説明

媒体排出装置

【課題】送り手段が逆転駆動した際に、既に排出された媒体が送り経路に引き込まれることを考慮した媒体排出装置を提供すること。
【解決手段】媒体排出装置(5)は、媒体(P)が送られる経路である送り経路15と、該送り経路15上の媒体(P)を送る送り手段7と、前記送り経路15を塞ぐ方向へ付勢され、排出側へ送られる媒体(P)に対しては案内面22を形成し、排出側と逆方向へ送られる媒体(P)に対しては引っ掛かり形状23を形成するストッパー部材20と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体が送られる経路と、該経路上の媒体を送る送り手段とを有する媒体排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンター複合機は、プリンター本体部より上方に給送装置を備えていた。該給送装置は、用紙サポート部と、送り手段と、送り経路と、排出スタッカーとを備えていた。このうち、前記用紙サポート部は、給送前の用紙を載置することができるように設けられていた。また、前記送り手段は、前記用紙サポート部に載置された用紙を一枚ずつ順次送り方向下流側へ送ることができるように構成されていた。またさらに、前記送り経路は用紙が送られる経路であり、前記排出スタッカーまで用紙を案内することができるように設けられていた。また、前記排出スタッカーは、送り方向下流端に位置し、前記送り経路から排出された用紙を載置することができるように設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−245624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記送り手段によって前記送り経路から前記排出スタッカーへ排出された用紙が、前記送り手段のローラーが逆転した際、前記送り経路に引き込まれる虞がある。そして、前記送り経路内で詰まってしまう虞がある。前記ローラーが逆転する場面として、例えば、用紙の裏表を反転するために逆送りする場合がある。また、他の駆動機構とモーターを共通にしているために機構上前記逆転することが必要な場合がある。また、前記引き込まれる原因としては、例えば、表裏を反転するために前記逆送りされる用紙が静電気を帯びており、該用紙が、既に前記排出スタッカー上に排出された用紙を吸い付ける。そして、前記逆送りされる用紙が前記スタッカー上の用紙を引き連れるようにして、二枚一緒に逆送りされるために、前記引き込まれることが発生する。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、送り手段が逆転駆動した際に、既に排出された媒体が送り経路に引き込まれることを考慮した媒体排出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の媒体排出装置は、媒体が送られる経路である送り経路と、該送り経路上の媒体を送る送り手段と、前記送り経路を塞ぐ方向へ付勢され、排出側へ送られる媒体に対しては案内面を形成し、排出側と逆方向へ送られる媒体に対しては引っ掛かり形状を形成するストッパー部材と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、完全に排出される前の媒体が逆方向へ送られる際に、該媒体が既に排出された媒体を引き連れて移動した場合であっても、引き連れられる媒体が引き込まれることを防止することができる。
例えば、完全に排出される前の媒体が表裏反転のために逆方向へ送られる際、前述したように静電気等によって前記既に排出された媒体が引き連れられる場合がある。係る場合、前記ストッパー部材を備える構成は、特に有効である。
尚、前記引き連れて移動しなくても、既に排出された媒体が単独で、前記送り手段の逆転駆動によって前記逆方向へ引き込まれる虞がある。係る場合も、前記ストッパー部材を備える構成は有効である。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、排出された媒体を載置するスタッカーを備えており、前記ストッパー部材は、前記送り経路における媒体を基準とした該媒体が面する前記スタッカー側から突出する構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記ストッパー部材が、逆方向へ送られる媒体の載置方向下側にくっついた既に排出された媒体を、引っ掛けることができる。これにより、前記下側にくっついた媒体が逆方向へ引き連れられて送られることを止めることができる。
