説明

媒体処理装置及びその制御方法

【課題】IC端子やIC接点の破損等を防ぐことが可能な媒体処理装置を提供する。
【解決手段】IC端子101を有するICカード100が搬送される搬送路20と、ICカード100を搬送路20の所定の通信位置に搬送する駆動ローラ22等と、所定の通信位置に搬送されたICカード100のIC端子101に接触して、ICカード100との通信を可能にするIC接点12と、ICカード100が、所定の通信位置から外れたときの位置ずれを検出するエンコーダ34と、エンコーダ34により、ICカード100の位置ずれが検出されたとき、IC端子101とIC接点12との接触を解除する解除手段(CPU31等)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銀行カードやクレジットカードなどのカード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行う媒体処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金融機関などで使用され、キャッシュレスや個人認証などを実現するカードとして、プラスチック基板表面に磁気ストライプが形成された磁気カードや、プラスチック基板内部に集積回路チップ(ICチップ)が埋設されるとともに、表面にIC端子が配置されたICカードがある。そして、これら磁気カードやICカードに対する情報の記録又は再生は、磁気ヘッドやIC接点を備えたカード処理装置によって行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたカード処理装置は、磁気カード表面上の磁気ストライプに磁気ヘッドを接触・摺動させることで、磁気カードに格納された磁気情報を読み取ったり、磁気カードに対して新たな磁気情報を書き込んだりする。また、ICカード表面上の金属端子(IC端子)にIC接点を接触・当接させることで、ICカードに格納された電子情報を読み取ったり、ICカードに対して新たな電子情報を書き込んだりする。
【0004】
ここで、特許文献1には、例えばカード処理装置で障害が発生し、カード処理装置内にカードが詰まってしまった場合には、カードをロックしてしまい、カードが不正に抜き取られるのを防ぐ技術が開示されている。そして、サービスパーソンが現場に到着すると、このロックの解除を行って、カードのIC端子とIC接点とを非接触の状態にした後に、ノブを回す等してカード処理装置からカードを取り出し、ユーザに返却する。また、特許文献1に開示されたロック機構が存在しない場合であっても、何らかの原因でカード処理装置内にカードが詰まってしまったときには、サービスパーソンは、上述同様カードとIC接点とを非接触の状態にした後に、ノブを回す等してカード処理装置からカードを取り出し、ユーザに返却する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−242533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したサービスパーソンによる一連の動作は、人為的動作であることから、人為的ミスが発生しないとは言い切れない。すなわち、例えばサービスパーソンが、カードのIC端子とIC接点とを非接触の状態にするのを忘れてしまい、そのままノブを回す等してカード処理装置からカードを取り出そうとすると、IC接点又はカードのIC端子が傷つき破損する虞がある。
【0007】
また、上述した特許文献1に示されているカードロックを行う場合には、ユーザへのカード返却のたびにロック解除を行わなければならず、それだけ時間が掛かり、ユーザの便宜に反することになる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、IC端子やIC接点の破損等を防ぐことが可能な媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1) IC端子を有するICカードが搬送される搬送路と、前記ICカードを前記搬送路の所定の通信位置に搬送する搬送手段と、前記所定の通信位置に搬送されたICカードの前記IC端子に接触して、当該ICカードとの通信を可能にするIC接点と、前記ICカードが、前記所定の通信位置から外れたときの位置ずれを検出する検出手段と、前記検出手段により、前記ICカードの位置ずれが検出されたとき、前記IC端子と前記IC接点との接触を解除する解除手段と、を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【0011】
