説明

媒体搬送装置及び画像形成装置

【課題】搬送ベルトによる媒体の安定搬送を実現しつつ、排出後の積載不良を防止し、媒体の放熱効率を向上すること。
【解決手段】媒体搬送装置18は、画像形成装置の定着ユニット12の下流側に配置された搬送ベルト19と、搬送ベルト19の帯電電荷の少なくとも一部を除去するための除電ローラ21と備えている。除電ローラ21に接続されたアースケーブル24には、定電圧ダイオード24が設けられており、搬送ベルト19の電位を保持している。これにより、媒体Sの帯電電荷の一部が媒体Sに残るため、搬送ベルト19に媒体を静電吸着させることで安定した搬送を実現できる。また、媒体Sの過度の帯電を防止することで、スタッカ26における積載不良を防止できる。さらに、媒体Sと搬送ベルト19とを静電吸着により密着させることで、放熱効率を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に設けられ、搬送ベルトにより媒体を搬送する媒体搬送装置、及びその媒体搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(プリンタ、複写機、ファクシミリ等)は、紙やプラスチックフィルム等の媒体にトナー像を転写し、このトナー像に熱と圧力を付与して媒体に定着させる。このような画像形成装置において、トナー像が定着された媒体を、搬送ベルトを用いて所定の排出位置まで搬送するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された画像形成装置は、画像を媒体に転写する転写部と、画像を媒体に定着させる定着部とを含む画像形成ユニットと、画像形成ユニットの全長に亘って媒体を搬送する搬送ベルトとを備えている。搬送ベルトの搬送距離は、画像形成ユニットの全長よりも長く、従って画像形成ユニットの上流側及び下流側で搬送ベルトが外部に突出している。この画像形成装置では、媒体として、裏面に粘着剤が塗布された粘着シートが使用される。媒体は、その裏面の粘着剤により搬送ユニットに貼り付けられ、転写部及び定着部を通過するように搬送される。
【0004】
【特許文献1】特開2000−344379号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された画像形成装置では、媒体が搬送ベルトに貼り付けられた状態で搬送されるため、搬送ベルトに対して媒体が位置ずれしたり、浮き上がったりすることはない。しかしながら、粘着剤を有さない普通紙を媒体として用いた場合、搬送ベルト上で媒体の位置ずれが生じ、あるいは搬送ベルトから媒体が浮き上がる場合があり、媒体の斜行や、それに伴う皺の発生を招くという問題がある。
【0006】
また、粘着剤を有さない普通紙と搬送ベルトとを密着させることができないため、定着部において媒体(普通紙)に蓄積された熱を、搬送ベルトを介して効率良く放熱することができないという問題もある。
【0007】
一方、媒体は、画像形成ユニット内で過度に帯電している場合があり、この状態で搬送ベルトからスタッカ等に排出されると、媒体同士の貼り付きが生じ、媒体の積載が円滑に行われない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、搬送ベルトによる媒体の安定搬送を実現し、媒体からの放熱効率を向上することを目的とする。また、本発明は、媒体の過度な帯電を抑制し、積載不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る媒体搬送装置は、画像を媒体に転写する転写部と、画像を媒体に定着させる定着部と、媒体を転写部及び定着部を通過するように搬送する搬送部とを備えた画像形成装置に設けられた媒体搬送装置であって、定着部の搬送方向下流側に配置され、媒体を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトに帯電した電荷の少なくとも一部を除去するための除電部と、除電部に接続され、搬送ベルトの電位を保持する電位保持部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電位保持部により搬送ベルトの電位が保たれるため、媒体に帯電した電荷の一部が除去されずに残り、これにより、媒体を搬送ベルトに静電吸着することができる。そのため、搬送ベルト上における媒体の位置ずれや、搬送ベルトからの媒体の浮き上がりを防止することができる。
【0011】