【0009】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記送り手段は、ローラー対を有しており、前記ストッパー部材の前記引っ掛かり形状が設けられている位置は、前記ローラー対のニップ点より排出時の送り方向下流側であることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、一旦、前記ローラー対のニップ点を通過した媒体の逆送りを防止することができる。つまり、一度、完全に排出された媒体は、逆方向へ引き込まれる虞がない。
【0010】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記ストッパー部材は、揺動する構成であり、前記揺動する支点は、前記ローラー対のニップ点より排出時の送り方向上流側に配設されていることを特徴とする。
本態様によれば、第3の態様と同様の作用効果に加え、媒体が排出側へ送られる際、該媒体が比較的小さい力で前記ストッパー部材を押し下げることができる。つまり、媒体がスムーズに前記ストッパー部材を通過することができる。一方、媒体が逆方向へ送られる際、前記ストッパー部材が、前記引き連れられる媒体をしっかりと止めることができる。
【0011】
本発明の第5の態様は、第3または第4の態様において、前記ストッパー部材は、媒体の幅方向において複数設けられた前記ローラー対の外側に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、第3または第4の態様と同様の作用効果に加え、前記引き連れられる媒体がスキューしている場合であっても、前記ストッパー部材が、引き連れられる方向の媒体の先端またはその近傍と当接することができる。従って、前記ストッパー部材が確実に前記引き連れられる媒体を止めることができる。さらに、前記引き連れられる媒体が前記ローラー対に引き込まれることを防止することができる。
【0012】
本発明の第6の態様は、第2から第5のいずれか一の態様において、前記ストッパー部材は、媒体の幅方向において媒体が前記スタッカーに排出される際に通過する排出領域内の両側に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、第2から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記引き連れられる媒体がスキューしている場合であっても、前記ストッパー部材が確実に前記引き連れられる媒体を止めることができる。
【0013】
本発明の第7の態様は、媒体が送られる経路である送り経路と、該送り経路上の媒体を送る送り手段と、前記送り経路に対して進退可能なストッパー部材と、を備え、前記送り手段による媒体の送り方向に応じて、排出時には前記ストッパー部材を退避させ、排出時の送り方向と逆方向へ送るときには前記ストッパー部材を進出させる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
尚、前記ストッパー部材の進退は、モーター等の動力によって動作する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例のスキャナー付きプリンター複合機の全体斜視図。
【図2】本実施例の媒体搬送装置の送り経路全体を示す側断面図。
【図3】本実施例の送り経路におけるストッパー部材の位置を示す平面図。
【図4】本実施例のストッパー部材を示す斜視図。
【図5】本実施例のストッパー部材の動作を示す側断面図(先行用紙送り時)。
【図6】本実施例のストッパー部材の動作を示す側断面図(先行用紙先端通過時)。
【図7】本実施例のストッパー部材の動作を示す側断面図(先行用紙後端通過時)。
【図8】本実施例のストッパー部材の動作を示す側断面図(後続用紙送り時)。
【図9】本実施例のストッパー部材の動作を示す側断面図(後続用紙先端通過時)。
【図10】本実施例のストッパー部材の動作を示す側断面図(後続用紙逆送り時)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例のスキャナー付きプリンター複合機1の全体斜視図である。
