媒体アクセス方法及び磁気記憶装置
【課題】媒体アクセス方法及び磁気記憶装置において、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能とすることを目的とする。
【解決手段】各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されているように構成する。
【解決手段】各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されているように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体アクセス方法及び磁気記憶装置に係り、特に所謂パターンド媒体(Patterned Media)と呼ばれる磁気記録媒体に対する媒体アクセス方法及びそのような媒体アクセス方法を用いる磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置に代表される磁気記憶装置では、更なる小型化及び大容量化が求められており、磁気ディスクに代表される磁気記録媒体の高記録密度化が要求されている。磁気記録媒体の記録密度を向上するために、例えばパターンド媒体が提案されている。
【0003】
図1は、従来のパターンド媒体の一例を説明する図である。磁気ディスク1上の同心円状のトラック10は、記録再生ヘッド2を位置決めするためのサーボ領域13とデータを記録するためのデータ領域11を有する。データ領域11には、磁性ドット列12が予めパターンとして形成されている。この磁性ドット列12に記録再生ヘッド2を位置決めするためのサーボ領域13は、磁気ディスク1の内周側から外周側に向かって、記録再生ヘッド2のシークの動きに応じた円弧状に形成されている。データは、記録再生ヘッド2によりデータ領域11の磁性ドット列12の各磁性ドットを磁気ディスク1の表面に対して垂直方向に磁化することで記録される。トラック方向とは、磁気ディスク1上のトラック10が延在する方向であり、磁気ディスク1の場合は円周方向である。記録再生ヘッド2は、アーム5の先端に設けられたスライダ6に設けられており、矢印PDの方向に回動して磁気ディスク1の表面から所定の浮上量を保ちながらトラックを走査する。磁気ディスク1上の半径位置に応じて記録再生ヘッド2にはスキュー角(又は、ヨー(Yaw)角)が生じるが、スキュー角が生じてもデータの記録再生ができるようにサーボ領域13及びデータ領域11が磁気ディスク1上に配置されている。磁気ディスク1は矢印RDの方向に回転する。トラック方向は、磁気ディスク1の半径方向に対して垂直方向である。
【0004】
磁気ディスク1の記録密度を向上する観点からすると、記録再生ヘッド2が1つの磁性ドット列12で形成されたトラック10の各磁性ドットに対してデータの記録再生を行うことが望ましい。しかし、記録再生ヘッド2が1つの磁性ドット列12に対してデータの記録再生を行うには、記録再生ヘッド2が隣接する他の磁性ドット列12を走査しないような非常に狭いコア幅を有する必要がある。
【0005】
ところが、このように非常に狭いコア幅を有する記録再生ヘッド2を製造すること技術的に難しい。このため、記録再生ヘッド2を容易に製造する観点からすると、比較的広いコア幅を有する記録再生ヘッド2を使用してデータの記録再生を行うことが望ましい。
【0006】
図2は、比較的広いコア幅を有する記録再生ヘッド2を用いたデータ記録再生方法の一例を説明する図である。この例では、記録再生ヘッド2は隣り合う2つの磁性ドット列12を同時に走査するコア幅W1を有する。図2において、隣り合う2つの磁性ドット列12の半径方向上の間隔(又は、ピッチ)はD1であり、1つの磁性ドット列12における隣接する磁性ドット112のトラック方向(即ち、円周方向)上の間隔(又は、ピッチ)はL1で示されている。
【0007】
図2において、D1=(L1/2)×tan60°であり、W1=2×D1=L1×tan60°である。従って、破線で囲んで示す1ビットの面積BAは、BA=2×D1×L1/2=D1×L1=(L12/2)×tan60°で表される。
【0008】
この場合、隣り合う2つの磁性ドット列12を1トラックとして、2列相当の幅の記録再生ヘッド2で1トラックを形成する一方の磁性ドット列12の磁性ドット112と他方の磁性ドット列12の磁性ドット112を交互に走査することでデータの記録再生を行う。このため、1つの磁性ドット列12で形成されたトラックに対してデータの記録再生を行う場合と比較すると、略2倍のコア幅を有する記録再生ヘッド2を使用してデータの記録再生を行うことができるので、記録再生ヘッド2を容易に製造可能となる。その反面、2つの磁性ドット列12で各トラック10を形成しているので、磁気ディスク1上の記録密度を更に向上することは難しい。
【0009】
尚、磁気ディスク1上の半径位置により記録再生ヘッド2にはスキュー角が生じるが、図2では説明の便宜上、基準となるスキュー角がゼロの状態を示す。
【特許文献1】特開2002−109712号公報
【特許文献2】特開2003−151103号公報
【特許文献3】特開2004−39015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来は、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上することは難しいという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能な媒体アクセス方法及び磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている媒体アクセス方法が提供される。
【0013】
本発明の一観点によれば、各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査する記録再生ヘッドとを備え、前記記録再生ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている磁気記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
開示の媒体アクセス方法及び磁気記憶装置によれば、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
開示の媒体アクセス方法及び磁気記憶装置で使用する磁気記録媒体上には、各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成される。記録再生ヘッドは、スキュー角がゼロの位置を含む磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査すると共に、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、コア幅が磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている。
【0016】
これにより、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能となる。つまり、コア幅が従来と同じであれば、従来より磁気記録媒体の記録密度を向上可能であり、記録密度が従来の磁気記録媒体と同じであれば、従来よりコア幅の広い記録再生ヘッドが使用可能となる。
【0017】
以下に、本発明の媒体アクセス方法及び磁気記憶装置の各実施例を、図3以降と共に説明する。
【実施例】
【0018】
図3は、本発明の一実施例で用いる磁気記録媒体、即ち、パターンド媒体の一例を説明する図である。図3中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0019】
図3は、後述するように、磁気記録ヘッド2のコアが磁気ディスク21の半径方向に延在してスキュー角がゼロの状態から、磁気記録ヘッド2のコアをトラック方向(又は、円周方向)に傾けた状態となり、且つ、傾斜角度が許容角度範囲内であるようにスライダ6を介してアーム5に設けられている。又、磁気記録ヘッド2は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、コア幅が磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている。
【0020】
図4は、記録再生ヘッド2とトラックの第1の関係を説明する図であり、図5は、第1の関係を満たす場合の記録再生ヘッド2の傾斜角度の許容範囲を説明する図である。図4及び図5中、図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図4において、隣り合う2つの磁性ドット列12の半径方向上の間隔(又は、ピッチ)はDであり、1つの磁性ドット列における隣接する磁性ドット112のトラック方向(即ち、円周方向)上の間隔(又は、ピッチ)はLで示されている。記録再生ヘッド2のコア幅はWで示されている。破線で囲んで示す1ビットの面積BAは、BA=D×Lであり、図2に示す従来例の場合のピッチD1,L1で表すと、BA=D1×L1/2=(L12/4)×tan60°で表される。尚、図4以降において、「トラックN」とは、磁気ディスク21上の任意の基準位置(又は、トラック)からN番目のトラックを意味する。