また、静電吸着により、媒体を搬送ベルトに密着させることができるため、搬送ベルトを介して媒体の熱を効率よく放熱させることができる。さらに、除電部により媒体の帯電電荷の一部を除去することで、媒体の積載不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置としてのプリンタの基本構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、プリンタは、プリンタ本体1と、このプリンタ本体1の下部に設けられ、印刷用の媒体Sを収納する用紙カセット2とを備えている。用紙カセット2には、この用紙カセット2内に積載された媒体Sを1枚ずつ給紙する給紙ローラ対3が設けられている。プリンタ本体1には、給紙ローラ対3により用紙カセット2から給紙された媒体Sを案内する給紙搬送路4と、給紙搬送路4を経て給紙された媒体Sを搬送する搬送ローラ対5と、搬送ローラ対5により搬送された媒体Sに画像を形成する画像形成部6とが設けられている。
【0014】
本実施の形態に係る画像形成装置は、カラープリンタとして構成されているため、画像形成部6は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の画像を形成する4つのプロセスユニット7を有している。これら4つのプロセスユニット7は、図中右から左に向う方向に規定される媒体Sの搬送路に沿って順に配列されている。各プロセスユニット7は、使用するトナーの種類(色)が異なることを除き、共通の構造を有している。
【0015】
図2は、プロセスユニット7の基本構成を示す概略図である。図2に示すように、各プロセスユニット7は、図中時計回りに回転する像坦持体としての感光ドラム70を有している。感光ドラム70の外周面に沿って、帯電ローラ71、現像装置73及びクリーニング装置74が、感光ドラム70の回転方向に順に配置されている。帯電ローラ71は、感光ドラム70の外周面を一様に帯電させる。感光ドラム70に対向するようにプリンタ本体に設けられている露光装置(例えばLEDユニット)72は、一様に帯電した感光ドラム70の表面に光を照射して静電潜像を形成する。現像装置73は、感光ドラム70の表面に形成された静電潜像を所定の色のトナーにより現像する。クリーニング装置74は、感光ドラム70の表面に残った残存トナーを除去する。
【0016】
図1に戻り、画像形成部6は、さらに、プロセスユニット7に対向配置された転写ユニット8(転写部)を有している。転写ユニット8は、各プロセスユニット7の感光ドラム70に対向配置された4つの転写ローラ9と、各感光ドラム70と転写ローラ9とに挟まれるように設けられた転写ベルト10(搬送部)とを有している。転写ローラ9には、各感光ドラム70上に形成されるトナー像とは逆極性の電圧(転写バイアス)が、図示しない電圧発生部により付与されている。
【0017】
転写ベルト10は、導電材料により形成された無端状ベルトであり、その内側に4つの転写ローラ9が一列に配列されるように巻かれている。また、転写ベルト10は、4つの転写ローラ9の両側に配置された駆動ローラ11A及び従動ローラ11Bに張架されており、駆動ローラ11Aの回転により図1に矢印Bで示す方向に駆動される。転写ベルト10は、転写ローラ9により印加される転写バイアスにより、感光ドラム70の表面のトナー像を媒体Sの表面に転写する。
【0018】
画像形成部6は、さらに、定着ユニット12(定着部)を有している。定着ユニット12は、内部に設けられた定着熱発生器により加熱される定着ローラ13と、図示しない押圧機構により定着ローラ13に押圧される加圧ローラ14とを有している。定着ローラ13と加圧ローラ14との間で媒体Sを加圧・加熱することにより、媒体Sの表面にトナー像が定着する。
【0019】
定着ユニット12の下流側(図中左側)に隣接して、トナー像の定着が完了した媒体Sを排出搬送路17に沿って搬送する定着搬送ローラ対15が配置されている。この排出搬送路17のさらに下流側には、定着搬送ローラ対15を経て排出された媒体Sを、画像形成部6の外部に排出する排出ローラ対16が配置されている。
【0020】
排出ローラ対16のさらに下流側(図中左側)には、本実施の形態に係る媒体搬送装置18が配置されている。
【0021】
図3は、媒体搬送装置18を拡大して示す図である。この媒体搬送装置18は、排出ローラ対16により排出された媒体Sを吸着し、熱を奪いながら搬送する搬送ベルト19を有している。また、媒体搬送装置18は、搬送ベルト19の内周に接する駆動ローラ20、除電ローラ21及び従動ローラ22Aを有している。除電ローラ21(除電部)は、排出ローラ対16の下流側に隣接して配置されており、駆動ローラ20は、除電ローラ21のさらに下流側に配置されている。