図1に示す如く、本実施例のプリンター複合機1は、プリンター本体2と、媒体搬送装置4とを有している。
このうち、プリンター本体2は、鎖線で示す如くプリンター複合機1における鉛直方向下方(Z軸の矢印と逆方向)に配設されている。また、プリンター本体2は、スキャナー部3と、給送部29と、記録部30と、排出部31とを備えている。
【0016】
スキャナー部3は、プリンター本体2における媒体搬送装置4側である上方に配設されている。そして、スキャナー部3は、詳しくは後述する媒体搬送装置4によって、送られた用紙Pの面に記録された写真や文書等の情報を読み取ることができるように構成されている。また、給送部29は、プリンター本体2の内部に積層された用紙を給送することができるように構成されている。またさらに、記録部30は、給送部29によって給送された用紙に対してインクを吐出することにより記録実行をすることができるように構成されている。また、排出部31は、記録部30において記録された用紙をプリンター本体2の内部から外部へ排出することができるように構成されている。
【0017】
一方、媒体搬送装置4は、プリンター本体2の上方に配設されている。そして、プリンター本体2側のスキャナー部3と対向する所定位置に対して載置部6に載置された用紙Pを送り経路15によって矢印Aの方向へ送ることができるように設けられている。そして、スキャナー部3によって用紙Pの面に記録された情報が読み取られる。その後、媒体搬送装置4は、矢印Aで示す如く用紙Pをスタッカー19まで送って排出することができるように設けられている。
【0018】
尚、媒体搬送装置4全体を上方へ揺動させて、プリンター本体2のスキャナー部3と対向するように用紙Pの読み取らせたい面を向けて、スキャナー部3と対向する位置に直接、用紙Pをセットすることも可能である。係る場合、上方へ揺動させた媒体搬送装置4全体を下方へ揺動させて用紙Pをスキャナー部3に押し当てて、用紙Pの面の情報をスキャナー部3に読み取らせることができる。
【0019】
続いて、媒体搬送装置4の内部について詳しく説明する。
図2に示すのは、本実施例の媒体搬送装置4の送り経路15全体を示す側断面図である。
図2に示す如く、本実施例の媒体搬送装置4は、載置部6と、送り経路15と、送り手段7と、スタッカー19と、ストッパー部材20と、を備えている。
尚、本実施例の媒体搬送装置4は媒体排出装置としての媒体排出手段5を有している。そして、媒体排出手段5は、このうちの送り経路15と、送り手段7と、スタッカー19と、ストッパー部材20と、を有している。
【0020】
このうち、載置部6は、搬送する用紙Pを重ねて載置することができるように設けられている。また、送り経路15は、案内部材によって構成され、載置部6からスキャナー部3と対向する所定位置を介してスタッカー19へ用紙Pを送ることができるように設けられている。
またさらに、送り手段7は、図示しないモーターの動力によって、用紙Pを送り方向Aへ送ることができるように構成されている。本実施例では、送り手段7は、第1ローラー8と、第2ローラー9と、第3ローラー10と、ローラー対11とを有している。このうち、ローラー対11は、前記モーターの動力によって駆動する駆動ローラー11aと、駆動ローラー11aに従って回転する従動ローラー11bとを有している。
【0021】
また、スタッカー19は、送り経路15における送り方向下流端に設けられ、送り手段7によって送られ、排出された用紙Pを載置することができるように構成されている。
またさらに、ストッパー部材20は、用紙Pの後端がローラー対11のニップ点Nを通過し、一度完全にスタッカー19に排出された用紙Pが再度ニップ点Nより排出時の送り方向上流側(矢印Aの上流側)へ引き込まれることを防止することができるように構成されている。具体的には、ストッパー部材20は送り経路15を塞ぐ方向である上側案内部材25へ付勢されている。そして、ストッパー部材20の先端が上側案内部材25と当接することにより送り経路15が塞がれる。これにより、引き込まれることを防止する。より詳しい説明は後述するものとする。
尚、排出時の送り方向は矢印Aで示す方向である。
【0022】
続いて、動作の概略について説明する。