【0021】
図4において、トラックNを含む各トラックは、1つの磁性ドット列12で形成されている。スキュー角がゼロの状態で、データ領域の磁性ドット112は矩形格子点に形成されており、記録再生ヘッド2のコアは、1つの磁性ドット列12で形成されたトラック(例えば、トラックN)の磁性ドット112のみを1つずつ走査するように、トラック方向に対して傾斜している。トラック方向と記録再生ヘッド2の幅Wに沿った方向との間の角度、即ち、記録再生ヘッド2の傾斜角度は、θで示す。トラックNを走査中に、記録再生ヘッド2が上下に隣接するトラックの磁性ドット112を走査しないようにするためには、W(θ)=D/sinθなる関係が成立すれば良い。例えばθ=60°の場合、W(60°)=2/√3×W(90°)=1.2×W(90°)となる。
【0022】
一方、図5において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度γ以下であると、トラックNの中央の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラック方向上前後する磁性ドット112を走査してしまう。従って、トラックNの中央の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラック方向上前後する磁性ドット112を走査しないようにするためには、記録再生ヘッド2(コア)の傾斜角度θをγ<θ<(180°−γ)なる許容範囲(ただし、θ=90°を除く)に設定すれば良い。
【0023】
従来の記録再生方法では、記録再生ヘッドのスキュー角が例えばゼロの位置において、1トラックを走査中に1つの磁性ドットを走査してから次の磁性ドットを走査するまでの間、磁性ドットを走査しない期間が存在する。これに対し、図5からもわかるように、第1の関係を満たすように記録再生ヘッド2の傾斜角度θの許容範囲を設定すると、1トラックを走査中に1つの磁性ドット112を走査してから次の磁性ドット112を走査するまでの間、磁性ドット112を走査しない期間は存在しない。つまり、1トラックを走査中、記録再生ヘッド2は連続して隣接する磁性ドット112を走査する。これにより、従来の記録再生方法と比較すると、記録再生時のデータ転送速度を約2倍にすることができる。
【0024】
尚、本実施例において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θは、意図的に設定されるものであり、磁気ディスク21上の半径位置に応じて生じるスキュー角とは異なる。つまり、従来の記録再生方法の場合、スキュー角がゼロになる磁気ディスク上の基準位置では記録再生ヘッドが傾斜していないが、本実施例の場合、磁気ディスク21上の半径位置にかかわらず(スキュー角がゼロの位置でも)、記録再生ヘッド2は常に傾斜角度θ(>0)を有する。この傾斜角度θはスキュー角を含むので、傾斜角度θをγ<θ<(180°−γ)なる許容範囲に設定する際には、傾斜角度θが磁気ディスク21上の最大のスキュー角を含む場合を考慮しておけば良い。
【0025】
図6は、記録再生ヘッドとトラックの第2の関係を説明する図であり、図7は、第2の関係を満たす場合の記録再生ヘッドの傾斜角度の許容範囲を説明する図である。図6及び図7中、図4及び図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。1ビットの面積BAは、図4の場合と同じである。
【0026】
図6において、トラックN,N+1を含む各トラックは、2つの磁性ドット列12で形成されている。スキュー角がゼロの状態で、データ領域の磁性ドット112は正方格子点に形成されており、記録再生ヘッド2のコアは、2つの磁性ドット列12で形成されたトラック(例えば、トラックN)の磁性ドット112を交互に走査するように、トラック方向に対して傾斜している。尚、厳密には、磁気ディスク21の内周側から外周側へ向かって磁性ドット列12毎に磁性ドット112間のピッチLは大きくなり、トラックは同心円状に形成されるから、データ領域の磁性ドット112は扇形格子点に形成されているが、本明細書ではこのような千鳥配列に対する特徴を示す意味で扇形格子点も「正方格子点」(又は、「矩形格子点」と呼ぶものとする。トラック方向と記録再生ヘッド2の幅Wに沿った方向との間の角度、即ち、記録再生ヘッド2の傾斜角度は、θで示す。トラックNを走査中に、記録再生ヘッド2が上下に隣接するトラックの磁性ドット112を走査しないようにするためには、W=√((2×D)2+L2)なる関係が成立すれば良い。
【0027】
一方、図7において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度α以上であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのaで示す上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。又、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度β以下であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのbで示す上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。従って、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラックNの上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査しないようにするためには、記録再生ヘッド2(コア)の傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲(ただし、θ=90°を除く)に設定すれば良い。
【0028】
図2に示す従来の記録再生方法では、記録再生ヘッドのスキュー角が例えばゼロの位置において、2つの磁性ドット列で形成された1トラックを走査中に一方の磁性ドット列の1つの磁性ドットを走査してから他方の磁性ドット列の次の磁性ドットを走査するまでの間、磁性ドットを走査しない期間が存在する。これに対し、図7からもわかるように、第2の関係を満たすように記録再生ヘッド2の傾斜角度θの許容範囲を設定すると、1トラックを走査中に一方の磁性ドット列12の1つの磁性ドット112を走査してから他方の磁性ドット列12の次の磁性ドット112を走査するまでの間、磁性ドット112を走査しない期間は存在しない。つまり、1トラックを走査中、記録再生ヘッド2は連続してこの1トラックを形成する2つの磁性ドット列12の磁性ドット112を交互に走査する。これにより、従来の記録再生方法と比較すると、記録再生時のデータ転送速度を約2倍にすることができる。
【0029】
尚、本実施例において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θは、意図的に設定されるものであり、磁気ディスク21上の半径位置に応じて生じるスキュー角とは異なる。つまり、従来の記録再生方法の場合、スキュー角がゼロになる磁気ディスク上の基準位置では記録再生ヘッドが傾斜していないが、本実施例の場合、磁気ディスク21上の半径位置にかかわらず(スキュー角がゼロの位置でも)、記録再生ヘッド2は常に傾斜角度θ(>0)を有する。この傾斜角度θはスキュー角を含むので、傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲に設定する際には、傾斜角度θが磁気ディスク21上の最大のスキュー角を含む場合を考慮しておけば良い。
【0030】
図6においてθ=60°の場合、図2に示す従来例と比較すると、D=√((L12/2)×tan60°)=D1×√(2/tan60°)=1.0746×D1となり、半径方向上のピッチDが図2のピッチD1の1.0746倍となる。又、L=√((L12/2)×tan60°)=L1×√tan60°/2)=0.9306×L1となり、トラック方向上のピッチLが図2のピッチL1の0.9306倍となる。更に、W=√((2×D)2+L2)=W1×√(5/(2×tan60°))=1.2014×W1となり、記録再生ヘッド2のコア幅Wを図2のコア幅W1の1.2014倍に設定可能となる。
【0031】
図8は、記録再生ヘッドとトラックの第3の関係を説明する図である。図8中、図4及び図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。1ビットの面積BAは、図4の場合と同じである。