本発明によれば、媒体処理装置に、搬送路と、ICカードを搬送する搬送手段と、所定の通信位置に搬送されたICカードのIC端子に接触して、そのICカードとの通信を可能にするIC接点と、ICカードが所定の通信位置から外れたときの位置ずれを検出する検出手段と、ICカードの位置ずれが検出されたとき、IC端子とIC接点との接触を解除する解除手段と、が設けられることとしたので、この解除手段によって、ICカードの位置ずれが起きたときに、ICカードのIC端子とIC接点との接触を解除することができる。
【0012】
従って、ICカードのIC端子とIC接点とが接触した状態で、そのままICカードが移動していくのを防ぐことができ、ひいてはIC端子又はIC接点が傷つき破損するのを防ぐことができる。
【0013】
特に、サービスパーソンによる人為的ミスが発生したとしても(すなわち、ICカードのIC端子とIC接点とを非接触の状態にするのを忘れたとしても)IC端子又はIC接点が傷つき破損するのを防ぐことができる。また、本発明は、上述した特許文献1のようなロック解除を行う必要がないため、カード返却にあたってユーザの便宜に資することができる。
【0014】
(2) 前記IC接点を前記IC端子に対して近接するように駆動する駆動源を有し、前記解除手段は、前記検出手段により、前記ICカードの位置ずれが検出されたとき、前記駆動源の駆動を解除することを特徴とする媒体処理装置。
【0015】
本発明によれば、上述したIC接点をIC端子に対して近接するように駆動する駆動源を有し、上述した解除手段によって、ICカードの位置ずれが検出されたとき、駆動源の駆動が解除されることとしたので、ICカードの位置ずれが検出されると、駆動源の駆動が解除され、自動的にIC接点がIC端子から離接する。これにより、より確実に、IC端子又はIC接点が傷つき破損するのを防ぐことができる。
【0016】
(3) 前記検出手段は、前記搬送手段の駆動に対応するパルスを検出するエンコーダであることを特徴とする媒体処理装置。
【0017】
本発明によれば、上述した検出手段は、搬送手段の駆動に対応するパルスを検出するエンコーダであることとしたので、このエンコーダが既に内蔵されている媒体処理装置であれば、別途検出手段を組み込む必要がなく、コスト削減及び製造工程の簡易化に資することができる。また、例えば既存のエンコーダを用いることによって、検出手段による検出を実行するためのプログラムが複雑化するのを防ぎ、ひいては汎用性を高めることができる。
【0018】
(4) 前記解除手段は、前記エンコーダが、所定時間内の基準数以上のパルスを検出したとき、前記ICカードの位置ずれを判定することを特徴とする媒体処理装置。
【0019】
本発明によれば、上述したエンコーダが、所定時間内の基準数以上のパルスを検出したとき、ICカードの位置ずれを判定することとしたので、この基準数を最適な値に設定することによって、より的確に、IC端子又はIC接点が傷つき破損するのを防ぐことができる。
【0020】
(5) 前記エンコーダの駆動源はソレノイドであって、前記エンコーダの検出パルスが、前記所定時間内の基準パルス以上であるとき、前記ソレノイドへの通電を停止して前記IC端子と前記IC接点との接触を解除することを特徴とする媒体処理装置。
【0021】
本発明によれば、上述したエンコーダの駆動源はソレノイドであって、エンコーダの検出パルスが所定時間内の基準パルス以上であるとき、ソレノイドへの通電を停止してIC端子とIC接点との接触を解除することとしたので、基準パルスを最適な値に調整することで、より適切に、IC端子又はIC接点が傷つき破損するのを防ぐことができる。
【0022】
(6) 前記検出手段は、前記ICカードの端部を検出するフォトセンサであることを特徴とする媒体処理装置。
【0023】
本発明によれば、上述した検出手段は、ICカードの端部を検出するフォトセンサであることとしたので、フォトセンサが既に内蔵されている媒体処理装置にあっては、そのフォトセンサを有効活用することができ、検出手段のコスト上昇を防ぐことができる。
【0024】
(7) IC端子を有するICカードが搬送される搬送路と、前記ICカードを前記搬送路の所定の通信位置に搬送する搬送手段と、前記所定の通信位置に搬送されたICカードの前記IC端子に接触して、当該ICカードとの通信を可能にするIC接点と、前記ICカードが、前記所定の通信位置から外れたときの位置ずれを検出する検出手段と、前記IC端子と前記IC接点との接触を解除する解除手段と、を有する媒体処理装置の制御方法であって、前記解除手段が、前記IC接点が前記IC端子に接触しているか否かを判断する第1ステップと、前記第1ステップの判断結果に応じて前記搬送手段が作動しているか否かを判断する第2ステップと、前記第2ステップの判断結果に応じて前記検出手段により前記ICカードの位置ずれが検出されたか否かを判断する第3ステップと、前記ICカードの位置ずれが検出された場合に、前記IC端子と前記IC接点との接触を解除する第4ステップと、を含むことを特徴とする媒体処理装置の制御方法。