載置部6に載置された用紙Pは、第1ローラー8によって最上位の用紙Pだけがピックアップされて送り方向下流側へ送られる。そして、送り経路15の送り方向下流側へ送られた用紙Pは、第2ローラー9、および第3ローラー10によってさらに下流側へ送られる。そして、プリンター本体2側のスキャナー部3と対向する所定位置を通過して、さらに下流側へ送られる。そして、用紙Pの先端がフラップ16を押し上げて、ローラー対11にニップされる。
【0023】
ここで、用紙Pの片面だけがスキャナー部3に読み取られるモードである場合、用紙Pは、ローラー対11によってさらに下流側へ送られてストッパー部材20を通過し、スタッカー19へ排出される。
尚、ローラー対11より排出時の送り方向下流側(矢印Aの下流側)には、押さえ部材27が設けられている。押さえ部材27は、排出された用紙Pをスタッカー19側へ押さえるようにして移動させることができる。排出された用紙Pの後端を、ローラー対11のニップ点Nから遠ざけて、ニップ点N近傍を空けるためである。
【0024】
これによって、後続の用紙P2(図8参照)が排出される際、後続の用紙P2の先端が、既に排出された先行する用紙P1(図8参照)の後端と衝突する虞がない。そして、先行する用紙P1が、後続の用紙P2によって押し出され、スタッカー19からこぼれ落ちる虞がない。また、ローラー対11のニップ点Nを基準としたスタッカー19側である駆動ローラー11aの駆動軸12(図3および図4参照)には、後述するようにスポンジローラー14(図3および図4参照)が設けられている。スポンジローラー14の外周は凹凸形状が設けられており、用紙Pの後端をスタッカー19側へはたき落とすように作用する。
【0025】
一方、用紙Pの両面がスキャナー部3に読み取られるモードである場合、用紙Pの後端がフラップ16を通過するまで、ローラー対11によって排出時の送り方向下流側へ送られる。そして、用紙Pの後端がフラップ16を通過すると、用紙Pによって押し上げられていたフラップ16が自重によって下がる。その後、ローラー対11は、逆転駆動し、排出時の送り方向上流側であった用紙Pの後端を先頭にして該用紙Pを、逆送り方向Bへフラップ16の上側を通過させて表裏反転用経路28へ送る。
【0026】
そして、再び送り経路15へ戻り、第2ローラー9、第3ローラー10によって再び、スキャナー部3と対向する所定位置まで送られる。このとき、用紙Pにおけるスキャナー部3と対向する面は、先ほどの時と逆の面である。つまり、表裏が反転されている。その後、先ほどと同様に、用紙Pの先端がフラップ16を押し上げ、用紙Pはローラー対11によってニップされる。そして、ストッパー部材20を通過し、スタッカー19へ排出される。
【0027】
続いて、本実施例のストッパー部材20の位置および形状について説明した後に、ストッパー部材20の動作および役割について詳しく説明する。
図3に示すのは、本実施例の送り経路15におけるストッパー部材20の位置を示す平面図である。また、図4に示すのは、本実施例のストッパー部材20を示す斜視図である。
図3および図4に示す如く、ストッパー部材20は、ローラー対11の近傍に一例として一対設けられている。本実施例では、幅方向Xにおいてローラー対11が四つ設けられており、両側(外側二つ)のローラー対11より内側に一対のストッパー部材20が配設されている。
【0028】
また、押さえ部材27は、内側二つのローラー対11を跨ぐようにして配設されている。またさらに、スポンジローラー14は、四つのローラー対11より外側に一対設けられている。
尚、ローラー対11の従動ローラー11bおよび押さえ部材27は、保持軸13によって回動自在に保持されている。また、ローラー対11の駆動ローラー11aおよびスポンジローラー14は、駆動軸12と一体に回動するように駆動軸12に設けられている。
【0029】
ストッパー部材20の位置は、詳しくは後述するように一度完全に排出された用紙Pがローラー対11によって送り経路15に引き込まれないようにするために、少なくとも実効あるローラー対11より外側に設けることが望ましい。ここで、「実効あるローラー対11」とは、用紙Pを実際にニップするローラー対11のことをいう。排出された用紙Pが送り方向に対して傾いた所謂、スキューした状態で引き込まれようとした際、用紙Pにおけるローラー対11より外側部分が先行して送り経路15に引き込まれようとする。
【0030】