【0032】
図8において、トラックNを含む各トラックは、3つの磁性ドット列12で形成されている。スキュー角がゼロの状態で、データ領域の磁性ドット112は正方格子点に形成されており、記録再生ヘッド2のコアは、3つの磁性ドット列12で形成されたトラック(例えば、トラックN)の磁性ドット112を順番に走査し、且つ、3つの磁性ドット列12の磁性ドット112を同時に2つ以上走査しないように、トラック方向に対して傾斜している。トラック方向と記録再生ヘッド2の幅Wに沿った方向との間の角度、即ち、記録再生ヘッド2の傾斜角度は、θで示す。トラックNを走査中に、記録再生ヘッド2が上下に隣接するトラックの磁性ドット112を走査しないようにするためには、W=√((3×D)2+L2)なる関係が成立すれば良い。
【0033】
一方、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度α以上であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのaで示す中央の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。又、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度β以下であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのbで示す上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。従って、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラックNの中央及び上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査しないようにするためには、記録再生ヘッド2(コア)の傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲(ただし、θ=90°を除く)に設定すれば良い。
【0034】
考えられる媒体アクセス方法において、記録再生ヘッドのスキュー角が例えばゼロの位置において、3つの磁性ドット列で形成された1トラックを走査中に1つの磁性ドット列の1つの磁性ドットを走査してから他の磁性ドット列の次の磁性ドットを走査するまでの間、磁性ドットを走査しない期間が存在する。これに対し、図8からもわかるように、第3の関係を満たすように記録再生ヘッド2の傾斜角度θの許容範囲を設定すると、1トラックを走査中に1つの磁性ドット列12の1つの磁性ドット112を走査してから他の磁性ドット列12の次の磁性ドット112を走査するまでの間、磁性ドット112を走査しない期間は存在しない。つまり、1トラックを走査中、記録再生ヘッド2は連続してこの1トラックを形成する3つの磁性ドット列12の磁性ドット112を順番、且つ、1つずつ走査する。これにより、考えられる媒体アクセス方法と比較すると、記録再生時のデータ転送速度を約2倍にすることができる。
【0035】
尚、本実施例において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θは、意図的に設定されるものであり、磁気ディスク21上の半径位置に応じて生じるスキュー角とは異なる。つまり、従来の記録再生方法の場合、スキュー角がゼロになる磁気ディスク上の基準位置では記録再生ヘッドが傾斜していないが、本実施例の場合、磁気ディスク21上の半径位置にかかわらず(スキュー角がゼロの位置でも)、記録再生ヘッド2は常に傾斜角度θ(>0)を有する。この傾斜角度θはスキュー角を含むので、傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲に設定する際には、傾斜角度θが磁気ディスク21上の最大のスキュー角を含む場合を考慮しておけば良い。
【0036】
図9は、サーボパターンの一例を示す図である。本実施例においても、各トラックにおけるデータ領域11とサーボ領域13の配置は、図1の場合と同様である。サーボ領域13は、図9の下部に拡大して示すように、サーボ信号を読み取る際のクロックを同期させるプリアンブル部130と、トラック番号及びセクタ番号を示すアドレス部131、及び記録再生ヘッド2とトラックの位置ずれを検出する位相サーボ部132を有する。アドレス部131にはシンクマーク(Sync Mark)も含まれ、このシンクマークは、サーボ領域13のサーボパターンが検出されてこのシンクマークにトラック番号及びセクタ番号が続くことを示す。サーボ領域13は、データ領域11の磁性ドットを形成するプロセスで同じように磁性パターンと非磁性パターンの組み合わせで形成され、磁気ディスク1の表面に対して垂直方向に磁化を初期化着磁された埋め込みサーボパターンとなっている。
【0037】
図10は、サーボパターンの他の例を示す図である。図10中、図9と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図9のサーボ領域13内のサーボパターンは、記録再生ヘッド2の傾斜角度θを特別考慮したものではなく、基本的には従来と同様にスキュー角がゼロの状態を基準として形成されたパターンである。これに対し、図10のサーボ領域13A内のサーボパターンは、記録再生ヘッド2の傾斜角度θ(スキュー角を含む)を考慮してパターン自体に積極的に傾きを持たせている。これにより、傾斜角度θを有する記録再生ヘッド2は、より確実に、且つ、正確にサーボパターンを再生することが可能となる。
【0038】
図11は、磁性ドットの形成方法の一例を説明する図である。磁気ディスク21の磁性ドット112は、次のようにして矩形格子点又は正方格子点に形成される。
【0039】
先ず、図11(a)に示すように、スタンパ作成用基板51上にスピンコートされたレジスト膜を電子ビーム露光によりエッチングして、磁性ドット112に対応する部分を残したレジストパターン52を形成する。次に、このレジストパターン52用いたエッチングにより、図11(b)に示す鋳物パターン(型)51Aを作成する。又、Ni電鋳により鋳物パターン51Aを転写して図11(c)に示すスタンパ51Bを作製する。
【0040】
次に、媒体用基板61上に形成された磁性膜62の上のレジストに、ナノインプリントにより図11(d)のスタンパ51Bのパターンを転写してレジストパターン63を形成する。このレジストパターン63を用いたエッチングにより磁性膜62を加工して、図11(e)に示す磁性ドット112のパターン62Aを形成する。図11(a)において電子ビーム露光をするときの露光パターンにより図11(e)において形成される磁性ドット112の位置及び形状が決まるので、図4、図6又は図8のようにデータ領域11の磁性ドット112が形成されるように電子ビーム露光を行えば良い。
【0041】
尚、サーボ領域13(又は、13A)については、記録再生ヘッド2の傾斜角度θを特別考慮せずに、基本的には従来と同様にスキュー角がゼロの状態を基準として図9のように形成しても、記録再生ヘッド2の傾斜角度θ(スキュー角を含む)を考慮してパターン自体に積極的に傾きを持たせて図10のように形成しても良い。
【0042】
次に、本発明の他の実施例における磁気記憶装置を、図12及び図13と共に説明する。本実施例では、磁気記憶装置は複数の磁気記録媒体を備える。図12は、磁気記憶装置の一部を示す断面図であり、図13は、図12の磁気記憶装置の一部を上部カバーを取り外して示す平面図である。
【0043】
図12及び図13において、ベース113にはモータ114が取り付けられており、このモータ114は複数の磁気ディスク21が固定されたハブ115を回転する。磁気ディスク21は、上記実施例と同様の構造を有する。磁気ディスク21からの情報の読み取り及び磁気ディスク21への情報の書き込みは、スライダ117に固定された記録再生ヘッド2(図示せず)により行われる。記録再生ヘッド2は、磁気ディスク21上のスキュー角がゼロの位置を含む全ての半径位置において、傾斜角度θ(>0)が上記の如き許容角度範囲(ただし、θ=90°を除く)となるように取り付けられている。
【0044】
スライダ117はサスペンション118に接続されており、サスペンション118はスライダ117を磁気ディスク21の記録面(表面)の方向に押し付ける。磁気ディスク21の記録面には、潤滑剤で形成された潤滑層が設けられている。特定のディスク回転速度及びサスペンション硬度では、スライダ117が磁気ディスク21の記録面より所定の浮上量だけ浮いた位置を走査するようになっている。サスペンション118は、アクチュエータ120に接続された強固なアーム5に固定されている。これにより、磁気ディスク21の広範囲にわたって読み取り及び書き込みを行うことが可能となる。
【0045】
勿論、磁気ディスク21の数は図12に示すように3つに限定されるものではなく、2つ、或いは、4つ以上の磁気ディスク21を磁気記憶装置内に設けても良い。