【0022】
従動ローラ22Aは、駆動ローラ20及び除電ローラ21の下方に配置されている。さらに、搬送ベルト19の駆動ローラ20と従動ローラ22Aとの間の外周に接するように、もう一つの従動ローラ22Bが設けられている。また、除電ローラ21及び駆動ローラ20の上方には、プラテンローラ23A,23Bが配置されている。
【0023】
駆動ローラ20は、図示しない駆動機構により駆動され、搬送ベルト19を図中矢印Cで示す方向に駆動する。除電ローラ21は、搬送ベルト19の内周に接する導電材料(金属等)からなるローラであり、搬送ベルト19に電気的に接続されている。従動ローラ22A,22Bは、搬送ベルト19に一定の張力を付与するものであり、駆動ローラ20の回転により駆動する搬送ベルト19に従動して回転(連れ回り)する。
【0024】
搬送ベルト19の除電ローラ21から駆動ローラ20までの区間は、画像形成部6から排出された媒体Sを吸着して搬送する区間(媒体Sとの接触部19a)である。すなわち、排出ローラ対16から排出された媒体Sは、除電ローラ21のほぼ真上において搬送ベルト19に吸着され、搬送ベルト19により駆動ローラ20側に搬送され、駆動ローラ20を通過したところでスタッカ26(後述)に排出される。
【0025】
なお、搬送ベルト19において、従動ローラ22Bから従動ローラ22Aを経て除電ローラ21に達する区間は、接触部19a(媒体Sを搬送する区間)から下方に大きく迂回しており、余長部19bを構成している。これは、搬送ベルト19の接触部19aにおいて媒体Sから奪った熱を、この余長部19bで放熱するためである。
【0026】
除電ローラ21には、アースケーブル24(配線部)が電気的に接続されている。また、このアースケーブル24の配線の途中、すなわち除電ローラ21と接地電位(基準電位点)との間には、定電圧素子である定電圧ダイオード25(電位保持部)が設けられている。
【0027】
媒体搬送装置18のさらに下流側には、搬送ベルト19から排出された媒体Sを順に積載するスタッカ26が設けられている。
【0028】
図4は、図3の媒体搬送装置18における搬送ベルト19の断面構造を拡大して示す図である。図4に示すように、搬送ベルト19は、媒体Sに接する側(外周側)の表面層191と、反対側(内周側)の放熱層192とを有している。また、必要に応じて、表面層191と放熱層192との間に、中間層193を設けてもよい。
【0029】
表面層191は、導電性と高熱伝導性とを有する材料で構成されている。より具体的には、表面層191は、アルミニウムやステンレス等の金属、或いは、金属よりも電気抵抗が大きく金属と非金属との中間の性質を示すシリコンやグラファイト等の半金属(semi-metal)を含有した、表面低効率が10〜10Ω/cm程度の導電性樹脂により形成されることが好ましい。一方、放熱層192は、高熱放射性材料で構成されている。より具体的には、薄膜状のセラミック又は合成ゴム等の樹脂で形成されることが好ましい。
【0030】
中間層193は、搬送ベルト19の強度を向上し、電気抵抗率を安定させるために設けられるもので、例えば高分子化合物フィルム等で形成されている。なお、放熱層192及び中間層193は、導電性があまり高くないものであっても、媒体Sの帯電電位と接地電位との差が大きい(高電圧)ため、後述する除電を行うことができる。
【0031】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るプリンタの動作について、図1及び図3を参照して説明する。
ユーザの操作により、図示しない上位装置(コンピュータ等)から印刷命令が送信されると、プリンタ本体1内に設けられた図示しないプリンタ制御部が、給紙ローラ対3を駆動し、用紙カセット2内に収容された媒体Sを一枚ずつ給紙搬送路4に給紙する。媒体Sは、図1に矢印Aで示すように給紙搬送路4を経て搬送され、さらに搬送ローラ対5を経て画像形成部6に搬送される。
【0032】
画像形成部6では、転写ベルト10が、媒体Sを矢印B方向に搬送し、これにより媒体Sが各色のプロセスユニット7及び転写ユニット8を通過する。各プロセスユニット7及び転写ユニット8では、上述した印刷命令に含まれる画像データに基づき、各色のトナー像が感光ドラム70の表面に形成され、各トナー像は、転写ローラ9に付与された転写バイアスにより媒体Sの表面に転写される。
【0033】
転写ユニット8においてトナー像が転写された媒体Sは、さらに転写ベルト10により定着ユニット12に搬送される。定着ユニット12では、定着ローラ13及び加圧ローラ14により媒体S上のトナー像に熱及び圧力が加えられ、トナー像が媒体Sの表面に定着される。
