、アンテナ11が無線受信した電波の受信信号に対して、増幅、周波数変換、チャネル選択、復調等の処理を施し、それら処理の結果、当該受信信号中で選択したチャネルの信号から、制御部14が処理可能なデータ信号を抽出し、当該データ信号を制御部14に出力する。なお、チャネルの選択は、後述する通り、制御部14の制御に従って実行する。また通信部12は、制御部14から出力された送信用のデータ信号を取得すると、取得したデータ信号に対して増幅、周波数変換、変調等の処理を施し、それら処理の結果の送信信号をアンテナ11に出力する。これにより、アンテナ11は、当該送信信号を無線送信する。
【0019】
RSSI検出部13は、通信部12において選択されたチャネルにおける信号の信号レベル(受信強度)を検出し、検出した受信強度を示す信号を制御部14に出力する周知の回路である。
【0020】
制御部14は、例えばCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ(不揮発性メモリ)等を備えたマイクロコントローラによって実現され、CPUがROMに記録されたプログラムを実行し、その際、RAMを作業領域として使用し、必要に応じてフラッシュメモリにデータを記録することで、所望の作動を実現する。制御部14の作動の詳細については後述する。
【0021】
以上のような構成の妨害波源峻別装置1の作動について、以下説明する。図2は、制御部14が実行する処理のフローチャートである。制御部14は、妨害波源峻別装置1の作動開始時(例えば車両の主電源オン時)に、図2の処理の実行を開始する。
【0022】
まず、妨害電波が発生しておらず、ETC路側機も近くにない場合について説明する。この場合、制御部14は、ステップ110で、チャネルスキャン処理を行う。具体的には、あらかじめ定められたETCシステム用の複数のチャネル(周波数)のうちから、あらかじめ定められた巡回順序に従って、1つのチャネルを選択し、その選択を通信部12に実行させる。例えば、あらかじめ定められたETCシステム用の複数のチャネルとして、チャネルA、B、Cの3つがある場合は、例えばA、B、C、A、…という巡回順序に従って、前回のステップ110で選択されたチャネルの次の順番のチャネル(例えばチャネルCの次はチャネルA)を選択する。なお、妨害波源峻別装置1の起動後初めてのステップ110の実行機会においては、あらかじめ定めた最初のチャネル(例えばチャネルA)を選択する。これによって、通信部12は、当該チャネルの信号の抽出を試みるようになり、RSSI検出部13は、当該チャネルの信号レベルを逐次出力するようになる。
【0023】
続いてステップ120では、直前のステップ120で選択したチャネルの信号レベル(図2ではRSSIと記す)をRSSI検出部13から取得し、取得した信号レベルが基準レベル以上であるか否かを判定する。本例のように、妨害電波が発生しておらず、ETC路側機も近くにない場合は、信号レベルが基準レベルよりも低いので、基準レベル以上でないと判定し、処理をステップ110に戻す。
【0024】
したがって、妨害電波が発生しておらず、ETC路側機も近くにない場合は、ステップ110、120の処理を繰り返し、それにより、あらかじめ定められたETCシステム用の複数のチャネルを巡回的に切り替えて、信号レベルが基準レベル以上となるチャネルを探す。
【0025】
次に、妨害電波が発生しておらず、自車両がETC路側機の近くにおり、ETC車載機が信号(FCMCの信号)を送信している場合について説明する。この場合、制御部14は、ステップ110で、ETC路側機が送信している特定のチャネルA(例えばFCMC)を選択すると、RSSI検出部13は、基準レベルを超える信号レベルを検出し、その旨の信号を制御部14に出力する。それに基づいて制御部14は、ステップ120で、当該チャネルAの信号レベルが基準レベル以上であると判定し、処理をステップ130に進める。
【0026】
ステップ130では、通信部12が当該チャネルAで無線受信して制御部14に出力した信号中に含まれるプリアンブル(またはユニークワード)の認証を行い、認証に成功したか否か、すなわち、受信した信号が正規の信号か否かを判定する。ETC路側機は、無線送信する信号の所定の位置に、あらかじめ値が決められたプリアンブルというデータおよびユニークワードというデータを含めるようになっているので、制御部14は、その所定の位置に含められたデータを当該プリアンブルと比較し、当該データの値が当該プリアンブル(またはユニークワード)と同じであるか否かを判定すればよい。同じであれば、認証に成功したことになり、同じでなければ、認証に失敗したことになる。なお、比較用のプリアンブルは、例えば制御部14のROMに記録されているものを用いる。
【0027】
本例では、通信部12は、ETC路側機から信号を受信しているので、認証に成功したと判定し、ステップ135に進む。ステップ135では、ETC路側機との一連のETC通信処理を行う。
【0028】