【0025】
本発明によれば、媒体処理装置に、ICカードのIC端子とIC接点との接触を解除する解除手段を設け、この解除手段によって、IC接点がIC端子に接触しているか否かが判断され、その判断結果に応じて搬送手段が作動しているか否かが判断され、その判断結果に応じてICカードの位置ずれが検出された場合に、IC端子とIC接点との接触が解除されることとしたので、ICカードのIC端子とIC接点とが接触した状態のままで、ICカードが移動していくのを防ぐことができ、ひいてはIC端子又はIC接点が傷つき破損するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、本来ICカードが移動すべきでない場合において、ICカードの位置ずれが検出されたときに、IC端子とIC接点との接触を解除することとしたので、IC端子やIC接点の破損等をふせぐことができる。また、特殊なカードロック等を伴うものではないため、ユーザの便宜に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係るカードリーダ1の主要な構成要素を示す側面断面図である。また、図2は、カードリーダ1に挿入されるICカード100の外観図である。なお、図1に示すカードリーダ1は、上位装置となるATM(ホスト)に組み込まれる装置であり、図示しないがホストコンピュータに接続される。また、図1に示すカードリーダ1は、磁気カードとICカード100の両方をハンドル可能な複合機となっている。そのため、図2に示すICカード100には、IC端子101及び磁気ストライプ102が露出形成されている。
【0029】
図1及び図2において、カードリーダ1は、ICカード100の取り込み口となるカード挿入口25と、IC端子101を有するICカード100が搬送される搬送路20と、ICカード100を搬送路20の所定の通信位置に搬送する搬送手段(駆動ローラ22及び従動ローラ23等)と、所定の通信位置に搬送されたICカード100のIC端子101に接触して、ICカード100との通信を可能にするIC接点ブロック機構10(後述するように、IC接点ブロック機構10のうちのIC接点12がIC端子101に接触する)と、ICカード100上の磁気ストライプ102に摺接させ、ICカード100に対してリードライト処理を行う磁気ヘッド36と、を有している。
【0030】
IC接点ブロック機構10は、主として、ICカード100のIC端子101に接触して信号の授受を行うIC接点ブロック11と、IC接点ブロック11をIC端子101に接触・離脱可能に移動させるIC接点接離手段13と、から構成されている。
【0031】
IC接点ブロック11は、ICカード100上のIC端子101と実際に接触するために、搬送路20に向かって並ぶ複数個のIC接点12を備えている。また、IC接点ブロック11は、IC接点接離手段13に支持されて搬送路20に臨んでいる。そして、IC接点接離手段13の作用によって、ICカード100に接近・離反可能であって、ICカード100の表面にIC接点12を接触・離脱させて信号の授受を行う。IC接点ブロック11には、ICカード100との信号授受を制御するICカード処理回路15(の基板)が設けられており、このICカード処理回路15にIC接点12の一端が電気的に接続されている。
【0032】
IC接点接離手段13は、IC接点ブロック11をICカード100のIC端子101に接触・離脱させる回動アーム17と、この回動アーム17を駆動する駆動源(ソレノイド14)と、から構成されている。なお、本実施形態では、IC接点接離手段13として、回動アーム17やソレノイド14を用いているが、その他、IC接点ブロック11を、ICカード100のIC端子101に接触・離脱させることが可能な機構であれば、如何なるものであってもよい。また、本実施形態では、IC接点12をIC端子101に対して近接するように駆動する駆動源として、ソレノイド14を採用しているが、その他、かかる機能を実現しうる駆動源であれば、如何なるものであってもよい。
【0033】
回動アーム17は、フレーム18の内側に支点19を中心として回動可能に設けられており、一端側に、IC接点ブロック11が取り付けられるとともに、他端側に、ソレノイド14のプランジャ16とピン結合されている。