【0034】
トナー像が定着された媒体Sは、定着搬送ローラ対15及び排出ローラ対16により排出搬送路17を通って排出され、媒体搬送装置18に搬送される。
【0035】
媒体搬送装置18では、除電ローラ21のほぼ真上の位置において、排出ローラ対16により排出された媒体Sが搬送ベルト19と接触する。このとき、上述した4色分のプロセスユニット7からのトナー像を転写するために付与された転写バイアスにより媒体Sが帯電しており、この帯電電荷の一部は除電ローラ21を介して除去されずに残るため(後述)、搬送ベルト19の表面に媒体Sが静電吸着される。駆動ローラ20の回転により搬送ベルト19が矢印Cで示すように移動し、媒体Sが搬送される。また、媒体Sは、上側のプラテンローラ23A,23Bによっても案内されるため、搬送ベルト19からの浮き上がりが防止される。
【0036】
搬送ベルト19により搬送された媒体Sは、駆動ローラ20のほぼ真上を通過したところで、駆動ローラ20の外周に沿って進行する搬送ベルト19から離れ、スタッカ26に排出される。スタッカ26では、搬送ベルト19から排出された媒体Sが順に積載される。
【0037】
次に、本実施の形態に係る媒体搬送装置の作用について、搬送の安定化、除電作用、及び放熱作用に分けて説明する。
【0038】
<搬送の安定化>
搬送ベルト19上に、単に媒体Sを載置して搬送した場合、媒体Sが搬送ベルト19上で位置ずれし、また、搬送ベルト19から浮き上がる場合があり、媒体Sの斜行や皺の発生の原因となる。
【0039】
本実施の形態では、搬送ベルト19の内周面に接するように設けた除電ローラ21にアースケーブル24を接続し、さらに定電圧ダイオード25を設けている。すなわち、媒体Sの帯電電荷(上述した転写バイアスによる)を完全に除去するのではなく、定電圧ダイオード25を介して搬送ベルト19の電位を所定値に保つことで、媒体Sの帯電電荷の一部を残している。これにより、媒体Sが搬送ベルト19に静電吸着されるため、媒体Sの位置ずれや浮き上がりが防止され、安定した媒体Sの搬送が可能になる。
【0040】
<除電作用>
一方、媒体Sが過度に帯電された状態で、媒体搬送装置18からスタッカ26に排出されると、帯電(静電気)のため媒体S同士の貼り付きが生じ、スタッカ26上で媒体Sが円滑に積載されない可能性がある。
【0041】
本実施の形態では、除電ローラ21及びアースケーブル24の作用により、媒体Sに帯電した電荷の一部が除去されるため、媒体Sが過度に帯電した状態でスタッカ26に排出されることが防止される。その結果、スタッカ26上での媒体Sの積載不良が防止される。
【0042】
なお、積載不良を防止する観点では、媒体Sの帯電電荷は少ないほど良い。しかしながら、搬送ベルト19を単に接地した場合、図5に示したような問題が発生する。すなわち、媒体Sの長さによっては、媒体Sの後端部が感光ドラム70と転写ローラ9との間に挟持された状態で、媒体Sの先端部が搬送ベルト19に達する場合がある。図5に示すように、搬送ベルト19を除電ローラ21及びアースケーブル24を介して直接接地した場合、転写ユニット8の転写ローラ9に転写バイアスが印加されると、図中矢印Dで示すように、電荷が媒体Sの表面を経由して搬送ベルト19及び除電ローラ21から接地電位に流れてしまう。このような場合、感光ドラム70と転写ローラ9との間の転写部において、トナー像を媒体Sに転写するための転写バイアスが不足することとなり、画像の濃度の低下や色むらの発生を招く可能性がある。
【0043】
そこで、本実施の形態では、アースケーブル24に定電圧ダイオード25を設けることにより、搬送ベルト19と接地電位との電位差が所定の降伏電圧に達しないと搬送ベルト19から接地電位に電荷が流れないように構成されている。転写ローラ9により印加される転写バイアスは、例えば5000V程度(プリンタの場合)であるため、これ以上の電位を保持できる定電圧ダイオード25を選択する。これにより、転写バイアスのリークを抑制し、画像濃度の低下や色むらの発生を防止している。
【0044】
なお、本実施の形態では、搬送ベルト19の電位を保持するために定電圧ダイオード25を用いたが、定電圧ダイオード25の代わりに、例えば抵抗器を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
<放熱作用について>