これを、用紙Pがローラー対11にニップされる前にブロックするためである。また、ローラー対11によって排出される用紙Pが通過するローラー対11近傍の排出領域E内における幅方向Xの両側に、ストッパー部材20を設けることが望ましい。これにより、上記のように実効あるローラー対11より外側に配設することができ、同様の効果を得ることができるからである。
【0031】
また、ストッパー部材20は、排出される方向Aへ送られる用紙Pに対しては案内面22を形成し、排出される方向Aと逆方向Bへ送られる用紙Pに対しては、引っ掛かり形状23を形成する。具体的には、ローラー対11のニップ点Nより排出時の送り方向上流側では、案内面22が形成され、ニップ点Nより排出時の送り方向下流側では、引っ掛かり形状23が形成されている。またさらに、ストッパー部材20は、ローラー対11のニップ点Nより排出時の送り方向上流側に設けられた第1揺動軸21を中心に揺動可能に設けられている。これは、送り方向上流側から下流側へ送られてきた用紙Pの先端が容易にストッパー部材20を押し下げて、ストッパー部材20を通過することができるようにするためである。
【0032】
ストッパー部材20の動作および役割について詳しく説明する。
図5に示すのは、本実施例の先行する用紙P1がニップ点Nの手前まで到達した際におけるストッパー部材20の動作を示す側断面図である。
図5に示す如く、ストッパー部材20は、案内面22と、引っ掛かり形状23と、第1揺動軸21と、第1ばね係止部24と、を有している。
【0033】
このうち、案内面22は、排出時の送り方向上流側から下流側へ送られてきた用紙Pの先端をローラー対11のニップ点Nへ案内することができるように形成されている。また、引っ掛かり形状23は、ローラー対11のニップ点Nより排出時の送り方向下流側となる位置に設けられ、排出時の送り方向下流側から上流側へ移動する用紙Pの進行方向先端が引っ掛かる爪状に設けられている。またさらに、ストッパー部材20は、第1揺動軸21を中心に揺動することができる。そして、第1揺動軸21は、ニップ点Nより排出時の送り方向上流側に設けられている。
【0034】
また、第1ばね係止部24には、引っ張りばね26の一端が係止されている。引っ張りばね26の他端は、スタッカー19側に形成された第2ばね係止部18に係止されている。これにより、ストッパー部材20は、送り経路15が塞がれる方向に付勢されている。具体的には、図5における第1揺動軸21を中心とした時計方向へ付勢され、引っ掛かり形状23の先端が、上側案内部材25と当接している。つまり、引っ掛かり形状23の先端と上側案内部材25と当接することにより、送り経路15が塞がれた状態となる。
【0035】
そして、先行する用紙P1が送り経路15に沿って送り方向上流側から下流側へ送られると、前述したように用紙Pの先端がフラップ16の自重に抗してフラップ16を押し上げる。これにより、フラップ16は第2揺動軸17を中心に図5における時計方向へ揺動する。尚、この際、用紙Pの先端がストッパー部材20の案内面22と接触し、引っ張りばね26の付勢力に抗してストッパー部材20を押し下げてもよい。
【0036】
図6に示すのは、本実施例の先行する用紙P1の先端がストッパー部材20を通過した際のストッパー部材20の動作を示す側断面図である。
図6に示す如く、図5に示す状態から先行する用紙P1がさらに排出時の送り方向下流側へ送られると、用紙Pの先端は、ローラー対11によってニップされる。そして、ローラー対11によってさらに排出時の送り方向下流側へ送られる。この際、用紙Pの先端は、ニップ点Nを通過した直後、ストッパー部材20の案内面22と上側案内部材25とによって案内されながら、ストッパー部材20を下方へ押し下げるように作用する。
【0037】
つまり、用紙Pの先端は、図6における反時計方向へ引っ張りばね26の付勢力に抗してストッパー部材20を揺動させる。従って、ストッパー部材20の引っ掛かり形状23の先端と上側案内部材25との間に隙間を空けることができる。そして、該隙間を通過して、スタッカー19側へさらに送られる。この際、押さえ部材27によって、スタッカー19側である下方へ用紙Pが押さえられる。
【0038】
尚、前述した用紙Pの片面だけがスキャナー部3に読み取られるモードである場合、この後、ローラー対11は、用紙Pを排出時の送り方向下流側へ送り続ける。