【0034】
ソレノイド14は、プランジャ16を直線状に往復させることによって回動アーム17を回動させるものである。なお、プランジャ16は、図1では特に図示していないがコイルバネによって突出する方向に付勢されており、ソレノイド14に通電していない間は、その弾性力により、突出してIC接点ブロック11をICカード100(或いは搬送路20)から離反させる一方で、通電時は、ソレノイド14の筐体に引っ込んでIC接点ブロック11をICカード100に接近させる。従って、ソレノイド14が非通電になると、ソレノイド14の駆動が解除され、IC接点ブロック11は、自動的にICカード100から離反することになる。
【0035】
IC接点12は、ICカード100のIC端子101と接触して信号授受をし、通信を行うための接触端子である。IC接点12は、ICカード100の規格に対応するよう配置した複数のコイルバネ等によって構成されている。また、IC接点12は、例えばICカード100の進行方向と直行する方向に2列並べられているとともに、半田付け等によってICカード処理回路15(の基板)に電気的に接続されている。なお、IC接点12を構成する複数のコイルバネは、それぞれがくさび形状をしており、IC端子12とより確実に接触できるように、接触時に撓むことが可能な部材で形成されている。
【0036】
一方で、上述した搬送手段は、駆動モータ21と、駆動ローラ22と、搬送路20を挟んで駆動ローラ22と対向配置された従動ローラ23と、を有しており、カード挿入口25に近い側の駆動ローラ22と、IC接点ブロック機構10に近い側の駆動ローラ22とは、伝達ベルト24によって連結されている。
【0037】
IC接点ブロック機構10に近い側の従動ローラ23は、伝達ベルト28によって、ノブ用ローラ26と連結されており、搬送路20を挟んでノブ用ローラ26と対向する位置にノブ27が設けられている。このノブ27は、カードリーダ1で障害が発生し、カードリーダ1内にICカード100が詰まってしまった場合などに、これをカードリーダ1から取り出すためのものである。具体的には、サービスパーソンがノブ27を左方向に回すと、ICカード100が奥に(IC接点ブロック機構10が存在する方向に)取り込まれ、ノブ27を右方向に回すと、ICカード100が手前に(カード挿入口25が存在する方向に)放出される(取り出される)。
【0038】
ここで、本実施形態に係るカードリーダ1には、ICカード100が所定の通信位置(IC接点ブロック11と対向する位置)から外れたときの位置ずれを検出するエンコーダ34が設けられている。具体的には、本実施形態では、光学式のエンコーダ34を採用しており、このエンコーダ34は、円周方向に離散的に複数個の透光穴が形成された付属ローラ(図示せず)を有している。また、この付属ローラが回転すると、複数個の透光穴(図示せず)により所定の検出光が断続的に遮られるようになっている。そして、エンコーダ34は、この検出光の断続的な変化を、受光素子等で検出して電気的なパルスに変換する。
【0039】
従って、この付属ローラを搬送路20に臨ませ、駆動ローラ22等が回転したとき、すなわちICカード100が移動したときに、付属ローラが回転するように構成することによって、搬送手段の駆動(駆動ローラ22等の回転)に対応するパルスを検出することができる。その結果、ICカード100が所定の通信位置から外れ、位置ずれが生じたことを検出することができる。
【0040】
なお、光学式のエンコーダ34は、「検出手段」の一例であって、その他、如何なるものを採用しても構わない。例えば、特別に光学式のエンコーダ34を設けなくても、例えばICカード100の搬送スピードを検出するため、或いはその他モータの回転制御に使うために、既にエンコーダが組み込まれていれば、その既存のエンコーダを用いることもできる。また、付属ローラを有しないエンコーダ、ICカード100の端部を検出するフォトセンサなど、光学式のエンコーダだけではなく、磁気式やレバー式のエンコーダ、位置センサを用いることもできる。さらに、検出手段については、その種類だけでなく、その配置場所の如何も問わない。図1では、カードリーダ1の中央付近に配置することとしているが、ICカード100が所定の通信位置から外れ、位置ずれが生じたことを検出することができる位置であれば、如何なる場所であっても構わない。
【0041】
次に、カードリーダ1の電気的な構成について説明する。図3は、カードリーダ1の電気的構成を示すブロック図である。
【0042】