【0046】
更に、本実施例における磁気記録媒体は、磁気ディスクに限定されるものではなく、本発明は、磁気カードを含む各種磁気記録媒体に適用可能である。
【0047】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、
前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、媒体アクセス方法。
(付記2)
各トラックは1つの磁性ドット列で形成されており、
前記ヘッドの傾斜角度は、前記ヘッドが任意の1トラックの任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックのトラック方向上前後する磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されている、付記1記載の媒体アクセス方法。
(付記3)
各トラックは2つの磁性ドット列で形成されており、
前記ヘッドの傾斜角度は、前記ヘッドが任意の1トラックの一方の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの他方の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記ヘッドは各トラックの一方及び他方の磁性ドット列の磁性ドットを交互に走査する、付記1記載の媒体アクセス方法。
(付記4)
各トラックは3つの磁性ドット列で形成されており、
前記ヘッドの傾斜角度は、前記ヘッドが任意の1トラックの第1の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記ヘッドは各トラックの第1、第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを順番に走査する、付記1記載の媒体アクセス方法。
(付記5)
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査する記録再生ヘッドとを備え、
前記記録再生ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、磁気記憶装置。
(付記6)
前記磁気記録媒体の各トラックは1つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックのトラック方向上前後する磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されている、付記5記載の磁気記憶装置。
(付記7)
前記磁気記録媒体の各トラックは2つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの一方の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの他方の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記記録再生ヘッドは各トラックの一方及び他方の磁性ドット列の磁性ドットを交互に走査する、付記5記載の磁気記憶装置。
(付記8)
前記磁気記録媒体の各トラックは3つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの第1の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記記録再生ヘッドは各トラックの第1、第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを順番に走査する、付記5記載の磁気記憶装置。
(付記9)
前記磁気記録媒体の各トラックは、前記記録再生ヘッドを位置決めするためのサーボ領域とデータを記録するためのデータ領域を有し、
前記データ領域には、前記磁性ドット列が予めパターンとして形成されており、
前記サーボ領域は、前記磁気記録媒体の内周側から外周側に向かって、前記記録再生ヘッドのシークの動きに応じた円弧状に形成されており、且つ、スキュー角がゼロとなる位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において前記垂直な方向に対して傾いた姿勢で走査する前記記録再生ヘッドの傾斜角度に応じてサーボパターンが傾斜している、付記5〜8のいずれか1項記載の磁気記憶装置。
(付記10)
前記磁気記録媒体は磁気ディスクである、付記5〜8のいずれか1項記載の磁気記憶装置。
(付記11)
ヘッドを位置決めするためのサーボ領域とデータを記録するためのデータ領域を有するトラックを有し、
前記データ領域には、磁性ドット列が予めパターンとして形成されており、
前記データは、前記ヘッドにより前記データ領域の磁性ドット列の各磁性ドットを媒体表面に対して垂直方向に磁化することで記録される磁気ディスクであって、
前記サーボ領域は、前記磁気ディスクの内周側から外周側に向かって、前記ヘッドのシークの動きに応じた円弧状に形成されており、且つ、スキュー角がゼロとなる半径位置を含む全ての半径位置において半径方向に対して傾いた姿勢で走査する前記ヘッドの傾斜角度に応じてサーボパターンが傾斜している、磁気ディスク。
【0048】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来のパターンド媒体の一例を説明する図である。
【図2】比較的広いコア幅を有する記録再生ヘッドを用いたデータ記録再生方法の一例を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例で用いる磁気記録媒体の一例を説明する図である。
【図4】記録再生ヘッドとトラックの第1の関係を説明する図である。
【図5】第1の関係を満たす場合の記録再生ヘッドの傾斜角度の許容範囲を説明する図である。
【図6】記録再生ヘッドとトラックの第2の関係を説明する図である。
【図7】第2の関係を満たす場合の記録再生ヘッドの傾斜角度の許容範囲を説明する図である。
【図8】記録再生ヘッドとトラックの第3の関係を説明する図である。
【図9】サーボパターンの一例を示す図である。
【図10】サーボパターンの他の例を示す図である。
【図11】磁性ドットの形成方法の一例を説明する図である。
【図12】磁気記憶装置の一部を示す断面図である。
【図13】磁気記憶装置の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
2 記録再生ヘッド
5 アーム
10 トラック
11 データ領域
12 磁性ドット列
13 サーボ領域
21 磁気ディスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体アクセス方法及び磁気記憶装置に係り、特に所謂パターンド媒体(Patterned Media)と呼ばれる磁気記録媒体に対する媒体アクセス方法及びそのような媒体アクセス方法を用いる磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置に代表される磁気記憶装置では、更なる小型化及び大容量化が求められており、磁気ディスクに代表される磁気記録媒体の高記録密度化が要求されている。磁気記録媒体の記録密度を向上するために、例えばパターンド媒体が提案されている。
【0003】
図1は、従来のパターンド媒体の一例を説明する図である。磁気ディスク1上の同心円状のトラック10は、記録再生ヘッド2を位置決めするためのサーボ領域13とデータを記録するためのデータ領域11を有する。データ領域11には、磁性ドット列12が予めパターンとして形成されている。この磁性ドット列12に記録再生ヘッド2を位置決めするためのサーボ領域13は、磁気ディスク1の内周側から外周側に向かって、記録再生ヘッド2のシークの動きに応じた円弧状に形成されている。データは、記録再生ヘッド2によりデータ領域11の磁性ドット列12の各磁性ドットを磁気ディスク1の表面に対して垂直方向に磁化することで記録される。トラック方向とは、磁気ディスク1上のトラック10が延在する方向であり、磁気ディスク1の場合は円周方向である。記録再生ヘッド2は、アーム5の先端に設けられたスライダ6に設けられており、矢印PDの方向に回動して磁気ディスク1の表面から所定の浮上量を保ちながらトラックを走査する。磁気ディスク1上の半径位置に応じて記録再生ヘッド2にはスキュー角(又は、ヨー(Yaw)角)が生じるが、スキュー角が生じてもデータの記録再生ができるようにサーボ領域13及びデータ領域11が磁気ディスク1上に配置されている。磁気ディスク1は矢印RDの方向に回転する。トラック方向は、磁気ディスク1の半径方向に対して垂直方向である。
【0004】
磁気ディスク1の記録密度を向上する観点からすると、記録再生ヘッド2が1つの磁性ドット列12で形成されたトラック10の各磁性ドットに対してデータの記録再生を行うことが望ましい。しかし、記録再生ヘッド2が1つの磁性ドット列12に対してデータの記録再生を行うには、記録再生ヘッド2が隣接する他の磁性ドット列12を走査しないような非常に狭いコア幅を有する必要がある。