一方、前述した用紙Pの両面がスキャナー部3に読み取られるモードである場合、この後、用紙Pの後端がフラップ16を通過するまで排出時の送り方向下流側へ送る。そして、フラップ16が自重によって下がった後、ローラー対11を逆転駆動させて用紙Pを表裏反転用経路28へ送って表裏を反転させる。そして、用紙Pが所定位置を通過した後、反転後の用紙Pの先端がローラー対11のニップ点Nを通過する。
【0039】
図7に示すのは、本実施例の先行する用紙P1の後端が引っ掛かり形状23の先端を通過した際のストッパー部材20の動作を示す側断面図である。
図7に示す如く、用紙Pの後端がストッパー部材20の引っ掛かり形状23の先端を通過すると、ストッパー部材20は用紙Pの自重から解放される。従って、引っ張りばね26の付勢力によって図7における時計方向へストッパー部材20は揺動する。
【0040】
そして、引っ掛かり形状23の先端が上側案内部材25と当接し、送り経路15が塞がった状態となる。
尚、このとき、先行する用紙P1の後端は既にフラップ16から離間している。また、後続の用紙P2の先端は、まだフラップ16まで到達していないので、フラップ16は下がった状態である。
【0041】
図8に示すのは、本実施例の後続する用紙P2がニップ点Nの手前まで到達した際におけるストッパー部材20の動作を示す側断面図である。
図8に示す如く、先行する用紙P1の後端が引っ掛かり形状23の先端を通過した後、先行する用紙P1の後端は、前述したスポンジローラー14や押さえ部材27によってスタッカー19側へ移動する。そして、先行する用紙P1の先端がニップ点Nの手前まで送られてきたときと同様、後続する用紙P2が送り経路15に沿って送り方向上流側から下流側へ送られる。
【0042】
すると、前述したように後続の用紙P2の先端がフラップ16の自重に抗してフラップ16を押し上げる。これにより、フラップ16は第2揺動軸17を中心に図8における時計方向へ揺動する。尚、この際、後続の用紙P2の先端がストッパー部材20の案内面22と接触し、引っ張りばね26の付勢力に抗してストッパー部材20を押し下げてもよい。
【0043】
図9に示すのは、本実施例の後続する用紙P2の先端がストッパー部材20を通過した際のストッパー部材20の動作を示す側断面図である。
図9に示す如く、図8に示す状態から後続する用紙P2がさらに排出時の送り方向下流側へ送られると、後続する用紙P2の先端は、ローラー対11によってニップされる。そして、ローラー対11によってさらに排出時の送り方向下流側へ送られる。
【0044】
この際、前述した先行する用紙P1の先端のときと同様、後続する用紙P2の先端は、図9における反時計方向へ引っ張りばね26の付勢力に抗してストッパー部材20を揺動させる。そして、後続の用紙P2は、ストッパー部材20の引っ掛かり形状23の先端と上側案内部材25との間の隙間を通過して、スタッカー19側へさらに送られる。この際、何らかの原因によって、後続の用紙P2における下側であるスタッカー19側の面に、先行する用紙P1の後端側が重なるように引き寄せられる場合がある。
【0045】
例えば、静電気が考えられる。後続する用紙P2の先端側が静電気を帯びているため、先行する用紙P1の後端側が後続する用紙P2の先端側に重なるように引き寄せられる場合がある。また、後続の用紙P2の先端側と先行する用紙P1の後端側とが擦れることにより、両者が静電気を帯びて前記重なるように引き寄せられる場合がある。
【0046】
図10に示すのは、本実施例の後続する用紙P2の逆送り時におけるストッパー部材20の動作を示す側断面図である。
図10に示す如く、例えば、前述した用紙Pの両面がスキャナー部3に読み取られるモードである場合、後続の用紙P2の後端がフラップ16を通過した後、フラップ16が自重で下がる。その後、ローラー対11を逆転駆動させて、後続の用紙P2の進行方向先端(排出時の送り方向後端)を先頭にして後続の用紙P2を逆送り方向Bへ送り、表裏反転用経路28へ送る。
【0047】
この際、後続の用紙P2のスタッカー19側である下側の面にくっついて引き連れられるようにして、先行する用紙P1の後端側がローラー対11にニップ点Nへ接近し、送り経路15へ引き込まれそうになる。ここで、前述したようにニップ点Nより排出時の送り方向下流側には、ストッパー部材20の引っ掛かり形状23が設けられている。また、引っ掛かり形状23は、スタッカー19側である下側から突出するように設けられている。