また、画像形成部6から排出された媒体Sは、定着ユニット12での加熱により高温になっているため、そのまま媒体搬送装置18で搬送し、スタッカ26に排出したのでは、トナー像を定着するために加熱された媒体Sが次々にスタッカに積載され、媒体S上で像を形成しているトナー粒子が再融解して重なり合う媒体Sと融着する、いわゆるブロッキングが生じる可能性がある。
【0046】
そこで、本実施の形態では、高い熱伝導性及び熱放射性を有する搬送ベルト19を、上述した接触部19aにおいて媒体Sに接触させることにより、媒体Sの熱を奪って冷却している。搬送ベルト19は、媒体Sから奪った熱を、上述した余長部19bにおいて自然放熱したのち、接触部19aにおいて再び媒体Sを保持して搬送する。
【0047】
また、上述したように、媒体Sは、転写バイアスにより帯電しており、その帯電電荷の一部が除電ローラ21を介して除去されずに残るため、媒体Sが搬送ベルト19に静電吸着される。この静電吸着のため、媒体Sと搬送ベルト19との密着性が向上し、媒体Sに蓄積したより多くの熱が搬送ベルト19を介して放熱される。
【0048】
図6は、定着ユニット12によりトナー像が定着されたプラスチック素材の媒体Sが、媒体搬送装置18から排出された直後の温度を測定した結果を示す。図6において、E1は、搬送ベルト19による冷却(放熱)を行わなかった場合の結果であり、ここでは、排出ローラ対16から排出された直後の媒体Sの温度を示す。E2は、定着ユニット12から排出された媒体Sを、図示しない除電部材により完全に除電したのち、搬送ベルト19で静電吸着せずに搬送した場合の結果を示す。E3,E4,E5は、本実施の形態における搬送ベルト19により媒体Sを静電吸着して搬送した場合の結果であり、接触部19a(図3)の長さをそれぞれ20mm、30mm、40mmとした結果をそれぞれ示す。
【0049】
図6から分かるように、全く冷却を行わなかった場合には(E1)、媒体Sの表面温度は約91℃である。また、静電吸着せずに搬送ベルト19で搬送した場合には(E2)、媒体Sの表面温度は約67℃であり、温度の低下は見られるものの、放熱の効果は十分とは言えず、定着後のトナー粒子のブロッキングが生じうる温度(約60℃)を超えている。
【0050】
これに対し、搬送ベルト19により媒体Sを静電吸着して搬送した場合(E3,E4,E5)、媒体Sの表面温度は、約60℃(ブロッキングが生じ得る温度)を大きく下回っていることが分かる。これは、静電吸着により、搬送ベルト19と媒体Sとの密着性が向上して、放熱効果が向上したことによるものである。また、結果E3,E4,E5を比較すると、接触部19aの長さが長いほど、媒体Sの表面温度が低くなっており、高い放熱効果が得られていることが分かる。
【0051】
なお、搬送ベルト19による放熱効果(冷却効果)をさらに向上したい場合には、媒体搬送装置18の筺体18A(図3)の側面に通気口を設けて対流による放熱を促し、あるいは、余長部19bの長さを長くして搬送ベルト19の熱放射時間を長くすることも効果的である。
【0052】
上述した除電作用及び放熱作用のため、媒体搬送装置18から排出された媒体Sがスタッカ26上で積載される際には、帯電による積載不良や、蓄熱によるブロッキングを生じることなく、媒体Sが整然とスタッカ26上で積載される。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態によれば、画像形成部6の下流側に配置した搬送ベルト19にアースケーブル24を電気的に接続し、さらに定電圧ダイオード25を設けたことにより、不要な帯電電荷(静電気)を除電しつつ、画像形成部6の転写バイアスのリークを防止することができる。その結果、良好な画像を形成することができると共に、静電吸着により媒体を確実に搬送し、また、排出後の積載不良を防止することができる。
【0054】
また、静電吸着により媒体Sを搬送ベルト19に密着させることで、搬送ベルト19の熱を効率よく放熱することができ、定着後のトナーのブロッキングを防止することができる。
【0055】
また、除電ローラ21が、除電部としての機能と、搬送ベルト19が張架されるローラとしての機能とを有しているため、部品点数を少なくすることができる。また、定電圧ダイオード25を利用することにより、簡単な構成で、搬送ベルト19の電位を所定の電位に保つことができる。
【0056】
また、搬送ベルト19が、金属又は半金属が含有された導電性樹脂で形成された表面層を有しているため、媒体Sからの熱が効率よく伝達される。また、搬送ベルト19が、セラミック又は合成ゴムを含む放熱層192を有しているため、媒体Sから伝達された熱を効率よく放熱することができる。
【0057】
第2の実施の形態