図3において、カードリーダ1は、主として、装置全体を統合的に制御するCPU31と、各種プログラムやパラメータが格納されるROM32と、CPU31のワーキングエリアとして機能するRAM33と、上述したソレノイド14(ソレノイド14を駆動するソレノイド駆動制御回路がCPU31との間に介在していてもよい)と、上述したエンコーダ34と、磁気カード処理回路35と、ICカード処理回路15と、磁気ヘッド36と、IC接点ブロック11と、を有している。
【0043】
磁気カード処理回路35は、磁気ヘッド36を介してICカード100の磁気ストライプ102に対する入出力信号を処理するものであって、ICカード処理回路15は、IC接点ブロック11(のIC接点12)を介してICカード100のIC端子101に対する入出力信号を処理するものである。特に、ICカード処理回路15は、一般に制御用ICが実装されており、メイン基板上のCPU31によってコントロールされる。
【0044】
なお、本実施形態では、CPU31(のメイン基板)とICカード処理回路15(の基板)とは別基板としているが、もちろん単一の基板(例えばメイン基板)であっても構わない。また、CPU31は、エンコーダ34によって、搬送手段(駆動ローラ22等)の駆動に対応するパルスが検出されると(すなわち、ICカード100の位置ずれが検出されると)、エンコーダ34から検出信号を受信する。
【0045】
ここで、CPU31は、エンコーダ34が、所定時間内に基準数以上のパルスを検出したとき(その旨の検出信号を受信したとき)、ICカード100の位置ずれを判定する。そして、ICカード100の位置ずれを判定すると、ソレノイド14への通電を遮断する。これにより、ICカード100のIC端子101とIC接点12との接触を解除することができる。
【0046】
このように、CPU31は、エンコーダ34によってICカードの位置ずれが検出されたとき(例えば、エンコーダ34が所定時間内の基準数以上のパルスを検出したとき)、ICカード100の位置ずれを判定し、IC端子と前記IC接点との接触を解除すべく、ソレノイド14への通電を遮断していることから、「解除手段」の一例として機能する。なお、かかる機能を実現するには、ROM32やRAM33等も必要であることから、これらも「解除手段」の一例として機能する。また、「解除手段」を広義に捉え、ソレノイド14を解除手段に含んでも構わない。
【0047】
次に、カードリーダ1の処理動作について説明するが、まず、カードリーダ1において実行される基本処理動作(処理シーケンス)について概説する。まず、カード挿入口(ゲート口)25から挿入されたICカード100は、搬送ローラ22や従動ローラ23等の搬送手段により奥に取り込まれるに従って、磁気ヘッド36によってICカード100上の磁気ストライプ102に記録された磁気データが読み込まれる。ICカード100は、更にその奥に運ばれ、エンボスイメージ読取機構(図示せず)によって、エンボスイメージの取り込みが行われる(取り込まれたイメージは、偽造有無の確認のため、保管される)。挿入されたカードがICカード100である場合、ICカード100は一旦カード挿入口25の近くまで搬送され、再度後方(奥)に搬送される。そして、ICカード100のIC端子101に、IC接点12を正確に下ろすための位置出しを行う。この位置だしは、図示しないフォトセンサ或いは機械スイッチ等により行うことができる。ICカード100が所定の通信位置に搬送されると、IC接点12をONして、ICカード100との通信を行う。通信が完了すると、IC接点12をOFFして、ICカード100をカード挿入口25に搬送し、ICカード100をユーザに返却して「取引き」が完了する。なおここで、IC接点12をONするとは、IC接点12がカード100のIC接点端子101に接触している状態をいい、IC接点12をOFFするとは、IC接点12とカード100のIC接点端子101とが非接触の状態のことをいう。
【0048】
ここで、このような一連の処理において何らかの障害が発生した場合は、「取引き」を中止し、ICカード100をユーザに返却することになるが、自動でICカード100を返却できない場合には、サービスパーソンを呼んで、ICカード100をカードリーダ1から取り出し、ユーザに返却する必要がある。このとき、サービスパーソンは、ノブ27(図1参照)を回して、カードリーダ1からICカード100を取り出し、これをユーザに返却する。
【0049】
仮に、IC接点12を下ろした状態で障害が発生した場合には、この動作に先立って、コマンドによってIC接点12を上げるか(可能な場合のみ)、若しくは、カードリーダ1の電源を落とす必要がある(電源を落とせば、IC接点12はOFFになる)。これを忘れると、ICカード100にダメージを与えたり、IC接点12を破損したりすることがある。