【0005】
ところが、このように非常に狭いコア幅を有する記録再生ヘッド2を製造すること技術的に難しい。このため、記録再生ヘッド2を容易に製造する観点からすると、比較的広いコア幅を有する記録再生ヘッド2を使用してデータの記録再生を行うことが望ましい。
【0006】
図2は、比較的広いコア幅を有する記録再生ヘッド2を用いたデータ記録再生方法の一例を説明する図である。この例では、記録再生ヘッド2は隣り合う2つの磁性ドット列12を同時に走査するコア幅W1を有する。図2において、隣り合う2つの磁性ドット列12の半径方向上の間隔(又は、ピッチ)はD1であり、1つの磁性ドット列12における隣接する磁性ドット112のトラック方向(即ち、円周方向)上の間隔(又は、ピッチ)はL1で示されている。
【0007】
図2において、D1=(L1/2)×tan60°であり、W1=2×D1=L1×tan60°である。従って、破線で囲んで示す1ビットの面積BAは、BA=2×D1×L1/2=D1×L1=(L12/2)×tan60°で表される。
【0008】
この場合、隣り合う2つの磁性ドット列12を1トラックとして、2列相当の幅の記録再生ヘッド2で1トラックを形成する一方の磁性ドット列12の磁性ドット112と他方の磁性ドット列12の磁性ドット112を交互に走査することでデータの記録再生を行う。このため、1つの磁性ドット列12で形成されたトラックに対してデータの記録再生を行う場合と比較すると、略2倍のコア幅を有する記録再生ヘッド2を使用してデータの記録再生を行うことができるので、記録再生ヘッド2を容易に製造可能となる。その反面、2つの磁性ドット列12で各トラック10を形成しているので、磁気ディスク1上の記録密度を更に向上することは難しい。
【0009】
尚、磁気ディスク1上の半径位置により記録再生ヘッド2にはスキュー角が生じるが、図2では説明の便宜上、基準となるスキュー角がゼロの状態を示す。
【特許文献1】特開2002−109712号公報
【特許文献2】特開2003−151103号公報
【特許文献3】特開2004−39015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来は、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上することは難しいという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能な媒体アクセス方法及び磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている媒体アクセス方法が提供される。
【0013】
本発明の一観点によれば、各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査する記録再生ヘッドとを備え、前記記録再生ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている磁気記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
開示の媒体アクセス方法及び磁気記憶装置によれば、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
開示の媒体アクセス方法及び磁気記憶装置で使用する磁気記録媒体上には、各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成される。記録再生ヘッドは、スキュー角がゼロの位置を含む磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査すると共に、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、コア幅が磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている。
【0016】
これにより、記録再生ヘッドのコア幅を非常に狭くすることなく磁気記録媒体上の記録密度を向上可能となる。つまり、コア幅が従来と同じであれば、従来より磁気記録媒体の記録密度を向上可能であり、記録密度が従来の磁気記録媒体と同じであれば、従来よりコア幅の広い記録再生ヘッドが使用可能となる。
【0017】
以下に、本発明の媒体アクセス方法及び磁気記憶装置の各実施例を、図3以降と共に説明する。
【実施例】
【0018】
図3は、本発明の一実施例で用いる磁気記録媒体、即ち、パターンド媒体の一例を説明する図である。図3中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0019】
図3は、後述するように、磁気記録ヘッド2のコアが磁気ディスク21の半径方向に延在してスキュー角がゼロの状態から、磁気記録ヘッド2のコアをトラック方向(又は、円周方向)に傾けた状態となり、且つ、傾斜角度が許容角度範囲内であるようにスライダ6を介してアーム5に設けられている。又、磁気記録ヘッド2は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、コア幅が磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている。
【0020】
図4は、記録再生ヘッド2とトラックの第1の関係を説明する図であり、図5は、第1の関係を満たす場合の記録再生ヘッド2の傾斜角度の許容範囲を説明する図である。図4及び図5中、図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図4において、隣り合う2つの磁性ドット列12の半径方向上の間隔(又は、ピッチ)はDであり、1つの磁性ドット列における隣接する磁性ドット112のトラック方向(即ち、円周方向)上の間隔(又は、ピッチ)はLで示されている。記録再生ヘッド2のコア幅はWで示されている。破線で囲んで示す1ビットの面積BAは、BA=D×Lであり、図2に示す従来例の場合のピッチD1,L1で表すと、BA=D1×L1/2=(L12/4)×tan60°で表される。尚、図4以降において、「トラックN」とは、磁気ディスク21上の任意の基準位置(又は、トラック)からN番目のトラックを意味する。
【0021】
図4において、トラックNを含む各トラックは、1つの磁性ドット列12で形成されている。スキュー角がゼロの状態で、データ領域の磁性ドット112は矩形格子点に形成されており、記録再生ヘッド2のコアは、1つの磁性ドット列12で形成されたトラック(例えば、トラックN)の磁性ドット112のみを1つずつ走査するように、トラック方向に対して傾斜している。トラック方向と記録再生ヘッド2の幅Wに沿った方向との間の角度、即ち、記録再生ヘッド2の傾斜角度は、θで示す。トラックNを走査中に、記録再生ヘッド2が上下に隣接するトラックの磁性ドット112を走査しないようにするためには、W(θ)=D/sinθなる関係が成立すれば良い。例えばθ=60°の場合、W(60°)=2/√3×W(90°)=1.2×W(90°)となる。
【0022】
一方、図5において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度γ以下であると、トラックNの中央の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラック方向上前後する磁性ドット112を走査してしまう。従って、トラックNの中央の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラック方向上前後する磁性ドット112を走査しないようにするためには、記録再生ヘッド2(コア)の傾斜角度θをγ<θ<(180°−γ)なる許容範囲(ただし、θ=90°を除く)に設定すれば良い。
【0023】
従来の記録再生方法では、記録再生ヘッドのスキュー角が例えばゼロの位置において、1トラックを走査中に1つの磁性ドットを走査してから次の磁性ドットを走査するまでの間、磁性ドットを走査しない期間が存在する。これに対し、図5からもわかるように、第1の関係を満たすように記録再生ヘッド2の傾斜角度θの許容範囲を設定すると、1トラックを走査中に1つの磁性ドット112を走査してから次の磁性ドット112を走査するまでの間、磁性ドット112を走査しない期間は存在しない。つまり、1トラックを走査中、記録再生ヘッド2は連続して隣接する磁性ドット112を走査する。これにより、従来の記録再生方法と比較すると、記録再生時のデータ転送速度を約2倍にすることができる。
【0024】