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の媒体搬送装置を含む部分を拡大して示す図である。図8は、第2の実施の形態における電位保持部の構成を示すブロック図である。
【0058】
第1の実施の形態では、除電ローラ21に電気的に接続されたアースケーブル24に、定電圧ダイオード25が設けられていたが、本実施の形態では、図7に示すように、除電ローラ21に電気的に接続されたアースケーブル27にスイッチ28(導通制御部)が設けられており、転写ユニット8の下流側には、媒体位置センサ29(検知部)が設けられている。
【0059】
図8に示すように、プリンタ本体1に設けられたプリンタ制御部30は、媒体位置センサ29からの信号を受け、スイッチ28を開閉動作させる。スイッチ28が接続されているときには、除電ローラ21がアースケーブル24を介して接地電位に接続された状態、すなわち、除電ローラ21と接地電位とが導通した状態となる。一方、スイッチ28が遮断されているときには、除電ローラ21が設置電位に接続されていない状態、すなわち、除電ローラ21と接地電位との導通が遮断された状態となる。
【0060】
媒体位置センサ29が媒体Sを検知しているとき(すなわち媒体位置センサ29上に媒体Sが存在しているとき)には、媒体Sの後端が感光ドラム70と転写ローラ9との間に挟持されていて、なお且つ、媒体Sの先端が媒体搬送装置18に達している可能性があり、上述した転写バイアスのリークが生じる可能性がある。そこで、プリンタ制御部30は、スイッチ28を切断することで、転写バイアスのリークを防止する。
【0061】
一方、媒体位置センサ29が媒体Sを検知しなくなると、媒体位置センサ29上を媒体Sの後端が通過し終えたことになるため、転写バイアスのリークのおそれがなくなる。そこで、プリンタ制御部30は、スイッチ28を接続することで、除電ローラ21及びアースケーブル24を介して媒体Sの除電を開始する。
【0062】
なお、ここでは、媒体位置センサ29が媒体Sの後端通過を検知したのち、すぐにスイッチ28を接続するのではなく、一定の時間をおいてからスイッチ28を接続している。これは、転写バイアスのリークのおそれがなくなった後も、さらに一定時間、搬送ベルト19と媒体Sとを静電吸着(密着)させることで、媒体Sの搬送を安定させ、高効率の放熱を行うためである。
【0063】
次に、本実施の形態における画像形成装置の動作について説明する。図9は、プリンタ制御部30により実行される除電処理を示すフローチャートである。
図示しない上位装置からの印刷命令に基づき、画像形成部6において画像を形成して媒体Sに転写する処理は、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
トナー像が形成された媒体Sは、画像形成部6から定着ユニット12に搬送されるが、その際、媒体Sの先端が媒体位置センサ29の上を通過すると、媒体位置センサ29の出力が例えばOFFからONに変わり、これによりプリンタ制御部30は、媒体Sの先端が、媒体位置センサ29を通過したことを検知する(図9のステップS1)。プリンタ制御部30は、媒体Sの先端通過を検知すると、スイッチ28を切断する(ステップS2)。これにより、除電ローラ21と接地電位との導通が遮断された状態となる。
【0065】
その後、媒体Sは、定着ユニット12、定着搬送ローラ対15及び排出ローラ対16を経て、媒体搬送装置18に搬送される。
【0066】
このとき、媒体Sに帯電した電荷が搬送ベルト19に移動するが、アースケーブル27はスイッチ28により切断された状態であるため、媒体S及び搬送ベルト19に帯電している電荷はアースケーブル27を介して除去されない。従って、媒体Sは搬送ベルト19に静電吸着され、確実に搬送される。この静電吸着により、媒体Sに蓄積したより多くの熱が搬送ベルト19に伝達される。
【0067】
媒体Sの後端が媒体位置センサ29を通過すると、媒体位置センサ29の出力がONからOFFに変わり、これによりプリンタ制御部30は、媒体Sの後端が、媒体位置センサ29を通過したことを検知する(ステップS3)。プリンタ制御部30は、この時点からの経過時間を計測し(ステップS4)、所定時間が経過したことを確認すると(ステップS5)、スイッチ28を接続する(ステップS6)。
【0068】
これにより、アースケーブル27を介して除電ローラ21と接地電位とが導通するため、媒体S及び搬送ベルト19に帯電している電荷が、除電ローラ21及びアースケーブル27を介して除去される。
【0069】