【0050】
そこで、本実施形態に係るカードリーダ1では、このような操作を忘れてしまってICカード100を取り出そうとした場合であっても、ICカード100の動きをエンコーダ34で検知して、IC接点12を自動的OFFし、IC接点12の破損等を防止することができる。以下、このIC接点12を自動的にOFFする処理について、図4を用いて詳述する。図4は、カードリーダ1において実行される処理(一部)の流れを示すフローチャートである。
【0051】
図4において、まず、CPU31は、ICカード処理回路15に対するコマンド動作中か否かを判断する(ステップS1)。コマンド動作中であれば(ステップS1:YES)、本サブルーチンを終了する。一方、コマンド動作中でなければ(ステップS1:NO)、次に、ICカード100が搬送路20にあって、IC接点12がONしているか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、ソレノイド12を通電しているか否かを判断する。そして、IC接点12がONされていなければ(ステップS2:NO)、IC端子101又はIC接点等の破損もないため、本サブルーチンを終了する。一方、IC接点12がONされていれば(ステップS2:YES)、IC端子101又はIC接点等の破損の虞があるため、処理をステップS3に移す。ステップS3の処理では、CPU31は、駆動モータ21が停止中か否かを判断する。駆動モータ21が動いていれば(ステップS3:NO)、ICカード100と通信していないことになるので、本サブルーチンを終了する。一方、駆動モータ21が動いていなければ(ステップS3:YES)、ICカード100と通信中、或いは通信直前若しくは通信直後となるので、処理をステップS4に移す。
【0052】
ステップS4の処理では、ICカード100が移動されたか否かが判断される。これは、上述したように、CPU31が、エンコーダ34からの検出信号を受信し、規定時間中のエンコーダカウントが規定値以上か否かによって判断する。CPU31は、ICカード100が移動されていないと判定した場合には(ステップS4:NO)、ICカード100の位置ずれは生じていないので、本サブルーチンを終了する。一方、ICカード100が移動されたと判定した場合には(ステップS4:YES)、ICカード100の位置ずれが生じたので、ICカード100の切断シーケンス処理が行われる(ステップS5)。具体的には、ICカードに供給されているクロックと電流が切断される。そして、上述したように、ソレノイド14への通電が遮断されることで、IC接点12がOFFすることになる(ステップS6)。
【0053】
このように、CPU31が、IC接点12がIC端子101に接触しているか否かを判断する第1ステップ(図4のステップS2)と、第1ステップの判断結果に応じて搬送手段(駆動ローラ22等)が作動しているか否かを判断する第2ステップ(図4のステップS3)と、第2ステップの判断結果に応じてエンコーダ34によりICカード100の位置ずれが検出されたか否かを判断する第3ステップ(図4のステップS4)と、ICカード100の位置ずれが検出された場合に、IC端子101とIC接点12との接触を解除する第4ステップ(図4のステップS5,ステップS6)とを含むような制御方法によれば、ICカード100のIC端子101とIC接点12とが接触した状態のままで、ICカード100が移動していくのを防ぐことができ、ひいてはIC端子101又はIC接点12が傷つき破損するのを防ぐことができる。
【0054】
なお、図4に示す処理は、例えば1msの間隔で実行されるようにしてもよい。これにより、繰り返し処理に起因したCPU31の処理負荷が不必要に増大するのを抑えつつ、最適なカード移動判定(ICカード100に位置ずれが生じたか否かの判定)を行うことができる。また、カード移動判定のエンコーダカウントは、規定時間でクリアされることになる。例えば、約200msでICカード100が0.5mm動いた場合などである。これは、カードリーダ1の振動によるカウントの累積(不必要なカウントアップ)を防止するためである。従って、ICカード100がゆっくりと動いた場合には、反応しない。時間、カウント値は、仕様の動作時振動条件と実際の操作感から決められることになる。
【0055】