尚、本実施例において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θは、意図的に設定されるものであり、磁気ディスク21上の半径位置に応じて生じるスキュー角とは異なる。つまり、従来の記録再生方法の場合、スキュー角がゼロになる磁気ディスク上の基準位置では記録再生ヘッドが傾斜していないが、本実施例の場合、磁気ディスク21上の半径位置にかかわらず(スキュー角がゼロの位置でも)、記録再生ヘッド2は常に傾斜角度θ(>0)を有する。この傾斜角度θはスキュー角を含むので、傾斜角度θをγ<θ<(180°−γ)なる許容範囲に設定する際には、傾斜角度θが磁気ディスク21上の最大のスキュー角を含む場合を考慮しておけば良い。
【0025】
図6は、記録再生ヘッドとトラックの第2の関係を説明する図であり、図7は、第2の関係を満たす場合の記録再生ヘッドの傾斜角度の許容範囲を説明する図である。図6及び図7中、図4及び図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。1ビットの面積BAは、図4の場合と同じである。
【0026】
図6において、トラックN,N+1を含む各トラックは、2つの磁性ドット列12で形成されている。スキュー角がゼロの状態で、データ領域の磁性ドット112は正方格子点に形成されており、記録再生ヘッド2のコアは、2つの磁性ドット列12で形成されたトラック(例えば、トラックN)の磁性ドット112を交互に走査するように、トラック方向に対して傾斜している。尚、厳密には、磁気ディスク21の内周側から外周側へ向かって磁性ドット列12毎に磁性ドット112間のピッチLは大きくなり、トラックは同心円状に形成されるから、データ領域の磁性ドット112は扇形格子点に形成されているが、本明細書ではこのような千鳥配列に対する特徴を示す意味で扇形格子点も「正方格子点」(又は、「矩形格子点」と呼ぶものとする。トラック方向と記録再生ヘッド2の幅Wに沿った方向との間の角度、即ち、記録再生ヘッド2の傾斜角度は、θで示す。トラックNを走査中に、記録再生ヘッド2が上下に隣接するトラックの磁性ドット112を走査しないようにするためには、W=√((2×D)2+L2)なる関係が成立すれば良い。
【0027】
一方、図7において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度α以上であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのaで示す上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。又、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度β以下であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのbで示す上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。従って、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラックNの上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査しないようにするためには、記録再生ヘッド2(コア)の傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲(ただし、θ=90°を除く)に設定すれば良い。
【0028】
図2に示す従来の記録再生方法では、記録再生ヘッドのスキュー角が例えばゼロの位置において、2つの磁性ドット列で形成された1トラックを走査中に一方の磁性ドット列の1つの磁性ドットを走査してから他方の磁性ドット列の次の磁性ドットを走査するまでの間、磁性ドットを走査しない期間が存在する。これに対し、図7からもわかるように、第2の関係を満たすように記録再生ヘッド2の傾斜角度θの許容範囲を設定すると、1トラックを走査中に一方の磁性ドット列12の1つの磁性ドット112を走査してから他方の磁性ドット列12の次の磁性ドット112を走査するまでの間、磁性ドット112を走査しない期間は存在しない。つまり、1トラックを走査中、記録再生ヘッド2は連続してこの1トラックを形成する2つの磁性ドット列12の磁性ドット112を交互に走査する。これにより、従来の記録再生方法と比較すると、記録再生時のデータ転送速度を約2倍にすることができる。
【0029】
尚、本実施例において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θは、意図的に設定されるものであり、磁気ディスク21上の半径位置に応じて生じるスキュー角とは異なる。つまり、従来の記録再生方法の場合、スキュー角がゼロになる磁気ディスク上の基準位置では記録再生ヘッドが傾斜していないが、本実施例の場合、磁気ディスク21上の半径位置にかかわらず(スキュー角がゼロの位置でも)、記録再生ヘッド2は常に傾斜角度θ(>0)を有する。この傾斜角度θはスキュー角を含むので、傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲に設定する際には、傾斜角度θが磁気ディスク21上の最大のスキュー角を含む場合を考慮しておけば良い。
【0030】
図6においてθ=60°の場合、図2に示す従来例と比較すると、D=√((L12/2)×tan60°)=D1×√(2/tan60°)=1.0746×D1となり、半径方向上のピッチDが図2のピッチD1の1.0746倍となる。又、L=√((L12/2)×tan60°)=L1×√tan60°/2)=0.9306×L1となり、トラック方向上のピッチLが図2のピッチL1の0.9306倍となる。更に、W=√((2×D)2+L2)=W1×√(5/(2×tan60°))=1.2014×W1となり、記録再生ヘッド2のコア幅Wを図2のコア幅W1の1.2014倍に設定可能となる。
【0031】
図8は、記録再生ヘッドとトラックの第3の関係を説明する図である。図8中、図4及び図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。1ビットの面積BAは、図4の場合と同じである。
【0032】
図8において、トラックNを含む各トラックは、3つの磁性ドット列12で形成されている。スキュー角がゼロの状態で、データ領域の磁性ドット112は正方格子点に形成されており、記録再生ヘッド2のコアは、3つの磁性ドット列12で形成されたトラック(例えば、トラックN)の磁性ドット112を順番に走査し、且つ、3つの磁性ドット列12の磁性ドット112を同時に2つ以上走査しないように、トラック方向に対して傾斜している。トラック方向と記録再生ヘッド2の幅Wに沿った方向との間の角度、即ち、記録再生ヘッド2の傾斜角度は、θで示す。トラックNを走査中に、記録再生ヘッド2が上下に隣接するトラックの磁性ドット112を走査しないようにするためには、W=√((3×D)2+L2)なる関係が成立すれば良い。
【0033】
一方、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度α以上であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのaで示す中央の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。又、記録再生ヘッド2の傾斜角度θが角度β以下であると、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのbで示す上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査してしまう。従って、トラックNの下側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査する時に、同じトラックNのa,bで示すトラックNの中央及び上側の磁性ドット列12の磁性ドット112を走査しないようにするためには、記録再生ヘッド2(コア)の傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲(ただし、θ=90°を除く)に設定すれば良い。
【0034】
考えられる媒体アクセス方法において、記録再生ヘッドのスキュー角が例えばゼロの位置において、3つの磁性ドット列で形成された1トラックを走査中に1つの磁性ドット列の1つの磁性ドットを走査してから他の磁性ドット列の次の磁性ドットを走査するまでの間、磁性ドットを走査しない期間が存在する。これに対し、図8からもわかるように、第3の関係を満たすように記録再生ヘッド2の傾斜角度θの許容範囲を設定すると、1トラックを走査中に1つの磁性ドット列12の1つの磁性ドット112を走査してから他の磁性ドット列12の次の磁性ドット112を走査するまでの間、磁性ドット112を走査しない期間は存在しない。つまり、1トラックを走査中、記録再生ヘッド2は連続してこの1トラックを形成する3つの磁性ドット列12の磁性ドット112を順番、且つ、1つずつ走査する。これにより、考えられる媒体アクセス方法と比較すると、記録再生時のデータ転送速度を約2倍にすることができる。