搬送ベルト19により搬送された媒体Sは、媒体搬送装置18から排出されてスタッカ26上で積載される。このとき、上述した除電作用及び放熱作用のため、帯電による積載不良や、蓄熱によるブロッキングを生じることなく、媒体Sが整然とスタッカ26上で積載される。
【0070】
なお、ステップS4における所定時間は、媒体Sの後端が除電ローラ21の近傍に達した時点でスイッチ28が接続される(すなわち除電が開始される)ように設定することが好ましい。このようにすれば、できるだけ長い時間、媒体Sを搬送ベルト19に対して静電吸着して安定搬送を行い、スタッカ26への排出直前に除電を行って積載不良を防止することができるからである。
【0071】
また、接触部19aに同時に2枚以上の媒体Sが搬入されると、先行する媒体Sが除電されずにスタッカ26に排出されてしまう可能性が考えられるため、接触部19aに同時に2枚以上の媒体Sが存在することがないように媒体Sの搬送を制御することが好ましい。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、除電ローラ21と接地電位との導通を、媒体位置センサ29による検知信号に基づきスイッチ28により遮断することにより、静電吸着により媒体を確実に搬送すると共に、画像形成部6の転写バイアスのリークを防止し、画像品質の低下を防止することができる。また、スタッカ26への排出前の除電により積載不良を防止し、さらに、放熱効率を向上することができる。
【0073】
また、媒体位置センサ29を転写ユニット8と搬送ベルト19との間に配置したことにより、媒体Sの位置に基づき、転写バイアスのリークの可能性の有無を判断することができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、画像形成部6の下流側に隣接した位置に媒体位置センサ29を設けたが、この位置に限らず、例えば、搬送ベルト19の上流側に隣接した位置など、他の位置に設けても良い。必要に応じて媒体位置センサ29の配置を変更できるため、装置構成の自由度が向上する。
【0075】
上述した第1及び第2の実施の形態において、媒体S及び搬送ベルト19の帯電電荷を除電する手段として、搬送ベルト19が張架された除電ローラ21を用いたが、搬送ベルト19に対して電気的に接続されたものであれば、他の除電手段を用いてもよい。また、除電ローラ21は、搬送ベルト19の外周面に接触していてもよい。
【0076】
また、搬送ベルト19は、定着部12の下流側に配置されていれば、例えばプリンタ本体1の内部に配置されていてもよい。
【0077】
また、第2の実施の形態では、プリンタ本体1に設けたプリンタ制御部30によりスイッチ28を制御するとしたが、独立した制御部を設けてもよい。
【0078】
また、第1の実施の形態における媒体搬送装置(アースケーブル24に定電圧ダイオード25が設けられている)に、第2の実施の形態で説明したスイッチ28、媒体位置センサ29及びプリンタ制御部30を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態における媒体搬送装置を備えた画像形成装置を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置におけるプロセスユニットの基本構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における媒体搬送装置を含む、画像形成装置の媒体搬送部を拡大して示す図である。
【図4】第1の実施の形態における媒体搬送装置の搬送ベルトの断面構造を示す図である。
【図5】転写バイアスのリークを説明するための図である。
【図6】第1の実施の形態における媒体搬送装置による放熱効果を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の第2の実施の形態における媒体搬送装置を含む、画像形成装置の媒体搬送部を拡大して示す図である。
【図8】第2の実施の形態における電位保持部の構成例を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態における除電処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 プリンタ本体、 2 用紙カセット、 3 給紙ローラ対、 4 給紙搬送路、 5 搬送ローラ対、 6 画像形成部、 7 プロセスユニット、 8 転写ユニット、 9 転写ローラ、 10 搬送ベルト、 11A 駆動ローラ、 11B 従動ローラ、 12 定着ユニット、 13 定着ローラ、 14 加圧ローラ、 15 定着搬送ローラ対、 16 排出ローラ対、 17 排出搬送路、 18 