【0048】
従って、確実に、後続の用紙P2に下側にくっついた先行する用紙P1の後端と接触し、該用紙Pの後端を引っ掛けることができる。そして、先行する用紙P1の送り方向上流側への移動を規制することができる。つまり、ローラー対11のニップ点Nで挟持されて送り経路15に引き込まれることを防止することができる。そして、排出時の送り方向上流側へ逆送りされている後続の用紙P2のみを表裏反転用経路28へ送ることができる。
【0049】
尚、逆送りの際の後続の用紙P2の進行方向後端(先ほどの排出時の送り方向先端)が引っ掛かり形状23の先端を通過したとき、引っ張りばね26の付勢力によってストッパー部材20は図10における時計方向へ揺動する。従って、引っ掛かり形状23の先端が上側案内部材25と当接した送り経路15が塞がれた状態となる。
【0050】
ここで、一例として、用紙Pの両面がスキャナー部3に読み取られるモードである場合における前記くっついて引き連れられるようにして、先行する用紙P1の後端側がローラー対11にニップ点Nへ接近し、送り経路15へ引き込まれそうになることについて説明したが、これに限らない。用紙Pの片面だけがスキャナー部3に読み取られるモードである場合であっても、他の駆動手段とモーターが共通である構成の場合、ローラー対11が逆転駆動するときがある。係る場合にも、引っ掛かり形状23を有するストッパー部材20を有する構成は有効である。
【0051】
また、上記実施例では、ストッパー部材20が引っ張りばね26の付勢力によって送り経路15を塞ぐ方向へ付勢されることによって、ストッパー部材20を完全に通過した用紙Pが、再び送り経路15に引き込まれることを防止する構成としたがこれに限らない。ストッパー部材20が、送り経路15に対して進退可能であり、用紙Pが排出時の送り方向下流側へ送られる際、ストッパー部材20が送り経路15から退避し、用紙Pが排出時の送り方向上流側へ逆送りされる際、ストッパー部材20が送り経路15へ突出する構成でもよい。例えば、駆動ローラー11aの正転・逆転の動力によって進退移動させることができる。具体的には、ストッパー部材20と駆動軸12との間で摩擦力を発生させ、進退移動させることができる。
【0052】
またさらに、上記実施例では、媒体搬送装置4における媒体排出手段5として説明したが、媒体搬送装置4に限らない。ストッパー部材20をプリンター本体2において適用してもよい。プリンター本体2は、媒体搬送装置4と同様、送り経路(15)と、送り手段(7、29)と、排出部(19、31)とを備えているからである。また、両面印刷モードを有しており、用紙(P)の表裏反転するために逆送りをするからでもある。
【0053】
本実施例の媒体排出装置としての媒体排出手段5は、媒体としての一例である用紙Pが送られる経路である送り経路15と、送り経路15上の用紙Pを送る送り手段7と、送り経路15を塞ぐ方向へ付勢され、排出側へ送られる用紙Pに対しては案内面22を形成し、排出側と逆方向Bへ送られる用紙Pに対しては引っ掛かり形状23を形成するストッパー部材20と、を備えていることを特徴とする。
【0054】
また、本実施例において、排出された用紙Pを載置するスタッカー19を備えており、ストッパー部材20は、送り経路15における用紙Pを基準とした該用紙Pが面するスタッカー19側から突出する構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、送り手段7は、ローラー対11を有しており、ストッパー部材20の引っ掛かり形状23が設けられている位置は、ローラー対11のニップ点Nより排出時の送り方向下流側であることを特徴とする。
【0055】
また、本実施例において、ストッパー部材20は、揺動する構成であり、前記揺動する支点である第1揺動軸21は、ローラー対11のニップ点Nより排出時の送り方向上流側に配設されていることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、ストッパー部材20は、用紙Pの幅方向Xにおいて複数設けられたローラー対11の外側に設けられていることを特徴とする。
また、本実施例において、ストッパー部材20は、用紙Pの幅方向Xにおいて用紙Pがスタッカー19に排出される際に通過する排出領域E内の両側に設けられていることを特徴とする。
【0056】