【0035】
尚、本実施例において、記録再生ヘッド2の傾斜角度θは、意図的に設定されるものであり、磁気ディスク21上の半径位置に応じて生じるスキュー角とは異なる。つまり、従来の記録再生方法の場合、スキュー角がゼロになる磁気ディスク上の基準位置では記録再生ヘッドが傾斜していないが、本実施例の場合、磁気ディスク21上の半径位置にかかわらず(スキュー角がゼロの位置でも)、記録再生ヘッド2は常に傾斜角度θ(>0)を有する。この傾斜角度θはスキュー角を含むので、傾斜角度θをβ<θ<αなる許容範囲に設定する際には、傾斜角度θが磁気ディスク21上の最大のスキュー角を含む場合を考慮しておけば良い。
【0036】
図9は、サーボパターンの一例を示す図である。本実施例においても、各トラックにおけるデータ領域11とサーボ領域13の配置は、図1の場合と同様である。サーボ領域13は、図9の下部に拡大して示すように、サーボ信号を読み取る際のクロックを同期させるプリアンブル部130と、トラック番号及びセクタ番号を示すアドレス部131、及び記録再生ヘッド2とトラックの位置ずれを検出する位相サーボ部132を有する。アドレス部131にはシンクマーク(Sync Mark)も含まれ、このシンクマークは、サーボ領域13のサーボパターンが検出されてこのシンクマークにトラック番号及びセクタ番号が続くことを示す。サーボ領域13は、データ領域11の磁性ドットを形成するプロセスで同じように磁性パターンと非磁性パターンの組み合わせで形成され、磁気ディスク1の表面に対して垂直方向に磁化を初期化着磁された埋め込みサーボパターンとなっている。
【0037】
図10は、サーボパターンの他の例を示す図である。図10中、図9と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図9のサーボ領域13内のサーボパターンは、記録再生ヘッド2の傾斜角度θを特別考慮したものではなく、基本的には従来と同様にスキュー角がゼロの状態を基準として形成されたパターンである。これに対し、図10のサーボ領域13A内のサーボパターンは、記録再生ヘッド2の傾斜角度θ(スキュー角を含む)を考慮してパターン自体に積極的に傾きを持たせている。これにより、傾斜角度θを有する記録再生ヘッド2は、より確実に、且つ、正確にサーボパターンを再生することが可能となる。
【0038】
図11は、磁性ドットの形成方法の一例を説明する図である。磁気ディスク21の磁性ドット112は、次のようにして矩形格子点又は正方格子点に形成される。
【0039】
先ず、図11(a)に示すように、スタンパ作成用基板51上にスピンコートされたレジスト膜を電子ビーム露光によりエッチングして、磁性ドット112に対応する部分を残したレジストパターン52を形成する。次に、このレジストパターン52用いたエッチングにより、図11(b)に示す鋳物パターン(型)51Aを作成する。又、Ni電鋳により鋳物パターン51Aを転写して図11(c)に示すスタンパ51Bを作製する。
【0040】
次に、媒体用基板61上に形成された磁性膜62の上のレジストに、ナノインプリントにより図11(d)のスタンパ51Bのパターンを転写してレジストパターン63を形成する。このレジストパターン63を用いたエッチングにより磁性膜62を加工して、図11(e)に示す磁性ドット112のパターン62Aを形成する。図11(a)において電子ビーム露光をするときの露光パターンにより図11(e)において形成される磁性ドット112の位置及び形状が決まるので、図4、図6又は図8のようにデータ領域11の磁性ドット112が形成されるように電子ビーム露光を行えば良い。
【0041】
尚、サーボ領域13(又は、13A)については、記録再生ヘッド2の傾斜角度θを特別考慮せずに、基本的には従来と同様にスキュー角がゼロの状態を基準として図9のように形成しても、記録再生ヘッド2の傾斜角度θ(スキュー角を含む)を考慮してパターン自体に積極的に傾きを持たせて図10のように形成しても良い。
【0042】
次に、本発明の他の実施例における磁気記憶装置を、図12及び図13と共に説明する。本実施例では、磁気記憶装置は複数の磁気記録媒体を備える。図12は、磁気記憶装置の一部を示す断面図であり、図13は、図12の磁気記憶装置の一部を上部カバーを取り外して示す平面図である。
【0043】
図12及び図13において、ベース113にはモータ114が取り付けられており、このモータ114は複数の磁気ディスク21が固定されたハブ115を回転する。磁気ディスク21は、上記実施例と同様の構造を有する。磁気ディスク21からの情報の読み取り及び磁気ディスク21への情報の書き込みは、スライダ117に固定された記録再生ヘッド2(図示せず)により行われる。記録再生ヘッド2は、磁気ディスク21上のスキュー角がゼロの位置を含む全ての半径位置において、傾斜角度θ(>0)が上記の如き許容角度範囲(ただし、θ=90°を除く)となるように取り付けられている。
【0044】
スライダ117はサスペンション118に接続されており、サスペンション118はスライダ117を磁気ディスク21の記録面(表面)の方向に押し付ける。磁気ディスク21の記録面には、潤滑剤で形成された潤滑層が設けられている。特定のディスク回転速度及びサスペンション硬度では、スライダ117が磁気ディスク21の記録面より所定の浮上量だけ浮いた位置を走査するようになっている。サスペンション118は、アクチュエータ120に接続された強固なアーム5に固定されている。これにより、磁気ディスク21の広範囲にわたって読み取り及び書き込みを行うことが可能となる。
【0045】
勿論、磁気ディスク21の数は図12に示すように3つに限定されるものではなく、2つ、或いは、4つ以上の磁気ディスク21を磁気記憶装置内に設けても良い。
【0046】
更に、本実施例における磁気記録媒体は、磁気ディスクに限定されるものではなく、本発明は、磁気カードを含む各種磁気記録媒体に適用可能である。
【0047】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、
前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、媒体アクセス方法。
(付記2)
各トラックは1つの磁性ドット列で形成されており、
前記ヘッドの傾斜角度は、前記ヘッドが任意の1トラックの任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックのトラック方向上前後する磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されている、付記1記載の媒体アクセス方法。
(付記3)
各トラックは2つの磁性ドット列で形成されており、
前記ヘッドの傾斜角度は、前記ヘッドが任意の1トラックの一方の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの他方の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記ヘッドは各トラックの一方及び他方の磁性ドット列の磁性ドットを交互に走査する、付記1記載の媒体アクセス方法。
(付記4)
各トラックは3つの磁性ドット列で形成されており、
前記ヘッドの傾斜角度は、前記ヘッドが任意の1トラックの第1の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記ヘッドは各トラックの第1、第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを順番に走査する、付記1記載の媒体アクセス方法。
(付記5)
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査する記録再生ヘッドとを備え、
前記記録再生ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、磁気記憶装置。
(付記6)
前記磁気記録媒体の各トラックは1つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックのトラック方向上前後する磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されている、付記5記載の磁気記憶装置。
(付記7)
前記磁気記録媒体の各トラックは2つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの一方の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの他方の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記記録再生ヘッドは各トラックの一方及び他方の磁性ドット列の磁性ドットを交互に走査する、付記5記載の磁気記憶装置。
(付記8)