媒体搬送装置、 19 搬送ベルト、 19a 接触部、 19b 余長部、 20 駆動ローラ、 21 除電ローラ、 22A,22B 従動ローラ、 23A,23B プラテンローラ、 24 アースケーブル、 25 定電圧ダイオード、 26 スタッカ、 27 アースケーブル、 28 スイッチ、 29 媒体位置センサ、 30 プリンタ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を媒体に転写する転写部と、前記画像を前記媒体に定着させる定着部と、前記媒体を前記転写部及び前記定着部を通過するように搬送する搬送部とを備えた画像形成装置に設けられた媒体搬送装置であって、
前記定着部の搬送方向下流側に配置され、前記画像が定着した前記媒体をさらに搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに帯電した電荷の少なくとも一部を除去するための除電部と、
前記除電部に接続され、前記搬送ベルトの電位を保持する電位保持部と
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトは、前記定着部により加熱された前記媒体から熱を伝達されることにより、前記媒体を冷却することを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトは、前記画像形成装置における前記媒体の帯電により、前記媒体を吸着して保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記除電部は、前記搬送ベルトに接するように設けられたローラであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、複数の層を有し、少なくとも一つの層は、金属又は半金属が含有された導電性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトは、複数の層を有し、少なくとも一つの層は、セラミック又は合成ゴムを含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記電位保持部は、前記搬送ベルトの電位を、前記転写部における転写バイアス以上の電位に保つことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記電位保持部は、前記除電部に接続された配線部と、当該配線部に設けられた定電圧素子又は抵抗器とを有することを特徴とする請求項7に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
前記定電圧素子は、定電圧ダイオードであることを特徴とする請求項8に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
前記電位保持部は、
前記除電部と接地電位との間の導通を制御する導通制御部と、
前記媒体の位置を検知する検知部と
前記検知部の検知結果に応じて、前記導通制御部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記媒体が前記搬送ベルトに達したときに、当該媒体の一部が前記転写部に残っている場合に、前記導通を遮断するように前記導通制御部を制御すること
を特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項11】
前記検知部は、前記媒体の先端部及び後端部の通過を検知すること特徴とする請求項10に記載の媒体搬送装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記検知部により前記媒体の後端部の通過を検知してから所定時間経過後に、前記導通制御部により前記除電部と前記接地電位とを導通させることを特徴とする請求項11に記載の媒体搬送装置。
【請求項13】
前記検知部は、前記転写部と前記搬送ベルトとの間に配置されていることを特徴とする請求項10から12までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の媒体搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−7096(P2009−7096A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169030(P2007−169030)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】