尚、前述したように、ストッパー部材(20)が、例えば、駆動ローラー11aの正転・逆転の動力等によって進退移動する構成でもよい。係る場合、媒体排出装置(5)は、媒体(P)が送られる経路である送り経路(15)と、送り経路(15)上の媒体(P)を送る送り手段(7)と、送り経路(15)に対して進退可能なストッパー部材(20)と、を備え、送り手段(7)による媒体(P)の送り方向(A、B)に応じて、排出時にはストッパー部材(20)を退避させ、排出時の送り方向(A)と逆方向(B)へ送るときにはストッパー部材(20)を進出させる構成である。
【0057】
また、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンター複合機、2 プリンター本体、3 スキャナー部、4 媒体搬送装置、
5 媒体排出手段(媒体排出装置)、6 載置部、7 送り手段、8 第1ローラー、
9 第2ローラー、10 第3ローラー、11 ローラー対、11a 駆動ローラー、
11b 従動ローラー、12 駆動軸、13 保持軸、14 スポンジローラー、
15 送り経路、16 フラップ、17 第2揺動軸、18 第2ばね係止部、
19 スタッカー、20 ストッパー部材、21 第1揺動軸、22 案内面、
23 引っ掛かり形状、24 第1ばね係止部、25 上側案内部材、
26 引っ張りばね、27 押さえ部材、28 表裏反転用経路、29 給送部、
30 記録部、31 排出部、A 排出時の送り方向、B 逆送り方向、E 排出領域、
N ニップ点、P 用紙、P1 先行する用紙、P2 後続の用紙、X 幅方向、
Z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が送られる経路である送り経路と、
該送り経路上の媒体を送る送り手段と、
前記送り経路を塞ぐ方向へ付勢され、排出側へ送られる媒体に対しては案内面を形成し、排出側と逆方向へ送られる媒体に対しては引っ掛かり形状を形成するストッパー部材と、を備えた媒体排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体排出装置において、排出された媒体を載置するスタッカーを備えており、
前記ストッパー部材は、前記送り経路における媒体を基準とした該媒体が面する前記スタッカー側から突出する構成である媒体排出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体排出装置において、前記送り手段は、ローラー対を有しており、
前記ストッパー部材の前記引っ掛かり形状が設けられている位置は、前記ローラー対のニップ点より排出時の送り方向下流側であることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の媒体排出装置において、前記ストッパー部材は、揺動する構成であり、
前記揺動する支点は、前記ローラー対のニップ点より排出時の送り方向上流側に配設されていることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の媒体排出装置において、前記ストッパー部材は、媒体の幅方向において複数設けられた前記ローラー対の外側に設けられていることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の媒体排出装置において、前記ストッパー部材は、媒体の幅方向において媒体が前記スタッカーに排出される際に通過する排出領域内の両側に設けられていることを特徴とする媒体排出装置。
【請求項7】
媒体が送られる経路である送り経路と、
該送り経路上の媒体を送る送り手段と、
前記送り経路に対して進退可能なストッパー部材と、を備え、
前記送り手段による媒体の送り方向に応じて、排出時には前記ストッパー部材を退避させ、排出時の送り方向と逆方向へ送るときには前記ストッパー部材を進出させる構成である媒体排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171779(P2012−171779A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38542(P2011−38542)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】