具体的には、図3に示すように、ETC路側機から送信されるAction1.req信号425、Action2.req信号435、Action3.req信号445、Action4.req信号455を受信し、それぞれに応じてAction1.res信号430、Action2.res信号440、Action3.res信号450、Action4.res信号460を送信する。ここで、Action1.req信号425、Action1.res信号430のやりとりは、ETC車載機(妨害波源峻別装置1)とETC路側機との相互認証のためのデータのやりとりであり、Action2.req信号435、Action2.res信号440のやりとりは、ETC車載機からETC路側機への車両保有情報の送信のためのデータのやりとりであり、Action3.req信号445、Action3.res信号450のやりとりは、ETC路側機からETC車載機1への料金所情報の送信のためのデータのやりとりであり、Action4.req信号455、Action4.res信号460のやりとりは、ETC車載機とETC路側機とのETC処理結果通知のためのデータのやりとりである。
【0029】
そして、Action4.req信号455には、ETC処理結果のデータを、ETC車載機に接続されたICカード(図示せず)に書き込むことを要求する書き込みコマンドが含まれている。制御部14は、この書き込みコマンドに基づいて、ETC処理結果のデータと、そのデータを書き込むよう要求するコマンドを、ICカードに出力する(信号458に相当する)。そしてその後、当該ETC処理装置から送信されるEventReport.req信号465を車載機コントローラ13が受信することで、道路通行料金収受のための、妨害波源峻別装置1(ETC車載機)およびETC路側機間の一連の通信が終了する。このような一連の通信が終了した後、処理をステップ110に戻す。
【0030】
なお、BST、VST、Action1.req〜Action4.req、Action1.res〜Action4.res、EventReport.reqは、MDSとも呼ばれている。
【0031】
次に、特定のチャネルBに強い妨害波が発生し、その妨害波をアンテナ11が受信している場合について説明する。この場合、制御部14は、ステップ110で、当該チャネルBを選択すると、RSSI検出部13は、基準レベルを超える信号レベルを検出し、その旨の信号を制御部14に出力する。それに基づいて制御部14は、ステップ120で、当該チャネルBの信号レベルが基準レベル以上であると判定し、処理をステップ130に進める。
【0032】
ステップ130では、通信部12が当該チャネルBで無線受信して制御部14に出力した信号中に含まれるプリアンブルの認証を行い、認証に成功したか否か、すなわち、受信した信号が正規の信号か否かを判定する。本例の場合、当該チャネルBで受信した信号は、妨害波なので、プリアンブルのデータを含まない。したがって、制御部14は、認証に失敗したと判定し、ステップ140に進む。この時点で、制御部14は、妨害波を受信したと判定したことになる。
【0033】
ステップ140では、当該チャネルBにおける妨害波の発生機器が車両内(自車両内)にあるのか車両外(自車両外)にあるのかを、当該チャネルBにおける信号レベル(受信強度)の変動量および車両の移動の有無に基づいて、図4のテーブルに従って判定する。なお、車両の移動の有無は、車両に搭載された車速センサ(図示せず)が出力する車速パルス情報を、例えばCAN等の車内LANを介して取得し、取得した検出信号に基づいて車両の車速を特定し、特定した車速が所定値(例えば時速5km/h)未満であれば車両が移動していないと判定し、当該所定値(例えば時速5km/h)以上であれば車両が移動していると判定してもよい。
【0034】
ここで、受信強度の変動量について説明する。もし、図5に示すように、上記妨害波の発生機器20が車両10内にあり、発生機器20の送信レベル自体が一定であれば、図6に示す通り、時間が経過して車両10が移動しても、妨害波源峻別装置1で受信した妨害波の信号レベル31(図6中ではRSSI電圧で表している)は、一定のままとなる。
【0035】
これに対し、図7に示すように、上記妨害波の発生機器20が車両の外部のいずれかの場所に設置されている場合は、妨害波は、直接波、反射波、ビル21等による回折波のように、複数の伝搬経路を介して妨害波源峻別装置1のアンテナ11に到達する。
【0036】
この場合、車両10が走行している場合は、マルチパスフェージングにより、図8に示すように、妨害波源峻別装置1で受信した妨害波の信号レベル32が急激に(典型的には最大値と最小値が数十dB異なる程度に)変動する。
【0037】
そこで、ステップ140の開始時から所定期間経過時まで(または、車両が所定距離走行するまで)の期間において、所定のサンプリングレートで当該チャネルBの信号レベルをサンプリングする。所定期間としては、例えば5秒でもよい。所定距離としては、例えば100mでもよい。そして、サンプリングした信号レベルのうち、最大値(dB単位)と最小値(dB単位)の差(正の値となる)を、受信強度の変動量とする。
【0038】
あるいは、サンプリングした信号レベルを用いて、各サンプリング時点における信号レベルの単位時間当たり(あるいは単位走行距離当たり)の変化量を算出して変化率とし、その各サンプリング時点の変化率の絶対値の総和を算出し、算出した総和を受信強度の変動量としてもよい。
【0039】
つまり、信号レベルの変動量は、所定期間内(または所定距離走行距離)においてチャネルBで受信した信号(妨害波を含む)の信号レベルの変化が激しいほど大きくなる量である。
【0040】
そして、このようにして算出した変動量と、第1の基準値とを比較し、変動量が第1の基準値未満であれば、信号レベルに変化ありと判定する。また、このようにして算出した変動量と、第2の基準値とを比較し、変動量が第2の基準値より大きければ、信号レベルに変化なしと判定する。
【0041】
ここで、第1の基準値は、第2の基準値と同じであってもよいし、第2の基準値が第1の基準値よりも大きくてもよい。また、変動量が第1の基準値以上かつ第2の基準値以下の場合は、当該チャネルBにおける妨害波の発生機器が車両内にあるのか車両外にあるのか不明であると判定する。
【0042】
「信号レベルに変化あり」と判定した場合と、「信号レベルに変化なし」と判定した場合は、次に、図4のテーブルを用いて、信号レベルの変化(図中ではRSSIの変化と記載)の有無と、車両が移動しているか否かに基づいて、当該チャネルBにおける妨害波の発生機器が車両内にあるのか、または車両外にあるのか、あるいは不明なのか、判定する。
【0043】
具体的には、車両が移動していると判定し、信号レベルに変化があると判定した場合は、車外に妨害波の発生機器があると判定し、車両が移動していると判定し、信号レベルに変化がないと判定した場合は、車内(例えば車室内)に妨害波の発生機器があると判定する。
【0044】
また、車両が移動していないと判定し、信号レベルに変化がないと判定した場合は、当該チャネルBにおける妨害波の発生機器が車両内にあるのか車両外にあるのか不明であると判定してもよい。
【0045】
また、車両が移動していないと判定し、信号レベルに変化があると判定した場合は、車外に妨害波があると判定する。このようにするのは、車両が停止している状態で信号レベルに変化がある場合は、妨害波源が車外で移動している可能性が非常に高いと考えられるからである。
【0046】
続いてステップ150では、ステップ140の判定結果と、現在位置(例えば、図示しないGPS受信機から取得する)と、現在時刻と、妨害波を受信したチャネル(本例ではチャネルB)と、サンプリングした信号レベルとを、妨害波情報として記憶媒体(例えば上記フラッシュメモリ)に記録する。ステップ150の後、図2の処理は終了する。
【0047】
このようにして記録された妨害波情報は、後に参照可能なようになっている。例えば、妨害波源峻別装置1の操作部(図示せず)に対してユーザが所定の表示指示操作を行ったときに、制御部14が、車内のディスプレイ(図示せず)または音声出力装置(図示せず)を用いて、記憶媒体中の当該妨害波情報を報知するようになっていてもよい。
【0048】
あるいは、ディーラ等において、情報吸い上げ機器(図示せず)が、制御部14と(有線または無線で)通信することで、制御部14から記憶媒体中の当該妨害波情報を受信し、受信した妨害波情報をプリンタ、ディスプレイ、音声出力装置に出力させるようになっていてもよい。
【0049】
あるいは、ディーラ等において、ユーザの所有する携帯電話機(図示せず)が、制御部14と(有線または無線で)通信することで、制御部14から記憶媒体中の当該妨害波情報を受信し、受信した妨害波情報を当該携帯電話機のディスプレイ、音声出力装置に出力させるようになっていてもよい。
【0050】
そして、このような妨害波情報をみた者(ユーザ、あるいは他の者)は、妨害波情報中に、妨害波発生機器が車内にあるという情報が含まれている場合は、車内を調べて妨害波発生機器を見つけることができる。また、妨害波情報中に、妨害波発生機器が車外にあるという情報が含まれている場合は、車内を調べて妨害波発生機器を探す必要性がないことを認識できるので、無駄な作業してしまうことがなくなる。
【0051】
以上説明した通り、妨害波源峻別装置1は、所定のチャネルで妨害波を受信しているか否かを判定し(ステップ130)、妨害波を受信していると判定した場合、当該チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、変動量が第2の基準値を超えていれば、車両の車外に妨害波の発生機器があると判定する(ステップ140)。
【0052】
このように、車両の外部に妨害波の発生機器があれば、車両の移動に伴うフェージングによって当該妨害波を受信したチャネルの受信強度の変動量が大きくなり、逆に、車両の内部に妨害波の発生機器があれば、車両の移動に伴うフェージングが発生せず、当該妨害波を受信したチャネルの受信強度の変動量が小さくなることを利用して、車外に妨害波の発生機器があるのか車内に妨害波の発生機器があるのかを判定することができる。
【0053】
また、妨害波源峻別装置1は、妨害波を受信しているとステップ130で判定した場合、車両が移動しているときにのみ、当該チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、車両が移動しているときにのみ、変動量が第2の基準値を超えていれば、車両の車外に妨害波の発生機器があると判定する。このように、車両が移動しているときにのみ、フェージングを利用した妨害波発生機器の所在を峻別することで、より精度の高い峻別が可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態においては、制御部14が、図2のステップ130を実行することで妨害波判定手段の一例として機能し、ステップ140を実行することで妨害波源判定手段の一例として機能する。
【0055】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0056】
(1)上記実施形態では、制御部14は、車両が移動していると判定した場合にのみ、妨害波を受信したチャネルにおける電力レベルに基づいて、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを判定している。しかし、車両が移動している、いないに関わらず、妨害波を受信したチャネルにおける電力レベルに基づいて、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを判定するようになっていてもよい。この場合でも、少なくとも車両が走行しているときには、正しく判定することができる。
【0057】
(2)また、上記実施形態では、ステップ130で、妨害電波があると判定した後に、妨害波を受信したチャネルにおける電力レベルをサンプリングし、その電力レベルの変動量を用いて、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを判定している。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、ステップ130で、特定のチャネルに妨害電波があると判定した場合、その判定の前の所定の期間においてあらかじめサンプリングしておいた当該チャネルの電力レベルの変動量を用いて、妨害波の発生機器が車内にあるか車外にあるかを判定するようになっていてもよい。
【0058】
(3)また、上記実施形態では、妨害波源峻別装置1はETC車載機であったが、ETC車載機以外のDSRC車載機であってもよいし、DSRC車載機以外の車載機であってもよい。
【0059】
(4)また、上記実施形態では、チャネルは周波数であったが、周波数以外のチャネルを採用してもよい。例えば、CDMAにおける特定の拡散符号、TDMAにおける特定の時間スロット等をチャネルとして採用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 妨害波源峻別装置
11 アンテナ
12 通信部
13 RSSI検出部
14 制御部
20 妨害波発生機器
31、32 妨害波の信号レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される妨害波源峻別装置であって、
所定のチャネルで妨害波を受信しているか否かを判定する妨害波判定手段(130)と、
妨害波を受信していると前記妨害波判定手段(130)が判定した場合、前記チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、前記車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、前記変動量が第2の基準値を超えていれば、前記車両の車外に妨害波の発生機器があると判定する妨害波源判定手段(140)と、を備えた妨害波源峻別装置。
【請求項2】
前記妨害波源判定手段(140)は、妨害波を受信していると前記妨害波判定手段(130)が判定した場合、前記車両が移動しているときにのみ、前記チャネルにおける受信強度の変動量が第1の基準値未満であれば、前記車両の車内に妨害波の発生機器があると判定し、前記車両が移動しているときにのみ、前記変動量が第2の基準値を超えていれば、前記車両の車外に妨害波の発生機器があると判定することを特徴とする請求項1に記載の妨害波源峻別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98911(P2013−98911A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242403(P2011−242403)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】