前記磁気記録媒体の各トラックは3つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの第1の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記記録再生ヘッドは各トラックの第1、第2及び第3の磁性ドット列の磁性ドットを順番に走査する、付記5記載の磁気記憶装置。
(付記9)
前記磁気記録媒体の各トラックは、前記記録再生ヘッドを位置決めするためのサーボ領域とデータを記録するためのデータ領域を有し、
前記データ領域には、前記磁性ドット列が予めパターンとして形成されており、
前記サーボ領域は、前記磁気記録媒体の内周側から外周側に向かって、前記記録再生ヘッドのシークの動きに応じた円弧状に形成されており、且つ、スキュー角がゼロとなる位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において前記垂直な方向に対して傾いた姿勢で走査する前記記録再生ヘッドの傾斜角度に応じてサーボパターンが傾斜している、付記5〜8のいずれか1項記載の磁気記憶装置。
(付記10)
前記磁気記録媒体は磁気ディスクである、付記5〜8のいずれか1項記載の磁気記憶装置。
(付記11)
ヘッドを位置決めするためのサーボ領域とデータを記録するためのデータ領域を有するトラックを有し、
前記データ領域には、磁性ドット列が予めパターンとして形成されており、
前記データは、前記ヘッドにより前記データ領域の磁性ドット列の各磁性ドットを媒体表面に対して垂直方向に磁化することで記録される磁気ディスクであって、
前記サーボ領域は、前記磁気ディスクの内周側から外周側に向かって、前記ヘッドのシークの動きに応じた円弧状に形成されており、且つ、スキュー角がゼロとなる半径位置を含む全ての半径位置において半径方向に対して傾いた姿勢で走査する前記ヘッドの傾斜角度に応じてサーボパターンが傾斜している、磁気ディスク。
【0048】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来のパターンド媒体の一例を説明する図である。
【図2】比較的広いコア幅を有する記録再生ヘッドを用いたデータ記録再生方法の一例を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例で用いる磁気記録媒体の一例を説明する図である。
【図4】記録再生ヘッドとトラックの第1の関係を説明する図である。
【図5】第1の関係を満たす場合の記録再生ヘッドの傾斜角度の許容範囲を説明する図である。
【図6】記録再生ヘッドとトラックの第2の関係を説明する図である。
【図7】第2の関係を満たす場合の記録再生ヘッドの傾斜角度の許容範囲を説明する図である。
【図8】記録再生ヘッドとトラックの第3の関係を説明する図である。
【図9】サーボパターンの一例を示す図である。
【図10】サーボパターンの他の例を示す図である。
【図11】磁性ドットの形成方法の一例を説明する図である。
【図12】磁気記憶装置の一部を示す断面図である。
【図13】磁気記憶装置の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
2 記録再生ヘッド
5 アーム
10 トラック
11 データ領域
12 磁性ドット列
13 サーボ領域
21 磁気ディスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、
前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、媒体アクセス方法。
【請求項2】
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査する記録再生ヘッドとを備え、
前記記録再生ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、磁気記憶装置。
【請求項3】
前記磁気記録媒体の各トラックは1つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックのトラック方向上前後する磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されている、請求項2記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記磁気記録媒体の各トラックは2つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの一方の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの他方の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記記録再生ヘッドは各トラックの一方及び他方の磁性ドット列の磁性ドットを交互に走査する、請求項2記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記磁気記録媒体の各トラックは、前記記録再生ヘッドを位置決めするためのサーボ領域とデータを記録するためのデータ領域を有し、
前記データ領域には、前記磁性ドット列が予めパターンとして形成されており、
前記サーボ領域は、前記磁気記録媒体の内周側から外周側に向かって、前記記録再生ヘッドのシークの動きに応じた円弧状に形成されており、且つ、スキュー角がゼロとなる位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において前記垂直な方向に対して傾いた姿勢で走査する前記記録再生ヘッドの傾斜角度に応じてサーボパターンが傾斜している、請求項2〜4のいずれか1項記載の磁気記憶装置。
【請求項1】
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢のヘッドでトラックを走査し、
前記ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、媒体アクセス方法。
【請求項2】
各トラックが1又は複数の磁性ドット列で形成された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対し、スキュー角がゼロの位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において、トラック方向と垂直な方向に対して傾いた姿勢でトラックを走査する記録再生ヘッドとを備え、
前記記録再生ヘッドのコア幅は、1トラックを走査中に同時に2以上の磁性ドットを走査しないように、磁性ドットのトラック方向上のピッチ及び前記垂直な方向上のピッチに対して設定されている、磁気記憶装置。
【請求項3】
前記磁気記録媒体の各トラックは1つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックのトラック方向上前後する磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されている、請求項2記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記磁気記録媒体の各トラックは2つの磁性ドット列で形成されており、
前記記録再生ヘッドの傾斜角度は、前記記録再生ヘッドが任意の1トラックの一方の磁性ドット列の任意の磁性ドットを走査する時に、前記任意の1トラックの他方の磁性ドット列の磁性ドットを走査しない許容角度範囲に設定されており、
前記記録再生ヘッドは各トラックの一方及び他方の磁性ドット列の磁性ドットを交互に走査する、請求項2記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記磁気記録媒体の各トラックは、前記記録再生ヘッドを位置決めするためのサーボ領域とデータを記録するためのデータ領域を有し、
前記データ領域には、前記磁性ドット列が予めパターンとして形成されており、
前記サーボ領域は、前記磁気記録媒体の内周側から外周側に向かって、前記記録再生ヘッドのシークの動きに応じた円弧状に形成されており、且つ、スキュー角がゼロとなる位置を含む前記磁気記録媒体上の全ての位置において前記垂直な方向に対して傾いた姿勢で走査する前記記録再生ヘッドの傾斜角度に応じてサーボパターンが傾斜している、請求項2〜4のいずれか1項記載の磁気記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−102807(P2010−102807A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275969(P2008−275969)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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