また、本発明では、エンコーダ34を用いることでカードの位置ずれを検出し、ソレノイド14への通電を遮断することによって、IC接点12を上昇させることとしたが、例えば、IC接点12がパッドを外れる現象(すなわち、IC接点12が、IC端子101のうち対応するパッドから外れて別のパッドに接した場合において、電流供給状態にあるとき、通常動作時の電流値と大きく異なる電流値が発生する現象)を捉えて、電流検知機構からICカードの位置ずれを検出し、接点12を上昇させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、IC端子やIC接点の破損等を防ぐことが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係るカードリーダの主要な構成要素を示す側面断面図である。
【図2】カードリーダ1に挿入されるICカードの外観図である。
【図3】カードリーダの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】カードリーダにおいて実行される処理(一部)の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 カードリーダ
10 IC接点ブロック機構
11 IC接点ブロック
12 IC接点
13 接点接離手段
14 ソレノイド
15 ICカード処理回路
16 プランジャ
17 回動アーム
18 フレーム
19 支点
20 搬送路
21 駆動モータ
22 駆動ローラ
23 従動ローラ
24,28 伝達ベルト
25 カード挿入口
26 ノブ用ローラ
27 ノブ
34 エンコーダ
36 磁気ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IC端子を有するICカードが搬送される搬送路と、
前記ICカードを前記搬送路の所定の通信位置に搬送する搬送手段と、
前記所定の通信位置に搬送されたICカードの前記IC端子に接触して、当該ICカードとの通信を可能にするIC接点と、
前記ICカードが、前記所定の通信位置から外れたときの位置ずれを検出する検出手段と、
前記検出手段により、前記ICカードの位置ずれが検出されたとき、前記IC端子と前記IC接点との接触を解除する解除手段と、を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記IC接点を前記IC端子に対して近接するように駆動する駆動源を有し、
前記解除手段は、前記検出手段により、前記ICカードの位置ずれが検出されたとき、前記駆動源の駆動を解除することを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記搬送手段の駆動に対応するパルスを検出するエンコーダであることを特徴とする請求項1又は2記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記解除手段は、前記エンコーダが、所定時間内の基準数以上のパルスを検出したとき、前記ICカードの位置ずれを判定することを特徴とする請求項3記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記エンコーダの駆動源はソレノイドであって、前記エンコーダの検出パルスが、前記所定時間内の基準パルス以上であるとき、前記ソレノイドへの通電を停止して前記IC端子と前記IC接点との接触を解除することを特徴とする請求項4記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記ICカードの端部を検出するフォトセンサであることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の媒体処理装置。
【請求項7】
IC端子を有するICカードが搬送される搬送路と、前記ICカードを前記搬送路の所定の通信位置に搬送する搬送手段と、前記所定の通信位置に搬送されたICカードの前記IC端子に接触して、当該ICカードとの通信を可能にするIC接点と、前記ICカードが、前記所定の通信位置から外れたときの位置ずれを検出する検出手段と、前記IC端子と前記IC接点との接触を解除する解除手段と、を有する媒体処理装置の制御方法であって、
前記解除手段が、前記IC接点が前記IC端子に接触しているか否かを判断する第1ステップと、
前記第1ステップの判断結果に応じて前記搬送手段が作動しているか否かを判断する第2ステップと、
前記第2ステップの判断結果に応じて前記検出手段により前記ICカードの位置ずれが検出されたか否かを判断する第3ステップと、
前記ICカードの位置ずれが検出された場合に、前記IC端子と前記IC接点との接触を解除する第4ステップと、を含むことを特徴とする媒体処理装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate