説明

始動用燃料供給機構付気化器

【課題】始動用燃料供給機構付気化器について、簡易な構成でコストの高騰を招くことなく良好なエンジン始動性を確保できるようにする。
【解決手段】本体ボディ2を貫通した吸気通路4,4にチョークバルブを備えているとともにメイン燃料通路をバイパスしてフロート室3aと吸気通路4,4を連通させる始動用燃料供給路を備え、その始動用燃料供給路にチョークバルブの閉動作に連動して開弁する開閉弁が配設されており、エンジン始動時に始動用の燃料を追加的に供給する始動用燃料供給機構6を備えた気化器1であって、その始動用燃料供給機構6が、一端側を吸気通路4,4に突出し他端側に始動用燃料供給路の開閉弁の弁体61cが連結された弁開閉手段61を有して、吸気通路4,4内で閉動作を行うチョークバルブの弁体5が弁開閉手段61の一端側に当接しながら押圧することで始動用燃料通路の開閉弁を開弁させ、始動用の燃料を供給可能な状態となるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動用燃料供給機構を備えた気化器に関し、殊に、チョークバルブの閉動作に連動して始動用燃料供給路を開くことにより、エンジン始動時に通常の供給燃料に加え始動用燃料を供給する始動用燃料供給機構付気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用エンジン等に用いられるチョーク機構を備えた気化器では、エンジンの冷間始動時において供給する燃料混合気を始動空燃比に合わせるために、チョークバルブを全閉または任意開度で固定した状態にしてエンジンを始動させるのが一般的である。その際、クランキング時にメインノズルから吐出される燃料がエンジン要求流量に満たない場合には、始動不良や始動不能を起こしたり完爆までの時間を余分に要したりすることがある。
【0003】
これらの問題に対し、特開2002―339804号公報には、メイン燃料通路とは別ルートでフロート室と吸気通路とを接続する始動用燃料供給路を有し、その始動用燃料供給路に開閉弁を配置して、その開閉弁とチョークレバーとを連結するようにリンクロッドを挿設したものとして、チョークレバーの閉動作に伴って始動用燃料供給路の開閉弁を開く始動用燃料供給機構を備えた気化器が提案されている。
【0004】
このように、チョークバルブを開くことに連動して始動燃料を供給可能な状態とし、メイン燃料通路をバイパスする始動用燃料供給路を介して始動用の燃料を供給する始動用燃料供給機構を備えたことにより、エンジンの冷間始動時に供給燃料が不足する事態を回避することができる。
【0005】
しかし、前述の文献で提案されている始動用燃料供給機構は、気化器外側のチョークレバーに基端側を連結したリンクロッドの先端側で、気化器内部に形成された始動用燃料供給路の開閉弁を開閉させるものであり、その構成が複雑であることに加え、気化器の製作において加工の工程及び部品点数が多くなるため、構成の簡易さとコストの低廉さが要求される汎用エンジン向け気化器においては、広く採用されにくい技術と言わざるを得ない。
【特許文献1】特開2002―339804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、始動用燃料供給機構を備えた気化器について、簡易な構成でコストの高騰を招くことなく良好なエンジン始動性を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、本体ボディを貫通した吸気通路にチョークバルブを有しているとともに、メイン燃料通路をバイパスしてフロート室と吸気通路を連通させる始動用燃料供給路を有し、この始動用燃料供給路にチョークバルブの閉動作に連動して開弁する開閉弁が配設されており、エンジン始動時に始動用の燃料を追加的に供給する始動用燃料供給機構を備えた気化器において、その始動用燃料供給機構は、一端側を吸気通路に突出し他端側に始動用燃料供給路の開閉弁の弁体が連結された弁開閉手段を有しているとともに、吸気通路内で閉動作を行うチョークバルブの弁体が弁開閉手段の一端側に当接しながら押圧することにより、弁開閉手段が動いてその他端側で始動用燃料供給路の開閉弁を開弁させ、始動用の燃料を供給可能な状態となることを特徴とする。
【0008】
このように、チョークバルブの弁体が閉動作に伴い弁開閉手段の一端側に当接することにより始動用燃料供給路の開閉弁が開弁することとし、チョークレバーに連結されたリンクロッド先端側で気化器内部の始動用燃料供給路の開閉弁を開弁する構成の従来例と比べて、構成が簡易になってより少ない加工の工程で実現することができる。
【0009】
また、この場合、その始動用燃料供給機構の弁開閉手段は、先端側が開閉弁の弁体に連結された弁ロッドであって、基端側にチョークバルブの弁体の一部が当接する弁体当接部を有しているとともに閉弁方向に付勢する弁バネが付設されており、チョークバルブの弁体が弁体当接部に当接していない状態で開閉弁の閉弁状態を維持することを特徴としたものとすれば、チョークバルブを閉じていない状況で余分な始動燃料を供給しないものとなり、良好な空燃比を維持やすいものとなる。
【0010】
さらに、上述した始動用燃料供給機構付気化器において、その始動用燃料供給機構は、フロート室内で燃料液面よりも低い位置に先端側を開口するように垂設された燃料吸い上げ管を有しており、この燃料吸い上げ管と開閉弁及び弁開閉手段とともに一部品に纏められて気化器に取付けられているものとすれば、始動用燃料供給機構を通常の気化器に取り付けるだけで容易に製作することができる。
【発明の効果】
【0011】
チョークバルブの弁体が閉動作で始動用燃料供給機構の弁体当接部に当接して押圧することにより、始動用燃料供給路の開閉弁を開弁するものとした本発明によると、簡易な構成でコストの高騰を招くことなく良好なエンジン始動性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における実施の形態である始動用燃料供給機構付気化器の縦断面図である。
【図2】図1の始動用燃料供給機構付気化器の右側面図である。
【図3】図1の始動用燃料供給機構付気化器における始動用燃料供給機構の拡大した部分横断面図である。
【図4】(A)は図1の始動用燃料供給機構付気化器における始動用燃料供給機構の作動前の状態を示す拡大した部分縦断面図、(B)は(A)の始動用燃料供給機構の作動中の状態を示す拡大した部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明における実施の形態である始動用燃料供給機構6を備えた気化器1の縦断面図を示しており、図2はその右側面図を示している。本実施の形態では、気化器1が汎用エンジン等に使用される双胴気化器である場合を説明するものとし、1部品に纏められた始動用燃料供給機構6が付設されている点以外は一般的な汎用の双胴気化器と同様の構成を備えたものとなっている。
【0015】
即ち、並列する吸気通路4,4が横向きに貫通した本体ボディ2の下面側に、フロート室3aを構成するフロートチャンバ3が設けられ、そのフロート室3aには図示しないメイン燃料通路を有する柱状体20が本体ボディ2下面から垂設されており、エンジンの回転による負圧でフロート室3aに貯留した燃料を吸気通路4,4に吐出する。
【0016】
そして、本体ボディ2の並列した2本の吸気通路4,4の間の部分でチョークバルブを構成する弁体5の下方位置に、本発明の特徴部分である始動用燃料供給機構6が配設されている。この始動用燃料供給機構6は、内部に始動用燃料供給路及びその開閉弁を備えた本体部60と、その下面側から下向きに延設された燃料吸い上げ管62とを備えており、エンジン始動時にフロート室3aと吸気通路4,4とを連通させて始動燃料を供給する。
【0017】
即ち、この始動用燃料供給機構6は、図3の拡大した部分横断面図(平面視)に示すように、内部に空洞を有した筺状の本体部60内で弁開閉手段61を横向き且つその長さ方向に摺動可能に備えており、この弁開閉手段61を構成する弁ロッド61aは、吸気通路4,4が連通している側に突出した一端側に平板状の弁体当接部61bを有しているとともに本体部60内の他端側には弁体61cを有しており、その上方にあるチョークバルブの弁体5が閉弁位置に動作する過程で弁体当接部61bに当接して押圧することにより弁体61cが開弁方向に動く。
【0018】
また、この弁開閉手段61には、弁ロッド61aの軸線に対し直角に設けられた弁体当接部61b裏面側と本体部60側面との間に弁バネ61eが挟装されており、弁体61cの閉弁方向に弁ロッド61aを付勢するようになっており、チョークバルブの弁体5が当接していない状態で、弁体61cがフロート室3aと吸気通路4側を接続する始動用燃料供給路を塞ぐ。
【0019】
一方、始動用燃料供給機構6の本体部60は、燃料吸い上げ管62の管内通路62aが開口した第1の部屋60aとこれから続く左右の吸気通路4,4側に開口する第2の部屋60bを備えており、管内通路62a、第1の部屋60a、第2の部屋60bで始動用燃料供給路を構成しており、その第1の部屋60aが第2の部屋60b側で開口した開口部周縁側と弁体61cとで開閉弁を構成している。
【0020】
次に、本実施の形態の始動用燃料供給機構を備えた気化器1の特徴部分である始動用燃料供給機構6の動作について図4(A),(B)を用いながら説明する。図4(A)に示すように、エンジン始動前の段階ではチョークバルブは開弁されており、始動用燃料供給機構6内に形成された始動用燃料供給路は開閉弁で閉鎖された状態となっている。
【0021】
そして、図4(B)に示すように、エンジンの冷間始動時にチョークを閉める動作を行うことにより、チョークバルブの弁体5が回動しその端縁側が、始動用燃料供給機構6から吸気通路4側に突出した弁開閉手段61の弁体当接部61bに当接して押すことで、弁体61cは開弁方向に動いてフロート室3aと吸気通路4とを連通させる始動用燃料供給路が開く。
【0022】
これにより、エンジンの冷間始動時にクランキングを行うことで、エンジンの回転に伴って発生する吸気通路4の負圧により、フロート室3a内の燃料が燃料吸い出し管62の管内通路62a、第1の部屋60a、第2の部屋60cを通って吸気通路4,4に吸い出される。そのため、冷間始動時に必要とされる完爆混合気を得ることができ良好な始動が行われる。
【0023】
一方、エンジン始動後にはチョークバルブを開くことから、弁開閉手段61の弁体当接部61bへの弁体5による押圧は解除され、始動用燃料供給路の開閉弁は弁バネ61eの付勢力により閉弁されて、このルートからは燃料が吸気通路4,4に吸い出されなくなる。このように、1部品に纏められた簡易な構成の始動用燃料供給機構6を通常の気化器に付設するだけで、冷間始動時においてエンジンの確実な始動を実現できるものである。
【0024】
以上、述べたように、始動用燃料供給機構を備えた気化器について、本発明により、簡易な構成でコストの高騰を招くことなく良好なエンジン始動性を確保できるものとなった。
【符号の説明】
【0025】
1 始動用燃料供給機構付気化器、2 本体ボディ、3a フロート室、4 吸気通路、5,61c 弁体、6 始動用燃料供給機構、60 本体部、60a 第1の部屋、60b 第2の部屋、61 弁開閉手段、61a 弁ロッド、61b 弁体当接部、61e 弁バネ、62 燃料吸い上げ管、62a 管内通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ボディを貫通した吸気通路にチョークバルブを備えているとともに、メイン燃料通路とはバイパスしてフロート室と前記吸気通路を連通させる始動用燃料供給路を有し、該始動用燃料供給路に前記チョークバルブの閉動作に連動して開弁する開閉弁が配設されており、エンジン始動時に始動用の燃料を追加的に供給する始動用燃料供給機構を備えた気化器において、前記始動用燃料供給機構は、一端側を前記吸気通路に突出し他端側に前記開閉弁の弁体が連結された弁開閉手段を有して、前記吸気通路内で閉動作を行う前記チョークバルブの弁体が前記弁開閉手段の一端側に当接しながら押圧することにより、弁開閉手段が動いて前記他端側で前記始動用燃料供給路の開閉弁を開弁させ、前記始動用の燃料を供給可能な状態になることを特徴とした始動用燃料供給機構付気化器。
【請求項2】
前記弁開閉手段は、先端側が前記開閉弁の弁体に連結した弁ロッドであって、基端側に前記チョークバルブの弁体の一部が当接する弁体当接部を有しているとともに閉弁方向に付勢する弁バネが付設されており、前記チョークバルブの弁体が前記弁体当接部に当接していない状態で前記開閉弁の閉弁状態を維持することを特徴とする請求項1に記載した始動用燃料供給機構付気化器。
【請求項3】
前記始動用燃料供給機構は、前記フロート室内で燃料液面よりも低い位置に先端側を開口するように垂設された燃料吸い上げ管を有しており、該燃料吸い上げ管と前記開閉弁及び前記弁開閉手段とともに一部品に纏められて前記本体ボディに取付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載した始動用燃料供給機構付気化器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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